特許第6071806号(P6071806)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6071806アゾールシラン化合物、該化合物の合成方法及びその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071806
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】アゾールシラン化合物、該化合物の合成方法及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   C07F7/18 WCSP
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-175314(P2013-175314)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-44750(P2015-44750A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180302
【氏名又は名称】四国化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三浦 昌三
(72)【発明者】
【氏名】村井 孝行
(72)【発明者】
【氏名】奥村 尚登
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 みや
(72)【発明者】
【氏名】勝村 真人
(72)【発明者】
【氏名】山地 範明
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特表平08−505837(JP,A)
【文献】 特開平05−039295(JP,A)
【文献】 特開平06−279461(JP,A)
【文献】 特開2002−308887(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/040114(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第2013−0044533(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)で示されるアゾールシラン化合物。
【化1】
【請求項2】
化学式(II)で示されるアゾール化合物と、化学式(III)で示されるイソシアナトプロピルシラン化合物を反応させることを特徴とする請求項1記載のアゾールシラン化合物の合成方法。
【化2】
【化3】
(式中、Rは前記と同様である。)
【請求項3】
請求項1記載のアゾールシラン化合物を成分とすることを特徴とするシランカップリング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアゾールシラン化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シランカップリング剤は、有機物とケイ素から構成される物質が成分として使用されている。この物質は分子中に種類の異なる官能基を有しており、通常では馴染まない有機材料と無機材料を結ぶ仲介役としての機能を発揮する。そのため、複合材料の開発や生産には不可欠の薬剤である。
【0003】
特許文献1には、ガラスや金属とゴムを接着する際に使用されるシランカップリング剤の成分として、イミダゾール、ベンゾイミダゾールやトリアゾール等のアゾール化合物の含窒素複素環と、トリメトキシシリル基やトリエトキシシリル基等のシリル基が、ウレタン結合、チオウレタン結合や尿素結合等を含む有機基を介して結合された構造の物質が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−363189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規なアゾールシラン化合物及びその合成方法ならびに、当該アゾールシラン化合物を成分とするシランカップリング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アゾール化合物と、イソシアナトプロピルシラン化合物を反応させることにより、文献未記載の新規なアゾールシラン化合物を合成し得ることを認め、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
即ち、第1の発明は、化学式(I)で示されるアゾールシラン化合物である。
【0008】
【化1】
【0009】
第2の発明は、化学式(II)で示されるアゾール化合物と、化学式(III)で示されるイソシアナトプロピルシラン化合物を反応させることを特徴とする第1の発明のアゾールシラン化合物の合成方法である。
【0010】
【化2】
【0011】
【化3】
(式中、Rは前記と同様である。)
【0012】
第3の発明は、第1の発明のアゾールシラン化合物を成分とすることを特徴とするシランカップリング剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアゾールシラン化合物は、シランカップリング剤の成分として好適なものである。また、本発明のシランカップリング剤は、その成分として使用するアゾールシラン化合物が、アルコキシシリル基と共にアゾール環を有する物質であるので、アゾール化合物の特徴である金属を防錆する機能と、エポキシ樹脂やウレタン樹脂を硬化させる機能を発揮することが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアゾールシラン化合物は、前記の化学式(I)で示されるものであり、
2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}、
2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}、
2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−ベンズイミダゾール}、
2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−ベンズイミダゾール}、
2,2′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−ベンズイミダゾール}、
2,2′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−ベンズイミダゾール}、
3,3′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}、
3,3′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}、
3,3′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}、
3,3′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}、
4,4′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,3−トリアゾール}、
4,4′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,3−トリアゾール}、
5,5′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−テトラゾール}および
5,5′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−テトラゾール}である。
【0015】
本発明のアゾールシラン化合物は、対応する前駆体のジチオジアゾール化合物とイソシアナトプロピルシラン化合物を、適量の反応溶媒中において適宜の反応温度および反応時間にて反応させることにより、概ね高収率で合成されるが、該前駆体を2,2′−ジチオジ(1H−イミダゾール)とした場合の例を、反応スキーム(A)に示す。
【0016】
【化4】
(式中、Rは前記と同様である。)
【0017】
本発明のアゾールシラン化合物の前駆体となるアゾール化合物は、
2,2′−ジチオジ(1H−イミダゾール)、
2,2′−ジチオジ(1H−ベンズイミダゾール)、
2,2′−ジチオビス(5−アミノ−1H−ベンズイミダゾール)、
3,3′−ジチオジ(1H−1,2,4−トリアゾール)、
3,3′−ジチオビス(5−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール)、
4,4′−ジチオジ(1H−1,2,3−トリアゾール)および
5,5′−ジチオジ(1H−テトラゾール)である。
【0018】
前記のイソシアナトプロピルシラン化合物は、
3−イソシアナトプロピルトリメトキシシランおよび
3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランである。
【0019】
前記の反応溶媒としては、アゾール化合物およびイソシアナトプロピルシラン化合物に対して不活性な溶剤であれば特に限定されず、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶剤;
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;
ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤やジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0020】
本発明に係るアゾール化合物とイソシアナトプロピルシラン化合物の反応は、前記の反応スキーム(A)に例示される如く、化学量論的に進行するが、アゾール化合物の使用量(仕込量)に対する、イソシアナトプロピルシラン化合物の使用量(仕込量)は、反応温度や反応時間の他、使用する原料や反応溶媒の種類、反応スケール等の要因を考慮して、1.6〜2.4倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
イソシアナトプロピルシラン化合物の仕込み量が2.4倍モルよりも多いと、該化合物が重合してゲル化する惧れがあり、0.8倍モルよりも少ないと、生成物の純度が低下したり、生成物の分離操作が煩雑になる等の惧れがある。
【0021】
前記の反応温度は、アゾール化合物の環内窒素(-NH-)と、イソシアナトプロピルシラン化合物のイソシアナト基(-NCO)が反応する温度範囲であれば特に限定されないが、0〜100℃の範囲が好ましく、5〜60℃の範囲がより好ましい。
【0022】
前記の反応時間は、設定した反応温度に応じて適宜決定されるが、30分〜20時間の範囲が好ましく、1〜8時間の範囲がより好ましい。
【0023】
本発明のアゾールシラン化合物を成分とするシランカップリング剤を使用するに当たっては、従来のシランカップリング剤の場合と同様な表面処理方法を採用することができる。
この表面処理方法としては、例えば、(a)適宜量のシランカップリング剤を有機溶剤により希釈した処理液を基材にスプレー塗布する方法、(b)同シランカップリング剤を水−有機溶剤により希釈した処理液を基材にスプレー塗布する方法、(c)同シランカップリング剤を有機溶剤により希釈した処理液に基材を浸漬する方法、(d)同シランカップリング剤を水−有機溶剤により希釈した処理液に基材を浸漬する方法が挙げられる。
【0024】
前記の有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、へプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタン等の炭化水素系溶剤;
ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶剤などが挙げられる。
【0025】
また、本発明のアゾールシラン化合物を成分とするシランカップリング剤により処理される基材としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉄、二酸化チタン、マイカ等の粒状物や、ガラス繊維、ナイロン繊維、炭素繊維等の繊維等や、ガラス板、アルミニウム板、銅板、銅箔、銅メッキ膜、鋼板、鉄板、ステンレス板等が挙げられる。
【0026】
このような表面処理を基材に施すことにより、基材の表面の親油性が高まって、樹脂等に対する親和性(接着性、密着性)を向上させることができる。
なお、この処理による効果を高めるために、表面処理した基材を加熱処理してもよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例(合成試験、評価試験)によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、合成試験に使用したアゾール化合物およびイソシアナトプロピルシラン化合物を以下に示す。
【0028】
[アゾール化合物]
・2,2′−ジチオジ(1H−イミダゾール):国際公開第2012/031183号パンフレットに記載の方法に従って合成した
・2,2′−ジチオジ(1H−ベンズイミダゾール):特開2013-14752号公報に記載の方法に従って合成した
・3,3′−ジチオジ(1H−1,2,4−トリアゾール):国際公開第2012/031183号パンフレットに記載の方法に従って合成した
・3,3′−ジチオビス(5−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール):同上
・4,4′−ジチオジ(1H−1,2,3−トリアゾール):同上
【0029】
[イソシアナトプロピルシラン化合物]
・3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製
・3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン:信越化学工業社製
【0030】
本発明のアゾールシラン化合物を、シランカップリング剤の成分として評価する為に行った、銅と樹脂の接着性の試験を以下に示す。
[接着性試験]
(1)試験片
電解銅箔(厚み:18μm)を試験片として使用した。
(2)試験片の処理
以下の工程a〜cに従って行った。
a.酸清浄/1分間(室温)、水洗
b.酸清浄/1分間(室温)、水洗、乾燥/1分(100℃)
c.銅の表面処理液に浸漬/1分(室温)、水洗、乾燥/1分(100℃)
(3)試験片と樹脂の接着
処理した試験片のS面に、ガラス布エポキシ樹脂含浸プリプレグ(FR−4グレード)を積層プレスし、試験片と樹脂を接着した。
(4)接着性の評価
「JIS C6418」に従って、幅10mmの試験片を作成し、プレッシャークッカー処理(121℃/湿度100%/100時間)した後、銅箔の引き剥がし強さを測定した。
【0031】
[実施例1]
<2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}の合成>
2,2′−ジチオジ(1H−イミダゾール)2.0g(10mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド45gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン4.1g(20mmol)を滴下した。
発熱が収まった後、40℃にて6時間撹拌し、反応液を減圧濃縮し、褐色液体6.5g(10mmol、収率100%)を得た。
【0032】
得られた液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR(DMSO-d6) δ:8.72(t, 2H), 7.79(d,
2H), 6.97(d, 2H), 3.48(s, 18H), 3.3-3.2(m, 4H), 1.6-1.5(m, 4H), 0.65(t, 4H).

また、この液体のIRスペクトルデータは、図1に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-1)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0033】
【化5】
【0034】
[実施例2]
<2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}
の合成>
2,2′−ジチオジ(1H−イミダゾール)1.0g(5mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド26gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン2.5g(10mmol)を滴下した。
発熱が収まった後、40℃にて6時間撹拌し、反応液を減圧濃縮し、褐色液体3.5g(5mmol、収率100%)を得た。
【0035】
得られた液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR(DMSO-d6) δ:8.75(t, 2H), 7.79(d,
2H), 6.98(d,2H), 3.77(q, 12H), 3.3-3.2(m, 4H), 1.7-1.5(m, 4H), 1.15(t, 18H), 0.62(t,
4H).

また、この液体のIRスペクトルデータは、図2に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-2)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0036】
【化6】
【0037】
[実施例3]
<2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−ベンズイミダゾール}
の合成>
2,2′−ジチオジ(1H−ベンズイミダゾール)2.5g(8.4mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド16gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン3.5g(17mmol)を滴下した。
発熱が収まった後、40℃にて4時間撹拌し、反応液を減圧濃縮し、褐色液体6.1g(8.4mmol、収率100%)を得た。
【0038】
得られた液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR(DMSO-d6) δ:8.55(s, 2H), 8.07(d,
2H), 7.72(d, 2H), 7.4-7.2(m, 4H), 3.49(s, 18H), 3.4-3.2(m, 4H), 1.8-1.6(m,4H), 0.68(t,4H).

また、この液体のIRスペクトルデータは、図3に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-3)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0039】
【化7】
【0040】
[実施例4]
<2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−ベンズイミダゾール}
の合成>
2,2′−ジチオジ(1H−ベンズイミダゾール)1.0g(3.3mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド10gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン1.7g(6.8mmol)を滴下した。
発熱が収まった後、40℃にて4時間撹拌し、反応液を減圧濃縮し、褐色液体2.6g(3.3mmol、収率100%)を得た。
【0041】
得られた液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR(DMSO-d6) δ:8.56(s, 2H), 8.08(d,
2H), 8.73(d, 2H), 7.5-7.3(m, 4H), 3.77(q, 12H), 3.4-3.2(m, 4H), 1.8-1.6(m, 4H),
1.16(t, 18H), 0.67(t, 4H).

また、この液体のIRスペクトルデータは、図4に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-4)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0042】
【化8】
【0043】
[実施例5]
<3,3′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}の合成>
3,3′−ジチオジ(1H−1,2,4−トリアゾール)4.02g(20.1mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド150gに加えて、室温にて攪拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン9.49g(46.2mmol)を滴下した。その10分後にトリエチルアミン0.92g(9.1mmol)を加え、60℃にて8時間攪拌した。
反応液を減圧濃縮し、淡黄色液体12.3g(20.1mmol、収率100%)を得た。
【0044】
得られた液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR(DMSO-d6) δ:9.20(s, 2H),
8.78(t, 2H), 3.47(s, 18H), 3.21(q, 4H), 1.60(m, 4H), 0.59(t, 4H).

また、この液体のIRスペクトルデータは、図5に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-5)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0045】
【化9】
【0046】
[実施例6]
<3,3′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}の合成>
3,3′−ジチオジ(1H−1,2,4−トリアゾール)1.0g(5mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド24gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン2.5g(10mmol)を滴下した。その20分後にトリエチルアミン0.2g(2mmol)を加え40℃で6時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、粗結晶3.7gを得た。これをエタノールで再結晶して白色結晶2.6g(3.7mmol、収率75.0%)を得た。
【0047】
得られた結晶の融点及びH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・融点:91-93℃
1H-NMR(DMSO-d6) δ:9.20(s, 2H), 8.79(t,
2H), 3.75(q, 12H), 3.3-3.2(m, 4H), 1.6-1.5(m, 4H), 1.16(t, 18H), 0.57(t, 4H).

また、この結晶のIRスペクトルデータは、図6に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた結晶は、化学式(I-6)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0048】
【化10】
【0049】
[実施例7]
<3,3′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}の合成>
3,3′−ジチオビス(5−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール)2.00g(8.7mmol)を脱水ジメチルホルムアミド45gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトトリメトキシプロピルシラン3.56g(17.3mmol)を滴下した。その5分後にトリエチルアミン0.3g(3mmol)を加え、55℃にて5時間攪拌した。
反応液を減圧濃縮し、得られた濃縮物12.8gを脱水メタノールより2回再結晶し、減圧下に乾燥して、白色結晶3.65g(5.7mmol、収率65.5%)を得た。
【0050】
得られた結晶の融点及びH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・融点:143-144.3℃
1H-NMR(CDCl3) δ:8.22(t, 2H),
7.43(br.s, 4H), 3.47(s, 18H), 3.15(q, 4H), 1.57(quint, 4H), 0.57(t, 4H).

また、この結晶のIRスペクトルデータは、図7に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた結晶は、化学式(I-7)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0051】
【化11】
【0052】
[実施例8]
<3,3′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}の合成>
3,3′−ジチオビス(5−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール)1.0g(4.3mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド13gに加えて、室温で撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン2.1g(8.6mmol)を滴下した。その20分後にトリエチルアミン0.2g(2mmol)を加え、40℃で6時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、粗結晶3.2gを得た。
この結晶をエタノールで再結晶して、白色結晶2.1g(2.9mmol、収率67.4%)を得た。
【0053】
得られた結晶の融点及びH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・融点:164-165℃
1H-NMR(CDCl3) δ:8.23(t, 2H), 7.44(s,
4H), 3.74(q, 12H), 3.2-3.1(m, 4H), 1.6-1.5(m, 4H), 1.15(s, 18H), 0.53(t, 4H)

また、この結晶のIRスペクトルデータは、図8に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた結晶は、化学式(I-8)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0054】
【化12】
【0055】
[実施例9]
<4,4′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,3−トリアゾール}の合成>
4,4′−ジチオジ(1H−1,2,3−トリアゾール)8.67g(43.3mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド50gに加えて、室温にて攪拌して溶解し、これに、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン18.7g(91.1mmol)を滴下し、その20分後にトリエチルアミン1.84g(18.2mmol)を加え、室温下、15時間攪拌した。
反応液を減圧濃縮した後、液状の濃縮物をヘキサン130mLで洗浄し、減圧下に乾燥して褐色液体26.0g(42.6mmol、収率98.3%)を得た。
【0056】
得られた液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR(CDCl3) δ:8.99(t, 2H),
8.43(s, 2H), 3.47(s, 18H), 3.26(q, 4H), 1.63(m, 4H), 0.62(t, 4H).

また、この液体のIRスペクトルデータは、図9に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-9)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0057】
【化13】
【0058】
[実施例10]
<4,4′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,3−トリアゾール}の合成>
4,4′−ジチオジ(1H−1,2,3−トリアゾール)1.0g(5mmol)を、脱水ジメチルホルムアミド10gに加え、室温で撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン2.5g(10mmol)を滴下した。その20分後にトリエチルアミン0.1g(1mmol)を加え、40℃にて8時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、褐色液体3.5g(5mmol、収率100%)を得た。
【0059】
得られた液体H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR(CDCl3) δ:8.99(t, 2H), 8.45(s,
2H), 3.75(q, 12H), 3.4-3.2(m, 4H), 1.7-1.6(m, 4H), 1.16(t, 18H), 0.59(t, 4H).

また、この液体のIRスペクトルデータは、図10に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(I-10)で示される標題のアゾールシラン化合物であるものと同定した。
【0060】
【化14】
【0061】
[実施例11]
<銅の表面処理液の調製および評価>
シランカップリング剤成分として、実施例1において合成したアゾールシラン化合物を使用して銅の表面処理液を調製した。
即ち、この化合物10gにエチレングリコールモノブチルエーテル200gを加え、続いて水790gを加えて、室温にて2時間撹拌し、アゾールシラン化合物のメトキシシリル基(-Si(OCH3)3)が加水分解して、ヒドロキシシリル基(-Si(OH)3)に変化した、銅の表面処理液(以下、処理液Aと云う)を調製した。
これと同様にして、実施例1において合成したアゾールシラン化合物の代わりに、実施例2〜3、5、7〜9において合成したアゾールシラン化合物を使用して、銅の表面処理液を調製した(以下、各々処理液B、C、D、E、F、Gと云う)。
そして、これらの処理液中のアゾールシラン化合物のメトキシシリル基(-Si(OCH3)3)またはエトキシシリル基(-Si(O CH2CH3)3)が、ヒドロキシシリル基(-Si(OH)3)に加水分解されていることを確認した。
また、シランカップリング剤成分を使用しない以外は、前記の処理液A〜Gと同様の組成を有する銅の表面処理液(以下、処理液Hと云う)を調製した。
【0062】
これらの処理液について、接着性試験を行ったところ、得られた試験結果は、表1に示したとおりであり、本発明のアゾールシラン化合物をシランカップリング剤の成分として使用した銅の表面処理液は、銅表面とプリプレグの接着性を高める効果を発揮しているものと認められる。
【0063】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】実施例1で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
図2】実施例2で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
図3】実施例3で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
図4】実施例4で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
図5】実施例5で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
図6】実施例6で得られた結晶のIRスペクトルチャートである。
図7】実施例7で得られた結晶のIRスペクトルチャートである。
図8】実施例8で得られた結晶のIRスペクトルチャートである。
図9】実施例9で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
図10】実施例10で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のアゾールシラン化合物を成分とすることにより、アゾール化合物の特徴である金属を防錆する機能と、エポキシ樹脂やウレタン樹脂を硬化させる機能を付加したシランカップリング剤とすることができるので、種類の異なる素材を組み合わせて製造されるプリント配線板の如き複合材料への利用が期待される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10