特許第6071810号(P6071810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071810
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   A47J27/00 109G
   A47J27/00 103A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-180870(P2013-180870)
(22)【出願日】2013年9月2日
(65)【公開番号】特開2015-47331(P2015-47331A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 直也
【審査官】 長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−054916(JP,A)
【文献】 特開2005−334554(JP,A)
【文献】 特開平02−280716(JP,A)
【文献】 特開2008−119417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
該本体内に出し入れ自在に収容される内釜と、
前記本体に回動自在に設けられ、前記内釜上方を覆う蓋体と、
前記本体内に設けられ、前記内釜を加熱する誘導加熱手段と、
前記本体内、あるいは前記蓋体、あるいはその両方に設けられた輻射式加熱手段と、
前記誘導加熱手段に電力供給するインバーター回路を構成するスイッチング素子と、
該スイッチング素子の駆動周波数を検出する周波数検出手段と、
前記輻射式加熱手段と前記スイッチング素子と前記周波数検出手段を制御するためのマイコンを有する制御手段と、を備え、
該制御手段は、前記周波数検出手段が検出した前記スイッチング素子の駆動周波数から電源電圧を算出し、その算出した電源電圧に応じて前記輻射式加熱手段の出力が一定となるように、前記輻射式加熱手段の通電率を制御するようにしたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記蓋体、あるいは前記本体に炊飯を開始するための炊飯ボタンを備え、
前記炊飯ボタンの操作で炊飯が開始されると、
前記周波数検出手段は、炊飯開始から所定の時間内に前記スイッチング素子がオンした回数あるいはオフした回数あるいはその両方を計測し、その回数により前記スイッチング素子の駆動周波数を検出することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記蓋体あるいは前記本体の何れかに炊飯を開始するための炊飯ボタンを備え、
前記マイコンはあらかじめ設定された炊飯を実行する複数の工程を有しており、
前記炊飯ボタンの操作で炊飯が開始されると、
前記複数の工程の内、前記スイッチング素子が動作する工程において、前記周波数検出手段は、炊飯開始から所定の時間内に前記スイッチング素子がオンした回数あるいはオフした回数あるいはその両方を計測し、その回数により前記スイッチング素子の駆動周波数を検出することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記複数の工程の内、前記スイッチング素子が動作する工程において、その工程の中で最初に前記スイッチング素子が動作するときに、前記周波数検出手段は、炊飯開始から所定の時間内に前記スイッチング素子がオンした回数あるいはオフした回数あるいはその両方を計測し、その回数により前記スイッチング素子の駆動周波数を検出することを特徴とする請求項3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記複数の工程の内、前記スイッチング素子が動作しない工程において、前記スイッチング素子が動作する工程で前記周波数検出手段が検出した前記スイッチング素子の駆動周波数から電源電圧を算出するようにしたことを特徴とする請求項3又は請求項4何れか1つに記載の炊飯器。
【請求項6】
前記複数の工程の内、前記スイッチング素子が動作しない工程の、直前の前記スイッチング素子が動作する工程で前記周波数検出手段が検出した前記スイッチング素子の駆動周波数から電源電圧を算出するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に家庭で使用される炊飯器に関し、詳しくは誘導加熱手段と輻射式加熱手段を有する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炊飯を主に実行するための誘導加熱手段を構成する加熱コイルを内釜の底に有し、炊飯を補助的に実行あるいは結露を防止するための輻射式加熱手段を内釜の側面や蓋体に有した炊飯器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−289430号公報(第2頁、第3頁、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
誘導加熱手段は、商用電源の電圧が変動しても電圧変動に伴って通電率を可変し、一定の出力を維持するように制御される。不特定多数の鍋が被加熱物となるIHクッキングヒーターと異なり、炊飯器は特定の内釜と誘導加熱手段を構成する加熱コイルとの関係が常に同条件であるので、一定の出力を維持しやすく制御が比較的容易である。
【0005】
しかし、輻射式加熱手段は商用電源の電圧が変動すると、その影響をまともに受けて出力電圧も変動してしまう。よって従来の炊飯器では、商用電源の電圧変動に応じて輻射式加熱手段の出力電圧を制御するために、平滑コンデンサの電圧を抵抗で分圧した後に制御手段へ出力、そして、その信号に基づきヒーターの通電率を制御している。
【0006】
このような構成の場合、平滑コンデンサの容量値を10μF前後とすることが多く、高周波電源の出力がオフのときは、平滑コンデンサの電圧は直流電圧となり電圧値はほぼ商用電源のピーク電圧になるが、高周波電源の出力がオンのときは、平滑コンデンサの電圧は商用電源の交流電圧を整流器にて全波整流した電圧になる。
【0007】
すなわち、平滑コンデンサの電圧を抵抗で分圧した後に、制御手段へ出力される電圧は、高周波電源がオフのときは、商用電源のピーク電圧を抵抗で分圧した直流電圧になるが、高周波電源がオンのときは、幾分リップル成分のある電圧値になり、かつそのピーク値は高周波電源がオフのときよりも低い値となる。
【0008】
したがって、制御手段は、商用電源の電圧値が同じでも、高周波電源の出力の有無によって、検知する電圧値が異なってしまうので、整流器の入力側より入力し商用電源の電圧を検知する新たな構成手段を設けなければならず、回路が複雑かつ高価な構成となってしまうという課題があった。
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するために、回路構成が複雑にならず、しかも安価な構成で、かつ高周波電源の出力時に電源電圧を正確に算出できる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決する本発明に係る炊飯器は、本体と、本体内に出し入れ自在に収容される内釜と、本体に回動自在に設けられ、内釜上方を覆う蓋体と、本体内に設けられ、内釜を加熱する誘導加熱手段と、本体内、あるいは蓋体、あるいはその両方に設けられた輻射式加熱手段と、誘導加熱手段に電力供給するインバーター回路を構成するスイッチング素子と、スイッチング素子の駆動周波数を検出する周波数検出手段と、輻射式加熱手段とスイッチング素子と周波数検出手段を制御するためのマイコンを有する制御手段と、を備え、制御手段は、周波数検出手段が検出したスイッチング素子の駆動周波数から電源電圧を算出し、その算出した電源電圧に応じて輻射式加熱手段の出力が一定となるように、輻射式加熱手段の通電率を制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スイッチング素子の駆動周波数を検出し、その検出した駆動周波数から電源電圧を算出するようにしたので、専用の電源電圧検出回路を設けることなく輻射式加熱手段の出力を制御する電源電圧を取得でき、安価な回路構成で商用電源の電圧変動による影響を抑え、輻射式加熱手段の通電率が制御できるので、輻射式加熱手段の出力を一定に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の概略構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の概略構成を示す蓋体を開けた状態の斜視図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の内部構成を示す断面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の概略構成を示す回路図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の駆動周波数と電源電圧の関係を示すグラフである。
図6】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の輻射式加熱手段の通電率制御を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
(全体の構成)
図1は本発明の実施の形態1に係る炊飯器の概略構成を示す斜視図、図2は本発明の実施の形態1に係る炊飯器の概略構成を示す蓋体を開けた状態の斜視図、図3は本発明の実施の形態1に係る炊飯器の内部構成を示す断面図である。図1から図3により、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の概略全体構成を説明する。
【0014】
図1に示すように、100は本発明の実施の形態1に係る炊飯器であり、本体1と蓋体2で構成されている。本体1と蓋体2はそれぞれ用途に応じた樹脂素材からなり、例えば樹脂成形により形成されているが、必ずしも樹脂素材に限定されるものではなく、本体1の外装に金属板を加工したものを使用してもよい。
【0015】
蓋体2には、図1に示すように蓋上面カバー2aを有しており、蓋体2の前方寄りの上部の蓋上面カバー2aに、蓋上面カバー2aの下方で後述する蓋体2の内部空間である基板室2dに設けられた、操作結果や動作状況を表示するための表示パネル15の表示内容を視認できる透過性のある表示窓4が設けられている。
【0016】
表示窓4の周辺には、炊飯器100を操作するために、炊飯ボタン3aを含む、保温、予約等の機能が与えられた各種の操作ボタン(詳細図示せず)を有する操作部3が設けられていて、表示パネル15の表示内容を見ながら操作ができるようになっている。
【0017】
表示パネル15は、前述の各種操作ボタンからの操作入力を受け付ける図示しないスイッチ等とともに、操作基板16に実装されている。また、操作基板16には図示しないマイコンや図示しないメモリも実装されている。メモリには、前述の操作部3の操作ボタンによる操作に応じてマイコンを動作させる制御プログラム等が格納されている。
【0018】
なお、本発明の実施の形態1では操作部3を蓋体に設けた構成を一例として挙げたが、これに限定されるものではなく本体1に設けてもよく、設ける位置は適宜選択することができる。
【0019】
また、蓋体2の後方寄りには、炊飯時に発生する蒸気を排出する排気口2bが設けられている。なお、本発明の実施の形態1では蒸気を本体外に排出するタイプの炊飯器で説明しているが、蒸気を本体外に排出しないタイプの炊飯器でもよく、その場合では蒸気の排気口は設けられない。
【0020】
図2に示すように、本体上面前方に係止部5aが設けられており、蓋体2に設けられた図示しない係合部と係止部5aが係合して、蓋体2が本体1の上面を閉塞している。蓋体2は、ヒンジ部8に設けられた図3に示す回動軸8aに、後方の端部が回動自在に軸止されている。
【0021】
蓋体2は、本体1の前方に設けられた係止解除ボタン5を押込むことにより、図示しない係合部と係止部5aとの係合が外れ、回動軸8aを中心にして開放方向への付勢力を蓋体2に与えている図示しない付勢手段により、所定の位置まで回動し開放される。
【0022】
図2に示すように、本体の中央部には開口部を有しており、被炊飯物である水と米を収容する内釜6が着脱自在に収納される。蓋体2の内釜6と対向する面には内蓋7が設けられ、図3に示すように蓋体2が閉塞された状態で、内釜6の上部周縁に設けられたフランジ6aと内蓋7の外周に設けられたシールパッキン7aが全周にわたって接触しシールされる。
【0023】
内蓋7には、内釜6内の被炊飯物から加熱時に発生するうまみ成分を内釜6内に戻すために設けられたカートリッジ7bが着脱自在に装着されている。カートリッジ7bには、内釜6内の被炊飯物から加熱時に発生する蒸気を外部に排出する連通口2cも設けられており、連通口2cは排気口2bと連通している。
【0024】
また、内蓋7には、輻射式加熱手段である蓋ヒーター7cが設けられている。蓋ヒーター7cは炊飯時及び保温時に通電され、炊飯及び保温の温度調整、保温時の結露防止に利用される。
【0025】
図3に示すように、本体1内には内釜6を加熱し、収容した米を炊飯するための誘導加熱手段である誘導加熱コイル10a、10b、10c(以降、一括して誘導加熱コイル10と記述する場合がある。)が設けられている。
【0026】
内釜6の胴部を取り囲むように、輻射式加熱手段である胴ヒーター13が設けられている。胴ヒーター13は炊飯時及び保温時に通電され、炊飯及び保温の温度調整に利用される。
【0027】
加熱コイル10aの内側には、内釜6の外側中央部と接触するように温度センサー11が設けられている。温度センサー11は炊飯時の内釜6の温度を検出し、炊飯の制御に利用される。
【0028】
本体1の後(背面)側の空間には制御基板9が設けられている。制御基板9には、図示しない電源回路、操作基板16に実装されたマイコンの制御に基づいて誘導加熱コイル10a、10b、10cに高周波電流を供給するインバーター回路が実装されている。
【0029】
炊飯器100の下部には、樹脂素材からなり樹脂成形により形成された底板22が設けられており、制御基板9及び誘導加熱コイル10a、10b、10cを冷却するための冷却ファン12が取付けられている。また、底板22には図示しない巻取り式の電源コードが設けられている。
【0030】
冷却ファン12は制御基板9の下方に配置され、炊飯が開始されると動作して底板22に設けられた図示しない吸気穴から外気を吸気し、制御基板9及び誘導加熱コイル10a、10b、10cへ送風、冷却する。
【0031】
(回路構成)
図4は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の概略構成を示す回路図である。図4により、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の回路構成を説明する。
【0032】
図4において、30は炊飯器100に電力を供給するための商用電源であり、家庭用の炊飯器では交流100Vであることが一般的である。31は整流回路で、交流電力を直流電力に変換し直流電源を得るための回路で、ダイオード等の整流素子で構成される。
【0033】
32はチョークコイル、33は平滑コンデンサで、それらにより平滑回路を構成している。整流回路31で変換された直流電力にはリップルと呼ばれる脈流を含んでおり、平滑回路はその脈流分を平坦化して直流電力を安定化させるための回路である。
【0034】
10は誘導加熱コイル、34は共振コンデンサで、それらにより共振回路を構成している。35は、誘導加熱コイル10に高周波電流を流すためのスイッチング素子であり、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の回路ではスイッチング素子35が1つで構成されるので、一石共振回路と呼ばれる。
【0035】
整流回路31、チョークコイル32と平滑コンデンサ33からなる平滑回路、共振コンデンサ34、スイッチング素子35で高周波電源40が構成される。
【0036】
36は、スイッチング素子35のコレクタ電圧(以下VCEと表す)がゼロ、あるいはゼロに近いレベルまで低くなった点を検出するVCEゼロクロス検出回路、37はスイッチング素子35をオン、オフ駆動する駆動回路、38は、VCEゼロクロス検出回路36から入力に基づいて駆動回路37に駆動信号を出力する制御手段である。
【0037】
前述のように、本発明の実施の形態1に係る炊飯器は一石共振回路であるため、スイッチング素子35をオフした後にVCEが発生し、VCEが高い状態でスイッチング素子35をオンすると、電流と電圧の積である損失が増え発熱が生じる。
【0038】
そのため、スイッチング素子35のVCEが十分に低くなってからスイッチング素子35をオンさせる必要がある。そこで、VCEゼロクロス検出回路36でVCEがゼロ、あるいはゼロに近いレベルまで低くなった点を検出し、その検出した信号に基づいて制御手段38は、駆動回路37にスイッチング素子35のオン信号を出力する。
【0039】
周波数検出手段39は、所定時間におけるスイッチング素子35のオン回数あるいはオフ回数あるいはその両方の回数を計測し、この回数に基づいて高周波電流の周波数を検出する。
【0040】
周波数は、例えば、5m秒間のオン回数をカウントし、その回数が100回であった場合、オンの周期は0.05m秒となるので、これにより周期T(秒)=1/周波数f(Hz)の関係から0.05m(秒)=1/周波数f(Hz)となり、周波数f(Hz)=1/0.05m(秒)=20k(Hz)となることで検出できる。
【0041】
スイッチング素子35の駆動周波数を一定で動作させた場合、高周波電流は、商用電源30の電圧または誘導加熱コイル10、共振コンデンサ34、内釜6からなるインピーダンス値に影響を受ける。
【0042】
本発明の実施の形態1に係る炊飯器である誘導加熱方式の炊飯器においては、誘導加熱可能な様々の鍋を使用する一般的な誘導加熱調理器とは異なり、誘導加熱する内釜6は必ず同じものを使用するので、誘導加熱コイル10、共振コンデンサ34、内釜6相互の関係は常に一定で変化することは無い。
【0043】
そのため、高周波電流の変化においては商用電源30の電圧値が支配的である。また、スイッチング素子35をオフしてからVCEが十分低くなる期間は、内釜6の形状、材質等が異なれば変化するが、前述の通り本発明の実施の形態1に係る炊飯器においては変化することがないので、オフ期間は一定となる。
【0044】
(動作)
次に動作について説明する。まず、炊飯器の動作として、炊飯工程と炊飯工程終了後の保温工程がある。炊飯工程は、さらに細分化された工程を有しており、一般的に4つの工程で構成されている。
【0045】
それら4つの工程について順を追って説明すると、被炊飯物である米に吸水させるための予熱工程、被炊飯物である水を沸騰させるための炊き上げ工程、その沸騰状態を維持して米への吸水と余分な水の蒸発を同時に行い、米の澱粉を糊化させながら内釜6内の水を無くしていく沸騰維持工程、そして、炊きあがったご飯を蒸らして内釜6内の状態を均一に仕上げるむらし工程である。
【0046】
上記炊飯工程を行うため、商用電源30からの交流電源を整流回路31で整流して、スイッチング素子35へ直流電力を入力し、スイッチング素子35をオン、オフすることにより、誘導加熱コイル10に高周波電流を流し、誘導加熱コイル10から発生した磁界により内釜6を誘導加熱する。
【0047】
前述の炊飯工程あるいは保温工程においては、VCEゼロクロス検出回路36からの検出結果に基づいて、高周波電流が予め決められた出力となるように制御しているため、例えば商用電源30の電圧が変動せず一定である場合、駆動周波数も一定となる。
【0048】
商用電源30の電圧が低下した場合、スイッチング素子35に入力される電力が下がるため、VCEの電圧が予め決められた値まで上昇するまでの時間が長くなる。すなわち、スイッチング素子35のオン期間が長くなり、駆動周波数は低くなる。
【0049】
商用電源30の電圧が高くなった場合、スイッチング素子35のオン周期が短くなり、駆動周波数は高くなる。このことから、図5に示すように商用電源30の電圧値とスイッチング素子35の駆動周波数との関係は概ね比例関係となっている。
【0050】
そのため、スイッチング素子35の駆動周波数を検出することで、検出した駆動周波数に対応する電圧値を算出することができ、専用の電圧検出回路を用意することなく電源電圧が設定できるようになる。
【0051】
輻射式加熱手段である蓋ヒーター7c、胴ヒーター13は定格出力、例えば30Wで出力される。炊飯器の動作電圧範囲は、例えば交流100V±10%となっている。つまり、交流90Vから110Vの範囲である。
【0052】
蓋ヒーター7c、胴ヒーター13の出力の100Vで100%のときに30Wの出力とした場合、この動作電圧の変動をそのまま蓋ヒーター7c、胴ヒーター13の出力に反映すると90Vでは27Wとなり、110Vでは33Wとなって出力の差が大きくなることで、炊飯及び保温の温度調整、保温時結露防止の性能に影響を及ぼすことになる。
【0053】
そのため、100V±10%の動作電圧範囲を担保する必要があり、90Vでも110Vでも通電率制御で30Wの定格出力が出力できるよう、蓋ヒーター7c、胴ヒーター13は、印加電圧(電源電圧)100Vで100%通電したときに33Wの出力となるヒーターとしてある。
【0054】
電源電圧が設定されると、図6に示すように電源電圧に応じた通電率制御を行う。例えば、印加電圧(電源電圧)90Vであれば、30Wの出力を得るために100%の通電率で制御を行う。同様に印加電圧(電源電圧)100Vであれば、30Wの出力を得るために90%の通電率、印加電圧(電源電圧)110Vであれば、30Wの出力を得るために80%の通電率で制御を行う。
【0055】
このように、検出した駆動周波数から電源電圧を算出し、その算出された電源電圧に応じて通電率制御を行うことで、商用電源30の電圧変動による影響を抑制し、輻射式加熱手段の出力を一定に制御することができるようになる。
【符号の説明】
【0056】
1 本体、2 蓋体、2a 蓋上面カバー、2b 排気口、2c 連通口、2d 基板室、3 操作部、3a 炊飯ボタン、4 表示窓、5 係止解除ボタン、5a 係止部、6 内釜、6a フランジ、7 内蓋、7a シールパッキン、7b カートリッジ、7c 蓋ヒーター、8 ヒンジ部、8a 回動軸、9 制御基板、10 誘導加熱コイル、10a 誘導加熱コイル、10b 誘導加熱コイル、10c 誘導加熱コイル、11 温度センサー、12 冷却ファン、13 胴ヒーター、15 表示パネル、16 操作基板、22 底板、30 商用電源、31 整流回路、32 チョークコイル、33 平滑コンデンサ、34 共振コンデンサ、35 スイッチング素子、36 VCEゼロクロス検出回路、37 駆動回路、38 制御手段、39 周波数検出手段、40 高周波電源、100 炊飯器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6