【実施例】
【0031】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」及び「%」は特に明示しない限り固形質量部および固形質量%を示す。
【0032】
(実施例1)
サイズプレスにて酸化澱粉を表面処理した坪量80g/m
2の上質紙を紙支持体とした。次いで、顔料としてカオリン(ウルトラコート:エンゲルハード社製)75部と軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−123CS、奥多摩工業製)25部、結着剤として顔料100質量部に対してカゼイン7質量部、大豆タンパク2部、スチレン・ブタジエン系ラテックス(スマーテックスPA−9176、日本エイアンドエル社製)15質量部、炭酸亜鉛のアンモニア錯体水溶液(ハードナーA12、旭化成ケミカルズ社製)を亜鉛換算で0.5質量部、離型剤としてポリエチレンエマルジョン(SNコート287、サンノプコ社製)0.5質量部からなる固形分濃度50%のキャスト用塗工液を調製した。次いでこのキャスト用塗工液をエアーナイフコーターにて前記紙支持体の片面に絶乾塗工量20g/m
2となるように塗工して乾燥した。次いで、クエン酸ナトリウム0.1%、離型剤として脂肪酸塩であるオレイン酸カリウム0.1%、からなる固形分濃度0.2%の再湿潤液(水溶液)をキャスト塗工層表面にウェット塗布量30g/m
2となるように塗布した後、塗布面が湿潤状態にあるうちにキャストドラムに圧接し、乾燥後キャストドラムから剥離してキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.11g/m
2であった。)
【0033】
(実施例2)
実施例1において、ポリエチレンエマルジョンを2.0部とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.35g/m
2であった。)
【0034】
(実施例3)
実施例1において、ポリエチレンエマルジョンを4.0部とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.65g/m
2であった。)
【0035】
(実施例4)
実施例1において、オレイン酸カリウムを1.0%とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.38g/m
2であった。)
【0036】
(実施例5)
実施例1において、オレイン酸カリウムを0.01%とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.083g/m
2であった。)
【0037】
(実施例6)
実施例1において、ポリエチレンエマルジョンを0.1部、オレイン酸カリウムを0.01%とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.019g/m
2であった。)
【0038】
(実施例7)
実施例1において、ポリエチレンエマルジョンを2.0部、オレイン酸カリウムを1.0%とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.62g/m
2であった。)
【0039】
(実施例8)
実施例1において、再湿潤液の離型剤をオレイン酸アンモニウムに変更した以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.11g/m
2であった。)
【0040】
(実施例9)
実施例1において、キャスト塗工層の離型剤として、ポリエチレンエマルジョンを0.5部、オレイン酸カリウムを0.2部とし、再湿潤液の離型剤を無添加とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.11g/m
2であった。)
【0041】
(実施例10)
実施例1において、キャスト塗工層の炭酸亜鉛のアンモニア錯体水溶液の添加量を0.03質量部(亜鉛換算)とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.11g/m
2であった。)
【0042】
(実施例11)
実施例1において、キャスト塗工層の炭酸亜鉛のアンモニア錯体水溶液の添加量を1.0質量部(亜鉛換算)とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.11g/m
2であった。)
【0043】
(実施例12)
実施例1において、カゼインを無添加、大豆タンパクを9質量部とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.11g/m
2であった。)
【0044】
(実施例13)
実施例1において、キャスト塗工層の炭酸亜鉛のアンモニア錯体水溶液の添加量を0.01質量部(亜鉛換算)とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.11g/m
2であった。)
【0045】
(実施例14)
実施例1において、キャスト塗工層の炭酸亜鉛のアンモニア錯体水溶液の添加量を2.0質量部(亜鉛換算)とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.11g/m
2であった。)
【0046】
(実施例15)
実施例1において、オレイン酸カリウムをラウリン酸ナトリウムに変更した以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.11g/m
2であった。)
【0047】
(実施例16)
実施例1において、再湿潤液の離型剤をオレイン酸カリウム0.1%、ポリエチレンエマルジョン0.27%に変更し、キャスト塗工層の塗料のポリエチレンエマルジョンを無添加とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.11g/m
2であった。)
【0048】
(比較例1)
実施例1において、オレイン酸カリウムを無添加とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.080g/m
2であった。)
【0049】
(比較例2)
実施例1において、ポリエチレンエマルジョンを無添加とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.030g/m
2であった。)
【0050】
(比較例3)
実施例1において、ポリエチレンエマルジョンをパラフィンワックスエマルジョン(ダイジットEY、互応化学社製)とし、再湿潤液の離型剤を無添加とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.080g/m
2であった。)
【0051】
(比較例4)
実施例1において、炭酸亜鉛のアンモニア錯体水溶液を無添加とした以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.11g/m
2であった。)
【0052】
(比較例5)
実施例1において、耐水化剤として、炭酸亜鉛のアンモニア錯体を硝酸亜鉛に変更した以外は実施例1と同様にしてキャスト塗工紙を得た。(この時のキャスト塗工層中の離型剤の合計含有量は0.11g/m
2であった。)
【0053】
得られたキャスト塗工紙について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を表1及び表2及び表3に示す。
【0054】
(1)白紙光沢
JIS−Z8741−1997「鏡面光沢度−測定方法」に準じ、60度光沢度計を用いて測定を行った。数値が高い方が高級感に優れていて好ましい。65%以上が好ましい。
【0055】
(2)インキ着肉性
得られたキャスト塗工紙の光沢面の反対面をタック加工してラベル紙を作成した。このラベル紙の光沢面に樹脂凸版印刷機(SANJYO NS−250、三條機械製作所社製)にて高速でバーコード印刷を行い、着肉不良による白抜けを目視で評価した。
◎:白抜けが全くなく、実用できる。
○:白抜けが僅かにあるが、実用できる。
△:白抜けがあり、実用不可。
×:白抜けが著しくあり、実用不可。
【0056】
(3)耐水性
キャスト塗工紙のキャスト面に0.05ccの水を滴下し、さらに同じ種類のキャスト塗工紙をキャスト面同士が対向するように重ね、その上に一定量の重り(200g/cm
2)を載せ、24時間放置したのち、両キャスト塗工紙を剥がし、一方のキャスト塗工紙のキャスト面の状態を以下の基準にて、目視判定した。
◎:キャスト塗工紙の塗工層の剥離付着が全く認められず、実用できる。
○:キャスト塗工紙の塗工層の剥離付着が僅かに認められるが、実用できる。
△:キャスト塗工紙の塗工層の剥離付着が認められ、実用不可。
×:キャスト塗工紙の塗工層の剥離付着が著しく認められ、実用不可。
【0057】
(4)白紙面感
キャスト塗工層表面の白紙面感を目視評価した。キャストドラムからの離型性が悪い場合は、キャスト塗工層表面に剥離ムラが発生する。
◎:離型性すこぶる良好。剥離ムラがなく、実用できる。
〇:離型性良好。剥離ムラがごく僅かにあるが目立たず、実用できる。
△:離型性やや不良。剥離ムラが目立ち、実用不可。
×:離型性不良。剥離ムラが著しく目立ち、実用不可。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
表1、2、3から明らかなように、実施例1〜16は、比較例1〜5に比べて白紙光沢度、インキ着肉性、耐水性、白紙面感に優れている。
【0062】
比較例1、2は、キャスト塗工層に離型剤として(A)脂肪酸及びその塩、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上と(B)ポリエチレンエマルジョン、の両方を含有せず、いずれか一方しか含有していないために白紙面感に劣った。比較例3はキャスト塗工層に離型剤として(A)脂肪酸及びその塩、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上と(B)ポリエチレンエマルジョン、とは異なる他の離型剤しか含有していないためにインキ着肉性に劣った。比較例4はキャスト塗工層に耐水化剤である炭酸亜鉛のアンモニア錯体を添加しなかったために耐水性に劣った。比較例5はキャスト塗工層に耐水化剤として炭酸亜鉛のアンモニア錯体以外の亜鉛化合物を使用したため、白紙面感に劣った。