特許第6071698号(P6071698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071698
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/00 20060101AFI20170123BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20170123BHJP
   A01F 12/46 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   A01D69/00 302L
   A01D41/12 E
   A01D69/00 303G
   A01D69/00 303A
   A01F12/46
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-69039(P2013-69039)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-187987(P2014-187987A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】錦織 将浩
(72)【発明者】
【氏名】松川 雅彦
【審査官】 中澤 真吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−212153(JP,A)
【文献】 実開昭57−076458(JP,U)
【文献】 特開平01−269425(JP,A)
【文献】 特開平01−023828(JP,A)
【文献】 特開2009−278954(JP,A)
【文献】 特開2010−273608(JP,A)
【文献】 特開2002−204618(JP,A)
【文献】 実開平04−021216(JP,U)
【文献】 実開昭59−047339(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 67/00−69/12
A01D 41/00−41/16
A01D 47/00
A01F 12/46−12/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に搭載されたエンジンと、該エンジンの回転数を調節するアクセル手段と、前記エンジンから脱穀部への動力を入切する脱穀クラッチと、前記エンジンから刈取部への動力を伝達又は非伝達に切換える伝動装置と、を備えたコンバインにおいて、
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転検出手段と、
前記脱穀クラッチ及び前記伝動装置を含む刈取作業を制御する制御手段と、
前記制御手段に作業開始又は作業終了を指令する操作手段と、を備え、
前記制御手段は、前記アクセル手段により前記エンジンを操作して、前記エンジン回転検出手段が所定回転数以上である作業回転状態を検出すると共に、前記操作手段が前記作業開始を指令することにより、前記脱穀クラッチが入状態及び前記伝動装置が伝達状態となる刈取作業開始姿勢になるように制御し、かつ前記刈取作業開始姿勢にあって、前記操作手段が作業終了を指令すると、前記脱穀クラッチが切状態及び前記伝動装置が非伝達状態となる刈取作業終了姿勢になるように制御し、前記操作手段が作業終了を指令しない限りは、前記エンジン回転検出手段が所定回転数以下である非作業回転状態を検出しても、前記刈取作業開始姿勢を維持してなる、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
機体に搭載されたエンジンと、該エンジンの回転数を調節するアクセル手段と、前記エンジンから脱穀部への動力を入切する脱穀クラッチと、前記エンジンから刈取部への動力を伝達又は非伝達に切換える伝動装置と、を備えたコンバインにおいて、
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転検出手段と、
前記脱穀クラッチ及び前記伝動装置を含む刈取作業を制御する制御手段と、
前記制御手段に作業開始又は作業終了を指令する操作手段と、
前記機体の前進状態又は後進状態を検出する前後進検出手段と、
前記刈取部の高さを検出する刈取高さ検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記アクセル手段により前記エンジンを操作して、前記エンジン回転検出手段が所定回転数以上である作業回転状態を検出すると共に、前記操作手段が前記作業開始を指令することにより、前記脱穀クラッチが入状態となり、更に、前記機体の前進状態を前記前後進検出手段が検出すること及び前記刈取部が所定高さ以下にあることを前記刈取高さ検出手段が検出することの少なくともいずれか一方を満たすことにより、前記伝動装置が伝達状態となる刈取作業開始姿勢になるように制御し、かつ前記刈取作業開始姿勢にあって、前記操作手段が作業終了を指令すると、前記脱穀クラッチが切状態及び前記伝動装置が非伝達状態となる刈取作業終了姿勢になるように制御し、前記操作手段が作業終了を指令しない限りは、前記エンジン回転検出手段が所定回転数以下である非作業回転状態を検出しても、前記刈取作業開始姿勢を維持してなる、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
前記エンジンからの動力を変速して、作業レンジと走行レンジとに切換え操作し得る副変速操作具と、
該副変速操作具の操作位置を検出する副変速検出手段と、
前記脱穀部で脱穀した穀粒を機外に排出し、昇降及び回動自在な排出オーガと、
前記排出オーガが、格納位置にあるか否かを検出する排出オーガ検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記副変速操作具が前記走行レンジにあることを前記副変速検出手段が検出すること、及び前記排出オーガ検出手段が、前記排出オーガが前記格納位置以外にあることを検出することの少なくともいずれか一方が満たされると、前記刈取作業開始姿勢にあっては前記刈取作業終了姿勢になるように制御し、前記刈取作業開始姿勢になければ前記刈取作業開始姿勢になる制御をキャンセルする、
請求項1又は2に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈の刈取・脱穀を行うコンバインに係り、詳しくは、エンジンからの動力を入切する脱穀クラッチ及び刈取クラッチ等の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、刈取作業をする際には、まず脱穀クラッチ及び刈取クラッチが切状態でエンジンを始動し、エンジン回転数を上げて作業回転状態にした後、脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入状態とする。そして、その他刈取部の高さ調節、ナローガイドの張出し、デバイダの機体外側への回動等の各種操作を行い、実際に刈取作業を開始する。
【0003】
従来、これらの操作を簡略化するために、エンジンの始動後において、作業指令手段にて作業開始指令を指令することにより、アクセル手段を定格回転状態に且つ脱穀クラッチを入状態にする運転起動状態にし、更に運転操作状態検出手段にて刈取作業開始条件が満たされていれば刈取クラッチを入状態とするものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4476235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のものは、作業指令手段を操作するのみで、エンジン回転数、脱穀クラッチ、刈取クラッチの制御を行うために、作業者が不用意に作業指令手段を操作すると、容易に誤操作を起こしてしまうという問題があった。また、作業指令手段で作業開始指令を指令すると、エンジン回転数が自動で定格回転状態となり、作業者が任意にエンジン回転数を調整することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、脱穀クラッチ及び刈取クラッチの入切制御はしつつ、エンジンの回転数は作業者が手動で行うようにして、もって上述した課題を解決したコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、機体(3)に搭載されたエンジンと、該エンジンの回転数を調節するアクセル手段(25)と、前記エンジンから脱穀部(7)への動力を入切する脱穀クラッチと、前記エンジンから刈取部(6)への動力を伝達又は非伝達に切換える伝動装置と、を備えたコンバイン(1)において、
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転検出手段(32)と、
前記脱穀クラッチ及び前記伝動装置を含む刈取作業を制御する制御手段(31)と、
前記制御手段(31)に作業開始又は作業終了を指令する操作手段(27)と、を備え、
前記制御手段(31)は、前記アクセル手段(25)により前記エンジンを操作して、前記エンジン回転検出手段(32)が所定回転数以上である作業回転状態を検出すると共に、前記操作手段(27)が前記作業開始を指令することにより、前記脱穀クラッチが入状態及び前記伝動装置が伝達状態となる刈取作業開始姿勢になるように制御し、かつ前記刈取作業開始姿勢にあって、前記操作手段(27)が作業終了を指令すると、前記脱穀クラッチが切状態及び前記伝動装置が非伝達状態となる刈取作業終了姿勢になるように制御し、前記操作手段(27)が作業終了を指令しない限りは、前記エンジン回転検出手段(32)が所定回転数以下である非作業回転状態を検出しても、前記刈取作業開始姿勢を維持してなる、
ことを特徴とする。
【0008】
例えば図3を参照して、機体(3)に搭載されたエンジンと、該エンジンの回転数を調節するアクセル手段(25)と、前記エンジンから脱穀部(7)への動力を入切する脱穀クラッチと、前記エンジンから刈取部(6)への動力を伝達又は非伝達に切換える伝動装置と、を備えたコンバイン(1)において、
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転検出手段(32)と、
前記脱穀クラッチ及び前記伝動装置を含む刈取作業を制御する制御手段(31)と、
前記制御手段(31)に作業開始又は作業終了を指令する操作手段(27)と、
前記機体(3)の前進状態又は後進状態を検出する前後進検出手段と、
前記刈取部(6)の高さを検出する刈取高さ検出手段(42)と、を備え、
前記制御手段(31)は、前記アクセル手段(25)により前記エンジンを操作して、前記エンジン回転検出手段(32)が所定回転数以上である作業回転状態を検出すると共に、前記操作手段(27)が前記作業開始を指令することにより、前記脱穀クラッチが入状態となり、更に、前記機体(3)の前進状態を前記前後進検出手段が検出すること及び前記刈取部(6)が所定高さ以下にあることを前記刈取高さ検出手段(42)が検出することの少なくともいずれか一方を満たすことにより、前記伝動装置が伝達状態となる刈取作業開始姿勢になるように制御し、かつ前記刈取作業開始姿勢にあって、前記操作手段(27)が作業終了を指令すると、前記脱穀クラッチが切状態及び前記伝動装置が非伝達状態となる刈取作業終了姿勢になるように制御し、前記操作手段(27)が作業終了を指令しない限りは、前記エンジン回転検出手段(32)が所定回転数以下である非作業回転状態を検出しても、前記刈取作業開始姿勢を維持してなる。
【0010】
例えば図3及び図4を参照して、前記エンジンからの動力を変速して、作業レンジと走行レンジとに切換え操作し得る副変速操作具(23)と、
該副変速操作具(23)の操作位置を検出する副変速検出手段(33)と、
前記脱穀部(7)で脱穀した穀粒を機外に排出し、昇降及び回動自在な排出オーガ(10)と、
前記排出オーガ(10)が、格納位置にあるか否かを検出する排出オーガ検出手段(35)と、を備え、
前記制御手段(31)は、前記副変速操作具(23)が前記走行レンジにあることを前記副変速検出手段(33)が検出すること、及び前記排出オーガ検出手段(35)が、前記排出オーガ(10)が前記格納位置以外にあることを検出することの少なくともいずれか一方が満たされると、前記刈取作業開始姿勢にあっては前記刈取作業終了姿勢になるように制御し、前記刈取作業開始姿勢になければ前記刈取作業開始姿勢になる制御をキャンセルする。
【0011】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明は、エンジン回転検出手段が作業回転状態を検出し、かつ操作手段が作業開始を指令すると、脱穀クラッチが入状態及び伝動装置が伝達状態となる刈取作業開始姿勢になるように制御されるので、刈取作業開始姿勢にするための操作の手間を省略して簡単に刈取作業開始姿勢にすることができ、作業性を向上することができるものでありながら、不用意に操作手段を操作してしまっただけでは刈取作業開始姿勢にはならず、誤操作を防止して安全性を向上できる。更に、刈取作業開始姿勢にあって、操作手段が作業終了を指令しない限りはエンジン回転検出手段が非作業回転状態を検出しても、作業開始姿勢を維持するので、メンテナンス性を向上できると共に、例えば種もみを収穫するために種子刈りする際に、刈取作業開始姿勢は維持しつつエンジン回転数を落として扱胴の回転数を低くすることができ、籾の損傷を低減して良質な種もみを得ることができる。また、刈取作業開始姿勢にあって操作手段が作業終了を指令すると、脱穀クラッチが切状態及び伝動装置が非伝達状態となって刈取作業終了姿勢になるので、例えば圃場から路上へ移動する際に、速やかに刈取作業開始姿勢から刈取作業終了姿勢に切換えることができる。
【0013】
請求項2に係る本発明は、エンジン回転数が作業回転状態かつ操作手段が作業開始を指令することで脱穀クラッチが入状態になり、更に、機体が前進状態及び刈取部が所定高さ以下にあることの少なくともいずれか一方が満たされることで伝動装置が伝達状態となって刈取作業開始姿勢になるように制御されるので、刈取部への動力伝達を簡単かつ適切に入切することができ、燃費を向上し、かつ誤操作を防止して安全性を向上できる。更に、刈取作業開始姿勢にあって、操作手段が作業終了を指令しない限りはエンジン回転検出手段が非作業回転状態を検出しても、作業開始姿勢を維持するので、メンテナンス性を向上できると共に、例えば種もみを収穫するために種子刈りする際に、刈取作業開始姿勢は維持しつつエンジン回転数を落として扱胴の回転数を低くすることができ、籾の損傷を低減して良質な種もみを得ることができる。また、刈取作業開始姿勢にあって操作手段が作業終了を指令すると、脱穀クラッチが切状態及び伝動装置が非伝達状態となって刈取作業終了姿勢になるので、例えば圃場から路上へ移動する際に、速やかに刈取作業開始姿勢から刈取作業終了姿勢に切換えることができる。
【0015】
請求項に係る本発明は、副変速操作具が走行レンジにあること、及び排出オーガが格納位置以外にあることの少なくともいずれか一方が満たされると、刈取作業開始姿勢にならないように制御されるので、刈取作業に不向きな速度や排出オーガが格納位置以外での作業を防止し、刈取不良を防止すると共に安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態に係るコンバインを示す全体側面図。
図2】その全体平面図。
図3】コンバインの制御を示す制御ブロック図。
図4】コンバインの制御を示すフローチャート。
図5】コンバインの各種駆動部分の制御を示す図であって、(a)は作業開始制御を示すフローチャート、(b)は作業終了制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。コンバイン1は、図1及び図2に示すように、クローラ走行装置2により支持され、不図示のエンジンを搭載した機体3を有しており、該機体3の前方には、穀稈を刈取ってフィードチェン5に受け渡す刈取部6が昇降自在かつ左右スライド自在に設けられている。上記機体3の一側方には、上記刈取部6及びフィードチェン5で刈取・搬送された穀稈を脱穀処理及び選別処理する脱穀部7が設けられており、他側方には、作業者が運転操作を行う運転操作部8が設けられている。
【0018】
上記運転操作部8の後方には、上記脱穀部7で脱穀・選別された穀粒を貯蔵するグレンタンク9が配置されており、該グレンタンク9の後方には、該グレンタンク9内に貯蔵された穀粒を機外に排出する昇降及び回動自在の排出オーガ10が、オーガレスト11に載置支持されて設けられている。上記脱穀部7で脱穀が終わった排藁は、該脱穀部7の後部に配置された不図示のカッター装置で切断され、開閉自在の拡散カバー12を介して機体3後方の刈取跡地に拡散排出される。
【0019】
上記刈取部6は、圃場の穀稈を分草する回動自在のデバイダ13と、該デバイダ13の後方で分草された穀稈を引き起こす引起装置15と、引起された穀稈を刈取るレシプロ式の刈刃16と、刈取った穀稈を搬送してフィードチェン5に受け渡す穀稈搬送装置17と、穀稈の扱ぎ深さを調節する扱深搬送体19と、などから構成されており、上記刈取部6の未刈地側には、機体3前方に張り出して植立穀稈を分草案内する作業姿勢と、機体3側に引き寄せた格納姿勢と、に切換え可能に構成されたナローガイド20が設けられている。
【0020】
上記運転操作部8は、該運転操作部8の中央に設けられた運転席21の左側方に、中立位置から前方又は後方に操作することにより、前進又は後進車速を無段階に調節可能な主変速レバー22と、低速の作業レンジと高速の走行レンジとに切換え操作し得る副変速レバー23(副変速操作具)と、エンジンの回転数を調節するアクセルレバー25(アクセル手段)と、ボタン操作で不図示の脱穀クラッチ及び刈取クラッチ(伝動装置)を入切して、エンジンから上記脱穀部7又は刈取部6への動力をそれぞれ入切し得るパワークラッチ26と、後述する制御部に作業開始又は作業終了を指令する作業指令操作レバー27(操作手段)と、等を有している。なお、作業指令操作レバー27はレバーに限らず、ボタンスイッチ等でもよい。更に、上記運転席21の前方に、上記刈取部6の昇降操作及び上記機体3の旋回操作をし得るマルチステアリングレバー29と、報知ランプ30等を、後方に、上記排出オーガ10の昇降及び回動操作や穀粒の排出操作を行う不図示のオーガリモコン等を、有している。
【0021】
図3は、本実施の形態における制御ブロック図を示しており、コンバイン1は、マイコン(CPU,ROM,RAM等を含む)からなり該制御ブロック図を構成する制御部31(制御手段)を備えている。該制御部31の入力側には、作業開始又は作業終了を指令する上記作業指令操作レバー27と、上記アクセルレバー25の操作によって調節されるエンジン回転数を検出するエンジン回転センサ32(エンジン回転検出手段)と、上記副変速レバー23の作業レンジ位置又は走行レンジ位置(操作位置)を検出する走行副変速センサ33(副変速検出手段)と、上記排出オーガ10が上記オーガレスト11に載置支持される格納位置にあるか否かを検出するオーガ旋回ポテンショメータ35(排出オーガ検出手段)と、脱穀クラッチ及び刈取クラッチの入状態又は切状態をそれぞれ検出する脱穀クラッチ位置センサ36,刈取クラッチ位置センサ37と、上記ナローガイド20の作業姿勢又は格納姿勢を検出するナローガイド位置センサ39と、上記拡散カバー12の開閉位置を検出する拡散カバー位置センサ40と、上記扱深搬送体19の位置を検出する扱深位置センサ41と、上記刈取部6の昇降位置及び左右スライド位置をそれぞれ検出する刈取部高さ検出センサ42(刈取高さ検出手段),刈取部スライド位置センサ43と、上記デバイダ13が機体3外側に開く開状態と機体3内側に閉じる閉状態とを検出するデバイダ位置センサ45と、が接続されている。
【0022】
また、上記制御部31の出力側には、上記報知ランプ30と、上記運転操作部8に配置されるスピーカー等の音声装置46と、脱穀クラッチ及び刈取クラッチをそれぞれ入切する脱穀クラッチ駆動モータ47,刈取クラッチ駆動モータ49と、上記ナローガイド20を作業姿勢又は格納姿勢に切換えるナローガイド駆動モータ50と、上記拡散カバー12を開状態又は閉状態に切換える拡散カバー駆動モータ51と、上記扱深搬送体19の位置を調節する扱深駆動モータ52と、上記刈取部6をそれぞれ昇降及び左右スライドする刈取部昇降シリンダ53,刈取部スライド駆動モータ55と、上記デバイダ13を開状態又は閉状態に切換えるデバイダ駆動モータ56と、が接続されている。
【0023】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、コンバイン1が圃場で刈取作業する際に作業者は、手動又は自動にて刈取作業を行うための刈取作業開始姿勢にコンバイン1を設定する。すなわち、手動で刈取作業開始姿勢にする場合には、まずエンジンを始動させ、上記アクセルレバー25によってエンジン回転数を上げ、上記パワークラッチ26によって脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入状態にする。そして、ナローガイド20の作業姿勢への張出し、拡散カバー12を開状態に設定、扱深搬送体19の位置調整、刈取部6の昇降・スライド位置調整、デバイダ13を開状態に設定、等の各種操作を行って、刈取作業を行う。
【0024】
次いで、自動制御にて刈取作業開始姿勢にする際の、本実施の形態におけるコンバインの制御について説明する。図4は、コンバイン1の制御のフローチャートを示しており、S1において、作業指令操作レバー27のON/OFF、すなわち作業開始指令/作業終了指令が検出判断され、ON(作業開始指令)の場合には、S2においてエンジン回転センサ32がエンジン回転数を検出する。検出したエンジン回転数が、所定回転数以上である作業回転状態の場合には、S3に進む。
【0025】
S3においては、走行副変速センサ33が副変速レバー23の位置を検出し、該副変速レバー23が作業レンジにあればS4に進む。S4においては、オーガ旋回ポテンショメータ35が、排出オーガ10が格納位置にあるか格納位置以外の排出位置にあるかを検出し、排出オーガ10が格納位置にあれば、S5へと進み、報知ランプ30が点灯して刈取作業開始姿勢になるように作業開始制御(S6)されたことが作業者に認識される。S6で作業開始制御がされると、S7へと進み作業状態フラグが1となり、スタートへと戻る。
【0026】
上記作業開始制御とは、図5(a)に示すように、脱穀クラッチが入状態(C1)、刈取クラッチが入状態(C2)、ナローガイド20が作業姿勢(張出姿勢)(C3)、拡散カバー12が開状態(C4)、扱深搬送体19を扱深さが一定となるように刈取穀稈の稈長に応じて自動位置調整(C5)、刈取部6を刈り高さが一定となるように自動昇降位置調整(C6)、刈取部6を作業者が視認しやすい左側位置へスライド移動(C7)、デバイダ13が開状態(C8)、及び音声装置46による各種音声アシストをON(C9)、にする各種制御である。これにより、刈取作業開始姿勢にするための各種手動操作の手間を省略して簡単に刈取作業開始姿勢にすることができ、作業性を向上することができるものでありながら、不用意に作業指令操作レバー27をONにしてしまったとしても、エンジン回転数、副変速レバー、及び排出オーガの位置、といった他の条件があるために、誤操作を防止して安全性を向上できる。
【0027】
S1において作業指令操作レバー27がOFF(作業終了指令)に設定、S3において副変速レバー23が走行レンジに設定、又はS4において排出オーガ10が格納位置以外の排出位置にあると、S8へ進み、報知ランプ30が消灯して、刈取作業終了姿勢になるように作業終了制御(S9)されたことが作業者に認識される。S9で作業終了制御がされると、S10へと進み作業状態フラグが0となり、S11において「副変速を作業レンジにセットしてください。」、「オーガを格納してください。」等の各種音声アシストが行われ、スタートへと戻る。これにより、高速な走行レンジでの刈取作業及び排出オーガ10が排出位置にある状態での刈取作業が防止され、刈取不良を防止すると共に安全性を向上することができる。
【0028】
上記作業終了制御とは、図5(b)に示すように、脱穀クラッチが切状態(C11)、刈取クラッチが切状態(C12)、ナローガイド20が格納姿勢(C13)、拡散カバー12が閉状態(C14)、扱深搬送体19の自動位置調整がOFF(C15)、刈取部6の自動昇降位置調整がOFF(C16)、刈取部6右側位置へスライド移動(C17)、デバイダ13が閉状態(C18)、及び音声装置46による各種音声アシストをOFF(C19)、にする各種制御である。なお、上記作業開始制御及び作業終了制御における脱穀クラッチ及び刈取クラッチの入切制御以外の制御については、個別に制御をキャンセルできるようにしてもよい。
【0029】
S2においてエンジン回転数が所定回転数以下である非作業回転状態であった場合には、S12へ進み、作業状態フラグが1か0かを判断する。S12で作業状態フラグが0、すなわち、S9で作業終了制御が行われ刈取作業終了姿勢にある場合には、S13へ進み報知ランプ30が点滅すると共に、S14で「エンジン回転数を作業回転にセットしてください。」等、エンジン回転数を上昇させるよう音声アシストされ、スタートへと戻る。
【0030】
S12で作業状態フラグが1、すなわちS6で作業開始制御が行われ刈取作業開始姿勢にある場合には、S3へ進み、そのまま副変速レバーが作業レンジ(S3:作業レンジ)、排出オーガ10が格納位置(S4:格納位置)にあれば、刈取作業開始姿勢を維持する。これにより、作業指令操作レバー27をONにすると共にアクセルレバー25によりエンジン回転数を所定回転数以上である作業回転状態にして、一度刈取作業開始姿勢にした後(S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7)に、アクセルレバー25によりエンジン回転数を所定回転数以下である非作業回転状態にする(S1,S2,S12,S3,S4,S5,S6,S7)ことで、コンバイン1のメンテナンス時にエンジン回転数が低い状態でメンテナンスを行うことができ、メンテナンス性を向上することができる。また、エンジン回転数が低い状態、すなわち扱胴の回転数が低い状態で刈取作業を行うことで、籾の損傷を低減して良質な種もみを得る種子刈りを行うことができる。
【0031】
また、一度刈取作業開始姿勢にした後(S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7)に、作業指令操作レバー27をOFF(作業終了指令)にするだけで、刈取作業終了姿勢になる(S1,S8,S9,S10,S11)ので、例えば圃場で刈取作業が終わり路上へ移動する際に、容易かつ速やかに刈取作業開始姿勢から刈取終了開始姿勢に切換えることができる。
【0032】
なお、脱穀クラッチ駆動モータ47及び刈取クラッチ駆動モータ49は、一つのモータによって連動して動作するように構成してもよく、モータではなく油圧シリンダやその他アクチュエータでもよい。
【0033】
また、エンジンから刈取部への動力の入切は、ベルトテンションクラッチ等からなる刈取クラッチに限らず、例えばHST(静油圧式無段変速機)を用いて、斜板を傾斜させて刈取部への動力を伝達し、斜板を中立位置にして刈取部への動力を非伝達に切換える伝動装置を用いてもよい。
【0034】
また、コンバイン1は、機体3の前進状態又は後進状態を検出する前後進検出手段を備え、作業指令操作レバー27がON(作業開始指令)かつエンジン回転数が作業回転状態であることにより脱穀クラッチを入状態とし、更に、機体3が前進走行したことを上記前後進検出手段が検出すること及び刈取部6が所定高さ以下にあることを上記刈取部高さ検出センサ42が検出することの少なくともいずれか一方が満たされることにより、刈取クラッチが入状態となる刈取作業開始姿勢になるように制御するように構成してもよい。これにより、刈取作業開始姿勢にするまでの手間を簡略化しつつも、刈取部6への動力伝達を簡単かつ適切に入切することができ、燃費を向上し、かつ誤操作を防止して安全性を向上できる。
【符号の説明】
【0035】
1 コンバイン
3 機体
6 刈取部
7 脱穀部
10 排出オーガ
23 副変速操作具(副変速レバー)
25 アクセル手段(アクセルレバー)
27 操作手段(作業指令操作レバー)
31 制御手段
32 エンジン回転検出手段(エンジン回転センサ)
33 副変速検出手段(走行副変速センサ)
35 排出オーガ検出手段(オーガ旋回ポテンショメータ)
42 刈取高さ検出手段(刈取部高さ検出センサ)
図1
図2
図3
図4
図5