特許第6071711号(P6071711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6071711熱交換器の円筒フィンユニット製造方法及び該製造方法を用いた熱交換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071711
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】熱交換器の円筒フィンユニット製造方法及び該製造方法を用いた熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/30 20060101AFI20170123BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20170123BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20170123BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20170123BHJP
   F28F 1/40 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   F28F1/30 Z
   F28F1/32 F
   F28F1/02 A
   F28D1/053 A
   F28F1/40 D
   F28F1/40 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-79145(P2013-79145)
(22)【出願日】2013年4月5日
(65)【公開番号】特開2014-202419(P2014-202419A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 幸浩
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−127896(JP,A)
【文献】 特開2008−138994(JP,A)
【文献】 実開昭61−181209(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/02,1/12,1/16,1/26
F28F 1/30,1/32,1/40,1/42
F28F 13/12
F28D 1/053
F25B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所要間隔をあけて積層され且つ内部に被冷却流体が流通する複数の偏平チューブと、該複数の偏平チューブの間に配設され且つ周面に螺旋状ビードが形成された複数の円筒フィンとを備え、前記複数の偏平チューブの間に冷却流体を円筒フィンの軸線方向へ流通させて前記偏平チューブ内の被冷却流体と熱交換させる熱交換器の円筒フィンユニット製造方法であって、
前記円筒フィンの軸線方向を矩形の縦辺として設定し且つ前記円筒フィンの軸線と直角方向を矩形の横辺として設定した矩形形状の金属薄板に、前記縦辺方向へ斜めに延びる傾斜ビード部を、前記縦辺方向へ所要間隔をあけて複数形成すると共に前記横辺方向へ所要間隔をあけて複数形成する傾斜ビード部形成工程と、
該傾斜ビード部形成工程で傾斜ビード部が形成された金属薄板を曲げ加工することにより、前記縦辺方向へ所要間隔をあけて形成された複数の傾斜ビード部の終点と始点とがつながり前記螺旋状ビードとして周面に形成される円筒部と、該円筒部の接線方向へ延在する平板部とが前記横辺方向へ交互に連なる円筒フィンパネルを形成する円筒フィンパネル加工工程と、
該円筒フィンパネル加工工程で形成された一枚の円筒フィンパネルの円筒部をもう一枚の円筒フィンパネルの円筒部間にその軸線方向へ挿入することにより、前記一枚の円筒フィンパネルの平板部と、もう一枚の円筒フィンパネルの平板部との間に前記円筒部が配置される円筒フィンユニットを形成する円筒フィンユニット組付工程と
を有することを特徴とする熱交換器の円筒フィンユニット製造方法。
【請求項2】
前記円筒フィンユニット組付工程で形成された円筒フィンユニットを前記平板部が重なり合うよう複数積層する積層工程を有する請求項1記載の熱交換器の円筒フィンユニット製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の熱交換器の円筒フィンユニット製造方法を用いた熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の円筒フィンユニット製造方法及び該製造方法を用いた熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に搭載される熱交換器としてのラジエータは、図6に示される如く、互いに所要間隔をあけて積層され且つ内部に冷却液(被冷却流体)が流通する複数の偏平チューブ1と、該複数の偏平チューブ1の間に配設されて両側の偏平チューブ1の平面2に接する波状のコルゲートフィン3とを備えており、エンジン(図示せず)を冷却して高温となった冷却液が前記偏平チューブ1内へ導かれ、車両の走行によって生じる風や冷却ファン(図示せず)で発生させた風(冷却流体)を前記コルゲートフィン3が配設された空間へ流通させ、該コルゲートフィン3及び偏平チューブ1を介して高温の冷却液を冷却するようになっている。
【0003】
ところで、近年、車両の排ガス規制の強化によりエンジンへの負荷が増加する傾向にあり、ラジエータの熱伝達効率を高めて冷却性能を向上させることが強く求められている。
【0004】
このため、従来においては、前記コルゲートフィン3を用いた熱交換器としてのラジエータにおいては、コルゲートフィン3にルーバーを設けることにより、放熱面積を増加させて熱伝達効率の向上を図ろうとするものがあった。
【0005】
しかし、前記コルゲートフィン3にルーバーを設けることにより熱伝達効率を向上させるのでは、該コルゲートフィン3が配設された空間を流通する風の圧力損失が増加して熱伝達効率を充分に向上させることができないという問題があった。
【0006】
こうした問題を解決するものとして、本出願人は、既に特許文献1に開示されている熱交換器を出願した。この熱交換器は、図7に示される如く、互いに所要間隔をあけて積層され且つ内部に冷却液(被冷却流体)が流通する複数の偏平チューブ1の間に、外周面5から凹んで内周面6に突出する螺旋状ビード7が形成された複数の円筒フィン4を配設し、前記複数の偏平チューブ1の間に前記風(冷却流体)を円筒フィン4の軸線方向へ流通させて前記偏平チューブ1内の冷却液と熱交換させるようにしたものである。
【0007】
そして、特許文献1に開示されている熱交換器においては、前記複数の偏平チューブ1の間で円筒フィン4の軸線方向へ流通する風が、該円筒フィン4の螺旋状ビード7により旋回流となるので、風の流通する距離と滞留時間が延長される形となり、コルゲートフィン3による層流の冷却に比べて熱伝達効率を向上することができる。又、ルーバー付きコルゲートフィンに比べて圧損を大幅に低減し、熱伝達効率を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−127895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されている熱交換器の円筒フィン4は、多数のパイプを偏平チューブ1の間でろう付けする必要があり、該ろう付け用のパウダーを多数のパイプに付着させた状態で、該パウダーの脱落を防止しながらパイプを偏平チューブ1の間に差し込むことは、非常に生産効率が悪く、製造面で実用化に至っていないのが現状であった。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、円筒フィンが配設された空間を流通する冷却流体の圧力損失を低減して熱伝達効率を向上させつつ、生産効率を高め実用化を図り得る熱交換器の円筒フィンユニット製造方法及び該製造方法を用いた熱交換器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、互いに所要間隔をあけて積層され且つ内部に被冷却流体が流通する複数の偏平チューブと、該複数の偏平チューブの間に配設され且つ周面に螺旋状ビードが形成された複数の円筒フィンとを備え、前記複数の偏平チューブの間に冷却流体を円筒フィンの軸線方向へ流通させて前記偏平チューブ内の被冷却流体と熱交換させる熱交換器の円筒フィンユニット製造方法であって、
前記円筒フィンの軸線方向を矩形の縦辺として設定し且つ前記円筒フィンの軸線と直角方向を矩形の横辺として設定した矩形形状の金属薄板に、前記縦辺方向へ斜めに延びる傾斜ビード部を、前記縦辺方向へ所要間隔をあけて複数形成すると共に前記横辺方向へ所要間隔をあけて複数形成する傾斜ビード部形成工程と、
該傾斜ビード部形成工程で傾斜ビード部が形成された金属薄板を曲げ加工することにより、前記縦辺方向へ所要間隔をあけて形成された複数の傾斜ビード部の終点と始点とがつながり前記螺旋状ビードとして周面に形成される円筒部と、該円筒部の接線方向へ延在する平板部とが前記横辺方向へ交互に連なる円筒フィンパネルを形成する円筒フィンパネル加工工程と、
該円筒フィンパネル加工工程で形成された一枚の円筒フィンパネルの円筒部をもう一枚の円筒フィンパネルの円筒部間にその軸線方向へ挿入することにより、前記一枚の円筒フィンパネルの平板部と、もう一枚の円筒フィンパネルの平板部との間に前記円筒部が配置される円筒フィンユニットを形成する円筒フィンユニット組付工程と
を有することを特徴とする熱交換器の円筒フィンユニット製造方法にかかるものである。
【0012】
前記熱交換器の円筒フィンユニット製造方法においては、前記円筒フィンユニット組付工程で形成された円筒フィンユニットを前記平板部が重なり合うよう複数積層する積層工程を有することが好ましい。
【0013】
一方、本発明は、前記熱交換器の円筒フィンユニット製造方法を用いた熱交換器にかかるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱交換器の円筒フィンユニット製造方法及び該製造方法を用いた熱交換器によれば、円筒フィンが配設された空間を流通する冷却流体の圧力損失を低減して熱伝達効率を向上させつつ、生産効率を高め実用化を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の熱交換器の円筒フィンユニット製造方法の実施例における傾斜ビード部形成工程で傾斜ビード部が形成された金属薄板を示す平面図と、続く円筒フィンパネル加工工程で形成された円筒フィンパネルを示す正面図である。
図2図1のII部拡大図である。
図3】本発明の熱交換器の円筒フィンユニット製造方法の実施例における円筒フィンユニット組付工程で互いに挿入される円筒フィンパネルを示す平面図と、組み付けられた円筒フィンユニットを示す正面図である。
図4】本発明の熱交換器の円筒フィンユニット製造方法で製造された熱交換器の一例を示す斜視図である。
図5】本発明の熱交換器の円筒フィンユニット製造方法において更に積層工程を加えることにより製造された熱交換器の他の例を示す正面図である。
図6】従来の熱交換器としてのラジエータの一例を示す斜視図である。
図7】特許文献1に記載されている熱交換器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1図4は本発明の熱交換器の円筒フィンユニット製造方法及び該製造方法を用いた熱交換器の実施例であって、図中、図7と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図7に示す従来のものと同様であるが、本実施例の特徴とするところは、図1図4に示す如く、傾斜ビード部形成工程と円筒フィンパネル加工工程と円筒フィンユニット組付工程とを経て円筒フィンユニット4Uを製造するようにした点にある。
【0018】
前記傾斜ビード部形成工程においては、図1に示す如く、円筒フィン4の軸線方向を矩形の縦辺Vとして設定し且つ前記円筒フィン4の軸線と直角方向を矩形の横辺Hとして設定した矩形形状のアルミニウム等の金属薄板8に、前記縦辺V方向へ斜めに延びる傾斜ビード部9を、前記縦辺V方向へ所要間隔をあけて複数(図1の例では二条)形成すると共に前記横辺H方向へ所要間隔をあけて複数(図1の例では四組)形成するようになっている。
【0019】
前記円筒フィンパネル加工工程においては、図1に示す如く、前記傾斜ビード部形成工程で傾斜ビード部9が形成された金属薄板8を曲げ加工することにより、前記縦辺V方向へ所要間隔をあけて形成された複数(図1の例では二条)の傾斜ビード部9の終点9eと始点9sとがつながり螺旋状ビード7(図3及び図7参照)として周面に形成される外径φdの円筒部4aと、該円筒部4aの接線方向へ延在する平板部4bとが前記横辺H方向へ交互に連なる円筒フィンパネル4Aを形成するようになっている。尚、前記円筒部4aと平板部4bとの間には、図2に示す如く、金属薄板8を曲げ加工する際に生じる絞り部4cが形成され、該絞り部4cにより、前記平板部4bの円筒部4a側表面と該円筒部4aの中心との距離hは、h>d/2となるようにしてある。
【0020】
ここで、前記円筒部4aの中心間距離Pは、
P=2d−α
とし、αは前記円筒部4aの外径φdに応じて設定される微小値としてある。
【0021】
尚、前記螺旋状ビード7は、前記円筒部4aの外周面側から凹んで内周面側に突出するよう形成してある。
【0022】
前記円筒フィンユニット組付工程においては、図3に示す如く、前記円筒フィンパネル加工工程で形成された一枚の円筒フィンパネル4Aの円筒部4aをもう一枚の円筒フィンパネル4Aの円筒部4a間にその軸線方向へ挿入することにより、前記一枚の円筒フィンパネル4Aの平板部4bと、もう一枚の円筒フィンパネル4Aの平板部4bとの間に前記円筒部4aが配置される円筒フィンユニット4Uを形成するようになっている。
【0023】
ここで、図1及び図2に示す如く、2前記絞り部4cにより前記平板部4bの円筒部4a側表面と該円筒部4aの中心との距離hは、h>d/2とすると共に、前記円筒部4aの中心間距離Pは、
P=2d−α
としてあるため、前記円筒フィンパネル加工工程で形成された一枚の円筒フィンパネル4Aの円筒部4aをもう一枚の円筒フィンパネル4Aの円筒部4a間にその軸線方向へ挿入して組み付けることが可能となっており、しかも、互いに組み付けた二枚の円筒フィンパネル4Aが円筒部4aの軸線方向と直角で且つ平板部4bと直交する方向へ離脱することはない。
【0024】
そして、前記円筒フィンユニット組付工程で形成された円筒フィンユニット4Uを一体物として、図4に示す如く、偏平チューブ1の間に差し込むようにするだけで熱交換器の製造が行えるようになる。
【0025】
この結果、本実施例における方法を用いて熱交換器を製造すれば、特許文献1に開示されている熱交換器の円筒フィン4のように、多数のパイプを偏平チューブ1の間でろう付けする必要がなくなり、該ろう付け用のパウダーを多数のパイプに付着させた状態で、該パウダーの脱落を防止しながらパイプを偏平チューブ1の間に差し込むようなこともしなくて済み、生産効率が非常に良くなり、製造面で実用化が可能となる。
【0026】
こうして、円筒フィン4が配設された空間を流通する冷却流体の圧力損失を低減して熱伝達効率を向上させつつ、生産効率を高め実用化を図り得る。
【0027】
因みに、本実施例における方法では、図5に示す如く、前記円筒フィンユニット組付工程で形成された円筒フィンユニット4Uを前記平板部4bが重なり合うよう複数(図5の例では二組)積層する積層工程を追加することも可能であり、このようにすれば、必要に応じて円筒フィンユニット4Uの積層数を選定し、放熱面積を調節して熱伝達効率をより向上させる上で有効となる。
【0028】
尚、本発明の熱交換器の円筒フィンユニット製造方法及び該製造方法を用いた熱交換器は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、熱交換器は車両のラジエータに限らず車両以外の他の機器にも適用可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 偏平チューブ
4 円筒フィン
4A 円筒フィンパネル
4U 円筒フィンユニット
4a 円筒部
4b 平板部
4c 絞り部
7 螺旋状ビード
8 金属薄板
9 傾斜ビード部
9e 終点
9s 始点
V 縦辺
H 横辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7