特許第6071774号(P6071774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071774
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】保持治具
(51)【国際特許分類】
   H01G 13/00 20130101AFI20170123BHJP
【FI】
   H01G13/00 351A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-126162(P2013-126162)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-2268(P2015-2268A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2015年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
(72)【発明者】
【氏名】保坂 康介
(72)【発明者】
【氏名】林 清志
【審査官】 多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−322243(JP,A)
【文献】 特開2007−242814(JP,A)
【文献】 特開2010−186982(JP,A)
【文献】 特開平09−022838(JP,A)
【文献】 特開2010−278043(JP,A)
【文献】 特開2005−150418(JP,A)
【文献】 特開昭63−076412(JP,A)
【文献】 特開2003−203830(JP,A)
【文献】 特公平03−076778(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/00−4/015
H01G 4/02−4/224
H01G 4/232
H01G 4/255−4/40
H01G 13/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型部品を保持する複数の保持孔が貫通形成された弾性部材を備えた保持治具であって、前記弾性部材がシリコーンゴムで形成されており、かつ下記表面特性(I)及び(II)を満たすことを特徴とする保持治具。
(I)十点平均粗さRzが7〜20μm
(II)局部山頂の平均間隔Sが7.6〜8.5μm
【請求項2】
前記弾性部材が、表面未処理である請求項1に記載の保持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持治具に関し、さらに詳しくは、ほとんどの小型部品を残存させることなく取り外すことのできる保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、電話機、ゲーム機、自動車電装機器等の電子機器に用いられる集積回路等には、例えば、積層セラミックチップコンデンサ(単に、チップコンデンサ又はコンデンサチップと称することがある。)等の電子部品が搭載されている。このような電子部品を製造する際等には、通常、電子部品を製造可能な電子部品用部材等を保持する保持孔が形成された保持治具が用いられる。
【0003】
このような保持治具として、例えば、支持孔が形成された補強部材と電子部品を保持する保持孔が形成された弾性部材とを備えてなる保持治具が挙げられる。
例えば、特許文献1には、「(a)多数の並列状貫通通路を有するプレート体を備えること。(b)前記通路は弾性壁を有して電気用小型パーツが該通路内に位置可能となっており、かつ該通路の寸法は対応するパーツの寸法よりも小さく、パーツが前記通路内位置で弾発的に把持されること。以上(a)および(b)の構成から成るを特徴とする多数の電気用小型パーツ端部のコーティング用装置」が記載されている(請求項4等)。
また、特許文献2及び3にも、貫通孔又は通孔で電子部品チップ又は小型電子部品を保持するキャリアプレートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭62−20685号公報
【特許文献2】特開2005−19834号公報
【特許文献3】特開2004−322243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような保持治具を用いて製造された電子部品は、所望により製造途中で、また最終的に、保持治具から取り外される。このとき、保持孔から抜脱した電子部品が弾性部材の表面に粘着しないように、弾性部材の表面に粘着性(タック性ともいう)を小型部品が粘着しない程度まで低減させる表面処理が施されることがある。
【0006】
上述の表面処理としては、ブラスト処理、コーティング層等の非粘着層の形成、紫外線照射等が挙げられる。しかし、弾性部材の表面を均一に表面処理しないと、処理条件の変動、弾性部材の処理状態及び劣化度等が変動して、保持孔による電子部品の保持状態の均一性も損なわれることがある。しかも、近年、小型部品のさらなる小型化が進行しており、それに伴って、保持治具の要求特性である、寸法精度及び電子部品の保持状態の均一性も次第に高くなってきている。
【0007】
本発明は、表面未処理の弾性部材であってもほとんどの小型部品を残存させることなく取り外すことのできる保持治具を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、表面未処理の弾性部材の表面状態を鋭意検討したところ、弾性部材の表面特性のうち電子部品の粘着に関与する、表面特性の特定の組み合わせを見出し、さらに特定の組合せにおける表面特性それぞれを特定の範囲内に調整すると、小型部品を均一に保持しうる表面未処理の弾性部材であっても、表面に小型部品が粘着しにくくなることを見出した。
これらの知見に基づき本発明者等はさらに研究を重ね、本発明をなすに至った。
【0009】
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
(1)小型部品を保持する複数の保持孔が貫通形成された弾性部材を備えた保持治具であって、前記弾性部材がシリコーンゴムで形成されており、かつ下記表面特性(I)及び(II)を満たすことを特徴とする保持治具。
(I)十点平均粗さRzが7〜20μm
(II)局部山頂の平均間隔Sが7.6〜8.5μm
(2)前記弾性部材が、表面未処理である(1)に記載の保持治具。
【0010】
本発明において、「表面未処理」とは、弾性部材の表面に、粘着性を低減させる表面処理を施さないことを意味する。したがって、表面未処理の弾性部材は粘着性を低減させる表面処理が施されていない表面を有している。ここで、「表面処理」は、弾性部材の表面が有する粘着性を低減させる処理であれば特に限定されず、例えば、ブラスト処理、コーティング層等の非粘着層の形成、紫外線照射等が挙げられる。
なお、弾性部材の表面は、粘着性を低減させない表面処理であれば、施されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保持治具は、上記(I)及び(II)を満たすから、表面未処理の弾性部材であっても保持孔から抜脱した小型部品のほとんどを弾性部材に残存させることなく取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の保持治具の一例を示す上面図である。
図2図2は、図1のA−A線で切断した保持治具の一例における断面の一部を示す概略断面図である。
図3図3は、本発明の保持治具の別の一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の保持治具に保持される小型部品について説明する。小型部品としては、製造工程、搬送工程等において保持される必要性のある、小型部品を製造可能な小型部品用部材、例えば、小型器具用部材、小型機械要素用部材及び小型電子部品用部材等が挙げられる。また、小型部品の製造には小型部品自体の搬送工程等も含まれるから、小型部品は、小型部品そのもの、例えば、小型器具、小型機械要素及び小型電子部品等も含まれる。したがって、本発明において、小型部品と小型部品用部材とは明確に区別される必要はなく、「小型部品」と称しても「小型部品及び小型部品用部材」を意味することがある。
小型電子部品及び小型電子部品用部材としては、例えば、コンデンサチップ、インダクタチップ、抵抗体チップ等の完成品若しくは未完成品等、及び/又は、これらを製造可能な例えば、角柱状部材若しくは円柱状部材等が挙げられる。このような小型部品は、例えば、軸線長さが1.0〜3.2mmの寸法を有している。
【0014】
本発明の保持治具は、小型部品を保持する複数の保持孔が貫通形成された弾性部材を備えているものであれば、特に限定されず、例えば、特許文献1〜3に記載の保持治具又はキャリアプレート等が挙げられ、弾性部材を補強する補強部材を備えていてもよい。
【0015】
本発明の保持治具として、補強部材と弾性部材とを備えた保持治具の一例を説明する。
この保持治具は、図1及び図2に示されるように、支持孔11が形成された平坦部12及びこの平坦部12の周縁に鍔部13を有する補強部材5と、電子部品を保持する保持孔15が形成された弾性部材6とを備え、保持孔15それぞれが支持孔11それぞれの内部を通るように補強部材5の一部が弾性部材6に埋設されて成る。そして、この保持治具1は、弾性部材6の弾性力で保持孔15に挿入された電子部品(図示しない)を弾発的に保持する。この保持治具1は、後述する電子部品の保持用として好適であり、例えば、少なくとも二箇所に電極形成用の導電性ペーストを塗布する必要のある電子部品の保持用としてさらに好適である。
【0016】
補強部材5は、図2に示されるように、支持孔11が形成された平坦部12が少なくとも後述する弾性部材6に埋設され、弾性部材6が平坦になるように弾性部材6を補強支持する。この補強部材5は、図2に示されるように、多数の支持孔11が穿設された矩形の平坦部12と、平坦部12の4つの周縁に平坦部12の厚さ方向に突出した鍔部13とを備えている。この鍔部13は、フランジ部と称することもでき、平坦部12の強度を補強し、また保持治具1としたときの優れた取扱性を確保する。鍔部13及び平坦部12の厚さは、保持する小型部品に応じて適宜に設定される。
支持孔11は、平坦部12内のほぼ全域に、その厚さ方向に貫通するように、碁盤目状に複数形成されている。
補強部材5は、弾性部材6を平坦な形状に維持することのできる材料で形成されていればよく、このような材料として、金属及び樹脂等が挙げられる。
【0017】
弾性部材6は、図1及び図2に示されるように、多数の保持孔15が穿孔され、平坦部12を内部に埋設している。弾性部材6は、支持孔11内に進入して保持孔15を形成し、その表面は補強部材5の鍔部13と面一になっている。保持孔15は、好ましくは、図2に示されるように支持孔11と軸線Cを共有している。保持孔15は碁盤目状に複数形成されており、その内寸法が電子部品よりも僅かに小さく設定されている。これにより、保持治具1は電子部品を弾性力で保持できる。
【0018】
弾性部材6は、弾性変形し、電子部品を挿入保持することのできる材料で形成される。このような材料として、シリコーンゴムが挙げられる。シリコーンゴムは、特に限定されず、たとえば、液状シリコーンゴム組成物の硬化物が挙げられる。液状シリコーンゴム組成物の一例として、例えば「KE−1950−60A/B」(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。シリコーンゴムの中でも、高重合度の線状ポリジメチルシロキサン若しくはその共重合体を架橋してゴム弾性を付与したシリコーンゴム、又は、耐酸性のシリコーンゴムが好ましい。高重合度の線状ポリジメチルシロキサンを架橋したシリコーンゴムとなるシリコーンゴム組成物として、例えば、商品名「KE−1950−50」(信越化学工業株式会社製)等を入手することができる。
【0019】
弾性部材6は、小型部品を挿入及び/又は抜き取る際に弾性変形し、かつ、破損しないように、所定の伸び、引張強さ及び硬度を有しているのが好ましい。例えば、切断時伸び(JIS K 6249、引張速度500mm/min)は、200〜1000%であるのが好ましく、400〜900%であるのが特に好ましい。引張強さ(JIS K 6249、引張速度500mm/min)は、5〜15MPaであるのが好ましく、7〜14MPaであるのが特に好ましい。硬度(JIS K 6253、JIS A)は、20〜80であるのが好ましく、40〜60であるのが特に好ましい。JIS K 6249に規定の切断時伸び及び引張強さは、23℃、湿度50%の環境下で、3号ダンベル形状の試験片を作製して、切断時伸びはつかみ具間隔を標線距離で20mmに設定して、実施する。
【0020】
弾性部材6の表面は、下記表面特性(I)及び(II)を満たす。これら表面特性を満たす弾性部材6は、表面未処理の弾性部材であっても、その表面に小型部品がほとんど粘着しない。
(I)十点平均粗さRzが7〜20μm
(II)局部山頂の平均間隔Sが7.6〜8.5μm
【0021】
本発明において、表面特性(I)の「十点平均粗さRz」は、JIS B0601−1994に記載された「十点平均粗さRz」であって、7〜20μmである。十点平均粗さRzが7μm未満であると、また20μmを越えると、小型部品が弾性部材6の表面に張り付いて残存しやすく、小型部品を取り外せないことがある。小型部品を弾性部材6の表面に粘着させることなくより一層容易に取り外せる点で、十点平均粗さRzは9〜19μmが好ましく、15〜19μmがさらに好ましい。
【0022】
本発明において、表面特性(II)の「局部山頂の平均間隔S」は、JIS B0601−1994に記載された「局部山頂の平均間隔S」であって、7.6〜8.5μmである。局部山頂の平均間隔Sが7.6μm未満であると、また8.5μmを越えると、小型部品が弾性部材6の表面に張り付いて残存しやすく、小型部品を取り外せないことがある。なお、局部山頂の平均間隔Sが8.5μmを越えても型部品を取り外せない理由はまだ明らかではないが次のように推測している。すなわち、局部山頂の平均間隔Sが大きくなるほど小型部品との接触面積は小さくなるので、通常は、小型部品が粘着しにくくなる。ところが、十点平均粗さRzが上述の範囲内にある弾性部材6の表面において、局部山頂の平均間隔Sが8.5μmを超えると、弾性部材6の表面が小型部品の質量により変形して小型部品との接触面積が増大する。そのため、局部山頂の平均間隔Sが8.5μmを越えても小型部品を取り外せないと考えられる。小型部品を弾性部材6の表面に粘着させることなくより一層容易に取り外せる点で、局部山頂の平均間隔Sは7.9〜8.2μmが好ましく、8.0〜8.2μmがさらに好ましい。
【0023】
十点平均粗さRz及び局部山頂の平均間隔Sは、弾性部材の表面(任意の測定点3点)を、キーエンス社製の「レーザー顕微鏡」を用いて、JIS B0601−1994に記載の方法に準拠して、触針先端半径が2.5μm、基準長さ0.8μm、評価長さ0.8mm、カットオフ波長が0.8mm、カットオフ種別がガウシアン、測定速度が0.15mm/s及び負荷曲線算出方法が評価長さ法の条件で、測定したときの平均値である。
【0024】
弾性部材6における十点平均粗さRz及び局部山頂の平均間隔Sは、いずれも、後述する研磨条件によって、調整できる。
【0025】
本発明の保持治具の別の一例である保持治具2は、図3に示されるように、支持孔11及び保持孔15の配列以外は保持治具1と同様である。すなわち、保持治具2は、補強部材5と弾性部材6とを備え、弾性部材6の表面は上記表面特性(I)及び(II)を満たしている。
保持孔15は、図3に示されるように、所謂「千鳥状」に配列されている。具体的には、保持孔15は、補強部材5の短辺方向に沿って奇数行の第1保持孔15Aと偶数行の第2保持孔15Bとが短辺方向及び長辺方向に交互になるように、配列されている。さらに具体的には、保持孔15は、短辺方向及び長辺方向に沿って配列された第1保持孔15Aと、短辺方向及び長辺方向それぞれに隣接する4つの第1保持孔15Aで囲繞される領域内に配列された第2保持孔15Bとからなる。なお、支持孔11も保持孔15と同様に所謂「千鳥状」に配列されている。
【0026】
本発明に係る保持治具は、補強部材の両表面にシリコーンゴム組成物を配置して成形し、次いで、弾性部材の表面を研磨処理して、製造することができる。
補強部材の両表面に弾性部材を成形する方法は、公知の方法を特に限定されずに採用することができる。例えば、特許文献2に記載されている成形方法、特にコアピンを埋設した金型を用いる成形方法が好適である。成形条件は用いるシリコーンゴム組成物に応じて適宜に決定される。
【0027】
このようにして成形された弾性部材の表面は、通常、粘着性を有しているが、本発明においては、粘着性を低減する表面処理、例えば、紫外線照射を行わない。したがって、弾性部材は、表面処理によるシリコーンゴムの劣化を回避でき、大多数の小型部品を均一な保持状態で保持できる。
【0028】
本発明においては、弾性部材に表面処理をする代わりに、小型部品が粘着しないように、表面特性を調整する。すなわち、十点平均粗さRz及び局部山頂の平均間隔Sのいずれも上述の範囲に設定する。
表面特性の調製方法は、研磨処理が、作業性及び再現性に優れる点で、好ましい。例えば、弾性部材の研磨処理は、600〜1600rpmの回転速度で回転された円筒状のビトリファイド砥石(粒度46〜70)を切込み量が0.2〜0.8mmで弾性部材に接触させ、該砥石を一方向に速度100〜1000mm/分で移動させて、表面から深さ1mmまでを除去する研磨方法が挙げられる。
【0029】
十点平均粗さRzは、上述の条件のうち、例えば、切り込み量を大きくすると大きくなる傾向があり、回転速度を大きくすると小さくなる傾向がある。
また、局部山頂の平均間隔Sは、上述の条件のうち、例えば、切り込み量を大きくすると大きくなる傾向があり、回転速度を大きくすると小さくなる傾向がある。
したがって、弾性部材の研磨は、これら条件を考慮して、実施されるのが好ましい。
【0030】
このようにして本発明の保持治具が製造される。
【0031】
この発明に係る保持治具は、上述の保持治具に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において種々の変更が可能である。
例えば、支持孔11及び保持孔15の配列は碁盤目状又は千鳥状に限定されず、例えば、正六角形状で最密に配列されるハニカム配列、縦横に配列されるスクエア配列、同心円形状の配列等が挙げられる。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
実施例1では、図3に示される保持治具2を製造した。すなわち、厚さ8.9mmのアルミニウム板を縦180mm×横270mmに切り出し、その縦160mm×横257mmの長方形の領域を、両表面から深さ1.5mmまでの部分を切削して、厚さが5.9mmの平坦部12とその周囲に鍔部13を有する板状体を作製した。この平担部12に、1.30mmの直径を有する円形の支持孔11を、縦方向に3.9mm、横方向に2.2mmの間隔となるように縦39行及び横110列と、縦40行及び横109列を交互に千鳥配列して合計8650個、穿孔した。このようにして補強部材5を作製した。
【0033】
次いで、直径0.7mmのコアピンを支持孔11と同様の配列で植設した金型内に補強部材5を収納した後に、成形金型と補強部材5とで形成されたキャビティにシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、商品名「KE−1950−50」)を注入して、120℃で10分間加熱し、補強部材5とシリコーンゴムとを一体成形した。
【0034】
成形金型から一体成形体を取り出した後に、下記条件でシリコーンゴム硬化物を研磨して、保持治具1を製造した。
<研磨条件>
ビトリファイド砥石:粒度60、外径:300mm、回転速度:1400rpm
移動速度:800mm/分、移動方向はビトリファイド砥石の長手方向に一方向
切込み量:0.8mm
表面からの除去量:1mm
【0035】
このようにして実施例1の保持治具を製造した。
【0036】
(実施例2)
研磨条件のうち切込み量を0.6mmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の保持治具1を製造した。
【0037】
(比較例1)
研磨条件のうち回転速度を400rpm及び切込み量を0.2mmに変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例1の保持治具を製造した。
(比較例2)
研磨条件のうち切込み量を0.1mmに変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例2の保持治具を製造した。
(比較例3)
研磨条件のうち回転速度を1200rpm及び切込み量を0.1mmに変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例3の保持治具を製造した。
(比較例4)
研磨条件のうち回転速度を600rpm及び切込み量を0.1mmに変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例4の保持治具を製造した。
(比較例5)
研磨条件のうち回転速度を400rpm及び切込み量を0.1mmに変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例の保持治具を製造した。
【0038】
(表面特性の測定)
キーエンス社製の「レーザー顕微鏡」を用いて、JIS B0601−1994に準拠して、上述の測定条件下、各保持治具の弾性部材の表面(測定点3点)の算術平均粗さRa、最大高さRy、十点平均粗さRz、凹凸の平均間隔Sm及び局部山頂の平均間隔Sを測定し、その算術平均値を求めた。得られた値を表1に示す。
【0039】
(切断時伸び、引張強さ及び硬度の測定)
弾性部材の切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度として、弾性部材6を形成する上記シリコーンゴムを同様に成形してJIS K 6249及びJIS K 6253に記載のゴム試験片をそれぞれ作製し、前記測定方法に準拠して、ゴム試験片の切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度をそれぞれ測定した。その結果、切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度はそれぞれ、600%、8.8MPa及び49であった。
【0040】
(粘着性)
弾性部材の表面への小型部品の粘着しやすさを貼り付き率として評価した。具体的には、製造した保持治具それぞれの弾性部材の一方の表面を、除電ブロワ(商品名「高速・高精度除電ブロワ」、型番「SJ−F2000」、キーエンス株式会社製)を使用して除電をし、ミックスエタノール(メタノールとエタノールとの混合比(体積比)5:95)5mLを染み込ませたクリーンワイパーで汚れをふき取り、十分に送風乾燥して、弾性部材の一方の表面を清浄した。
次いで、除電ブロワにて常に除電した状態で、清浄した弾性部材の表面に1005サイズ(高さ1.0mm×底面の1辺0.5mm)の直方体状のチップ100個をばらまいた後に、チップをばらまいた表面が下方(重力が作用する方向)となるように保持治具を(回転時の遠心力でチップが脱落しないように)静かに180°反転させて、そのまま5秒間静止した。保持治具を再度静かに180°反転させて、弾性部材の表面に残存しているチップの数を計数した。チップの残存数を100で除した値を「貼り付き率」として表1に示した。なお、表1の「貼り付き率」は3回試験したときの平均値である。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示されるように、表面特性のうち(I)十点平均粗さRzが7〜20μm及び(II)局部山頂の平均間隔Sが7.6〜8.5μmを満たす実施例1及び2は9%以下の低い貼り付き率であった。一方、(I)十点平均粗さRz及び(II)局部山頂の平均間隔Sの少なくとも一方が本発明の範囲から逸脱する比較例1〜6は貼り付き率が小さくても36%であった。
なお、表面特性のうち、算術平均粗さRa、最大高さRy及び凹凸の平均間隔Smには、いずれも、小型部品の張り付き率との関連性を確認できなかった。
このように、弾性部材の表面特性のうち(I)十点平均粗さRz及び(II)局部山頂の平均間隔Sの組み合わせが電子部品の弾性部材への粘着に関与することが理解でき、しかも、この特定の組み合わせそれぞれの表面特性が特定の範囲内にある実施例1及び2は表面未処理の弾性部材であっても、低い張り付き率で、すなわち、ほとんどの小型部品を残存させることなく取り外すことができることが分かった。
【符号の説明】
【0043】
1、2 保持治具
5 補強部材
6 弾性部材
11 支持孔
12 平坦部
13 鍔部
15 保持孔
15A 第1保持孔
15B 第2保持孔
図1
図2
図3