【課題を解決するための手段】
【0011】
〔構成1〕
上記目的を達成するための本発明の排水処理装置の特徴構成は、
生ごみ粉砕処理廃液を受け入れる受け入れ部を設けるとともに、前記生ごみ粉砕処理廃液を沈殿分離する固液分離槽を備え、
前記固液分離槽で固液分離された液相に含まれる有機物をバイオガス化する液相嫌気発酵部を設けるとともに、
前記固液分離槽にて沈殿分離された沈殿物を受け入れてバイオガス化する沈殿物嫌気発酵槽を備え、
前記固液分離槽から前記沈殿物嫌気発酵槽に沈殿物を移流させる移流部を設けてなり、
前記移流部に、前記固液分離槽と前記沈殿物嫌気発酵槽との間を前記沈殿物により閉塞して、固形成分の前記沈殿物嫌気発酵槽から前記固液分離槽への逆流を防止可能にする絞部を設けるとともに、
前記沈殿物を前記絞部を介して前記沈殿物嫌気発酵槽に移流させ、沈殿物嫌気発酵槽の余剰の液相を前記絞部を介して前記固液分離槽に返送可能にする沈殿物移流機構を前記沈殿物嫌気発酵槽に設け、
前記液相嫌気発酵部および沈殿物嫌気発酵槽には、生成したバイオガスを外部に取り出すバイオガス取出路を設けた点にある。
【0012】
〔作用効果1〕
上記構成によると、排水処理装置は、生ごみ粉砕処理廃液を受け入れ、その生ごみ粉砕処理廃液を前記固液分離槽にて固液分離し、前記固液分離した沈殿物を沈殿物嫌気発酵槽に移流させてバイオガス化処理できるとともに、菌体濃度を高濃度に維持でき、バイオガス化処理を行って浄化された生ごみ粉砕処理廃液を排水できる。また、固液分離された液相についても、嫌気発酵され、資化された有機物がバイオガス化して生ごみに含まれる有機成分を、より一層効率よくエネルギーとして回収できるようになった。
【0013】
具体的には、生ごみ粉砕処理廃液は固液分離槽で固液分離され、上澄液と沈殿物に分かれる。沈殿物は、沈殿して移流部における絞部に達する。絞部では、前記固液分離槽と前記沈殿物嫌気発酵槽との間を前記沈殿物により閉塞して、固形成分の前記沈殿物嫌気発酵槽から前記固液分離槽への逆流を防止可能にする沈殿物移流機構を設けるから、前記沈殿物は、前記固液分離槽から沈殿物嫌気発酵槽へ一方通行で移流する。一方固液分離槽における上澄液を含む液相は、液相嫌気発酵部において嫌気発酵されて、バイオガスを生成する。また、前記沈殿物嫌気発酵槽の微生物からなる汚泥は、沈殿物嫌気発酵槽内で保持され、外部に流出することなく保持される。すなわち、余剰の液相の移流量に応じて、前記沈殿物嫌気発酵槽から前記固液分離槽へ液相の返流が生じるが、前記沈殿物がフィルタ効果を発揮し、前記沈殿物嫌気発酵槽からの返流に含まれる嫌気微生物は前記沈殿物内に留まる。これにより前記沈殿物嫌気発酵槽内の嫌気微生物濃度を高濃度に維持できる。そして、前記沈殿物嫌気発酵槽では、固液分離槽の沈殿物が流入するが、前記沈殿物嫌気発酵槽の内部の固形成分が固液分離槽に返送されることがなく、前記沈殿物嫌気発酵槽内の微生物が沈殿物嫌気発酵槽外に流出して減少することが抑制され、良好な嫌気発酵が維持でき、嫌気発酵により減容した固形成分量に見合う沈殿物が順次補給される運転状態を維持できる。
したがって、簡単な構成の沈殿物移流機構を採用するだけで、前記沈殿物嫌気発酵槽では沈殿物を嫌気発酵により連続的にガス化減容化し、バイオガスを回収できる。
【0014】
これにより、小型で効率よく生ごみ粉砕処理廃液を固液分離した液相および沈殿物を、ともに効率よくバイオガス化できる排水処理装置を提供することができた。
【0015】
前記沈殿物嫌気発酵槽で生成したバイオガスは、バイオガス取出路から取り出され、例えばガスエンジン、ボイラ等の燃料や、各種化学物質の合成原料として供給できる。
【0016】
〔構成2〕
また、前記液相嫌気発酵部が、前記固液分離槽内部で液相の滞留する領域に、嫌気性微生物を育成するための担体を設けて構成されてもよい。
【0017】
〔作用効果2〕
前記液相嫌気発酵部は、生ごみ粉砕処理廃液を固液分離した液相に含まれる有機成分を分解してバイオガス化するから、その液相に生育する嫌気性微生物を十分量保持した上で、液相との接触の効率化を図ることにより、バイオガス化の効率を向上できるものと考えられる。そこで、前記固液分離槽内部で液相の滞留する領域に、嫌気性微生物を育成するための担体を設けてあれば、担体に微生物を保持した状態で担体と液相との接触効率を高くできるので極めて高いバイオガス化効率を発揮させることができるようになった。液相嫌気発酵部は、前記沈殿物嫌気発酵槽で嫌気分解されてより低分子化した有機物をさらに分解するので、沈殿物を2段階でより完全に分解処理する効果も発揮させられる。液相嫌気発酵部で用いる担体は、球状もしくは筒上の樹脂を複数用いる流動担体でもよいし、柱状もしくは板状の樹脂を用いる固定担体でもよい。
【0018】
したがって、生ごみ粉砕処理廃液をより完全にバイオガス化し、エネルギーとして回収できるようになった。
【0019】
〔構成3〕
また、前記液相嫌気発酵部が、前記固液分離槽内部から移流した液相を受け入れる水処理槽を備えるとともに、前記水処理槽内に嫌気性微生物を育成するための担体を設けて構成してもよい。
【0020】
〔作用効果3〕
先の構成に記載の通り、担体に保持した微生物と液相との接触を図ることにより、高いバイオガス化効率を発揮させることができる。しかし、固液分離槽内部の液相の領域に担体を配置して保持すれば、省スペースで配置できる利点はあるが、場合によっては、十分量の担体が収容できない、固液分離された沈殿物が担体に付着することによって、長期にわたって高いバイオガス化効率を維持することが困難になる、等の不都合が生じる恐れがある。このような場合には、前記固液分離槽内部から移流した液相を受け入れる水処理槽を備えるとともに、前記水処理槽内に嫌気性微生物を育成するための担体を設けることによって、前記固液分離層とは別の十分大きな水処理空間で生ごみ粉砕処理廃液のバイオガス化が図れ、生ごみ粉砕処理廃液の性状に応じて高負荷の処理を行えることになる。
【0021】
したがって、生ごみ粉砕処理廃液の性状が極めて高濃度であるなど、負荷の高い場合は特に、長期にわたって高いバイオガス化効率を維持できて好ましい。
【0022】
〔構成4〕
前記絞部は、前記固液分離槽下部に設けたスリット状出口を備え、前記固液分離槽における沈殿物が、前記スリット状出口を閉塞して堆積する堆積層を形成可能に構成する。
【0023】
〔作用効果4〕
上記構成によると、前記固液分離槽下部に沈殿した沈殿物前記スリット状出口において下すぼまりに集合するから、前記スリット状出口で堰きとめられて堆積する。すると、前記スリット状出口に堆積した沈殿物は、前記沈殿物や、前記沈殿物嫌気発酵槽内の微生物などの固形成分に関しては、これらを前記沈殿物嫌気発酵槽から前記固液分離槽に逆流させるのを防止するフィルタとして機能することになる。
【0024】
すると、前記スリット状出口を絞部として前記沈殿物を堰きとめる簡単な構成により、前記沈殿物は、前記沈殿物嫌気発酵槽に徐々に流入しつつ、前記沈殿物嫌気発酵槽からの固形成分の逆流を防止できる。これにより、前記沈殿物嫌気発酵槽における沈殿物量を好適に維持するとともに、沈殿物嫌気発酵槽内の微生物を槽内に確実に保持でき、バイオガスの発生を良好に維持できる。
【0025】
〔構成5〕
また、前記沈殿物嫌気発酵槽に嫌気ガスを散気する散気装置を
、前記スリット状出口の下方から上昇する気液混相流を形成可能に配置するとともに、前記散気装置に間欠的に嫌気ガスを供給するガス供給装置を設け
て、前記沈殿物移流機構を形成してあってもよい。
【0026】
〔作用効果5〕
上記構成によると、前記散気装置により前記嫌気ガスを前記沈殿物嫌気発酵槽内に散気することによって、前記スリット状出口の下方から上昇する気液混相流を形成できる。前記気液混相流が、前記スリット状出口の近傍を上昇すると、前記混相流の流れによるイジェクタ効果が生じ、前記スリット状出口に堰きとめられていた沈殿物を、前記沈殿物嫌気発酵槽側に吸い出し、前記固液分離槽から前記沈殿物嫌気発酵槽に移流させる沈殿物移流機構として機能することになる。また、このとき、前記散気装置に供給されるのは嫌気ガスであるため、前記沈殿物嫌気発酵槽の嫌気発酵条件は良好に維持できる。このような嫌気ガスとしては、例えば、前記沈殿物嫌気発酵槽で生成したバイオガスを利用できる。
【0027】
そのため、簡単な構成で沈殿物移流機構を構成することができるとともに、前記散気装置から間欠的に散気する散気量、散気の時期を調整するだけの簡単な制御で、前記固液分離槽から前記沈殿物嫌気発酵槽に移流する沈殿物量を制御できる。
【0028】
〔構成6〕
また、前記受け入れ部で受け入れた生ごみ粉砕処理廃液を可溶化する可溶化槽を備え、前記可溶化槽から前記固液分離槽に可溶化した生ごみ粉砕処理廃液を移流させる移流部を設けてあってもよい。
【0029】
〔作用効果6〕
上記構成によると、固液分離部で固液分離される生ごみ粉砕処理廃液は、受け入れ部で受け入れられた後、一旦可溶化槽にて貯留されて可溶化した状態で前記固液分離槽に流入する。すると、前記固液分離槽で固液分離され、前記沈殿物嫌気発酵槽に移流される沈殿物量が、前記可溶化槽における生ごみ粉砕処理廃液の可溶化度合いに応じて調整されるから前記固液分離槽から前記沈殿物嫌気発酵槽に移流する沈殿物量を適切に設定して、前記沈殿物嫌気発酵槽における円滑な嫌気発酵を妨げることなく排水処理を持続できる。
【0030】
〔構成7〕
また、前記固液分離槽で固液分離された液相の移流を受け、好気処理する好気処理槽を備えてもよい。
【0031】
〔作用効果7〕
先述の構成によると、前記固液分離槽を経た生ごみ粉砕処理廃液の液相部分は、主に嫌気処理をされていない廃液であるから、比較的BODの高い状態であることが予想される。しかし、さらに好気処理を行うことによってBODを低下させ、自然環境に放流することのできる水質にまで浄化することが可能になり、好気処理槽を備えて排水をさらに好気処理して放流可能な構成とすることで家庭用浄化槽等としても利用できる構成とできるので好ましい。
【0032】
また、好気処理槽で発生した汚泥を、前記固液分離槽に返送する返送部を設けてあれば、前記汚泥はさらに前記沈殿物嫌気発酵槽に移流され、沈殿物嫌気発酵槽で分解できるため、排水処理装置全体として、引き抜き汚泥量を大幅に削減できる。
【0033】
〔構成8〕
また、散気装置にガス供給するガス供給装置を備えて沈殿物移流機構を設けた場合、前記沈殿物嫌気発酵槽における沈殿物のバイオガス化に伴って減少する減少量に応じて前記ガス供給装置によるガス供給を行う排水処理装置の運転方法を行うことができる。
【0034】
〔作用効果8〕
上記方法によると、前記沈殿物嫌気発酵槽ではバイオガス化処理するに適した量の沈殿物を前記沈殿物嫌気発酵槽内に収容し、嫌気発酵によりバイオガス化できるので、効率よくバイオガス化をすすめることができるとともに、前記絞部に堰きとめられて堆積する沈殿物の量を適切に維持し、沈殿物移流機構による沈殿物の移流を円滑に維持できる。