(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ホスホン酸系キレート剤が、ホスホン酸、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレンテトラミンペンタキス(メチレンホスホン酸)及び2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、並びに、これらの塩からなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項1記載の溶解除去組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。
【0017】
<溶解除去組成物>
本発明に係る溶解除去組成物は、(A)ホスホン酸系キレート剤、及び(B)硫黄系還元剤、を含む。本発明に係る溶解除去組成物は、(A)ホスホン酸系キレート剤、及び(B)硫黄系還元剤を、配管を流れる水などに順次添加することにより、配管など金属母材の腐食を防ぎつつ、配管内に発生したスケール及び錆を溶解除去することが可能となる。また、本発明に係る溶解除去組成物は、中性領域(例えば、pH4〜8)の範囲で用いられる。本発明に係る溶解除去組成物により上述した作用効果が得られる原理については必ずしも明らかではないが、以下のように推定される。
【0018】
図1A〜
図1Cは、本発明に係る溶解除去組成物による作用効果の概念図である。一般的に、金属配管12の表面に付着するスケール13は、オキシ水酸化鉄(FeOOH)、マグネタイト(Fe
2O
3)、及びヘマタイト(Fe
2O
3)を主成分とする。このスケール12は、溶解性が低いFe(III)化合物により表面が被覆されているので、従来の溶解除去組成物では十分な溶解速度が得られていないものと考えられる。
【0019】
一方で、本発明においては、溶解除去組成物が硫黄系還元剤を含有するので、硫黄系還元剤からスケール13の表面のFe(III)化合物に電子(e
−)が供与される。これにより、スケール13の表面のFe(III)が還元され、Fe(III)対して相対的にホスホン酸キレート剤に対する溶解速度が高いFe(II)が形成されると推定される。したがって、本発明に係る溶解除去組成物によれば、錆などのスケール13の溶解除去速度を向上させることが可能となる。そして、硫黄系還元剤によるスケール13の還元作用によってスケールを速やかに除去できるので、金属配管12に対する腐食量も低減できるものと推定される。
【0020】
図2は、本発明に係る溶解除去組成物の溶解鉄濃度と時間との関係を示す図であり、
図3は、本発明に係る溶解除去組成物に浸漬した金属母材の腐食減量との関係を示す図である。なお、
図2においては、(A)成分及び(B)成分の各種配合量を変化させた4種類の本発明に係る溶解除去組成物にスケールが付着した配管を浸漬させた場合の溶解鉄濃度の変化(
図2のA〜D参照)と従来のスケール除去組成物における溶解鉄濃度の変化(
図2のE参照)とを対比して示している。また、
図3においては、
図2と同様に、(A)成分及び(B)成分の各種配合量を変化させた4種類の本発明に係る溶解除去組成物にスケールが付着した配管を浸漬させた場合の配管の腐食減量(
図3のA〜D参照)と従来のスケール除去組成物における配管の腐食減量の(
図3のE参照)とを対比して示している。
【0021】
図2に示すように、本発明に係る溶解除去組成物においては、上述したように、金属配管の表面に付着したスケールの表面におけるFe(III)化合物が還元作用により溶解性に優れたFe(II)が形成される。その結果、従来のスケール除去組成物と比較して、スケールを付着した配管を溶解除去組成物に浸漬した直後から速やかにスケールが溶解して溶解鉄濃度が上昇することが分かる。
【0022】
また、
図3に示すように、本発明に係る溶解除去組成物においては、上述したように、スケールを付着した配管を溶解除去組成物に浸漬した直後から速やかにスケールが溶解する。このため、従来のスケール除去組成物と比較して、金属母材の腐食減量を著しく低減することが可能となる。以下、本発明に係る溶解除去組成物の各種構成要素について詳細に説明する。
【0023】
<ホスホン酸系キレート剤>
(A)ホスホン酸系キレート剤としては、錆などの金属酸化物を含むスケールを除去できるものであれば特に制限はなく、各種ホスホン酸系キレート剤を用いることが可能である。(A)成分としては、水酸化カリウムなどの各種アルカリ金属の水酸化物を添加して用いてもよい。
【0024】
ホスホン酸系キレート剤としては、例えば、ホスホン酸、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレンテトラミンペンタキス(メチレンホスホン酸)、及び2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸などの各種ホスホン酸類、並びに、各種ホスホン酸類の塩が挙げられる。これらのキレート剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
なお、ホスホン酸系キレート剤としては、本発明の効果を奏する範囲でその他のキレート剤、無機酸及び有機酸を添加して用いることもできる。その他のキレート剤としては、例えば、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、及びトリエチレンテトラミン六酢酸などの各種アミノカルボン酸類、並びに、各種アミノカルボン酸類の塩が挙げられる。
【0026】
有機酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸などのジカルボン酸、及び、ジカルボン酸塩、ジグリコール酸、チオジグリコール酸、オキサロ酢酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、カルボキシメチルタルトロン酸、及びこれらの塩、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イタコン酸、メチルコハク酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルマロン酸、マレイン酸、フマル酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、アコニット酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、エタンテトラカルボン酸、エテンテトラカルボン酸、n−アルケニルアコニット酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、フタル酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、テトラヒドロフラン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、テトラヒドロフラン−2,2,5,5−テトラカルボン酸、及びこれらの塩が挙げられる。これらの有機酸としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明に係る溶解除去組成物においては、(A)成分としては、ホスホン酸、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレンテトラミンペンタキス(メチレンホスホン酸)、及び2-ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸などの各種ホスホン酸類、並びに、各種ホスホン酸類の塩からなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましく、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を含むことがより好ましい。(A)成分としてこれらのホスホン酸キレート剤を含有することにより、錆及びスケールの除去性能が向上する。
【0028】
(B)硫黄系還元剤
本発明の溶解除去組成物においては、さらに、(B)チオグリコール酸を除く硫黄系還元剤を含むことが好ましい。この構成によれば、硫黄系還元剤に含まれる硫黄原子が金属に吸着し保護皮膜を強化するだけでなく、硫黄系還元剤が有する還元性により金属母材の腐食をさらに抑制することが可能となる。
【0029】
硫黄系還元剤としては、本発明の効果を奏する範囲で各種含硫黄化合物を用いることができる。亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸亜鉛、亜硫酸アンモニウムなどの亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウムなどの亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸アンモニウムなどのピロ亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウムなどのチオ硫酸塩、亜ジチオン酸及び亜ジチオン酸塩、チオン酸及びチオン酸塩、三チオン酸、四チオン酸などのポリチオン酸及びポリチオン酸塩、二酸化チオ尿素が挙げられる。これらの中でも、チオ尿素類としては、金属酸化物を含むスケールの除去及び金属母材の腐食抑制の観点から、亜硫酸類、亜硫酸水素類、ピロ亜硫酸類、チオ硫酸類、亜ジチオン酸類、チオン酸類、ポリチオン酸類、及び二酸化チオ尿素からなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましく、亜ジチオン酸塩及び二酸化チオ尿素の少なくとも1種を含むことが好ましく、亜ジチオン酸ナトリウム及び二酸化チオ尿素の少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
【0030】
(C)チオ尿素類
本発明の溶解除去組成物においては、さらに、(C)チオ尿素類を含むことが好ましい。チオ尿素類を含むことにより、チオ尿素類に含まれる硫黄原子が金属に吸着し保護皮膜を強化するだけでなく、含硫黄化合物の還元性により金属母材の腐食を更に抑制することが可能となる。
【0031】
チオ尿素類としては、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジ−n−プロピルチオ尿素、ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ−n−プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素などのアルキルチオ尿素及びグアニルチオ尿素などが挙げられる。これらのチオ尿素類としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、チオ尿素類としては、金属酸化物を含むスケールの除去及び金属母材の腐食抑制の観点から、アルキルチオ尿素及びグアニルチオ尿素がより好ましい。
【0032】
(D)両性界面活性剤
両性界面活性剤としては、本発明の効果を奏する範囲で各種両面活性剤を用いることができる。両性界面活性剤としては、例えば、下記式(1)で表される2−アルキル−N−カルボキシアルキル−N−ヒドロキシアルキルイミダゾリニウムベタイン、及び下記一般式(2)で表されるβ-アルキルアミノカルボン酸のアルカリ金属塩、及び下記一般式(3)で表されるアルキルジメチルベタインからなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0033】
【化1】
(上記式(1)及び上記式(2)及び上記式(3)中、R
1、R
4、及びR
7は、水素原子又は炭素数が1〜20の分枝があってもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素数が6〜20のアリール基、ベンジル基、複素環基を表し、R
2及びR
5は、炭素数が1〜3のアルキレン基を表し、R
3は、炭素数が1〜20の分岐があってもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素数が6〜20のアリール基、ベンジル基、複素環基を表し、R
6は、水素原子又は炭素数が1〜20の分岐があってもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素数が6〜20のアリール基、ベンジル基、複素環基を表し、Mは、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属を示す。)
【0034】
上記一般式(1)及び上記一般式(2)で表される両性界面活性剤としては、例えば、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン及び2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが挙げられる。本発明においては、(B)両性界面活性剤としては、金属酸化物を含むスケールの除去及び金属母材の腐食抑制の観点から、2−ヤシアルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチル−4,5−ジヒドロイミダゾリニウムハイドロオキサイド及びβ−ヤシアルキルアミノプロピオン酸ナトリウムが好ましい。両性界面活性剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明の溶解除去組成物においては、(D)両性界面活性剤が、上記一般式(1)及び
上記一般式(2)で表される化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。この構成によれば、両性界面活性剤がカルボン酸基及び窒素原子を有するので、これらの置換基により両性界面活性剤が金属母材の表面に吸着する一方、錆及びスケールの表面には、吸着しにくくなるので、錆及びスケール溶解除去性能がより向上すると共に、金属母材の防食性をより一層高めることが可能になると考えられる。
【0036】
(E)非イオン界面活性剤
(E)成分としては、本発明の効果を奏する範囲で各種非イオン界面活性剤を用いることができる。(E)成分としては、例えば、脂肪酸エステル類及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。脂肪酸エステル類としては、例えば、下記一般式(4)で表されるポリオキシアルキレンアルコールの脂肪酸エステルが挙げられる。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、下記一般式(5)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0037】
【化2】
(上記式(4)及び上記式(5)中、R
8は、分岐を有していてもよい炭素数が8〜24のアルキル基又はアルケニル基を表し、R
9は、分岐を有していていもよい炭素数が8〜24のアルキル基又はアルケニル基を表す。nは、2〜3であり、mは整数である。)
【0038】
上記一般式(4)で表されるポリオキシアルキレンアルコールの脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノオレイン酸エステル、ポリエチレングリコールモノラウリン酸エステル及びポリエチレングリコールモノステアリン酸エステルなどが挙げられる。
【0039】
また、上記一般式(5)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、オレイルアルコール、ラウリルアルコール及びステアリルアルコールなどの高級アルコールにEO(エチレンオキサイド)又はPO(プロピレンオキサイド)又はEO(エチレンオキサイド)とPO(プロピレンオキサイド)両方が付加したものが挙げられる。上記一般式(5)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、及びポリオキシアルキレンステアリルエーテルなどが挙げられる。
【0040】
本発明に係る溶解除去組成物においては、(E)非イオン界面活性剤としては、脂肪酸エステル類を含むことが好ましい。この構成により、(E)非イオン界面活性剤が、脂肪酸エステル構造及びアルキルエーテル構造を有するので、(D)成分と安定な被膜が形成され、高い防食性が得られると考えられる。
【0041】
また、本発明の溶解除去組成物においては、(E)非イオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル類、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル類、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル類からなる群から選択された少なくとも1種を含むことがより好ましい。この構成により、(E)非イオン界面活性剤が、脂肪酸エステル構造及びアルキルエーテル構造を有するので、(D)成分と安定な被膜が形成され、高い防食性が得られると考えられる。また、(E)非イオン界面活性剤としては、金属酸化物を含むスケールの除去及び金属母材の腐食抑制の観点から、ポリエチレンアルキレングリコールオレイン酸エステル及びポリオキシアルキレンオレイルエーテルが更に好ましい。
【0042】
本発明に係る溶解除去組成物においては、
図1Aに示すように、(D)成分の両性界面活性剤11が極性基を有するので、この極性基を介して両面界面活性剤11が金属配管12などの金属母材に吸着して配管の内面に両性界面活性剤11による被膜が形成される。一方で、(D)両性界面活性剤11は、金属配管12の内面に対して、スケール13の表面には相対的に吸着されにくく、(A)溶解除去剤14によるスケール13の除去性能を阻害することがない。したがって、本発明に係る溶解除去組成物においては、(D)成分の両性界面活性剤が金属母材の表面に吸着する一方、錆などのスケール13の表面には、吸着しにくくなるので、錆などスケール13を速やかに除去できる溶解除去性能が得られると共に、金属母材の防食性を高めることが可能になると考えられる。そして、本発明に係る溶解除去組成物においては、更に(E)成分の非イオン界面活性剤15を含有するので、(D)成分の両性界面活性剤11によって形成された金属母材の薄い保護被膜と金属母材との隙間に非イオン界面活性剤15が入り、より強固な保護被膜が形成されるので、優れた錆及びスケール13の溶解除去性能が得られると共に、金属母材の腐食を大幅に抑制することが可能となる。
【0043】
(F)その他の成分
本発明に係る溶解除去組成物は、本発明の効果を奏する範囲内で上述した化合物以外のその他の成分を含有することが可能である。その他の成分としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン、ピロガロール、及びカルボヒドラジドなどの洗浄液中に存在する酸素を除去するための還元剤、酸化しやすい金属(例えば、Fe、Sn、Al、Zn等),酸化しやすい金属イオン(例えば、Fe
2+、Sn
2+等)などが挙げられる。
【0044】
本発明に係る溶解除去組成物においては、(B)硫黄系還元剤の配合量としては、金属酸化物を含むスケールの除去及び金属母材の腐食抑制の観点から、(A)溶解除去剤100質量部に対して、0.0001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上が更に好ましく、また10質量部以下が好ましく、7.5質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましい。以上を考慮すると、(B)硫黄系還元剤の配合量としては、(A)溶解除去剤100質量部に対して、0.0001質量部以上10質量部以下が好ましく、0.01質量部以上7.5質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上5質量部以下が更に好ましい。
【0045】
本発明に係る溶解除去組成物においては、(C)チオ尿素類の配合量としては、金属酸化物を含むスケールの除去及び金属母材の腐食抑制の観点から、(A)溶解除去剤100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.10質量部以上が更に好ましく、また10質量部以下が好ましく、7.5質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましい。以上を考慮すると、(C)チオ尿素類の配合量としては、(A)溶解除去剤100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、0.05質量部以上7.5質量部以下がより好ましく、0.10質量部以上5質量部以下が更に好ましい。
【0046】
本発明に係る溶解除去組成物においては、(D)両性界面活性剤の配合量としては、金属酸化物を含むスケールの除去及び金属母材の腐食抑制の観点から、(A)溶解除去剤100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.10質量部以上が更に好ましく、また(A)溶解除去剤による錆及びスケール除去の洗浄阻害性の観点から、1000質量部以下が好ましく、750質量部以下がより好ましく、500質量部以下が更に好ましい。以上を考慮すると、(D)両性界面活性剤の配合量としては、(A)溶解除去剤100質量部に対して、0.01質量部以上1000質量部以下が好ましく、0.05質量部以上750質量部以下がより好ましく、0.10質量部以上500質量部以下が更に好ましい。
【0047】
本発明に係る溶解除去組成物においては、(E)非イオン界面活性剤の配合量としては、金属酸化物を含むスケールの除去及び金属母材の腐食抑制の観点から、(A)溶解除去剤100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.10質量部以上が更に好ましく、また(A)溶解除去剤による錆及びスケール除去の洗浄阻害性の観点から、500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましく、300質量部以下が更に好ましい。以上を考慮すると、(E)非イオン界面活性剤の配合量としては、(A)溶解除去剤100質量部に対して、0.01質量部以上500質量部以下が好ましく、0.05質量部以上400質量部以下がより好ましく、0.10質量部以上300質量部以下が更に好ましい。
【0048】
本発明に係る溶解除去組成物においては、(A)溶解除去剤の配合量としては、金属酸化物を含むスケールの除去及び金属母材の腐食抑制の観点から、溶解除去組成物の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、また40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。以上を考慮すると、(A)溶解除去剤の配合量としては、溶解除去組成物の全質量に対して、0.1質量%以上40質量%以下が好ましく、0.5質量%以上20質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
【0049】
本発明に係る溶解除去組成物においては、(B)硫黄系還元剤の配合量としては、金属酸化物を含むスケールの除去及び金属母材の腐食抑制の観点から、溶解除去組成物の全質量に対して、0.0001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、また25質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7.5質量%以下が更に好ましい。以上を考慮すると、(B)硫黄系還元剤の配合量としては、溶解除去組成物の全質量に対して、0.0001質量%以上25質量%以下が好ましく、0.01質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上7.5質量%以下が更に好ましい。
【0050】
本発明に係る溶解除去組成物においては、(C)チオ尿素類の配合量としては、金属酸化物を含むスケールの除去及び金属母材の腐食抑制の観点から、溶解除去組成物の全質量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.03質量%以上が更に好ましく、また25質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。以上を考慮すると、(C)チオ尿素類の配合量としては、溶解除去組成物の全質量に対して、0.001質量%以上25質量%以下が好ましく、0.01質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.03質量%以上5質量%以下が更に好ましい。
【0051】
本発明に係る溶解除去組成物においては、(D)両性界面活性剤の配合量としては、金属酸化物を含むスケールの除去及び金属母材の腐食抑制の観点から、溶解除去組成物の全質量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、また10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。以上を考慮すると、(D)両性界面活性剤の配合量としては、溶解除去組成物の全質量に対して、0.001質量%以上10質量%以下が好ましく、0.005質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上2質量%以下が更に好ましい。
【0052】
本発明に係る溶解除去組成物においては、(E)非イオン界面活性剤の配合量としては、金属酸化物を含むスケールの除去及び金属母材の腐食抑制の観点から、溶解除去組成物の全質量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、また10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。以上を考慮すると、(E)非イオン界面活性剤の配合量としては、溶解除去組成物の全質量に対して、0.001質量%以上10質量%以下が好ましく、0.005質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上2質量%以下が更に好ましい。
【0053】
(溶解除去組成物の製造方法)
次に、本発明に係る溶解除去組成物の製造方法について説明する。本発明に係る溶解除去組成物の製造方法に特に制限はない。上記溶解除去組成物の製造方法としては、例えば、純水又は蒸留水などの水に溶解除去剤、及び硫黄系還元剤などの各成分を室温にて順次添加して混合し、水酸化カリウムなどを添加してpHを例えば、4〜8の範囲に調整することにより製造することができる。ここでは、溶解除去剤と硫黄系還元剤とを使用直前に混合すること及び硫黄還元剤を不活性ガスで脱気することにより硫黄系還元剤の劣化を防ぐことが可能となる。また、硫黄系還元剤の劣化を防ぐ観点から、洗浄液中の酸素濃度に対する還元剤などを用いてもよい。また、本発明に係る溶解除去組成物は、ボイラに水を供給しながら、供給配管の一部に各成分を順次添加して混合することにより、調製することもできる。なお、本発明に係る溶解除去組成物は、窒素雰囲気下で用いることができ、大気雰囲気下で製造することもできる。
【0054】
以上説明したように、本発明に係る溶解除去組成物によれば、(B)硫黄系還元剤を含有することから、スケールの表面への被膜の形成を防ぎつつ、還元雰囲気を維持できるので、金属配管などに生じたスケールを速やかに除去することを可能としながら、金属母材の腐食を防ぐことが可能になると推定される。これにより、優れた錆及びスケールの溶解除去性能が得られると共に、金属母材の腐食を大幅に抑制することが可能となる。
【0055】
また、本発明に係る溶解除去組成物によれば、(A)溶解除去剤と(B)硫黄系還元剤を混合するだけでスケールなどの溶解除去性能に優れた溶解除去組成物を調整できるので、溶解除去組成物のハンドリングが容易になる。さらに、従来のスケール溶解組成物では、腐食量が大きい両性金属を金属母材とする配管などに用いる場合であっても、金属母材の腐食量を著しく低減できる。さらに、本発明に係る溶解除去組成物によれば、金属母材の腐食を低減できるので、水素ガスなどの発生を防ぐこともできる。また、本発明に係る溶解除去組成物によれば、金属鉄などの粉末などを共存させずにスケールを除去することが可能となる。また本発明によれば、また、常温での速やかなスケール除去を可能とし、ヘマタイトを主成分とするスケールの除去も可能となる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら制限されるものではない。
【0057】
下記表1及び下記表2で用いた各成分について以下に示す。
溶解除去剤A:1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸
溶解除去剤B:エチレンジアミン四酢酸
硫黄系還元剤A:亜ジチオン酸ナトリウム
硫黄系還元剤B:二酸化チオ尿素
両性界面活性剤A:2−ヤシアルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチル−4,5−ジヒドロイミダゾリニウムハイドロオキサイド
両性界面活性剤B:β−ヤシアルキルアミノプロピオン酸ナトリウム
非イオン界面活性剤A:ポリエチレンアルキレングリコールモノオレイン酸エステル
非イオン界面活性剤B:ポリオキシアルキレンオレイルエーテル
チオ尿素類A:グアニルチオ尿素
チオ尿素類B:チオ尿素
【0058】
まず、本発明者らは、上記実施の形態に係る溶解除去組成物の各成分の配合を種々変更し、マグネタイトの除去についての試験雰囲気、及び試験温度とマグネタイト溶解性,腐食減量、及び洗浄阻害性との関係について調べた。なお、洗浄阻害性は、比較例1及び比較例2を基準として評価した。以下、本発明者らが調べた内容について詳細に説明する。
【0059】
<マグネタイト除去についての評価>
セパラブルフラスコに撹拌子を入れた後、撹拌しながら蒸留水に、(A)溶解除去剤、(B)両性界面活性剤、(C)非イオン界面活性剤、(D)チオ尿素、及び(E)硫黄系還元剤などを順次添加して混合した後、セパラブルフラスコを恒温水槽で所定温度に保持した状態でpH調整剤を滴下してpHを6(pH4〜8であればよい)に調整して溶解除去組成物を調製した。次に、マグネタイト粉末1.5gを添加して所定時間後にスルホサリチル酸比色法により溶解鉄濃度を50時間分析した。その後、残渣物をグラスフィルターで吸引濾過してデシケータ内で乾燥した後、残渣物の重量を測定し、マグネタイト粉末の残量を求めた。溶解開始時間は、溶解鉄濃度が検出下限を超えた時間とし、溶解完了時間は、溶解鉄濃度が3000mg/Lを超えた時間とした。3000mg(溶解完了時間−溶解開始時間)を溶解速度(mg as Fe/L/H)とした。
【0060】
(実施例1)
(A)溶解除去剤として溶解除去剤Aが3.6質量%、(B)両性界面活性剤として両性界面活性剤Aが0.1質量%、(C)非イオン界面活性剤として非イオン界面活性剤Aが0.1質量%、(D)チオ尿素類としてチオ尿素類Aが0.02質量%、(E)硫黄系還元剤として硫黄系還元剤Aが0.05質量%となるように各成分を配合して室温で10分間撹拌して溶解除去組成物を調製した。その後、窒素雰囲気下、25℃にてマグネタイト溶解性及び腐食減量を評価した。各成分の配合量及び評価結果を下記表1に示す。
【0061】
(実施例2)
窒素雰囲気下、50℃にて腐食減量を評価したこと以外は、実施例1と同様にして溶解除去組成物を作製して評価した。各成分の配合量及び評価結果を下記表1に併記する。
【0062】
(実施例3)
大気雰囲気下、50℃にて腐食減量を評価したこと以外は、実施例2と同様にして溶解除去組成物を作製して評価した。各成分の配合量及び評価結果を下記表1に併記する。
【0063】
(実施例4)
チオ尿素類Aを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして溶解除去組成物を作製して評価した。各成分の配合量及び評価結果を下記表1に併記する。
【0064】
(実施例5)
両性界面活性剤A及び非イオン界面活性剤Aを0.04質量%となるようにしたこと以外は、実施例4と同様にして溶解除去組成物を作製して評価した。各成分の配合量及び評価結果を下記表1に併記する。
【0065】
(実施例6)
50℃にて腐食減量を評価したこと以外は、実施例4と同様にして溶解除去組成物を作製して評価した。各成分の配合量及び評価結果を下記表1に併記する。
【0066】
(実施例7)
大気雰囲気下にて腐食減量を評価したこと以外は、実施例4と同様にして溶解除去組成物を作製して評価した。各成分の配合量及び評価結果を下記表1に併記する。
【0067】
(実施例8)
亜ジチオン酸ナトリウムに代えて二酸化チオ尿素を0.5質量%用いたこと以外は実施例7と同様にして溶解除去組成物を作製して評価した。各成分の配合量及び評価結果を下記表1に併記する。
【0068】
(実施例9)
ヘマタイトに対して,ヘマタイト溶解量及び母材腐食減量を評価したこと以外は、実施例1〜7と同様にして溶解除去組成物を作製して評価した。その結果、実施例1〜8と同等の評価結果が得られた。
【0069】
(比較例1)
硫黄系還元剤Bに代えてアスコルビン酸を0.5質量%用いたこと及び非イオン界面活性剤を用いなかったこと以外は実施例8と同様にして溶解除去組成物を作製して評価した。各成分お配合量及び評価結果を下記表1に併記する。
【0070】
(比較例2)
両面界面活性剤Aに代えてチオ尿素類を用いたこと及びアスコルビン酸を用いなかったこと以外は比較例1と同様にして溶解除去組成物を作製して評価した。各成分お配合量及び評価結果を下記表1に併記する。
【0071】
【表1】
【0072】
表1から分かるように、本発明に係る溶解除去組成物によれば、(A)溶解除去剤、及び(B)硫黄系還元剤を含むので、洗浄時間が短縮されると共に、マグネタイトスケールに対する洗浄阻害性が悪化することなく、金属母材の腐食減量を100mdd(mg/dm
2/day)以下に低減することができる(実施例1〜実施例8)。これに対して、(B)硫黄系還元剤を含まない場合(比較例1及び比較例2)は、いずれも洗浄性が悪化すると共に、腐食減量が著しく増大することが分かる。この結果は、上述したように、(B)硫黄系還元剤によるスケール溶解速度の向上が得られなかったと共に、金属母材の腐食抑制効果が十分に得られなかったためと考えられる。
【0073】
次に、本発明者らは、上記実施の形態に係る溶解除去組成物の各成分の配合を種々変更し、錆除去ついての試験雰囲気、及び試験温度と腐食減量、及び洗浄阻害性との関係について調べた。以下、本発明者らが調べた内容について詳細に説明する。
【0074】
<錆除去評価>
各成分を配合して調整した溶解除去組成物をガラス瓶に投入し、錆無テストピース(SUS400 35mm×45mm×1.6mm #400研磨後トルエンアセトン洗浄品)と錆有テストピース(錆無テストピースを屋外に3か月間放置して一定量の錆がついたもの)を浸漬して錆有テストピースから錆が完全に除去されるまでの時間と、上述した評価方法に基づく錆有テストピースの腐食減量から錆の洗浄阻害性及び腐食抑制性能を評価した。
【0075】
(実施例11)
(A)溶解除去剤として溶解除去剤Aが5質量%、(B)硫黄系還元剤を0.1質量%、(D)両性界面活性剤として両性界面活性剤Aが0.1質量%、(E)非イオン界面活性剤として非イオン界面活性剤Aが0.1質量%、となるように各成分を配合してNaOH等のpH調整剤を滴下してpHを5.5(pH4〜8であればよい)に調整し、室温で10分間撹拌して溶解除去組成物を調製した。各成分の配合量及び評価結果を下記表2に示す。
【0076】
(実施例12)
両性界面活性剤Aに代えて両性界面活性剤Bを0.1質量%用いたこと以外は実施例11と同様にして溶解除去組成物を調製した。各成分の配合量及び評価結果を下記表2に示す。
【0077】
(実施例13)
非イオン界面活性剤Aを15質量%用いたこと以外は実施例11と同様にして溶解除去組成物を調製した。各成分の配合量及び評価結果を下記表2に示す。
【0078】
(実施例14)
溶解除去剤Aに代えて溶解除去剤Bを5質量%用いたこと以外は実施例11と同様にして溶解除去組成物を調製した。各成分の配合量及び評価結果を下記表2に示す。
【0079】
(実施例15)
非イオン界面活性剤Aに代えて非イオン界面活性剤Bを0.1質量%用いたこと以外は実施例11同様にして溶解除去組成物を調製した。各成分の配合量及び評価結果を下記表2に示す。
【0080】
(比較例11)
両性界面活性剤A、硫黄系還元剤A、及び非イオン界面活性剤Aを用いなかったこと以外は実施例11と同様にして溶解除去組成物を調製した。各成分の配合量及び評価結果を下記表2に示す。
【0081】
(比較例12)
溶解除去剤Aに代えて溶解除去剤Bを5質量%用いたこと以外は、比較例11と同様にして溶解除去組成物を調製した。各成分の配合量及び評価結果を下記表2に示す。
【0082】
(比較例13)
クエン酸を3質量%及びチオグリコール酸を0.5質量%用いたこと以外は、比較例11と同様にして溶解除去組成物を調製した。各成分の配合量及び評価結果を下記表2に示す。
【0083】
(比較例14)
溶解除去剤Aを用いなかったこと以外は、実施例11と同様にして溶解除去組成物を調製した。各成分の配合量及び評価結果を下記表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表2から分かるように、本発明に係る溶解除去組成物によれば、(A)溶解除去剤、(B)硫黄系還元剤を含むので、洗浄時間が短縮されると共に、錆に対する洗浄阻害性が悪化することなく、腐食減量を50mdd(mg/dm
2/day)以下に低減することができる(実施例11〜実施例15)。これに対して、(B)硫黄系還元剤(比較例11〜比較例13)には、腐食減量が著しく増大することが分かる。これらの結果は、上述した(B)硫黄系還元剤による金属母材の腐食抑制効果が十分に得られなかったためと考えられる。また、溶解除去剤(A)を含まない場合(比較例14)には、洗浄効果が著しく減少することが分かる。