特許第6071587号(P6071587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6071587-排水処理装置およびその運転方法 図000002
  • 特許6071587-排水処理装置およびその運転方法 図000003
  • 特許6071587-排水処理装置およびその運転方法 図000004
  • 特許6071587-排水処理装置およびその運転方法 図000005
  • 特許6071587-排水処理装置およびその運転方法 図000006
  • 特許6071587-排水処理装置およびその運転方法 図000007
  • 特許6071587-排水処理装置およびその運転方法 図000008
  • 特許6071587-排水処理装置およびその運転方法 図000009
  • 特許6071587-排水処理装置およびその運転方法 図000010
  • 特許6071587-排水処理装置およびその運転方法 図000011
  • 特許6071587-排水処理装置およびその運転方法 図000012
  • 特許6071587-排水処理装置およびその運転方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071587
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】排水処理装置およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20170123BHJP
   C02F 11/12 20060101ALI20170123BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20170123BHJP
   C02F 3/28 20060101ALI20170123BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C02F11/04 AZAB
   C02F11/12 Z
   C02F11/00 Z
   C02F3/28 B
   C02F3/12 A
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-13668(P2013-13668)
(22)【出願日】2013年1月28日
(65)【公開番号】特開2014-144407(P2014-144407A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】坪田 潤
(72)【発明者】
【氏名】中西 裕士
(72)【発明者】
【氏名】石倉 健志
(72)【発明者】
【氏名】本永 朝将
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−237210(JP,A)
【文献】 特開平05−345196(JP,A)
【文献】 特開2009−202095(JP,A)
【文献】 特開2008−012491(JP,A)
【文献】 特開2012−206053(JP,A)
【文献】 特開2008−302279(JP,A)
【文献】 特開2013−027851(JP,A)
【文献】 特開平10−290990(JP,A)
【文献】 特開2003−181481(JP,A)
【文献】 特開2000−237776(JP,A)
【文献】 特開2000−271594(JP,A)
【文献】 特開2008−119562(JP,A)
【文献】 特開2009−072719(JP,A)
【文献】 特開2003−320395(JP,A)
【文献】 特開2005−131555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/04
C02F 3/12
C02F 3/28
C02F 11/00
C02F 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ごみ粉砕処理廃液を受け入れる受け入れ部を設けるとともに、前記生ごみ粉砕処理廃液を沈殿分離する固液分離槽を備え、
前記固液分離槽で固液分離された液相に含まれる有機物をバイオガス化する液相嫌気発酵部を設けるとともに、
前記固液分離槽にて沈殿分離された沈殿物を受け入れてバイオガス化する沈殿物嫌気発酵槽を備え、
前記固液分離槽から前記沈殿物嫌気発酵槽に前記沈殿物を移流させる移流部を設けてなり、
前記移流部に、前記固液分離槽と前記沈殿物嫌気発酵槽との間を前記沈殿物により閉塞して、固形成分の前記沈殿物嫌気発酵槽から前記固液分離槽への逆流を防止可能にする絞部を設けるとともに、
前記沈殿物を前記絞部を介して前記沈殿物嫌気発酵槽に移流させ、前記沈殿物嫌気発酵槽の余剰の液相を前記絞部を介して前記固液分離槽に返送可能にする沈殿物移流機構を前記沈殿物嫌気発酵槽に設け、
前記液相嫌気発酵部および前記沈殿物嫌気発酵槽には、生成したバイオガスを外部に取り出すバイオガス取出路を設けた排水処理装置。
【請求項2】
前記液相嫌気発酵部が、前記固液分離槽内部で液相の滞留する領域に、嫌気性微生物を育成するための担体を設けて構成されている請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記液相嫌気発酵部が、前記固液分離槽内部から移流した液相を受け入れる水処理槽を備えるとともに、前記水処理槽内に嫌気性微生物を育成するための担体を設けて構成されている請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記絞部は、前記固液分離槽下部に設けたスリット状出口を備え、前記固液分離槽における前記沈殿物が、前記スリット状出口を閉塞して堆積する堆積層を形成可能に構成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記沈殿物嫌気発酵槽に嫌気ガスを散気する散気装置を、前記スリット状出口の下方から上昇する気液混相流を形成可能に配置するとともに、前記散気装置に間欠的に嫌気ガスを供給するガス供給装置を設けて、前記沈殿物移流機構を形成してある請求項4に記載の排水処理装置。
【請求項6】
前記受け入れ部で受け入れた生ごみ粉砕処理廃液を可溶化する可溶化槽を備え、前記可溶化槽から前記固液分離槽に可溶化した生ごみ粉砕処理廃液を移流させる移流部を設けた請求項1〜5のいずれか一項に記載の排水処理装置。
【請求項7】
前記固液分離槽で固液分離された液相の移流を受け、好気処理する好気処理槽を備えた請求項1〜6のいずれか一項に記載の排水処理装置。
【請求項8】
請求項5に記載の排水処理装置の運転方法であって、
前記沈殿物嫌気発酵槽における前記沈殿物のバイオガス化に伴って減少する減少量に応じて前記ガス供給装置によるガス供給を行う排水処理装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみ粉砕処理廃液を浄化する排水処理装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各家庭や集合住宅において、ゴミの減容化等を目的として、生ごみディスポーザが普及する傾向にあり、ディスポーザにより粉砕処理された生ゴミを処理可能とする排水処理装置が設置される傾向にある。
【0003】
このような排水処理装置の形態としては、単に、生ごみ粉砕処理廃液を嫌気処理により可溶化し、可溶化した液相を好気処理することにより浄水とする構成が一般的であり、現実的に可溶化しきらない生ごみは、固液分離され、コンポスト化、飼料化され、さらに余剰の固形成分は焼却処分等される。
【0004】
しかし、このような処理形態では、コンポスト化、飼料化された生ごみは、再利用されるが、焼却処分等される部分については、エネルギーの有効利用が図られているとは言い難く、また、好気処理であるために、大量の希釈水を必要とすることから、あまり効率的な処理方法とはいえない。さらに、コンポスト化、飼料化されたエネルギーについても再利用用途に限界があり、一般的な用途で利用可能なバイオガス化する技術が望まれている。
【0005】
生ごみ粉砕処理廃液をバイオガス化する技術としては特許文献1に記載のように、生ごみを粉砕処理した排液を可溶化し、可溶化成分について嫌気発酵を行うことによりメタンガスを回収する排水処理装置が考えられている。
【0006】
しかし、これらの排水処理装置は、生ごみ粉砕処理廃液は充分可溶化しないと嫌気発酵に供することができないことから、可溶化に時間を要し、大きな可溶化槽や嫌気発酵槽を要する。さらに、嫌気発酵槽において、メタン細菌は増殖が遅いことが知られており、嫌気発酵後の処理済の液を取り出すに際して、メタン細菌の流出を抑制する必要がある。そのため、各槽間を常時連通状態に維持することはできず、各槽を個別の水処理容器から構成することが好ましかった。また、各槽間で処理水を移送させるには、動力として大掛かりなポンプを必要とする。その結果、上記排水処理装置としては大掛かりな装置構成を必要とすることになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−119937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、上述の排水処理装置を小型化簡素化するに際しては、嫌気発酵槽に対する生ごみ粉砕処理廃液の移送を簡素化することが必要になる。
【0009】
嫌気発酵槽に対する生ごみ粉砕処理廃液の移送を効率化するには、生ごみ粉砕処理廃液の連続移流が可能な構成を実現することが望ましい。また、嫌気発酵槽においては、固形成分の処理効率を向上させるには、可溶化していない固形成分であっても嫌気発酵可能な高濃度のメタン細菌を保持可能な嫌気発酵槽を構成すること、および、嫌気発酵槽に保持されるメタン細菌が、連続的な処理を通じて、維持されることが必要になる。
【0010】
したがって、本発明は上記実状に鑑み、簡素で効率よく生ごみ粉砕処理廃液のバイオガス化が行える排水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔構成1〕
上記目的を達成するための本発明の排水処理装置の特徴構成は、
生ごみ粉砕処理廃液を受け入れる受け入れ部を設けるとともに、前記生ごみ粉砕処理廃液を沈殿分離する固液分離槽を備え、
前記固液分離槽で固液分離された液相に含まれる有機物をバイオガス化する液相嫌気発酵部を設けるとともに、
前記固液分離槽にて沈殿分離された沈殿物を受け入れてバイオガス化する沈殿物嫌気発酵槽を備え、
前記固液分離槽から前記沈殿物嫌気発酵槽に沈殿物を移流させる移流部を設けてなり、
前記移流部に、前記固液分離槽と前記沈殿物嫌気発酵槽との間を前記沈殿物により閉塞して、固形成分の前記沈殿物嫌気発酵槽から前記固液分離槽への逆流を防止可能にする絞部を設けるとともに、
前記沈殿物を前記絞部を介して前記沈殿物嫌気発酵槽に移流させ、沈殿物嫌気発酵槽の余剰の液相を前記絞部を介して前記固液分離槽に返送可能にする沈殿物移流機構を前記沈殿物嫌気発酵槽に設け、
前記液相嫌気発酵部および沈殿物嫌気発酵槽には、生成したバイオガスを外部に取り出すバイオガス取出路を設けた点にある。
【0012】
〔作用効果1〕
上記構成によると、排水処理装置は、生ごみ粉砕処理廃液を受け入れ、その生ごみ粉砕処理廃液を前記固液分離槽にて固液分離し、前記固液分離した沈殿物を沈殿物嫌気発酵槽に移流させてバイオガス化処理できるとともに、菌体濃度を高濃度に維持でき、バイオガス化処理を行って浄化された生ごみ粉砕処理廃液を排水できる。また、固液分離された液相についても、嫌気発酵され、資化された有機物がバイオガス化して生ごみに含まれる有機成分を、より一層効率よくエネルギーとして回収できるようになった。
【0013】
具体的には、生ごみ粉砕処理廃液は固液分離槽で固液分離され、上澄液と沈殿物に分かれる。沈殿物は、沈殿して移流部における絞部に達する。絞部では、前記固液分離槽と前記沈殿物嫌気発酵槽との間を前記沈殿物により閉塞して、固形成分の前記沈殿物嫌気発酵槽から前記固液分離槽への逆流を防止可能にする沈殿物移流機構を設けるから、前記沈殿物は、前記固液分離槽から沈殿物嫌気発酵槽へ一方通行で移流する。一方固液分離槽における上澄液を含む液相は、液相嫌気発酵部において嫌気発酵されて、バイオガスを生成する。また、前記沈殿物嫌気発酵槽の微生物からなる汚泥は、沈殿物嫌気発酵槽内で保持され、外部に流出することなく保持される。すなわち、余剰の液相の移流量に応じて、前記沈殿物嫌気発酵槽から前記固液分離槽へ液相の返流が生じるが、前記沈殿物がフィルタ効果を発揮し、前記沈殿物嫌気発酵槽からの返流に含まれる嫌気微生物は前記沈殿物内に留まる。これにより前記沈殿物嫌気発酵槽内の嫌気微生物濃度を高濃度に維持できる。そして、前記沈殿物嫌気発酵槽では、固液分離槽の沈殿物が流入するが、前記沈殿物嫌気発酵槽の内部の固形成分が固液分離槽に返送されることがなく、前記沈殿物嫌気発酵槽内の微生物が沈殿物嫌気発酵槽外に流出して減少することが抑制され、良好な嫌気発酵が維持でき、嫌気発酵により減容した固形成分量に見合う沈殿物が順次補給される運転状態を維持できる。
したがって、簡単な構成の沈殿物移流機構を採用するだけで、前記沈殿物嫌気発酵槽では沈殿物を嫌気発酵により連続的にガス化減容化し、バイオガスを回収できる。
【0014】
これにより、小型で効率よく生ごみ粉砕処理廃液を固液分離した液相および沈殿物を、ともに効率よくバイオガス化できる排水処理装置を提供することができた。
【0015】
前記沈殿物嫌気発酵槽で生成したバイオガスは、バイオガス取出路から取り出され、例えばガスエンジン、ボイラ等の燃料や、各種化学物質の合成原料として供給できる。
【0016】
〔構成2〕
また、前記液相嫌気発酵部が、前記固液分離槽内部で液相の滞留する領域に、嫌気性微生物を育成するための担体を設けて構成されてもよい。
【0017】
〔作用効果2〕
前記液相嫌気発酵部は、生ごみ粉砕処理廃液を固液分離した液相に含まれる有機成分を分解してバイオガス化するから、その液相に生育する嫌気性微生物を十分量保持した上で、液相との接触の効率化を図ることにより、バイオガス化の効率を向上できるものと考えられる。そこで、前記固液分離槽内部で液相の滞留する領域に、嫌気性微生物を育成するための担体を設けてあれば、担体に微生物を保持した状態で担体と液相との接触効率を高くできるので極めて高いバイオガス化効率を発揮させることができるようになった。液相嫌気発酵部は、前記沈殿物嫌気発酵槽で嫌気分解されてより低分子化した有機物をさらに分解するので、沈殿物を2段階でより完全に分解処理する効果も発揮させられる。液相嫌気発酵部で用いる担体は、球状もしくは筒上の樹脂を複数用いる流動担体でもよいし、柱状もしくは板状の樹脂を用いる固定担体でもよい。
【0018】
したがって、生ごみ粉砕処理廃液をより完全にバイオガス化し、エネルギーとして回収できるようになった。
【0019】
〔構成3〕
また、前記液相嫌気発酵部が、前記固液分離槽内部から移流した液相を受け入れる水処理槽を備えるとともに、前記水処理槽内に嫌気性微生物を育成するための担体を設けて構成してもよい。
【0020】
〔作用効果3〕
先の構成に記載の通り、担体に保持した微生物と液相との接触を図ることにより、高いバイオガス化効率を発揮させることができる。しかし、固液分離槽内部の液相の領域に担体を配置して保持すれば、省スペースで配置できる利点はあるが、場合によっては、十分量の担体が収容できない、固液分離された沈殿物が担体に付着することによって、長期にわたって高いバイオガス化効率を維持することが困難になる、等の不都合が生じる恐れがある。このような場合には、前記固液分離槽内部から移流した液相を受け入れる水処理槽を備えるとともに、前記水処理槽内に嫌気性微生物を育成するための担体を設けることによって、前記固液分離層とは別の十分大きな水処理空間で生ごみ粉砕処理廃液のバイオガス化が図れ、生ごみ粉砕処理廃液の性状に応じて高負荷の処理を行えることになる。
【0021】
したがって、生ごみ粉砕処理廃液の性状が極めて高濃度であるなど、負荷の高い場合は特に、長期にわたって高いバイオガス化効率を維持できて好ましい。
【0022】
〔構成4〕
前記絞部は、前記固液分離槽下部に設けたスリット状出口を備え、前記固液分離槽における沈殿物が、前記スリット状出口を閉塞して堆積する堆積層を形成可能に構成する。
【0023】
〔作用効果4〕
上記構成によると、前記固液分離槽下部に沈殿した沈殿物前記スリット状出口において下すぼまりに集合するから、前記スリット状出口で堰きとめられて堆積する。すると、前記スリット状出口に堆積した沈殿物は、前記沈殿物や、前記沈殿物嫌気発酵槽内の微生物などの固形成分に関しては、これらを前記沈殿物嫌気発酵槽から前記固液分離槽に逆流させるのを防止するフィルタとして機能することになる。
【0024】
すると、前記スリット状出口を絞部として前記沈殿物を堰きとめる簡単な構成により、前記沈殿物は、前記沈殿物嫌気発酵槽に徐々に流入しつつ、前記沈殿物嫌気発酵槽からの固形成分の逆流を防止できる。これにより、前記沈殿物嫌気発酵槽における沈殿物量を好適に維持するとともに、沈殿物嫌気発酵槽内の微生物を槽内に確実に保持でき、バイオガスの発生を良好に維持できる。
【0025】
〔構成5〕
また、前記沈殿物嫌気発酵槽に嫌気ガスを散気する散気装置を、前記スリット状出口の下方から上昇する気液混相流を形成可能に配置するとともに、前記散気装置に間欠的に嫌気ガスを供給するガス供給装置を設けて、前記沈殿物移流機構を形成してあってもよい。
【0026】
〔作用効果5〕
上記構成によると、前記散気装置により前記嫌気ガスを前記沈殿物嫌気発酵槽内に散気することによって、前記スリット状出口の下方から上昇する気液混相流を形成できる。前記気液混相流が、前記スリット状出口の近傍を上昇すると、前記混相流の流れによるイジェクタ効果が生じ、前記スリット状出口に堰きとめられていた沈殿物を、前記沈殿物嫌気発酵槽側に吸い出し、前記固液分離槽から前記沈殿物嫌気発酵槽に移流させる沈殿物移流機構として機能することになる。また、このとき、前記散気装置に供給されるのは嫌気ガスであるため、前記沈殿物嫌気発酵槽の嫌気発酵条件は良好に維持できる。このような嫌気ガスとしては、例えば、前記沈殿物嫌気発酵槽で生成したバイオガスを利用できる。
【0027】
そのため、簡単な構成で沈殿物移流機構を構成することができるとともに、前記散気装置から間欠的に散気する散気量、散気の時期を調整するだけの簡単な制御で、前記固液分離槽から前記沈殿物嫌気発酵槽に移流する沈殿物量を制御できる。
【0028】
〔構成6〕
また、前記受け入れ部で受け入れた生ごみ粉砕処理廃液を可溶化する可溶化槽を備え、前記可溶化槽から前記固液分離槽に可溶化した生ごみ粉砕処理廃液を移流させる移流部を設けてあってもよい。
【0029】
〔作用効果6〕
上記構成によると、固液分離部で固液分離される生ごみ粉砕処理廃液は、受け入れ部で受け入れられた後、一旦可溶化槽にて貯留されて可溶化した状態で前記固液分離槽に流入する。すると、前記固液分離槽で固液分離され、前記沈殿物嫌気発酵槽に移流される沈殿物量が、前記可溶化槽における生ごみ粉砕処理廃液の可溶化度合いに応じて調整されるから前記固液分離槽から前記沈殿物嫌気発酵槽に移流する沈殿物量を適切に設定して、前記沈殿物嫌気発酵槽における円滑な嫌気発酵を妨げることなく排水処理を持続できる。
【0030】
〔構成7〕
また、前記固液分離槽で固液分離された液相の移流を受け、好気処理する好気処理槽を備えてもよい。
【0031】
〔作用効果7〕
先述の構成によると、前記固液分離槽を経た生ごみ粉砕処理廃液の液相部分は、主に嫌気処理をされていない廃液であるから、比較的BODの高い状態であることが予想される。しかし、さらに好気処理を行うことによってBODを低下させ、自然環境に放流することのできる水質にまで浄化することが可能になり、好気処理槽を備えて排水をさらに好気処理して放流可能な構成とすることで家庭用浄化槽等としても利用できる構成とできるので好ましい。
【0032】
また、好気処理槽で発生した汚泥を、前記固液分離槽に返送する返送部を設けてあれば、前記汚泥はさらに前記沈殿物嫌気発酵槽に移流され、沈殿物嫌気発酵槽で分解できるため、排水処理装置全体として、引き抜き汚泥量を大幅に削減できる。
【0033】
〔構成8〕
また、散気装置にガス供給するガス供給装置を備えて沈殿物移流機構を設けた場合、前記沈殿物嫌気発酵槽における沈殿物のバイオガス化に伴って減少する減少量に応じて前記ガス供給装置によるガス供給を行う排水処理装置の運転方法を行うことができる。
【0034】
〔作用効果8〕
上記方法によると、前記沈殿物嫌気発酵槽ではバイオガス化処理するに適した量の沈殿物を前記沈殿物嫌気発酵槽内に収容し、嫌気発酵によりバイオガス化できるので、効率よくバイオガス化をすすめることができるとともに、前記絞部に堰きとめられて堆積する沈殿物の量を適切に維持し、沈殿物移流機構による沈殿物の移流を円滑に維持できる。
【発明の効果】
【0035】
したがって、小型で効率よく生ごみ粉砕処理廃液のバイオガス化が行える排水処理装置を提供できるようになった。これにより、ごみの減容、再生エネルギーの有効利用、炭酸ガス発生量削減に寄与できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の排水処理装置の横断平面図である。
図2図1におけるII−II線縦断正面図である。
図3図1におけるIII−III線縦断正面図
図4図1におけるIV−IV線縦断側面図
図5図1におけるV−V線縦断側面図
図6図1におけるVI−VI線縦断側面図
図7】本発明の排水処理装置における沈殿物嫌気発酵槽におけるバイオガス発生量を示す図
図8】比較例の排水処理装置におけるバイオガス発生量を示す図
図9】本発明の排水処理装置における液相嫌気発酵槽におけるバイオガス発生量を示す図
図10】本発明の別実施の形態による排水処理装置の横断平面図
図11図10におけるXI−XI線縦断正面図
図12】本発明の別実施の形態による排水処理装置の要部縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の排水処理装置を説明する。なお、以下に好適な実施の形態を記すが、これら実施の形態はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0038】
〔排水処理装置〕
本願の排水処理装置は、図1図6に示すように、排水処理装置本体Aの内部を仕切壁W12、W13,W23,W25により仕切って、貯留槽1、固液分離槽2、沈殿物嫌気発酵槽3、液相嫌気発酵槽5を形成して、生ごみ粉砕処理廃液を受け入れる受け入れ部11と、各槽間を処理液が移流する移流部14、26(図5参照)、52,53を形成してある。
また、固液分離槽2や沈殿物嫌気発酵槽3、液相嫌気発酵槽5から発生したバイオガスを回収するバイオガス取出路32(図3参照)を設けてある。これにより、生ごみ粉砕処理廃液は、沈殿分離されたのち沈殿物は沈殿物発酵槽で嫌気発酵され、液相は、液相嫌気発酵部としての液相嫌気発酵槽内部空間にて嫌気発酵し、バイオガス化されたのち、清浄な排水として排水部24から排水処理装置本体A外へ排出される構成となっている。
【0039】
具体的には、図1に示すように、排水処理装置本体Aの内部を仕切壁W12により長さ方向に2つに仕切り、一方の空間を貯留槽1とし、他方の空間を、仕切壁W23,W25によりさらに幅方向に3つに仕切り、中央の空間を固液分離槽2に形成するとともに、残部を沈殿物嫌気発酵槽3と、液相嫌気発酵槽5として形成してある。ここで、沈殿物嫌気発酵槽3上部は、この沈殿物嫌気発酵槽3で発生したガスが、バイオガス取出路32より取出される構成となっており、液相がこの槽から他の槽に流出しない構成となっている。
【0040】
〔貯留槽〕
図1図6に示すように、前記貯留槽1は、前記排水処理装置本体Aの内部において生ゴミ粉砕処理排液を液面近傍において受け入れる受け入れ部11を備え、内部に生ゴミ粉砕処理排液を貯留可能な貯留空間12を形成している。また、前記貯留空間12内部には、撹拌ポンプP1により嫌気ガスを供給する散気管13を設け、貯留槽1の下部より曝気撹拌することにより、受け入れた生ゴミ粉砕処理排液を貯留しつつ、より可溶化し、流動化を図る可溶化槽として機能するように構成してある。
【0041】
前記貯留槽1と前記固液分離槽2との間を仕切る仕切壁W12の上端部には、生ゴミ粉砕処理排液の可溶化した可溶化液が、オーバーフローによって固液分離槽2に移流する移流部14を設けてある(図2図4参照)。また、前記貯留槽1と前記沈殿物嫌気発酵槽3との間を仕切る仕切壁W13は、排水処理装置本体Aの上面に気密に接続されている(図3図4参照)。
【0042】
〔固液分離槽〕
図1図2図5に示すように、固液分離槽2は、前記排水処理装置本体Aの内部において、前記移流部14より受け入れる可溶化液を下方に案内する案内壁部21を備え、案内壁部21により下方に案内された可溶化液から固形成分を沈殿分離可能にする沈殿分離空間22を形成してある。また、前記沈殿分離空間22の内部には、上部(図中では案内壁部21の下端部よりやや上方位置)に撹拌ポンプP4により嫌気ガスを供給する散気管23を設け、前記沈殿分離空間22の内部における可溶化液の上澄液を撹拌してさらに浄化する構成としてある(図1図2参照)。
【0043】
また、固液分離層と液相嫌気発酵槽5との間には、生ごみ粉砕処理廃液を固液分離した液相を、前記液相嫌気発酵槽5に移流させる移流部としての移流管52を設けるとともに、液相嫌気発酵槽5にて嫌気発酵処理された液相を流入する移流部として機能するガスリフターからなる移送管53(図6参照)を配設してある。
【0044】
前記固液分離槽2における受け入れ部11の反対側には処理済の排水を排水処理装置本体A外へ排出する排水部24を設けるとともに、排水処理装置本体Aの内壁部において前記排水部24の近傍に分離壁部25を設け、排出される処理済の排水に固形成分が混入するのを抑制し、固形成分を含まない清浄な上澄液が排出される構成としてある(図2参照)。
【0045】
図2図5に示すように、前記固液分離槽2の下部には、前記固液分離槽2において固形成分の沈殿分離された沈殿物を前記沈殿物嫌気発酵槽3に可溶化液とともに移流させるとともに、前記沈殿物嫌気発酵槽3で嫌気処理された処理済の排水(余剰の液相)を前記固液分離槽に返送可能にする移流部26を設けてある。
【0046】
前記移流部26は、前記固液分離槽2下部に設けた絞部としてのスリット状出口26aを備えた傾斜壁部26bから構成される。前記傾斜壁部は、前記仕切壁W23の下部を下側ほど固液分離槽下部側に近づくとともに、排水処理装置本体A内壁面との間に下すぼまりのスリット状出口26aを形成するように傾斜させて構成してある。これにより、スリット状出口26aを介して、上記沈殿物と可溶化液、処理済みの排水の移流を抑制され、前記固液分離槽における沈殿物が、前記スリット状出口26aを閉塞して堆積する堆積層26cを形成可能に構成してある(図5参照)。
【0047】
なお、上記構成において、スリット状出口26aの幅は10−30mm程度、好ましくは15mm程度とする。
【0048】
なお、前記固液分離槽2と沈殿物嫌気発酵槽3とを仕切る仕切壁W23は排水処理装置本体Aの上面に気密に接続されている(図2図5参照)。
【0049】
〔沈殿物嫌気発酵槽〕
図1図3図5に示すように、沈殿物嫌気発酵槽3は、前記排水処理装置本体Aの内部において、前記移流部26より受け入れられる沈殿物をメタン細菌による嫌気発酵により生物分解する嫌気発酵空間31を形成してある。前記嫌気発酵空間31の上方空間は、前記沈殿物を含む液相と仕切壁W13,W23および排水処理装置本体Aの内壁で囲まれた気密空間を形成し、前記嫌気発酵空間31で生成したバイオガスを収集するバイオガス収集空間を構成する。
【0050】
前記メタンガス収集空間には、収集されたバイオガスを外部に取り出すバイオガス取出路32を設けてある。前記バイオガス取出路32にはバイオガスタンクTが設けられ、回収されたバイオガスを一時貯留するとともに、必要に応じて外部に供給可能に構成してある。
【0051】
前記嫌気発酵空間31には、嫌気ガスを散気する散気装置33を設け、前記散気装置33に間欠的に嫌気ガスを供給するガス供給装置としての散気ポンプP3を設け、前記スリット状出口26aの下方から上昇する気液混相流を形成可能に配置して、前記固液分離槽2から前記移流部26を介して前記沈殿物嫌気発酵槽3に沈殿物を移流させる沈殿物移流機構を形成してある。すなわち、沈殿物嫌気発酵槽3に嫌気ガスを散気する散気装置33を、スリット状出口26aの下方から上昇する気液混相流を形成可能に配置するとともに、散気装置33に間欠的に嫌気ガスを供給するガス供給装置を設けて、沈殿物移流機構を形成してある。本例では、嫌気ガスとして、前記沈殿物嫌気発酵槽3で発生したバイオガスが用いられる。
【0052】
前記沈殿物移流機構は、前記スリット状出口26aのやや下方から、前記散気装置33により大量の気泡を一時に供給することにより、前記気泡の上昇流によるイジェクタ効果で、前記固液分離槽2のスリット状出口26aに堆積した沈殿物を沈殿物嫌気発酵槽3側に吸い込み、前記沈殿物を移流させる効果を発揮する。このとき、前記スリット状出口26aに堆積した堆積層26cの沈殿物は、全部同時に移流してしまうのではなく、常時前記スリット状出口26aには沈殿物の堆積層26cが維持されるように流動する。そのため、沈殿物が前記固液分離槽2から前記移流部26を介して前記沈殿物嫌気発酵槽3に移流しても、即座に前記沈殿物嫌気発酵槽3内の液相は、前記固液分離槽2に逆流することはないものの、前記堆積層26cを通じて徐々に前記固液分離槽2に返送される。ここで、前記移流部26は、前記沈殿物嫌気発酵槽3から前記固液分離槽2に可溶化した生ごみ粉砕処理廃液を移流させる移流部としても機能している。一方、前記沈殿物嫌気発酵槽3内の固形成分は、前記堆積層26cに阻まれて固液分離槽2に移流できない。その結果、前記沈殿物嫌気発酵槽3では、固液分離槽2の沈殿物が流入するが、前記沈殿物嫌気発酵槽3の内部の固形成分が固液分離槽2に返送されることがなく、前記沈殿物嫌気発酵槽3内の微生物が沈殿物嫌気発酵槽3外に流出して減少することが抑制され、良好な嫌気発酵が維持でき、嫌気発酵により減容した固形成分量に見合う沈殿物が順次補給される運転状態を維持できる。したがって、前記沈殿物嫌気発酵槽3では沈殿物を嫌気発酵により連続的にガス化減容化し、バイオガスを回収できるとともに、浄化された液相が固液分離槽2に返送され、さらに、前記固液分離槽2から外部に放流される構成となる。
【0053】
なお、上記構成の場合、散気装置33による散気は、収集されたバイオガスの一部を前記バイオガスタンクTから散気ポンプP3にて供給するので、前記沈殿物嫌気発酵槽3の内部は、嫌気状態に維持される。さらに、1日に2回程度、70L/min程度の大量散気を20秒程度の散気を行えば、前記沈殿物嫌気発酵槽3の処理能力に応じた沈殿物の移流を継続でき、大容量のポンプ等を用いることなく効率よく生ごみ粉砕処理物由来の沈殿物を移送できる。
【0054】
〔液相嫌気発酵槽〕
図1図6に示すように、液相嫌気発酵槽5は、排水処理装置本体Aの内部空間に区画形成されており、前記固液分離槽2で固液分離された液相を前記固液分離層上部に設けた前記流入管52より水処理空間51に受け入れる。
前記液相嫌気発酵槽5には、分離壁部54を設けて、内部に水処理空間51と揚水空間56とを形成してあり、前記水処理空間には、液相を嫌気発酵処理する嫌気性微生物を育成するための担体55aを多数収容して嫌気ろ床55を設けてあるとともに、前記水処理空間51上部より受け入れた液相が下方に移流するにしたがって、液相に含まれる有機物が前記担体55aと接触することにより嫌気発酵されてバイオガス化する構成としてある。下方に移流して嫌気発酵された液相は、分離壁部54の下部から揚水空間56に移流する。移送管53の縦管53a下部には、ガスリフター用ポンプP2よりバイオガスが供給され、そのガスリフター作用により、前記揚水空間56に移流した液相は、固液分離槽2に返送される構成となっている。
【0055】
なお、固液分離槽、沈殿物嫌気発酵槽、液相嫌気発酵槽は、いずれも上部空間が気密に形成され、互いに連通しており、その上部空間に滞留するバイオガスをバイオガス取出路32を通じて取り出し容易に形成されている
【0056】
〔水処理性能〕
上記排水処理装置における沈殿物嫌気発酵槽3において、固形成分量、バイオガス発生量を調べたところ、図7のようになった。図7より、上記構成の排水処理装置においては、バイオガスが安定的に発生しており、かつ、沈殿物嫌気発酵槽3内の固形成分量(TS)も安定に減少していることが読み取れる。また、沈殿物嫌気発酵槽3における沈殿物のバイオガス化率は約45%であった。
【0057】
これに対して、上記固液分離槽2における絞部としてのスリット状出口26aを設けない構成とした場合(固液分離槽2と沈殿物嫌気発酵槽3とが絞部としてのスリット状出口26aを介さずに連通している場合)の排水処理装置(比較例)における沈殿物嫌気発酵槽3の固形成分量、バイオガス発生量を調べたところ、図8のようになった。図8より、メタン細菌を充填した運転初期はバイオガスが発生するが、固形成分の槽外への流出が激しく、初期の固形成分量は、約50日後にほぼ0まで低下している。これにより、沈殿物嫌気発酵槽3では、メタン細菌を補充したとしても(図中70日、170日、220日)、メタン細菌が槽外に流出してバイオガスが発生せず、メタン細菌は、ほとんどバイオガスの発生に寄与できないことがわかった。
【0058】
投入負荷10〜20kgCODcr/m3/d、滞留時間1日の条件で液相嫌気発酵槽5のCOD負荷とtCOD分解率とを、経時変化を調べたところ、図9(a)のようになり、負荷の変動にもよらず、分解率が80%〜90%を維持しており、液相においても安定して高いバイオガス化が行われていることが分かった。
また、液相嫌気発酵槽5における非沈降性SSおよびsCOD(溶解性COD)の量について経時変化を調べたところ、図9(b)のようになった、すなわち、液相に含まれる有機物が効率よく嫌気発酵を受け、浄化されていることがわかる。
さらに、COD投入量とバイオガス発生量との関係を調べたところ図9(c)のようになっており、液相のバイオガス化率は、75%と極めて高い値になっていることが分かった。
したがって、本発明の排水処理装置の生ごみ粉砕処理廃液に対するバイオガス化率は、
(45+(100−45)*0.75=)86%におよび、きわめて高い処理効率を発揮していることが明らかになった。
【0059】
〔別実施の形態〕
上記実施の形態では、浄化済みの上澄液は、固液分離槽2から直接排水処理装置外へ流出させられる構成としたが、図10図11に示すように排水処理装置内部にさらに、好気処理槽4を形成しておき、固液分離槽2からオーバーフローする排水を好気処理槽4に移流させ、さらに好気処理するとともに、自然界に放流可能な水質レベルにまで浄化し、排水可能な家庭用浄化槽等として用いることができる。
【0060】
具体的には、図10図11に示す構成においては、上記実施の形態における排水処理装置内部に固液分離槽2および沈殿物嫌気発酵槽3に隣接して前記貯留槽1の反対側に好気処理槽4を形成してある。そして、前記固液分離槽2と、前記好気処理槽4との間の仕切壁W24に上澄液がオーバーフローする移流部28を設けるとともに(ここで、前記移流部28は、前記固液分離槽2で固液分離された液相を外部に排水する排水部24として機能している。)、前記好気処理槽4に移流した上澄液をさらに浄化して排出する排水部41を設けて構成してある。
【0061】
また、図10図11の構成においては、液相嫌気発酵槽5は、排水処理装置本体Aとは別体の容器として構成してあり、内部構造は先の実施の形態と同様に構成することで、同様に液相を嫌気発酵してバイオガスの生成を行うことができる。
【0062】
また、前記好気処理槽4には、スポンジ状の担体42を多数収容する。また、前記エアポンプP5よりエア供給して散気する散気管43を内装し、前記散気管43からの給気により、その担体42に、好気処理槽4内の液を好気処理する好気性菌を生育させるとともに、前記担体42が流動床を形成する循環流を槽内に形成可能に構成してある。
また、前記排水部41近傍に分離壁部44を設け、排出される処理済の排水に固形成分が混入するのを抑制し、固形成分を含まない清浄な上澄液が排出される構成としてあるとともに、前記好気処理槽4下部に沈殿した沈殿汚泥を、前記貯留槽1に返送するための返送管45を設けてある。これにより、前記好気処理槽4では、前記固液分離槽2からの排水をさらに好気処理して浄化するとともに、前記好気処理槽4で発生した沈殿汚泥を上流側の貯留槽1に返送して再度沈殿物嫌気発酵槽3にて処理可能に構成してある。なお、前記返送管45は、縦管45aに供給される揚水用ガスにより管内の水位を横管接続高さまで上昇させ、横管接続高さに達した被処理水を上流側に返送する構成としてあり、揚水用のガスとしては、上流側の貯留槽1、固液分離槽2、沈殿物嫌気発酵槽3が好気性に偏るのを防止する目的で、嫌気ガスを用いる。嫌気ガスは、前記バイオガスタンクTより各散気管13,23,33に嫌気ガスとしてバイオガスを供給する管路を分岐して、ガスリフター用ポンプP2より返送管45の縦管部分の下部に供給可能に構成してある(図11参照)。
【0063】
このような構成により、BOD1300mg/L、SS1343mg/L程度の生ごみ粉砕処理廃液を、さらに浄化してBOD300mg/L未満、SS300mg/L以下の清浄な排水として外部に放流可能な構成とできる。
【0064】
先の実施の形態の構成において、受け入れ部11から受け入れた生ごみ粉砕処理廃液は、貯留槽1で可溶化して固液分離槽2に移流するように設けたが、直接固液分離槽2に受け入れることもでき、生ごみ粉砕処理廃液の性状、負荷等に応じて適宜構成を変更でき、例えば、BODの高い排水を大量に受けることが想定される排水処理装置では、貯留槽1を大きく設定し、充分な可溶化を図ることが望ましい。
【0065】
なお、上記実施の形態においては、液相嫌気発酵部は、前記固液分離槽2とは別の水処理槽としての液相嫌気発酵槽5に形成したが、前記固液分離槽2内部に設けてもよい。
【0066】
すなわち、図12に示すように、前記固液分離槽2には、前記固液分離槽2内部で液相の滞留する沈殿分離空間22に、嫌気性微生物を育成するための担体55aを設けて構成してある。そして、前記液相は前記担体55aに付着して生育する嫌気性微生物によって、バイオガス化されたのち、清浄な排水として排水部24から排水処理装置本体A外へ排出される構成となっている。
【0067】
また、上述の例では液相嫌気発酵槽5で処理された液相が固液分離槽2に移送される形態としてあったが、液相を嫌気処理するための滞留時間が十分確保でき、排水可能な性状にまで液相が浄化されるのであれば、液相嫌気発酵槽5から固液分離槽2に液相を移送することなく、直接外部に排水、あるいは、好気処理槽に移送することもできる。
【0068】
また、上記実施の形態において、ガスリフター用ポンプP2や嫌気ろ床55に用いる担体55a、後記処理槽に用いる担体42などの各構成要素については、種々公知のものを適宜採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の排水処理装置は、生ごみを効率よく分解処理可能な家庭用浄化槽等として利用できる。
【符号の説明】
【0070】
A :排水処理装置本体
1 :貯留槽
11 :受け入れ部
12 :貯留空間
13 :散気管
14 :移流部
2 :固液分離槽
21 :案内壁部
22 :沈殿分離空間
23 :散気管
24 :排水部
25 :分離壁部
26 :移流部
26a :スリット状出口(絞部)
26b :傾斜壁部
26c :堆積層
28 :移流部
3 :沈殿物嫌気発酵槽
31 :嫌気発酵空間
32 :バイオガス取出路
33 :散気装置
4 :好気処理槽
41 :排水部
42 :担体
43 :散気管
44 :分離壁部
45a :縦管
45 :返送管
5 :液相嫌気発酵槽
51 :水処理空間
52 :移流管
53 :移送管
53a :縦管
54 :分離壁部
55 :嫌気ろ床
55a :担体
56 :揚水空間
P1 :撹拌ポンプ
P2 :ガスリフター用ポンプ
P3 :散気ポンプ
P4 :撹拌ポンプ
P5 :エアポンプ
T :バイオガスタンク
W12
〜W25:仕切壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12