(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071859
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20170123BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20170123BHJP
H02M 7/483 20070101ALI20170123BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M1/08 C
H02M7/483
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-253966(P2013-253966)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-115977(P2015-115977A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 宏信
【審査官】
麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−236994(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0262218(US,A1)
【文献】
国際公開第2008/067786(WO,A1)
【文献】
特表2009−506736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 1/08
H02M 7/483
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子のうち端子間に設けられた端子間スイッチング素子に、異常時にゲート信号を与えるための直流電源と、
異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段により異常が検出された場合、前記直流電源により前記端子間スイッチング素子をオンする操作手段と
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
複数の変換器が直列に接続された電力変換装置であって、
前記変換器は、
直列に接続された複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子のうち端子間に設けられた端子間スイッチング素子に、異常時にゲート信号を与えるための直流電源と、
異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段により異常が検出された場合、前記直流電源により前記端子間スイッチング素子をオンする操作手段とを備えること
を特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
前記異常検出手段は、前記複数のスイッチング素子を駆動するためのゲート電源が喪失したことを異常として検出すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記直流電源と前記端子間スイッチング素子とを接続する電気経路を接続及び切り離しをするスイッチを備え、
前記操作手段は、前記スイッチを操作すること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記スイッチは、異常時にオンされるブレーク接点であること
を特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
異常を検出し、
異常を検出した場合、異常時にゲート信号を与えるための直流電源により直列に接続された複数のスイッチング素子のうち端子間に設けられたスイッチング素子をオンすること
を含むことを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項7】
複数の変換器が直列に接続された電力変換装置の制御方法であって、
前記変換器は、
異常を検出し、
異常を検出した場合、異常時にゲート信号を与えるための直流電源により直列に接続された複数のスイッチング素子のうち端子間に設けられたスイッチング素子をオンすることを含むこと
を特徴とする電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力変換装置として、MMC(modular multilevel converter)が知られている。MMCは、複数のチョッパーセル(単位変換器)で構成された電力変換装置である。チョッパーセルは、IGBT(insulated gate bipolar transistor)などのスイッチング素子とコンデンサで構成されている。
【0003】
一方、各サブシステムの接続端子に対して電気的に並列に保護構成要素が接続され、故障時に冗長的に更に続けて動作することができる分散配置されたエネルギー蓄積器を有する電力変換回路について開示されている(特許文献1参照)。また、各サブモジュールにサブモジュールの短絡のための真空スイッチ管が付設されている装置について開示されている(特許文献2参照)。さらに、多レベル変換器の変換セルを短絡するためのブリッジングユニットについて開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−506736号公報
【特許文献2】特表2010−524426号公報
【特許文献3】特開2011−205887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、MMCを構成する変換器に異常が生じ、ゲート電源が消失すると、スイッチング素子をオンできなくなるため、コンデンサの直流電圧が制御できなくなる。直流電圧が制御できなくなると、電流方向で決定される電圧が変換器から出力されるため、MMCの出力電圧の制御性が低下する。この場合、MMCの運転が継続できなくなる恐れがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、変換器のゲート電源が消失しても、運転を継続することのできる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観点に従った電力変換装置は、直列に接続された複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子のうち端子間に設けられた端子間スイッチング素子に、異常時にゲート信号を与えるための直流電源と、異常を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段により異常が検出された場合、前記直流電源により前記端子間スイッチング素子をオンする操作手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、変換器のゲート電源が消失しても、運転を継続することのできる電力変換装置を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る単位変換器の構成を示す構成図。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る変換器の構成を示す構成図。
【
図3】本発明の第3の実施形態に係る変換器の構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る単位変換器1の構成を示す構成図である。なお、図面における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。
【0012】
単位変換器1は、MMC(電力変換装置)を構成する最小単位の電力変換器(チョッパーセル)である。複数の単位変換器1が直列に接続(カスケード接続)されることで、MMCが構成される。単位変換器1は、直流コンデンサ2、直流電源3、スイッチ4、スイッチ制御部5、2つのスイッチング素子11,12、2つのダイオード13,14、及び2つのゲート駆動回路15,16を備える。
【0013】
上側(正極側)のスイッチング素子11と下側(負極側)のスイッチング素子12は、直列に接続されている。2つのスイッチング素子11,12の接続点は、単位変換器1の1つの端子T1となる。下側のスイッチング素子12の負極側(エミッタ側)は、単位変換器1のもう1つの端子T2となる。スイッチング素子11,12は、例えば、IGBT(insulated gate bipolar transistor)である。スイッチング素子11,12が駆動(スイッチング)することにより、電力変換が行われる。
【0014】
2つのダイオード13,14は、それぞれ2つのスイッチング素子11,12に逆並列に接続されている。直流コンデンサ2は、直列に接続された2つのスイッチング素子11,12と並列に接続されている。
【0015】
2つのゲート駆動回路15,16は、2つのスイッチング素子11,12にそれぞれ対応して設けられている。ゲート駆動回路15,16は、それぞれゲート電圧(ゲート信号)を出力することによりスイッチング素子11,12を駆動する。ゲート電圧は、ゲート電源から出力される。ゲート電源は、主回路から供給する主回路給電方式でもよいし、絶縁変圧器を介して低圧の電源から供給する方式でもよい。下側のスイッチング素子12に設けられているゲート駆動回路16は、入力されるゲート信号をスイッチ制御部5に出力する。その他に、ゲート駆動回路15,16は、それぞれスイッチング素子11,12の状態を監視し、異常を検出した場合は、異常検出信号をスイッチ制御部5に出力してもよい。
【0016】
直流電源3は、単位変換器1の2つの端子T1,T2間に設けられたスイッチング素子12に設けられている。
図1では、直流電源3は、下側のスイッチング素子12のゲート端子とエミッタ端子との間にスイッチ4を介して接続されている。直流電源3は、ゲート電源の喪失時に、スイッチング素子12のゲート端子にターンオンするためのゲート電圧を印加する。ここでは、直流電源3は、二次電池としているが、コンデンサでもよいし、二次電池以外の電池でもよい。
【0017】
スイッチ制御部5は、下側のスイッチング素子12に設けられているゲート駆動回路16とデータを送受信する伝送路で接続されている。スイッチ制御部5は、ゲート駆動回路16から受信するデータに基づいて、スイッチ4の操作を制御する。なお、スイッチ制御部5は、スイッチ4を制御するために、ゲート駆動回路16以外から情報を受信してもよい。例えば、スイッチ制御部5は、直流電源3の充電状態(SOC, State of Charge)を監視するための情報、又は、直流コンデンサ2の電圧を監視するための情報を受信してもよい。スイッチ制御部5は、これらの情報に基づいて、単位変換器1の異常などを検出して、スイッチ4を操作する。スイッチ制御部5が異常を検出した場合、スイッチ4をオンにする。ここでは、主にゲート電源が喪失した場合の異常を想定しているが、スイッチ制御部5は、これ以外のどのような異常でスイッチ4をオンにしてもよい。
【0018】
スイッチ4は、直流電源3と直列に接続されている。スイッチ4は、ブレーク接点(ノーマリーオン、b接点)のスイッチである。スイッチ4は、スイッチ制御部5からの制御指令により操作される。ゲート電源が確立されていないとき、又は、直流電源3がゲート電源としてスイッチング素子12をターンオンできるまで十分に充電されていないときは、スイッチ4は、オンされている。ゲート電源が確立されており、直流電源3が十分に充電されていないときは、ゲート電源により、直流電源3が充電される。直流電源3が充電されると、スイッチ4は、オフされる。また、ゲート電源の喪失などの異常が生じたときは、スイッチ4がオンされることにより、スイッチング素子12をターンオンするためのゲート電圧が直流電源3からスイッチング素子12のゲート端子に印加される。
【0019】
次に、単位変換器1の動作について説明する。
【0020】
スイッチ4はブレーク接点であるため、単位変換器1の起動直後は、オンされている。このとき、ゲート電源により直流電源3が充電される。直流電源3の充電が完了し、単位変換器1に異常が生じていなければ、スイッチ制御部5は、スイッチ4をオフする。このように、正常時は、スイッチ4をオフした状態で、単位変換器1が動作する。
【0021】
単位変換器1にゲート電源が喪失するような異常が生じると、スイッチ制御部5は、この異常を検出して、スイッチ4をオンにする。スイッチ4がオンされると、直流電源3からスイッチング素子12にゲート電圧が印加される。これにより、スイッチング素子12が強制的にターンオンされる。スイッチング素子12がオンすることで、単位変換器1の端子T1,T2間が短絡される。端子T1,T2間が短絡された単位変換器1は、MMCの変換器電流が通過するのみとなる。これにより、異常が生じた単位変換器1が実質的に除外され、残りの単位変換器1で構成されるMMCにより運転が継続される。
【0022】
本実施形態によれば、異常が生じた場合、端子T1,T2間に設けられたスイッチング素子12をターンオンすることで、単位変換器1の端子T1,T2間を短絡することができる。これにより、異常が生じた単位変換器1を除外して他の単位変換器1で構成されるMMC(電力変換装置)で運転を継続することができる。
【0023】
また、ゲート電源が喪失しているような異常でも、通常のゲート電源とは別に直流電源3を設けているため、スイッチング素子12をターンオンして、単位変換器1の端子T1,T2間を短絡することができる。
【0024】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る変換器1Aの構成を示す構成図である。
【0025】
変換器1Aは、2つの単位変換器(チョッパーセル)1Aa,1Abで1つのサブモジュールとして構成した電力変換装置である。複数の変換器1Aが直列に接続(カスケード接続)されることで、MMCが構成される。
【0026】
上側(正極側)の単位変換器1Aaは、
図1に示す第1の実施形態に係る単位変換器1と同様の構成である。具体的には、単位変換器1Aaにおける、直流コンデンサ2a、直流電源3a、スイッチ4a、スイッチ制御部5a、2つのスイッチング素子11a,12a、2つのダイオード13a,14a、及び2つのゲート駆動回路15a,16aは、それぞれ、第1の実施形態に係る単位変換器1における、直流コンデンサ2、直流電源3、スイッチ4、スイッチ制御部5、2つのスイッチング素子11,12、2つのダイオード13,14、及び2つのゲート駆動回路15,16に相当する。
【0027】
下側(負極側)の単位変換器1Abは、
図1に示す第1の実施形態に係る単位変換器1において、直流電源3、スイッチ4、及びスイッチ制御部5を上側のスイッチング素子11の代わりに下側のスイッチング素子12に設けたような構成である。具体的には、単位変換器1Abにおける、直流コンデンサ2b、直流電源3b、スイッチ4b、スイッチ制御部5b、2つのスイッチング素子11b,12b、2つのダイオード13b,14b、及び2つのゲート駆動回路15b,16bは、それぞれ、第1の実施形態に係る単位変換器1における、直流コンデンサ2、直流電源3、スイッチ4、スイッチ制御部5、2つのスイッチング素子11,12、2つのダイオード13,14、及び2つのゲート駆動回路15,16に相当する。
【0028】
上側の単位変換器1Aaの直列に接続されたスイッチング素子11a,12aの下側に、下側の単位変換器1Abの直列に接続されたスイッチング素子11b,12bの上側が接続されている。上側の単位変換器1Aaの2つのスイッチング素子11a,12aの接続点と下側の単位変換器1Abの2つのスイッチング素子11b,12bの接続点が、変換器1Aの2つの端子T1A,T2Aとなる。
【0029】
変換器1Aにゲート電源が喪失するような異常が発生すると、2つの単位変換器1Aa,1Abのスイッチ制御部5a,5bは、それぞれスイッチ4a,4bをオンする。スイッチ4a,4bがオンされると、変換器1Aの2つの端子T1A,T2A間にある2つのスイッチング素子12a,11bは、それぞれ2つの直流電源3a,3bから出力されるゲート電圧によりオンされる。これにより、変換器1Aの2つの端子T1A,T2A間は短絡される。なお、2つのスイッチ制御部5a,5bは、互いに検出された故障を共有して把握できるようになっていて、2つのスイッチ4a,4bが共にオンになるように連係されていてもよい。その他の点は、変換器1Aの2つの単位変換器1Aa,1Abは、第1の実施形態に係る単位変換器1と同様に動作する。
【0030】
本実施形態によれば、サブモジュールとして構成された変換器1Aにおいて、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0031】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態に係る変換器1Bの構成を示す構成図である。
【0032】
変換器1Bを構成する2つの単位変換器1Ba,1Bbは、それぞれ
図2に示す第2の実施形態に係る2つの単位変換器1Aa,1Abに相当する。変換器1Bは、第2の実施形態に係る2つの直流電源3a,3bを1つの直流電源3Bにし、1つの直流電源3Bをそれぞれ2つのスイッチ4Ba,4Bbを介して、変換器1Bの2つの端子T1A,T2A間にある2つのスイッチング素子12a,11bに接続した構成である。直流電源3Bは、2つの単位変換器1Ba,1Bbのどちらに設けられていてもよいし、2つの単位変換器1Ba,1Bbの外部に設けられていてもよい。その他の点は、第2の実施形態と同様である。
【0033】
本実施形態によれば、第2の実施形態に係る作用効果に加え、2つの直流電源3a,3bを1つの直流電源3Bにすることで、第2の実施形態よりも小型化して、製造コストを低減することができる。
【0034】
なお、各実施形態において、変換器1〜1Bは、説明した回路構成に限らず、実施してもよい。例えば、単位変換器に3以上のスイッチング素子が直列に接続された回路でもよいし、直流コンデンサがいくつ設けられていてもよい。サブモジュールとして構成する場合は、単位変換器をいくつ接続してもよい。任意の変換器において、変換器の2つの端子間にあるスイッチング素子に異常時にターンオンするための直流電源を設けて、異常時に直流電源によりゲート信号をスイッチング素子に与えるようにすることで、異常が生じた変換器の2つの端子間を短絡することができる。これにより、変換器で構成される電力変換装置は、異常が生じた変換器を除外して運転を継続することができる。従って、各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…単位変換器、2…直流コンデンサ、3…直流電源、4…スイッチ、5…スイッチ制御部、11,12…スイッチング素子、13,14…ダイオード、15,16…ゲート駆動回路、T1,T2…端子