特許第6071607号(P6071607)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071607
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】管路敷設方法および回転用治具
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20170123BHJP
   F16L 1/036 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   F16L1/00 H
   F16L1/036
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-22773(P2013-22773)
(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公開番号】特開2014-152854(P2014-152854A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】507157676
【氏名又は名称】株式会社クボタ工建
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 真浩
(72)【発明者】
【氏名】神谷 敏
(72)【発明者】
【氏名】田島 和史
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−286739(JP,A)
【文献】 実開平03−055338(JP,U)
【文献】 特開2010−078142(JP,A)
【文献】 特開2013−127281(JP,A)
【文献】 特開2009−155809(JP,A)
【文献】 実開平3−56708(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00
F16L 1/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲経路部を有する鞘管内に、複数の持込管を搬入して台車で運搬し、これら持込管同士を接続して、湾曲経路部を有する本管路を鞘管内に敷設する管路敷設方法であって、
持込管が曲り管である場合、曲りの外周側を下向きにした運搬姿勢で曲り管を台車上に載せて運搬し、
既に鞘管内に敷設された敷設済の持込管に、曲り管を、運搬姿勢から所定の向きにまで回転して接続することを特徴とする管路敷設方法。
【請求項2】
曲り管を回転させる行程と、敷設済の持込管の軸心に対する曲り管の軸心のずれを補正する行程とを繰り返した後、曲り管を敷設済の持込管に接続することを特徴とする請求項1記載の管路敷設方法。
【請求項3】
敷設済の持込管の端部内に第一回転用治具を取付け、
敷設済の持込管の端部に接続される曲り管の一端部内に、第二回転用治具を取付けて第一回転用治具に対向させ、
伸縮自在な連結部材を第一回転用治具と第二回転用治具との間に着脱自在に接続し、
連結部材を伸縮させる一端部伸縮行程と、連結部材と第一回転用治具との接続位置および連結部材と第二回転用治具との接続位置を変更する一端部付替え行程とを交互に行うことで、曲り管を運搬姿勢から所定の向きに回転させて敷設済の持込管に接続することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の管路敷設方法。
【請求項4】
曲り管の回転中心が二本の連結部材間に位置するように、これら両連結部材を並列にした状態で第一回転用治具と第二回転用治具との間に接続し、
一端部伸縮行程において、いずれか片方の連結部材を短縮させ、もう片方の連結部材を伸長させて、曲り管を回転させることを特徴とする請求項3記載の管路敷設方法。
【請求項5】
二本の連結部材を、交差した状態で、第一回転用治具と第二回転用治具との間に接続し、
一端部伸縮行程において、いずれか片方の連結部材を短縮させ、もう片方の連結部材を伸長させて、曲り管を回転させることを特徴とする請求項3記載の管路敷設方法。
【請求項6】
曲り管の他端部内に第三回転用治具を取付け、
伸縮自在な連結部材を第三回転用治具と鞘管の内側との間に着脱自在に接続し、
連結部材を伸縮させる他端部伸縮行程と、連結部材と第三回転用治具との接続位置および連結部材と鞘管の内側との接続位置を変更する他端部付替え行程とを、一端部伸縮および付替え行程と同期して、交互に行うことで、曲り管を運搬姿勢から所定の向きに回転させることを特徴とする請求項3記載の管路敷設方法。
【請求項7】
上記請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の管路敷設方法に使用される回転用治具であり、
フレーム体が管の端部内に着脱自在に嵌め込まれ、
連結部材の端部を着脱自在に接続可能な接続部が管周方向におけるフレーム体の複数箇所に形成されていることを特徴とする回転用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞘管内に本管路を敷設する管路敷設方法、および、管路敷設方法において曲り管を回転させるために用いられる回転用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管路敷設方法としては、小型のシールドマシンを用いて地中にトンネルを掘削しながら、トンネル内で、複数のセグメントを接続して鞘管を敷設し、鞘管内に、複数の持込管を搬入して台車で運搬し、これら持込管同士を接続して、水道管等の本管路を鞘管内に敷設する非開削工法が知られている。
【0003】
図33図34に示すように、鞘管101に直線経路部102と湾曲経路部103とが存在する場合、直線経路部102においては、持込管104に直管104aを使用すればよいが、湾曲経路部103においては、持込管104に曲り管104bを使用する必要がある。この場合、曲り管104bは、台車105に載せられて、鞘管101内を運搬され、既に鞘管101内に敷設された敷設済の持込管104に接続される。
【0004】
また、上記のように曲り管104bを鞘管101内の敷設済の持込管104に接続する際、図34に示すように、曲り管104bを管軸心周りに回転させて所定の向きにした状態で、曲り管104bを敷設済の持込管104に接続する場合がある。
【0005】
この際、2台の巻取機107,108(例えばレバーブロック(登録商標)等)の一方のフック107a,108aをセグメント109の主桁110に形成されたボルト穴(図示省略)に引っ掛けて、両巻取機107,108を鞘管101の天井部から鞘管101と曲り管104bとの間に吊り下げる。そして、ワイヤー112を、下方から曲り管104bに巻付け、両巻取機107,108のチェーン107b,108bの先端の他方のフック107c,108c間に接続する。
【0006】
そして、両巻取機107,108を操作して、一方の巻取機107のチェーン107bを少しずつ巻き取るとともに、他方の巻取機108のチェーン108bを少しずつ送り出すことにより、曲り管104bを一方向Dへ少しずつ回転させることができる。
【0007】
尚、上記のような非開削工法については例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3725962号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記の従来形式では、図33に示すように、曲り管104bを台車105で運搬する際、曲り管104bの両端部を台車105の前後方向(走行方向)に向け、曲り管104bの曲りの内周側114を台車105の左右一側部に向け、曲り管104bの曲りの外周側115を台車105の左右他側部に向けた横倒姿勢で、曲り管104bを台車105に載せている。従って、台車105に載せられた曲り管104bの左右方向における幅寸法Wが曲り管104bの外径寸法よりも増大し、台車105が鞘管101の湾曲経路部103を通過する際、曲り管104bの端部が鞘管101の内周面に当接して、曲り管104bや鞘管101が傷付くといった問題がある。
【0010】
また、非開削工法では、鞘管101の口径をできるだけ小さくした方が、シールドマシンによる掘削作業による掘削土量が減少し、埋め立て等に利用するために他所へ運搬する労力やコスト等の負担が減少し、環境にやさしいといったメリットがあるが、その反面、鞘管101の口径を小さくすると、上記のように曲り管104bを回転させる場合、図34に示すように、鞘管101の内周面と曲り管104bの外周面との間に、両巻取機107,108を吊り下げるための十分な広さの吊下げスペース116を確保することが難しくなる。このため、鞘管101の口径を小型化することが困難であるといった問題がある。
【0011】
本発明は、曲り管を台車で運搬している際、曲り管や鞘管が傷付くのを防止することができ、また、鞘管の口径を小型化することが可能な管路敷設方法および回転用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本第1発明は、湾曲経路部を有する鞘管内に、複数の持込管を搬入して台車で運搬し、これら持込管同士を接続して、湾曲経路部を有する本管路を鞘管内に敷設する管路敷設方法であって、
持込管が曲り管である場合、曲りの外周側を下向きにした運搬姿勢で曲り管を台車上に載せて運搬し、
既に鞘管内に敷設された敷設済の持込管に、曲り管を、運搬姿勢から所定の向きにまで回転して接続するものである。
【0013】
これによると、曲りの外周側を下向きにした運搬姿勢で曲り管を台車上に載せて運搬するため、台車に載せられた曲り管の左右方向における幅寸法が曲り管の外径寸法よりも増大することはない。従って、台車が鞘管の湾曲経路部を通過する際、曲り管の端部が鞘管の内周面に当接して曲り管や鞘管が傷付くのを防止することができる。
【0014】
本第2発明における管路敷設方法は、曲り管を回転させる行程と、敷設済の持込管の軸心に対する曲り管の軸心のずれを補正する行程とを繰り返した後、曲り管を敷設済の持込管に接続するものである。
【0015】
これによると、曲り管が、所定の向きで、敷設済の持込管に、ずれることなく接続される。
本第3発明における管路敷設方法は、敷設済の持込管の端部内に第一回転用治具を取付け、
敷設済の持込管の端部に接続される曲り管の一端部内に、第二回転用治具を取付けて第一回転用治具に対向させ、
伸縮自在な連結部材を第一回転用治具と第二回転用治具との間に着脱自在に接続し、
連結部材を伸縮させる一端部伸縮行程と、連結部材と第一回転用治具との接続位置および連結部材と第二回転用治具との接続位置を変更する一端部付替え行程とを交互に行うことで、曲り管を運搬姿勢から所定の向きに回転させて敷設済の持込管に接続するものである。
【0016】
これによると、一端部伸縮行程と一端部付替え行程とを交互に行うことにより、曲り管を一方向へ回転させ、さらに、敷設済の持込管に対する曲り管の位置ずれを補正することができる。
【0017】
また、第一および第二回転用治具は敷設済の持込管の端部内および曲り管の一端部内に取付けられるため、鞘管の内周面と曲り管の外周面との間のスペースを縮小することができ、鞘管の口径を小型化することが可能である。
【0018】
本第4発明における管路敷設方法は、曲り管の回転中心が二本の連結部材間に位置するように、これら両連結部材を並列にした状態で第一回転用治具と第二回転用治具との間に接続し、
一端部伸縮行程において、いずれか片方の連結部材を短縮させ、もう片方の連結部材を伸長させて、曲り管を回転させるものである。
【0019】
本第5発明における管路敷設方法は、二本の連結部材を、交差した状態で、第一回転用治具と第二回転用治具との間に接続し、
一端部伸縮行程において、いずれか片方の連結部材を短縮させ、もう片方の連結部材を伸長させて、曲り管を回転させるものである。
【0020】
本第6発明における管路敷設方法は、曲り管の他端部内に第三回転用治具を取付け、
伸縮自在な連結部材を第三回転用治具と鞘管の内側との間に着脱自在に接続し、
連結部材を伸縮させる他端部伸縮行程と、連結部材と第三回転用治具との接続位置および連結部材と鞘管の内側との接続位置を変更する他端部付替え行程とを、一端部伸縮および付替え行程と同期して、交互に行うことで、曲り管を運搬姿勢から所定の向きに回転させるものである。
【0021】
これによると、一端部伸縮行程と一端部付替え行程とを交互に行うと共に、これらの行程に同期して、他端部伸縮行程と他端部付替え行程とを交互に行うことにより、曲り管の両端部において曲り管を回転するとともに、敷設済の持込管に対する曲り管の位置ずれを補正することができる。
【0022】
本第7発明は、上記第1発明から第6発明のいずれか1項に記載の管路敷設方法に使用される回転用治具であり、
フレーム体が管の端部内に着脱自在に嵌め込まれ、
連結部材の端部を着脱自在に接続可能な接続部が管周方向におけるフレーム体の複数箇所に形成されているものである。
【0023】
これによると、連結部材の端部をフレーム体の接続部に接続し、連結部材を伸縮させることにより、伸縮行程を行うことができる。また、連結部材の端部をフレーム体の接続部から取り外して別の接続部に接続することにより、付替え行程を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によると、曲り管を台車で運搬している際、曲り管や鞘管が傷付くのを防止することができ、また、鞘管の口径を小型化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第一の実施の形態における管路敷設方法によって敷設された管路を側方から見た図である。
図2】同、管路の湾曲経路部を上方から見た概略図である。
図3】同、鞘管を構成するセグメントの斜視図である。
図4】同、管路敷設方法において使用される台車の正面図であり、持込管を運搬している状態を示す。
図5】同、管路敷設方法において使用される台車の側面図であり、曲り管(持込管)を運搬している状態を示す。
図6】同、管路敷設方法において使用される回転用治具の正面図であり、持込管の端部内に取付けられた状態を示す。
図7】同、管路敷設方法において使用される回転用治具の側面図であり、持込管の端部内に取付けられた状態を示す。
図8】同、管路敷設方法において、第一〜第三回転用治具と連結部材とを用いて、曲り管を回転させる方法を示す側面図である。
図9】同、管路敷設方法において、第一〜第三回転用治具と連結部材とを用いて、曲り管を回転させる方法を示す概略斜視図である。
図10】同、管路敷設方法において、曲り管を台車に載せて運搬している際の平面図である。
図11】同、管路敷設方法において、曲り管を回転させる行程を説明する概略図であって、図8におけるX−X矢視図である。
図12】同、管路敷設方法において、曲り管を回転させる行程を説明する概略図である。
図13】同、管路敷設方法において、曲り管のずれを補正する行程を説明する概略図である。
図14】同、管路敷設方法において、曲り管のずれを補正した後の概略図である。
図15】同、管路敷設方法において、曲り管を回転させる行程を説明する概略図である。
図16】同、管路敷設方法において、曲り管のずれを補正する行程を説明する概略図である。
図17】同、管路敷設方法において、曲り管のずれを補正した後の概略図である。
図18】同、管路敷設方法において、曲り管を回転させる行程を説明する概略図である。
図19】同、管路敷設方法において、曲り管のずれを補正する行程を説明する概略図である。
図20】同、管路敷設方法において、曲り管のずれを補正した後の概略図であり、曲り管を接続姿勢まで回転した状態を示す。
図21】同、管路敷設方法において、接続姿勢まで回転した曲り管を敷設済の持込管に接続する行程を示す平面図である。
図22】本発明の第二の実施の形態における管路敷設方法において、曲り管を回転させる行程を説明する概略図である。
図23】同、管路敷設方法において、曲り管を回転させる行程を説明する概略図である。
図24】同、管路敷設方法において、曲り管のずれを補正する行程を説明する概略図である。
図25】同、管路敷設方法において、曲り管のずれを補正した後の概略図である。
図26】同、管路敷設方法において、曲り管を回転させる行程を説明する概略図である。
図27】同、管路敷設方法において、曲り管のずれを補正する行程を説明する概略図である。
図28】同、管路敷設方法において、曲り管のずれを補正した後の概略図である。
図29】同、管路敷設方法において、曲り管を回転させる行程を説明する概略図である。
図30】同、管路敷設方法において、曲り管のずれを補正する行程を説明する概略図である。
図31】同、管路敷設方法において、曲り管のずれを補正した後の概略図であり、曲り管を接続姿勢まで回転した状態を示す。
図32】本発明の第一および第二の実施の形態における管路敷設方法において、曲り管に回転トルクを発生させるための条件を説明するための模式図である。
図33】従来の管路敷設方法において、曲り管を台車に載せて運搬している際の平面図である。
図34】同、管路敷設方法において、曲り管を回転させる方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第一の実施の形態)
第一の実施の形態では、図1に示すように、鞘管1は、複数のセグメント2を接続して形成されており、地中に埋設されている。図3に示すように、各セグメント2は、円弧状に湾曲した外板部4と、一対の主桁5と、一対の継手板6と、複数の補強部材8とを有している。主桁5は、内フランジ形状を有し、鞘管1の管長方向Aにおける外板部4の両端部に、内側へ突出して設けられている。複数のセグメント2の主桁5同士をボルト,ナット等で連結することにより、図8に示すように、複数のセグメント2が管長方向Aにおいて接続される。尚、主桁5には、複数のボルト孔7が周方向において所定間隔おきに形成されている。
【0027】
継手板6は、鞘管1の周方向Bにおける外板部4の両側端部に、内側へ突出して設けられている。複数のセグメント2の継手板6同士をボルト,ナット等で連結することにより、図4に示すように、複数のセグメント2が周方向Bにおいて接続される。
【0028】
図1図2に示すように、鞘管1内には水道管等の本管路9が敷設され、鞘管1と本管路9とは左右いずれかに湾曲した湾曲経路部10を有している。本管路9は複数の持込管11を接続して形成されている。持込管11には、直管11aと曲り管11bとの二種類があり、曲り管11bは湾曲経路部10に設置される。これら直管11aおよび曲り管11bはそれぞれ、一端部に受口14を有し、他端部に挿口15を有している。尚、曲り管11bは、所定の曲率半径で円弧形状に湾曲した管であり、曲りの外周側16と曲りの内周側17とを有している。
【0029】
図4図5に示すように、鞘管1内には、持込管11を運搬する台車18が設けられている。台車18は、複数の車輪20を備えた車体21と、持込管11を受ける受け部22と、受け部22で受けられた持込管11を持上げるジャッキ装置24とを有しており、鞘管1内に敷設されたレール23上を走行可能である。
【0030】
図6図7に示すように、31〜33は、鞘管1内に本管路9を敷設する際、曲り管11bを回転させるために用いられる第一〜第三回転用治具である。これら第一〜第三回転用治具31〜33はそれぞれ、円環状のフレーム体35と、フレーム体35を径方向に伸縮させる伸縮手段34とを有している。
【0031】
フレーム体35は半円状の分割フレーム36,37に2分割されている。さらに、各分割フレーム36,37はそれぞれ、円弧状のフレーム片38a,38b,39a,39bに分割されている。各フレーム片38a,38b,39a,39bは溝形鋼材を円弧状に曲げ加工したものであり、各フレーム片38a,38b,39a,39bの外周面には、ゴム等の弾性材でできた保護部材48が設けられている。
【0032】
このうち、両フレーム片38a,38bがボルト,ナット等からなる継手40を介して接続され、これにより、一方の分割フレーム36が形成される。同様に、両フレーム片39a,39bが継手40を介して接続され、これにより、他方の分割フレーム37が形成される。
【0033】
伸縮手段34は、一方の分割フレーム36の周方向における両端部および他方の分割フレーム37の周方向における両端部にそれぞれ設けられた端部プレート41,42と、相対向する一方の分割フレーム36の端部プレート41と他方の分割フレーム37の端部プレート42とを連結する複数のボルト43,ナット44とを有している。ボルト43を回すことにより、一方の端部プレート41と他方の端部プレート42との間隔が拡縮され、フレーム体35の直径が一方向Cにおいて伸縮可能となる。尚、フレーム体35には、複数の接続孔47(接続部の一例)が周方向Bにおける複数箇所に形成されている。
【0034】
図8図9に示すように、51,52は、曲り管11bを回転させる際に、第一〜第三回転用治具31〜33と共に用いられる伸縮自在な連結部材である。これら連結部材51,52はそれぞれ、両端部にフック51a,51b,52a,52bを備えたチェン51c,52cと、チェン51c,52cを巻上げ又は送り出すことによりチェン51c,52cの両端部間の長さを伸縮させる巻取機51d,52d(例えばレバーブロック(登録商標)等)とを有している。
【0035】
以下、上記構成における作用を説明する。
非開削工法を用いた管路敷設方法として、先ず、小型のシールドマシンを用いて地中にトンネルを掘削しながら、図1に示すように、トンネル内で、複数のセグメント2の主桁5同士および継手板6同士を接続して鞘管1を形成する。その後、鞘管1内にレール23を敷設し、レール23上に台車18を配置し、複数の持込管11を鞘管1内に搬入して台車18で運搬し、これら持込管11同士を接続して、本管路9を敷設する。
【0036】
図5に示すように、持込管11を台車18で運搬する際、持込管11が曲り管11bであれば、曲りの内周側17を上向きにすると共に曲りの外周側16を下向きにした運搬姿勢で、曲り管11bを台車18の受け部22に載せて運搬する。尚、この際、曲り管11bが台車18上で不用意に転がらないように、曲り管11bを固定用ワイヤー等で台車18に固定しておく。
【0037】
これにより、図10に示すように、台車18に載せられた曲り管11bの左右方向における幅寸法Wが曲り管11bの外径寸法よりも増大することはなく、従って、台車18が鞘管1の湾曲経路部10を通過する際、曲り管11bの端部が鞘管1の内周面に当接して曲り管11bや鞘管1が傷付くのを防止することができる。
【0038】
このようにして曲り管11bを台車18で鞘管1内の所定場所まで運搬した後、既に鞘管1内で接続され敷設された敷設済の持込管11に、曲り管11bを、運搬姿勢から接続姿勢(所定の向きの一例)にまで回転して接続する。尚、この場合、接続姿勢とは、曲り管11bを運搬姿勢から90°回転させて、図2に示すように、曲りの外周側16が左右いずれか一側方へ向くと共に曲りの内周側17が他側方へ向く姿勢である。
【0039】
上記のように曲り管11bを回転させる作業は、第一〜第三回転用治具31〜33と連結部材51,52とを用いて以下のような方法で行う。
図6図7に示すように、第一回転用治具31の伸縮手段46のボルト43を回して、両方の端部プレート41,42の間隔を短縮し、フレーム体35の直径を一方向Cにおいて縮小する。この状態で、第一回転用治具31を敷設済の持込管11の先端部内に嵌め込み、上記ボルト43を逆に回して、両方の端部プレート41,42の間隔を拡張し、フレーム体35の直径を一方向Cにおいて拡大する。
【0040】
これにより、フレーム体35が保護部材48を介して敷設済の持込管11の先端部の内周面に押圧され、第一回転用治具31が強固に敷設済の持込管11の先端部内に取り付けられる。
【0041】
さらに、上記と同様にして、図8に示すように、第二回転用治具32を曲り管11bの一端部内に取り付け、第三回転用治具33を曲り管11bの他端部内に取り付ける。その後、固定用ワイヤーを台車18から外し、台車18のジャッキ装置24で曲り管11bを持上げ、曲り管11bの下方に支持部材55を挿入し、ジャッキ装置24で曲り管11bを支持部材55上に下ろし、台車18を曲り管11bの下方から手前に抜き取る。これにより、曲り管11bが、支持部材55で支持され、敷設済の持込管11の先端部に対向して配置される。
【0042】
図8図9に示すように、曲り管11bの一端部側S1において、一方の連結部材51の一方のフック51aを第一回転用治具31の上位の接続孔47に引っ掛けると共に、他方のフック51bを第二回転用治具32の下位の接続孔47に引っ掛け、同様に、他方の連結部材52の一方のフック52aを第一回転用治具31の上位の接続孔47に引っ掛けると共に、他方のフック52bを第二回転用治具32の下位の接続孔47に引っ掛けて、両連結部材51,52を第一回転用治具31の上部と第二回転用治具32の下部との間に接続する。この際、図11に示すように、曲り管11bの回転中心Oが両連結部材51,52間に位置するように、両連結部材51,52を、並列にした状態で、第一および第二回転用治具31,32間に着脱自在に接続する。
【0043】
また、図8図9に示すように、曲り管11bの他端部側S2において、別の一方の連結部材51の一方のフック51aを鞘管1のセグメント2の主桁5の上位のボルト孔7(図3図4参照)に引っ掛けると共に、他方のフック51bを第三回転用治具33の下位の接続孔47に引っ掛け、同様に、別の他方の連結部材52の一方のフック52aを鞘管1のセグメント2の主桁5の上位のボルト孔7に引っ掛けると共に、他方のフック52bを第三回転用治具33の下位の接続孔47に引っ掛けて、別の両連結部材51,52を第三回転用治具33と鞘管1の内側との間に接続する。この際、曲り管11bの回転中心Oが両連結部材51,52間に位置するように、両連結部材51,52を、並列にした状態で、第三回転用治具33の下部と鞘管1の内側上部との間に着脱自在に接続する。
【0044】
その後、曲り管11bの一端部側S1において、連結部材51,52の巻取機51d,52dを操作して、図12に示すように、一方の連結部材51のチェン51cの両端部間の長さを短縮し、他方の連結部材52のチェン52cの両端部間の長さを伸長する。これにより、第二回転用治具32に一方向Dの回転トルクが発生する。尚、このように、曲り管11bの一端部側S1において連結部材51,52を伸縮する行程を一端部伸縮行程と記載する。
【0045】
同様に、曲り管11bの他端部側S2においても、別の連結部材51,52の巻取機51d,52dを操作して、一方の連結部材51のチェン51cの両端部間の長さを短縮し、他方の連結部材52のチェン52cの両端部間の長さを伸長する。これにより、第三回転用治具33に一方向Dの回転トルクが発生する。尚、このように、曲り管11bの他端部側S2において別の連結部材51,52を伸縮する行程を他端部伸縮行程と記載する。
【0046】
上記のような一端部伸縮行程と他端部伸縮行程とを同期して行うことにより、曲り管11bの両端部に一方向Dの回転トルクが発生し、曲り管11bを運搬姿勢から一方向Dに所定角度α(例えば図12では約30°)回転させることができる。
【0047】
上記のように曲り管11bを回転させた際、図12に示すように、敷設済の持込管11の軸心に対する曲り管11bの軸心が左右にずれた状態になるため、第一回転用治具31に対して第二回転用治具32が左右にずれ、同様に、セグメント2の主桁5に対して第三転用治具33が左右にずれる。これに対して、曲り管11bの一端部側S1において、各連結部材51,52のフック51a,51b,52a,52bを接続孔47から外して別の接続孔47に引っ掛け、図13に示すように、連結部材51,52の一端部と第一回転用治具31との接続位置および連結部材51,52の他端部と第二回転用治具32との接続位置を変更する。尚、この行程を一端部付替え行程と記載する。
【0048】
同様に、曲り管11bの他端部側S2において、別の連結部材51,52の一端部とセグメント2の主桁5との接続位置および連結部材51,52の他端部と第三転用治具33との接続位置を変更する。尚、この行程を他端部付替え行程と記載する。
【0049】
上記のような一端部付替え行程と他端部付替え行程とを同期して行った後、図14に示すように、一方の連結部材51のチェン51cの長さはそのままで、他方の連結部材52のチェン52cの長さを短縮することにより、第二回転用治具32が第一回転用治具31に対して左右に変移すると共に、第三転用治具33がセグメント2の主桁5に対して左右に変移し、これにより、敷設済の持込管11に対して曲り管11bが左右に変移して、敷設済の持込管11に対する曲り管11bの左右のずれを補正することができる。これにより、曲り管11bは、左右のずれが補正された状態で、運搬姿勢から回転軸心周りに所定角度α(例えば図14では30°)回転された姿勢になる。
【0050】
その後、さらに、図15に示すように、上記のような一端部伸縮行程と他端部伸縮行程とを同期して行うことにより、曲り管11bの両端部に一方向Dの回転トルクが発生し、曲り管11bを一方向Dに所定角度α(例えば図15では運搬姿勢から約60°)回転させる。
【0051】
その後、さらに、図16に示すように、上記のような一端部付替え行程と他端部付替え行程とを同期して行った後、図17に示すように、一方の連結部材51のチェン51cの長さはそのままで、他方の連結部材52のチェン52cの長さを短縮することにより、曲り管11bを左右に変移させて、敷設済の持込管11に対する曲り管11bの左右のずれを補正する。これにより、曲り管11bは、左右のずれが補正された状態で、運搬姿勢から回転軸心周りに所定角度α(例えば図17では60°)回転された姿勢になる。
【0052】
その後、さらに、図18に示すように、上記のような一端部伸縮行程と他端部伸縮行程とを同期して行い、その後、図19に示すように、上記のような一端部付替え行程と他端部付替え行程とを同期して行った後、図20に示すように、一方および他方の連結部材51,52のチェン51c,52cの長さを短縮することにより、曲り管11bは、左右のずれが補正された状態で、運搬姿勢から回転軸心周りに回転された接続姿勢になる。尚、この場合、曲り管11bの接続姿勢は運搬姿勢から一方向Dへ90°回転した姿勢であるが、90°に限定されるものではなく、90°以外の回転角度であってもよい。
【0053】
上記のように、一端部伸縮行程と他端部伸縮行程とを同期して行い、その後、上記のような一端部付替え行程と他端部付替え行程とを同期して行って、曲り管11bを回転させる行程と曲り管11bのずれを補正する行程とを繰り返し、曲り管11bを、運搬姿勢から接続姿勢に向き変更した状態で、敷設済の持込管11に接続する。
【0054】
この際、図21に示すように、曲り管11bの一端部側S1における両連結部材51,52の他方のフック51b,52bを、第二回転用治具32の接続孔47から外し、他方のフック51b,52bにそれぞれ引込用ワイヤー56を接続し、引込用ワイヤー56の先端にそれぞれ設けられた係止部材57を曲り管11bの他端部(受口14の開口端部)に係止する。その後、両連結部材51,52の巻取機51d,52dを操作して、チェン51c,52cの両端部間の長さを短縮することにより、曲り管11bが引き込まれて敷設済の持込管11に挿入されて接続される。
【0055】
上記のような管路敷設方法では、図8に示すように、第一回転用治具31が敷設済の持込管11の先端部内に取り付けられ、第二および第三回転用治具32,33が曲り管11bの両端部内に取付けられるため、鞘管1の内周面と曲り管11bの外周面との間のスペース58を縮小することができ、鞘管1の口径を小型化することが可能である。
【0056】
(第二の実施の形態)
第二の実施の形態では、図22に示すように、曲り管11bの一端部側S1において、二本の連結部材51,52を、交差した状態で、第一回転用治具31と第二回転用治具32との間に接続する。また、曲り管11bの他端部側S2において、別の二本の連結部材51,52を、交差した状態で、第三回転用治具33とセグメント2の主桁5との間に接続する。
【0057】
その後、第一の実施の形態と同様に、一端部伸縮行程(図23図26図29参照)と他端部伸縮行程とを同期して行い、その後、上記のような一端部付替え行程(図24図27図30参照)と他端部付替え行程とを同期して行って、曲り管11bを回転させる行程と曲り管11bのずれを補正する行程とを繰り返し、図31に示すように、曲り管11bを運搬姿勢から接続姿勢に向き変更し、接続姿勢の曲り管11bを敷設済の持込管11に接続する。
【0058】
尚、本第一および第二の実施の形態において、図32(a)(b)に示すように、曲り管11bの回転中心Oを通る軸心60と一方の連結部材51又は他方の連結部材52とが同一平面61上にあると、曲り管11bに回転トルクが発生せず、曲り管11bを回転させることができない。従って、曲り管11bに回転トルクを発生させるためには、上記軸心60と一方の連結部材51又は他方の連結部材52とが同一平面61上に含まれないように、連結部材51,52を第一および第二回転用治具31,32に接続する必要がある。尚、連結部材51,52が曲り管11bの回転中心O上を通る場合も同一平面上にある。このような場合には、一方の連結部材51の両端部および他方の連結部材52の両端部をそれぞれ周方向Bにおいてずらして、連結部材51,52を第一および第二回転用治具31,32に接続する必要がある。
【0059】
上記第一および第二の実施の形態では、図8に示すように、曲り管11bの他端部内に第三回転用治具33を取付けて、曲り管11bの一端部側S1と他端部側S2とにおいて曲り管11bを回転させているが、特に、曲り管11bが小型である場合等では、第三回転用治具33を使用せず、曲り管11bの一端部側S1のみで曲り管11bを回転させてもよい。
【0060】
上記第一および第二の実施の形態では、曲り管11bを運搬姿勢から接続姿勢に回転させる際、30°ずつ3回に分けて回転作業を行っているが、一回当りの回転作業における回転角度は30°以外でもよく、また、回転作業を3回以外の複数回に分けて行ってもよく、或は一回で行ってもよい。
【0061】
上記第一および第二の実施の形態では、図8図9に示すように、連結部材51,52はそれぞれ、チェン51c,52c(線材の一例)と、チェン51c,52cを巻上げ又は送り出すことによりチェン51c,52cの両端部間の長さを伸縮させる巻取機51d,52dとを有しているが、チェン51c,52cの代りに、ワイヤー等を用いてもよい。また、チェン51c,52cの代りに、伸縮自在な棒材を有し、巻取機51d,52dの代わりに、棒材を伸縮させるシリンダ装置等を有する連結部材51,52を用いてもよい。この場合も、曲り管11bに回転トルクを発生させるためには、上記軸心60と一方の連結部材51又は他方の連結部材52とが同一平面61上に含まれないように、連結部材51,52を第一および第二回転用治具31,32に接続する必要がある。
【符号の説明】
【0062】
1 鞘管
9 本管路
10 湾曲経路部
11 持込管
11b 曲り管
16 曲りの外周側
18 台車
31〜33 第一〜第三回転用治具
35 フレーム体
47 接続孔(接続部)
51,52 連結部材
B 周方向
O 回転中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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