特許第6071715号(P6071715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ポーラファルマの特許一覧

特許6071715ドラニダゾール構成光学異性体の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071715
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ドラニダゾール構成光学異性体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/91 20060101AFI20170123BHJP
   C07C 69/78 20060101ALI20170123BHJP
   C07C 67/08 20060101ALI20170123BHJP
   C07D 317/22 20060101ALI20170123BHJP
   C07D 317/24 20060101ALI20170123BHJP
   C07D 317/30 20060101ALI20170123BHJP
   C07B 53/00 20060101ALN20170123BHJP
【FI】
   C07D233/91
   C07C69/78
   C07C67/08
   C07D317/22
   C07D317/24CSP
   C07D317/30
   !C07B53/00 G
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-80747(P2013-80747)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-185135(P2014-185135A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】507029007
【氏名又は名称】株式会社ポーラファルマ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】西尾 東
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利光
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−223258(JP,A)
【文献】 特開2014−185136(JP,A)
【文献】 特開2003−321459(JP,A)
【文献】 Angew. Chem. Int. Ed.,2001年,40,4757−4759
【文献】 Helvetica Chimica Acta,2000年,83,943−953
【文献】 Tetrahedron,2001年,57,7291−7301
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 233/91
C07D 317/22〜30
C07C 67/08
C07C 69/78
C07B 53/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次に示す、構造式(1)に表される2−ニトロイミダゾール誘導体の製造方法であって、一般式(2)に表される化合物に、無水酢酸を反応せしめ、一般式(3)に表される化合物となし、しかる後に、一般式(4)に表される化合物と反応せしめ、しかる後に脱保護することを特徴とする、製造方法。
【化1】
構造式(1)
【化2】
一般式(2)
(但し、式中R、R、Rはそれぞれ独立に芳香族アシル基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
【化3】
一般式(3)
(但し、式中R、R、Rはそれぞれ独立に芳香族アシル基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
【化4】
一般式(4)
(但し、式中R、R、Rはそれぞれ独立にアルキル基を表す。)
【請求項2】
一般式(2)に表される化合物。
【化5】
一般式(2)
(但し、式中R、R、Rはそれぞれ独立に芳香族アシル基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
【請求項3】
一般式(3)に表される化合物。
【化6】
一般式(3)
(但し、式中R、R、Rはそれぞれ独立に芳香族アシル基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
【請求項4】
次に示す、構造式(5)に表される2−ニトロイミダゾール誘導体の製造方法であって、一般式(6)に表される化合物に、無水酢酸を反応せしめ、一般式(7)に表される化合物となし、しかる後に、一般式(4)に表される化合物と反応せしめ、しかる後に脱保護することを特徴とする、製造方法。
【化7】
構造式(5)
【化8】
一般式(6)
(但し、式中R、R10、R12はそれぞれ独立に芳香族アシル基を表し、R11は水素原子又はアルキル基を表す。)
【化9】
一般式(7)
(但し、式中R、R10、R12はそれぞれ独立に芳香族アシル基を表し、R13は水素原子又はアルキル基を表す。)
【化10】
一般式(4)
(但し、式中R、R、Rはそれぞれ独立にアルキル基を表す。)
【請求項5】
一般式(6)に表される化合物。
【化11】
一般式(6)
(但し、式中R、R10、R12はそれぞれ独立に芳香族アシル基を表し、R11は水素原子又はアルキル基を表す。)
【請求項6】
一般式(7)に表される化合物。
【化12】
一般式(7)
(但し、式中R、R10、R12はそれぞれ独立に芳香族アシル基を表し、R13は水素原子又はアルキル基を表す。)
【請求項7】
一般式(8)又は(9)に表される化合物。
【化13】
一般式(8)(但し、式中R14はアルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシアルキル基、アシルオキシアルキル基を表す。)
【化14】
一般式(9)
(但し、式中R14はアシルオキシアルキル基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラセミ体である放射線増感剤ドラニダゾールを構成する、2つの光学異性体の製造方法と、当該製造に用いられる中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラニダゾールは、低酸素性放射線増感剤として、開発されているラセミ体の2−ニトロイミダゾール誘導体であり、3つの水酸基を側鎖に有し、当該側鎖に2つの不斉炭素が存在する化合物である。光学異性体は、ドラニダゾールを構成する2S3R体((2S,3R)−3−[(2−Nitroimidazol−1−yl)methoxy]butane−1,2,4−triol)、2R3S体((2R,3S)−3−[(2−Nitroimidazol−1−yl)methoxy]butane−1,2,4−triol)以外に、SS体、RR体が存在し、これらの内、SS体とRR体については製造方法が確立され、それぞれの物性、作用、効果については検討が為されているが、2R3S体、2S3R体についてはドラニダゾールを光学分割するしか入手手段が存せず、構成光学活性体については詳細な検討が困難な状況に存した。(例えば、特許文献1、2、非特許文献1を参照)これは、エリスリトール骨格で2位、3位がSR或いはRSの配座になるような、2−ニトロイミダゾールとの縮合可能な前駆体が見出されていなかったためである。トリオール或いは、テトラオールの立体を維持し、末端基を修飾して行く方法としては、アスコルビン酸或いはイソアスコルビン酸を利用した方法が種々知られている(例えば、非特許文献2、3、4を参照)が、これらに開示された化合物からは、前記2R3S体、2S3R体を不斉合成することは出来ない。又、後記一般式(2)、(3)、(6)、(7)、(8)、(9)に表される化合物もこれらの文献には開示されていない。
【0003】
一方、ドラニダゾール、2S3R体、2R3S体、RR体、SS体には如実な薬効、物性の差が存し(例えば、非特許文献5を参照)ている。特に注目すべきは、放射線増感比において、ドラニダゾールが1.45であるのに対し、2S3R体は1.63、2R3S体は1.36と大きく異なっていることであり、不斉合成を可能ならしめることにより、大幅な薬効の向上が望めることである。即ち、ドラニダゾールの開発の完遂には構成光学活性体の精密な比較が必要であり、これらの不斉合成技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−223258号公報
【特許文献2】WO94/014778
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Shibamoto Y.,et.al.,Radiother Oncol.2008;87(3):326−30
【非特許文献2】Elie A.et.al,J Org.Chem.1988,53,2598−2602
【非特許文献3】Chorine A.,et.al.,Tetrahedron Asym.9,1998,1359−1367
【非特許文献4】Andrzej E.,et.al.Tetrahedron,59,2003,6075−6081
【非特許文献5】Oya K.,et.al.,Int J Radiat Oncol Biol Phys.1995;33(1):119−27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、ドラニダゾールの構成光学活性体を不斉合成し、それぞれの光学活性体の薬理学的特徴、物理化学的特徴を明らかにすることを課題とする。
【課題の解決手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、ドラニダゾールの構成光学活性体を不斉合成する手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、アスコルビン酸乃至はイソアスコルビン酸から誘導した、立体保存のされたアルキルオキシメチル誘導体を用いて、アシル化剤によりアシルオキシメチルオキシ化したものを用いることにより、不斉合成が可能であることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示すとおりである。
<1>次に示す、構造式(1)に表される2−ニトロイミダゾール誘導体の製造方法であって、一般式(2)に表される化合物に、無水酢酸を反応せしめ、一般式(3)に表される化合物となし、しかる後に、一般式(4)に表される化合物と反応せしめ、しかる後に脱保護することを特徴とする、製造方法。
【0008】
【化1】
構造式(1)
【0009】
【化2】
一般式(2)
(但し、式中R、R、Rはそれぞれ独立に芳香族アシル基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
【0010】
【化3】
一般式(3)
(但し、式中R、R、Rはそれぞれ独立に芳香族アシル基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
【0011】
【化4】
一般式(4)
(但し、式中R6、R7、R8はそれぞれ独立にアルキル基を表す。)
【0012】
<2>一般式(2)に表される化合物。
<3>一般式(3)に表される化合物。
<4>次に示す、構造式(5)に表される2−ニトロイミダゾール誘導体の製造方法であって、一般式(6)に表される化合物に、無水酢酸を反応せしめ、一般式(7)に表される化合物となし、しかる後に、前記一般式(4)に表される化合物と反応せしめ、しかる後に脱保護することを特徴とする、製造方法。
【0013】
【化5】
構造式(5)
【0014】
【化6】
一般式(6)
(但し、式中R、R10、R12はそれぞれ独立に芳香族アシル基を表し、R11は水素原子又はアルキル基を表す。)
【0015】
【化7】
一般式(7)
(但し、式中R、R10、R12はそれぞれ独立に芳香族アシル基を表し、R13は水素原子又はアルキル基を表す。)
【0016】
<5>一般式(6)に表される化合物。
<6>一般式(7)に表される化合物。
<7>一般式(8)又は(9)に表される化合物。
【0017】
【化8】
一般式(8)(但し、式中R14はアルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシアルキル基、アシルオキシアルキル基を表す。)
【0018】
【化9】
一般式(9)
(但し、式中R14はアシルオキシアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ドラニダゾールの構成光学活性体を不斉合成し、それぞれの光学活性体の薬理学的特徴、物理化学的特徴を明らかにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<1>2R3S体の製造
2R3S体は、イソアスコルビン酸をイソプロピリデン等のケトニドで隣接する2つの水酸基を保護し、しかる後に開環して得られる、下記の化合物((2R3R)−3,4−O−イソプロピリデン−2,3,4−トリヒドロキシブタン酸エチル)を出発物質とし、これをジメトキシメタンの様なジアルキルオキシメタン中で五酸化リンなどの酸で脱水縮合させ、しかる後に還元し、ジイソプロピリデンなどのケトニドを脱保護し、水酸基をベンゾイルクロライドなどのアシル化剤でアシル化して一般式(2)の化合物に変換したのち、無水酢酸を酸触媒存在下反応させ、一般式(3)の化合物に誘導し、トリメチルシリル−2−ニトロイミダゾールのような一般式(4)の化合物と、塩化第二錫などのルイス酸を触媒として縮合し、しかる後にアシル基を脱保護することにより製造することが出来る。
【0021】
【化10】
(2R3R)−3,4−O−イソプロピリデン−2,3,4−トリヒドロキシブタン酸エチル
【0022】
又、2R3S体は、アスコルビン酸を出発物質として、イソプロピリデン等のケトニドで隣接する2つの水酸基を保護し、しかる後に開環してから水酸基の立体を反転させて得られる、下記の化合物((2S3S)−3,4−O−イソプロピリデン−2,3,4−トリヒドロキシブタン酸エチル)を出発物質とし、これを還元し、(2R3S)−3,4−O−イソプロピリデン−1,2,3,4−テトラヒドロキシブタンとし、遊離の水酸基をベンゾイルクロリドなどでアシル化し、しかる後にケトニドを外し、緩和な条件下で1級水酸基のみをベンゾイルクロリドなどでアシル化し、(2S3R)−1,3,4−トリベンゾイルオキシ−2−ブタノールとなし、2位水酸基にジメトキシメタンを反応させて一般式(6)の化合物となし、これに無水酢酸を反応させて一般式(7)の化合物に誘導させ、前項の手技によって2R3S体へ誘導することも出来る。即ち、アスコルビン酸を出発物質としても、イソアスコルビン酸を出発物質としても、いずれも一般式(6)の化合物、一般式(7)の化合物を経由して、2R3S体を製造することが出来る。
【0023】
【化11】
(2S3S)−3,4−O−イソプロピリデン−2,3,4−トリヒドロキシブタン酸エチル
【0024】
<2>2S3R体の製造
2S3R体は、2R3S体の製造法における出発物質を、イソアスコルビン酸をアスコルビン酸に、アスコルビン酸をイソアスコルビン酸に変えて、前述の2R3S体と同様に処理することにより得ることが出来る。即ち、アスコルビン酸をイソプロピリデン等のケトニドで隣接する2つの水酸基を保護し、しかる後に開環してから水酸基の立体を反転させて得られる化合物((2S3S)−3,4−O−イソプロピリデン−2,3,4−トリヒドロキシブタン酸エチル)を出発物質とし、これをジメトキシメタンの様なジアルキルオキシメタン中で五酸化リンなどの酸で脱水縮合させ、しかる後に還元し、ジイソプロピリデンなどのケトニドを脱保護し、水酸基をベンゾイルクロライドなどのアシル化剤でアシル化して一般式(2)の化合物に変換したのち、無水酢酸を酸触媒存在下反応させ、一般式(3)の化合物に誘導し、トリメチルシリル−2−二トロイミダゾールのような一般式(4)の化合物と、塩化第二錫などのルイス酸を触媒として縮合し、しかる後にアシル基を脱保護することにより製造することが出来る。
これらの反応はいずれも常温乃至は100の加熱条件下で行うことが出来、常温で行うことが副生成物の量が少ないので特に好ましい。
【0025】
又、2R3S体と同様に、イソアスコルビン酸を出発物質として、イソプロピリデン等のケトニドで隣接する2つの水酸基を保護し、しかる後に開環して得られる化合物((2R3R)−3,4−O−イソプロピリデン−2,3,4−トリヒドロキシブタン酸エチル)を出発物質とし、これを還元し、(2R3R)−3,4−O−イソプロピリデン−1,2,3,4−テトラヒドロキシブタンとし、遊離の水酸基をベンゾイルクロリドなどでアシル化し、しかる後にケトニドを外し、緩和な条件下で1級水酸基のみをベンゾイルクロリドなどでアシル化し、(2R3S)−1,3,4−トリベンゾイルオキシ−2−ブタノールとなし、2位水酸基にジメトキシメタンを反応させて一般式(2)の化合物となし、これに無水酢酸を反応させて一般式(3)の化合物に誘導させ、前項の手技によって2S3R体へ誘導することも出来る。即ち、アスコルビン酸を出発物質としても、イソアスコルビン酸を出発物質としても、いずれも一般式(2)の化合物、一般式(3)の化合物を経由して、2S3R体を製造することが出来る。
【0026】
<3>一般式(2)に表される化合物
一般式(2)において、式中R1、R2、R4はそれぞれ独立にアシル基又は水素原子を表し、R3はアルキル基を表す。R1、R2、R4はそれぞれ異なっていても良いし、同じでも良い。但し、水素原子であることは多くてもR1、R2、R4の内のいずれか1個のみに限られる。好ましいアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ラウロイル基、オレオイル基等の脂肪族アシル基やベンゾイル基等の芳香族アシル基が好適に例示でき、中でもベンゾイル基が、生成物の結晶性を向上せしめ、精製を容易にすることから特に好ましい。又R3に表されるアルキル基は、短鎖長のメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が好適に例示でき、メチル基が引き続いてのアセチル化が容易なことから特に好ましい。
【0027】
<4>一般式(3)に表される化合物
一般式(3)において、式中R1、R2、R4はそれぞれ独立に水素原子又はアシル基を表し、R5は水素原子又はアルキル基を表す。R1、R2、R4については、一般式(2)の条件が適用される。R5としては、続くトリメチルシリル−2−ニトロイミダゾールとの反応において、離脱しやすい、短鎖長のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0028】
<5>一般式(4)に表される化合物
一般式(4)において、式中R6、R7、R8はそれぞれ独立にアルキル基を表す。当該アルキル基としては、短鎖長のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。この様な一般式(4)の化合物は、2−ニトロイミダゾールに、シリル化剤を反応せしめることによって製造できる。シリル化剤としては、当該アルキル基がメチル基の場合には、トリメチルシリルクロリド、ヘキサメチルジシラザン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトニドなどが好適に例示できる。かかるシリル化剤を2−ニトロイミダゾールと当量加え、室温で数分から30分混合することにより、一般式(4)に表される化合物を調製することが出来る。
【0029】
<6>一般式(6)に表される化合物
一般式(6)に表される化合物については、2位水酸基と3位水酸基の立体配置が異なる他は一般式(2)に表される化合物の条件が好ましく適用される。
【0030】
<7>一般式(7)に表される化合物
一般式(7)に表される化合物については、2位水酸基と3位水酸基の立体配置が異なる他は一般式(3)に表される化合物の条件が好ましく適用される。
【0031】
一般式(8)および(9)において、R14で表される基としては、最初の原料となるエステル体としての、エトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基等の低鎖長アルキルオキシカルボニル基、アルコール体としてのヒドロキシメチル基、アルコール体のアシル化体としてのアセトキシメチル基、ラウロイルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基等が好適に例示できる。特に好ましいものはエステル体ではエトキシカルボニル基、アルコールのアシル化体としては、ベンゾイルオキシメチル基が例示できる。
【0032】
以下に、実施例を示しながら更に詳細に本発明について説明を加える。
【実施例1】
【0033】
水素化リチウムアルミニウム14.73gにTHF200mlを加え、氷冷下撹拌した。化合物((2R3R)−3,4−O−イソプロピリデン−2,3,4−トリヒドロキシブタン酸エチル)48.27gをTHF100mlに溶かし、徐々に反応液中に滴下した。滴下には約3時間を要した。滴下後室温にて1時間撹拌し、更に1時間加熱還流した。放冷後、反応液の様子を見ながらHO 25mlを徐々に加えた。その後、NaOH aq25ml、HO 70mlを加えた。反応液を吸引濾過し、濾液を濃縮した。固体は熱エタノール(300ml×5回)で抽出した。オイル状物質が得られた。
オイル状物質にピリジン300mlを加え溶解し、氷冷下撹拌した。その中に、塩化ベンゾイル106.50gを徐々に滴下した。TLC上原料がなくなったところでエタノール200mlを加え濃縮した。酢酸エチルーベンゼン(5:2)700mlを加え、HO(200ml×2回)、satNaHCO aq(200ml×1回)、HO(200ml×1回)、satNaClaq(200ml×1回)で洗浄した。無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去し、オイルを得た。しばらく放置したら、結晶化したのでこれを濾取した。濾液はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(nーヘキサンー酢酸エチル)にて精製した。濾取した物とあわせて、63.02g(収率72.0%)の白色結晶を得た。((2S3R)−1,2−ジベンゾイル−3,4−O−イソプロピリデン−1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン)
1H−NMR(CDCl);δ1.38(s 3H)δ1.44(s 3H)δ4.04(dd 1H)
δ4.16(dd 1H)δ4.46(q 1H)δ4.56(dd 1H)
δ4.78(dd 1H)δ5.47〜5.53(m 1H)
δ7.38〜7.46(m 4H)δ7.51〜7.59(m 2H)
δ7.98〜8.06(m 4H)
【0034】
【化12】
【0035】
得られた化合物((2S3R)−1,2−ジベンゾイル−3,4−O−イソプロピリデン−1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン)62.15gにTHFを加えて溶かし、そこへ80%酢酸水溶液を加えた。TLCで反応の進行状態を見ながら、酢酸水溶液を追加した。このとき、反応を速く進行させるために60℃位に加熱した。TLC上原料がほとんど消失したところで反応溶液を濃縮し、酢酸エチルーベンゼン(5:2)700mlで希釈し、HO(100ml×1回)、satNaHCO aq(100ml×1回)、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄した。無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去し、オイルを62.18g得た。得られたオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(nーヘキサンー酢酸エチル)にて精製し、微黄色オイル53.36g(収率96.3%)を得た。
1H−NMR(CDCl);δ2.53(dd 1H)δ3.11(d 1H)
δ3.69(ddd 1H)δ3.80(ddd 1H)
δ3.91〜3.99(m 1H)δ4.78(dd 1H)
δ4.85(dd 1H)δ5.34〜5.40(m 1H)
δ7.40〜7.48(m 4H)δ7.53〜7.63(m 2H)
δ8.01〜8.09(m 4H)
得られたジオール5.07gにピリジン50mlを加えて溶かし、氷冷下撹拌した。塩化ベンゾイル2.39gをジエチルエーテル5mlに溶かしたものを反応容器中に徐々に滴下した。約3.5時間後、エタノール5mlを加えて反応を終了させてから濃縮した。酢酸エチルーベンゼン(4:1)500mlで希釈し、HO(100ml×1回)、d−HCl(100ml×1回)、satNaHCO aq(100ml×1回)、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄した。無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去し、白色固体を6.49g(収率97.3%)得た。
1H−NMR(CDCl);δ3.15(d 1H)δ4.32〜4.42(m 1H)
δ4.48(dd 1H)δ4.67(dd 1H)
δ4.76〜4.87(m 2H)δ5.53〜5.59(m 1H)
δ7.40〜7.45(m 6H)δ7.53〜7.59(m 3H)
δ7.99〜8.05(m 6H)
上記で得られたベンゾエート6.49gにベンゼン10mlを加えて溶かし、そこへジメトキシメタン30mlを加え、室温にて撹拌した。五酸化二リンを適当量加えた。TLC上の原料が消失したところで撹拌を止め、酢酸エチルーベンゼン(4:1)500mlで希釈し、satNaHCO aq(100ml×1回)、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄した。無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去し、黄色オイルを得た。しばらく放置したら結晶化し、6.53gの固体を得た。(収率91.4%;(2S3R)−1,2,4−トリベンゾイルオキシ−3−メトキシメトキシブタン)
1H−NMR(CDCl);δ3.39(s 3H)δ4.37〜4.51(m 2H)
δ4.61〜4.87(m 5H)δ5.72〜5.78(m 1H)
δ7.38〜7.46(m 6H)δ7.51〜7.58(m 3H)
δ7.99〜8.07(m 6H)
【0036】
【化13】
【0037】
(2S3R)−1,2,4−トリベンゾイルオキシ−3−メトキシメトキシブタン6.53gにベンゼン20mlを加えて溶かし、そこへ無水酢酸 1.5mlを加えて氷冷下で撹拌した。三ふっ化ほう素ジエチルエーテル錯体1mlを加えた。添加と同時に、(2S3R)−3−アセトキシメトキシ−1,2,4−ベンゾイルオキシブタンが生成し、反応液は黒色へと変化した。この(2S3R)−3−アセトキシメトキシ−1,2,4−ベンゾイルオキシブタンを取り出すことなく、60分後、satNaHCO aq100mlと氷を反応液へ加えた。酢酸エチルーベンゼン(4:1)500mlで抽出し、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄した。無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去し、茶色オイル7.42gを得た。
1H−NMR(CDCl);δ1.91(s 3H)δ4.43〜4.52(m 2H)
δ4.66(dd 1H)δ4.72〜5.27(m 2H)
δ5.39(d 1H)δ5.48(d 1H)
δ5.67〜5.72(m 1H)δ7.37〜7.46(m 6H)
δ7.51〜7.60(m 3H)δ7.97〜8.07(m 6H)
2ーニトロイミダゾール1.86gにN,Oービス(トリメチルシリル)アセタミド7mlを加え室温にて撹拌した。反応液が黄色澄明液になったのを確認してから濃縮した。
ベンゾエート7.42gをベンゼン10mlで溶かして、2ーニトロイミダゾールに加えた。更に、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート1mlを加え室温にて撹拌した。TLC上原料の消失が認められたところで撹拌を止めた。酢酸エチルーベンゼン(4:1)500mlで希釈し、satNaHCO aq(100ml×10回)で洗浄し、未反応の2ーニトロイミダゾールを除いた。更に、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄し、無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去し、茶色オイルを得た。少量のエタノールを加えて結晶化させ、5.06gの白色結晶を得た。(収率66.3%;(2S3R)−3−(2−ニトロイミダゾール−1−イルメトキシ)−1,2,4−トリベンゾイルオキシブタン)
1H−NMR(CDCl);δ4.44〜4.51(m 2H)δ4.60(dd 1H)
δ4.75(dd 1H)δ4.81〜4.85(m 1H)
δ5.69〜5.72(m 1H)δ5.97(d 1H)
δ6.07(d 1H)δ7.00(s 1H)δ7.28(s 1H)
δ7.40〜7.49(m 6H)δ7.54〜7.63(m 3H)
δ7.93〜8.05(m 6H)
【0038】
【化14】
【0039】
(2S3R)−3−(2−ニトロイミダゾール−1−イルメトキシ)−1,2,4−トリベンゾイルオキシブタン5.06gにメタノール50mlを加え、室温にて撹拌した。反応液は白濁していたが、その中へナトリウムメトキシド0.05gを加えた。48時間後に酢酸0.5mlを反応液に加えてから、溶媒を留去した。少量のエタノールを加え、結晶化させた。エタノールから再結晶し、白色針状晶1.33gを得た。(収率59.5%;(2S3R)−3−(2−ニトロイミダゾール−1−イルメトキシ)ブタン−1,2,4−トリオール)
1H−NMR(DMSO);δ3.16〜3.24(m 1H)δ3.30〜3.64(m 5H)
δ4.43(t 1H)δ4.64(t 1H)δ4.75(d 1H)
δ5.84(s 2H)δ7.19(s 1H)δ7.81(s 1H)
IR(cm−1);3314、1544、1498、1364
【0040】
【化15】
【実施例2】
【0041】
(2R3R)−3,4−O−イソプロピリデン−2,3,4−トリヒドロキシブタン酸エチル4.97gを氷冷下撹拌した中に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン10ml、クロルメチルメチルエーテル7mlを加えた。1時間氷冷下撹拌した後、室温で撹拌したが、溶液が固化してしまったので、塩化メチレン20mlを加えた。TLC上の原料がほぼ消失したところで撹拌を止め、溶液を濃縮した。酢酸エチルーベンゼン(5:2)700mlで希釈し、HO(100ml×1回)、satNaHCO aq(100ml×1回)、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄した。無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去して、茶色オイル6.00gを得た。(収率99.3%;(2R3R)−3,4−O−イソプロピリデン−3,4−ジヒドロキシ−2−メトキシメトキシブタン酸エチル)
1H−NMR(CDCl);δ1.36(s 3H)δ1.41(s 3H)δ2.09(s 3H)
δ3.39(s 3H)δ3.78〜3.83(m 1H)
δ3.95(dd 1H)δ4.06〜4.20(m 3H)
δ4.44(dd 1H)δ4.68(d 1H)δ4.76(d 1H)
水素化リチウムアルミニウム1.00gにTHF30mlを加え、氷冷下にて撹拌した。(2R3R)−3,4−O−イソプロピリデン−3,4−ジヒドロキシ−2−メトキシメトキシブタン酸エチル6.00gをTHF10mlに溶かしそれを反応容器の中に徐々に滴下した。氷冷下にて1時間撹拌した後、加熱還流した。滴下終了から7時間後に加熱を止め、放冷してからHO 2mlを加え、続いて50%NaOHaq 2ml、HO 5mlを加えた。
酢酸エチルで抽出し、抽出液を合わせて濃縮した。微黄色オイル4.99gを得た。((2S3R)−3,4−O−イソプロピリデン−1,3,4−トリヒドロキシ−2−メトキシメトキシブタン)
1H−NMR(CDCl);δ1.35(s 3H)δ1.42(s 3H)
δ2.79(br s 1H)δ3.45(s 3H)
δ3.55〜3.61(m 1H)δ3.64〜3.69(m 1H)
δ3.80〜3.86(m 1H)δ3.86〜3.95(m 1H)
δ4.06〜4.14(m 2H)δ4.71(d 1H)
δ4.76(d 1H)
(2S3R)−3,4−O−イソプロピリデン−1,3,4−トリヒドロキシ−2−メトキシメトキシブタン4.99gにピリジン30mlを加えて溶かし、氷冷下撹拌した。そこへ塩化ベンゾイル5.26gを徐々に滴下した。4時間後、エタノールを加え濃縮した。酢酸エチルーベンゼン(4:1)500mlにて希釈後、HO(100ml×1回)、satNaHCO aq(100ml×1回)、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄した。無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去して黄色オイルを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチルーnーヘキサン)で精製し、無色透明オイル5.21g(収率69.5%;(2S3R)−1−ベンゾイルオキシ−3,4−O−イソプロピリデン−3,4−ジヒドロキシ−2−メトキシメトキシブタン)を得た。
1H−NMR(CDCl);δ1.37(s 3H)δ1.44(s 3H)δ3.38(s 3H)
δ3.92〜3.98(m 1H)δ4.01(dd 1H)
δ4.13(dd 1H)δ4.25(q 1H)
δ4.36(dd 1H)δ4.67(dd 1H)
δ4.72(d 1H)δ4.82(d 1H)
δ7.41〜7.47(m 2H)δ7.53〜7.59(m 1H)
δ8.05(d 2H)
【0042】
【化16】
【0043】
(2S3R)−1−ベンゾイルオキシ−3,4−O−イソプロピリデン−3,4−ジヒドロキシ−2−メトキシメトキシブタン5.21gに80%酢酸50mlを加え、約50℃に加熱して撹拌した。3時間後撹拌を止め、酢酸エチルーベンゼン(4:1)500mlで希釈した。d−NaOHaq(100ml×3回)、satNaHCO aq(100ml×1回)、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄した。無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去して淡黄色オイル3.96g(収率87.3%)を得た。
1H−NMR(CDCl);δ2.32(br s 1H)δ3.02(d 1H)
δ3.42(s 3H)δ3.81(br s 3H)
δ3.92〜3.98(m 1H)δ4.58(d 2H)
δ4.74(d 1H)δ4.80(d 1H)δ7.46(t 2H)
δ7.54〜7.61(m 1H)δ8.05(d 2H)
ベンゾエート3.96gをピリジン50mlに溶かし、氷冷下で撹拌した。その中へ塩化ベンゾイル5.13gを徐々に滴下した。途中室温撹拌に戻した。TLC上の原料がほぼ消失したところでエタノールを加え溶媒を留去した。酢酸エチルーベンゼン(4:1)500mlで希釈した後、HO(100ml×1回)、satNaHCO aq(100ml×1回)、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄した。無水NaSOで乾燥後、濾過、溶媒留去した所、結晶が析出したのでこれを濾取した。白色結晶4.98g(収率71.0%;(2R3S)−1,2,4−トリベンゾイルオキシ−3−メトキシメトキシブタン)を得た。
1H−NMR(CDCl);δ3.39(s 3H)δ4.37〜4.51(m 2H)
δ4.63〜4.88(m 5H)δ5.73〜5.79(m 1H)
δ7.39〜7.46(m 6H)δ7.52〜7.59(m 3H)
δ7.99〜8.07(m 6H)
【0044】
【化17】
【0045】
実施例1と同様に、2−ニトロイミダゾール1.86gにN,Oービス(トリメチルシリル)アセタミド7mlを加え室温にて撹拌した。反応液が黄色澄明液になったのを確認してから濃縮した。
(2R3S)−1,2,4−トリベンゾイルオキシ−3−メトキシメトキシブタン7.42gをベンゼン10mlで溶かして、2ーニトロイミダゾールに加えた。更に、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート1mlを加え室温にて撹拌した。TLC上原料の消失が認められたところで撹拌を止めた。酢酸エチルーベンゼン(4:1)500mlで希釈し、satNaHCO aq(100ml×10回)で洗浄し、未反応の2ーニトロイミダゾールを除いた。更に、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄し、無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去し、茶色オイルを得た。少量のエタノールを加えて結晶化させ、5.06gの白色結晶を得た。(収率66.3%;(2R3S)−3−(2−ニトロイミダゾール−1−イルメトキシ)−1,2,4−トリベンゾイルオキシブタン)
1H−NMR(CDCl);δ4.43〜4.52(m 2H)δ4.60(dd 1H)
δ4.75(dd 1H)δ4.79〜4.88(m 1H)
δ5.68〜5.73(m 1H)δ5.97(d 1H)
δ6.06(d 1H)δ7.00(s 1H)δ7.28(s 1H)
δ7.40〜7.48(m 6H)δ7.54〜7.63(m 3H)
δ7.93〜8.07(m 6H)
【0046】
【化18】
【0047】
(2R3S)−3−(2−ニトロイミダゾール−1−イルメトキシ)−1,2,4−トリベンゾイルオキシブタン3.04gにメタノール50mlを加え、室温にて撹拌した。その中へナトリウムメトキシド0.03gを加えた。反応溶液の黄色が濃くなった。3.5時間後に酢酸1mlを反応液に加えてから、溶媒を留去した。放置後、結晶化したので濾取し、エタノールから再結晶し、白色針状晶0.94gを得た。(収率70.0%;(2R3S)−3−(2−ニトロイミダゾール−1−イルメトキシ)ブタン−1,2,4−トリオール)
1H−NMR(DMSO);δ3.15〜3.24(m 1H)δ3.30〜3.64(m 5H)
δ4.42(t 1H)δ4.64(t 1H)δ4.75(d 1H)
δ5.84(s 2H)δ7.19(s 1H)δ7.81(s 1H)
IR(cm−1);3314、1544、1498、1364
【0048】
【化19】
【実施例3】
【0049】
(2R3S)−1,2,4−トリベンゾイルオキシ−3−メトキシメトキシブタンについて、別法での製造を試みた。即ち、L−アスコルビン酸より誘導した、(2R3S)−3,4−O−イソプロピリデン−2,3,4−トリヒドロキシブタン酸エチル6.86gにトリフェニルホスフィン17.73g、安息香酸8.30g、THF100mlを加え、室温で撹拌し溶解させた。THF20mlにジエチルアゾジカルボキシレート12.64gを溶かし、それを反応溶液の中に滴下した。若干発熱したが、そのまま撹拌した。72時間後、溶液を濃縮し、酢酸エチルーベンゼン(5:2)700mlで希釈した。HO(100ml×1回)、satNaHCO aq(100ml×1回)、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄した。無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去し、赤茶色オイルを得た。得られたオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル−n−ヘキサン)で精製した。得られた分画には不純物として安息香酸の混入が認められたため、酢酸エチルーベンゼン(5:2)700mlで希釈した後、satNaHCO aq(100ml×3回)、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄した。無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去し、目的のベンゾエート5.43gを微黄色オイルとして得た。(収率52.4%;(2S3S)−3,4−O−イソプロピリデン−2−ベンゾイルオキシ−3,4−ジヒドロキシブタン酸エチル)
1H−NMR(CDCl);δ1.29(t 3H)δ1.38(s 3H)δ1.43(s 3H)
δ4.11〜4.21(m 2H)δ4.26(q 2H)
δ4.58〜4.64(m 1H)δ5.35(d 1H)
δ7.43〜7.51(m 2H)δ7.56〜7.65(m 1H)
δ8.10(d 2H)
水素化リチウムアルミニウム1.01gにTHF15mlを加え、氷冷下撹拌した。ベンゾエート5.43gをTHF10mlに溶かし、徐々に反応液中に滴下した。滴下終了後室温にて1時間撹拌し、更に加熱還流を4.5時間した。放冷後、反応液の様子を見ながらHO 1mlを加え、更に、50%NaOHaq1ml、HO 5mlを加えた。反応液を濃縮してから、酢酸エチル、メタノールで抽出し、無色透明オイル5.07gを得た。
得られた無色透明オイルにピリジン50mlを加え溶解し、氷冷下撹拌した。その中に、塩化ベンゾイル10mlを徐々に滴下した。約17時間後、エタノール10mlを加え濃縮した。酢酸エチルーベンゼン(5:2)700mlを加え、HO(100ml×1回)、satNaHCO aq(100ml×1回)、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄した。無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去し、茶色オイルを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(nーヘキサン:酢酸エチル=9:1)にて精製し、白色結晶3.60gを得た。(収率55.2%,総収率28.9%;(2R3S)−1,2−ジベンゾイルオキシ−3,4−イソプロピリデン−3,4−ジヒドロキシブタン)
1H−NMR(CDCl);δ1.38(s 3H)δ1.44(s 3H)
δ4.06(dd 1H)δ4.17(dd 1H)
δ4.48(q 1H)δ4.56(dd 1H)
δ4.79(dd 1H)δ5.49〜5.54(m 1H)
δ7.38〜7.47(m 4H)δ7.50〜7.62(m 2H)
δ7.99〜8.07(m 4H)
【0050】
【化18】
【0051】
(2R3S)−1,2−ジベンゾイルオキシ−3,4−イソプロピリデン−3,4−ジヒドロキシブタン4.22gにTHF50mlを加え溶解した。そこへ80%酢酸50mlを加え、室温にて撹拌した。反応液中に結晶が析出していたのでTHF50mlを追加した。TLCで反応の進行状況を見て、TLC上原料がほとんど消失した時点で撹拌を止めた。酢酸エチルーベンゼン(4:1)500mlで希釈し、HO(100ml×1回)、satNaHCO aq(100ml×5回)、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄した。尚、satNaHCO aqで洗浄した時には、水層がアルカリ性になったことを確認した。続いて、無水NaSOにて乾燥し、濾過、溶媒留去し、オレンジ色オイルを3.30g得た。(収率87.7%)
1H−NMR(CDCl);δ2.59(br s 1H)δ3.17(d 1H)
δ3.68〜3.76(m 2H)δ3.95(m 1H)
δ4.75〜4.88(m 2H)δ5.35〜5.41(m 1H)
δ7.40〜7.47(m 4H)δ7.53〜7.62(m 2H)
δ8.01〜8.05(m 4H)
ジオール3.30gをピリジン50mlに溶かし、氷冷下撹拌した。塩化ベンゾイル2.93gを反応容器中に徐々に滴下した。約2.5時間後、メタノール10mlを加えて反応を終了させてから濃縮した。酢酸エチルーベンゼン(4:1)500mlで希釈し、HO(100ml×1回)、satNaHCO aq(100ml×1回)、HO(100ml×1回)、satNaClaq(100ml×1回)で洗浄した。無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチルーnーヘキサン)にて精製し白色結晶3.83gを得た。(収率88.2%)
1H−NMR(CDCl);δ3.21(br s 1H)δ4.36(br s 1H)
δ4.47(dd 1H)δ4.67(dd 1H)
δ4.75〜4.88(m 2H)δ5.53〜5.59(m 1H)
δ7.41〜7.46(m 6H)δ7.54〜7.60(m 3H)
δ8.01〜8.06(m 6H)
ベンゾエート1.81gにジメトキシメタン30mlを加えて溶かし、室温にて撹拌した。そこへ五酸化二リンを適当量加えた。TLC上の原料が消失したところで撹拌を止め、酢酸エチルーベンゼン(5:1)300mlで希釈し、HO(50ml×1回)、satNaHCO aq(50ml×1回)、HO(50ml×1回)、satNaClaq(50ml×1回)で洗浄した。無水NaSOにて乾燥後、濾過、溶媒留去し、茶色オイルを得た。しばらく放置し結晶化させ、1.93gの固体を得た。(収率95.8%;(2R3S)−1,2,4−トリベンゾイルオキシ−3−メトキシメトキシブタン)
1H−NMR(CDCl);δ3.39(s 3H)δ4.37〜4.51(m 2H)
δ4.63〜4.88(m 5H)δ5.73〜5.79(m 1H)
δ7.39〜7.46(m 6H)δ7.52〜7.59(m 3H)
δ7.99〜8.07(m 6H)
【0052】
【化19】
【実施例4】
【0053】
(2S3R)−3−(2−ニトロイミダゾール−1−イルメトキシ)ブタン−1,2,4−トリオール、(2R3S)−3−(2−ニトロイミダゾール−1−イルメトキシ)ブタン−1,2,4−トリオール)及びドラニダゾールについて、EMT−6に対する低酸素性細胞放射線増感効果をイン・ビボ−イン・ビトロアッセイで比較した。即ち、特開平03−223258号公報に記載の方法に従い、10個のEMT−6細胞をBalb/c雌性マウス(5週齢)の後ろ肢大腿部に移植し、1週間飼育し、固形腫瘍を形成させ、しかる後にγ線20Gyを照射し、腫瘍を取り出し、トリプシン処理して浮遊細胞となし、これを、5%FBS加MEM培地で培養し、コロニー形成法により、生存率を求め、これより増感係数を求めた。(増感剤を投与しない場合を1とし、どの程度増感したかをしめす指標)結果を表1に示す。この値は、特開平03−223258号公報の結果と良く一致するものであることか判る。
【0054】
【表1】
【実施例5】
【0055】
細胞腫を、種々変えて、コロニー法(colony assay)を用いて、低酸素性細胞放射線増感作用を調べた。即ち、細胞をトリプシン処理し、浮遊細胞とし、20分間95%N+5%COで通気し低酸素状態にした後、PBS及び検体のPBS溶液の存在下で、X線(0、1、2、3Gy)を照射した。その後5%FBS加MEM培地で72時間培養し、形成したコロニー数を計数し、線量・生存率曲線を引き、この線量−生存率曲線より被験化合物無添加時の低酸素性細胞の生存率を1%下げる放射線量を、被験化合物添加時の低酸素性細胞の生存率を1%下げさせる放射線量で除した値を求めて増感係数を求めた。ここで、SCCVIIはBalb/cに自然発生した扁平上皮癌から樹立された細胞であり、V79はチャイニーズハムスターの肺由来のフィブロブラスト様細胞であり、L5178Yはリンパ種由来のガン細胞である。結果を表2に示す。これより、(2R3S)−2−(2−ニトロイミダゾール−1−イルメトキシ)−1,3,4−トリヒドロキシブタン)は特異的に、肺癌、リンパ腫に優れた増感効果を示すことが判る。
【0056】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、医薬品の製造に応用できる。