特許第6071721号(P6071721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日置電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6071721-測定装置 図000002
  • 特許6071721-測定装置 図000003
  • 特許6071721-測定装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071721
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20170123BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G01R19/00 N
   G01R19/00 A
   G01R35/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-83495(P2013-83495)
(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公開番号】特開2014-206428(P2014-206428A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】釼持 浩崇
【審査官】 永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−140030(JP,A)
【文献】 特開2012−78282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 35/00
G01R 21/00
G01R 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の入力信号をA/D変換して第1測定値データを出力する信号処理部と、
予め生成された補正値に基づいて前記第1測定値データの値を補正して第2測定値データを生成する補正処理を実行する補正処理部、および前記第2測定値データを対象として予め規定された第1演算処理を実行して第3測定値データを生成する第1演算処理部を有する前処理部と、
前記第3測定値データを対象として予め規定された第2演算処理を実行して第4測定値データを生成する第2演算処理部を有し、生成した当該第4測定値データを前記入力信号に関する測定結果として出力する測定結果出力処理を実行する主処理部とを備えた測定装置であって、
前記第2演算処理部は、前記入力信号としての補正値取得用信号を入力した状態において前記信号処理部から出力される予め規定された数の前記第1測定値データを対象とする前記第1演算処理によって生成された前記第3測定値データ、および当該予め規定された数の第1測定値データのいずれか規定された一方に基づき、当該第1測定値データの値における最下位の桁よりも下位のN桁(Nは、自然数)の値を含む前記補正値を生成する補正値生成処理を実行可能に構成されると共に、前記第2演算処理において、最下位の桁が前記補正値における最下位の桁と等しい値の前記第4測定値データを生成し、
前記補正処理部は、前記補正処理において、最下位の桁が前記補正値における最下位の桁と等しい値の前記第2測定値データを生成する測定装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記測定結果における整数部に対応する桁がMa桁(Maは、自然数)で当該測定結果における小数部に対応する桁がMb桁(Mbは、自然数)である(Ma+Mb)桁の整数値で前記第1測定値データを出力可能に構成され、
前記第2演算処理部は、前記補正値生成処理において、整数部がLa桁(Laは、Ma以下の自然数)で小数部がLb桁(Lbは、(Mb+N))である値を(La+Lb)桁の整数値に変換した値を前記補正値として生成し、
前記補正処理部は、前記補正処理において、前記第1測定値データの値を(Ma+Lb)桁の整数値に変換した変換後測定値を前記補正値に基づいて補正して(Ma+Lb)桁の整数値の前記第2測定値データを生成し、
前記第1演算処理部は、前記第1演算処理において、整数値の前記第3測定値データを生成し、
前記第2演算処理部は、前記測定結果出力処理において、前記第3測定値データの値を予め規定された変換手順に従ってMc桁(Mcは、Ma以上の自然数)の整数部およびLb桁の小数部からなる測定値Aに変換した後に当該測定値Aを対象とする前記第2演算処理を実行して前記第4測定値データを生成する処理Aと、前記第3測定値データの値を対象とする前記第2演算処理を実行して生成した測定値Baを予め規定された変換手順に従ってMa桁の整数部およびLb桁の小数部からなる測定値Bbに変換して前記第4測定値データを生成する処理Bとのいずれか一方を実行する請求項1記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の入力信号をA/D変換した測定値データに基づいて測定結果を取得可能に構成された測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、入力可能範囲を超える高電圧の測定対象信号を測定装置に入力するときに、測定装置における電圧入力部に分圧器を接続することで測定対象信号の電圧を入力可能範囲内とし、入力可能範囲を超える大電流の測定対象信号を測定装置に入力するときに、測定装置における電流入力部に分流器を接続することで測定対象信号の電流を入力可能範囲内とする測定方法が広く実施されている。しかしながら、分圧器や分流器を使用したときには、分圧器や分流器に固有のオフセット成分が存在することに起因して測定値に誤差が生じる。そこで、分圧器や分流器を使用するときに、上記のオフセット成分の存在に起因する測定誤差を補正値(オフセット値)として予め取得しておき、このオフセット値によって測定値を補正した補正後の値を測定結果として出力する構成の測定装置が提案されている。
【0003】
例えば、特開2012−78282号公報には、入力部、演算部およびCPU部を備えて構成された電力測定装置が開示されている。なお、同公開公報には、「背景技術」に開示されている電力測定装置と、「発明を実施するための最良の形態」に開示されている電力測定装置の2種類が開示されているが、「背景技術」に開示されている電力測定装置が一般的な構成であるため、以下、主として「背景技術」に開示されている電力測定装置について説明する。入力部は、電圧入力部に入力された入力信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するA/D変換器、および電流入力部に入力された入力信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するA/D変換器を備えると共に、電圧入力部に分圧器が接続され、かつ電流入力部に分流器が接続されている。また、演算部は、電圧演算部、電流演算部、電力演算部、電圧オフセット格納部、電流オフセット格納部およびオフセット処理部を備えて構成されている。
【0004】
電圧演算部は、入力部(A/D変換器)から出力されたデータに基づいて電圧値を演算する。電流演算部は、入力部(A/D変換器)から出力されたデータに基づいて電流値を演算する。電力演算部は、電圧演算部および電流演算部によって演算された電圧値および電流値に基づいて電力値を演算する。電圧オフセット格納部は、分圧器の入力端子を短絡した状態で測定される電圧オフセット値を格納する。電流オフセット格納部は、分流器の入力端子を短絡した状態で測定される電流オフセット値を格納する。オフセット処理部は、電圧オフセット値および電流オフセット値に基づき、電圧測定値および電流測定値の直流オフセット補償演算処理(電圧測定値から電圧オフセット値を差し引くと共に、電流測定値から電流オフセット値を差し引く補正処理)を実行する。CPU部は、CPU(Central Processing Unit )、操作部および表示部などを備え、演算部の演算結果に基づいて生成した測定結果を表示部に表示させたり外部装置に送信したりする。
【0005】
この場合、この種の測定装置では、製造コストが高い高性能な演算素子で主処理部を構成しなくても各種の処理をスムーズに行うことができるように、入力部によって生成されたデータを、主処理部による処理に先立って前処理する前処理部を設け、主処理部に過剰に大きな負担がかかる事態を回避する構成が採用されている。しかしながら、そのような構成を採用するにあたり、前処理部を構成する演算回路の製造コストが過剰に高い場合や、前処理部の構成が過剰に複雑となった場合には、高性能な演算素子によって主処理部を構成するのと製造コストが変わらず、また、高性能な演算素子によって主処理部を構成した方が電力測定装置全体としての構成を簡素化することができるため、前処理部を設ける必要性がなくなってしまう。
【0006】
したがって、上記の電力測定装置では、高性能なCPUよりも安価に演算回路を構成可能で、演算回路が複雑化することなく、これを構成可能なDSP(Digital Signal Processor)によって前処理部としての演算部が構成されている。これにより、製造コストの高騰を招くことなく、CPUにかかる負担を軽減することが可能となっている。なお、この公開公報の「発明を実施するための最良の形態」に開示されている電力測定装置では、上記の演算部におけるオフセット処理機能の主要部が、FPGA(Field Programmable Gate Array )で構成されている。したがって、この公開公報に開示されている電力測定装置では、DSPやFPGAで構成された演算部におけるオフセット処理部が、入力部から出力された電圧値や電流値を電圧オフセット値や電流オフセット値に基づいて補正してCPU部(CPU)に出力するため、CPU部において、他の各種処理と並行して測定結果の表示や記録をスムーズに実行することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−78282号公報(第2−9頁、第1−9図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来の電力測定装置では、以下の解決すべき問題点が存在する。すなわち、従来の電力測定装置では、製造コストの高騰を招くことなく、過剰に大きな負担がCPU部(CPU)にかかる事態を回避するために、DSPやFPGAで構成した演算部のオフセット処理部において測定値を補正してCPU部(CPU)に出力する構成が採用されている。この場合、従来の電力測定装置では、前述したように、分圧器の入力端子を短絡した状態で測定される測定値が電圧オフセット値として電圧オフセット格納部に格納され、分流器の入力端子を短絡した状態で測定される測定値が電流オフセット値として電流オフセット格納部に格納される構成が採用されている。
【0009】
したがって、従来の電力測定装置では、電圧オフセット値および電流オフセット値と、電圧オフセット値および電流オフセット値を用いて補正する補正前の測定値とが同じ桁数の値となっており、また、補正後の測定値も、電圧オフセット値および電流オフセット値や補正前の測定値と同じ桁数の値となっている。このため、従来の電力測定装置では、入力部におけるA/D変換器の分解能を超える桁数の高精度な測定結果を取得することができないという問題点が存在する。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、高精度な測定結果を取得し得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、測定対象の入力信号をA/D変換して第1測定値データを出力する信号処理部と、予め生成された補正値に基づいて前記第1測定値データの値を補正して第2測定値データを生成する補正処理を実行する補正処理部、および前記第2測定値データを対象として予め規定された第1演算処理を実行して第3測定値データを生成する第1演算処理部を有する前処理部と、前記第3測定値データを対象として予め規定された第2演算処理を実行して第4測定値データを生成する第2演算処理部を有し、生成した当該第4測定値データを前記入力信号に関する測定結果として出力する測定結果出力処理を実行する主処理部とを備えた測定装置であって、前記第2演算処理部は、前記入力信号としての補正値取得用信号を入力した状態において前記信号処理部から出力される予め規定された数の前記第1測定値データを対象とする前記第1演算処理によって生成された前記第3測定値データ、および当該予め規定された数の第1測定値データのいずれか規定された一方に基づき、当該第1測定値データの値における最下位の桁よりも下位のN桁(Nは、自然数)の値を含む前記補正値を生成する補正値生成処理を実行可能に構成されると共に、前記第2演算処理において、最下位の桁が前記補正値における最下位の桁と等しい値の前記第4測定値データを生成し、前記補正処理部は、前記補正処理において、最下位の桁が前記補正値における最下位の桁と等しい値の前記第2測定値データを生成する。
【0012】
また、請求項2記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記信号処理部は、前記測定結果における整数部に対応する桁がMa桁(Maは、自然数)で当該測定結果における小数部に対応する桁がMb桁(Mbは、自然数)である(Ma+Mb)桁の整数値で前記第1測定値データを出力可能に構成され、前記第2演算処理部は、前記補正値生成処理において、整数部がLa桁(Laは、Ma以下の自然数)で小数部がLb桁(Lbは、(Mb+N))である値を(La+Lb)桁の整数値に変換した値を前記補正値として生成し、前記補正処理部は、前記補正処理において、前記第1測定値データの値を(Ma+Lb)桁の整数値に変換した変換後測定値を前記補正値に基づいて補正して(Ma+Lb)桁の整数値の前記第2測定値データを生成し、前記第1演算処理部は、前記第1演算処理において、整数値の前記第3測定値データを生成し、前記第2演算処理部は、前記測定結果出力処理において、前記第3測定値データの値を予め規定された変換手順に従ってMc桁(Mcは、Ma以上の自然数)の整数部およびLb桁の小数部からなる測定値Aに変換した後に当該測定値Aを対象とする前記第2演算処理を実行して前記第4測定値データを生成する処理Aと、前記第3測定値データの値を対象とする前記第2演算処理を実行して生成した測定値Baを予め規定された変換手順に従ってMa桁の整数部およびLb桁の小数部からなる測定値Bbに変換して前記第4測定値データを生成する処理Bとのいずれか一方を実行する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の測定装置では、第2演算処理部が、補正値取得用信号を入力した状態において信号処理部から出力される予め規定された数の第1測定値データを対象とする第1演算処理によって生成された第3測定値データ、および予め規定された数の第1測定値データのいずれか規定された一方に基づき、第1測定値データの値における最下位の桁よりも下位のN桁の値を含む補正値を生成する補正値生成処理を実行可能に構成されると共に、第2演算処理において、最下位の桁が補正値における最下位の桁と等しい値の第4測定値データを生成し、補正処理部が、補正処理において、最下位の桁が補正値における最下位の桁と等しい値の第2測定値データを生成する。
【0014】
したがって、請求項1記載の測定装置によれば、主処理部による演算処理に先立って前処理部において信号処理部から出力される第1測定値データを前処理する分だけ、主処理部にかかる負担を軽減することができ、これにより、処理能力が高い高価な演算素子を採用することなく主処理部を構成しても、主処理部において、他の各種処理と並行して測定結果の表示や記録をスムーズに実行することができるだけでなく、測定処理時と同様の手順で、信号処理部、前処理部および主処理部によって生成される補正値を、信号処理部から出力される第1測定値データの最下位の桁よりも下位のN桁の値を含んで生成し、測定処理に際して、より高精度な補正値を用いて第1測定値データを補正する分だけ、高精度な測定結果を取得することができる。
【0015】
また、請求項2記載の測定装置では、信号処理部が、測定結果における整数部に対応する桁がMa桁で小数部に対応する桁がMb桁の(Ma+Mb)桁の整数値で第1測定値データを出力し、第2演算処理部が、補正値生成処理において、整数部がLa桁で小数部がLb桁の値を(La+Lb)桁の整数値に変換した値を補正値として生成し、補正処理部が、補正処理において、第1測定値データの値を(Ma+Lb)桁の整数値に変換した変換後測定値を補正値に基づいて補正して(Ma+Lb)桁の整数値の第2測定値データを生成し、第1演算処理部が、第1演算処理において、整数値の第3測定値データを生成し、第2演算処理部が、測定結果出力処理において、第3測定値データの値を予め規定された変換手順に従ってMc桁の整数部およびLb桁の小数部からなる測定値Aに変換した後に測定値Aを対象とする第2演算処理を実行して第4測定値データを生成する処理Aと、第3測定値データの値を対象とする第2演算処理を実行して生成した測定値Baを予め規定された変換手順に従ってMa桁の整数部およびLb桁の小数部からなる測定値Bbに変換して第4測定値データを生成する処理Bとのいずれか一方を実行する。
【0016】
したがって、請求項2記載の測定装置によれば、前処理部に対して小数点演算処理を実行させることなく第4測定値データを取得することができるため、前処理部として処理能力が高い高価な演算素子を採用したり、処理能力が低い電算素子で構成した前処理部に大きな負担をかけたりすることなく、高精度な測定結果を取得することができる。これにより、測定装置の製造コストを十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】測定装置1の構成を示す構成図である。
図2】真値が500.000・・・Vのときの本願方法および従来方法による測定結果の相違について説明するための説明図である。
図3】真値が500.000・・・mAのときの本願方法および従来方法による測定結果の相違について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0019】
最初に、測定装置1の構成について、添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示す測定装置1は、「測定装置」の一例であって、信号処理部2、前処理部3、操作部4、表示部5、記憶部6および主処理部7を備え、測定対象の電圧値、電流値および電力量を測定可能に構成されている。
【0021】
信号処理部2は、「信号処理部」の一例であって、電圧測定回路2aおよび電流測定回路2bを備えて構成されている。電圧測定回路2aは、図示しないA/D変換器を備え、測定対象の任意の2点間の電圧値を測定して(A/D変換して)「第1測定値データ」の一例である電圧値データD1vを出力する。電流測定回路2bは、図示しないA/D変換器を備え、測定対象の任意の2点間を流れる電流値を測定して(A/D変換して)「第1測定値データ」の他の一例である電流値データD1aを出力する。なお、本例では、「測定装置」に関する理解を容易とするために、一例として、上記のA/D変換器の分解能や設定された測定条件に応じて、電圧測定回路2aが、7桁の整数値に「+」または「−」の符号を付加した値を電圧値データD1vとして出力し、電流測定回路2bが、7桁の整数値に「+」または「−」の符号を付加した値を電流値データD1aとして出力するものとする。
【0022】
具体的には、電圧測定回路2aは、電圧値データD1vの値(電圧値)において後述するように、主処理部7が生成する電圧値データD4vの値(測定結果としての電圧値)における整数部に対応する桁の数、および電圧値データD1vの値において電圧値データD4vの値における小数部に対応する桁の数の合計が7桁となるように電圧値を7桁の整数値で表すと共に、この7桁の整数値の電圧値に「+」または「−」の符号を付加して電圧値データD1vとして出力する。また、電流測定回路2bは、電流値データD1aの値(電流値)において後述するように、主処理部7が生成する電流値データD4aの値(測定結果としての電流値)における整数部に対応する桁の数、および電流値データD1aの値において電流値データD4aの値における小数部に対応する桁の数の合計が7桁となるように電流値を7桁の整数値で表すと共に、この7桁の整数値の電流値に「+」または「−」の符号を付加して電流値データD1aとして出力する。
【0023】
より具体的には、電圧測定回路2aは、一例として、電圧値が「+000012.3V(+12.3V)」のときに(整数部がMa=6桁で、小数部がMb=1桁の例)、「0000123」との7桁の整数値に「+」を付加した「+0000123」との値を電圧値データD1vとして出力する。また、電流測定回路2bは、一例として、電流値が「+000045.6mA(+45.6mA)」のときに(整数部がMa=6桁で、小数部がMb=1桁の例)、「0000456」との7桁の整数値に「+」を付加した「+0000456」との値を電流値データD1aとして出力する。なお、本例の測定装置1では、従来の電力測定装置と同様にして、上記の電圧測定回路2aや電流測定回路2bに、必要に応じて分圧器や分流器などが接続されるが、これらの補器についての図示および説明を省略する。
【0024】
前処理部3は、「前処理部」の一例であって、補正値記憶部3a、補正処理部3bおよび演算処理部3cを備えて構成されている。なお、本例の測定装置1では、一例として、前処理部3がFPGAで構成されると共に、FPGAのリソースの消費を低減するために、浮動小数点演算機能を有することなく補正処理部3bや演算処理部3cが構成されている。補正値記憶部3aは、後述するように、主処理部7による「補正値生成処理」によって生成される補正値データDrv,Dra(「予め生成された補正値」の一例)を記憶する。この場合、「補正値生成処理」が実行されていない時点において、補正値記憶部3aには、値が「0」の補正値データDrv,Dra(値が「0」の補正値:「±000000000」との値の補正値データDrv,Dra)が記憶させられている。また、後述するように、「補正値生成処理」では、補正値データDrvの値における最下位の桁が、電圧値データD1vの値における最下位の桁よりもN桁(一例として、N=2桁)分だけ下位の値を含んで生成されると共に、補正値データDrvの値における最下位の桁が、電流値データD1aの値における最下位の桁よりもN桁(一例として、N=2桁)分だけ下位の値を含んで生成される。
【0025】
補正処理部3bは、「補正処理部」の一例であって、補正値記憶部3aに記憶されている補正値データDrvに基づき、電圧測定回路2aから出力される電圧値データD1vの値を補正して「第2測定値データ」の一例である電圧値データD2vを生成すると共に、補正値記憶部3aに記憶されている補正値データDraに基づき、電流測定回路2bから出力される電流値データD1aの値を補正して「第2測定値データ」の他の一例である電流値データD2aを生成する補正処理を実行する。この場合、補正処理部3bは、補正処理において、最下位の桁が補正値データDrvにおける最下位の桁と等しい値の電圧値データD2vを生成すると共に、最下位の桁が補正値データDraにおける最下位の桁と等しい値の電流値データD2aを生成する。
【0026】
具体的には、本例の測定装置1では、後述するように、整数部がLa=6桁で、小数部がLb=3桁の値を、(La+Lb)=(6+3)=9桁の整数値に変換して「+」または「−」の符号を付加された値を補正値データDrv,Draとして生成する構成が採用されている。したがって、補正処理部3bは、電圧測定回路2aから出力される電圧値データD1vの値(Ma=6桁の整数部、およびMb=1桁の小数部からなる測定値を7桁の整数値に変換して「+」または「−」を付加した値)の末尾にN=2桁分の「00」を付加することで、(Ma+Lb)=(6+3)=9桁の整数値に変換し、変換後の測定値(「変換後測定値」の一例)を補正値データDrvの値に基づいて補正して(Ma+Lb)=9桁の整数値の値(電圧値)を求め、その整数値に「+」または「−」を付加して電圧値データD2vとして出力する。
【0027】
また、補正処理部3bは、電流測定回路2bから出力される電流値データD1aの値(Ma=6桁の整数部、およびMb=1桁の小数部からなる測定値を7桁の整数値に変換して「+」または「−」を付加した値)の末尾にN=2桁分の「00」を付加することで、(Ma+Lb)=(6+3)=9桁の整数値に変換し、変換後の測定値(「変換後測定値」の一例)を補正値データDraの値に基づいて補正して(Ma+Lb)=9桁の整数値の値(電流値)を求め、その整数値に「+」または「−」を付加して電流値データD2aとして出力する。なお、電圧値データD2vや電流値データD2aの生成に関する一連の処理については、後に具体例を挙げて詳細に説明する。
【0028】
演算処理部3cは、「第1演算処理部」の一例であって、電圧値データD2vを対象とする演算処理(一例として、積和演算処理:「予め規定された第1演算処理」の一例)を実行して「第3測定値データ」の一例である電圧値データD3vを生成すると共に、電流値データD2aを対象とする演算処理(一例として、積和演算処理:「予め規定された第1演算処理」の他の一例)を実行して「第3測定値データ」の他の一例である電流値データD3aを生成する。この場合、演算処理部3cは、9桁の整数値に「+」または「−」の符号が付加された電圧値データD2vの値を積算することにより、一例として、11桁の整数値に「+」または「−」の符号を付加した値(電圧値)の電圧値データD3vを生成して出力すると共に、9桁の整数値に「+」または「−」の符号が付加された電流値データD2aの値を積算することにより、一例として、11桁の整数値に「+」または「−」の符号を付加した値(電流値)の電流値データD3aを生成して出力する
【0029】
操作部4は、測定装置1の動作条件(測定条件)を設定するための各種操作スイッチを備え、スイッチ操作に応じた操作信号を主処理部7に出力する。表示部5は、主処理部7の制御下で測定結果(測定された電圧値、電流値および電力量)などを表示する。記憶部6は、主処理部7の動作プログラムや、後述するように主処理部7によって生成される電圧値データD4v、電流値データD4aおよび電力値データD4eなどを記憶する。
【0030】
主処理部7は、「第2演算処理部」としての機能に加えて、記憶部6や図示しない外部記憶装置に測定結果を記憶させる「記憶処理部」としての機能、および表示部5に測定結果を表示させる「表示処理部」としての機能を備え、測定装置1を総括的に制御する。具体的には、主処理部7は、補正値データDrv,Draを生成する「補正値生成処理」や、電圧値データD3vおよび電流値データD3aを対象とする演算処理(一例として、電圧値データD3vの値に基づいて電圧値データD3vの値の平均値を演算する「平均値演算処理」、および電流値データD3aの値に基づいて電流値データD3aの値の平均値を演算する「平均値演算処理」:「第2演算処理」の一例)を実行して、電圧値データD4v(「第4測定値データ」の一例)、電流値データD4a(「第4測定値データ」の他の一例)および電力値データD4eを生成し、これらを測定結果として記憶部6に記憶させたり(「測定結果の出力」の一例)、その値を表示部5に表示させたり(「測定結果の出力」の他の一例)する測定結果出力処理を実行する。
【0031】
より具体的には、補正値データDrvを生成する「補正値生成処理」においては、前述したように、処理開始時点において値が「0」の補正値データDrvが補正値記憶部3aに記憶されているため、分圧器が接続された状態の電圧測定回路2aに対して分圧器を介して補正値取得用の電圧を印加した状態(「入力信号としての補正値取得用信号を入力した状態」の一例)においては、電圧測定回路2aから出力される電圧値データD1vが実質的に補正されることなく電圧値データD2vとして補正処理部3bから出力される。また、演算処理部3cでは、一例として、補正処理部3bから出力される100サンプリング分(「予め規定された数」が「100」の例)の電圧値データD2v(すなわち、100サンプリング分の電圧値データD1v)の値を積算して電圧値データD3v(「予め規定された数の第1測定値データを対象とする第1演算処理によって生成された第3測定値データ」の一例)が生成される。
【0032】
したがって、主処理部7は、演算処理部3cから出力された電圧値データD3vに基づき、電圧値データD2v(すなわち、補正値取得用の電圧を印加した状態において電圧測定回路2aから出力される電圧値データD1v)の値の平均値を求めて補正値データDrvを生成する。この際に、主処理部7は、電圧値データD1vの値における最下位の桁よりも下位のN=2桁の値を含む値を補正値として補正値データDrvを生成する。具体的には、主処理部7は、整数部がLa=6桁で小数部がLb=3桁の値を(La+Lb)=(6+3)=9桁の整数値に変換した値に「+」または「−」を付加して補正値とする。なお、上記のような方法で補正値データDrvを求める構成に代えて、演算処理部3cによる積算処理を実行せずに、電圧測定回路2aから出力される100サンプリング分の電圧値データD1vをそのまま主処理部7に出力させて、主処理部7が100個の電圧値データD1vの値を積算して平均値を算出することで補正値データDrvを生成する構成を採用することもできる。
【0033】
また、補正値データDraを生成する「補正値生成処理」においては、前述したように、処理開始時点において値が「0」の補正値データDraが補正値記憶部3aに記憶されているため、分流器が接続された状態の電流測定回路2bに対して分流器を介して補正値取得用の電流を供給した状態(「入力信号としての補正値取得用信号を入力した状態」の他の一例)においては、電流測定回路2bから出力される電流値データD1aが実質的に補正されることなく電流値データD2aとして補正処理部3bから出力される。また、演算処理部3cでは、一例として、補正処理部3bから出力される100サンプリング分(「予め規定された数」が「100」の例)の電流値データD2a(すなわち、100サンプリング分の電流値データD1a)の値を積算して電流値データD3a(「予め規定された数の第1測定値データを対象とする第1演算処理によって生成された第3測定値データ」の他の一例)が生成される。
【0034】
したがって、主処理部7は、演算処理部3cから出力された電流値データD3aに基づき、電流値データD2a(すなわち、補正値取得用の電流を供給した状態において電流測定回路2bから出力される電流値データD1a)の値の平均値を求めて補正値データDraを生成する。この際に、主処理部7は、電流値データD1aの値における最下位の桁よりも下位のN=2桁の値を含む値を補正値として補正値データDraを生成する。具体的には、主処理部7は、整数部がLa=6桁で小数部がLb=3桁の値を(La+Lb)=(6+3)=9桁の整数値に変換した値に「+」または「−」を付加して補正値とする。なお、上記のような方法で補正値データDraを求める構成に代えて、演算処理部3cによる積算処理を実行せずに、電流測定回路2bから出力される100サンプリング分の電流値データD1aをそのまま主処理部7に出力させて、主処理部7が100個の電流値データD1aの値を積算して平均値を算出することで補正値データDraを生成する構成を採用することもできる。
【0035】
さらに、主処理部7は、上記の測定結果出力処理における第2演算処理において、最下位の桁が補正値データDrv,Draにおける最下位の桁と等しい値の電圧値データD4v、電流値データD4aおよび電力値データD4eを生成する。この場合、主処理部7は、上記の測定結果出力処理において、「処理A」および「処理B」のいずれか予め指定された一方を実行する。
【0036】
具体的には、「処理A」としては、電圧値データD3vの値(100サンプリング分の電圧値の積算値)を、予め規定された変換手順に従い、Mc=8桁の整数部、およびLb=3桁の小数部からなる電圧値(電圧値データD3vに基づいて演算した電圧値の平均値:「測定値A」の一例)に変換した後に、その測定値を対象とする「第2演算処理」を実行して電圧値データD4vを生成すると共に、電流値データD3aの値(100サンプリング分の電流値の積算値)を、予め規定された変換手順に従い、Mc=8桁の整数部、およびLb=3桁の小数部からなる電流値(電流値データD3aに基づいて演算した電流値の平均値:「測定値A」の他の一例)に変換した後に、その測定値を対象とする「第2演算処理」を実行して電流値データD4aを生成する。
【0037】
また、「処理B」としては、電圧値データD3vの値(100サンプリング分の電圧値の積算値)を対象とする「第2演算処理」を実行して生成した測定値(電圧値データD3vに基づいて演算した電圧値の平均値:「測定値Ba」の一例)を、予め規定された変換手順に従い、Ma=6桁の整数部、およびLb=3桁の小数部からなる測定値(「測定値Bb」の一例)に変換して電圧値データD4vを生成すると共に、電流値データD3aの値(100サンプリング分の電流値の積算値)を対象とする「第2演算処理」を実行して生成した測定値(電流値データD3aに基づいて演算した電流値の平均値:「測定値Ba」の他の一例)を、予め規定された変換手順に従い、Ma=6桁の整数部、およびLb=3桁の小数部からなる測定値(「測定値Bb」の他の一例)に変換して電流値データD4aを生成するさらに、主処理部7は、生成した電圧値データD4vの値、および電流値データD4aの値に基づき、電力量を演算して電力値データD4eを生成する。
【0038】
次に、測定装置1による電圧値、電流値および電力量の測定方法について、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、電圧測定回路2aに分圧器を接続し、かつ、電流測定回路2bに分流器を接続した状態において測定処理を実行する例について説明するが、分圧器や分流器は必要に応じて信号処理部2に接続すればよく、分圧器や分流器を使用せずに一連の測定処理を実行することもできる。
【0039】
分圧器や分流器を使用した測定処理時には、まず、補正値データDrv,Draを生成する「補正値生成処理」を実行する。具体的には、補正値データDrvの生成に際しては、一例として、分圧器を接続した状態の電圧測定回路2aに対して分圧器を介して補正値取得用の電圧(一例として、図示しない電圧発生器から出力した+100.000Vの電圧)を印加すると共に、操作部4を操作して、印加する電圧の正確な値(この例では、「100.000V」)を入力した後に、処理開始を指示する。この際に、本例の測定装置1における電圧測定回路2aは、前述したように、整数部がMa=6桁で、小数部がMb=1桁の電圧値を7桁の整数値に置き換えたうえで「+」または「−」を付加した値(電圧値)を電圧値データD1vとして出力する。このため、電圧測定回路2aに接続されている分圧器に固有のマイナスオフセット成分(一例として、「−10.336・・・V」)が存在するときに、「+100.000V」の電圧が印加された状態においては、一例として、「+0000896」との値の電圧値データD1v(89.6Vの電圧値を示す電圧値データD1v)や、「+0000897」との値の電圧値データD1v(89.7Vの電圧値を示す電圧値データD1v)が電圧測定回路2aから出力される。
【0040】
また、本例の測定装置1では、「補正値生成処理」開始時点において、前述したように、補正値記憶部3aには、値が「0」の補正値データDrv(「±000000000」との値の補正値データDrv)が記憶されている。したがって、これらの電圧値データD1vが補正処理部3bにおいて実質的には補正されることなく、「+000089600」との値の電圧値データD2v(89.600Vの電圧値を示す電圧値データD2v)や、「+000089700」との値の電圧値データD2v(89.700Vの電圧値を示す電圧値データD1v)が補正処理部3bから出力される。
【0041】
さらに、演算処理部3cでは、補正処理部3bから出力される100サンプリング分の電圧値データD2v(100個の電圧値データD2v)の値を積算して電圧値データD3vが生成される。この際に、電圧測定回路2aから出力された100個の電圧値データD1vのうちの36個が「+0000896」との値で、100個の電圧値データD1vのうちの64個が「+0000897」との値であったときには、補正処理部3bから出力された100個の電圧値データD2vのうちの36個が「+000089600」との値で、100個の電圧値データD2vのうちの64個が「+000089700」との値となる。この結果、上記の例では、演算処理部3cにおいて「+00008966400」との値の電圧値データD3v(8966.400Vの電圧値を示す電圧値データD3v)が生成される。
【0042】
したがって、主処理部7は、演算処理部3cから出力された電圧値データD3vに基づき、電圧値データD2vの値の平均値を求めて補正値データDrvを生成する。具体的には、まず、「+00008966400」との値(8966.400V)に基づき、100個の電圧値データD2vの平均値が「+000089664」との値(89.664V)であると演算する。次いで、分圧器を介して電圧測定回路2aに入力されていた電圧値の値が「+000100000」(100.000V)であることに基づき、「−000010336」との値の補正値データDrv((La+Lb)=9桁の整数値と「+」または「−」のいずれかの符号からなる補正値の一例である「+10.336V」の補正値を示す補正値データDrv)を生成する。また、主処理部7は、生成した補正値データDrvを補正値記憶部3aに記憶させる。これにより、電圧値データD1vの値における最下位の桁よりも下位のN=2桁の値を含む値を補正値の補正値データDrvの生成が完了する。
【0043】
また、補正値データDraの生成に際しては、一例として、分流器を接続した状態の電流測定回路2bに対して分流器を介して補正値取得用の電流(一例として、図示しない電流出力器から出力した+100.000mAの電流)を供給すると共に、操作部4を操作して、供給する電流の正確な値(この例では、「100.000mA」)を入力した後に、処理開始を指示する。この際に、本例の測定装置1における電流測定回路2bは、前述したように、整数部がMa=6桁で、小数部がMb=1桁の電流値を7桁の整数値に置き換えたうえで「+」または「−」を付加した値(電流値)を電流値データD1aとして出力する。このため、電流測定回路2bに接続されている分流器に固有のプラスオフセット成分(一例として、「+10.336・・・mA」)が存在するときに、「+100.000mA」の電流が供給された状態においては、一例として、「+0001103」との値の電流値データD1a(110.3mAの電流値を示す電流値データD1a)や、「+0001104」との値の電流値データD1a(110.4mAの電流値を示す電流値データD1a)が電流測定回路2bから出力される。
【0044】
また、本例の測定装置1では、「補正値生成処理」開始時点において、前述したように、補正値記憶部3aには、値が「0」の補正値データDra(「±000000000」との値の補正値データDra)が記憶されている。したがって、これらの電流値データD1aが補正処理部3bにおいて実質的には補正されることなく、「+000110300」との値の電流値データD2a(110.300mAの電流値を示す電流値データD2a)や、「+000110400」との値の電流値データD2a(110.400mAの電流値を示す電流値データD1a)が補正処理部3bから出力される。
【0045】
さらに、演算処理部3cでは、補正処理部3bから出力される100サンプリング分の電流値データD2a(100個の電流値データD2a)の値を積算して電流値データD3aが生成される。この際に、電流測定回路2bから出力された100個の電流値データD1aのうちの64個が「+0001103」との値で、100個の電流値データD1aのうちの36個が「+0001104」との値であったときには、補正処理部3bから出力された100個の電流値データD2aのうちの64個が「+000110300」との値で、100個の電流値データD2aのうちの36個が「+000110400」との値となる。この結果、上記の例では、演算処理部3cにおいて「+00011033600」との値の電流値データD3a(11033.600mAの電流値を示す電流値データD3a)が生成される。
【0046】
したがって、主処理部7は、演算処理部3cから出力された電流値データD3aに基づき、電流値データD2aの値の平均値を求めて補正値データDraを生成する。具体的には、まず、電流値データD3aの「+00011033600」との値(11033.600mA)に基づき、100個の電流値データD2aの平均値が「+000110336」との値(110.336mA)であると演算する。次いで、分流器を介して電流測定回路2bに入力されていた電流値の値が「+000100000」(100.000mA)であることに基づき、「+000010336」との値の補正値データDra((La+Lb)=9桁の整数値と「+」または「−」のいずれかの符号からなる補正値の一例である「−10.336mA」の補正値を示す補正値データDra)を生成する。また、主処理部7は、生成した補正値データDraを補正値記憶部3aに記憶させる。これにより、電流値データD1aの値における最下位の桁よりも下位のN=2桁の値を含む値を補正値の補正値データDraの生成が完了する。
【0047】
一方、測定対象の電圧値、電流値および電力量の測定に際しては、上記の分圧器を介して電圧測定回路2aを測定対象に接続し、かつ、上記の分流器を介して電流測定回路2bを測定対象に接続する。次いで、操作部4を操作して測定処理の開始を指示する。なお、実際には、電圧値の測定処理、電流値の測定処理および電力量の測定処理が並行して実行されるが、測定装置1の動作原理についての理解を容易とするために、電圧値の測定処理および電流値の測定処理について別個に説明する。また、測定結果としての電圧値および電流値に基づいて電力量を求める方法(電力量の測定方法)については公知のため、詳細な説明を省略する。
【0048】
分圧器を介して電圧測定回路2aを接続した測定対象の任意の2点間に電圧(電位差)が生じている場合には、まず、電圧測定回路2aがこの電圧を測定して(A/D変換して)電圧値データD1vを生成する。この際に、図2に示すように、例えば、測定対象に生じている電圧の真の値(以下、「真値」ともいう)が「500.000・・・V」であり、かつ、電圧測定回路2aに接続されている分圧器に固有のマイナスオフセット成分により低下する電圧値が、上記の「補正値生成処理」によって取得された補正値データDrvの値(この例では、「+10.336V」)の逆数と同程度(この例では、「−10.336・・・V」)であった場合、分圧器を介して電圧測定回路2aに入力される(印加される)電圧の値(以下、「入力値」ともいう)は、「489.664・・・V」となる。したがって、この例では、「+0004896」との値の電圧値データD1v(489.6Vの電圧値を示す電圧値データD1v)や、「+0004897」との値の電圧値データD1v(489.7Vの電圧値を示す電圧値データD1v)が電圧測定回路2aから順次出力される。
【0049】
なお、同図では、補正値データDrv、および電圧値データD1v〜D3vの実際の値を丸括弧内に示している。この際には、「+0004896」との値(電圧測定回路2aへの入力値における下位の桁が切り捨てられた値)の電圧値データD1vと、「+0004897」との値(電圧測定回路2aへの入力値における下位の桁が切り上げられた値)の電圧値データD1vとの比率が、前述した補正値データDrvの生成時に電圧測定回路2aから出力される「+0000896」との値の電圧値データD1vと「+0000897」との値の電圧値データD1vとの比率と同程度となる。したがって、この例では、100個の電圧値データD1vのうちの36個が「+0004896」との値で、100個の電圧値データD1vのうちの64個が「+0004897」との値となる。
【0050】
また、この測定処理に先立って実行された「補正値生成処理」により、補正値記憶部3aには「+000010336」との値の補正値データDrv(+10.336Vとの補正値を示す補正値データDrv)が記憶されている。したがって、補正処理部3bは、「+0004896」との値の電圧値データD1vが電圧測定回路2aから出力されたときに、この値を補正値データDrvの値(補正値)の桁数に合わせて「+000489600」としたうえで、補正値記憶部3aに記憶されている補正値データDrvの値を加算することにより、「+000499936」との値の電圧値データD2v(499.936Vの電圧値を示す電圧値データD2v)を生成する(「補正処理」の一例)。また、補正処理部3bは、「+0004897」との値の電圧値データD1vが電圧測定回路2aから出力されたときに、この値を補正値データDrvの値(補正値)の桁数に合わせて「+000489700」としたうえで、補正値記憶部3aに記憶されている補正値データDrvの値を加算することにより、「+000500036」との値の電圧値データD2v(500.036Vの電圧値を示す電圧値データD2v)を生成する(「補正処理」の他の一例)。
【0051】
さらに、演算処理部3cは、補正処理部3bから出力される100サンプリング分の電圧値データD2vの値を積算して電圧値データD3vを生成する。この際に、補正処理部3bから出力された100個の電圧値データD2vのうちの36個が「+000499936」との値で、100個の電圧値データD2vのうちの64個が「+000500036」との値となるため、演算処理部3cは、この100個の電圧値データD2vの値を積算して「+00050000000」との値の電圧値データD3v(50000.000Vの電圧値を示す電圧値データD3v)を生成して主処理部7に出力する。
【0052】
一方、主処理部7は、演算処理部3cから出力された電圧値データD3vに基づき、電圧値データD2vの値の平均値を求めて電圧値データD4vを生成する。具体的には、一例として、「処理A」および「処理B」のうちの「処理A」を実行するように選択されていた場合には、まず、電圧値データD3vの「+00050000000」との値(50000.000V)をMc=8桁の整数部およびLb=3桁の小数部からなる「+00050000.000V」との値(測定値A)に変換する。次いで、変換後の値に基づき、100個の電圧値データD2vの平均値が「+000500.000V」との値であると演算する。続いて、演算の結果を電圧値データD4vとして記憶部6に記憶させると共に、その値を表示部5に表示させる。これにより、測定対象の電圧値に関する「測定結果出力処理」が完了する。
【0053】
この場合、図2に示すように、本例の測定装置1では、測定対象に生じている電圧の真値が「500.000・・・V」である上記の例において、その測定結果として「+500.000V」との値の電圧値データD4vが生成されており、真値と測定結果との差分値(誤差)が「0.000V」となっている。これに対して、従来の電力測定装置と同様に、補正値データDrvの値における最下位の桁が電圧測定回路2aから出力される電圧値データD1vの値における最下位の桁と等しくなるように各処理を実行する構成の測定装置によって、上記の例と同様の電圧値の測定処理を実行した場合には、同図に示すように、測定結果として「+499.964V」との値の電圧値データD4vが生成され、真値と測定結果との差分値(誤差)が「−0.036V」となる。したがって、この例では、電圧値データD1vの値における最下位の桁よりも下位のN=2桁の値を含む補正値データDrvを用いて電圧値データD1vを補正した分だけ、真値と測定結果との差分値(誤差)が小さくなることがわかる。
【0054】
一方、分流器を介して電流測定回路2bを接続した測定対象の任意の2点間に電流が導通している場合には、まず、電流測定回路2bがこの電流を測定して(A/D変換して)電流値データD1aを生成する。この際に、図3に示すように、例えば、測定対象を導通している電流の真の値(以下、「真値」ともいう)が「500.000・・・mA」であり、かつ、電流測定回路2bに接続されている分流器に固有のプラスオフセット成分により増加する電流値が、上記の「補正値生成処理」によって取得された補正値データDraの値(この例では、「−10.336mA」)の逆数と同程度(この例では、「+10.336・・・mA」)であった場合、分流器を介して電流測定回路2bに入力される電流の値(以下、「入力値」ともいう)は、「510.336・・・mA」となる。したがって、この例では、「+0005103」との値の電流値データD1a(510.3mAの電流値を示す電流値データD1a)や、「+0005104」との値の電流値データD1a(500.4mAの電流値を示す電流値データD1a)が電流測定回路2bから順次出力される。
【0055】
なお、同図では、補正値データDraおよび電流値データD1a〜D3aの実際の値を丸括弧内に示している。この際には、「+0005103」との値(電流測定回路2bへの入力値における下位の桁が切り捨てられた値)の電流値データD1aと、「+0005104」との値(電流測定回路2bへの入力値における下位の桁が切り上げられた値)の電流値データD1aとの比率が、前述した補正値データDraの生成時に電流測定回路2bから出力される「+0001103」との値の電流値データD1aと「+0001104」との値の電流値データD1aとの比率と同程度となる。したがって、この例では、100個の電流値データD1aのうちの64個が「+0005103」との値で、100個の電流値データD1aのうちの36個が「+0005104」との値となる。
【0056】
また、この測定処理に先立って実行された「補正値生成処理」により、補正値記憶部3aには「−000010336」との値の補正値データDra(−10.336mAとの補正値を示す補正値データDra)が記憶されている。したがって、補正処理部3bは、「+0005103」との値の電流値データD1aが電流測定回路2bから出力されたときに、この値を補正値データDraの値(補正値)の桁数に合わせて「+000510300」としたうえで、補正値記憶部3aに記憶されている補正値データDraの値を加算することにより、「+000499964」との値の電流値データD2a(499.964mAの電流値を示す電流値データD2a)を生成する(「補正処理」の一例)。また、補正処理部3bは、「+0005104」との値の電流値データD1aが電流測定回路2bから出力されたときに、この値を補正値データDraの値(補正値)の桁数に合わせて「+000510400」としたうえで、補正値記憶部3aに記憶されている補正値データDraの値を加算することにより、「+000500064」との値の電流値データD2a(500.064mAの電流値を示す電流値データD2a)を生成する(「補正処理」の他の一例)。
【0057】
さらに、演算処理部3cは、補正処理部3bから出力される100サンプリング分の電流値データD2aの値を積算して電流値データD3aを生成する。この際に、補正処理部3bから出力された100個の電流値データD2aのうちの64個が「+000499964」との値で、100個の電流値データD2aのうちの36個が「+000500064」との値となるため、演算処理部3cは、この100個の電流値データD2aの値を積算して「+00050000000」との値の電流値データD3a(50000.000mAの電流値を示す電流値データD3a)を生成して主処理部7に出力する。
【0058】
一方、主処理部7は、演算処理部3cから出力された電流値データD3aに基づき、電流値データD2aの値の平均値を求めて電流値データD4aを生成する。具体的には、一例として、「処理A」および「処理B」のうちの「処理B」を実行するように選択されていた場合には、まず、電流値データD3aの「+00050000000」との値(50000.000mA)に基づき、100個の電流値データD2aの平均値が「+000500000」との値(500.000mA:「測定値Ba」の一例)であると演算する。次いで、演算した値をMa=6桁の整数部およびLb=3桁の小数部からなる「+000500.000mA」との値(測定値Bb)に変換する。続いて、変換後の電流値を電流値データD4aとして記憶部6に記憶させると共に、その値を表示部5に表示させる。これにより、測定対象の電流値に関する「測定結果出力処理」が完了する。
【0059】
また、主制御部7は、上記の両測定処理によって演算した電圧値データD4vの値、および電流値データD4aの値に基づいて測定対象によって消費されている電力値を演算し、その演算結果を電力値データD4eとして記憶部6に記憶させると共に、その値を表示部5に表示させる。これにより、電力値に関する「測定結果出力処理」が完了する。
【0060】
この場合、図3に示すように、本例の測定装置1では、測定対象を導通している電流の真値が「500.000・・・mA」である上記の例において、その測定結果として「+500.000mA」との値の電流値データD4aが生成されており、真値と測定結果との差分値(誤差)が「0.000mA」となっている。これに対して、従来の電力測定装置と同様に、補正値データDraの値における最下位の桁が電流測定回路2bから出力される電流値データD1aの値における最下位の桁と等しくなるように各処理を実行する構成の測定装置によって、上記の例と同様の電流値の測定処理を実行した場合には、同図に示すように、測定結果として「+500.036mA」との値の電流値データD4aが生成され、真値と測定結果との差分値(誤差)が「+0.036mA」となる。したがって、この例では、電流値データD1aの値における最下位の桁よりも下位のN=2桁の値を含む補正値データDraを用いて電流値データD1aを補正した分だけ、真値と測定結果との差分値(誤差)が小さくなることがわかる。
【0061】
このように、この測定装置1では、主処理部7が、補正値取得用の信号を入力した状態において信号処理部2から出力される100サンプリング分の電圧値データD1vおよび電流値データD1aを対象とする「第1演算処理」によって生成された電圧値データD3vおよび電流値データD3aと、100サンプリング分の電圧値データD1vおよび電流値データD1aとのいずれか規定された一方に基づき、電圧値データD1vおよび電流値データD1aの値における最下位の桁よりも下位のN=2桁の値を含む値の補正値データDrv,Draを生成する「補正値生成処理」を実行可能に構成されると共に、「第2演算処理」において、最下位の桁が補正値データDrv,Draの値(補正値)における最下位の桁と等しい値の電圧値データD4vおよび電流値データD4aを生成し、補正処理部3bが、「補正処理」において、最下位の桁が補正値データDrv,Draの値(補正値)における最下位の桁と等しい値の電圧値データD2vおよび電流値データD2aを生成する。
【0062】
したがって、この測定装置1によれば、主処理部7による演算処理に先立って前処理部3において信号処理部2から出力される電圧値データD1vや電流値データD1aを前処理する分だけ、主処理部7にかかる負担を軽減することができ、これにより、処理能力が高い高価な演算素子を採用することなく主処理部7を構成しても、主処理部7において、他の各種処理と並行して測定結果の表示や記録をスムーズに実行することができるだけでなく、測定処理時と同様の手順で、信号処理部2、前処理部3および主処理部7によって生成される補正値(補正値データDrv,Dra)を、信号処理部2から出力される電圧値データD1vや電流値データD1aの最下位の桁よりも下位のN=2桁の値を含んで生成し、測定処理に際して、より高精度な補正値を用いて電圧値データD1vや電流値データD1aを補正する分だけ、高精度な測定結果を取得することができる。
【0063】
また、この測定装置1では、信号処理部2が、電圧値データD4vや電流値データD4aの値(測定結果)における整数部に対応する桁がMa=6桁で小数部に対応する桁がMb=1桁の(Ma+Mb)7桁の整数値に「+」または「−」を付加した値の電圧値データD1vおよび電流値データD1aを出力し、主処理部7が、「補正値生成処理」において、整数部がLa=6桁で小数部がLb=3桁の値を(La+Lb)=9桁の整数値に変換した値を「補正値」として補正値データDrv,Draを生成し、補正処理部3bが、「補正処理」において、電圧値データD1vおよび電流値データD1aの値を(Ma+Lb)=9桁の整数値に変換した変換後の測定値を補正値データDrv,Draの値(補正値)に基づいて補正した(Ma+Lb)=9桁の整数値に「+」または「−」を付加した値の電圧値データD2vおよび電流値データD2aを生成し、演算処理部3cが、「第1演算処理」において、整数値の電圧値データD3vおよび電流値データD3aを生成し、主処理部7が、「測定結果出力処理」において、電圧値データD3vおよび電流値データD3aの値を予め規定された変換手順に従ってMc=11桁の整数部およびLb=3桁の小数部からなる「測定値A」に変換した後に「測定値A」を対象とする「第2演算処理」を実行して電圧値データD4vおよび電流値データD4aを生成する「処理A」と、電圧値データD3vおよび電流値データD3aの値を対象とする「第2演算処理」を実行して生成した「測定値Ba」を予め規定された変換手順に従ってMa=6桁の整数部およびLb=3桁の小数部からなる「測定値Bb」に変換して電圧値データD4vおよび電流値データD4aを生成する「処理B」とのいずれか一方を実行する。
【0064】
したがって、この測定装置1によれば、前処理部3に対して小数点演算処理を実行させることなく電圧値データD4vや電流値データD4aを取得することができるため、「前処理部」として処理能力が高い高価な演算素子を採用したり、処理能力が低い電算素子で構成した「前処理部」に大きな負担をかけたりすることなく、高精度な測定結果(電圧値データD4vおよび電流値データD4a)を取得することができる。これにより、測定装置1の製造コストを十分に低減することができる。
【0065】
なお、「測定装置」の構成は、上記の測定装置1の構成に限定されない。例えば、FPGAで構成した前処理部3(補正値記憶部3a、補正処理部3bおよび演算処理部3c)を有する測定装置1を例に挙げて説明したが、「前処理部」については、FPGAで構成されたものに限定されず、DSPやCPUによって構成することもできる。このような構成においても、浮動小数点演算機能を持たないDSPや、浮動小数点演算機能を持たないCPUを採用して「前処理部」を構成することにより、FPGAで構成した前処理部3を有する測定装置1と同様にして、「前処理部」を設けずに高性能なCPUで各種の演算を実行する構成と比較して、「測定装置」の製造コストを十分に低減することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 測定装置
2 信号処理部
2a 電圧測定回路
2b 電流測定回路
3 前処理部
3a 補正値記憶部
3b 補正処理部
3c 演算処理部
4 操作部
5 表示部
6 記憶部
7 主処理部
D1a〜D4a 電流値データ
D1v〜D4v 電圧値データ
D4e 電力値データ
Dra,Drv 補正値データ
図1
図2
図3