(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリブチレンテレフタレート(A)は、さらにポリカーボネート樹脂(D)を含み、ポリブチレンテレフタレート(A)及びポリカーボネート樹脂(D)の合計100質量%基準で、ポリブチレンテレフタレート(A)を50〜85質量%、ポリカーボネート樹脂(D)を15〜50質量%含有する、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形体。
ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、さらに難燃剤(E)を、ポリブチレンテレフタレート(A)およびポリカーボネート樹脂(D)の合計量100質量部に対し、7〜35質量部含有する請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形体。
ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、さらにアンチモン化合物(F)を、ポリブチレンテレフタレート(A)およびポリカーボネート樹脂(D)の合計量100質量部に対し、1〜15質量部含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形体。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例における反りの評価に使用した直方体状箱型成形品の形状を示す図である。
【
図2】実施例4で得た成形体の表層部の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図3】実施例4で得た成形体の表層部の走査型電子顕微鏡写真である。
【0013】
[発明の概要]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形体は、ポリブチレンテレフタレート(A)100質量部に対し、エラストマー(B)を2〜22質量部、カーボンブラック(C)を0.01質量部以上含有するポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形してなる成形体であって、成形体の表層部(成形片の表面から20μm内部までを表層部と定義する)において、エラストマー(B)の相は分散しており、かつ、その分散相は、各分散相の最大径をR、最大径Rに垂直な方向の径のうちの最大径をrとするとき、R/rが平均で8以下であることを特徴とする。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形体は、成形体の表層部においてエラストマー(B)の相がこのように分散して存在しているモルフォロジーを形成することで、優れた耐衝撃性と高度の漆黒性を発現していると推察される。
【0014】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。なお、本願明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、「ppm」は「質量ppm」を意味する。
【0015】
[ポリブチレンテレフタレート(A)]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形体の主成分であるポリブチレンテレフタレート(A)とは、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合あるいはこれらの化合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルの何れであってもよい。
【0016】
ポリブチレンテレフタレート(A)を構成するジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体が好ましく使用される。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1、5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、アントラセン−2,5−ジカルボン酸、アントラセン−2,6−ジカルボン酸、p−ターフェニレン−4,4’−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、等が挙げられ、テレフタル酸が好ましく使用できる。
【0017】
これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を混合して使用しても良い。これらは周知のように、遊離酸以外にジメチルエステル等のエステル形成性誘導体として重縮合反応に用いることができる。
なお、少量であればこれらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を1種以上混合して使用することができる。
【0018】
ポリブチレンテレフタレート(A)を構成するジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の脂環式ジオール等、およびそれらの混合物等が挙げられる。なお、少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合せしめてもよい。
また、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールも用いることができる。
【0019】
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
【0020】
ポリブチレンテレフタレート(A)としては、通常は主としてジカルボン酸とジオールとの重縮合からなるもの、即ち樹脂全体の50質量%、好ましくは70質量%以上がこの重縮合物からなるものを用いる。ジカルボン酸としては芳香族カルボン酸が好ましく、ジオールとしては脂肪族ジオールが好ましい。
【0021】
なかでも好ましいのは、酸性分の95モル%以上がテレフタル酸であり、アルコール成分の95質量%以上が脂肪族ジオールであるポリアルキレンテレフタレートである。その代表的なものはポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートである。これらはホモポリエステルに近いもの、即ち樹脂全体の95質量%以上が、テレフタル酸成分及び1,4−ブタンジオール又はエチレングリコール成分からなるものであるのが好ましい。
本発明において、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、その主成分がポリブチレンテレフタレートであることが好ましいが、また、イソフタル酸、ダイマー酸、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリアルキレングリコール等が共重合されているものも好ましい。なお、これらの共重合体は、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が好ましくは2〜50モル%、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜30モル%である。
【0022】
ポリブチレンテレフタレート(A)の固有粘度は、0.5〜2dl/gであるのが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.6〜1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものが好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物成形体が機械強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。なお、ポリブチレンテレフタレートの固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定するものとする。
【0023】
[エラストマー(B)]
本発明で用いるエラストマー(B)としては、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂に配合してその耐衝撃性を改良するのに用いられている熱可塑性エラストマーを用いればよく、例えばゴム性重合体やゴム性重合体にこれと反応する化合物を共重合させたものを用いる。エラストマー(B)のガラス転移温度は0℃以下、特に−20℃以下であるのが好ましい。
【0024】
エラストマー(B)の具体例としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム等)、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体(エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(エチレン・メタクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等)、エチレンと脂肪族ビニル化合物との共重合体、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとのターポリマー、アクリルゴム(ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体等)、シリコーン系ゴム(ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
尚、本発明において(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートを意味し(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を意味する。
【0025】
またエラストマー(B)の他の例としては、ゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体が挙げられる。この単量体化合物としては例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げられる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0026】
エラストマー(B)は、アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーが好ましく、ブタジエン系又はアクリル系ゴム性重合体にこれと反応する単量体化合物を共重合させたものが好ましい。また、シリコーンとの複合ゴムであってもよい。
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーの具体例としては、例えばアクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル−ブタジエンゴム、アクリル−シリコーンゴム、また、これらゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体が挙げられる。この単量体化合物としては例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げられる。これらの単量体は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0027】
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーは、耐衝撃性改良の点から、コア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましく、ブタジエン成分含有ゴム及び/又はアクリル成分含有ゴム性重合体をコア層とし、その周囲にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物から選ばれる単量体を共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。
【0028】
コア/シェル型グラフト共重合体の例としては、ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、ブタジエン−メチルメタクリレート・スチレン共重合体、シリコーン・アクリル−メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体等が挙げられる。これらのコア/シェル型グラフト共重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、コア、シェルともにアクリル酸エステルであるアクリル系コア/シェル型のエラストマーが、漆黒性、耐衝撃性、耐熱老化性、耐光性の点から好ましい。
【0029】
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマー中のアクリル及び/又はブタジエン成分の含有量は、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは70〜85質量%である。アクリル及び/又はブタジエン成分の含有量が50質量%未満であると、耐衝撃性に劣る傾向となり、95質量%を超えると、難燃性や耐候性が悪化する傾向となるため好ましくない。
【0030】
原料として用いるエラストマー(B)の平均一次粒子径は、通常2μm以下であり、1μm以下が好ましく、700nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましく、350nm以下が特に好ましい。また、下限は通常20nmであり、好ましくは50nm、より好ましくは80nm、さらに好ましくは100nmである。
また、原料として用いるエラストマー(B)の平均二次粒子径は、400μm以下であることが好ましく、350μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。また、下限は通常10μmであり、好ましくは30μm、より好ましくは50μmである。
なお、原料として用いるエラストマー(B)の平均一次粒子径とは、樹脂組成物のモルフォロジー観察結果について、エラストマー分散相の200個以上の最大径Rを測定し、それらを算術平均して求められる値をいう。原料エラストマー(B)の平均二次粒子径とは、原料として用いるエラストマー(B)粉体について、レーザー回折・散乱法により得られる、粒子径の体積頻度分布における最大ピークのピークトップの粒子径をいう。
【0031】
また、本発明においては、原料として用いるエラストマー(B)の二次粒子径体積頻度分布における最大ピークの半値幅は、700μm以下であることが好ましく、600μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましく、300μm以下であることが特に好ましい。また、半値幅の下限は、通常20μmであり、好ましくは40μmであり、より好ましくは80μmであり、さらに好ましくは100μmである。
【0032】
さらに、原料として用いるエラストマー(B)は、粒子径800μm以上の二次粒子の割合が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。また、粒子径700μm以上の二次粒子の割合が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
原料として用いるエラストマー(B)の見かけ密度は0.3g/ml以上であることが好ましく、0.35g/ml以上であることがより好ましく、0.4g/ml以上であることがさらに好ましい。
【0034】
上記のような粒子径及び見かけ密度を有するエラストマーを採用することにより、漆黒性が良好となる傾向にあり好ましい。
【0035】
エラストマー(B)の含有量は、ポリブチレンテレフタレート(A)100質量部に対し、2〜22質量部である。エラストマー(B)の含有量が2質量部未満では、耐衝撃性の改良効果が小さく、22質量部を越えると耐熱性や剛性が低下する。好ましいエラストマー(B))の含有量は、5質量部以上であり、15質量部以下、さらには12質量部以下である。
【0036】
本発明においては、エラストマー(B)は、成形体の表層部において、ポリブチレンテレフタレート(A)相中に分散して存在するモルフォロジー構造を構成することとなる。ポリブチレンテレフタレート(A)が、さらにポリカーボネート樹脂(D)を含む場合は、エラストマー(B)はポリカーボネート樹脂(D)相中に存在することが好ましい。
分散したエラストマー(B)は、その分散相の最大径をR、最大径に対し垂直方向の径のうちの最大径をrとするとき、R/rが平均8以下であり、好ましくは7.5以下、さらに好ましくは7以下であり、好ましくは1.1以上であり、より好ましくは1.5以上であり、さらに好ましくは2以上である。
エラストマー(B)が単分散している場合は、R/rは上記のように算出するが、エラストマー(B)が凝集により数珠つなぎ状になっている場合は、1つの凝集体を1つのエラストマー分散相とみなし、1つの凝集体のRとrを求め、R/r比を算出する。
エラストマー(B)が凝集している場合は、1つの凝集体中のエラストマー数は10以下が好ましく、7以下がより好ましく、4以下がさらに好ましく、2であることが特に好ましい。このようなモルフォロジーをとることにより、耐衝撃性と漆黒性のバランスがより優れる傾向にある。
なお、成形体のモルフォロジーの観察の具体的な方法及びR/r比の求め方等についての詳細は後述する。
【0037】
本発明においては、エラストマーが単分散していることが好ましいが、エラストマー凝集体が存在する場合は、モルフォロジー観察結果におけるエラストマー凝集体の面積割合が、エラストマー全面積中の40%以下であることが好ましく、30%以下がより好ましく、20%がさらに好ましく、10%以下が特に好ましい。
なお、本発明において、成形体の表層部とは、成形体表面から20μm内部までの領域をいい、モルフォロジー観察は、後述の方法及び実施例に記載の方法で行う。
【0038】
[カーボンブラック(C)]
本発明におけるカーボンブラック(C)は、その製造方法、原料種等に制限はなく、従来公知の任意のものを使用できる。具体的には例えば、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。これらの中でも着色性とコストの点から、オイルファーネスブラックが好ましい。
【0039】
カーボンブラック(C)の平均粒子径は適宜選択して決定すればよいが、中でも5〜60nmが好ましく、更には7〜55nm、特に10〜50nmであることが好ましい。平均粒子径を前記範囲とすることで、カーボンブラックの凝集を抑制し、漆黒性を向上させ外観が向上する傾向にある。なお、カーボンブラックの平均粒子径は、ASTM D3849規格(カーボンブラックの標準試験法−電子顕微鏡法による形態的特徴付け)に記載の手順によりアグリゲート拡大画像を取得し、このアグリゲート画像から単位構成粒子として3,000個の粒子径を測定し、算術平均して求めることができる。
【0040】
本発明で用いるカーボンブラック(C)の窒素吸着比表面積は、通常1000m
2/g未満が好ましく、なかでも50〜400m
2/gであることが好ましい。窒素吸着比表面積を1000m
2/g未満にすることで、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性や成形体の外観が向上する傾向にあり好ましい。なお、窒素吸着比表面積は、JIS
K6217に準拠して測定することができる(単位はm
2/g)。
【0041】
また、カーボンブラック(C)のDBP吸収量は、300cm
3/100g未満であることが好ましく、なかでも30〜200cm
3/100gであることが好ましい。DBP吸収量を300cm
3/100g未満にすることで、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性や成形体の外観が向上する傾向にあり好ましい。
なお、DBP吸収量はJIS K6217に準拠して測定することができる(単位はcm
3/100g)。
また、カーボンブラック(C)は、そのpHについても特に制限はないが、通常、2〜10であり、3〜9であることが好ましく、4〜8であることがさらに好ましい。
【0042】
カーボンブラック(C)の含有量は、ポリブチレンテレフタレート(A)100質量部に対して0.01質量部以上であり、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは4質量部以下であり、より好ましくは3.5質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。カーボンブラックの含有量が多すぎると、成形体の表面性や成形収縮率を悪くするおそれがあり、また、製造工程に於いて金型汚染を引き起こす場合がある。
【0043】
カーボンブラック(C)は、単独で又は二種以上併用して使用することができる。更にカーボンブラックは、バインダーを用いて顆粒化することも可能であり、樹脂中に高濃度で溶融混練したマスターバッチでの使用も可能である。溶融混練したマスターバッチを使用することによって、押出時のハンドリング性や樹脂組成物中への分散性が良好となる傾向にある。上記樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、特には、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル−スチレン系樹脂を使用することが好ましい。
【0044】
マスターバッチ中のカーボンブラック(C)の含有量は5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%がより好ましく、15〜60質量%がさらに好ましく、18〜40質量%が特に好ましい。マスターバッチ中のカーボンブラックの含有量が80質量%を超えると、カーボンブラックの分散不良が発生する場合があり好ましくない。また、カーボンブラックマスターバッチの使用量は適宜選択して決定すればよいが、通常、ポリブチレンテレフタレート(A)100質量部に対して0.5〜10質量部であり、中でも1〜8質量部、特には1.5〜5質量部であることが好ましい。
【0045】
[ポリカーボネート樹脂(D)]
本発明に用いるポリブチレンテレフタレート(A)は、ポリカーボネート樹脂(D)を含有することが好ましい。
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。
【0046】
原料のジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましく、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
【0047】
ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。更には、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
【0049】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、20000以上であることが好ましく、より好ましくは23000以上、25000以上であることがさらに好ましい。粘度平均分子量が20000より低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械的強度の低いものとなりやすい。また60000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、35000以下であることがさらに好ましい。60000より高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
【0050】
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、20℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値を示す。
[η]=1.23×10
−4Mv
0.83
【0051】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
【0052】
ポリカーボネート樹脂(D)の含有量は、ポリブチレンテレフタレート(A)及びポリカーボネート樹脂(D)の合計100質量%基準で、ポリブチレンテレフタレート(A)を50〜85質量%、ポリカーボネート樹脂(B)を15〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは、ポリブチレンテレフタレート(A)を55〜80質量%、ポリカーボネート樹脂(B)を20〜45質量%、さらに好ましくはポリブチレンテレフタレート(A)を60〜75質量%、ポリカーボネート樹脂(B)を25〜40質量%である。ポリカーボネート樹脂(D)の含有量が上記下限値を下回ると、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の耐衝撃性や靭性の改良効果が小さくなりやすく、上記上限値を上回ると流動性が悪くなる傾向がある。
【0053】
[難燃剤(E)]
本発明に用いるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、難燃剤(E)を含有することも好ましい。
難燃剤(E)としては、既知のプラスチック用難燃剤が使用可能であり、具体的には、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤(ポリリン酸メラミンなど)、窒素系難燃剤(シアヌル酸メラミンなど)、金属水酸化物(水酸化マグネシウムなど)である。
ハロゲン系難燃剤としては、臭素系難燃剤がより好ましい。
【0054】
・臭素系難燃剤
臭素系難燃剤としては、従来公知の任意の、熱可塑性樹脂に使用される臭素系難燃剤を用いることが出来る。この様な臭素系難燃性としては、芳香族系化合物が挙げられ、具体的には例えばテトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー等の臭素化エポキシ化合物、ペンタブロモベンジルポリアクリレート)等のポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート、ポリブロモフェニルエーテル、臭素化ポリスチレン、テトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー等の臭素化エポキシ化合物、N,N’−エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)(EBTPI)等の臭素化イミド化合物、臭素化ポリカーボネート等が挙げられる。
【0055】
中でも熱安定性の良好な点より、ペンタブロモベンジルポリアクリレート等のポリブロモ化ベンジル(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー等の臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリスチレンが好ましく、更には臭素化ポリカーボネートが好ましい。
【0056】
ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレートとしては、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートを単独で重合、又は2種以上を共重合、もしくは他のビニル系モノマーと共重合させることによって得られる重合体であることが好ましく、該臭素原子は、ベンゼン環に付加しており、付加数はベンゼン環1個あたり1〜5個、中でも4〜5個付加したものであることが好ましい。
【0057】
該臭素原子を含有するベンジルアクリレートとしては、ペンタブロムベンジルアクリレート、テトラブロムベンジルアクリレート、トリブロムベンジルアクリレート、又はそれらの混合物などが挙げられる。また、臭素原子を含有するベンジルメタクリレートとしては、上記したアクリレートに対応するメタクリレートがあげられる。
【0058】
臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートと共重合させるために使用される他のビニル系モノマーとしては、具体的には例えば、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレートのようなアクリル酸エステル類;メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル類;スチレン、アクリロニトリル、フマル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸又はその無水物;酢酸ビニル、塩化ビニルなどが挙げられる。
【0059】
これらは通常、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートに対して等モル量以下、中でも0.5倍モル量以下が用いることが好ましい。
【0060】
また、ビニル系モノマーとしては、キシレンジアクリレート、キシレンジメタクリレート、テトラブロムキシレンジアクリレート、テトラブロムキシレンジメタクリレート、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼンなどを使用することもでき、これらは通常、臭素原子を含有するベンジルアクリレート又はベンジルメタクリレートに対し、0.5倍モル量以下が使用できる。
【0061】
該ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレートとしては、ペンタブロモベンジルポリアクリレートが、高臭素含有量であること、電気絶縁特性(耐トラッキング特性)が高い観点で好ましい。
【0062】
臭素化エポキシ化合物としては、具体的には、テトラブロモビスフェノールAエポキシ化合物に代表されるビスフェノールA型ブロモ化エポキシ化合物が挙げられる。
【0063】
臭素化エポキシ化合物の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、質量平均分子量(Mw)で10000〜100000であり、中でも分子量が高い方が好ましく、具体的にはMwとして15000〜80000、中でも18000〜78000(Mw)、更には20000〜75000(Mw)、特に22000〜70000であることが好ましく、この範囲内に於いても分子量の高いものが好ましい。
臭素化エポキシ化合物は、そのエポキシ当量が4000〜40000g/eqであることが好ましく、中でも4500〜35000g/eqがこのましく、特に10000〜30000g/eqであることが好ましい。
臭素化エポキシ化合物における臭素原子含有量は任意だが、十分な難燃性を付与する上で、通常10質量%以上であり、中でも20質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましく、その上限は60質量%、中でも55質量%以下であることが好ましい。
【0064】
また、臭素化エポキシ化合物として臭素化エポキシオリゴマーを併用することもできる。この際、例えばMwが5000以下のオリゴマーを1〜50質量%程度用いることで、難燃性、離型性および流動性を適宜調整することができる。
【0065】
臭素化ポリカーボネートとしては、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は4−t−ブチルフェニル基や2,4,6−トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6−トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
【0066】
また臭素化ポリカーボネートにおける、カーボネート繰り返し単位数の平均は適宜選択して決定すればよいが、通常、2〜30である。カーボネート繰り返し単位数の平均が小さいと、溶融時にポリブチレンテレフタレートの分子量低下を引き起こす場合がある。逆に大きすぎてもポリカーボネートの溶融粘度が高くなり、成形体内の分散不良を引き起こし、成形体外観、特に光沢性が低下する場合がある。よってこの繰り返し単位数の平均は、中でも3〜15、特に3〜10であることが好ましい。
【0067】
上記臭素化ビスフェノールAから得られる臭素化ポリカーボネートは、例えば臭素化ビスフェノールとホスゲンとを反応させる通常の方法で得ることができる。末端封鎖剤としては芳香族モノヒドロキシ化合物が挙げられ、これはハロゲン又は有機基で置換されていてもよい。
【0068】
臭素化ポリスチレンとしては、好ましくは、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を含有する臭素化ポリスチレンが挙げられる。
【化1】
(式(1)中、tは1〜5の整数であり、nは繰り返し単位の数である。)
【0069】
臭素化ポリスチレンとしては、ポリスチレンを臭素化するか、又は、臭素化スチレンモノマーを重合することによって製造するかのいずれであってもよいが、臭素化スチレンを重合したものは遊離の臭素(原子)の量が少ないので好ましい。
なお、前記一般式(1)において、臭素化ベンゼンが結合したCH基はメチル基で置換されていてもよい。また、臭素化ポリスチレンは、他のビニルモノマーが共重合された共重合体であってもよい。この場合のビニルモノマーとしてはスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、ブタジエンおよび酢酸ビニル等が挙げられる。また、臭素化ポリスチレンは単一物あるいは構造の異なる2種以上の混合物として用いてもよく、単一分子鎖中に臭素数の異なるスチレンモノマー由来の単位を含有していてもよい。
【0070】
臭素化ポリスチレンの具体例としては、例えば、ポリ(4−ブロモスチレン)、ポリ(2−ブロモスチレン)、ポリ(3−ブロモスチレン)、ポリ(2,4−ジブロモスチレン)、ポリ(2,6−ジブロモスチレン)、ポリ(2,5−ジブロモスチレン)、ポリ(3,5−ジブロモスチレン)、ポリ(2,4,6−トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5−トリブロモスチレン)、ポリ(2,3,5−トリブロモスチレン)、ポリ(4−ブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,4−ジブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,5−ジブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,4,6−トリブロモ−α−メチルスチレン)およびポリ(2,4,5−トリブロモ−α−メチルスチレン)等が挙げられ、ポリ(2,4,6−トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5−トリブロモスチレン)および平均2〜3個の臭素基をベンゼン環中に含有するポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチレンが特に好ましく用いられる。
【0071】
臭素化ポリスチレンは、上記一般式(1)における繰り返し単位の数n(平均重合度)が30〜1,500であることが好ましく、より好ましくは150〜1,000、特に300〜800のものが好適である。平均重合度が30未満ではブルーミングが発生しやすく、一方1,500を超えると、分散不良を生じやすく、機械的性質が低下しやすい。また、臭素化ポリスチレンの質量平均分子量(Mw)としては、5,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、10,000〜300,000であることがさらに好ましく、10,000〜70,000であることが特に好ましい。
特に、上記したポリスチレンの臭素化物の場合は、質量平均分子量(Mw)は50,000〜70,000であることが好ましく、重合法による臭素化ポリスチレンの場合は、質量平均分子量(Mw)は10,000〜30,000程度であることが好ましい。なお、質量平均分子量(Mw)は、GPC測定による標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0072】
臭素化ポリスチレンは、臭素濃度が52〜75質量%であることが好ましく、56〜70質量%であることがより好ましく、57〜70質量%であることがさらに好ましい。臭素濃度がこのような範囲とすることにより、難燃性を良好に保つことが容易である。
【0073】
また、臭素化ポリスチレン中の遊離臭素の含有量は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.45質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以下であることがさらに好ましい。遊離臭素の含有量が0.5質量%を超えると、最終的に得られる樹脂組成物中の遊離臭素量が多くなり、樹脂組成物の処理時や成形時等の高温になる際に脱離し、樹脂組成物の耐熱変色性、色調及び耐光変色安定性を悪化させたり、成形時に金型等の金属腐食を引き起こす場合がある。また、遊離臭素の含有量を0質量%まで除去することは、経済性を度外視するような精製を必要とするので、含有量の下限は、通常0.001質量%であり、0.005質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%である。
【0074】
また、臭素化ポリスチレン中の塩素の含有量は、0.2質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以下であることがより好ましく、0.08質量%以下であることがさらに好ましく、0.03質量%以下であることが特に好ましい。臭素化ポリスチレン中の塩素の含有量が0.2質量%を超えると、最終的に得られる樹脂組成物中の塩素含有量が多くなりすぎ、耐トラッキング性、靭性が悪くなる傾向にある。
【0075】
さらに、臭素化ポリスチレン中の硫黄の含有量は、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以下であることがさらに好ましい。臭素化ポリスチレン中の硫黄の含有量が0.1質量%を超えると、最終的に得られる樹脂組成物中の硫黄含有量が多くなりすぎ、耐トラッキング性、耐金型腐食性が悪くなる傾向にある。
【0076】
なお、臭素化ポリスチレン中の遊離臭素、塩素、硫黄の含有量は、燃焼イオンクロマトグラフィー法により測定することができる。具体的には、三菱化学アナリテック社製「AQF−100型」の自動試料燃焼装置を用い、アルゴン雰囲気下、270℃、10分の条件で臭素化ポリスチレン加熱し、発生した臭素、塩素、硫黄の量を、日本ダイオネクス社製「ICS−90」を用いて定量することにより求めることができる。
【0077】
難燃剤(E)を含む場合の好ましい含有量は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(D)の合計100質量部に対し、7〜35質量部であり、より好ましくは9質量部以上であり、さらに好ましくは10質量部以上であり、さらに好ましくは15質量部以上であり、好ましくは34質量部以下であり、より好ましくは32質量部以下であり、さらに好ましくは28質量部以下である。難燃剤(E)の含有量が少なすぎると本発明に用いる樹脂組成物の難燃性が不十分となり、逆に多すぎても機械的特性の低下や難燃剤のブリードアウトの問題が生ずる。
【0078】
[アンチモン化合物(F)]
本発明に用いるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、難燃助剤であるアンチモン化合物(F)を含有することも好ましい。
アンチモン化合物(F)としては、三酸化アンチモン(Sb
2O
3)、五酸化アンチモン(Sb
2O
5)が挙げられる。難燃性の点においては三酸化アンチモンを用いることが好ましく、ポリカーボネート樹脂を配合する場合は、エステル交換抑制の点から五酸化アンチモンが好ましい。
【0079】
本発明においては、五酸化アンチモンとして、五酸化アンチモンと他の金属酸化物との複塩を用いることが好ましい。五酸化アンチモンと他の金属酸化物との複塩としては、具体的には例えば下記の一般式(2)〜(4)で示される複塩が好ましい。尚、これらは任意の割合で併用して用いてもよい。
【0080】
n(X
2O)・Sb
2O
5・m(H
2O) ・・・(2)
n(YO)・Sb
2O
5・m(H
2O) ・・・(3)
n(Na
2O)・Sb
2O
5 ・・・(4)
(これらの式中、Xは1価のアルカリ金属元素、Yは2価のアルカリ土類金属元素、nは0〜1.5、mは0〜4を示す。mおよびnは式(2)及び式(3)においてそれぞれ独立して決定される)
【0081】
上記の式(2)〜(4)において、Xとしてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられ、Yとしてはカルシウム、マグネシウム、バリウム等が挙げられる。nは、0より大きく、通常0.3以上、特に0.65〜1.5が好ましい。nが小さすぎると吸着水の脱離速度が小さいために、溶融粘度が変化しやすい傾向にあり、逆にnが大きすぎると相対的にアンチモンの量が低下することにより難燃助剤としての効果が低減する。
mは0〜4であり、好ましくは0〜2である。mが大きすぎるとポリブチレンテレフタレート系樹脂の加水分解が著しくなるので好ましくない。
【0082】
アンチモン化合物(F)の好ましい含有量は、ポリブチレンテレフタレート(A)及びポリカーボネート樹脂(D)の合計100質量部に対して、1〜15質量部であり、より好ましくは1.2質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、より好ましくは13質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0083】
[樹脂組成物成形体のモルフォロジー]
上記したように、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形体は、成形体の表層部において、エラストマー(B)の相は分散しており、その分散相の最大径をR、最大径に垂直方向の径のうちの最大径をrとするとき、両者の比R/rが平均8以下であることを特徴とする。ここで、表層部とは、成形体の表面から20μm内部までの領域をいう。
分散したエラストマー(B)のR/r比は、前述したように、好ましくは7.5以下、さらに好ましくは7以下であり、好ましくは1.1以上であり、より好ましくは1.5以上である。
前述したように、エラストマーが単分散している場合は、R/rは上記のように算出するが、エラストマーが凝集により数珠つなぎ状になっている場合は、1つの凝集体を1つのエラストマーとみなし、1つの凝集体のRとrを求め、R/r比を算出する。本発明において、エラストマーが凝集している場合は、1つの凝集体中のエラストマー数は10以下が好ましく、7以下がより好ましく、4以下がさらに好ましく、2であることが特に好ましい。このようなモルフォロジーをとることにより、耐衝撃性と漆黒性のバランスがより優れる傾向にある。
【0084】
また、エラストマーは単分散していることが好ましいが、エラストマー凝集体が存在する場合は、モルフォロジー観察結果におけるエラストマー凝集体の面積割合が、エラストマー全面積中の40%以下であることが好ましく、30%以下がより好ましく、20%がさらに好ましく、10%以下が特に好ましい。
【0085】
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形体のモルフォロジーの観察は、光学顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)などにより成形体断面を観察することで測定でき、好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される。成形体中央部(ゲート近傍ではない)の表面から20μm内部までの領域の、樹脂流動方向と平行な方向の断面について観察を行う。
具体的には、SEMを用い、成形体断面の表層部を、25kVの加速電圧下で、倍率3,000〜30,000倍のSTEM像により観察される。
【0086】
成形体の表層部のこのようなモルフォロジーは、例えば、
図2及び
図3を観察することにより確認できる。
図2及び
図3は、本発明の実施例4で得られた成形体の表層部のSTEM像の写真(倍率10,000倍及び30,000倍)である。
図2、3において、成形時の樹脂の流れ方向は
図2、3の左から右への方向であり、連続相(マトリックス相)を構成しているのはポリブチレンテレフタレート(A)であり、その中に存在する暗色の層状に引き伸ばされた相がポリカーボネート樹脂(D)相である。また、最も暗く観察される部分は、アンチモン化合物であると考えられる。そして、白色の島状のものがエラストマー(B)の分散相であり、暗色のポリカーボネート樹脂(D)相中に多く存在していることから、エラストマー(B)はポリカーボネート樹脂(D)相中に存在すると考えられ、その粒径が100〜300nmで微分散しており、エラストマー(B)同士が数珠状に連なった凝集体の割合が少ないことがわかる。他の実施例においても、エラストマー(B)の分散に関し、同様のモルフォロジーが観察された。
このように、本発明の成形体は特異なモルフォロジーを有する。
【0087】
一方、本発明の比較例1、2及び4で得られた成形体の表層部を、上記同様の条件でSTEM観察したところ、エラストマー(B)は実施例のようには微分散しておらず、エラストマー同士が数珠状に繋がったものが多く観察された。
【0088】
比較例のようなモルフォロジー構造になると、成形体の黒味が低下して白く見えやすくなるものと考えられる。実施例にあるように、エラストマー(B)相が微分散しており、その最大径Rと、最大径に垂直方向の径のうちの最大径rの比(R/r)が8以下である場合には、高度の漆黒性を呈することが出来るものと考えられる。
【0089】
なお、R/r比は、平均値として捉えられ、エラストマー(B)分散相の200個以上の最大径Rと、最大径に垂直方向の径のうちの最大径rを測定した値から算出し、それらを算術平均して求められる。エラストマーが数珠つなぎ状になっている場合は、1つの凝集体を1つのエラストマーとみなし、1つの凝集体のRとrを求め、同様にR/r比を算出する。
【0090】
本発明の成形体は、カーボンブラックにエラストマーを併用する場合には達成できないレベルのL
*値を達成することができ、好ましいL
*値は40以下、より好ましくは38以下、さらに好ましくは37以下とすることが可能である。
【0091】
[成形体モルフォロジーの好ましい制御法]
本発明の成形体は、このようなモルフォロジー構造を有することによって、漆黒性と耐衝撃性に優れた成形体となる。
本発明の樹脂組成物成形体の製造に用いるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、押出機等の溶融混練機を用いた溶融混練法により製造することが好ましいが、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の原料各成分を混合して、単に混錬するだけでは、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成することは難しく、特別の方法により混錬することが推奨される。以下に、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成するための好ましい製造方法について、説明する。
【0092】
ポリブチレンテレフタレート(A)とエラストマー(B)とカーボンブラック(C)を所定の割合で混合後、ダイノズルが設けられた単軸又は二軸の押出機に供給後、溶融混錬し、ダイノズルから樹脂組成物を押出してストランド状とした後に、切断してペレットを製造する。
この際、溶融混練機としては、二軸押出機を用いることが好ましい。中でも、スクリューの長さL(mm)と同スクリューの直径D(mm)の比であるL/Dが、20<(L/D)<100の関係を満足することが好ましく、30<(L/D)<70を満足することがより好ましい。かかる比が20以下では、エラストマー(B)が微分散しにくく、逆に100を超えても、エラストマー(B)の熱劣化が著しく、微分散されにくくなる傾向があり好ましくない。
ダイノズルの形状も特に限定されないが、ペレット形状の点で、直径1〜10mmの円形ノズルが好ましく、直径2〜7mmの円形ノズルがより好ましい。
【0093】
また、溶融混練時の樹脂組成物の溶融温度は200〜300℃であることが好ましく、210〜295℃であることがより好ましい。溶融温度が200℃未満では、溶融不十分となり、未溶融ゲルが多発しやすく、逆に300℃を超えると、樹脂組成物が熱劣化し、着色しやすくなる等好ましくない。
【0094】
溶融混練時のスクリュー回転数は、100〜1,000rpmであることが好ましく、50〜800rpmがより好ましい。スクリュー回転数が100rpm未満であると、エラストマー(B)が微分散しにくい傾向にあり、逆に1,000rpmを超えても、エラストマー(B)が凝集し、微分散しない傾向となり好ましくない。また、吐出量は5〜1,000kg/hrであることが好ましく、10〜900kg/hrがより好ましい。吐出量が5kg/hr未満であると、エラストマー(B)の分散性が低下する傾向にあり、1,000kg/hrを超えても、エラストマー(B)の分散性が低下する傾向となり好ましくない。
【0095】
ダイノズルにおける樹脂組成物のせん断速度は、10〜10,000sec
−1であることが好ましく、50〜5,000sec
−1であることがより好ましく、70〜1,000sec
−1であることがさらに好ましい。せん断速度を上記の範囲とすることにより、本発明で規定するモルフォロジーを安定して形成しやすい傾向にあり好ましい。かかるせん断速度は、一般的に樹脂組成物の吐出量とダイノズルの断面の形状より決定されるものであり、例えば、ダイノズルの断面が円形の時は、γ=4Q/πr
3により算出することができる。ここで、γはせん断速度(sec
−1)、Qはダイノズル1本当たりの樹脂組成物の吐出量(cc/sec)、rはダイノズル断面の半径(cm)をそれぞれ表す。
【0096】
ダイノズルからストランド状に押し出された樹脂組成物は、ペレタイザー等により切断しペレット形状とするが、本発明においては、切断時のストランドの表面温度が60〜150℃、特に70〜150℃となるようにストランドを冷却することが好ましい。通常空冷、水冷等の方法により冷却されるが、冷却効率の点で、水冷することが好ましい。かかる水冷にあたっては、水を入れた水槽中にストランドを通して冷却すればよく、水温と冷却時間を調整することにより、所望のストランド表面温度とすることができる。このようにして製造されたペレットの形状は、円柱状の場合は径が好ましくは1〜8mm、より好ましくは2〜6mm、さらに好ましくは3〜5mm、長さが好ましくは1〜10mm、より好ましくは2〜6mm、さらに好ましくは3〜5mmである。
【0097】
また、本発明においては、上記ダイノズルにおけるせん断速度γ(sec
−1)と上記ストランド切断時のストランドの表面温度T(℃)との関係が、
1×10
3<(γ・T)<9.9×10
5
の関係を満足することにより、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成しやすい傾向となる。また、樹脂組成物の各成分の分散不良による成形体表面の肌荒れ現象や、靱性の低下を抑制しやすく、さらに、機械的特性、難燃性及び絶縁特性等を良好に保つことが容易となる。(γ・T)の下限は1×10
4であることがより好ましく、上限は8.5×10
5であることがより好ましい。
(γ・T)の値を上記の範囲に調整するためには、上記のせん断速度とストランドの表面温度を調整すればよい。
【0098】
本発明においては、上記の好ましい条件を単独でも、また複数を組み合わせて適用することにより、本発明で規定するモルフォロジー構造を有するポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を製造することができるが、中でも、せん断速度又は(γ・T)の値が上記式を満たすような製造条件を採用することが効果的である。
【0099】
このようなポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の製造方法を採用することにより、本発明で規定するモルフォロジー構造を有するポリエステル組成物成形体を安定して製造することができる。しかし、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の製造は、かかる方法に限られるものではなく、本発明が規定するモルフォロジー構造が得られる限り、他の方法を用いてもよい。
【0100】
[安定剤]
ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、さらに安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度及び色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
【0101】
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物又は有機ホスホナイト化合物が好ましい。
【0102】
有機ホスフェート化合物としては、好ましくは、下記一般式:
(R
1O)
3−nP(=O)OH
n
(式中、R
1は、アルキル基又はアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。nは0〜2の整数を示す。)で表される化合物である。
より好ましくは、R
1が炭素原子数8〜30の長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられる。炭素原子数8〜30のアルキル基の具体例としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
【0103】
長鎖アルキルアシッドホスフェートとしては、例えば、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、オクタデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
これらの中でも、オクタデシルアシッドホスフェートが好ましく、このものはADEKA(株)の商品名「アデカスタブ AX−71」として、市販されている。
【0104】
有機ホスファイト化合物としては、好ましくは、下記一般式:
R
2O−P(OR
3)(OR
4)
(式中、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基であり、R
2、R
3及びR
4のうちの少なくとも1つは炭素数6〜30のアリール基である。)で表される化合物が挙げられる。
【0105】
有機ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)、テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0106】
有機ホスホナイト化合物としては、好ましくは、下記一般式:
R
5−P(OR
6)(OR
7)
(式中、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基であり、R
5、R
6及びR
7のうちの少なくとも1つは炭素数6〜30のアリール基である。)で表される化合物が挙げられる。
【0107】
有機ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
【0108】
リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
リン系安定剤としては、前述したように、優れた相溶性を発揮し、エステル交換抑制効果が顕著にみられるオクタデシルアシッドホスフェートが特に好ましい。
【0109】
フェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−ネオペンチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0110】
安定剤の含有量は、ポリブチレンテレフタレート(A)及びポリカーボネート樹脂(D)の合計100質量部に対し、好ましくは0.001〜1質量部である。安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。安定剤の含有量は、より好ましくは0.001〜0.7質量部であり、更に好ましくは、0.005〜0.5質量部である。
【0111】
[無機充填材]
ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物には、無機充填材を含有させてその機械的特性を向上させることができる。無機充填材としては常用のものをいずれも用いることができる。具体的には例えば、ガラス繊維、炭素繊維、鉱物繊維等の繊維状無機充填材が挙げられるが、中でもガラス繊維を用いることが好ましい。本発明においては、無機充填材は、ポリブチレンテレフタレート(A)及びポリカーボネート樹脂(D)の合計100質量部に対して、100質量部以下、中でも20〜80質量部を含有させることが好ましい。
【0112】
[滴下防止剤]
ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、滴下防止剤を含有することも好ましい。滴下防止剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、フィブリル形成能を有し、樹脂組成物中に容易に分散し、かつ樹脂同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示すものである。ポリテトラフルオロエチレンの具体例としては、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)より市販されている商品名「テフロン(登録商標)6J」又は「テフロン(登録商標)30J」、ダイキン工業(株)より市販されている商品名「ポリフロン」あるいは旭硝子(株)より市販されている商品名「フルオン」等が挙げられる。
滴下防止剤の含有割合は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート(A)及びポリカーボネート樹脂(D)の合計100質量部に対して0.1〜20質量部である。滴下防止剤が0.1質量部未満では難燃性が不十分になりやすく、20質量部を超えると外観が悪くなりやすい。滴下防止剤の含有割合は、より好ましくは、ポリブチレンテレフタレート(A)及びポリカーボネート樹脂(D)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、好ましくは0.2〜5質量部である。
【0113】
[離型剤]
ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、更に、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、金属膜密着性を阻害しにくいという点で、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましい。
【0114】
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、質量平均分子量が、700〜10,000、更には900〜8,000のものが好ましい。
【0115】
脂肪酸エステル系化合物としては、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等が挙げられ、中でも、炭素数11〜28、好ましくは炭素数17〜21の脂肪酸で構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。
【0116】
また、シリコーン系化合物としては、ポリエステル樹脂との相溶性等の点から、変性されている化合物が好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端及び/又は片末端に有機基を導入したシリコーンオイル等が挙げられる。導入される有機基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基等が挙げられ、好ましくはエポキシ基が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
【0117】
離型剤の含有量は、ポリブチレンテレフタレート(A)及びポリカーボネート樹脂(D)の合計100質量部に対して、0.05〜2質量部であることが好ましい。0.05質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下する傾向があり、一方、2質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また成形体表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、好ましくは0.07〜1.5質量部、更に好ましくは0.1〜1.0質量部である。
【0118】
[その他含有成分]
ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、紫外線吸収剤、カーボンブラック以外の染顔料、蛍光増白剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0119】
また、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物には、ポリブチレンテレフタレート(A)およびポリカーボネート樹脂(D)以外の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損わない範囲で含有することもできる。その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイドエチレン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0120】
[成形体]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形体は、その形状、模様、色、寸法等に制限はなく、その成形体の用途に応じて任意に設定すればよい。
成形体の成形方法自体は、特に限定されず、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられるが、特には射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法等の射出成形による方法が好ましく適用される。
【0121】
射出成形において、本発明で規定するモルフォロジー構造を有する成形体とするためには、例えば、射出成形機のスクリュー構成、スクリューやシリンダー内壁の加工、ノズル径、金型構造等の成形機条件の選択、可塑化、計量、射出時等の成形条件の調整、成形材料への他成分の添加等、種々の方法が挙げられる。特に、可塑化、計量、射出時の条件として、例えば、シリンダー温度、背圧、スクリュー回転数、射出速度等を調整することが好ましい。例えば、シリンダー温度を調整する場合は、好ましくは230〜280℃、より好ましくは240〜270℃に設定する。背圧を調整する場合は、好ましくは2〜15MPa、より好ましくは4〜10MPaに設定する。スクリュー回転数を調整する場合は、好ましくは20〜300rpm、より好ましくは20〜250rpmに設定する。射出速度を調整する場合は、好ましくは10〜500mm/sec、より好ましくは20〜400m/secに設定することが好ましい。
【0122】
このように、本発明の成形体は、漆黒性と耐衝撃性に優れており、高級感と耐衝撃性を必要とする用途に広く採用することができ、電気・電子機器の部品、筺体や自動車内外装部品等として特に好適である。