(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071764
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】膨張弁
(51)【国際特許分類】
F25B 41/06 20060101AFI20170123BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20170123BHJP
F16K 31/68 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
F25B41/06 G
B60H1/32 613B
F16K31/68 S
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-120317(P2013-120317)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-238207(P2014-238207A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 武志
(72)【発明者】
【氏名】村上 隼人
【審査官】
庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−047393(JP,A)
【文献】
特開2004−076957(JP,A)
【文献】
特開2011−133139(JP,A)
【文献】
特開2011−245549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/06
F16K 31/68
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサで凝縮した高圧の冷媒を導入する入口ポート、該入口ポートに連通する弁室、該弁室に設けられたオリフィス、該オリフィスで膨張した冷媒を外部に向けて導出する出口ポート及びエバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒が通過する通路を有する弁本体と、前記オリフィスを開閉する弁体と、前記弁体を駆動して前記オリフィスの開度を制御する弁体駆動装置とを備える膨張弁であって、
前記出口ポートには整流板が備わっており、
前記整流板は、出口ポートの下半分に対向する半円弧状の開口部と、上半分に対向する多数の小孔とを備える
ことを特徴とする膨張弁。
【請求項2】
前記オリフィスを通過する冷媒に含まれるガス冷媒は前記整流板の手前で一時滞留し、当該ガス冷媒が前記小孔を介して小気泡に細分化されて流動することを特徴とする請求項1記載の膨張弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルに用いられる感温式の膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に搭載される空調装置等に用いる冷凍サイクルについては、設置スペースや配管を省略するために、冷媒の通過量を温度に応じて調整する感温式の温度膨張弁が使用されている。
この種の膨張弁は下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−47393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の膨張弁にあっては、オリフィスを通過して出口ポートからエバポレータヘ向かう冷媒中には膨張時に発生する気泡が含まれる。
特許文献1は、この出口ポートに絞り部材を設けて冷媒を整流して気泡の破裂に起因する騒音を防止する技術が開示されている。
本発明の目的は、この種の膨張弁の更なる改良を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の膨張弁は、コンデンサで凝縮した高圧の冷媒を導入する入口ポート、該入口ポートに連通する弁室、該弁室に設けられたオリフィス、該オリフィスで膨張した冷媒を外部に向けて導出する出口ポート及びエバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒が通過する通路を有する弁本体と、前記オリフィスを開閉する弁体と、前記弁体を駆動して前記オリフィスの開度を制御する弁体駆動装置とを備え、前記出口ポートには整流板が備わっており、前記整流板は、出口ポートの下半分に対向する半円弧状の開口部と、上半分に対向する多数の小孔とを備えるものである。
【0006】
前記オリフィスを通過する冷媒に含まれるガス冷媒は前記整流板の手前で一時滞留し、当該ガス冷媒が前記小孔を介して小気泡に細分化されて流動する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の膨張弁は以上の構成を備えることにより、出口ポートからエバポレータへ向かう冷媒中の気泡は細分化され、気泡の破裂による騒音が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の好適な一実施形態に係る膨張弁の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1及び
図2に示すように、本発明の膨張弁1は弁本体10を有し、弁本体10にはコンプレッサ側から供給される高圧の冷媒が導入される入口ポート20が設けられ、入口ポート20は小径部21を介して弁室22に連通する。入口ポート20には弁体60により開閉される弁座24が形成され、弁座24と弁体60により流量が制御された冷媒はオリフィス26を通り、小径の出口ポート27、大径の出口ポート28を通ってエバポレータ側へ送り出される。
【0010】
エバポレータからコンプレッサ側へ戻る冷媒は、弁本体10に設けられる戻り通路30を通過する。戻り通路30を通過する冷媒は開口部32を介して弁体駆動装置40側へ導入され、冷媒の温度情報を弁体駆動装置40側へ伝達する。
弁体駆動装置40はケーシング41内にダイアフラム42で画成されて作動流体が封入される作動圧力室44を有し、圧力の変動はダイアフラム42の変位に変換されて、受け部材46を介して作動棒50に伝達される。
【0011】
作動棒50は弁体60を操作して弁開度を制御する。球状の弁体60はばね受け70により支持される。ばね受け70は弁室22を封止するプラグ90との間に設けられる付勢ばね80により支持される。プラグ90はナット状の部材であって、そのねじ込み量を調節することで、弁体60の閉弁方向の付勢力を調整することができる。
【0012】
出口ポート28には、整流板100が取り付けられる。
整流板100は出口ポート28に挿入される円盤状の部材であって、下半分には半円弧状の開口部110が設けられる。
【0013】
オリフィス26を通過した冷媒のうち気泡を含まない比重の大きな液冷媒は、小径の出口ポート27の下側を流れて、この開口部110から大径の出口ポート28側へ流出し、エバポレータへ向けて送り出される。
【0014】
気泡を含む比重の小さなガス冷媒は小径の出口ポート27の上側を流れて整流板100の上側に突き当って滞留する。そして、気泡は多数の小孔120により小気泡に細分化され、大径の出口ポート28側へ流出する。
【0015】
この作用により、ガス冷媒中の気泡は小気泡に細分化され、かつ整流されてエバポレータに向けて送り出される。この気泡細分化と整流作用とによりガス冷媒の流れの乱れに起因する騒音は低減する。
【0016】
本発明の膨張弁1は以上のように、出口ポートの下半分に半円弧状の開口部と上半分に多数の小孔を有する整流板を設けてあるので、ガス冷媒中の気泡は細分化され整流されるので騒音の低減を奏する。
【符号の説明】
【0017】
1 膨張弁
10 弁本体
20 入口ポート
21 小径部
22 弁室
24 弁座
26 オリフィス
27 出口ポート(小径部)
28 出口ポート(大径部)
30 戻り通路
32 開口部
40 弁体駆動装置
41 ケーシング
42 ダイアフラム
44 作動圧力室
46 受け部材
50 作動棒
60 弁体
70 ばね受け
80 付勢ばね
82 ばね内部空間
90 プラグ
100 整流板
110 開口部
120 小孔