【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例(合成試験、評価試験)によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、合成試験に使用したアゾール化合物およびイソシアナトプロピルシラン化合物を以下に示す。
【0028】
[アゾール化合物]
・2,2′−ジチオジ(1H−イミダゾール):国際公開第2012/031183号パンフレットに記載の方法に従って合成した
・2,2′−ジチオジ(1H−ベンズイミダゾール):特開2013-14752号公報に記載の方法に従って合成した
・3,3′−ジチオジ(1H−1,2,4−トリアゾール):国際公開第2012/031183号パンフレットに記載の方法に従って合成した
・3,3′−ジチオビス(5−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール):同上
・4,4′−ジチオジ(1H−1,2,3−トリアゾール):同上
【0029】
[イソシアナトプロピルシラン化合物]
・3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製
・3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン:信越化学工業社製
【0030】
本発明のアゾールシラン化合物を、シランカップリング剤の成分として評価する為に行った、銅と樹脂の接着性の試験を以下に示す。
[接着性試験]
(1)試験片
電解銅箔(厚み:18μm)を試験片として使用した。
(2)試験片の処理
以下の工程a〜cに従って行った。
a.酸清浄/1分間(室温)、水洗
b.酸清浄/1分間(室温)、水洗、乾燥/1分(100℃)
c.銅の表面処理液に浸漬/1分(室温)、水洗、乾燥/1分(100℃)
(3)試験片と樹脂の接着
処理した試験片のS面に、ガラス布エポキシ樹脂含浸プリプレグ(FR−4グレード)を積層プレスし、試験片と樹脂を接着した。
(4)接着性の評価
「JIS C6418」に従って、幅10mmの試験片を作成し、プレッシャークッカー処理(121℃/湿度100%/100時間)した後、銅箔の引き剥がし強さを測定した。
【0031】
[実施例1]
<2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}の合成>
2,2′−ジチオジ(1H−イミダゾール)2.0g(10mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド45gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン4.1g(20mmol)を滴下した。
発熱が収まった後、40℃にて6時間撹拌し、反応液を減圧濃縮し、褐色液体6.5g(10mmol、収率100%)を得た。
【0032】
得られた液体の
1H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・
1H-NMR(DMSO-d
6) δ:8.72(t, 2H), 7.79(d,
2H), 6.97(d, 2H), 3.48(s, 18H), 3.3-3.2(m, 4H), 1.6-1.5(m, 4H), 0.65(t, 4H).
また、この液体のIRスペクトルデータは、
図1に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-1)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0033】
【化5】
【0034】
[実施例2]
<2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}
の合成>
2,2′−ジチオジ(1H−イミダゾール)1.0g(5mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド26gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン2.5g(10mmol)を滴下した。
発熱が収まった後、40℃にて6時間撹拌し、反応液を減圧濃縮し、褐色液体3.5g(5mmol、収率100%)を得た。
【0035】
得られた液体の
1H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・
1H-NMR(DMSO-d
6) δ:8.75(t, 2H), 7.79(d,
2H), 6.98(d,2H), 3.77(q, 12H), 3.3-3.2(m, 4H), 1.7-1.5(m, 4H), 1.15(t, 18H), 0.62(t,
4H).
また、この液体のIRスペクトルデータは、
図2に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-2)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0036】
【化6】
【0037】
[実施例3]
<2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−ベンズイミダゾール}
の合成>
2,2′−ジチオジ(1H−ベンズイミダゾール)2.5g(8.4mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド16gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン3.5g(17mmol)を滴下した。
発熱が収まった後、40℃にて4時間撹拌し、反応液を減圧濃縮し、褐色液体6.1g(8.4mmol、収率100%)を得た。
【0038】
得られた液体の
1H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・
1H-NMR(DMSO-d
6) δ:8.55(s, 2H), 8.07(d,
2H), 7.72(d, 2H), 7.4-7.2(m, 4H), 3.49(s, 18H), 3.4-3.2(m, 4H), 1.8-1.6(m,4H), 0.68(t,4H).
また、この液体のIRスペクトルデータは、
図3に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-3)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0039】
【化7】
【0040】
[実施例4]
<2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−ベンズイミダゾール}
の合成>
2,2′−ジチオジ(1H−ベンズイミダゾール)1.0g(3.3mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド10gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン1.7g(6.8mmol)を滴下した。
発熱が収まった後、40℃にて4時間撹拌し、反応液を減圧濃縮し、褐色液体2.6g(3.3mmol、収率100%)を得た。
【0041】
得られた液体の
1H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・
1H-NMR(DMSO-d
6) δ:8.56(s, 2H), 8.08(d,
2H), 8.73(d, 2H), 7.5-7.3(m, 4H), 3.77(q, 12H), 3.4-3.2(m, 4H), 1.8-1.6(m, 4H),
1.16(t, 18H), 0.67(t, 4H).
また、この液体のIRスペクトルデータは、
図4に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-4)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0042】
【化8】
【0043】
[実施例5]
<3,3′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}の合成>
3,3′−ジチオジ(1H−1,2,4−トリアゾール)4.02g(20.1mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド150gに加えて、室温にて攪拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン9.49g(46.2mmol)を滴下した。その10分後にトリエチルアミン0.92g(9.1mmol)を加え、60℃にて8時間攪拌した。
反応液を減圧濃縮し、淡黄色液体12.3g(20.1mmol、収率100%)を得た。
【0044】
得られた液体の
1H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・
1H-NMR(DMSO-d
6) δ:9.20(s, 2H),
8.78(t, 2H), 3.47(s, 18H), 3.21(q, 4H), 1.60(m, 4H), 0.59(t, 4H).
また、この液体のIRスペクトルデータは、
図5に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-5)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0045】
【化9】
【0046】
[実施例6]
<3,3′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}の合成>
3,3′−ジチオジ(1H−1,2,4−トリアゾール)1.0g(5mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド24gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン2.5g(10mmol)を滴下した。その20分後にトリエチルアミン0.2g(2mmol)を加え40℃で6時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、粗結晶3.7gを得た。これをエタノールで再結晶して白色結晶2.6g(3.7mmol、収率75.0%)を得た。
【0047】
得られた結晶の融点及び
1H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・融点:91-93℃
・
1H-NMR(DMSO-d
6) δ:9.20(s, 2H), 8.79(t,
2H), 3.75(q, 12H), 3.3-3.2(m, 4H), 1.6-1.5(m, 4H), 1.16(t, 18H), 0.57(t, 4H).
また、この結晶のIRスペクトルデータは、
図6に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた結晶は、化学式(I-6)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0048】
【化10】
【0049】
[実施例7]
<3,3′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}の合成>
3,3′−ジチオビス(5−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール)2.00g(8.7mmol)を脱水ジメチルホルムアミド45gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトトリメトキシプロピルシラン3.56g(17.3mmol)を滴下した。その5分後にトリエチルアミン0.3g(3mmol)を加え、55℃にて5時間攪拌した。
反応液を減圧濃縮し、得られた濃縮物12.8gを脱水メタノールより2回再結晶し、減圧下に乾燥して、白色結晶3.65g(5.7mmol、収率65.5%)を得た。
【0050】
得られた結晶の融点及び
1H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・融点:143-144.3℃
・
1H-NMR(CDCl
3) δ:8.22(t, 2H),
7.43(br.s, 4H), 3.47(s, 18H), 3.15(q, 4H), 1.57(quint, 4H), 0.57(t, 4H).
また、この結晶のIRスペクトルデータは、
図7に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた結晶は、化学式(I-7)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0051】
【化11】
【0052】
[実施例8]
<3,3′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}の合成>
3,3′−ジチオビス(5−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール)1.0g(4.3mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド13gに加えて、室温で撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン2.1g(8.6mmol)を滴下した。その20分後にトリエチルアミン0.2g(2mmol)を加え、40℃で6時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、粗結晶3.2gを得た。
この結晶をエタノールで再結晶して、白色結晶2.1g(2.9mmol、収率67.4%)を得た。
【0053】
得られた結晶の融点及び
1H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・融点:164-165℃
・
1H-NMR(CDCl
3) δ:8.23(t, 2H), 7.44(s,
4H), 3.74(q, 12H), 3.2-3.1(m, 4H), 1.6-1.5(m, 4H), 1.15(s, 18H), 0.53(t, 4H)
また、この結晶のIRスペクトルデータは、
図8に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた結晶は、化学式(I-8)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0054】
【化12】
【0055】
[実施例9]
<4,4′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,3−トリアゾール}の合成>
4,4′−ジチオジ(1H−1,2,3−トリアゾール)8.67g(43.3mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド50gに加えて、室温にて攪拌して溶解し、これに、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン18.7g(91.1mmol)を滴下し、その20分後にトリエチルアミン1.84g(18.2mmol)を加え、室温下、15時間攪拌した。
反応液を減圧濃縮した後、液状の濃縮物をヘキサン130mLで洗浄し、減圧下に乾燥して褐色液体26.0g(42.6mmol、収率98.3%)を得た。
【0056】
得られた液体の
1H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・
1H-NMR(CDCl
3) δ:8.99(t, 2H),
8.43(s, 2H), 3.47(s, 18H), 3.26(q, 4H), 1.63(m, 4H), 0.62(t, 4H).
また、この液体のIRスペクトルデータは、
図9に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-9)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0057】
【化13】
【0058】
[実施例10]
<4,4′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,3−トリアゾール}の合成>
4,4′−ジチオジ(1H−1,2,3−トリアゾール)1.0g(5mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド10gに加え、室温で撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン2.5g(10mmol)を滴下した。その20分後にトリエチルアミン0.1g(1mmol)を加え、40℃にて8時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、褐色液体3.5g(5mmol、収率100%)を得た。
【0059】
得られた液体
1H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・
1H-NMR(CDCl
3) δ:8.99(t, 2H), 8.45(s,
2H), 3.75(q, 12H), 3.4-3.2(m, 4H), 1.7-1.6(m, 4H), 1.16(t, 18H), 0.59(t, 4H).
また、この液体のIRスペクトルデータは、
図10に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-10)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0060】
【化14】
【0061】
[実施例11]
<銅の表面処理液の調製および評価>
シランカップリング剤成分として、実施例1において合成したアゾールシラン化合物を使用して銅の表面処理液を調製した。
即ち、この化合物10gにエチレングリコールモノブチルエーテル200gを加え、続いて水790gを加えて、室温にて2時間撹拌し、アゾールシラン化合物のメトキシシリル基(-Si(OCH
3)
3)が加水分解して、ヒドロキシシリル基(-Si(OH)
3)に変化した、銅の表面処理液(以下、処理液Aと云う)を調製した。
これと同様にして、実施例1において合成したアゾールシラン化合物の代わりに、実施例2〜3、5、7〜9において合成したアゾールシラン化合物を使用して、銅の表面処理液を調製した(以下、各々処理液B、C、D、E、F、Gと云う)。
そして、これらの処理液中のアゾールシラン化合物のメトキシシリル基(-Si(OCH
3)
3)またはエトキシシリル基(-Si(O CH
2CH
3)
3)が、ヒドロキシシリル基(-Si(OH)
3)に加水分解されていることを確認した。
また、シランカップリング剤成分を使用しない以外は、前記の処理液A〜Gと同様の組成を有する銅の表面処理液(以下、処理液Hと云う)を調製した。
【0062】
これらの処理液について、接着性試験を行ったところ、得られた試験結果は、表1に示したとおりであり、本発明のアゾールシラン化合物をシランカップリング剤の成分として使用した銅の表面処理液は、銅表面とプリプレグの接着性を高める効果を発揮しているものと認められる。
【0063】
【表1】