(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象空間内のユーザから環境改善を要求する操作コマンドを取得したとき、前記対象空間内の所定の地点の環境情報に基づき、前記所定の地点のうち予め検出しておいた前記操作コマンドの送信元のユーザの好みの環境条件を満足する地点を検索するステップと、
当該ステップで検索した地点を、前記ユーザの好みの環境条件を満足する地点として通知するステップと、
前記対象空間内の、前記操作コマンドを送信していない状態が所定時間以上継続している非送信ユーザの現在位置における環境情報を取得するステップと、
前記非送信ユーザの現在位置における環境情報が前記非送信ユーザの好みの環境条件を満足しないとき、前記非送信ユーザの現在位置の環境と前記非送信ユーザの好みの環境条件とが不適合であることを通知するステップと、
を備えることを特徴とする快適環境選択支援方法。
対象空間内のユーザから環境改善を要求する操作コマンドを取得したとき、前記対象空間内の所定の地点の環境情報に基づき、前記所定の地点のうち予め検出しておいた前記操作コマンドの送信元のユーザの好みの環境条件を満足する地点を検索するステップと、
当該ステップで検索した地点を、前記ユーザの好みの環境条件を満足する地点として通知するステップと、
前記操作コマンドの送信元のユーザの現在位置を取得するステップと、
前記対象空間内の所定の地点における環境を地点毎に調整し且つ、前記対象空間内の所定の地点のうち前記操作コマンドの送信元のユーザの現在位置に対応する地点の環境を前記環境改善の要求内容に応じて調整する第1制御ステップと、
前記対象空間全体の環境を調整する第2制御ステップと、
を備え、
前記対象空間内の第1しきい値以上の人数のユーザから同一内容の環境改善を要求する操作コマンドを取得したとき、前記対象空間内の全てのユーザに対して環境変更の問い合わせを行い、前記第1しきい値よりも大きい第2しきい値以上の人数のユーザから前記環境変更に対する同意が得られたとき、前記第1制御ステップに代えて前記第2制御ステップにより前記対象空間全体の環境を前記環境改善の要求内容に応じて調整することを特徴とする快適環境選択支援方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の快適環境選択支援装置100の一例を示す概略構成図である。
快適環境選択支援装置100は、環境調整用設備1を制御する設備制御装置2と、設備制御装置2での各種演算に必要なデータなどを記憶する不揮発性の記憶装置3と、オフィストの1フロア等の対象空間の環境を検出するための環境センサ4と、位置検知センサ5と、ユーザ端末6と、を含む。
環境調整用設備1は、例えば、空調設備、ファン、照明設備、ブラインド等、空間における環境改善に寄与する設備を含む。
【0023】
記憶装置3は、例えば
図2に示すように、環境センサ4のセンサ情報を格納するためのセンサ情報記憶領域31、ユーザ設定情報やユーザの好みの環境条件を記憶するためのユーザ情報記憶領域32、環境負荷情報や設備稼動情報等を記憶するための環境負荷情報記憶領域33、ユーザによりリクエスト要求が行われたときの、ユーザの現在位置の環境を表す履歴情報を記憶する履歴情報記憶領域34、ユーザによりリクエスト要求が行われないときの、ユーザの現在位置の環境を表す履歴情報を記憶する履歴情報記憶領域35と、環境区分情報を記憶する環境区分情報記憶領域36と、を備える。また、設備制御装置2での制御演算過程で演算された各種データを記憶する記憶領域(図示せず)も備える。
【0024】
図3は、環境区分情報の一例を示したものである。
図3に示す空間は、上方からみて長方形の空間である。
図3(b)に示すように、上方からみて下辺に沿った領域および左辺に沿った領域(以下、屋外領域e1、e2という。)に、屋外または半屋外空間が形成され、これら屋外領域e1、e2を除く領域、すなわちe3に室内空間が形成されている。室内領域e3の右端側が、照明、空調など環境調整用設備1による調整ができないペリメータゾーンe4となっている。
【0025】
環境区分情報記憶領域36に記憶される環境区分情報は、例えば
図3(a)に示すようにユーザの現在位置の位置検知区分を表す位置検知区分情報、
図3(b)に示すように環境センサの検知範囲を表すセンサ区分情報、
図3(c)に示すように環境調整用設備1としての空調設備それぞれによる調整可能範囲を表す空調区分情報、
図3(d)に示すように環境調整用設備1としての照明設備それぞれによる調整可能範囲を表す照明区分情報を含む。
【0026】
位置検知区分は、例えば、
図3(a)の場合には、室内領域e3全域にわたって、区分P1〜P80が、整列して配置される。屋外領域e1、e2は、室内領域e3よりも大きく区分され、屋外領域e1は区分P96およびP97に区分され、屋外領域e2は区分P98およびP99に区分される。
センサ区分は、例えば、対象空間において、ユーザが在居可能な位置に対応して設定される。
図3(b)の場合には、室内領域e3のペリメータゾーンe4を除く領域に、区分S1〜S16が整列して設定される。屋外領域e1は領域全体が区分S98として区分される。屋外領域e2は領域全体が区分S99として区分される。
【0027】
空調区分は、環境調整用設備1としての空調設備による空調調整の可能範囲に応じて設定される。
図3(c)の場合には、室内領域e3のペリメータゾーンe4を除く領域に、区分AC1〜AC16が、整列して設定される。屋外領域e1、e2には、環境調整用設備1が配置されないため区分は設定されない。
照明区分は、例えば、対象空間において、環境調整用設備1としての照明設備による照度調整可能範囲に応じて設定される。
図3(d)の場合には、室内領域e3のペリメータゾーンe4を除く領域に、区分L1〜L49が、整列して設定される。屋外領域e1、e2には、環境調整用設備1が配置されないため区分は設定されない。
【0028】
なお、各区分の設定はこれに限るものではなく、任意に設定することができる。
そして、
図3(a)〜(d)に示すように、これら位置検知区分、センサ区分、空調区分、照明区分は、それぞれ包含する領域が異なる。そのため、位置情報として位置検知区分と、センサ区分と、空調区分と、照明区分とのそれぞれの区分の対応関係を表す例えば
図4に示すような対応図が、環境区分情報記憶領域36に記憶されている。
【0029】
図4は、対応関係の一部を示したものである。例えば、位置検知区分P1は、
図3(a)に示すように、室内領域e3の左上方に設定されている。この位置は、
図3(b)に示すセンサ区分S1、
図3(c)に示す空調区分AC1、
図3(d)に示す照明区分L1と対応するため、
図4に示すように、位置情報を表す位置検知区分P1に対し、センサ区S1、空調区分AC1、照明区分L1が対応付けられる。
【0030】
環境センサ4は、対象空間における環境を表す各種パラメータを検出するためのセンサであって、例えば、照度、日射量、紫外線量、温度、湿度、グローブ温度、風速、等、また、騒音を検出するセンサを含む。これらセンサは、対象空間に配置された環境調整用設備1や、ユーザが存在することが可能な場所に複数配置される。これらセンサの配置位置とセンサ区分とが対応するように設定される。
【0031】
位置検知センサ5は、例えば、無線通信可能なユーザ端末6の、無線通信のアクセスポイントからユーザ端末6の位置情報を取得し、これに基づき、対象の空間内におけるユーザ端末6の位置を推定する。
あるいは、対象の空間(例えばフロア)に入室したときまたは退室したときに、ユーザがユーザ端末6を操作して、入室または退室したことを通知するとともに、在居場所を確定したとき、また、在居場所を移動したとき、後述のリクエスト送信時などに、ユーザの位置情報を通知することにより、位置検知センサ5において、ユーザの位置情報を取得するようにしてもよい。そして、位置検知センサ5は、ユーザ端末6のユーザを特定するID情報とその位置情報とを対応付けて設備制御装置2に送信する。
【0032】
ユーザ端末6は、例えばスマートフォンのような携帯端末装置であって、設備制御装置2との間で無線通信により通信可能な端末である。また、設備制御装置2からの要求に応じてユーザにより設定されたユーザ設定情報や、環境調整用設備1の変更要求を行うための操作コマンド等を設備制御装置2に送信する。
設備制御装置2は、
図2に示すように、センサ情報取得部21、設備稼動情報取得部22、ユーザ操作コマンド取得部23、ユーザ設定情報取得部24、制御処理部25、設備制御部26、自動設備制御部27、を備える。
【0033】
センサ情報取得部21は、環境センサ4の各種センサ情報および位置検知センサ5のセンサ情報を入力し、環境センサ4のセンサ情報を、各環境センサ4を特定する情報および現在時刻(年月日)と対応付けて、センサ情報記憶領域31に記憶する。また、位置検知センサ5からのID情報および位置情報を現在時刻(年月日)と対応付けて、センサ情報記憶領域31に記憶する。
設備稼動情報取得部22は、環境調整用設備1の稼動情報を入力し、稼動情報を、各環境調整用設備1を特定する情報と対応付けて、環境負荷情報記憶領域33に記憶する。
【0034】
ユーザ操作コマンド取得部23は、ユーザ端末6から、環境調整用設備1に対する設定変更を要求するユーザからの操作コマンドを入力し、操作コマンドの送信元のユーザを特定するID情報と対応付けて、制御処理部25に出力する。
ユーザ設定情報取得部24は、ユーザ端末6から、所定のユーザ設定情報を入力し、ユーザ設定情報を、ユーザ設定情報の送信元のユーザを特定するID情報と対応付けて、ユーザ情報記憶領域32に記憶する。
【0035】
制御処理部25は、これら各取得部21〜24で取得した各種情報をもとに、履歴情報の生成やセンサ情報の収集処理を行い、ユーザの好みの環境を満足する場所を提示するアドバイス表示を行う。
また、制御処理部25は、位置検知センサ5で検出した、無線通信のアクセスポイントの位置情報あるいは、操作コマンドに付随する位置情報などをもとに、各ユーザの現在位置に対応する位置検知区分を特定し、対象空間に存在するユーザ端末6およびその位置検知区分を管理する。
【0036】
また、制御処理部25は取得した各種情報をもとに、ユーザ毎の好みの温熱光環境等の推定(以後、好み温熱光環境等推定処理という。)、対象空間への入室時などにユーザのアドバイス提示要求に応じて好みの環境を満足する場所を提示する処理(以後、アドバイス提示処理という。)、ユーザの環境に対する
リクエスト要求に応じて好みの環境を満足する場所を提示する処理(以後、リクエスト対応温熱光環境アドバイス表示処理という。)、環境変化に伴いユーザの好みの環境を満足する場所を提示する処理(以後、環境変化時の温熱光環境アドバイス表示処理という。)を行う。
【0037】
さらに制御処理部25は、取得した各種情報をもとに、リクエストに応じて対象空間の全体系の環境を制御するフロアリクエスト処理、また、ユーザ毎の、各ユーザが対象空間で作業することにより要した環境負荷の演算等を行う個別環境負荷情報演算処理、などの処理を行う。
設備制御部26は、制御処理部25からの要求に応じて、各環境調整用設備1のオンオフまた、制御目標値の変更などの処理を行う。
【0038】
自動設備制御部27は、エネルギ消費量削減の重要度および節電レベルを考慮して、BEMS(Building and Energy Management System:ビル管理システム)により、エネルギ消費量削減を図るための制御を行い、環境調整用設備1を自動制御する。
【0039】
次に、制御処理部25で実行される演算処理の処理手順を、フローチャートを伴って説明する。
〔好み温熱光環境等推定処理〕
まず、好み温熱光環境等推定処理を、
図5のフローチャートを伴って説明する。
この好み温熱光環境等推定処理は、例えば、推定対象となるユーザが対象空間から退出したとき、あるいは、対象となるユーザが対象空間に存在するときなどに予め設定したタイミングで実行される。
【0040】
例えば、毎月行うようにしてもよいし、数ヶ月に一度、あるいは季節の変わり目などに行うようにしてもよい。また、対象空間に数時間存在した時点で実行し、予め保持している好みの環境条件を、数時間滞在した時点で検出したユーザの好みの環境条件に応じて変更するようにしてもよい。
まず、ステップS1で、推定対象となるユーザのID情報をもとに、履歴情報記憶領域34に記憶されているリクエスト有り時の履歴情報および履歴情報記憶領域35に記憶されているリクエスト無し時の履歴情報の中から、推定対象となるユーザの履歴情報を抽出する。
【0041】
ここで、履歴情報記憶領域34に記憶されているリクエスト有り時の履歴情報は、後述のリクエスト対応温熱光環境アドバイス表示処理によってユーザIDごとに生成される。
例えば
図6に示すように、ユーザ端末6から操作コマンドを受信した時点すなわちユーザからリクエスト要求が行われた年月日と、時刻(時分秒)と、リクエスト要求を行ったユーザのIDと、このユーザの位置情報を表す位置検知区分と、リクエスト要求の対象となる環境調整用設備1の種類を表すリクエスト項目と、リクエスト要求の内容と、リクエスト要求を行ったユーザの位置検知区分に対応する、環境センサ4による検知情報を表すセンサ情報と、リクエスト要求の対象となる環境調整用設備1の稼動状況を表す環境条件と、が対応付けられてなる。
【0042】
図6は、環境調整用設備1として照明設備に対するリクエスト要求が行われたときの、履歴情報の一例を示したものである。
例えば、2013年2月5日の、8時50分20秒に、位置検知区分P11に存在するユーザ(ID=ID000001)が、照明設備(照明(L))に対して、「もっと明るく」というリクエスト要求を行い、そのときの、位置検知区分P11の照度Siは452〔lx〕であり、照明設備(照明(L))は、オン状態であることを表す。
【0043】
また、履歴情報記憶領域35に記憶されているリクエスト無し時の履歴情報は、後述の環境変化時の温熱光環境アドバイス表示処理によってユーザIDごとに生成される。
例えば
図7に示すように、履歴情報を生成した年月日と、時刻(時分秒)と、一定時間リクエスト操作の無い、対象ユーザのIDと、このユーザの位置情報として位置検知区分と、リクエスト要求の対象となる環境調整用設備1の種類を表すリクエスト項目と、リクエスト要求内容と、リクエスト操作を行ったユーザの位置検知区分に対応する環境センサ4による検知情報を表すセンサ情報と、リクエスト要求の対象となる環境調整用設備1の稼動状況を表す環境条件と、が対応付けられてなる。
【0044】
図7は、例えば、位置検知区分P11に存在するユーザ(ID=ID000001)は、2013年2月5日の9時30分00秒から2013年2月5日の10時30分00秒までの間に、照明設備(照明(L))に対して、リクエスト要求を行っていないことを表し、そのときの、位置検知区分P11の照度Siは9時30分00秒の時点では552〔lx〕であり、10時30分00秒の時点では564〔lx〕であって、いずれの場合も照明設備(照明(L))は、オン状態であったことを表す。
このようなリクエスト有り時およびリクエスト無し時の履歴情報から、
図5のステップS1の処理で、推定対象となるユーザIDに関する履歴情報を抽出したならば、ステップS2に移行し、抽出した推定対象となるユーザの履歴情報を、条件別にソートする。
【0045】
そして、ステップS3に移行し、条件別に、好みの環境条件を推定する。
ここで、「条件」とは、例えば、時間別:午前、午後、夜間等、あるいは、エリア別:室内、ペリメータゾーン、屋外等が挙げられる。これらの条件別に、リクエスト要求内容およびリクエスト要求が行われたときのセンサ情報に基づき、例えば、センサ情報の平均値等により、ユーザの好みの環境を推定する。そして、推定したユーザの好みの環境を、ユーザIDと対応付けて、ユーザ情報記憶領域32に記憶する。
【0046】
例えば、
図6、
図7に示すユーザ「ID000001」の履歴情報についてみると、室内の日中の場合、室内領域e3の区分P1〜P80のうち区分P11では、2013年2月5日の時点で日の出前〜日没前の9:30〜14:30での回答(照度のセンサ情報Si)を平均化すると、照度が平均576.5〔lx〕となり、この照度でユーザは満足している。つまり、リクエスト要求を行っていない。また、この平均値から外れるが、夜間(同じく2月5日の時点で日没後の18:30、19:30の回答)の場合は、照度が387〔lx〕である場合にもユーザは満足している。
図7からわかるように、387〔lx〕の条件下では、ユーザ「ID000001」はリクエスト要求を行っておらず、すなわち現在の環境に満足しているという回答が得られたことを意味する。
【0047】
このように、日中と夜間など、時間帯によって、ユーザが満足と感じる照度は異なるため、「条件」として、時間別に、ユーザの好みの環境を推定することは有効な方法である。以上から、上記の576.5〔lx〕とは、“ID000001の日中での室内満足照度”と定義できる。
また、
図6に示すように、ユーザが位置検知区分P11に存在する状況で、“もっと明るく”および照明“on”とリクエスト要求が行われた際の照度は、187〔lx〕、287〔lx〕、452〔lx〕、514〔lx〕である。
【0048】
ここで、300〔lx〕以下の低照度の環境は、一般的にみて、空間の用途(例えばオフィスの居室)からすれば低いため、“もっと明るく”などのリクエスト要求が行われるのは最もである。
一方、照度が452〔lx〕、514〔lx〕である場合には、オフィスの居室などの一般的な照度(300〔lx〕)を満足している。それにも関わらず、“もっと明るく”などのリクエスト要求が行われている。
【0049】
そこで、照度が452〔lx〕、514〔lx〕であるにも関わらずリクエスト要求が行われたときの履歴を確認すると、照度が452〔lx〕である場合のリクエスト要求時刻は朝であり、すなわち、朝の出社時であった。
また、照度が514〔lx〕であった場合は、このときのリクエスト要求が行われた時刻13:56:24の前の時点での履歴、すなわち
図7に示す、13:30:00の時点での履歴によると、ユーザは、ペリメータゾーン寄りの位置検知区分P67に存在し、そのときの照度は1248〔lx〕であって、照明が点灯していない状況であるがユーザは明るさに満足していた。
【0050】
これら履歴情報から、ユーザが位置検知区分P67(ペリメータゾーン寄りの位置)からP11(屋外寄りの位置)に戻った際に、“もっと明るく”とリクエスト要求を行ったことがわかる。
つまり、時刻13:56:24でリクエスト要求が行われたときの照度514〔lx〕は、オフィスなどの一般的な照度(>300〔lx〕)を満足しているにも関わらず、リクエスト要求が行われている。
【0051】
ここで、通常は514〔lx〕であれば、上述のID000001の日中での室内満足照度(576.5〔lx〕)の±100〔lx〕に納まっているため、ユーザが、より明るい位置検知区分P67の位置から位置検知区分P11の位置に移動することにより照度が変化しても暗さを感じることはない。
しかしながら、位置検知区分P67の位置から位置検知区分P11の位置に戻った際に、照度が1248〔lx〕から514〔lx〕に変化しており、照度の変化量が大きすぎるため、明順応によって、514〔lx〕であっても暗さを感じたため、リクエスト要求を行ったと推測することができる。
【0052】
また、後述の環境変化時の温熱光環境アドバイス表示処理では、「モード選択」として知的生産性維持モードが選択されている場合には、ユーザによりリクエスト要求が行われなくても、ユーザの好みの環境条件を満足する環境となるように自動制御を行っている(
図11のステップS53、S54の処理)。
したがって、ユーザは、「モード選択」として知的生産性維持モードを選択した場合、自己の好みの環境条件を満足するように自動制御が行われ、また、作業に集中するために、環境変化が生じたとしてもリクエスト要求は行わず、自動制御により環境調整用設備1が制御されること、あるいは、他のユーザがリクエスト要求を行うこと、などにより環境改善が図られることを期待する可能性がある。
【0053】
そのため、ユーザがリ
クエスト要求を行わないからと言って、ユーザが現在の周囲環境に満足しているとは必ずしも言い切れない可能性がある。つまり、「モード選択」として知的生産性維持モードが選択されている場合には、そのときの履歴は周囲環境に対するユーザの真の評価を表すものではない。
そのため、センサ情報の平均値を、好みの環境として適用する際に、履歴取得時のユーザの位置情報およびその前後のユーザの位置関係、また、選択されているモード等を、考慮し、センサ情報を条件付きで取り扱う必要がある。
【0054】
同様に、
図7に示すように、リクエスト要求が行われておらず、ユーザの満足を得られた照度684〔lx〕、1038〔lx〕は、ユーザが屋外の位置検知区分P97に存在する状況である。ここで、屋外では、ユーザは環境変化に対して許容性が高まり、環境変化に対する許容値が高いことは、前述の非特許文献3でも知られている。したがって、ユーザが屋外、室内のどの位置に存在するかを考慮して好みの環境条件を判断する必要がある。
また、上記事例は光環境について説明しているが、温熱環境についても同様に実施し、例えば、暖房時には、作用温度、冷房時には不快指数等の情報を用いて、ユーザの好みの環境を推定すればよい。その際、温熱環境については、季節毎(年月日)の条件別にソートを行えばよい。
【0055】
このように、個人の好みの環境条件を推定する際には、「個人(ID)」の「主観的な回答(Answer)」により、「位置情報(Position)」と「位置情報に対応した環境情報(Sensor)」とを紐付け、これに基づき推定するようにしている。
そのため、例えば、ユーザからリクエスト要求があった時刻、あるいはユーザからリクエスト要求がなくすなわち現在の環境に満足しているとの回答があったとみなされる時刻等、に基づいて、午前、午後等の時間帯などの条件別に、そのときの環境状況の平均値を求めることなどによって、個人の好みの環境を容易かつ精度よく検出することができる。
【0056】
特に、対象空間の環境は、各種の環境調整用設備1の稼動状況や配置状況、他のユーザの存在状況、また、プリンタ、コピー機などの各種機器の配置状況等、様々な要素によって変化する。そのため、ユーザ自身では、好みの環境を満足する場所はこのような場所として認識していたとしても、思わぬ場所が、好みの環境を満足する場合もあり、また、ユーザ自身が気付いていない好みの環境などもある。
そのため、上述のように、ユーザの、主観的な回答と、位置情報と、環境情報とに基づき、ユーザの好みを推定することによって、ユーザ自身が気付かなかった好みの環境を的確に検出することができる。
【0057】
〔リクエスト対応温熱光環境アドバイス表示処理〕
次に、
図8に示すフローチャートを伴って、リクエスト対応温熱光環境アドバイス表示処理を説明する。
なお、制御処理部25では、いずれかのユーザ端末6から操作コマンドが入力されたとき、リクエスト対応温熱光環境アドバイス表示処理を実行する。また、対象空間に存在するユーザのうち、予め設定した一定時間(例えば、1時間程度)以上、リクエスト操作を行っていないユーザについて、後述の環境変化時の温熱光環境アドバイス表示処理を実行するようになっている。
【0058】
図8に示すリクエスト対応温熱光環境アドバイス表示処理では、いずれかのユーザ端末6から操作コマンドが入力されると、操作コマンドの送信元のユーザの位置情報を取得する。すなわち、操作コマンドに付加されているユーザIDを取得し、センサ情報記憶領域31に記憶されている位置情報に基づき、リクエスト要求を行ったユーザの位置検知区分を特定する(ステップS11)。
さらに、操作コマンドから、リクエスト要求内容を検出する(ステップS12)。
【0059】
このリクエスト要求内容として、例えば、照明設備に対する「もっと明るく」、「もっと暗く」あるいは、空調設備に対する「暑い」、「寒い」、「除湿」等が挙げられる。
そして、ステップS13に移行し、
図6に示すような、リクエスト操作有り時の履歴情報を生成し履歴情報記憶領域34に格納する。すなわち、操作コマンドの受信時刻、リクエスト要求内容、ユーザの位置検知区分、ユーザの位置検知区分に対応するセンサ情報、環境負荷情報記憶領域33に格納されている設備稼動情報取得部22を介して取得された環境調整用設備1の設備稼動情報などをもとに、作成する。
【0060】
次いで、ステップS14に移行し、リクエスト要求内容に応じたセンサ情報を、センサ情報記憶領域31から取得する。例えば、リクエスト要求内容が、「もっと明るく」という内容である場合には、センサ情報のうち、全てのセンサ区分の光環境に関係するパラメータに対応するセンサ情報を取得する。
図9は操作コマンドにより特定される、リクエスト要求の対象となる環境調整用設備1の種類を表す項目(Answer Item)と、この項目に対応するセンサ情報との対応を表す対応図である。
【0061】
項目(Answer Item)としては、リクエスト要求の対象となる環境調整用設備1が、光環境の改善に寄与する設備であるか、温熱環境の改善に寄与する設備であるかが挙げられる。
センサ情報としては、光環境の検出に寄与するセンサ情報として照度、日射量を計測する日射計、紫外線量を計測する紫外線センサなどが挙げられる。また温熱環境の検出に寄与するセンサ情報として、温度、湿度、グローブ温度、風速などが挙げられる。
【0062】
ステップS14の処理では、リクエスト要求内容が、光環境の改善に寄与する設備に対する要求であるか温熱環境の改善に寄与する設備に対する要求であるかを判断し、これに対応するセンサ情報を、
図9の対応図から求めるようになっている。
次いで、ステップS15に移行し、ユーザ情報記憶領域32からユーザIDに対応するユーザ設定情報、および好み温熱光環境等推定処理で推定されたこのユーザIDに対応する好みの環境条件を取得する。
【0063】
ここで、ユーザ設定情報は、ユーザにより設定される。例えば、対象空間にユーザが入室したことを制御処理部25で検出したときに、ユーザ設定情報の入力を促す情報(例えば、ユーザ情報の各項目についてユーザが選択操作を行うことにより、入力が行われるようにした個人設定画面の情報)を、制御処理部25からユーザ端末6に送信すること、あるいは、対象空間に存在するときに、快適環境選択支援装置100のサービス提供を受けるユーザが初期設定情報として任意のタイミングで入力設定すること、などにより、ユーザにより設定され、ユーザ設定情報取得部24を介してユーザ情報記憶領域32に記憶される。
【0064】
ユーザ設定情報は、「モード選択」と、「通知設定」と、を含む。
「モード選択」は、リクエスト対応温熱光環境アドバイス表示処理、後述のアドバイス提示処理および、環境変化時の温熱光環境アドバイス表示処理により、提供されるサービス内容を選択するものである。
この「モード選択」により選択されるモードは、ユーザ個々の省エネ行動への積極性や参加意志が異なることを鑑みて設定されるものであって、選択可能なモードとして、例えば、環境負荷削減よりも快適性を優先する快適モード、省エネを積極的に図る省エネモード、環境変化に応じて場所を移動することが知的生産性を阻害することを考慮する知的生産性維持モードがある。
【0065】
なお、ここではこれら3つのモードを設定しているが、これに限るものではなく任意に設定することができる。
また、「通知設定」により選択される項目として、通知の頻度、通知条件がある。通知条件としては、スケジュールの登録機能のように、例えば、設定項目として「開始時間〜終了時間」「時刻」「繰り返し間隔指定」「曜日」が考えられる。
ステップS15の処理で、各種情報を取得したならばステップS16に移行し、「モード選択」として、快適モードが選択されているかを判断する。
【0066】
快適モードが設定されていない場合にはステップS17に移行し、次に、「モード選択」として、知的生産性維持モードが選択されているかを判断する。
知的生産性維持モードが選択されている場合には、ステップS18に移行し、検索条件を追加する。追加する検索条件の項目として、例えば、「集中」、「コミュニケーション」が挙げられる。
検索条件のうち「集中」が選択されている場合には、例えば人が少ない場所や、静かな場所という条件が追加される。
検索条件のうち「コミュニケーション」が選択されている場合には、例えば人が比較的多い場所という条件が追加される。
【0067】
次いで、ステップS19に移行し、ステップS14で取得したセンサ情報のうち、ユーザの好みの環境条件を満足するセンサ区分を検索する。さらに、ステップS18の処理で検索条件が追加されているときには、ユーザの好みの環境条件と追加された検索条件とを満足するセンサ区分が特定される。
センサ情報がユーザの好みの環境条件を満足するか否かの判断は、例えば、センサ情報が、好みの環境条件の許容値範囲内にあるか否かにより判断する。また、他のユーザの存在状況等は、履歴情報記憶領域34、35に格納されている、他のユーザのリクエスト有り時履歴情報やリクエスト無し時の履歴情報の、位置情報に基づき検出すればよい。
【0068】
例えば、操作コマンドとして、光環境の改善に寄与する装置が、リクエスト要求の対象として設定されているとき、ユーザの好みの環境条件として照度X〔lx〕が設定されている場合には、例えばX±100〔lx〕を許容範囲とする。また、温度の場合には±1.5℃等を許容範囲とすればよい。この許容範囲は任意に設定することができる。例えば、照度や温度の変化によりユーザが暗いあるいは暑い/寒い等を感じる一般的な値に基づき設定してもよく、あるいは、ユーザ設定情報として、ユーザ毎に設定するように構成してもよい。
【0069】
さらに、ユーザの好みの環境条件、また追加条件などを満足するセンサ区分が検出された場合には、ユーザの好みの環境条件を満足するとして検出されたセンサ区分について、これに対応する位置検知区分を、例えば、
図4から特定する。そして、履歴情報記憶領域34、35に記憶されているリクエスト有り時の履歴情報およびリクエスト無し時の履歴情報を参照し、ユーザの好みの環境条件を満足するとして検出された位置検知区分に他のユーザが存在するか否かを判定する。
【0070】
この判定は、例えば、他のユーザのリクエスト有り時の履歴情報およびリクエスト無し時の履歴情報を参照し、位置情報として、ユーザの好みの環境条件を満足するとして検出された位置検知区分が設定されているか否かを検索することにより行われる。
そして、ユーザの好みの環境条件および設定されていれば追加条件を満足し、かつ、他のユーザが利用していない、位置検知区分が検出されたとき、ユーザの好みの環境条件を満足するエリアが存在すると判断し、ステップS20からステップS21に移行し、この位置検知区分を、お勧めの位置としてユーザ端末6に送信する。
【0071】
そして、ステップS22に移行し、ユーザが場所を移動することなく、環境調整用設備1を制御することにより、ユーザの好みの環境を実現するための選択肢を検出し、検出した選択肢を、ユーザ端末6に送信する。また、この選択肢で特定される操作に伴い生じる環境負荷を演算する。そして、選択肢と環境負荷とを対応付けてユーザ端末6に送信する。
一方、ステップS20の処理でユーザの好みの環境条件、また追加条件を満足する区分が検出されない場合にはステップS23に移行し、該当するエリア(位置検知区分)は無い旨をユーザ端末6に送信する。そして、ステップS22に移行する。
【0072】
なお、ステップS21でのユーザの好みの環境条件を満足する位置検知区分の通知、また、ステップS22での制御の選択肢の通知、ステップS23での好みの環境を満足する位置が無い旨の通知は、ユーザ設定情報の「通知設定」において通知の頻度、あるいは通知条件が設定されている場合には、設定内容に応じて通知を行う。前述の通知条件「開始時間〜終了時間」「時刻」「繰り返し間隔指定」「曜日」等、これらを組み合わせることで、「8:00〜17:00」の「2時間間隔」で「月・火・水・木・金」と定期的な通知を設定できる。また目覚まし機能のように、例えば、ピンポイントで時間を設定して「時刻」「曜日」を指定し、「8:00、13:00、17:00」で「月・火・水・木・金」等、出社前や昼休み明け、残業開始前等、位置を選択する前にきっかけとなる情報を通知することができる。
【0073】
また、ステップS16の処理で、「モード選択」として快適モードが選択されている場合には、そのままステップS22に移行し、好みの環境条件を満足する位置検知区分の検索は行わず、ユーザの好みの環境条件を満足させるための制御の選択肢およびこれに伴う、環境負荷等を、ユーザ端末6に表示する。
【0074】
このように、ユーザがリクエスト要求を行った場合、対象空間において、ユーザの好みの環境条件を満足する位置検知区分がユーザ端末6に表示される。そのため、ユーザは、自分の好みの環境条件を満足する位置検知区分を容易に認識することができる。ユーザが表示された自分の好みの環境条件を満足する位置検知区分の場所に移動することによって、現在の環境調整用設備1の制御内容を変更することなくユーザに、好みの環境条件を満足する場所を提供することができる。つまり、環境改善に伴う環境負荷の増加などを伴うことなく、ユーザにとって快適な場所を提供することができる。
【0075】
〔アドバイス提示処理〕
次に、
図10に示すフローチャートを伴って、アドバイス提示処理を説明する。
このアドバイス提示処理は、ユーザが対象空間に入室したとき、あるいはユーザが対象空間において、アドバイスの提示要求操作を行ったときに実行される。
まず、ステップS31の処理で、対象ユーザのIDが特定される。例えば、ユーザが対象空間に入室したときに、対象空間内の無線通信のアクセスポイントからの情報に基づき位置検知センサ5によって検出されたユーザIDを、対象ユーザのIDとする。あるいは、対象空間内で、ユーザがアドバイスの提示要求操作を行うことにより送信されるコマンドに付加されたユーザIDを、対象ユーザのIDとする。
【0076】
次いで、ステップS32に移行し、ユーザ情報記憶領域32から対象ユーザのユーザIDに対応するユーザ設定情報、および好み温熱光環境等推定処理で推定された好みの環境条件を取得する。
次いでステップS33に移行し、「モード選択」として、知的生産性維持モードが選択されているかを判断する。
【0077】
知的生産性維持モードが選択されている場合には、ステップS34に移行し、検索条件を追加する。検索条件の項目として、例えば、「集中」、「コミュニケーション」が挙げられる。
検索条件のうち「集中」が選択されている場合には、例えば人が少ない場所や、静かな場所という条件が追加される。
【0078】
検索条件のうち「コミュニケーション」が選択されている場合には、人が比較的多い場所という条件が追加される。
次いで、ステップS35に移行し、ユーザの好みの環境条件を満足するセンサ区分、すなわち、明るさ、温度など、各種のユーザの好みの環境条件を満足するセンサ区分を検出し、さらに、ステップS34の処理で検索条件が追加されているときには、ユーザの好みの環境条件と追加された検索条件とを満足するセンサ区分を特定する。
【0079】
そして、検出したユーザの好みの環境条件を満足するセンサ区分に対応する位置検知区分、すなわちユーザの好みの環境条件を満足する位置検知区分を、例えば、
図4から特定する。そして、履歴情報記憶領域34、35に記憶されているリクエスト有り時の履歴情報およびリクエスト無し時の履歴情報を参照し、ユーザの好みの環境条件を満足する位置検知区分のうち、他のユーザが存在しない位置検知区分を検出する。
【0080】
そして、ステップS35で各種条件を満足する区分が検出された場合には、ステップS36からステップS37に移行し、検出したエリアをユーザ端末6に送信する。続いて、ステップS38に移行し、環境調整用設備1を制御することにより、好みの環境条件を実現するための選択肢を検出し、検出した選択肢を、ユーザ端末6に送信する。また、この選択肢で特定される操作に伴い生じる環境負荷を演算する。そして、選択肢と環境負荷とを対応付けてユーザ端末6に送信する。
【0081】
一方、ステップS36で、ユーザの好みの環境条件などを満足する位置検知区分が検出されない場合には、ステップS39に移行し、好みの環境条件を満足する位置検知区分は無いことをユーザ端末6に送信する。そして、ステップS38に移行する。
このように、ユーザが対象空間に入室した場合、あるいはアドバイスの提示要求操作を行った場合には、対象空間において、ユーザの好みの環境条件を満足する位置検知区分がユーザ端末6に表示される。そのため、ユーザは、自分の好みの環境条件を満足する位置検知区分を容易に認識することができる。したがって、表示された自分の好みの環境条件を満足する位置検知区分を在居場所として選択することによって、ユーザは自己の好みの環境条件を満足する場所で快適に作業を行うことができる。
【0082】
特に、好みの環境条件を満足する場所があったとしても、室内の空間構成によっては、見通しで見えない位置に存在する場合や、空室か利用中かといった使用状況が見えない場合がありこのような場合、これらの見えない場所が在居場所の候補として挙がらない可能性がある。
しかしながら、上述のように、対象空間においてユーザの好みの環境条件を満足する場所であり、かつ他のユーザが使用していない場所を通知するようにしている。そのため、ユーザからは見えない場所であっても、ユーザに対して好みの環境条件を満足する場所の候補として通知することができる。
【0083】
〔環境変化時の温熱光環境アドバイス表示処理〕
次に、
図11に示すフローチャートを伴って、環境変化時の温熱光環境アドバイス表示処理を説明する。
前述のように、この環境変化時の温熱光環境アドバイス表示処理は、対象空間に存在するユーザのうち、予め設定した一定時間(例えば、1時間程度)以上、環境調整用設備1に対するリクエスト要求を行っていないユーザについて、実行される。
【0084】
制御処理部25では、対象空間に存在するユーザについて、履歴情報記憶領域34に記憶されているリクエスト有り時の履歴情報を参照し、一定時間以上、環境調整用設備1に対するリクエスト操作を行っていないユーザを検索し、検索の結果得たユーザについて、環境変化時の温熱光環境アドバイス表示処理を実行する。
一定時間以上、リクエスト要求を行っていないユーザの検索は、
図6に示す、リクエスト操作有り時の履歴情報において、ユーザIDをもとに、このユーザIDから最後にリクエスト要求が行われたときの年月日および時刻から判断すればよい。
【0085】
このとき、リクエスト項目毎に、一定時間リクエスト要求がないかを判断するようにしてもよく、あるいは、いずれかのリクエスト項目に対するリクエスト要求が一定時間無いかどうかを判定するようにしてもよい。リクエスト項目毎に、一定時間リクエスト要求がないかどうかを判断するようにした場合には、リクエスト項目それぞれについて、ユーザが現在の環境に対して満足しているかどうかを検出することができる。
【0086】
環境変化時の温熱光環境アドバイス表示処理では、対象ユーザのユーザIDをもとに、センサ情報記憶領域31に記憶されている位置情報に基づき、対象ユーザの位置情報を取得する。すなわち位置検知区分を特定する(ステップS41)。そして、
図6に示すような、リクエスト操作有り時の履歴情報を生成し、履歴情報記憶領域34に格納する(ステップS42)。
【0087】
すなわち、対象ユーザの位置情報としての位置検知区分、この位置検知区分の位置に対応するセンサ情報および、設備稼動情報取得部22を介して取得した環境調整用設備1の稼動状況などをもとに作成する。
次いで、ステップS43に移行し、ユーザ情報記憶領域32からユーザIDに対応するユーザ設定情報、および好み温熱光環境等推定処理で推定されたユーザの好みの環境条件を取得する。
【0088】
次いで、ステップS44に移行し、ユーザの現在の位置検知区分、これに対応するセンサ情報などをもとに、ユーザの現在の環境は、このユーザの好みの環境条件を満足するか否かを判定する。満足する場合にはそのまま処理を終了する。
一方、ユーザの現在の環境が、このユーザの好みの環境条件を満足しない場合には、ステップS45に移行し、ユーザ設定情報において「モード選択」として快適モードが選択されているかを判断する。
【0089】
快適モードが設定されている場合にはステップS46に移行し、現在の環境が、ユーザの好みの環境条件を満足しない状態に変化したことを、ユーザ端末6に送信する。このとき、ユーザの好みの環境条件を満足しないリクエスト項目(例えば、照明、空調など)についても、ユーザ端末6に送信するようにしてもよい。
そして、ステップS47に移行し、ユーザの好みの環境条件(照明、空調などの条件を含む)を満足するセンサ区分を検索し、該当するセンサ区分が検出されたならばこのセンサ区分に対応する位置検知区分を特定し、この位置検知区分の場所を他のユーザが利用中でないかどうかを判定する。
【0090】
そして、この位置検知区分の場所を他のユーザが利用中でない場合には、この位置検知区分の場所を、このユーザのお勧めの場所とする。そして、お勧めの場所が検知されたことからステップS48からステップS49に移行し、ユーザ設定情報において「モード選択」として省エネモードが選択されているかを判断する。
省エネモードが選択されていなければそのままステップS51に移行するが、省エネモードが選択されている場合にはステップS50に移行し、現在の環境が、ユーザの好みの環境条件を満足しない状態に変化したことをユーザ端末6に送信するとともに、ステップS47で検索したお勧めの場所を、ユーザ端末6に送信する。
【0091】
続いて、ステップS51に移行し、ユーザが位置を移動することなく、環境調整用設備1を制御することにより、好みの環境を実現するための選択肢を検出し、検出した選択肢を、ユーザ端末6に送信する。また、この選択肢で特定される操作に伴い生じる環境負荷を演算する。そして、選択肢と環境負荷とを対応付けてユーザ端末6に送信する。
一方、ステップS48の処理でユーザの好みの環境条件を満足する位置検知区分が検出されない場合には、ステップS52に移行し、該当するエリア(位置検知区分)は無い旨をユーザ端末6に送信する。そして、ステップS51に移行する。
【0092】
なお、ステップS46での、現在の環境が、ユーザの好みの環境条件を満足しない状態に変化した旨の通知、ステップS50での、ユーザの好みの環境条件を満足する位置検知区分の通知、ステップS51での制御の選択肢の通知、ステップS52でのユーザの好みの環境条件を満足する位置検知区分が無い旨の通知は、ユーザ設定情報の「通知設定」において通知の頻度、あるいは通知条件が設定されている場合には、設定内容に応じて通知する。
【0093】
また、ステップS45の処理で、「モード選択」として快適モードが選択されていない場合には、ステップS53に移行し、「モード選択」として知的生産性維持モードが選択されていなければそのままステップS47に移行し、知的生産性維持モードが選択されている場合には、ステップS54に移行する。このステップS54では、現在の環境が、ユーザの好みの環境条件を満足しない状態に変化した旨の通知は行わずに、このユーザの好みの環境条件を満足する環境となるように、各環境調整用設備1を自動制御する。
【0094】
このように、一定時間以上、リクエスト要求が行われないユーザについては、このユーザの現在位置におけるセンサ情報を取得し、リクエスト無し時の履歴情報として履歴情報記憶領域35に格納するとともに、現在の環境がユーザの好みの環境条件を満足しないときには、ユーザの好みの環境条件を満足する位置検知区分がユーザ端末6に表示するようにしている。
【0095】
つまり、例えば、リクエスト要求を行うことによって、自分の好みの環境条件を満足する位置検知区分を認識し、この位置検知区分の座席に着席したとしても、時間経過に伴う環境変化により、好みの環境でなくなる可能性がある。例えば、日射量や昼夜などの自然環境の変化、人からの発熱の増減、機器の発熱、他のユーザによる環境調整用設備1に対する制御の影響などにより、ユーザの環境も変化するため、好みの環境からかけ離れる場合がある。
【0096】
そのような場合には、ユーザの好みの環境を制御により提供するのではなく、現在、対象空間においてユーザの好みの環境条件を満足する位置検知区分をユーザに提供することによって、ユーザは、自分の好みの環境条件を満足する位置検知区分を容易に認識することができる。そして、ユーザが、表示された自分の好みの環境条件を満足する位置検知区分に移動することによって、現在の環境調整用設備1の制御内容を変更することなくユーザに好みの環境条件を満足する場所を提供することができる。
そのため、環境改善に伴う環境負荷の増加などを伴うことなく、ユーザにとって快適な場所を得ることができ、すなわち、ユーザは環境負荷の増加を伴うことなく、快適な場所を得ることができる。
【0097】
〔フロアリクエスト処理〕
次に、
図12に示すフローチャートを伴って、フロアリクエスト処理を説明する。
このフロアリクエスト処理は、例えば予め設定された定周期で実行される。
まず、ステップS61で、履歴情報記憶領域34に格納されている
図6に示すようなリクエスト有り時の履歴情報を検索し、直近の予め設定した期間において、リクエスト要求内容が同一であるリクエスト要求を行ったユーザの数を検出する。
【0098】
そして、所定数(第1しきい値)以上のユーザが同一内容のリクエスト要求を行っている場合には、ステップS62からステップS63に対し、対象空間内にいるすべてのユーザに対し、リクエスト要求内容を満足する方向に、対象空間の全体系を制御してもよいか、例えばフロア温度を1℃下げる方向に、環境調整用設備1を制御してもよいかどうかを問い合わせる。
そして、問い合わせの結果、対象空間の全体系の制御に同意したユーザ数が所定数(第1しきい値よりも大きい第2しきい値)以上であるときステップS64からステップS65に移行し、対象空間の全体系を、リクエスト要求内容を満足する方向へ制御する。
【0099】
例えば、リクエスト要求内容が、「暑い」である場合には、対象空間にいる全てのユーザに対し、「Q.フロアの○○%の方が暑さを感じています。フロアの温度を1.0℃下げますか?」「A.はい/いいえ」を配信する。そして、「はい」が一定数集まった場合、フロアの温度を制御する全体系の制御、すなわち自動設備制御部27による温度目標値を、1.0℃下げる。
なお、自動設備制御部27により各環境調整用設備1が自動制御されていない場合には、対象空間の環境調整用設備1それぞれの制御目標値を、例えば1℃あげる、あるいは下げるなど、リクエスト要求内容を満足する方向にそれぞれ制御すればよい。
【0100】
一方、ステップS62で、同一内容のリクエスト要求を行ったユーザ数が予め設定した第1しきい値より少ない場合には、ステップS66に移行する。
このステップS66では、単位時間あたりの環境変化が大きくかつ利用率が大きいかを判断する。そして、単位時間あたりの環境変化が大きくかつ利用率が大きいときには、ステップS63に移行し、そうではないときにはそのまま処理を終了する。
ここで、単位時間あたりの環境変化が大きいかどうかの判断は、履歴情報記憶領域35に記憶されている
図7に示すようなリクエスト無し時の履歴情報に基づいて行う。
【0101】
例えば、位置検知区分が同一でありかつセンサ情報の変化がしきい値よりも大きい履歴が、直近の予め設定した評価期間内にあるか否かを判定し、該当する履歴があるとき単位時間あたりの環境変化が大きいと判断する。なお、ここでいう利用率とは、一時間あたりのフロア面積あたりユーザ数の割合を示す。なお、利用率が高いか、低いかを判断するかは、個々人に割り当てられた面積や、職種により異なるため、閾値を任意に設定できるものとする。
【0102】
このように、制御処理部25では、多数のユーザから同一内容のリクエスト要求が行われたときには、対象空間内のユーザに対して、リクエスト要求内容を満足する方向に全体系を制御してよいかを問い合わせ、所定数のユーザから同意が得られたときに、全体系を制御する。そのため、対象空間の環境制御を効率的よく行うことができ、速やかに快適性を実現することができるとともに、全体として省エネ効果を期待することができる。
【0103】
〔個別環境負荷情報演算処理〕
次に、
図13に示すフローチャートを伴って、個別環境負荷情報演算処理を説明する。
この個別環境負荷情報演算処理は、例えば、予め設定した任意のタイミングで、ユーザ毎に実行される。この個別環境負荷情報演算処理では、対象空間における各ユーザの環境負荷を演算するものであって、例えばリクエスト有り時の履歴情報およびリクエスト無し時の履歴情報に登録されたユーザを処理対象のユーザとしている。
この個別環境負荷情報演算処理では、まず、ステップS71で、対象となるユーザの履歴を、ユーザIDをもとに抽出する。
【0104】
次いで、ステップS72に移行し、抽出した履歴に基づき、履歴が登録された時刻、ユーザの位置検知区分、位置検知区分に対応する環境調整用設備1の稼動状況、また、各環境調整用設備1の既知の消費電力量、CO2排出量等に基づき、対象空間において、ユーザに対して快適な環境を提供するために要した、消費電力量、CO2排出量等の環境負荷を算出する。例えば1日あたり、あるいは1月当たり等、任意の期間の消費電力量を演算すればよい。同様にCO2排出量についても、任意の期間のCO2排出量を演算すればよい。なお、発生した負荷は、発生した負荷の時間帯に所在したユーザで頭割りを行い、各ユーザに演算された量を割り当てればさらに当事者意識が高まり、更に省エネ効果を狙うことができる。
【0105】
次いで、ステップS73に移行し、抽出した履歴情報に基づき、各パラメータについて演算する。例えばパラメータとして、1月当たりの屋外利用率、1日あたり、あるいは1月当たりの所在率を演算する。
次いで、ステップS74に移行し、例えば
図14に示すような、ユーザ毎の環境負荷を表す環境負荷集計図を作成し、例えばユーザ端末6に送信する。
この環境負荷集計図は、例えば、属性情報、評価項目、評価基準を含む。
【0106】
属性情報は、評価を行う際のユーザ毎の情報であって、ユーザIDおよび、所属(例えばA事業部など)を含む。この属性情報は、ランキングや平均値、相対評価を行う際の母数(例えば、A事業部内での上位者など)を決定する際に用いられる。
評価項目としては、例えば、消費電力量、CO2排出量、屋外利用率などが挙げられる。なおこれに限るものではなく、他の項目についても評価項目として表示することも可能である。
【0107】
この評価項目は、集計結果をリアルタイムに反映する場合には、単位時間毎に集計を行えばよい。また、昨日の集計結果を表示する場合には、日毎に集計すればよい。さらに、1月単位など積算値として集計結果を表示する場合には、月毎に集計すればよい。
また、屋外利用率など、屋外利用の促進を目的とした評価項目を設け、屋外利用率を演算しこれを表示することも効果的である。
評価基準としては、例えば、1月当たり、また1日あたりの所在率が挙げられる。
【0108】
ここでいう所在率とは、所定時間内(例えば、8:45〜17:30までの8:45時間、あるいは、日の出から日没までの時間など)に対し、どの程度の時間、対象の空間に存在していたのかを表す。この所在率は、リクエスト有り時およびリクエスト無し時の履歴情報から、ユーザIDに対応する位置検知区分を抽出し、これに基づき演算すればよい。
この所在率を評価基準に用いる目的は、たとえば、出張や外勤の多いユーザは、環境負荷も低くなる。そのため、出張や外勤の多いユーザの評価が高くなり、不公平となる可能性がある。そこで、この所在率という評価基準を用いている。
【0109】
また、前記所定時間を含む所定時間外も、対象の空間に所在するユーザは当然所在率が高まる。かつ日没後まで所在すると、照明の利用量や低密度での空調利用等、ユーザ当たりの負荷量が高くなることが予測される。
そこで、日の出から日没までと対応した所在率をユーザ毎に表示することで、日没後に対象の空間に在居することを抑制し、朝型の行動に切り替えるなど、生活の行動パターンの変化を促すツールとしても活用することができる。
【0110】
そして、これら評価項目等を基準ごとにソートすることによって、フロアごと、所在部署ごと、事業部間などで、集計、順位付けが可能となる。
このように、対象の空間におけるユーザの行動に伴う環境負荷を表示することにより、ユーザは自己の行動により発生する環境負荷を認識することができ、個人が行動する際の判断の手がかりとすることができるとともに自重を促すことができ、省エネへの意識を高めることができる。
【0111】
〔動作〕
次に、上記実施形態の動作を説明する。
〔リクエスト要求を行ったとき〕
まず、対象空間に存在するユーザがリクエスト要求を行う場合の動作を、
図15を伴って説明する。
対象空間のいずれかの座席に着席しているユーザが、暗さを感じ、ユーザ端末6において、「もっと明るく」とのリクエスト要求を行う(S101)と、ユーザ端末6からリクエスト要求が無線通信により、設備制御装置2に送信される。
【0112】
設備制御装置2の制御処理部25では、リクエスト対応温熱光環境アドバイス表示処理が実行され、リクエスト要求を行ったユーザの位置情報として、位置検知区分P=P11が検知される(S102)。例えば、無線端末のアクセスポイントから位置検知が行われる。あるいは、ユーザ現在位置を指定しリクエスト要求を行うことによって、位置情報が送信されこれに基づき、ユーザの現在の位置検知区分が特定される。
【0113】
リクエスト要求内容として、例えば、リクエスト項目は「照明」、リクエスト要求内容は「もっと明るく」として特定される(S103)。
リクエスト要求に付加されたユーザIDから、リクエスト要求を行ったユーザのユーザID(ID=000001)が特定される(S104)。
さらに、ユーザ情報記憶領域32に記憶されている、リクエスト要求を行ったユーザIDに対応するユーザ情報が読み出される(S105)。例えば、「モード選択」として、省エネモード、快適モード、知的生産性維持モードのいずれが設定されているか等の情報が抽出される。
【0114】
また、リクエスト要求項目は「照明」であることから、センサ情報取得部21により取得されセンサ情報記憶領域31に格納されている、対象空間内の各種センサのセンサ情報のうち「照度」のセンサ情報が、各センサ区分について抽出される(S106)。
そして、リクエスト要求が行われたときの、年月日、時刻、ユーザID、ユーザの位置情報、リクエスト項目、位置情報に対応した「照度」、また、照明設備の稼動状況が、リクエスト有り時の履歴情報として履歴情報記憶領域34に格納される(S107)。
【0115】
続いて、「照度」のセンサ情報のうち、リクエスト要求を行ったユーザの好みの環境条件に適したセンサ区分が特定され、そのうち、他のユーザが利用していない位置検知区分が検索される(S108)。
そして、リクエスト要求を行ったユーザが、「モード選択」として省エネモードを選択している場合には、検索した位置検知区分を、ユーザの好みの環境条件を満足するお勧めの位置としてユーザ端末6に送信する(S109)。これによって、ユーザは、自己の好みの環境条件を満足する位置を認識することができる。
【0116】
一方、ユーザの好みの環境条件に該当する位置検知区分が検出されない場合には、例えば、「一致する場所が見つかりません。照度を上げますか?」とのメッセージが、これに伴う環境負荷の増加分とともにユーザ端末6に送信される(S110)。
そして、このメッセージにしたがって、ユーザが照度を上げるよう指示すると、「ただいまの制御により+○○kwh追加されました。」などのメッセージがユーザ端末6に送信される(S111)。これによって、ユーザは、照度を上げたことにより、環境負荷がどの程度増加したかを認識することができる。
【0117】
〔多数のユーザが同じ内容のリクエスト要求を行ったとき〕
次に、対象空間に存在する多数のユーザが同じ内容のリクエスト要求を行った場合の動作を、
図16を伴って説明する。
例えば、BEMSによる自動制御が行われている状態(S201)で、対象空間に存在する複数のユーザが暑さを感じ、ユーザ端末6において「暑い」とのリクエスト要求(申告)を行うと、ユーザ端末6からリクエスト要求が、無線通信を介して設備制御装置2に送信される(S202)。
【0118】
設備制御装置2の制御処理部25では、フロアリクエスト処理が実行され、第1しきい値以上の数のユーザから、「暑い」との申告が行われると、制御処理部25では、対象空間内のユーザ全てに対して、例えば「フロアの過半数が暑さを感じています。空調80%→100%へ変更しますか?」との通知を行う(S203)。そして、第2しきい値以上のユーザからOKの同意が得られたとき空調100%へ制御変更する(S204)。
このように多数のユーザから同一内容のリクエスト要求があった場合には、各ユーザに対応して制御を行うよりも、フロア全体を制御した方が、速やかに快適な環境を提供することができるとともに、省エネルギの点でも有効である。この場合、ユーザ個々の快適環境の確保に対し、省エネルギを優先した制御が行われることになる。
【0119】
〔アドバイス提示要求を行ったとき〕
次に、対象空間にユーザが入室したときの動作を、
図17を伴って説明する。
ユーザが対象空間に入室し、ユーザ端末6を操作してアドバイス提示要求を行う(S301)と、アドバイス提示要求が無線通信を介して設備制御装置2に送信される。
設備制御装置2の制御処理部25では、アドバイス提示処理が実行され、アドバイス提示要求を行ったユーザのユーザIDを特定し、ユーザ情報記憶領域32に格納されたユーザ情報から、このユーザの好みの環境条件、またモード選択などのユーザ情報を取得し、これらを満足する位置検知区分を特定する。そして、特定した情報をユーザのユーザ端末6に送信する(S302)。例えば「あなたのお好みの場所は、今日はPxと、Pyと、Pzです。」とのメッセージを通知する。
【0120】
これを受けてユーザが勧められた場所に着席することにより、ユーザは快適な環境下で作業を行うことができる(S303)。
この状態から、例えば周囲のユーザの数が増えて暑くなり、ユーザが、ユーザ端末6を操作して「暑い」とのリクエスト要求を行うと(S304)、制御処理部25では、リクエスト対応温熱光環境アドバイス表示処理が実行され、このとき、モード選択として、省エネモードが設定されている場合には、ユーザの好みの環境条件を満足する位置検知区分が検出され、検出された位置検知区分がお勧め場所としてユーザ端末6に送信される(S305)。
【0121】
これにより、ユーザ端末6には、例えば「アウターワークプレイスが今の場所より−2℃となっています。」などと表示される。なお、このように、お勧めの場所とともに、その場所の現在の環境情報なども通知することによって、ユーザは、勧められた場所のうちどの場所に移動するかを判断する際の手がかりとして利用することができる。
そして、勧められた場所に移動することによって、環境調整用設備1の目標温度を変更するなど、これら設備の制御変更を伴うことなく、快適環境を得ることができる(S306)。この場合、環境調整用設備1の制御に対し、ユーザが場所を変えることにより、ユーザは快適な作業環境を得ることになるため、省エネルギ化を優先して制御が行われることになる。
【0122】
一方、ユーザが、例えば、Aさんの近くで作業をすると決めている場合には、ユーザはアドバイス提示要求を行わず、Aさんの近くの場所に着席する(S401)。
この場合、周囲環境が暑くなったとしても、ユーザはAさんの近くにいる必要があるため、移動できない。そのため、ユーザ端末6を操作してリクエスト要求を行うと(S402)、リクエスト要求は、無線通信を介して設備制御装置2に送信される。
【0123】
設備制御装置2の制御処理部25では、リクエスト要求が行われたことから、リクエスト対応温熱光環境アドバイス表示処理が実行される。例えば、ユーザが対象空間に入室する際に、「モード選択」として知的生産性維持モードを設定しておくと、ユーザの好みの環境条件を満足する場所の提供は行われない。かわりに、ユーザの現在位置において、ユーザの好みの環境条件を満足する環境に制御するための環境改善の選択肢およびその制御に伴う環境負荷の増加分がユーザ端末6に送信される(S403)。
【0124】
そして、ユーザが通知された環境改善のための選択肢のいずれかを選択すると、選択された選択肢に応じた制御が行われる。
図17の場合には、10分間ファンを回すこと、0.5Kの環境負荷が増加することが通知され、ユーザはこれに同意したため、ファンが10分間駆動され、このユーザの環境負荷の合計に、ファンを駆動したことによる環境負荷相当分、0.5Kwが加算されることになる。この場合、環境調整用設備1を制御することにより、ユーザは快適な作業環境を得ることになるため、省エネルギ化よりもユーザの業務効率を優先して制御が行われることになる。
【0125】
〔おまかせの場合〕
次に、ユーザが、空調、照明などの環境の調整を行わず、快適環境選択支援装置100や、自動制御あるいは他のユーザによる変更などにまかせた場合の動作を、
図18を伴って説明する。
ユーザが、例えば、論文に集中することなどを目的としている場合、ユーザは、ユーザ端末6を操作し、「モード選択」として、知的生産性維持モードを設定し、アドバイス提示要求を行う(S501)。これらユーザ情報およびアドバイス提示要求は、無線通信により設備制御装置2に送信される。
【0126】
設備制御装置2の制御処理部25では、アドバイス表示処理が実行され、アドバイス提示要求を行ったユーザのユーザIDを特定し、ユーザ情報記憶領域32に格納されたユーザ情報から、このユーザの好みの環境条件、またモード選択などのユーザ情報を取得し、これらを満足する位置検知区分を特定する。そして、特定した位置検知区分をお勧めの場所としてユーザ端末6に送信する(S502)。
ユーザは提示されたいずれかの席に着席することにより作業に集中することができる(S503)。
【0127】
この状態から、環境変化や人の増減などにより、ユーザの周囲環境が変化しても、ユーザは作業に集中しているため、環境変化に伴う環境の改善を図るためのリクエスト要求は行わない。
そのため、制御処理部25では、環境変化時の温熱光環境アドバイス表示処理によって、周囲環境が、このユーザの好みの環境条件から大きくずれたかどうかを監視する。
【0128】
周囲環境が、このユーザの好みの環境条件から大きくずれた場合、「モード選択」として快適モードや省エネモードが設定されている場合には、環境変化時環境温熱光環境アドバイス表示処理によって、環境が変化した旨の通知や、アドバイス表示などが行われ、ユーザの意思に応じて環境の改善が図られるが、このユーザの場合には、知的生産性維持モードが選択されているため、環境が変化したとしても通知は行われない(S504)。代わりに、自動制御が行われて、このユーザの好みの環境条件を満足する環境に自動的に制御される。
【0129】
すなわち、例えば「規定値を超えたためファンが作動しました。」などという、自動制御に行われた制御内容が、ユーザ端末6に送信される(S505)。そして、ファンが作動する等、周囲環境がユーザの好みの環境条件を満足する環境となるように自動制御される(S506)。
そのため、ユーザの周囲環境が変化した場合であっても、ユーザは、作業を中断してユーザ端末6を操作する必要はなく自動的に、ユーザの好みの環境条件を満足する環境を得ることができる。
【0130】
一方、ユーザがファンを作動してほしくない場合など、通知された制御内容による環境調整用設備1に対する制御を行わない場合には、ユーザ端末6を操作し、ファンを作動しない旨を通知するようにしてもよい。これによって、制御処理部25ではファンを作動しない。このとき、ユーザの好みの環境条件を満足する環境に制御するための他の制御内容を、ユーザ端末6に送信するようにしてもよい。
【0131】
このように、通知された制御内容に同意できないときには、その旨を制御処理部25に通知することによって、例えば、ユーザが現状環境維持を望む場合、あるいは、自動制御はファンにより風が当たることを嫌う場合など、ユーザの意思に反して、自動制御が行われることを回避することができる。この場合、環境調整用設備1を制御することによりユーザは快適な作業環境を得るようにしているため、省エネルギ化よりも業務効率を優先して制御が行われることになる。
【0132】
〔まとめ〕
このように、各ユーザの好みの環境条件に応じて、対象空間内の、ユーザの好みの環境条件を満足する位置検知区分を通知するようにしているため、現在の周囲環境を不快に感じるユーザは、通知された位置検知区分に対応する位置に移動することによって、好みの環境を容易に得ることができる。
【0133】
また、この通知される、ユーザの好みの環境条件を満足する位置検知区分は、対象空間の現在の環境下でユーザの好みの環境条件を満足する位置であるため、環境調整用設備1の制御内容を変更することなく、好みの環境を得ることができ、すなわち環境負荷の増加を伴うことなく、好みの環境を得ることができる。したがって、省エネルギ化を図りつつ、ユーザは好みの環境を得ることができる。
【0134】
特に、オフィス、研究所、学校、カフェなど、1フロア若しくは、複数フロアで個人個人や集団に所属し、活動することが主体の空間においては、様々な室内環境を好むユーザが混在し在居する。このような空間において、各ユーザが好みに応じて環境調整用設備1を制御すると、例えば冷房をつけたため、あるユーザは快適になったが、他のユーザは寒さを感じ、その結果暖房をつけるなど、環境調整用設備1を無駄に動作させる可能性があり、また環境負荷の増加も生じることになる。
【0135】
しかしながら、上述のように、ユーザの好みの位置検知区分を通知することによって、個々のユーザが環境調整用設備1を自分の好みに応じて調整することを抑制することができるため、環境負荷の大幅の増加を抑制することができる。
また、特に広いフロアなどの場合、場所によって、温度環境が異なる場合が多く、言い換えれば、様々な温度環境を提供することができる。そのため、上述のように、ユーザの好みの環境を満足する位置を提供することによって、環境負荷の増加を抑制しつつ、より多くのユーザが満足する環境を提供することができる。
【0136】
また、場所を替えれば環境調整用設備1を制御しなくとも快適な環境を得ることができるということを認識していたとしても、一旦作業を初めてしまうと、なかなか作業場所を移動しないものであり、また、快適な環境を得ることができる場所を探すのも手間がかかる。しかしながら、上述のように、好みの環境を得ることができる場所を通知することによって、ユーザはその場所を容易に認識することができるため、快適な場所に移動しようという気になりやすく、省エネルギ化への協力を得やすくすることができる。
【0137】
また、室内環境、屋外環境のどちらにしても、様々な環境(温度、湿度、日射の有無、照度、風等)がある中で、特に温度、湿度などはその変化が目に見えて分かるものではないため、ユーザが場所を選択する際の手がかりに乏しい。例え座席などの在居場所を選択することが可能であり、好みの環境に適合する場所があったとしても、室内の空間構成によっては、見通しで見えない位置に存在する場合や、空席か利用中かといった使用状況が見えないため、在居場所の選択肢として、この場所が在居場所の候補として挙がらない可能性がある。
【0138】
しかしながら、上述のように、本実施形態では、対象空間においてユーザの好みの環境条件に適合した場所であり、かつ他のユーザが使用していない場所を通知するようにしている。そのため、ユーザからは見えない場所であっても、ユーザに対して好みの環境条件を満足する場所を、候補として通知することができる。
また、室内ではなく、屋外、半屋外も含めて、ユーザの好みの環境に適合する場所を検索し、情報提供しているため、より多くの場所を候補としてユーザに提供することができる。
【0139】
また、ユーザ毎に、1日あたりの環境負荷等を、評価情報として表示しているため、ユーザは、この評価情報を参照することによって、好みの環境を実現するための自身の行動が、環境負荷などのエネルギの増加などにどのように影響を与えたのかを容易に認識することができる。したがって、好みの環境を実現するための自身の行動が環境負荷に与える影響を考慮して行動することができ、省エネルギ行動を促進することができる。また、自己の快適性と環境配慮と知的生産性との兼ね合いを意識しながら、行動するための目安とすることができる。
【0140】
また、設備制御装置2により提供されるお勧めの場所や、評価情報はユーザ個々に対応した情報からなっており、一般的なお勧め情報ではなく、また事業所全体の環境負荷などを表す評価情報ではない。したがってユーザに対し、ユーザ個人に対するお勧め情報や、ユーザ個人の評価情報を提供することによって、ユーザに対し、お勧め情報にしたがって場所を選択してみよう、あるいは、好みの環境を実現するため今日とった自身の行動が環境負荷にどのように影響したのか、といった興味を持たせることができる。
【0141】
また、評価情報はユーザ個人だけでなく他のユーザの情報も表示されるため、快適環境選択支援装置100により提供されるサービスの利用率や、評価情報の閲覧回数の向上を期待することができ、すなわち、省エネ行動の高まりを期待することができる。
また、対象の空間への入室時や、ユーザからリクエスト操作があったときに、アドバイス提示を行うだけでなく、リクエスト要求が無い場合であっても環境の変化により、ユーザの好みの環境と適合しない状態になったときには、これを通知し、好みの環境に適合したアドバイス提示を行う。そのため、ユーザが対象空間に存在する間、継続して、快適環境選択支援装置100を活用することができる。したがって、この快適環境選択支援装置100を活用することによって、環境負荷の削減につなげることができ、効果的である。
【0142】
また、ユーザの中には、好みの環境条件を満足する場所で作業を行うことを望み、環境変化がある毎に好みの環境を満足する場所に移動したいという、積極的に環境負荷の削減を図るユーザや、多くの人が満足しているならば自身の好みを反映しなくても現在の環境で満足であるというユーザ等、ユーザごとに環境条件に対する満足度や省エネ行動に関する参加意識が異なることが想定される。
【0143】
また、作業に集中したいため、好みの環境条件を満足する場所の通知などは不要であり、必要ならば、必要なときに情報を取得するという使用方法が好ましいというユーザも存在することが考えられる。つまり、通知に関しても、個人の好みが異なり、一律に自動通知をする構成とすると、やもすると、快適環境選択支援装置100全体への印象が悪くなり、通知を避けるために、快適環境選択支援装置100を活用しない等、この快適環境選択支援装置100による目的の1つである省エネ行動参加促進が達成できなくなる可能性がある。
【0144】
そのため、「通知設定」や「モード選択」などの情報を、ユーザ毎に、ユーザ端末6から設定する構成とすることによって、より使い勝手を向上させることができ、ユーザの満足度を向上させることができるとともに、快適環境選択支援装置100を活用および省エネ行動参加促進を図ることができる。
また、
図15から
図18に示すように、ユーザが対象空間で作業を行う際に生じ得る様々なワークスタイルにおいて、省エネルギ化を図りつつ、ユーザに対してユーザの好みの環境を提供することができ、また、対象空間のゼロエネルギ化を、年間を通して図ることができる。
【0145】
なお、ユーザの好みの環境を満足する場所を通知する際に、その周囲の場所(例えば座席)のユーザの使用状況、あるいは、使用しているユーザを特定する情報も通知するようにしてもよい。
このように、ユーザの使用状況も通知することによって、例えば集中して作業をしたい場合などには周囲に人が少ない場所を選択する、あるいは、自分の作業に関係するユーザが近くにいる場所を選択する等、候補として挙げられた場所の中から、一つの場所を選択する際の手がかりとして情報提供をすることができる。
【0146】
また、上記実施形態では、リクエスト有り時の履歴情報、リクエスト無し時の履歴情報に基づいて、ユーザの好みの環境条件を推定する場合について説明したが、これに限るものではなく、例えばユーザが予め好みの環境条件を設定するようにしてもよい。また、この予め設定した好みの環境条件をデフォルトとして用い、対象空間に存在している間に、リクエスト有り時およびリクエスト無し時の履歴情報に基づいてデフォルトの好みの環境条件を更新するようにしてもよい。
【0147】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。
さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。