特許第6071808号(P6071808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6071808-ポリエステル樹脂組成物成形体 図000009
  • 特許6071808-ポリエステル樹脂組成物成形体 図000010
  • 特許6071808-ポリエステル樹脂組成物成形体 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071808
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20170123BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20170123BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C08L67/00
   C08K3/22
   C08J3/22CFD
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-176567(P2013-176567)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-44931(P2015-44931A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】山中 康史
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−314664(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/058269(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/058270(WO,A1)
【文献】 特開2007−077208(JP,A)
【文献】 特開2014−001374(JP,A)
【文献】 特開平08−165358(JP,A)
【文献】 特開2011−231280(JP,A)
【文献】 特開2000−212420(JP,A)
【文献】 特開平05−156141(JP,A)
【文献】 特開2010−209352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)を、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、(A)を50〜80質量部、(B)を20〜50質量部含有し、さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、難燃剤(C)を3〜60質量部、アンチモン化合物(D)を0.5〜20質量部及びエラストマー(E)を5〜20質量部含有するポリエステル樹脂組成物からなる成形体であって、
成形体のコア部において、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)は共連続相を形成し、エラストマー(E)はポリカーボネート樹脂(B)相中に存在し、アンチモン化合物(D)の80%以上が熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相中に存在するモルフォロジーを有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物成形体。
【請求項2】
難燃剤(C)が臭素化ポリカーボネート系難燃剤である請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
【請求項3】
成形体コア部におけるエラストマー(E)相の平均粒子径が300nm以上である請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
【請求項4】
成形体の表層部において、エラストマー(E)相は樹脂の流れ方向に伸びており、その長径と短径の比(長径/短径)が3〜20である請求項1〜のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
【請求項5】
ポリエステル樹脂組成物は、ステアリルアシッドホスフェートの亜鉛塩を、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜1質量部含有する請求項1〜のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
【請求項6】
難燃剤(C)が、ポリカーボネート樹脂(B)相中に存在する請求項1〜のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
【請求項7】
アンチモン化合物(D)が、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とのマスターバッチとして配合される請求項1〜のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物成形体に関するものであり、さらに詳しくは、特異なモルフォロジーを有し、難燃性及び耐衝撃性に優れた難燃性のポリエステル樹脂組成物成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートに代表される熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び電気絶縁性等に優れており、また優れた耐熱性、成形性、リサイクル性を有していることから、電気電子機器部品、自動車部品その他の電装部品、機械部品等に広く用いられている。特に、電気電子機器分野では、火災に対する安全性を確保するため難燃性が極めて重要である。
【0003】
熱可塑性ポリエステル樹脂を難燃化するには、通常、ハロゲン系難燃剤や無機系難燃剤等が配合されるが、これらは熱可塑性ポリエステル樹脂の耐トラッキング性等の電気特性を低下させる傾向にある。
耐トラッキング性の改良を試みた材料としては、例えば、特許文献1には、熱可塑性ポリエステル樹脂、α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルからなるオレフィン系共重合体を含む樹脂組成物が開示されており、必要に応じて、慣用の難燃剤、タルク、カオリン、シリカ等の充填剤、ガラス繊維等の繊維状充填剤を添加してもよいことが記載されており、特許文献2には、ポリブチレンテレフタレート、臭素化ポリカーボネート系難燃剤、アンチモン系難燃助剤、フッ化エチレン系重合体、ポリオレフィン及びケイ酸金属塩系充填剤とガラス繊維からなる樹脂組成物が記載されている。また、特許文献3には、熱可塑性ポリエステル樹脂、圧縮微粉タルク、ハロゲン化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤からなる樹脂組成物が開示されており、必要に応じて、繊維状強化剤を添加してもよいことが記載されている。
【0004】
しかしながら、これらの樹脂組成物は、いずれも、難燃性と高い耐衝撃性の両方を、必ずしも充分に満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−196859号公報
【特許文献2】特開平10−67925号公報
【特許文献3】特開平10−158486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、難燃性及び耐衝撃性に優れた難燃性ポリエステル樹脂組成物成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、種々のポリエステル樹脂組成物の組成とその成形体のモルフォロジーにつき鋭意検討を重ねてきた結果、樹脂組成物成形体のモルフォロジーが難燃性や耐衝撃性に大きく関係していることを見出し、ポリカーボネート樹脂、難燃剤、アンチモン化合物及びエラストマーを特定量含有するポリエステル樹脂組成物において、特定のモルフォロジーを有する成形体が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明によれば、以下のポリエステル樹脂組成物成形体が提供される。
【0008】
[1]熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)を、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、(A)を50〜80質量部、(B)を20〜50質量部含有し、さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、難燃剤(C)を3〜60質量部、アンチモン化合物(D)を0.5〜20質量部及びエラストマー(E)を5〜20質量部含有するポリエステル樹脂組成物からなる成形体であって、
成形体のコア部において、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)は共連続相を形成し、エラストマー(E)はポリカーボネート樹脂(B)相中に存在するモルフォロジーを有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物成形体。
【0009】
[2]難燃剤(C)が臭素化ポリカーボネート系難燃剤である上記[1]に記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
[3]成形体コア部におけるエラストマー(E)相の平均粒子径が300nm以上である上記[1]又は[2]に記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
[4]成形体コア部において、アンチモン化合物(D)の80%以上が、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相中に存在する上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
[5]成形体の表層部において、エラストマー(E)相は樹脂の流れ方向に伸びており、その長径と短径の比(長径/短径)が3〜20である上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
[6]ポリエステル樹脂組成物は、ステアリルアシッドホスフェートの亜鉛塩を、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜1質量部含有する上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
[7]難燃剤(C)が、ポリカーボネート樹脂(B)相中に存在する上記[1]〜[6]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
[8]アンチモン化合物(D)が、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とのマスターバッチとして配合される上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリエステル樹脂組成物成形体は、耐衝撃性に優れ、難燃性が良好である。
このため、本発明のポリエステル樹脂組成物成形体は、電気自動車用の部品、電気電子機器用の部品、調理器具等の家電製品の部品として、例えば、電気自動車用充電器コネクター、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体、電子電気機器部品の筐体、コネクター、リレー、スィッチ、センサー、アクチュエーター、ターミナルスイッチ、炊飯器関連部品、グリル調理機器部品等に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得た成形体のコア部のSTEM写真である。
図2】実施例1で得た成形体のコア部のSTEM写真である。
図3】実施例1で得た成形体の表層部のSEM写真である。
【0012】
[発明の概要]
本発明のポリエステル樹脂組成物成形体は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)を、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、(A)を50〜80質量部、(B)を20〜50質量部含有し、さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、難燃剤(C)を3〜60質量部、アンチモン化合物(D)を0.5〜20質量部及びエラストマー(E)を5〜20質量部含有するポリエステル樹脂組成物からなる成形体であって、
成形体のコア部において、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)は共連続相を形成し、エラストマー(E)はポリカーボネート樹脂(B)相中に存在するモルフォロジーを有することを特徴とする。
本発明のポリエステル樹脂組成物成形体は、このようなモルフォロジーを形成していることで、耐衝撃性に優れた難燃性の成形体となる。
【0013】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。なお、本願明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、「ppm」は「質量ppm」を意味する。
【0014】
[熱可塑性ポリエステル樹脂(A)]
本発明のポリエステル樹脂組成物成形体の主成分である熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とは、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合あるいはこれらの化合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルの何れであってもよい。
【0015】
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を構成するジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体が好ましく使用される。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1、5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、アントラセン−2,5−ジカルボン酸、アントラセン−2,6−ジカルボン酸、p−ターフェニレン−4,4’−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、等が挙げられ、テレフタル酸が好ましく使用できる。
【0016】
これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を混合して使用しても良い。これらは周知のように、遊離酸以外にジメチルエステル等のエステル形成性誘導体として重縮合反応に用いることができる。
なお、少量であればこれらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を1種以上混合して使用することができる。
【0017】
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を構成するジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の脂環式ジオール等、及びそれらの混合物等が挙げられる。なお、少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合せしめてもよい。
また、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールも用いることができる。
【0018】
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
【0019】
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)としては、通常は主としてジカルボン酸とジオールとの重縮合からなるもの、即ち樹脂全体の50質量%、好ましくは70質量%以上がこの重縮合物からなるものを用いる。ジカルボン酸としては芳香族カルボン酸が好ましく、ジオールとしては脂肪族ジオールが好ましい。
【0020】
なかでも好ましいのは、酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、アルコール成分の95質量%以上が脂肪族ジオールであるポリアルキレンテレフタレートである。その代表的なものはポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートである。これらはホモポリエステルに近いもの、即ち樹脂全体の95質量%以上が、テレフタル酸成分及び1,4−ブタンジオール又はエチレングリコール成分からなるものであるのが好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂組成物は、その主成分がポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。
また、イソフタル酸、ダイマー酸、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリアルキレングリコール等が共重合されているものも好ましい。なお、これらの共重合体は、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が好ましくは2〜50モル%、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜30モル%である。
【0021】
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の固有粘度は、0.5〜2dl/gであるのが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.6〜1.8dl/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましく、0.8dl/g〜1.5dl/gがさらに好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物成形体が耐衝撃性等の機械強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。なお、熱可塑性ポリエステル樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定するものとする。
【0022】
[ポリカーボネート樹脂(B)]
本発明におけるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(B)を含有する。
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。
【0023】
原料のジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましく、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
【0024】
ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。更には、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
【0026】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、20000以上であることが好ましく、より好ましくは23000以上、25000以上であることがさらに好ましい。粘度平均分子量が20000より低いものを用いると、得られる樹脂組成物が耐衝撃性等の機械的強度の低いものとなりやすい。また60000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、35000以下であることがさらに好ましい。60000より高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
【0027】
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、20℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値を示す。
[η]=1.23×10−4Mv0.83
【0028】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
【0029】
ポリカーボネート樹脂(B)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)と共連続相構造を形成できる量であることが必要であり、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂組(B)の合計100質量部に対し、ポリカーボネート樹脂(B)が20〜50質量部であり、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは35質量部以上、特に好ましくは40質量部以上であり、好ましくは48質量部以下、より好ましくは46質量部以下、さらに好ましくは44質量部以下、特に好ましくは43質量部以下である。上記下限値を下回ると、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の耐衝撃性や靭性の改良効果が小さく、さらに、成形品において内反りが大きくなるため寸法特性が悪化する。また、上記上限値を上回ると流動性が悪くなり成形性が悪化する。
【0030】
[難燃剤(C)]
本発明において、ポリエステル樹脂組成物が含有する難燃剤(C)としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤を含有することができ、ハロゲン系難燃剤又はリン系難燃剤を含有することが好ましい。
【0031】
リン系難燃剤としては、例えば、エチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛等の、(ジ)ホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミンに代表されるメラミンとリン酸との反応生成物、リン酸エステル、環状フェノキシホスファゼン、鎖状フェノキシホスファゼン、架橋フェノキシホスファゼン等のホスファゼン等が挙げられ、中でも、(ジ)ホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミン、ホスファゼンが熱安定性に優れる点から好ましい。
【0032】
ハロゲン系難燃剤の好ましい具体例としては、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ビスフェノールA、グリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、臭素化イミド(臭素化フタルイミド等)等が挙げられ、中でも、臭素系難燃剤が好ましく、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリスチレン、グリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレートが、耐衝撃性の低下を抑制しやすい傾向にあり、より好ましい。
【0033】
難燃剤(C)としては、本発明のモルフォロジー構造を形成しやすい点及び熱安定性の良好な点から、臭素化ポリカーボネートが好ましい。
臭素化ポリカーボネートとしては、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は4−t−ブチルフェニル基や2,4,6−トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6−トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
【0034】
また臭素化ポリカーボネートにおける、カーボネート繰り返し単位数の平均は、適宜選択して決定すればよいが、通常2〜30である。カーボネート繰り返し単位数の平均が小さいと、溶融時にポリエステル樹脂の分子量低下を引き起こす場合がある。逆に大きすぎてもポリカーボネートの溶融粘度が高くなり、成形体内の分散不良を引き起こし成形体外観、特に光沢性が低下する場合がある。よってこの繰り返し単位数の平均は、中でも3〜15、特に3〜10であることが好ましい。
【0035】
臭素化ポリカーボネート系難燃剤の分子量は、任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは粘度平均分子量で1000〜20000、中でも2000〜10000であることが好ましい。なお、臭素化ポリカーボネート系難燃剤の粘度平均分子量は、前記したポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量の測定と同様にして求めることができる。
【0036】
上記臭素化ビスフェノールAから得られる臭素化ポリカーボネートは、例えば臭素化ビスフェノールとホスゲンとを反応させる通常の方法で得ることができる。末端封鎖剤としては芳香族モノヒドロキシ化合物が挙げられ、これはハロゲン又は有機基で置換されていてもよい。
【0037】
難燃剤(C)は、成形体のコア中において、好ましくはポリカーボネート樹脂(B)の相に存在するモルフォロジー構造を構成することとなる。この傾向は難燃剤(C)が臭素化ポリカーボネート系難燃剤である場合に顕著である。
難燃剤(C)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対して、3〜60質量部である。含有量が3質量部未満であると充分な難燃効果が得られず、また、60質量部を超えると耐衝撃性等の機械的強度、離型性の低下や難燃剤のブリードアウトの問題が生ずる。難燃剤(C)の好ましい含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、5〜50質量部であり、より好ましくは7〜40質量部、さらに好ましくは9〜30質量部、特に好ましくは10〜20質量部である。
【0038】
[アンチモン化合物(D)]
本発明において、ポリエステル樹脂組成物は、難燃助剤であるアンチモン化合物(D)を含有する。
そして、アンチモン化合物(D)は、好ましくは熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の相中に均一に分散して存在しているモルフォロジーを構成する。
アンチモン化合物(D)としては、アンチモン化合物(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。特に、耐衝撃性の点から三酸化アンチモンが好ましい。
【0039】
アンチモン化合物(D)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.5〜20質量部であり、より好ましくは0.7〜18質量部、さらに好ましくは1〜15質量部、特には1.5〜10質量部、最も好ましくは2〜8質量部である。上記下限値を下回ると難燃性が低下する。また、上記上限値を上回ると、結晶化温度が低下し離型性が悪化したり、耐衝撃性等の機械的物性が低下したりする。
なお、アンチモン化合物(D)は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とのマスターバッチとして配合されることが、アンチモン化合物(D)が熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相に存在しやすくなり好ましい。本発明においては、成形体コア部において、アンチモン化合物(D)の60%以上が熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相に存在することが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。これにより、アンチモン化合物(D)がポリカーボネート樹脂(B)に悪影響を与えにくい傾向となり、耐衝撃性等の機械的特性を良好に維持しやすい。
【0040】
ポリエステル樹脂組成物において、難燃剤(C)として臭素系難燃剤を使用する場合、臭素系難燃剤由来の臭素原子と、アンチモン化合物(D)由来のアンチモン原子の質量濃度は、両者の合計で3〜25質量%であることが好ましく、4〜22質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることがさらに好ましく、10〜20質量%であることが特に好ましい。3質量%未満であると難燃性が低下する傾向があり、16質量%を超えると機械的強度や耐トラッキング特性が低下する場合がある。また、臭素原子とアンチモン原子の質量比(Br/Sb)は、0.3〜5であることが好ましく、0.3〜4であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、難燃性が発現しやすい傾向にあり好ましい。
【0041】
[エラストマー(E)]
本発明で用いるエラストマー(E)としては、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)やポリカーボネート樹脂(B)に配合してその耐衝撃性を改良するのに用いられている熱可塑性エラストマーを用いればよく、例えばゴム性重合体やゴム性重合体にこれと反応する化合物を共重合させたものを用いる。エラストマー(E)のガラス転移温度は0℃以下、特に−20℃以下であるのが好ましい。
【0042】
エラストマー(E)の具体例としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム等)、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体(エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(エチレン・メタクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等)、エチレンと脂肪族ビニル化合物との共重合体、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとのターポリマー、アクリルゴム(ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体等)、シリコーン系ゴム(ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
尚、本発明において(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を意味する。
【0043】
またエラストマー(E)の他の例としては、ゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体が挙げられる。この単量体化合物としては例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げられる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0044】
エラストマー(E)は、アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーが好ましく、ブタジエン系及び/又はアクリル系ゴム性重合体にこれと反応する単量体化合物を共重合させたものが好ましい。
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有する耐衝撃性改良剤の具体例としては、例えばアクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム、また、これらゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体が挙げられる。この単量体化合物としては例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げられる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0045】
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーは、耐衝撃性改良の点から、コア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましく、ブタジエン成分含有ゴム及び/又はアクリル成分含有ゴム性重合体をコア層とし、その周囲にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物から選ばれる単量体を共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。
【0046】
コア/シェル型グラフト共重合体の例としては、ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、ブタジエン−メチルメタクリレート・スチレン共重合体、シリコーン・アクリル−メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体等が挙げられる。これらのゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、コア、シェルともにアクリル酸エステルであるアクリル系コア/シェル型のエラストマーが、耐衝撃性、耐熱老化性、耐光性の点から好ましい。
【0047】
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマー中のアクリル及び/又はブタジエン成分の含有量は、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは70〜85質量%ある。アクリル及び/又はブタジエン成分の含有量が50質量%未満であると、耐衝撃性に劣る傾向となり、90質量%を超えると、難燃性や耐候性が悪化する傾向となるため好ましくない。
【0048】
エラストマー(E)の平均粒子径は、5μm以下であることが好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下が特に好ましい。また、下限は通常100nmであり、好ましくは150nm、より好ましくは200nm、さらに好ましくは300nm以上、特に好ましくは400nm以上である。このような粒子径のエラストーを使用することにより、面衝撃性等の耐衝撃性、耐湿熱性、離型性等の成形性が良好となる傾向にあり好ましい。なお、エラストマー(E)の平均粒子径とは、モルフォロジー観察結果について、エラストマー分散相の200個以上の最大径を測定し、それらを算術平均して求められる値をいう。成形体のモルフォロジーの観察の具体的な方法についての詳細は、後述する。
【0049】
エラストマー(E)の含有量は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対し、5〜20質量部である。エラストマー(E)の含有量が5質量部未満では、耐衝撃性の改良効果が小さく、20質量部を超えると耐熱老化性や剛性、さらには流動性、難燃性が低下する。好ましいエラストマー(E)の含有量は、7質量部以上であり、16質量部以下、さらには13質量部以下である。
【0050】
[ポリエステル樹脂組成物成形体のモルフォロジー]
上記したように、本発明のポリエステル樹脂組成物成形体は、成形体のコア部において、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)は共連続相を形成し、エラストマー(E)はポリカーボネート樹脂(B)相中に存在するモルフォロジーを有する。好ましくは、アンチモン化合物(D)も、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相に存在する。
本発明において、コア部とは、成形体の深さ20μm未満の表層部を除く部分で、成形体の樹脂組成物流動方向に平行な断面の中心部をいい、表層部とは、成形体の表面から深さ20μm内部までの表層部分であって、樹脂組成物流動方向に平行な断面をいう。
【0051】
共連続相とは、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)からなる相と、ポリカーボネート樹脂(B)同士が互いに接している相とが、共に連続相をなしていることを意味する。このような共連続構造を有することにより、また、エラストマー(E)はポリカーボネート樹脂(B)相中に存在するモルフォロジーを有することにより、本発明の成形品は、難燃性及び耐衝撃性の両方に優れるという特性を発現する。共連続相の構造、形状及びその大きさは限定されない
【0052】
本発明のポリエステル樹脂組成物成形体のモルフォロジーの観察は、光学顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)等により成形体断面を観察することで測定できる。
具体的には、SEM、STEM、TEM分析装置を用い、成形体断面のコア部(深さ20μm未満の表層部を除く部分で、断面の中心部、樹脂組成物流動方向に平行な断面。)を、20kVの加速電圧下で、倍率3,000〜100,000倍の倍率により観察される。
【0053】
図1、2は、本発明成形体のモルフォロジーの一例を示すものであって、本発明の実施例1で得られた成形体のコア部のSTEM写真である。
図1中、流動方向は図1において左から右方向である。薄い灰色部分が熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相であり、それより濃い灰色がポリカーボネート樹脂(B)の相であり、両者は共連続構造を形成しているのが分かる。そのポリカーボネート樹脂(B)相中に白い丸の形で存在しているのがエラストマー(E)の相であり、エラストマー(E)がポリカーボネート樹脂(B)相中に存在していることが分かる。
薄い灰色部分の熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相中において、黒い部分で粒子径の大きいものがアンチモン化合物(D)(図1では三酸化アンチモン)であり、アンチモン化合物(D)の80%以上は熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の相に分散して存在していることも確認された。黒い部分で粒子径の小さいものは二酸化チタンと考えられる。また、難燃剤(C)は、ポリカーボネート樹脂(B)相中に存在すると考えられる。
【0054】
成形体コア部におけるエラストマー(E)の、ポリカーボネート樹脂(B)相中における平均径は、200nm以上であることが好ましく、300nm以上であることがより好ましく、400nm以上であることがさらに好ましく、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.2μm以下、特に好ましくは1μm以下である。
また、アンチモン化合物(D)の平均径は、4μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以下、さらには2μm以下であることが好ましい。
【0055】
エラストマー(E)相やアンチモン化合物(D)のドメイン(又は粒子)粒子径(分散径)等は、モルフォロジー観察で得られた像をそのまま又はこれらの像にコントラストを強調あるいは、明暗の調整又は両方の調整を像に施すことにより読み取ることができる。
エラストマー(E)相やアンチモン化合物(D)の粒子径等は、200個以上の粒子径を測定し、その最大径を算術平均して算出される。
【0056】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物成形体は、成形体の表層部においては、エラストマー(E)相は樹脂の流れ方向に伸びており、その長径と短径の比(長径/短径)が3〜20であることが好ましく、4〜17であることがより好ましく、6〜15であることがさらに好ましい。なお、長径とは、エラストマー粒子の最大径をいい、短径とは、長径に垂直な方向の径のうちの最大径とする。また、表層部とは、成形体表面から深さ20μmまでの領域をいう。
【0057】
成形体の表層部のこのような好ましいモルフォロジーは、例えば、図3を観察することにより確認できる。図3は、本発明の実施例1で得られた成形体の表層部のSEM写真である。
図3において、成形時の樹脂の流れ方向は図の左から右への方向である。薄い灰色で水平方向に細長く伸びているのがエラストマー(E)相であり、樹脂の流れ方向に伸びていることが確認できる。熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)は層状構造を形成していると考えられる。白い部分で粒子径の大きいものはアンチモン化合物(D)、粒子径の小さいものは二酸化チタンであると考えられる。
このように、本発明の成形体は特異なモルフォロジー構造を有する。
【0058】
[成形体モルフォロジーの好ましい制御法]
本発明の成形体は、このようなモルフォロジー構造を有することによって、難燃性と耐衝撃性の両方に優れた難燃性の成形体となる。
本発明の樹脂組成物成形体の製造に用いるポリエステル樹脂組成物は、押出機等の溶融混練機を用いた溶融混練法により製造することが好ましいが、ポリエステル樹脂組成物の原料各成分を混合して、単に混練するだけでは、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成することは難しく、特別の方法により混練することが推奨される。
以下に、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成するための好ましい製造方法について、説明する。
【0059】
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、難燃剤(C)、アンチモン化合物(D)及びエラストマー(E)を、それぞれ所定の割合で混合後、ダイノズルが設けられた単軸又は二軸の押出機に供給後、溶融混練し、ダイノズルから樹脂組成物を押出してストランド状とした後に、切断してペレットを製造する。
この際、溶融混練機としては、二軸押出機を用いることが好ましい。中でも、スクリューの長さL(mm)と同スクリューの直径D(mm)の比であるL/Dが、20<(L/D)<100の関係を満足することが好ましく、30<(L/D)<70を満足することがより好ましい。かかる比が20以下では、ポリカーボネート樹脂(B)と難燃剤(C)、アンチモン化合物(D)及びエラストマー(E)が微分散しにくく、逆に100を超えても、難燃剤(C)の熱劣化が著しく、微分散されにくくなる傾向があり好ましくない。
ダイノズルの形状も特に限定されないが、ペレット形状の点で、直径1〜10mmの円形ノズルが好ましく、直径2〜7mmの円形ノズルがより好ましい。
【0060】
また、溶融混練時の樹脂組成物の溶融温度は200〜300℃であることが好ましく、210〜295℃であることがより好ましい。溶融温度が200℃未満では、溶融不十分となり、未溶融ゲルが多発しやすく、逆に300℃を超えると、樹脂組成物が熱劣化し、着色しやすくなる等好ましくない。
【0061】
溶融混練時のスクリュー回転数は、100〜1,000rpmであることが好ましく、50〜800rpmがより好ましい。スクリュー回転数が100rpm未満であると、難燃剤(C)、アンチモン化合物(D)及びエラストマー(E)が微分散しにくい傾向にあり、逆に1,000rpmを超えても、アンチモン化合物(D)が凝集し、微分散しない傾向となり好ましくない。また、吐出量は5〜1,000kg/hrであることが好ましく、10〜900kg/hrがより好ましい。吐出量が5kg/hr未満であると、アンチモン化合物(D)の分散性が低下する傾向にあり、1,000kg/hrを超えても、アンチモン化合物の再凝集により、分散性が低下する傾向となり好ましくない。
【0062】
ダイノズルにおけるポリエステル樹脂組成物のせん断速度は、10〜10,000sec−1であることが好ましく、50〜5,000sec−1であることがより好ましく、70〜1,000sec−1であることがさらに好ましい。せん断速度を上記の範囲とすることにより、難燃剤(C)、アンチモン化合物(D)及びエラストマー(E)の再凝集を抑制し、本発明で規定するモルフォロジーを安定して形成しやすい傾向にあり好ましい。かかるせん断速度は、一般的に樹脂組成物の吐出量とダイノズルの断面の形状より決定されるものであり、例えば、ダイノズルの断面が円形の時は、γ=4Q/πrにより算出することができる。ここで、γはせん断速度(sec−1)、Qはダイノズル1本当たりの樹脂組成物の吐出量(cc/sec)、rはダイノズル断面の半径(cm)をそれぞれ表す。
【0063】
ダイノズルからストランド状に押し出された樹脂組成物は、ペレタイザー等により切断しペレット形状とするが、本発明においては、切断時のストランドの表面温度が60〜150℃、特に70〜150℃となるようにストランドを冷却することが好ましい。通常、空冷、水冷等の方法により冷却されるが、冷却効率の点で、水冷することが好ましい。かかる水冷にあたっては、水を入れた水槽中にストランドを通して冷却すればよく、水温と冷却時間を調整することにより、所望のストランド表面温度とすることができる。このようにして製造されたペレットの形状は、円柱状の場合は、径が好ましくは1〜8mm、より好ましくは2〜6mm、さらに好ましくは3〜5mm、長さが好ましくは1〜10mm、より好ましくは2〜6mm、さらに好ましくは3〜5mmである。
【0064】
また、本発明においては、上記ダイノズルにおけるせん断速度γ(sec−1)と上記ストランド切断時のストランドの表面温度T(℃)との関係が、
1×10<(γ・T)<9.9×10
の関係を満足することにより、電気絶縁性、靱性、難燃性が向上する傾向にあり好ましい。(γ・T)の値を上記範囲とすることにより、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成しやすい傾向となる。また、樹脂組成物の各成分の分散不良による成形品表面の肌荒れ現象や、難燃剤(C)、アンチモン化合物(D)及びエラストマー(E)の再凝集による靱性の低下を抑制しやすく、さらに、機械的特性、難燃性及び絶縁特性等を良好に保つことが容易となる。(γ・T)の下限は1×10であることがより好ましく、上限は8.5×10であることがより好ましい。
(γ・T)の値を上記の範囲に調整するためには、上記のせん断速度とストランドの表面温度を調整すればよい。
【0065】
本発明においては、上記の好ましい条件を単独でも、また複数を組み合わせて適用することにより、本発明で規定するモルフォロジー構造を有するポリエステル樹脂組成物を製造することができるが、中でも、(γ・T)の値が上記式を満たすような製造条件を採用することが効果的である。
【0066】
このようなポリエステル樹脂組成物の製造方法を採用することにより、本発明で規定するモルフォロジー構造を有するポリエステル組成物成形体を安定して製造することができる。しかし、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造は、かかる方法に限られるものではなく、本発明が規定するモルフォロジー構造が得られる限り、他の方法を用いてもよい。
【0067】
また、本発明のモルフォロジー構造を有する成形体を安定して形成しやすくするには、以下の1)〜8)の方法・条件を適用したポリエステル樹脂組成物を用いて成形体を製造することも好ましい。
1)臭素化ポリカーボネート系難燃剤中の不純物である塩素化合物の含有量を、通常0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.08質量%以下、さらには0.05質量%以下、特には0.03質量%以下とすることが好ましい。このように制御することで、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成しやすくなる。
不純物である塩素化合物は塩素化ビスフェノール化合物等である。このような塩素化合物が上記量以上存在すると、本発明のモルフォロジー構造を安定して形成しにくくなる。なお、塩素化合物含有量は、270℃で10分間の加熱により発生したガスを、ガスクロマトグラフィー法により分析し、デカン換算の値として定量することができる。
【0068】
2)ポリエステル樹脂組成物中の遊離の臭素、塩素、硫黄の量を特定量以下にすることも本発明のモルフォロジー構造を安定して形成しやする上で有効である。遊離の臭素の量は、800ppm以下とすることが好ましく、700ppm以下がより好ましく、650ppm以下がさらに好ましく、480ppm以下が特に好ましい。また、含有量を0ppmまでに除去することは、経済性を度外視するような精製を必要とするので、その下限量は、通常1ppmであり、好ましくは5ppmであり、より好ましくは10ppmである。
遊離の塩素の量は、500ppm以下とすることが好ましく、350ppm以下がより好ましく、200ppm以下がさらに好ましく、150ppm以下が特に好ましい。なお、樹脂組成物中の塩素含有量は、塩素がどの様な状態・形態で樹脂組成物中に存在していたかは限定されない。塩素は、使用する原料、添加剤、触媒、重合雰囲気、樹脂の冷却水等、種々の環境より混入するので、それらの混入量の総計を、500ppm以下と制御することが好ましい。
また、遊離の硫黄の量は、250ppm以下とすることが好ましく、200ppm以下がより好ましく、150ppm以下がさらに好ましく、100ppm以下が特に好ましい。なお、樹脂組成物中の硫黄含有量は、硫黄がどの様な状態・形態で樹脂組成物中に存在していたかは限定されない。硫黄は、使用する原料、添加剤、触媒、重合雰囲気等、種々の環境より混入するので、それらの混入量の総計を、250ppm以下と制御することが好ましい。
【0069】
なお、ポリエステル樹脂組成物中の遊離臭素、塩素、硫黄の含有量は、燃焼イオンクロマトグラフィー法により測定することができる。具体的には、三菱化学アナリテック社製「AQF−100型」の自動試料燃焼装置を用い、アルゴン雰囲気下、270℃、10分の条件で樹脂組成物を加熱し、発生した臭素、塩素、硫黄の量を、日本ダイオネクス社製「ICS−90」を用いて定量することにより求めることができる。
【0070】
3)また、アンチモン化合物(D)として、三酸化アンチモンを使用する。
【0071】
4)難燃剤(C)として、臭素化ポリカーボネート系難燃剤を使用する。臭素化ポリカーボネート系難燃剤は、他の難燃剤に比べてポリカーボネート樹脂(B)相に取り込まやすいため、これによりポリカーボネート樹脂(B)相が大きくなり、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)が共連続構造を形成しやすくなる。
【0072】
5)エラストマー(E)の平均粒子径が、300〜1,500nmと比較的大きな粒子径のものを使用する。これによりエラストマー(E)を取り込んだポリカーボネート樹脂(B)相が大きくなり、ポリカーボネート樹脂(B)相同士が接触しやすくなることにより、コア部において共連続構造を形成しやすくなり、さらに表層部において、エラストマー(E)相が樹脂流動方向に配向しやすくなる。
【0073】
6)アンチモン化合物(D)を、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とのマスターバッチとして配合する。これにより、アンチモン化合物(D)が、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相に存在しやすくなる。
【0074】
7)安定剤として、ステアリルアシッドホスフェートの亜鉛塩を配合する。これにより、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とのエステル交換がより抑制されやすく、本発明のモルフォロジー構造を有する成形体を安定して形成しやすくなる。
【0075】
8)また、射出成形により成形体を製造する場合は、射出速度を5〜1,000mm/sec、さらには10〜900mm/sec、特に20〜800mm/sec、30〜700mm/secの成形条件を採用することが好ましい。これにより、表層部において、エラストマー(E)相が樹脂流動方向に配向しやすくなる。
【0076】
特に、上記4)〜8)により、コア部において、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)の共連続構造が形成され耐衝撃性が向上し、さらに、表層部では、エラストマー(E)相が配向することにより、衝撃によるクレイズの伸長がエラストマー配向相で停止するため、耐衝撃性の向上につながると考えられる。
また、ポリカーボネート樹脂(B)を劣化させやすいアンチモン化合物(D)が熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相に存在しやすくなるため、ポリカーボネート樹脂(A)に対する悪影響が抑制でき、耐衝撃性の低下が抑えられる傾向となる。
【0077】
これら1)〜8)の方法・条件は、これを単独でも、また複数を組み合わせて適用することも好ましく、また前記した樹脂組成物の製造条件と組み合わせて適用することでもより可能となる。
【0078】
[安定剤]
ポリエステル樹脂組成物は、さらに安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度及び色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤及びフェノール系安定剤が好ましい。
特にリン系安定剤を含有すると、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)と難燃剤(C)との相互の相溶性を格段に向上させることができ、本発明のモルフォロジー構造を有する成形体を安定して形成しやすくなる。
【0079】
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも有機リン酸エステル化合物が好ましい。
【0080】
有機リン酸エステル化合物は、リン原子にアルコキシ基又はアリールオキシ基が1〜3個結合した部分構造を有するものである。なお、これらのアルコキシ基やアリールオキシ基には、さらに置換基が結合していてもよい。好ましくは、下記一般式(1)〜(5)のいずれかで表される有機リン酸エステル化合物を用いる。有機リン酸エステル化合物は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
【化1】
一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。Mはアルカリ土類金属又は亜鉛を表す。
【0082】
【化2】
一般式(2)中、Rはアルキル基又はアリール基を表し、Mはアルカリ土類金属又は亜鉛を表す。
【0083】
【化3】
一般式(3)中、R〜R11は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。M’は3価の金属イオンとなる金属原子を表す。
【0084】
【化4】
一般式(4)中、R12〜R14は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。M’は3価の金属イオンとなる金属原子を表し、2つのM’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0085】
【化5】
一般式(5)中、R15はアルキル基又はアリール基を表す。nは0〜2の整数を表す。なお、nが0又は1のとき、2つのR15は同一でも異なっていてもよい。
【0086】
一般式(1)〜(5)中、R〜R15は、通常は炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基である。滞留熱安定性、耐薬品性、耐湿熱性等の観点からは、炭素数2〜25のアルキル基であるのが好ましく、更には炭素数6〜23のアルキル基であるのが最も好ましい。アルキル基としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。また、一般式(1)、(2)のMは亜鉛であるのが好ましく、一般式(3)、(4)のM’はアルミニウムであるのが好ましい。
【0087】
有機リン酸エステル化合物の好ましい具体例としては一般式(1)の化合物としてはビス(ジステアリルアシッドホスフェート)亜鉛塩、一般式(2)の化合物としてはモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩、一般式(3)の化合物としてはトリス(ジステアリルアッシドホスフェート)アルミニウム塩、一般式(4)の化合物としては1個のモノステアリルアッシドホスフェートと2個のモノステアリルアッシドホスフェートアルミニウム塩との塩、一般式(5)の化合物としてはモノステアリルアシッドホスフェートやジステアリルアシッドホスフェート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また混合物として用いてもよい。
【0088】
有機リン酸エステル化合物としては、エステル交換抑制効果が非常に高く、射出成形機での計量部の設定温度を高めに設定することが可能となって成形が安定すること、また耐加水分解性、耐衝撃性が優れる観点から、前記一般式(1)で表される有機リン酸エステル化合物の亜鉛塩であるビス(ジステアリルアシッドホスフェート)亜鉛塩、前記一般式(2)で表される有機リン酸エステル化合物の亜鉛塩であるモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩を用いるのが好ましい。これらの市販のものとしては、城北化学工業製「JP−518Zn」等がある。
【0089】
有機リン酸エステル化合物の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対し、好ましくは0.001〜1質量部である。含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。有機リン酸エステル化合物の含有量は、より好ましくは0.01〜0.8質量部であり、更に好ましくは、0.05〜0.7質量部、特に好ましくは0.1〜0.5質量部である。
【0090】
フェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−ネオペンチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0091】
フェノール系安定剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対し、好ましくは0.001〜1質量部である。含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。フェノール系安定剤の含有量は、より好ましくは0.001〜0.7質量部であり、更に好ましくは、0.005〜0.5質量部である。
【0092】
[無機充填材(強化材)]
本発明のポリエステル樹脂組成物には、無機充填材を含有させてその機械的特性を向上させることができる。無機充填材としては常用のものをいずれも用いることができる。具体的には例えば、ガラス繊維、炭素繊維、鉱物繊維等の繊維状無機充填材が挙げられるが、中でもガラス繊維を用いることが好ましい。本発明においては、無機充填材は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対して、100質量部以下、中でも20〜80質量部を含有させることが好ましい。
【0093】
[滴下防止剤]
ポリエステル樹脂組成物は、滴下防止剤を含有することも好ましい。滴下防止剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、フィブリル形成能を有し、樹脂組成物中に容易に分散し、かつ樹脂同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示すものである。ポリテトラフルオロエチレンの具体例としては、例えば三井・デュポンフロロケミカル社より市販されている商品名「テフロン(登録商標)6J」又は「テフロン(登録商標)30J」、ダイキン工業社より市販されている商品名「ポリフロン(登録商標)」あるいは旭硝子社より市販されている商品名「フルオン(登録商標)」等が挙げられる。
【0094】
滴下防止剤の含有割合は、好ましくは、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対して0.01〜20質量部である。滴下防止剤が0.01質量部未満では難燃性が不十分になりやすく、20質量部を超えると外観が悪くなりやすい。滴下防止剤の含有割合は、より好ましくは、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.05〜10質量部であり、さらに好ましくは0.08〜5質量部、特に好ましくは0.1〜1質量部である。
【0095】
[離型剤]
ポリエステル樹脂組成物は、更に、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、金属膜密着性を阻害しにくいという点で、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましい。
【0096】
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、質量平均分子量が、700〜10,000、更には900〜8,000のものが好ましい。
【0097】
脂肪酸エステル系化合物としては、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等が挙げられ、中でも、炭素数11〜28、好ましくは炭素数17〜21の脂肪酸で構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。
【0098】
また、シリコーン系化合物としては、ポリエステル樹脂との相溶性等の点から、変性されている化合物が好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端及び/又は片末端に有機基を導入したシリコーンオイル等が挙げられる。導入される有機基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基等が挙げられ、好ましくはエポキシ基が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
【0099】
離型剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.05〜2質量部であることが好ましい。0.05質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下する傾向があり、一方、2質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また成形体表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、より好ましくは0.07〜1.5質量部、更に好ましくは0.1〜1.0質量部である。
【0100】
[その他含有成分]
ポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、染料、蛍光増白剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
特に、顔料として酸化チタンを配合することにより、耐衝撃特性が良好となり好ましい。顔料の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.5〜10質量部であることが好ましい。0.5質量部未満であると、耐衝撃特性、難燃性が低下する傾向があり、一方、10質量部を超えると、生産性が悪化する傾向となり好ましくない。顔料の含有量は、より好ましくは1〜8質量部、更に好ましくは2〜6質量部である。
【0101】
また、本発明に係るポリエステル樹脂組成物には、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)以外の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損わない範囲で含有することもできる。その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイドエチレン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0102】
[成形体]
本発明のポリエステル樹脂組成物成形体は、その形状、模様、色、寸法等に制限はなく、その成形体の用途に応じて任意に設定すればよい。
成形体の成形方法自体は、特に限定されず、ポリエステル樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられるが、特には射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法等の射出成形による方法が好ましく適用される。
【0103】
射出成形において、本発明で規定するモルフォロジー構造を有する成形体とするためには、例えば、射出成形機のスクリュー構成、スクリューやシリンダー内壁の加工、ノズル径、金型構造等の成形機条件の選択、可塑化、計量、射出時等の成形条件の調整、成形材料への他成分の添加等、種々の方法が挙げられる。特に、可塑化、計量、射出時の条件として、例えば、シリンダー温度、背圧、スクリュー回転数、射出速度等を調整することが好ましい。例えば、シリンダー温度を調整する場合は、好ましくは230〜280℃、より好ましくは240〜270℃に設定する。背圧を調整する場合は、好ましくは2〜15MPa、より好ましくは4〜10MPaに設定する。スクリュー回転数を調整する場合は、好ましくは20〜300rpm、より好ましくは20〜250rpmに設定する。射出速度を調整する場合は、好ましくは5〜1,000mm/sec、より好ましくは10〜900m/sec、さらに好ましくは20〜800mm/sec、30〜500mm/secに設定することが好ましい。これらの中でも、成形体表層部において、エラストマー(E)相をより配向させやすくするために、射出速度を調整する方法を採用することが特に好ましい。
【0104】
このように、本発明の成形体は、耐衝撃性と難燃性に優れているため、電気自動車用充電器コネクター、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体として特に好適である。
電気自動車用充電器コネクターは、蓄電量が低下した場合に充電器を備えた設備において充電することになるが、当該設備で使用する電気自動車用充電器の接触式コネクターである。電池キャパシタ用ホルダーは、充電器(バッテリー)とは別に非常用補助電源としての大容量キャパシタを保持するホルダーである。電池キャパシタ用筐体は、上記キャパシタを構成する筐体でである。また、電気自動車用充電スタンド用筺体は、100Vあるいは200Vの交流電源から電気自動車のバッテリーに充電するためのスタンドを構成する筺体である。
【実施例】
【0105】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、使用した成分は、以下の表1の通りである。
【0106】
【表1】
【0107】
なお、上記難燃剤中の遊離の臭素、塩素、硫黄含有量は、燃焼イオンクロマトグラフィー法により定量した。三菱化学アナリテック社製「AQF−100型」の自動試料燃焼装置を用い、アルゴン雰囲気下、270℃、10分の条件で臭素化ポリカーボネート系難燃剤を加熱し、発生した臭素、塩素及び硫黄の量を、日本ダイオネクス社製「ICS−90」を用いて測定した。
【0108】
(実施例1〜6)
表1に記載の各原料成分を以下の表2に記載の配合割合(質量部)になるように、噛み合い型同方向2軸スクリュー式押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」、スクリュー径32mm、L/D=54.2)に40kg/hrにて供給した。アンチモン化合物(D)は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とアンチモン化合物(D)とのマスターバッチとして配合した(マスターバッチ中のアンチモン化合物(D)の含有量は70質量%)。押出機のバレル設定温度をC1〜C15を260℃、ダイを250℃、スクリュー回転数を200rpmとし、ノズル数4穴(円形(φ4mm)、長さ1.5cm)、せん断速度(γ)211sec−1の条件下でストランドとして押出した。押出した直後のストランド温度は270℃であった。
押出されたストランドを、温度を30〜50℃の範囲に調整した水槽に導入して冷却した。ストランド表面温度(T)は、赤外線温度計で測定される温度で65℃まで冷却され(γ・T=1.4×10)、ペレタイザーに挿入してカッティングして、樹脂組成物のペレットを製造した。
【0109】
得られたペレットを、120℃で7時間加熱乾燥し、射出成形機(日本製鋼所社製「J85AD」)を用いてシリンダー温度250℃、金型温度80℃、射出圧150MPa、射出保圧時間15sec、冷却時間15sec、射出速度120mm/sec、背圧5MPa、スクリュー回転数100rpmの条件で、モルフォロジー観察用のISO引張試験片(厚さ4mm)及びシャルピー衝撃強度、面衝撃強度、難燃性評価用の試験片を射出成形した。
【0110】
(比較例1〜3)
表1に記載の各成分を表2に記載の配合割合(質量部)になるように、噛み合い型同方向2軸スクリュー式押出機(日本製鋼所社製「TEX44αII」、スクリュー径47mm、L/D=55.2)に300kg/hrにて供給した。押出機のバレル設定温度をC1〜C15を260℃、ダイを250℃、スクリュー回転数を230rpmとし、ノズル数10穴(円形(φ4mm)、長さ1.5cm)、せん断速度(γ)1012sec−1の条件下でストランドとして押出した。押出した直後のストランド温度は290℃であった。
押出されたストランドを、温度を30〜50℃の範囲に調整した水槽に導入して冷却した。ストランド表面温度(T)は、赤外線温度計で測定される温度で125℃まで冷却され(γ・T=1.3×10)、ペレタイザーに挿入してカッティングして、樹脂組成物のペレットを製造した。
【0111】
得られたペレットを、120℃で7時間加熱乾燥し、射出成形機(日本製鋼所社製「J85AD」)を用いてシリンダー温度250℃、金型温度80℃、射出圧150MPa、射出保圧時間15sec、冷却時間15sec、射出速度15mm/sec、背圧5MPa、スクリュー回転数100rpmの条件で、モルフォロジー観察用のISO引張試験片(厚さ4mm)試験片及びシャルピー衝撃強度、面衝撃強度、難燃性評価用の試験片を射出成形した。
【0112】
(1)モルフォロジー観察:
得られたISO引張試験片(厚さ4mm)のコア部(深さ20μm未満の表層部以外の部分で、試験片断面の中心部の、樹脂組成物流動方向に平行な断面)から、Leica社製「UC7」を用い、ダイヤモンドナイフで厚さ100nmの超薄切片を切り出した。得られた超薄切片を四酸化ルテニウムで40分染色後、日立ハイテク社製「S−4800」を用い、加速電圧25kVの条件で、STEM観察した。
【0113】
得られたSTEM写真をもとに、以下の評価を行った。
i)熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相及びポリカーボネート樹脂(B)相が、共連続相を形成しているかどうか。共連続相を形成しているものを「○」、形成していないものを「×」と下記表2に記載した。
ii)エラストマー(E)がポリカーボネート樹脂(B)相中に存在しているどうか。ポリカーボネート樹脂(B)相中に存在する場合を「PC相」、ポリカーボネート樹脂(B)相に存在しない場合を「×」と記した。
iii)エラストマー(E)相の粒子径の測定
200個の最大粒子径を測定し、算術平均して算出した。
iv)アンチモン化合物(D)が、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相中に存在するかどうか。なお、アンチモン化合物(D)の80%以上が熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相中に存在する場合を「PBT相」、アンチモン化合物(D)の80%以上が熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相に存在しない場合を「×」とした。
【0114】
また、表層部観察用の試料としては、得られたISO引張試験片断面の表層部(深さ20μm未満の表層部)を、Leica社製「UC7」を用い、ダイヤモンドナイフで厚さ100nmの超薄切片を切り出した後の切削断面を用いた。得られた切削断面を四酸化ルテニウムで40分染色後、日立ハイテク社製「SU8020」を用い、加速電圧3kVの条件で、SEM観察した。
【0115】
得られたSEM写真をもとに、以下の評価を行った。
v)エラストマー(E)相が樹脂の流れ方向に伸びているかどうか(伸びているものを「○」、伸びていないものを「×」)。
vi)エラストマー(E)相の長径と短径の比の測定
エラストマー(E)相200個について、長径と短径を測定し、長径/短径比を算術平均した。なお、長径とは、エラストマー粒子の最大径とし、短径とは、長径に垂直な方向の径のうちの最大径とした。
【0116】
実施例1の成形体のコア部は、それぞれ図1、2に示すとおりであり、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相及びポリカーボネート樹脂(B)相が共連続相を形成していること、エラストマー(E)がポリカーボネート樹脂(B)相中に存在していること、アンチモン化合物(D)の80%以上が熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の相中に均一に分散して存在していることが確認できた。実施例1では、難燃剤として臭素化ポリカーボネートを使用しているため、難燃剤は、ポリカーボネート樹脂(B)相に存在していると考えられる。また、実施例1の表層部を示す図3から、表層部においてエラストマー(E)相が樹脂の流れ方向に伸びていることも確認できた。また、実施例2〜6の成形体についても同様のモルフォロジーを示していることが確認された。
【0117】
一方、比較例1〜3の成形体コア部では、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相及びポリカーボネート樹脂(B)相は共連続相を形成しておらず、アンチモン化合物(D)の80%以上が熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相に存在していないことが観察できた。難燃剤(C)とポリカーボネート樹脂(B)との相溶性及びモルフォロジー観察結果を考慮すると、比較例1〜3では、難燃剤(C)はポリカーボネート樹脂(B)相ではなく、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)相に存在していると考えられる。また、比較例1〜3の表層部では、エラストマー(E)相は樹脂の流れ方向に伸びる傾向にはあるものの、長径/短比が実施例のものに比べて小さかった。
【0118】
さらに、以下の各特性評価用の試験片についても、同様にモルフォロジー観察を行った結果、上記モルフォロジー観察用のISO引張試験片(厚さ4mm)について行った実施例、比較例と同様のモルフォロジー観察結果であることが確認された。
【0119】
なお、難燃性及び耐衝撃性の評価は、以下のようにして行った。
【0120】
(1)難燃性(UL94):
アンダーライターズ・ラボラトリーズのサブジェクト94(UL94)の方法に準じ、5本の試験片(厚み:1.5mm)を用いて難燃性を試験し、V−0、V−1及びV−2に分類した。
さらに、94−5V規格(試験片厚み:3.0mm)に準拠して評価を行い、5VAレベルに適合するか不適合であるかを判定した。
【0121】
(2)耐衝撃性(シャルピー衝撃強度、面衝撃強度):
ISO試験片(厚さ4.0mm)を射出成形し、ISO179規格に準拠して試験片から厚さ4.0mmのノッチ付試験片を作製し、ノッチ付きシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
さらに、面衝撃強度として、大きさ150×80×40mmの箱型成形品(厚さ1.5mm)を射出成形し、2.975kgの鋼球を所定の高さから落下させ、成形品が全破壊するときの高さ(単位:cm)を求めた。全破壊するときの高さが高いほど、面衝撃性に優れているといえる。
以上の評価結果を表2に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
表2より、本発明で規定するモルフォロジーを有する本発明のポリエステル樹脂組成物成形体は、耐衝撃性と難燃性に優れた成形体であることが分かる。これに対し、本発明のモルフォロジーを有さない比較例の成形体は、本発明の効果を満足するものではないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明のポリエステル樹脂組成物成形体は、耐衝撃性に優れた難燃性の成形体であるので、電気自動車用充電器コネクター、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体等における成形部品として特に好適に使用できる。また電気電子機器部品や建材部品等にも好適に使用できるので、産業上の利用性は非常に高い。
図1
図2
図3