(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非共役ポリエン[C]が5−エチリデン−2−ノルボルネンであり、非共役ポリエン[D]が5−ビニル−2−ノルボルネンであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<熱可塑性エラストマー組成物>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、エチレン[A]、炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]、下記一般式(I)または(II)で表される部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン[C]、
【0026】
【化1】
(ただし、(I)は環状オレフィンの部分構造である。)
【0027】
【化2】
および、一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン[D]に由来する構造単位を含み、下記要件(1)および(2)を満たすエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]90〜40重量部と、結晶性ポリオレフィン樹脂[II]10〜60重量部([I]および[II]の合計は100重量部である。)とから得られることを特徴とする。
(1)エチレン[A]に由来する構造単位と、α−オレフィン[B]に由来する構造単位とのモル比[A]/[B]が、60/40〜10/90である。
(2)ヨウ素価が10〜50である。
【0028】
〔エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]〕
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]は、エチレン[A]、炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]、上記一般式(I)または(II)で表される部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン[C]、および、一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン[D]に由来する構造単位を含み、上記要件(1)〜(2)を満たす。
【0029】
(炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B])
前記炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどの炭素原子数3〜8のα−オレフィンが好ましい。これらのα−オレフィンは一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0030】
なお、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]は、少なくとも1種の炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]に由来する構造単位を含んでおり、2種以上の炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0031】
このようなα−オレフィンは、原料コストが比較的安価で共重合性に優れるとともに、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]が優れた機械的性質と良好な柔軟性を示すため好ましい。
【0032】
(上記一般式(I)または(II)で表される部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン[C])
前記非共役ポリエン[C]は、上記一般式(I)で表される部分構造を分子中に1つ含み、上記一般式(II)で表される部分構造を分子中に含まない非共役ポリエン、または上記一般式(II)で表される部分構造を分子中に1つ含み、上記一般式(I)で表される部分構造を分子中に含まない非共役ポリエンである。
【0033】
上記一般式(I)で表される部分構造は環状オレフィンの部分構造である。つまり、上記一般式(I)で表される部分構造は、環状オレフィンの環を構成する相互に隣り合い、二重結合で結ばれた2つの炭素原子と、該2つの炭素原子にそれぞれ1つずつ結合した2つの水素原子とを含む原子団からなる構造である。
【0034】
たとえば、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)の場合は、上記一般式(I)で表される部分構造を1分子中に1個含むので前記非共役ポリエン[C]に該当する。一方、ジシクロペンタジエン(DCPD)の場合は、上記一般式(I)で表される部分構造を1分子中に2個含むので後述の非共役ポリエン[D]に該当する。ビニリデンノルボルネンの場合は、上記一般式(I)で表される部分構造を1分子中に1個と上記一般式(II)で表される部分構造を1分子中に1個とを含むので後述の非共役ポリエン[D]に該当する。
【0035】
前記一般式(I)または(II)で表される部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン[C]としては、例えば分子両末端にビニル基(CH
2=CH−)を有する脂肪族ポリエンは含まれない。前記非共役ポリエン[C]としては、下記のような脂肪族ポリエンおよび脂環族ポリエンなどが挙げられる。
【0036】
前記脂肪族ポリエンの具体例としては、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−ノナジエン、1,8−デカジエン、1,12−テトラデカジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−エチル−1,4−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘプタジエン、5−エチル−1,4−ヘプタジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、5−エチル−1,5−ヘプタジエン、4−メチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,4−オクタジエン、4−エチル−1,4−オクタジエン、5−エチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,5−オクタジエン、5−エチル−1,5−オクタジエン、6−エチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、6−プロピル−1,6−オクタジエン、6−ブチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−メチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,4−ノナジエン、4−エチル−1,4−ノナジエン、5−エチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,5−ノナジエン、5−エチル−1,5−ノナジエン、6−エチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,6−ノナジエン、6−エチル−1,6−ノナジエン、7−エチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,7−ノナジエン、7−エチル−1,7−ノナジエン、5−メチル−1,4−デカジエン、5−エチル−1,4−デカジエン、5−メチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,5−デカジエン、5−エチル−1,5−デカジエン、6−エチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,6−デカジエン、6−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,6−デカジエン、7−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,7−デカジエン、7−エチル−1,7−デカジエン、8−エチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、8−エチル−1,8−デカジエン、6−メチル−1,6−ウンデカジエン、9−メチル−1,8−ウンデカジエンなどが挙げられる。本発明においては、これらの脂肪族ポリエンを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。好ましくは7−メチル−1,6−オクタジエンなどが用いられる。
【0037】
前記脂環族ポリエンとしては、例えば、1個の炭素・炭素二重結合(不飽和結合)を有する脂環部分と、その脂環部分を構成する炭素原子に対し炭素・炭素二重結合により結合している鎖状部分(エチリデン、プロピリデン等)とから構成されるポリエンが挙げられ、具体例としては、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−プロピリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネンなどが挙げられ、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が好ましく用いられる。その他の脂環族ポリエンとしては、具体的には、例えば、2−メチル−2,5−ノルボルナジエン、2−エチル−2,5−ノルボルナジエンなどが挙げられる。
【0038】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、少なくとも1種の前記非共役ポリエン[C]に由来する構造単位を含んでおり、2種以上の前記非共役ポリエン[C]に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0039】
(前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン[D])
前記非共役ポリエン[D]は、上記一般式(I)で表される部分構造を分子中に2つ以上含み、上記一般式(II)で表される部分構造を分子中に含まない非共役ポリエン、上記一般式(II)で表される部分構造を分子中に2つ以上含み、上記一般式(I)で表される部分構造を分子中に含まない非共役ポリエン、または上記一般式(I)で表される部分構造を分子中に1つ以上含み、上記一般式(II)で表される部分構造を分子中に1つ以上含む非共役ポリエンである。
【0040】
前記非共役ポリエン[D]としては、例えば、炭素・炭素二重結合(不飽和結合)を有する脂環部分と、脂環部分を構成する炭素原子に結合する鎖状部分であってビニル基を含む鎖状部分とを有する脂環族ポリエンおよび分子両末端にビニル基を有する脂肪族ポリエンが挙げられる。具体例としては、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、5−アリル−2−ノルボルネン等の5−アルケニル−2−ノルボルネン;2,5−ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、ノルボルナジエン、テトラシクロ[4,4,0,1
2.5,1
7.10]デカ−3,8−ジエン等の脂環族ポリエン;1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のα, ω−ジエン等の脂肪族ポリエンが挙げられる。
【0041】
これらの中でも、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、5−アルケニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンが好ましく、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)が特に好ましい。
【0042】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、2種以上の前記非共役ポリエン[D]に由来する構造単位を含んでいてもよい。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]は、VNB等の非共役ポリエン[D]に由来する構造単位を含むと、さらにブロッキングしにくくなる。これは、VNB等の非共役ポリエン[D]を用いると、後述のメタロセン触媒で共重合させた場合、長鎖分岐が増加し、低剪断領域による弾性率が上昇することによって、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]の変形が抑制されるために、ブロッキングしにくくなるものと考えられる。
【0043】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]においては、非共役ポリエンゴム[C]に由来する構造単位の含有量と非共役ポリエン[D]に由来する構造単位の含有量とのモル比([C]/[D])は85/15〜99.5/0.5であることが好ましく、より好ましくは90/10〜99.5/0.5であり、さらに好ましくは95/5〜99.5/0.5である。前記モル比が前記範囲内であると、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]の変形が抑制されるという観点から好適である。
【0044】
また、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]に含まれる非共役ポリエンに由来する構造単位の含有量は、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]に含まれる全構造単位に対し0.5〜4.5mol%であることが好ましく、より好ましくは1.0〜4.5mol%であり、さらに好ましくは2.0〜4.5mol%である。非共役ポリエンに由来する構造単位の含有量が前記範囲内であると、ゴム的性質(例えば永久伸び、圧縮永久歪)の観点から好適である。なお、前記非共役ポリエンに由来する構造単位の含有量とは、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]に含まれるすべての非共役ポリエンに由来する構造単位の含有量の合計を意味する。前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体が非共役ポリエンとして非共役ポリエン[C]および前記非共役ポリエン[D]を含む場合には、前記含有量は、非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の含有量と前記非共役ポリエン[D]に由来する構造単位の含有量との合計を意味する。
【0045】
前記非共役ポリエンに由来する構造単位の含有量は
13C−NMRにより求めることができる。
上記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]は、下記要件(1)および(2)を満たす。さらに、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]は、下記要件(3)〜(5)を満たすことが好ましい。以下、要件(1)〜(5)につき説明する。
【0046】
(要件(1))
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]に含まれるエチレン[A]に由来する構造単位と、α−オレフィン[B]に由来する構造単位とのモル比([A]/[B])が60/40〜10/90である。前記モル比[(A)/(B)]は好ましくは60/40〜50/50である。前記モル比が、前記範囲内であると共重合体ゴム[I]のブロッキングが起こりにくく、低温特性が良好になるという観点から好適である。
前記モル比は
13C−NMRにより求めることができる。
【0047】
(要件(2))
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]のヨウ素価が10〜50である。前記ヨウ素価は好ましくは20〜50であり、より好ましくは30〜50である。前記ヨウ素価が、前記範囲内であると、ゴム弾性および機械的性質が良好になるという観点から好適である。
前記ヨウ素価は、JIS K0070に準じて求めることができる。
【0048】
(要件(3))
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]は、下記式(i)で表されるB値が1.05以下である。B値は好ましくは1.03以下であり、より好ましくは1.00以下である。
【0049】
【数1】
(式(i)中、[E]および[X]は、エチレンに由来する構造単位および炭素原子数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位のモル分率をそれぞれ表し、[EX]は、エチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィンのダイアッド連鎖分率を表す。)
【0050】
式(i)中、[E]は、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体におけるエチレンに由来する構造単位のモル分率、つまり前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体に含まれる全構造単位に対する前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体に含まれるエチレンに由来する構造単位のモル比である。[X]は、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体における炭素原子数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位のモル分率、つまり前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体に含まれる全構造単位に対する前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体に含まれる炭素原子数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位のモル比である。
【0051】
[EX]はエチレン−炭素数3〜20のα−オレフィンダイアッド連鎖分率を示す。)
なお、前記B値は、実施例に記載の方法に従い、
13C−NMRにより求めることができる。
【0052】
前記B値は、共重合体のランダム性を示す指標である。前記B値が、1.0のとき最もランダム性が高く、それより小さいほどブロック性が高くなり、逆に高くなるほど交互性が高いことを示す。
【0053】
B値が前記範囲内であると、耐ブロッキング性に優れるという点で好ましい。さらにB値が1.0に近いほど、ランダム性に優れ、優れた低温特性を示すようになるとなる点で好ましい。
【0054】
(要件(4))
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]は、135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が1.0〜3.0である。前記極限粘度[η]は1.5〜3.0であることがより好ましく、2.0〜3.0であることがさらに好ましい。前記極限粘度[η]が、前記範囲内であると、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]のゴム弾性および機械的性質が良好になるという観点から好適である。
前記極限粘度[η] は、ASTM D 1601に従って測定することにより求めることができる。
【0055】
(要件(5))
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]は、分子量分布Mw/Mnが2〜10である。前記分子量分布Mw/Mnは3〜10であることがより好ましく、4〜10であることがさらに好ましい。前記分子量分布Mw/Mnが、前記範囲内であると、成型性が良好になるという観点から好適である。
【0056】
分子量分布Mw/Mnは、高温高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される。具体的には、Waters(株)社製alliance2000型を用い、カラムとして東ソー(株)社製TSKgel GMH6−HTとTSKgel GMH6−HTLをそれぞれ2本ずつ連結し、140℃のオルトジクロロベンゼンを移動相とし、流速1ml/minで測定したものであり、キャリブレーションは標準ポリスチレンを用いて汎用較正法で実施される。
【0057】
また、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]は、100℃で測定したムーニー粘度〔ML
1+4〕が、通常5〜150、好ましくは10〜100、さらに好ましくは25〜90である。
【0058】
なお、該ムーニー粘度は、JIS K6300に準拠して、100℃の条件下、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV201型)を用いて測定することができる。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]は、下記式(α)または(β)で表わされる構造を有するメタロセン系触媒を用いて合成される。また、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]は、好ましくは下記一般式(i)、より好ましくは下記式(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)、特に好ましくは(iii)で表わされる構造を有するメタロセン系触媒を用いて合成される。
【0059】
このような触媒を用いて合成することにより、前記要件(1)および(2)、さらには(3)〜(5)を満たすエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]を得ることができる。
【0060】
【化3】
(式(α)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R
1およびR
2の少なくとも1つは水素原子ではない。
【0061】
R
3〜R
6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基である。前記R
1〜R
6は、互いに結合して環を形成してもよい。Mはチタンである。
Yは、−O−、−S−、−NR
*−、−PR
*−である。
Z
*は、SiR
*2、CR
*2、SiR
*2SiR
*2、CR
*2CR
*2、CR
*=CR
*、CR
*2SiR
*2またはGeR
*2である。
【0062】
R
*は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、またはハロゲン化アリール基であり、R
*が水素でない場合には、R
*は20個までの水素原子以外の原子を有する。Zが有する2つのR
*(R
*が水素原子でない場合)が環を形成してもよく、Z
*が有するR
*とYが有するR
*が環を形成してもよい。
【0063】
pは0、1または2である。
qはゼロまたは1である。
ただし、pが2である場合、qはゼロであり、Mは+4の酸化状態であり、Xはそれぞれ独立に、メチルまたはベンジルである。
【0064】
pが1である場合、qはゼロであり、Mは+3の酸化状態であり、Xは2−(N、N−ジメチル)アミノベンジルであるか、Mは+4の酸化状態であり、Xは1,3−ブタジエニルである。
【0065】
pが0である場合、qは1であり、Mは+2の形式酸化状態であり、X'は1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、2,4−ヘキサジエン、または1,3−ペンタジエンである。)
【0066】
【化4】
(式(β)中、Rは、それぞれ独立に、ヒドロカルビル、ハロヒドロカルビル、シリル、ゲルミルおよびこれらの組み合わせから選択される基または水素原子であり、該基が含有する水素原子以外の原子の数は20個以下である。
【0067】
Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムである。
Yは−O−、−S−、−NR
*−または−PR
*−である。
R
*は、水素原子、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン化アリール基であり、R
*は水素でない場合には、R
*は20個までの水素以外の原子を含有する。
【0068】
Zは、ホウ素または14族元素を含有し、かつ、窒素、リン、硫黄または酸素を含有する二価の基であり、該二価の基が有する水素原子以外の原子の数は60個以下である。
Xは、Xが複数存在する場合にはそれぞれ独立に、原子数が60個以下のアニオン性配位子(但し、非局在化したπ結合を有する環状の配位子を除く)である。
【0069】
X'は、原子数が20個以下の中性の連結用化合物である。
pは、0、1または2である。
qは、0または1である。
【0070】
ただし、pが2でqが0の場合、Mは+4の酸化状態にあり、Xはハライド、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、ジ(ヒドロカルビル)アミド、ジ(ヒドロカルビル)ホスフィド、ヒドロカルビルスルフィド、シリル基、それらのハロ置換誘導体、ジ(ヒドロカルビル)アミノ置換誘導体、ヒドロカルビルオキシ置換誘導体およびジ(ヒドロカルビル)ホスフィノ置換誘導体から選択されるアニオン性配位子であり、前記Xの水素原子以外の原子の数は20個以下である。
【0071】
またpが1でqが0の場合、Mは+3の酸化状態にあり、Xはアリル、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニルおよび2−(N,N−ジメチル)アミノベンジルから選択されるアニオン性安定化配位子であるか、あるいはMは+4の酸化状態にあってXが共役ジエンの二価誘導体であり、MとXが一緒になってメタロシクロペンテン基を形成する。
【0072】
またpが0でqが1の場合、Mは+2の酸化状態にあり、X'は場合により1つ以上のヒドロカルビル基で置換されている中性の共役もしくは非共役ジエンであり、前記X'が炭素原子を40個以下の数で有しており、かつMとπ錯体を形成する]
【0073】
【化5】
(式(i)中、R'は、水素原子、ヒドロカルビル基、ジ(ヒドロカルビルアミノ)基またはヒドロカルビレンアミノ基を表し、それらの基の炭素原子数は20以下である。
【0074】
R"は、炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基または水素原子を表す。
Mは、チタンを表す。
Yは、−O−、−S−、−NR
*−、−PR
*−、−NR
2*または−PR
2*を表す。
【0075】
Z
*は、Z
*は、−SiR
*2−、−CR
*2−、−SiR
*2SiR
*2−、−CR
*2CR
*2−、−CR
*=CR
*−、−CR
*2SiR
*2−または−GeR
*2−を表す。
R
*は、複数存在する場合にはそれぞれ独立に、水素原子;または、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基およびハロゲン化アリール基からなる群から選択される少なくとも1種の基を表し、該基は原子数2〜20までの原子を含み、Z
*が有する2つのR
*(R
*が水素原子でない場合)は、任意に環を形成してもよく、Z
*が有するR
*とYが有するR
*とが、任意に環を形成してもよい。
【0076】
Xは、環状の非局在化したπ−結合性リガンド基であるリガンドの類を除いた60までの原子を有する、一価のアニオン性リガンド基を表す。
X'は、20までの原子を有する中性の連結性基を表す。
【0077】
X"は、60までの原子を有する二価のアニオン性リガンド基を表す。
pは、0、1または2を、qは、0または1を、rは、0または1を表す。
ただし、pが2である場合、qおよびrは0であり、Mは+4の酸化状態であり(または、Yが−NR
*2または−PR
*2を表す場合、Mは+3の酸化状態であり)、Xは、ハライド基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ジ(ヒドロカルビル)アミド基、ジ(ヒドロカルビル)ホスフィド基、ヒドロカルビルスルフィド基ならびにシリル基、これらの基がハロゲン置換された誘導体、これらの基がジ(ヒドロカルビル)アミノ置換された誘導体、これらの基がヒドロカルビルオキシ置換された誘導体、およびこれらの基がジ(ヒドロカルビル)ホスフィノ置換された誘導体から選択されるアニオン性リガンドを表し、かつ30個までの水素原子以外の原子を有する。
【0078】
ただし、rが1である場合、pおよびqは0を表し、Mは+4の酸化状態であり、X"は、ヒドロカルバジル基、オキシヒドロカルビル基およびヒドロカルビレンジオキシ基よりなる群から選択されるジアニオン性リガンドを表し、かつ30個までの水素原子以外の原子を有する。
【0079】
ただし、pが1である場合、qおよびrは0を表し、Mは+3の酸化状態であり、Xは、アリル基、2−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル基および2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジル基よりなる群から選択される安定化用アニオン性リガンド基を表す。
【0080】
ただし、pおよびrが0である場合、qは1を表し、Mは+2の酸化状態であり、X'は、1以上のヒドロカルビル基で任意に置換された、中性の共役ジエンまたは中性の非共役ジエンを表し、該X'は40までの炭素原子を有し、Mとπ−錯体を形成する。)
【0081】
上記一般式(i)において、下記(1)〜(4)のいずれかの態様が好ましい。
(1)pが2、qおよびrが0を表し、Mは+4の酸化状態であり、Xは、それぞれ独立に、メチル、ベンジルまたはハライドを表す。
(2)qおよびqが0、rが1を表し、Mは+4の酸化状態であり、X"は、Mとメタロシクロペンテン環を形成する1,4−ブタジエニル基を表す。
0087
(3)pが1、qおよびrは0を表し、Mは+3の酸化状態であり、Xは2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジルを表す。
(4)pおよびrが0、qは1を表し、Mは+2の酸化状態であり、X'は、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンまたは1,3−ペンタジエンを表す。
【0082】
上記(1)〜(4)のいずれかの態様において、さらにR"が水素原子またはメチル基を表すことがより好ましく、水素原子を表すことが特に好ましい。
【0083】
【化6】
上記式(ii)は、(t−ブチルアミド)ジメチル(η
5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)2,4−ヘキサジエンである。
【0084】
【化7】
上記式(iii)は、(t−ブチルアミド)−ジメチル(η
5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)1,3−ペンタジエン(別名:[N−(1,1−ジメチルエチル)−1,1−ジメチル−1−[(1,2,3,3A,8A−η)−1,5,6,7−テトラヒドロ−2−メチル−S−インダセン−1−yl]シランアミネート(2−)−κN][(1,2,3,4−η)−1,3−ペンタジエン]−チタニウム)である。
【0085】
【化8】
上記式(iv)は、(t−ブチルアミド)−ジメチル(η
5−2,3−ジメチルインデニル)シランチタニウム(II)1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンである。
【0086】
【化9】
上記式(v)は、(t−ブチル−アミド)−ジメチル(η
5−2,3−ジメチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(IV)ジメチルである。
【0087】
【化10】
上記式(vi)は、(t−ブチルアミド)−ジメチル(η
5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シラン−チタニウム(IV)ジメチルである。
【0088】
上記式(iii)で表される構造を有するメタロセン系触媒を用いると、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]を得るための重合反応において、非共役ポリエン(C)および(D)の共重合性に特に優れる。このため式(iii)で表される構造を有するメタロセン系触媒を用いて重合されたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]は、例えば5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)の有する二重結合を重合体中に効率よく取り込み、長鎖分岐を高い割合で導入することができる。
【0089】
また、得られるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]の分子量分布および組成分布が狭く、極めて均一な分子構造を有するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]を調製することができるため、長鎖分岐生成に伴い懸念される、ゴム成形体表面のゲル状ブツの形成が顕著に抑制される。その結果、このようなエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]を含む組成物から形成されるゴム成形体は、ゲル状ブツを含まないためにその表面外観に優れ、また形状保持性に優れるため生産安定性も良好である。
【0090】
上記式(i)〜(vi)で表される構造を有するメタロセン系触媒は、周知の合成方法を用いて調製することができる。例えば、国際公開第98/49212号パンフレットに開示されている。なお、必要に応じて、還元剤を用いて、より低い酸化状態の錯体(メタロセン系触媒)を製造することもできる。このような方法は、USSN8/241,523に開示されている。
【0091】
〔エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]の製造方法〕
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]を製造する方法は、上述したメタロセン系触媒、特に上記式(iii)で表される構造を有するメタロセン系触媒を用いることが好ましい。また、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]を製造する方法は、下記重合反応液を得る工程を有することが好ましい。
【0092】
重合反応液を得る工程とは、脂肪族炭化水素を重合溶媒として用いて、上述したメタロセン系触媒、好ましくは上記式(iii)で表される構造を有するメタロセン系触媒の存在下に、エチレン(A)、上記α−オレフィン(B)、上記非共役ポリエン(C)および上記非共役ポリエン(D)を共重合し、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]の濃度が8〜18重量%、好ましくは8.5〜18.0重量%の重合反応液を得る工程である。
【0093】
なお、重合溶媒に対するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]の濃度を上記範囲内にすることにより、得られるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]が上記要件(4)を満たすことができる。また、重合溶媒に対するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]の濃度が18重量%を超える場合、重合溶液の粘度が高すぎるため、溶液が均一に攪拌せず、重合反応が困難な場合がある。
【0094】
重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどが挙げられ、これらのうち、得られるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]との分離、精製の観点から、ヘキサンが好ましい。
【0095】
このような製造方法として、上記触媒を主触媒とし、共触媒としてホウ素系化合物および/またはトリアルキル化合物等の有機アルミニウム化合物を用い、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素を溶媒とし、攪拌機付き反応器による連続法またはバッチ法が挙げられる。
【0096】
ホウ素系化合物としては、例えば、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(sec−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムn−ブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムベンジルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(t−ブチルジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(トリイソプロピルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムペンタフルオロフェノキシトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、ジ−(i−プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(t−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のアルキルアンモニウム塩;
トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(o−トリル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の三置換されたホスホニウム塩;
ジフェニルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ−(o−トリル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(2,6−ジメチルフェニル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の二置換されたオキソニウム塩;
ジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(o−トリル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(2,6−ジメチルフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の二置換されたスルホニウム塩;
トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう素(V)((C
6H
5)
3CB(C
6F
5)
4)などが挙げられる。
【0097】
有機アルミニウム化合物としては、トリイソブチルアルミニウムなどが挙げられる。反応温度は、高温でも触媒が失活しないので100℃まで上げることができる。
重合圧力は、0を超えて8MPa(ゲージ圧)まで、好ましくは0を超えて5MPa(ゲージ圧)までの範囲である。
【0098】
反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは10分間〜3時間である。
【0099】
さらに、共重合に際しては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
エチレン(A)と上記α−オレフィン(B)との仕込みのモル比((A)/(B))は、好ましくは25/75〜80/20、より好ましくは25/75〜70/30である。
【0100】
上記非共役ポリエン(C)と上記非共役ポリエン(D)との仕込みのモル比((C)/(D))は、好ましくは85/15〜99.5/0.5、より好ましくは90/10〜99/1である。
【0101】
エチレン(A)と該非共役ポリエン(C)との仕込みのモル比((A)/(C))は、好ましくは65/35〜99/1、より好ましくは65/35〜98/2である。
エチレン(A)と該非共役ポリエン(D)との仕込みのモル比((A)/(D))は、好ましくは70/30〜99.9/0.1、より好ましくは80/20〜99.9/0.1である。
上記触媒を用いて重合することによって、非共役ポリエン等が高い転化率で共重合され、得られる共重合体に適量の長鎖分岐を導入することができるので好ましい。
【0102】
〔結晶性ポリオレフィン樹脂[II]〕
結晶性ポリオレフィン樹脂[II]としては、特に限定はないが、通常は、炭素数2〜20のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が用いられる。なお、結晶性ポリオレフィン樹脂[II]としては、1種の重合体からなる樹脂でも2種以上の重合体からなる樹脂でもよい。
【0103】
なお、結晶性ポリオレフィン樹脂[II]が、炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体である場合には、少なくとも2種の炭素数2〜20のα−オレフィンを単量体として用いて得られる共重合体であってもよく、少なくとも1種の炭素数2〜20のα−オレフィンと、ビニル基を含有するモノマー(但しα−オレフィンを除く)(ビニルモノマーとも記す)との共重合体であってもよい。
【0104】
上記炭素数2〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1- ブテン、1- ペンテン、4- メチル-1- ペンテン、1- ヘキセン、1- ヘプテン、1- オクテン、1- ノネン、1- デセン、1- ウンデセン、1- ドデセン、1- トリデセン、1- トリデセン、1- テトラデセン、1- ペンタデセン、1- ヘキサデセン、1- ヘプタデセン、1- オクタデセン、1- ノナデセン、1- エイコセンなどが挙げられる。
【0105】
結晶性ポリオレフィン樹脂[II]の具体的な例としては、以下のような(共)重合体が挙げられる。
(1)エチレン単独重合体(製法は、低圧法、高圧法のいずれでも良い)
(2)エチレン由来の構成単位と、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび/または酢酸ビニル、エチルアクリレートなどのビニルモノマー由来の構成単位10モル%以下とを有するエチレン系ランダム共重合体
(3)プロピレン単独重合体
(4)プロピレン由来の構成単位と、他の炭素数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位10モル%以下とを有するプロピレン系ランダムランダム共重合体
(5)プロピレン由来の構成単位と、他の炭素数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位30モル%以下とを有するプロピレン系ブロック共重合体
(6)1-ブテン単独重合体
(7)1-ブテン由来の構成単位と、他の炭素数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位10モル%以下とを有するブテン系ランダム共重合体
(8)4-メチル-1-ペンテン単独重合体
(9)4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と、他の炭素数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位20モル%以下とを有する4-メチル-1-ペンテン系ランダム共重合体
【0106】
結晶性ポリオレフィン樹脂[II]としては、プロピレン系重合体を用いることが好ましく、(3)プロピレン単独重合体、(4)プロピレン由来の構成単位と、他の炭素数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位10モル%以下とを有するプロピレン系ランダムランダム共重合体、(5)プロピレン由来の構成単位と、他の炭素数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位30モル%以下とを有するプロピレン系ブロック共重合体から選ばれる少なくとも一種のプロピレン系重合体を用いることがより好ましい。
【0107】
結晶性ポリオレフィン樹脂[II]としては、230℃荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR:ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)が通常は0.1〜100g/10分であり、好ましくは0.3〜60g/10分の範囲内である。
【0108】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]および結晶性ポリオレフィン樹脂[II]の合計100重量部あたり、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]を90〜40重量部、結晶性ポリオレフィン樹脂[II]を10〜60重量部含有し、好ましくはエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]を90〜60重量部、結晶性ポリオレフィン樹脂[II]を10〜40重量部含有する。
【0109】
〔熱可塑性エラストマー組成物の製造方法〕
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]と結晶性ポリオレフィン樹脂[II]とから得られる。具体的には、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]40〜90重量部と、結晶性ポリオレフィン樹脂[II]10〜60重量部( [I]および[II]の合計量を100重量部とする)とを含有するゴム組成物を動的架橋することにより得られる。
【0110】
本発明において、動的架橋とは、ゴム組成物を溶融状態で混練することにより、少なくともエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]が有する炭素・炭素二重結合の一部を架橋反応させることを意味する。
【0111】
(ゴム組成物)
前記ゴム組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]40〜90重量部と、結晶性ポリオレフィン樹脂[II]10〜60重量部( [I]および[II]の合計量を100重量部とする)とを含有する。
【0112】
ゴム組成物としては、上記[I]および[II]に加えて、目的に応じて他の成分を含有していてもよい。
他の成分としては、例えば、軟化剤、無機充填剤、補強剤、老化防止剤(安定剤)、加工助剤、活性剤、吸湿剤などの種々の添加剤が挙げられる。
【0113】
また、ゴム組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]以外のゴムを配合することもできる。ゴム組成物におけるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30〜90重量%である。
【0114】
ゴム組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]と、結晶性ポリオレフィン樹脂[II]と、必要に応じて含有されるその他の成分を、例えば、ミキサー、ニーダー、ロールなど従来知られる混練機を用いて所望の温度で混練することにより調製することができる。エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]は、混練性に優れているので、このゴム組成物の調製を良好に行うことができる。
前記添加剤の例示を以下に示す。
【0115】
(軟化剤)
軟化剤は、その用途により適宜選択でき、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。軟化剤の具体例としては、プロセスオイル(例えば、「ダイアナプロセスオイル PS−430」(商品名;出光興産(株)製)など)、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸またはその塩;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)などが挙げられる。これらのうち、石油系軟化剤が好ましく、特にプロセスオイルが好ましい。
【0116】
ゴム組成物が、軟化剤を含有する場合には、軟化剤の配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]および結晶性ポリオレフィン樹脂[II]の合計100重量部に対して、通常は2〜100重量部、好ましくは10〜100重量部である。
【0117】
(無機充填剤)
無機充填剤は、その用途により適宜選択でき、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。無機充填剤の具体例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが挙げられる。これらのうち、重質炭酸カルシウムが好ましい。重質炭酸カルシウムとして、市販されている「ホワイトンSB」(商品名;白石カルシウム株式会社)等を用いることができる。
【0118】
ゴム組成物が、無機充填剤を含有する場合には、無機充填剤の配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]および結晶性ポリオレフィン樹脂[II]の合計100重量部に対して、通常は2〜50重量部、好ましくは5〜50重量部である。配合量が上記範囲内であると、熱可塑性エラストマー組成物の混練加工性、熱可塑性エラストマー組成物から得られるゴム成形体の機械的性質(例えば、引張強度、ゴム弾性など)に優れる。
【0119】
(補強剤)
補強剤は、その用途により適宜選択でき、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。補強剤の具体例としては、市販されている「旭#55G」および「旭#50HG」(商品名;旭カーボン(株)製)、「シースト(商品名)」シリーズ:V、SO、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラック(東海カーボン(株)製)、これらカーボンブラックをシランカップリング剤等で表面処理したのもの、シリカ、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸などが挙げられる。これらのうち、「旭#55G」、「旭#50HG」、「シーストV」、「シーストSO」等のカーボンブラックが好ましい。
【0120】
なお、ゴム組成物が補強剤を含有すると、熱可塑性エラストマー組成物の引張強度、引裂強度、耐摩耗性などの機械的性質が向上することがある。
ゴム組成物が、補強剤を含有する場合には、補強剤の配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]および結晶性ポリオレフィン樹脂[II]の合計100重量部に対して、通常は30〜200重量部、好ましくは50〜180重量部、さらに好ましくは70〜160重量部である。配合量が上記範囲内であると、熱可塑性エラストマー組成物の混練加工性、得られるゴム成形体の機械的性質(例えば、強度、柔軟性など)および圧縮永久歪みに優れる。
【0121】
(老化防止剤(安定剤))
ゴム組成物に、老化防止剤(安定剤)を配合することにより、熱可塑性エラストマー組成物および該組成物から形成されるゴム成形体の寿命を長くすることが可能である。このような老化防止剤としては、従来公知の老化防止剤、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤などを用いることができる。
【0122】
さらに詳細には、老化防止剤として、フェニルブチルアミン、N,N−ジ−2−ナフチル−pフェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤;ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2−メルカプトベンゾイルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤などが挙げられる。
【0123】
これらの老化防止剤は、1種単独であるいは2種以上の組み合わせで用いることができ、ゴム組成物が、老化防止剤を含有する場合には、老化防止剤の配合量は、ゴム成分(ゴム組成物に含まれるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]および該ゴム以外のゴム)100重量部に対して、通常は0.3〜10重量部、好ましくは0.5〜7.0重量部、より好ましくは0.7〜5.0重量部である。老化防止剤の配合量が上記範囲内であると、得られるゴム組成物の表面のブルームがなく、さらに加硫阻害が発生しないことから好適である。
【0124】
(加工助剤)
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く用いることができる。
【0125】
加工助剤の具体例としては、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、エステル類などが挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0126】
ゴム組成物が、加工助剤を含有する場合には、加工助剤の配合量は、ゴム成分(ゴム組成物に含まれるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]および該ゴム以外のゴム)100重量部に対して、通常は10重量部以下、好ましくは8.0重量部以下、より好ましくは5.0重量部以下の量である。加工助剤の配合量が上記範囲内であると、得られるゴム組成物の表面のブルームがなく、さらに加硫阻害が発生しないことから好適である。
【0127】
(活性剤)
活性剤は、その用途により適宜選択でき、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。活性剤の具体例としては、ジ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン、「アクチングB」(商品名;吉冨製薬(株)製)、「アクチングSL」(商品名;吉冨製薬(株)製)等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリレート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物(具体的には、「Struktol activator 73」、「Struktol IB 531」、「Struktol FA541」(商品名;Schill & Seilacher社製)など)等の活性剤;「ZEONET ZP」(商品名;日本ゼオン(株)製)等の過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物(具体的には、「アーカード2HTF」(商品名;ライオン・アクゾ(株)製)など)などが挙げられる。これらのうち、「アーカード2HTF」が好ましい。
【0128】
ゴム組成物が、活性剤を含有する場合には、活性剤の配合量は、ゴム成分(ゴム組成物に含まれるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]および該ゴム以外のゴム)100重量部に対して、通常は0.2〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部、より好ましくは0.5〜4重量部である。
【0129】
(吸湿剤)
吸湿剤は、その用途により適宜選択でき、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。吸湿剤の具体例としては、酸化カルシウム、シリカゲル、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、ホワイトカーボンなどが挙げられる。これらのうち、酸化カルシウムが好ましい。
【0130】
ゴム組成物が、吸湿剤を含有する場合には、吸湿剤の配合量は、ゴム成分(ゴム組成物に含まれるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]および該ゴム以外のゴム)100重量部に対して、通常は0.5〜15重量部、好ましくは1.0〜12重量部、より好ましくは1.0〜10重量部である。
【0131】
その他、通常ゴムに使用される添加剤は、本発明の目的を損なわない範囲内で任意に配合することができる。
ゴム組成物としては、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]および結晶性ポリオレフィン樹脂[II]の合計100重量部に対して、2〜100重量部の軟化剤および2〜50重量部の無機充填剤から選択される少なくとも1種の添加剤を含有することが、得られる熱可塑性エラストマー組成物の成形加工性の観点から好ましい。
【0132】
また、ゴム組成物は、得られる熱可塑性エラストマー組成物のゴム弾性の観点から架橋剤を含有することが好ましい。ゴム組成物が架橋剤を含有する場合には、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]および結晶性ポリオレフィン樹脂[II]の合計100重量部に対して、架橋剤を0.1〜30重量部の範囲内で含有することが好ましく、0.2〜20重量部の範囲内で含有することがより好ましい。
【0133】
前記架橋剤としては、有機過酸化物、フェノール樹脂、硫黄系化合物、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノンまたはその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート等のゴムを架橋する際に一般に使用される架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤の中でも有機過酸化物やフェノール樹脂が特に好ましい。
【0134】
架橋剤が有機過酸化物である場合には、その具体例としては、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0135】
これらのうち、反応性、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート等の1分子内に2つのペルオキシド結合(−O−O−)を有する2官能性の有機過酸化物が好ましく、中でも、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンが最も好ましい。
【0136】
これらの有機過酸化物は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
架橋剤として、有機過酸化物を用いる場合には、ゴム組成物は、下記架橋助剤を含有することが好ましい。
【0137】
架橋剤として、有機過酸化物を用いる場合に好ましい架橋助剤としては、例えば、イオウ、p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;その他マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。架橋助剤の配合量は、用いる有機過酸化物1モルに対して、通常0.5〜10モル、好ましくは0.5〜7モル、より好ましくは1〜5モルである。
【0138】
架橋剤がフェノール樹脂である場合には、その具体例としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、メチロール化アルキルフェノール樹脂、臭素化メチロール化アルキルフェノール樹脂等が挙げられる。これらのフェノール樹脂としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
【0139】
これらのフェノール樹脂は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
上記フェノール樹脂は、通常の方法で製造することができ、例えば、アルキル置換フェノールまたは非置換フェノールをアルカリ媒体中でアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドと縮合させることにより製造することができる。フェノール樹脂の別の製造方法としては、二官能性フェノールジアルコール類を縮合させることにより製造する方法が挙げられる。また、フェノール樹脂としては、市販のフェノール樹脂を使用することもできる。
【0140】
上記フェノール樹脂の市販品としは、タッキロール201(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、タッキロール250−I(臭素化率4%の臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、タッキロール250−III(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、PR−4507(群栄化学工業社製)、Vulkaresat510E(Hoechst社製)、Vulkaresat532E(Hoechst社製)、Vulkaresen E(Hoechst社製)、Vulkaresen 105E(Hoechst社製)、Vulkaresen 130E(Hoechst社製)、Vulkaresol 315E(Hoechst社製)、Amberol ST 137X(Rohm&Haas社製)、スミライトレジンPR−22193(住友デュレズ社製)、Symphorm−C−100(Anchor Chem.社製)、Symphorm−C−1001(Anchor Chem.社製)、タマノル531(荒川化学社製)、Schenectady SP1059(Schenectady Chem.社製)、Schenectady SP1045(Schenectady Chem.社製)、CRR−0803(U.C.C社製)、Schenectady SP1055(Schenectady Chem.社製)、Schenectady SP1056(Schenectady Chem.社製)、CRM−0803(昭和ユニオン合成社製)、Vulkadur A(Bayer社製)等が挙げられ、その中でもタッキロール201(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂)、タッキロール250−I(臭素化率4%の臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂)が好ましい。
(動的架橋)
動的架橋を好適に行うため、ゴム組成物には、前述の架橋剤が含有されることが好ましい。
【0141】
ゴム組成物を動的架橋する際には、非開放型の装置、開放型の装置のいずれを用いてもよいが、非開放型の装置を用いることが好ましい。
また動的架橋は、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。動的架橋を行う際の温度は、通常150〜270℃、好ましくは170〜250℃である。混練時間は、通常1〜20分間、好ましくは1〜10分間である。また、加えられる剪断力は、剪断速度で10〜50,000sec
-1、好ましくは100〜20,000sec
-1の範囲である。
【0142】
混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(例えばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等を用いることができるが、非開放型の装置が好ましく、二軸押出機が特に好ましい。
【0143】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、引張強度やゴム弾性等、特に低温ゴム弾性に優れており、成形性にも優れているため、様々な用途に用いることができる。本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が引張強度やゴム弾性等に優れており、成形性にも優れる理由として、本発明者等は以下のように推定した。
【0144】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ゴム組成物に含まれる結晶性ポリオレフィン樹脂[II]に由来する海相と、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]とに由来する島相とを有していると考えられる。該島相は、ゴム組成物から熱可塑性エラストマー組成物を得る際に動的架橋を行うため、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[I]に由来する架橋構造を有する共重合体ゴムから形成されると考えられる。このため、該島相は物理的強度に優れ、熱可塑性エラストマー組成物が引張強度やゴム弾性等に優れると本発明者等は推定した。また、海相は結晶性ポリオレフィン樹脂[II]に由来すると考えられ、該相は架橋構造が形成されていないと考えられる。このため、160〜280℃程度の温度で海相は流動性を発現し、熱可塑性エラストマー組成物が成形性に優れると本発明者等は推定した。
【0145】
<熱可塑性エラストマー成形体>
本発明の熱可塑性エラストマー成形体は、前記熱可塑性エラストマー組成物から形成される。前記熱可塑性エラストマー組成物が、引張強度やゴム弾性等に優れており、成形性にも優れているため、様々な成形体を得ることができる。
【0146】
なお、本発明の熱可塑性エラストマー成形体としては、前記熱可塑性エラストマー組成物のみから形成される成形体でもよく、前記熱可塑性エラストマー組成物と添加剤との混合物から形成される成形体であってもよい。
【0147】
前記添加剤としては、特に限定されず、軟化剤、無機充填剤、補強剤、老化防止剤(安定剤)、加工助剤、活性剤、吸湿剤、発泡剤、発泡助剤などの種々の添加剤を用いることができる。
【0148】
例えば、本発明の熱可塑性エラストマー成形体としては、自動車用のグラスランチャンネルや窓枠材などの自動車外装材、表皮材などの自動車内装材、自動車用シール部品、建築材料、ガスケット、工業用シール材、スポーツ用品、工業用ベルト等が挙げられる。
【0149】
また、本発明の熱可塑性エラストマー成形体は、前記熱可塑性エラストマー組成物を発泡成形して成る熱可塑性エラストマー発砲体であってもよく、そのような発砲体としては自動車用ウェザーストリップスポンジ、内装表皮用スポンジ材等を挙げることができる。本発明の熱可塑性エラストマー成形体が発泡体である場合には、少なくとも発泡剤を添加剤として用い、前記熱可塑性エラストマー組成物と発泡剤を含む添加剤との混合物を発泡することにより、発泡体が得られる。なお、発泡剤と共に発泡助剤を添加剤として用いた、前記熱可塑性エラストマー組成物と添加剤との混合物は、特に好適に発泡を行うことができるため好ましい。
【実施例】
【0150】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例および比較例で用いたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(EPDM−1)、(EPDM−2)および(EPDM−3)の物性値を表1に示す。各物性値は、以下に示す方法に従い測定した。
【0151】
〔エチレン(A)に由来する構造単位の含有量、エチレン(A)に由来する構造単位とα−オレフィン(B)に由来する構造単位との比率、非共役ポリエン(C)に由来する構造単位の含有量および、非共役ポリエン(D)に由来する構造単位の含有量〕
エチレン(A)に由来する構造単位の含有量、エチレン(A)に由来する構造単位とα−オレフィン(B)に由来する構造単位との比率[(A)/(B)]、非共役ポリエン(C)に由来する構造単位の含有量および、非共役ポリエン(D)に由来する構造単位の含有量は、
13C−NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。
【0152】
以下、エチレン、プロピレン、ENBおよびVNBに由来する構造単位を含むエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムについての、
13C−NMRスペクトルメーターによる共重合体ゴムの組成解析(共重合体ゴムに含まれる各構造単位のモル量)に関して、説明する。
【0153】
エチレン、プロピレンおよびENB共重合体の
13C−NMRスペクトルメーターによるに構造(組成)解析は、C. J. Carman, R. A. Harrington, and C. E. Wilkes, Macromolecules, 10, p 536-544(1977)、Masahiro Kakugo, Yukio Naito, Kooji Mizunuma, and Tatsuya, Miyatake, Macromolecules, 15, p 1150-1152(1982)およびG. Van der Velden, Macromolecules, 16, p 85-89(1983)を、VNB系共重合体の構造解析は、Harri Lasarov, Tuula T. Pakkanen, Macromol. Rapid Commun., 20, p 356-360(1999)およびHarri Lasarov*, Tuula T. Pakkanen, Macromol.Rapid Commun., 22, p 434-438(2001)に基づいて行った。
【0154】
まず、
13C−NMRスペクトロメーターにより、1)エチレン、2)プロピレン、3)ENBおよび4)VNBに由来するそれぞれのピークの積分値を求めた。
1)エチレン:[エチレン連鎖由来ピークの積分値+[エチレン−プロピレン連鎖由来ピークの積分値]/2]、
2)プロピレン:[プロピレン連鎖由来ピークの積分値+[エチレン−プロピレン連鎖由来ピークの積分値]/2]、
3)ENB:ENB−3位に由来するピークの積分値、および
4)VNB:VNB−7位に由来するピークの積分値。
【0155】
ENBに由来する構造および、VNBに由来する構造の概略を以下の構造式で示す。なお、VNBに由来する構造は、下記構造式では末端にビニル基を有するが、該ビニル基の少なくとも一部は、重合しており、長鎖分岐を形成している。
【0156】
【化11】
【0157】
【化12】
得られた積分値比よりそれぞれの含有量を算出した。
【0158】
〔ヨウ素価〕
ヨウ素価は、JIS K0070に準じて測定した。
【0159】
〔ムーニー粘度〕
ムーニー粘度(ML
1+4(100℃)、ML
1+4(125℃))は、JIS K6300に準拠して、100℃および125℃の条件下、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて測定した。
【0160】
〔極限粘度[η]〕
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムの極限粘度[η](dL/g)は、ASTM D 1601に従って135℃デカリン中で測定した。
【0161】
〔分子量分布(Mw/Mn)〕
分子量分布Mw/Mnは、高温高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した。Waters(株)社製alliance2000型を用い、カラムとして東ソー(株)社製TSKgel GMH6−HTとTSKgel GMH6−HTLをそれぞれ2本ずつ連結し、140℃のオルトジクロロベンゼンを移動相とし、流速1ml/minで測定し、キャリブレーションは標準ポリスチレンを用いて汎用較正法で実施した。
【0162】
〔B値〕
B値は、エチレンに由来する構造単位および炭素原子数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位、ならびにエチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィンのダイアッド連鎖分率より、下記式(i)で与えられる。
【0163】
【数1】
式(i)中、[E]および[X]は、エチレンに由来する構造単位および炭素原子数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位のモル分率をそれぞれ表し、[EX]は、エチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィンのダイアッド連鎖分率を表す。B値およびダイアッド分率については、Seger, M. R.および Maciel, G. E.のAnal. Chem. 2004, 76, 5734-5747に基づき測定した。
【0164】
[製造例1](EPDM−1の製造)
攪拌翼を備えた容積300Lの重合器を用いて連続的に、成分[A]としてエチレン、成分[B]としてプロピレン、成分[C]として5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および成分[D]として5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)を用いた四元共重合反応を95℃にて行った。
【0165】
重合溶媒としてヘキサン(最終濃度:84.9重量%)を用いて、エチレン濃度を3.6重量%、プロピレン濃度を9.6重量%、ENB濃度を1.9重量%およびVNB濃度を0.036重量%として原料を連続供給した。
【0166】
重合圧力を1.6MPaに保ちながら、主触媒として上記式(vi)で表される構造を有するメタロセン系触媒である(t−ブチルアミド)−ジメチル(η
5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)1,3−ペンタジエンを0.00045mmol/Lとなるよう連続的に供給した。また、共触媒として(C
6H
5)
3CB(C
6F
5)
4を0.0023mmol/L、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウム(TIBA)を0.23mmol/Lとなるように、それぞれ連続的に供給した。
【0167】
このようにして、エチレン、プロピレン、ENBおよびVNBからなる共重合体ゴムが、16.8重量%の溶液状態で得られた。重合器下部から抜き出した重合反応液中に少量のメタノールを添加して重合反応を停止させ、スチームストリッピング処理にて共重合体ゴム(EPDM−1)を溶媒から分離した後、80℃で一昼夜減圧乾燥した。
【0168】
【表1】
【0169】
[実施例1]
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(EPDM−1)100重量部と、ホモポリプロピレン(プライムポリマー製 プライムポリプロ(商標)E−200GP)40重量部と、パラフィンオイル(出光社製 ダイアナプロセス(商標)PW−100)20重量部とをバンバリーミキサーを用いて、12分間混練し、得られた混合物をロールに通してシート状にし、シートカッターで裁断して、角ペレットを製造した。
【0170】
次いで、この角ペレット100重量部と、架橋剤として有機過酸化物〔日本油脂製、商品名 パーヘキサ25B〕0.7重量部と、架橋助剤としてジビニルベンゼン(新日鉄化学製、商品名 DVB810)0.47重量部とをヘンシェルミキサーで撹拌混合後、得られた混合物を、L/D=30、スクリュー径50mmの二軸押出機を用いて、窒素雰囲気中、220℃で押出して熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。
得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性を下記測定方法にしたがって測定した。その結果を表2に示す。
【0171】
[比較例1]
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(EPDM−1)の替わりにエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(EPDM−2)を使用したこと以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性を下記測定方法にしたがって測定した。その結果を表2に示す。
【0172】
[比較例2]
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(EPDM−1)の替わりにエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(EPDM−3)を使用したこと以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性を下記測定方法にしたがって測定した。その結果を表2に示す。
【0173】
〔硬度〕
50tプレス機を用いて、熱可塑性エラストマー組成物のペレットから調製した20cm×20cm×2mmのシートサンプルを被験試料とし、JIS6253に準拠し、デュロメーターA硬度計により、JIS A硬度を測定した。
【0174】
〔圧縮永久歪み〔CS〕〕
熱可塑性エラストマー組成物のペレットからブロック状試験片を調製し、圧縮永久歪み測定金型に取り付けた。試験片の高さが荷重をかける前の高さの1/4になるよう圧縮し、金型ごと−30℃、0℃、23℃、70℃または100℃のギヤーオーブン中にセットして22時間熱処理した。
次いで、試験片を金型から取出し、30分間放置後、試験片の高さを測定し、以下の計算式から各熱処理温度における圧縮永久歪み〔CS〕(%)を算出した。
【0175】
【数2】
t
0:試験片の試験前の高さ。
t
1:試験片を熱処理し30分間放冷した後の高さ。
t
2:試験片の測定金型に取り付けた状態での高さ。
【0176】
〔永久伸び〔PS〕〕
熱可塑性エラストマー組成物のペレットからブロック状試験片を調製し、この試験片を、−30℃または23℃にて、JIS3号ダンベルを用い、伸張率100%で10分間保持した。荷重を除去した10分後の試験片の長さを測定し、以下の計算式から各熱処理温度における永久伸び〔PS〕(%)を算出した。
【0177】
【数3】
t
0:試験片の試験前の長さ。
t
1:試験片から荷重を除去した10分後の試験片の長さ。
t
2:試験片に荷重を加え、保持したときの試験片の長さ。
【0178】
〔引張特性〕
50tプレス機を用いて、熱可塑性エラストマー組成物のペレットから調製した20cm×20cm×2mmのシートサンプルを被験試料とし、JIS6251に従って、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行い、引張りモジュラスM100%(MPa)、破断時の強度TB(MPa)およびEB(%)を測定した。
【0179】
〔架橋度〕
(膨潤率)
熱可塑性エラストマー組成物のペレットから1mmの厚みで、30mm角のテストピースサンプルを調製した。このサンプルを80℃に加温した流動パラフィン(軽質)(ナカライテスク株式会社製)に24時間浸漬した。浸漬前後の膨潤率を下記式から測定した。
【0180】
【数4】
W1:試験前のサンプルの重量
W2:試験後のサンプルの重量
【0181】
(有効網目鎖密度)
濃有効網目鎖密度を測定する手段として有効網目鎖濃度を求めるFlory-Rehnerの式を用いた。Flory-Rehnerの式は、
【0182】
【数5】
で表わされる。ここで、
v(mol/cc):有効網目鎖濃度
u
R:膨潤した加硫ゴム中における膨潤した純ゴムの容積(純ゴム容積+吸収した溶剤の容積)に対する純ゴムの容積分率。
μ:ゴム−溶剤(トルエン)間の相互作用定数
V
0:溶剤の分子容(トルエン使用:108.15cc)
である。
【0183】
ここでゴム−溶剤(トルエン)間の相互作用定数μは0.49とした。前記1mm厚みのテストピースサンプルの重量を測定した後、37℃に加熱したトルエン中にテストピースサンプルを浸漬した。72時間浸漬後、平衡膨潤に達した時点でテストピースサンプルを取り出し、平衡膨潤時の重量を測定した。次に付着したトルエンを乾熱除去した後のテストピースサンプルの重量を測定し、Flory-Rehnerの式に、膨潤前後の重量から求めたυ
RとV
0を代入して有効網目鎖濃度を求めた。
1cc中の有効網目鎖密度(個/cc)はアボガドロ数(AN)を6.02 × 10
23 としてv × A N にて算出した。
【0184】
〔押出成型性〕
熱可塑性エラストマー組成物のペレットから厚さ2.0mm、幅50mmのベルト状サンプルを調製した。(株)日本製鋼所製50mmφ押出機にベルト状ダイスを設置し、この押出機にサンプルを供給し、C1/C2/C3/C4/C5/H/D = 160 / 170 / 180 / 190 / 200/ 200 / 200 ℃の温度条件にて押出成形した。得られた成型品の表面肌の状態を以下の基準により評価した。
良好:目視評価で成形品表面肌に目立った凹凸及び色むらが認められない
不良:目視評価で成形品表面肌に目立った凹凸もしくは色むらが認められる
【0185】
【表2】