特許第6071611号(P6071611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6071611オリエンテーションフラット等切り欠き部を有する、結晶材料から成るウエハの周縁を、研磨テープを使用して研磨することにより円形ウエハを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071611
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】オリエンテーションフラット等切り欠き部を有する、結晶材料から成るウエハの周縁を、研磨テープを使用して研磨することにより円形ウエハを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/00 20060101AFI20170123BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   B24B9/00 601G
   H01L21/304 621E
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-25344(P2013-25344)
(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公開番号】特開2014-151418(P2014-151418A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037165
【氏名又は名称】Mipox株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096725
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 明▲ひこ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100119231
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100171697
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 尚子
(72)【発明者】
【氏名】山口 直宏
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−537317(JP,A)
【文献】 特開2007−000945(JP,A)
【文献】 特開平05−217830(JP,A)
【文献】 米国特許第04638601(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/00
B24B 21/16
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶材料から成る円板状のウエハの周縁であって、オリエンテーションフラットと周囲部とを有する周縁を、研磨テープを使用して研磨することにより円形ウエハを製造する方法であって、
鉛直な回転軸を有する水平なウエハステージにセンタリングして配置されたウエハの周囲部と研磨体とを当接させながら前記ウエハステージを所定の回転角度の範囲で前記回転軸の周りに交互に正回転及び逆回転させることによりウエハの周囲部を研磨する工程を含み、
前記研磨体が、平坦な研磨パッドに配置されることにより平坦な研磨面を画成する研磨テープを含んで成り、
前記周囲部を研磨する工程において、前記研磨面がウエハの半径方向に垂直に前記周囲部に当接し、
前記所定の回転角度が、前記オリエンテーションフラットと前記研磨面とが対向して平行になることがないように、180度より大きく360度より小さい角度θに決定される、円形ウエハの製造方法。円形ウエハの製造方法。
【請求項2】
前記所定の回転角度が、前記円板状のウエハのオリエンテーションフラットの両端部、又はその近傍の周囲部にそれぞれ位置する二点と、前記円板状のウエハの中心とによって画成される角度θに決定されることを特徴とする請求項1に記載された円形ウエハの製造方法。
【請求項3】
前記周囲部を研磨する工程により形成されたウエハのオリエンテーションフラット近傍の周囲部の一部が直線状となるとき、さらに、前記形成されたウエハのオリエンテーションフラットと前記研磨面とを当接させ水平な軸線に沿って直線的に相対揺動させることにより前記オリエンテーションフラットを研磨する工程を含む、請求項に記載された円形ウエハの製造方法。
【請求項4】
前記周囲部を研磨する工程で、前記ウエハステージを、形成されるウエハの周囲部全体が円弧状となる回転角度の範囲において正回転及び逆回転させることを特徴とする請求項1に記載された円形ウエハの製造方法。
【請求項5】
前記ウエハが半導体ウエハであることを特徴とする請求項1に記載された円形ウエハの製造方法。
【請求項6】
前記周囲部を研磨する工程において、前記研磨面が弾性を有する研磨パッドを介して前記ウエハの周囲部に押圧され、前記研磨面が前記ウエハの周縁から離れることがないことを特徴とする請求項1に記載された円形ウエハの製造方法。
【請求項7】
前記周囲部を研磨する工程において、前記ウエハステージと前記研磨面とを水平な軸線に沿って相対揺動させることを特徴とする請求項1に記載された円形ウエハの製造方法。
【請求項8】
さらに、前記周囲部を研磨する工程により形成されたウエハの半径を該ウエハの周囲部に沿って測定し、該測定された半径のうちの最小半径以下の半径を設定し、該設定された半径と前記測定された半径との差であるΔrを前記形成されたウエハの周囲部に沿って決定する工程と、
前記Δrが所定の値より大きい周囲部の部分に対応する角度θpであって、前記所定の回転角度の範囲内の角度θpを決定する工程と、を含む請求項1に記載された円形ウエハの製造方法。
【請求項9】
前記ウエハステージにセンタリングして配置された結晶材料から成るウエハの周囲部と前記研磨体とを当接させながら、前記ウエハステージを、前記所定の回転角度の範囲において、基準の回転速度で、前記回転軸の周りに正回転及び逆回転させることにより前記ウエハの周囲部を研磨する工程を含み、
該研磨する工程において、前記ウエハステージと前記研磨面とを水平な軸線に沿って相対揺動させ、
前記決定された周囲部の部分に対応する角度θpで、前記ウエハステージの回転速度が前記基準の回転速度より低減される、請求項8に記載された円形ウエハの製造方法。
【請求項10】
前記ウエハステージにセンタリングして配置された結晶材料から成るウエハの前記決定された角度θpに対応する周囲部の部分と前記研磨体とを当接させ、前記ウエハステージを、前記決定された角度θpの範囲で前記回転軸の周りに正回転及び逆回転させて前記周囲部の部分を研磨する工程を含む、請求項8に記載された円形ウエハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶材料から成るウエハの周縁を研磨する方法に関し、特に、研磨テープを使用してウエハ周縁を研磨することにより、ウエハの周縁に高精度な表面性状を形成するとともに、ハンドリング性が向上した円形ウエハを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、MEMS等の製造に使用される各種ウエハは、近年、回路素子の高密度化や薄化等に伴い、ウエハ厚が1mmないし数十μmと薄くなる傾向にある。インゴットから切り出されたウエハは、ベベル部、エッジ部等の周縁を面取りされ、主面を鏡面に研磨されるが、ウエハの薄化に伴って微細なチッピング(欠け)やチッピングに起因したウエハの割れ等が発生しやすくなっている。このため、半導体等の製造における歩留まりを向上するために、ウエハの周縁の加工状態が重要になっている。
【0003】
従来、半導体集積回路の高集積化に適したウエハの面取り部の加工方法等が提案された(特開平10―100050号公報:特許文献1)。該加工方法は、円筒状あるいは円柱状の砥石と、面取り部がオリエンテーションフラット(以下適宜、OF)部、外周部及び角部で構成されたウエハとを互いに回転させながら所定の押付力で押接させ、軟研削位置がOF部、外周部、角部かに応じてウエハの回転速度を変えつつ、ウエハのOF部、外周部及び角部をそれぞれ軟研削するようにした後に、ウエハのOF部、外周部及び角部をそれぞれ研磨するようにし、面取り部全体に亘って均一な軟研削をするものであった。
【0004】
また、従来、研磨テープを使用して、半導体ウエハのノッチとベベルを研磨するための装置及び方法が提案された(特開2006―303112公報:特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−100050号公報
【特許文献2】特開2006―303112公報
【特許文献3】特許第4463326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
劈開性が強い結晶材料から成るウエハの面取り加工に砥石を使用すると、機械的衝撃が大きいために割れや欠けを生じやすく面取り部の加工状態が不十分であり、ウエハの主面を鏡面研磨する際に、面取り部のチッピング等に起因して割れが発生しやすいという問題があった。
【0007】
研磨テープを使用してウエハの周縁を研磨することにより、エッジ部等の視認できない微小なチッピングまで取り除くことができ、高精度な面取り加工を行うことができた。しかしながら、従来の研磨テープを使用した研磨方法では、OFの一方の端部(円弧状部とOFとの境界)周辺にダレを生じやすく、また、ウエハの結晶方位や結晶面等により研磨レートに差異を生じ、ウエハの真円度が低下するという問題があった。特に、軟質な化合物材料等から成るウエハの周縁を研磨テープで研磨するとウエハの外径が不均一になりやすく、その後の製造工程においてウエハのセンタリングの精度が低下するなど、加工仕様を十分に満たさない恐れがあった。
【0008】
上記の問題に鑑みて、本発明は、結晶方位を示すオリエンテーションフラット(OF)やノッチを有する円板状のウエハであって結晶材料からなるウエハの周縁を、ウエハの真円度を低下させることなく研磨テープを使用して高精度に研磨加工し、加工仕様を十分に満たす円形ウエハを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一つの実施形態は、結晶材料から成る円板状のウエハであって、オリエンテーションフラットと周囲部とを有するウエハの周縁を、研磨テープを使用して研磨することにより円形ウエハを製造する方法であって、鉛直な回転軸を有する水平なウエハステージにセンタリングして配置されたウエハの周囲部と研磨体とを当接させながらウエハステージを回転させることにより周囲部を研磨する一次研磨工程と、一次研磨されたウエハの半径を周囲部に沿って測定し、該測定された半径のうちの最小半径以下の半径を設定し、該設定された半径と測定されたウエハの半径との差であるΔrを周囲部に沿って決定する工程と、Δrが所定の値より大きい一次研磨されたウエハの周囲部の部分を決定する工程と、一次研磨されたウエハの周囲部と研磨体とを当接させ、ウエハステージを所定の回転角度の範囲において回転軸の周りに正回転及び逆回転させることにより一次研磨されたウエハの周囲部を研磨する二次研磨工程と、を含み、研磨体が、平坦な研磨パッドに配置されることにより平坦な研磨面を画成する研磨テープを含んで成り、二次研磨工程において、オリエンテーションフラットと研磨面とが平行になることがなく、ウエハステージと研磨面とを水平な軸線に沿って相対揺動させ、ウエハステージの正回転又は逆回転の速度を、決定されたウエハの周囲部の部分に対応した回転角度の範囲で低下させる、ことを特徴とする。
【0010】
上記のようにOFと周囲部とを有するウエハの周縁を研磨することにより、ウエハの周囲部の結晶方位等に起因する研磨レートのバラツキを十分に小さくすることができ、また、ウエハを正逆回転させながら研磨が行われるので、研磨体とウエハの周縁との間欠的な接触が防止され、均一な研磨加工を行うことができる。ウエハを正逆回転させる研磨は、少なくとも二次研磨工程において行われ、一次研磨工程、二次研磨工程を通して行われてもよい。
【0011】
ウエハは、シリコン(Si、SOI、単結晶、多結晶シリコン)、化合物(GaN、SiC、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSb、ZnS、ZnTe等)、酸化物(LiTaO3(LT)、LiNbO3(LN)、Ga2O3、MgO、ZnO、サファイア、水晶等)、ガラス(ソーダライム、無アルカリ、ホウケイ酸、クラウンガラス、珪酸(シリカ)、石英等)の材料から成るウエハであってよい。ウエハは、半導体ウエハであってよい。
【0012】
円形ウエハは、真円なウエハであってよい。または、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)等の業界団体により標準化されているウエハサイズに応じた許容範囲の誤差を有する円形であってもよく、その他規格、若しくはウエハサイズや材料等に応じた加工仕様を満たす範囲の誤差を有する円形であってもよい。
【0013】
少なくとも二次研磨工程において、ウエハステージを、ウエハの円弧状の周囲部の一部が直線状に研磨される回転角度の範囲において正回転及び逆回転させることが好ましい。このような回転角度は、OFの両端部とウエハの中心とによって画成される角度であり得る。または、OFの両端部近傍の周囲部に各々位置する二点とウエハの中心とによって画成させる角度であり得る。この場合、直線状に研磨された周囲部を取り除くために、さらに、オリエンテーションフラットと研磨面とを当接させ水平な軸線に沿って直線的に相対揺動させることによりオリエンテーションフラットを研磨することが好ましい。このようにすることで、十分な真円度を有する円形ウエハを得ることができる。
【0014】
上記のように形成される円形ウエハのOF長等は、SEMI等の規格や加工仕様を満たすことが好ましい。
【0015】
または、二次研磨工程で、ウエハステージを、ウエハの円弧状の周囲部全体が円弧状に研磨される回転角度の範囲において正回転及び逆回転させてもよい。この場合、適度な押圧力等により、研磨体とウエハ周縁との間欠的な接触が防止されることが好ましい。
【0016】
本発明に係る他の実施形態は、結晶材料から成る円板状のウエハであって、オリエンテーションフラットと周囲部とを有するウエハの周縁を、研磨テープを使用して研磨することにより円形ウエハを製造する方法であって、鉛直な回転軸を有する水平なウエハステージにセンタリングして配置されたウエハの周囲部と研磨体とを当接させ、ウエハステージを所定の回転角度の範囲において回転軸の周りに正回転及び逆回転させることによりウエハの周囲部を研磨する工程、を含み、研磨体が、平坦な研磨パッドに配置されることにより平坦な研磨面を画成する研磨テープを含んで成り、研磨する工程において、オリエンテーションフラットと研磨面とが平行になることがなく、ウエハステージと研磨面とを水平な軸線に沿って相対揺動させ、ウエハステージの正回転又は逆回転の速度を、ウエハの予め決定された周囲部の部分に対応した回転角度の範囲で低下させる、ことを特徴とする。
【0017】
ウエハの周囲部の部分は、例えば、一枚のウエハをテスト研磨することにより、上記のように設定された半径と測定された半径の差Δrに基づいて、予め決定されたものであってよい。このようにすることで、周縁の研磨レートのバラツキが結晶方位に起因する同一の結晶材料から成るウエハ(例えば、同一のインゴットから切り出されたウエハ)の一次研磨工程及び周囲部の部分を決定する工程を省略して効率的に円形ウエハを製造し得る。
【0018】
本発明のもう一つの実施形態は、結晶材料から成る円板状のウエハの円弧状の周縁を、研磨テープを使用して研磨することにより円形ウエハを製造する方法であって、ウエハの半径を円弧状の周縁に沿って測定し、該測定された半径のうちの最小半径以下の半径を設定し、該設定された半径と測定されたウエハの半径との差であるΔrを円弧状の周縁に沿って決定する工程と、Δrが所定の値より大きいウエハの周縁の部分を決定する工程と、鉛直な回転軸を有する水平なウエハステージにセンタリングして配置されたウエハの周縁の部分と研磨体とを当接させ、ウエハステージを周縁の部分に対応した回転角度の範囲において回転軸の周りに正回転及び逆回転させることにより周縁の部分を研磨する工程であって、研磨体が、平坦な研磨パッドに配置されることにより平坦な研磨面を画成する研磨テープを含んで成る、ところの研磨する工程、を含む。
【0019】
上記のようにすることで、所望の真円度を有する円形ウエハを製造することができる。
【0020】
本発明に係るさらに他の実施形態は、結晶材料から成る円板状のウエハであって、オリエンテーションフラットと周囲部とを有するウエハの周縁を、研磨テープを使用して研磨することにより円形ウエハを製造する方法であって、鉛直な回転軸を有する水平なウエハステージにセンタリングして配置されたウエハの周囲部と研磨体とを当接させながらウエハステージを所定の回転角度の範囲において正回転及び逆回転させることによりウエハの周囲部を研磨する工程、を含み、研磨体が、平坦な研磨パッドに配置されることにより平坦な研磨面を画成する研磨テープを含んで成り、研磨する工程において、オリエンテーションフラットと研磨面とが平行になることがない、ことを特徴とする。
【0021】
上記のようにすることで、OFの一方の端部周辺にダレを生じさせることなくウエハの周縁を研磨することができ、真円度の低下が抑制され、ハンドリング性に優れた円形ウエハを製造することができる。
【0022】
上記の研磨する工程において、ウエハステージを、ウエハの円弧状の周囲部の一部が直線状に研磨される回転角度の範囲において正回転及び逆回転させてよい。
【0023】
さらに、オリエンテーションフラットと研磨面とを当接させ水平な軸線に沿って直線的に相対揺動させることによりウエハのオリエンテーションフラットを研磨する工程を含むことが好ましい。このようにすることで、直線状に研磨された部分が取り除かれ、円形のウエハが製造される。
【0024】
あるいは、研磨する工程において、ウエハステージを、ウエハの円弧状の周囲部全体が円弧状に研磨される回転角度の範囲において正回転及び逆回転させてもよい。この場合、研磨面が弾性を有する研磨パッドを介してウエハの周縁に押圧され、研磨面がウエハの周縁から離れることがないことが好ましい。このようにすることで、研磨面と周縁との間欠的な接触による真円度の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る円形ウエハの製造方法によれば、ウエハのエッジ部、べベル部等の周縁を高精度に加工することができ、厚さ1mm以下の薄いウエハや化合物材料から成るウエハの割れを防止することができる。また、より真円に近い円形ウエハを得ることができるので、その後の工程の精度を向上させることができ、半導体デバイス等の製造工程における歩留まりを向上させ得る。さらに、本発明に係る円形ウエハの製造方法により、加工仕様に応じて、所望の真円度を有する円形ウエハを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1(A)はOFを有するウエハの平面図であり、図1(B)はウエハの周縁の断面図である。
図2図2はウエハ周縁研磨装置を模式的に示す正面図である。
図3図3は本発明に係る円形ウエハの製造方法を概念的に説明する図である。
図4A図4A(a)は本発明に係る正逆回転角度のひとつの実施形態を模式的に示す図であり、図4A(b)は図4A(a)の一部拡大図である。
図4B図4Bは本発明に係る正逆回転角度の他の実施形態を模式的に示す図である。
図4C図4Cは本発明に係る正逆回転角度のもう一つの他の実施形態を模式的に示す図である。
図5A図5Aはウエハの外径の形状及び真円度を示す図である。
図5B図5Bは比較例に係るウエハの外径の形状及び真円度を示す図である。
図5C図5Cは本発明の実施例に係るウエハの外径の形状及び真円度を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明のさまざまな特徴が、本発明の限定を意図するものではない好適な実施例とともに説明される。図面は説明の目的で単純化され、または強調され、尺度も必ずしも一致しない。
【0028】
図1(A)に、オリエンテーションフラットOFを有するウエハW、及びウエハWの周縁の少なくとも一部が研磨されて形成された円形ウエハW’が図示されている。ウエハWの周縁は、直線状のOF及び円弧状の周囲部Aから成り、直線状のOFと円弧状の周囲部Aとの境界が、OFの両端部E1及びE2である。同様に、ウエハW’の周縁は、直線状のOF及び円弧状の周囲部A’から成り、直線状のOFと円弧状の周囲部A’との境界が、OFの両端部E1’及びE2’である。ウエハW’は、概して、ウエハWよりやや小さい半径とやや小さいOF長とを有する。
【0029】
図1(B)に、ウエハW、W’の周縁の断面が模式的に示されている。インゴットから切り出されたウエハWは、ベベル部、エッジ部等の周縁に膜や残さ等のダメージを有しているため、該ダメージを取り除くために研磨される。研磨テープを使用して研磨することにより、ウエハの周縁をチッピングのない高精度な表面性状に仕上げることができる。半導体デバイス等が形成されるのは、ウエハWの径方向内側のr1部分であり、実際の製品とはならないウエハの周縁である径方向外側のr2部分(エッジ部、べベル部)は、研磨によって、周縁r2’に形成される。径方向の長さr2’はr2より小さく、ウエハW’の半径(r1+r2’)はウエハWの半径(r1+r2)よりもやや小さい。
【0030】
ウエハW’の周縁の断面形状は図示されたラウンド型(R型)の例に限定されず、テーパー型(T型)等であってもよく、ベベル部を除去しウエハの主面に垂直な面に形成されてもよい。その他、加工仕様に応じて所望のエッジ形状に形成さ得る。
【0031】
図2に、本発明に係る円形ウエハの製造方法に使用されるウエハ周縁研磨装置100が模式的に示されている。
【0032】
ウエハ周縁研磨装置100は研磨テープユニット10及びウエハユニット20を含む。
【0033】
研磨テープユニット10は、研磨テープTが配置される平坦な研磨パッド(コンタクトパッド)12を先端に取り付けたバックアップ加圧のためのエアシリンダ13と、ガイドローラ14、14’、研磨テープTを送り出し、巻き取るための供給リール16、巻取りリール17、及び補助ローラ18、18’を含む。研磨パッドに配置された研磨テープTは、平坦な研磨面Sを画成する。
【0034】
研磨パッド12は、図の表面から裏面に伸長する回動軸15により、回動可能に支持部材(図示せず)に取付けられている。研磨パッド12が回動することにより、研磨パッド12に配置された研磨テープT、すなわち、研磨面SがウエハWの周縁に所望の傾きで当接することができ、ウエハの周縁を所望の断面形状に研磨仕上げすることができる。
【0035】
上下のガイドローラ14、14’の間で、研磨テープTは鉛直方向に走行可能である。
【0036】
エアシリンダ13は、研磨パッド12を介して、調整された所定の押圧力Fを矢印の方向に加え研磨面SをウエハWの周縁に押し当てる。エアシリンダ13の押圧力F(バックアップ加圧力)の調整は、例えば、特許第4463326号公報(特許文献3)に記載されている装置構成により実施され得る。
【0037】
研磨テープTは、プラスチック製の基材フィルムの表面に樹脂バインダーに砥粒を分散させた溶液を塗布し、乾燥、硬化させたシートを必要幅にスリットし、リールに巻かれたものである。
【0038】
基材フィルムとして、柔軟性を有する合成樹脂製のプラスチックフィルムが使用される。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール又はメタクリルアルコールを主成分とするアクリル系樹脂等から成るフィルムが基材フィルムとして使用される。
【0039】
砥粒(研磨粒子)としては、アルミナ(Al2O3)、酸化セリウム(CeO2)、シリカ(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、酸化クロム(Cr2O3)、ジルコニア(ZrO2)、立方晶窒化ホウ素(cBN)等及びその混合物が使用できる。
【0040】
砥粒の平均粒径は、好適に、0.2μm以上(#20000)、3μm以下(#4000)の範囲にある。平均粒径が3μmを超えると、ウエハW周縁の仕上がり面に新たに微細な傷や欠けが発生し、結晶材料から成るウエハWに十分な強度を与えることができず好ましくない。平均粒径が0.2μm未満であると、研磨効率が極端に下がり生産性が悪くなるため、工業上、実用的ではない。
【0041】
研磨パッド12は、好適に、弾性を有する。研磨パッド12として、例えば、機械的衝撃を緩和するために、ショアA硬度が20ないし50の範囲の平坦な発泡樹脂板を使用することができる。または、研磨パッド12として、上記のような発泡樹脂板と、ショアA硬度が80ないし90の範囲にあるゴム板とを組み合わせたものを使用することもできる。砥粒径等に応じて研磨パッド12の弾性を適宜選択することで、平均粒径が極めて微細な(例えば、1μm以下)砥粒の研磨テープを使用しても、研磨速度をあまり遅くすることなく、高精度な表面性状をウエハの周縁に形成することができる。
【0042】
ウエハユニット20は、ウエハWを配置するための水平な上面を有するウエハステージ21を含み、ウエハステージ21は、回転軸線Csと同軸なシャフト22を介してモータ23に接続されている。モータ23は、好適に、エンコーダを有するサーボモータである。モータ23を駆動すると、ウエハステージ21がその中心すなわち回転軸線Csに関して回転する。
【0043】
ウエハステージ21は、好適に、真空吸着用のステージであり、配管を介して真空ポンプ(図示せず)に連通した1個又は複数個の吸引孔を設けた平坦な表面を有する。ウエハWは、弾力性のあるパッド等を介して、ステージ21上に載置され、真空吸着により固定される。
【0044】
ウエハステージ21に固定されたウエハWの周囲部と研磨体(研磨面S)とを当接させウエハステージ21を回転させることにより、周囲部の研磨が行われる。
【0045】
本発明の実施形態において、好適に、ウエハステージ21は、所定の回転角度の範囲で正逆回転を繰り返し、研磨加工中に一回転(360度)以上回転することがない。ウエハWが載置されるウエハステージ21の回転角度は、OFを有するウエハWの真円度を低下させることがないように決定される。
【0046】
好適に、制御装置30が、導線31によってモータ23に接続され、導線32によって光学センサ33に接続されている。
【0047】
光学センサ33は、ウエハの周縁について、ウエハの半径方向の位置を測定するものであり、投光部33a及び受光部33bを有する。
【0048】
投光部33aは、ウエハ半径方向に延び回転軸線Csに平行に進む帯状の平行光を投光する。受光部33bは、ウエハWを挟んで投光部33aに対向して配置される。投光部33aは、発光ダイオード素子または半導体レーザ素子から成ってよく、受光部33bは、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサから成ってよい。例えば、受光部33bは、多数の微細なフォトダイオードがウエハ半径方向に並び、投光部33aから投光された平行光を受光可能に構成されたものである。
【0049】
投光部33aから投光された光の一部は、ウエハWによって遮光される。また残りの一部は、ウエハWよりも半径方向外方を通過して受光部33bに入射する。ウエハWの周縁の位置が回転軸線Csに対して半径方向に近づくと、ウエハWによって遮光される光が少なくなり、受光部33bに入射する光の光量が大きくなる。またウエハWの周縁の位置が回転軸線Csに対して半径方向に遠ざかると、ウエハWによって遮光される光が多くなり、受光部33bに入射する光の光量が小さくなる。受光部33bは、投光部33aから入射する光量によって出力する電気量が変化する。受光部33bから出力される電気量に基づいて、光学センサ33に対向する部分における周縁の半径方向の位置が検出される。
【0050】
制御装置30は、光学センサ33及びモータ23から、ウエハWのオリエンテーションフラットOFの両端部E1、E2(図1(A))の位置のデータを得て、該データに基づいて、回転角度を決定することができる。例えば、両端部E1、E2とウエハWの中心Oとによって画成される角度をウエハステージ21の回転角度に決定することができる。あるいは、ウエハWの半径より小さい半径を有する円形ウエハW’のOFの両端部E1’、E2’の位置を決定し(図1(A))、該両端部E1’、E2’とウエハWの中心Oとによって画成される角度をウエハステージ21の回転角度に決定することができる。
【0051】
また、制御装置30は、光学センサ33に対向する部分における周縁の半径方向の位置によりウエハの周囲部に沿ってウエハの半径を決定し、ウエハの外形を決定することができる。
【0052】
好適に、ワークユニット20は、水平なベース34上に図の表面から裏面方向に伸長する直線レールを有するLMガイド36、及び図の表面から裏面方向に伸長する直線レールを有する単軸ロボット35に連結された可動プレート37上に設けられている。これにより、ワークステージ21は、図の表面から裏面方向に伸長する水平な軸線に沿って揺動することができる。
【0053】
または、研磨テープユニット10が、揺動可能な可動プレート(図示せず)上に設けられることにより揺動可能に構成されていてもよく、他の手段によって揺動可能に構成されてもよい。
【0054】
ウエハWは、研磨加工のために、ウエハステージ21にセンタリング(ウエハWの中心を回転軸線Csにアライメント)して配置される。センタリングは、ウエハステージ21に載置されたウエハWの周縁を、回転軸線Csに向け三方向からロッド状の治具(図示せず)で同時に押圧することにより行われる。また、センタリングは、光学センサ30により、ウエハWの外径からウエハWの中心Oを決定し、該中心Oと回転軸線Csとをアライメントするよう治具の押圧を制御して行われてもよく、その他の方法により行われてもよい。
【0055】
上記のようなウエハ周縁研磨装置100を使用して、本発明に係る一次研磨工程及び二次研磨工程が行われる。一次研磨工程及び二次研磨工程は、研磨テープユニット10の研磨面SをウエハWの周囲部に、研磨面SとウエハWの半径方向が垂直になるように当接させ、ウエハステージ21を回転軸線Csの周りに回転させることにより行われる。
【0056】
図3に、ウエハW(外径の一部が破線で示されている)の周縁(円弧状の周囲部全体とOFの一部)を一次研磨することにより形成されたウエハW1(外径が実線で示されている)、及びウエハW1の最小半径以下の半径r1を有する円弧W1’(一点鎖線で示されている)が図示されている。
【0057】
一次研磨において、好適に、ウエハは所定の回転角度θの範囲で正逆回転される。該所定の回転角度θは、例えば、ウエハWの中心Oと、ウエハWのOF上の二点E、E’とにより画成される角度(優角)であってよい。
【0058】
あるいは、一次研磨工程において、回転は、CW又はCCWの一定方向の回転であってもよい。
【0059】
研磨テープを使用して一次研磨されたウエハW1は、ウエハ材料の結晶方位等に起因して周囲部の研磨レートにバラツキを生じ、不均一な外径を有することがある。例えば、ウエハ材料によって、OFに平行な直径の両端近傍の周囲部の部分の研磨レートが低い場合等がある。このようなウエハW1の半径rが周囲部に沿って測定され、ウエハW1の最小半径以下の所定の半径r1が設定され、該設定された半径r1とウエハW1の半径rとの差であるΔrがウエハW1の周囲部に沿って決定される。
【0060】
ウエハW1の周囲部のΔrの値は、外径が不均一であるために、幅を有する。所定の値以上のΔrを有する周囲部の部分P、P’が、結晶方位等に起因して研磨レートが不十分になる部分に決定され、該周囲部の部分P、P’に対応する角度θp、θp’が決定される。角度θp、θp’は、例えば、OFに垂直な基準線Rからの角度の範囲として決定されてよい。
【0061】
角度θp、θp’を決定した後、本発明に係る二次研磨工程が行われる。二次研磨工程において、ウエハステージ21は、所定の回転角度θの範囲で正逆回転するとともに、可動プレート37の揺動により、水平な軸線に沿って研磨面Sに平行に揺動する(図2)。すなわち、ウエハW1は、ウエハステージ21の正逆回転により、回転角度θの範囲で研磨面Sに当接する周縁を順次研磨され、さらに研磨面Sに当接した部分が研磨面Sに対して揺動することにより研磨される。このようにすることで、研磨される周縁全体の研磨レートを向上させることができる。
【0062】
なお、一次研磨工程においても、研磨面Sとウエハステージ21を相対揺動させて研磨を行うことができる。
【0063】
ウエハステージ21の正逆回転の速度は、回転角度θのうちの角度θp、θp’の範囲で低下させられる。回転速度が低下した状態で、角度θp、θp’に対応したウエハの周縁の部分と研磨面Sとが当接し一定のストロークで揺動するので、当該部分の結晶方位による研磨レートの低下を抑制することができ、二次研磨によって、ウエハW1よりも真円度が向上した円形ウエハを製造することができる。
【0064】
角度θp、θp’の範囲における回転速度の低下の程度は、研磨レートの差異(Δrの値)に基づいて適宜(例えば、基準の速度に対して、10パーセント、30パーセント、50パーセント、70パーセント、90パーセント等)決定されてよい。
【0065】
ここで、真円度とは、円形形体の幾何学的に正しい円からの狂いの大きさを指し、MZC最小領域中心法において、測定図形を挟む二円の同心円の半径差が最も小さくなるように二円の中心座標の位置を探し出し、この中心座標を測定図形の中心と考え、このときの二円の半径差が真円度とされる(JIS B0621)。例えば、円弧W1’の半径r1が、ウエハW1の最小半径に等しい場合、測定されたΔrの最大値は、ウエハW1の真円度であり得る。
【0066】
設定される円弧W1’の半径がウエハW1の最小半径に等しい場合、所定の値以上のΔrを有する周囲部の部分P(P’)が決定され、該周囲部の部分P(P’)が研磨されることにより、所望の真円度を有する円形ウエハを製造することができる。この場合、研磨体(研磨面S)は周囲部の部分P(P’)のみに当接され、ウエハステージ21を回転角度θp(θp’)の範囲で正逆回転させることにより研磨加工が行われる。
【0067】
ウエハW(W1)が、ノッチを有するウエハである場合、角度θp(θp’)は、ノッチのV字型の切り欠きの中心とウエハの中心Oを通る基準線R’(図示せず)からの角度の範囲として決定されてよい。
【0068】
図4A(a)に、研磨テープを使用した研磨において、真円度を低下させることがないように決定された一つの実施形態の回転角度θ1が図示されている。
【0069】
ウエハWの周縁は、各々破線で示されたOFと円弧状の周囲部Aとから成る。該ウエハWの周縁全体を研磨することにより、円形ウエハW3が製造される。円形ウエハW3の周縁は、OF’と円弧状の周囲部A’とから成り、概して、ウエハWよりやや小さい半径とウエハWよりやや小さいOF長とを有する。
【0070】
回転角度θ1は、ウエハの円弧状の周囲部の一部が、直線状に研磨される回転角度であり、このような回転角度θ1は、例えば、ウエハWのOFの両端部a、bと中心Oとによって画成される角度(または、ウエハW3のOF’の両端部a’、b’と中心Oとによって画成される角度)である。回転角度θ1の範囲において、研磨の始点及び終点(または、終点及び始点)は、中心OとOFの一方の端部aを通る線が研磨面Sに垂直になる位置、及び中心OとOFの他方の端部bを通る線が研磨面Sに垂直になる位置であり、このような始点(終点)、終点(始点)の範囲で所定の押圧力Fにより研磨面Sに当接するウエハの周縁が、ウエハステージの正逆回転に伴って順次研磨される。
【0071】
研磨開始時には、円弧状の周囲部A全体が研磨面Sに当接して円弧状に研磨される。周囲部が研磨されてウエハの半径が減少するに従って、回転角度θ1の範囲に入らないOFの両端部近傍の周囲部が、平坦な研磨面Sによって直線状に研磨される。研磨終了時には、OFの両端部近傍の周囲部に、周囲部A’に係る円弧に対して半径方向外方に突出した凸部(図4A(b)の色塗り部分)が形成される。
【0072】
回転角度θ1は、図示の例に限定されるものではなく、押圧力Fや研磨パッド12の弾性に応じて、OFの両端部a、bから、好適に、各々等距離にある周囲部A上の二点と中心Oとによって画成される角度であってもよい。
【0073】
その後の工程で、OFと研磨面Sとを平行に当接させ、OFと研磨面Sとを相対揺動させることにより、OFが研磨されるとともにOF両端部近傍の凸部が取り除かれて、OF’を有する円形ウエハW3が形成される。
【0074】
図4Bに、研磨テープを使用した研磨において、真円度を低下させることがないように決定された他の実施形態の回転角度θ2が図示されている。円形ウエハW4は、ウエハWの円弧状の周囲部A全体とOFの一部とを研磨することにより形成されたものであり、ウエハWよりやや小さい半径及びOF長を有する。回転角度θ2は、ウエハWのOF上の二点(または、円形ウエハW4のOFの両端部)c、dと中心Oとによって画成される角の優角である。
【0075】
回転角度θ2の範囲において、研磨の始点及び終点(または、終点及び始点)は、中心Oと一方の点cを通る線が研磨面Sに垂直になる位置、及び中心Oと他方の点dを通る線が研磨面Sに垂直になる位置であり、このような始点、終点の範囲で研磨面Sに当接するウエハの周縁がウエハステージの正逆回転に伴って順次研磨される。
【0076】
研磨開始時には、研磨面Sは、点c、dに当接せず、研磨終了時には、研磨面Sは、各々の点c、dに接する。研磨面Sが各々の点c、dに接するとき、正逆回転が切り替わるため、回転の速度がほぼゼロとなり、十分に研磨力が小さいため、形成されるOFの両端部にダレを生じることがない。また、円弧状の周囲部全体が、研磨終了時にかけて円弧状に研磨されるため、OF両端部近傍の円弧状の周囲部に凸部が形成されることもなく、円形ウエハW4が形成される。
【0077】
図4Cに、研磨テープを使用した研磨において、真円度を低下させることがないように決定されたもう一つの他の実施形態の回転角度θ3が図示されている。円形ウエハW5は、ウエハWの円弧状の周囲部A全体とOFの一部とを研磨することにより形成されたものであり、ウエハWよりやや小さい半径及びOF長を有する。回転角度θ3は、ウエハW(または、円形ウエハW5)のOF上の二点e、fと中心Oとによって画成される角の優角であり、好適に、点eとOFの一方の端部からの距離と、点fとOFの他方の端部からの距離とが等しい。
【0078】
回転角度θ3の範囲において、研磨の始点及び終点(または、終点及び始点)は、中心OとOF上の一方の点eを通る線が研磨面Sに垂直になる位置、及び中心OとOF上の他方の点fを通る線が研磨面Sに垂直になる位置であり、このような始点、終点の範囲で研磨面Sに当接するウエハの周縁がウエハステージの正逆回転に伴って順次研磨される。回転角度θ3の範囲において正逆回転による研磨を行うことにより、円形ウエハW5のOFの両端部が研磨され得るが、選択された押圧力Fと研磨パッド12の弾性により、研磨面SとウエハWないしW5の周縁とが当接した状態が維持される(研磨面Sが間欠的にウエハWないしW5の周縁に当接することがない)ため、真円度を低下させることがなく、円形ウエハW5を形成することができる。
【0079】
本発明に係る円形ウエハの製造方法及び比較例に係る方法により、OFを有する4インチ単結晶Siウエハの周縁が研磨され、形成されたウエハの真円度が確認された。
【0080】
図5Aに、真円度測定機Rondcom 43C(東京精密社製)により測定された、円筒研削されたインゴットから切り出されたSiウエハの外径の形状及び真円度が示されている。真円度は、低域フィルタ(2RC)を使用したMZC中心法により、矢印の範囲で測定された(OFは計算から除外)。周縁を研磨テープを使用して研磨加工する前のSiウエハの真円度は、3.798μmであった。
【0081】
比較例
ウエハステージに配置されたSiウエハの周縁と研磨体(研磨パッドに配置された研磨テープ)とを当接させ、ウエハステージを一定方向(CW)に回転(1000rpm、3分間)させることにより、ウエハ周縁の研磨が行われた。図5Bに示されているとおり、この研磨方法では、ウエハの外径の形状が大きく変化し、特に、OFの一方の端部(肩部)の摩耗が著しかった。ステージが一定方向に回転したことによって、SiウエハのOFが研磨体に対向する位置においてウエハと研磨体との当接が解除された後、OFの一方の端部に強く当接し、その後、研磨パッドの弾性等により、円弧状の周縁において当接が弱まるなど、当たりムラが大きくなった。このように研磨体がウエハの周縁に追従せず間欠的に当接した結果、真円度は51.563μmと著しく悪化した。
【0082】
実施例
ウエハステージに配置されたSiウエハの周縁と研磨体(研磨パッドに配置された研磨テープ)とを当接させ、ウエハの円弧状の周囲部の一部が直線状に形成されるようウエハステージの回転角度を決定し(図4A参照)、該回転角度においてウエハステージを連続して正回転、逆回転(3000rpm)させることにより、ウエハ周縁の研磨が行われた。図5Cに示されているとおり、外径の形状の変化は小さく、真円度は21.318μmであり、加工仕様を十分に満たすものであった。この後、OFがさらに研磨されてOF両端部近傍の凸部が除去され、円形ウエハが製造された。
【0083】
本発明の思想及び態様から離れることなく多くのさまざまな修正が可能であることは当業者の知るところである。したがって、言うまでもなく、本発明の態様は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0084】
W ウエハ1
W1 ウエハ2
W1’ 設定された円弧
O ウエハの中心
OF オリエンテーションフラット
E、E’ ウエハWのOF上の二点
R 基準線
P、P’ 周囲部の部分
r1 設定された半径
Δr 半径差
θ 正逆回転の回転角度
θp、θp’ 周囲部の部分に対応した角度
図2
図1
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C