特許第6071882号(P6071882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071882
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】レーザ脱毛装置
(51)【国際特許分類】
   A45D 26/00 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   A45D26/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-525068(P2013-525068)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2013053060
(87)【国際公開番号】WO2013122001
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2016年1月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-32483(P2012-32483)
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077779
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078260
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 レイ子
(74)【代理人】
【識別番号】100175891
【弁理士】
【氏名又は名称】原 一敬
(72)【発明者】
【氏名】山崎 岩男
【審査官】 石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−135484(JP,A)
【文献】 特開2002−306230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 26/00
A61M 36/10−36/14
A61N 5/00−5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の出射部を覆う照射範囲変更カバーをレーザ脱毛装置の本体に装備し、
前記カバーには口径の異なる2以上のレーザ光通過孔を設け、
前記カバーの位置を動かすことで前記出射部に一のレーザ光通過孔を臨ませることを特徴とするレーザ脱毛装置。
【請求項2】
前記カバーを半球形状に形成し、
その開口縁をレーザ脱毛装置の本体に設けた円環状の孔部に回転自在に係合し、
前記出射部の正面前方に一のレーザ光通過孔を臨ませることを特徴とする請求項1に記載のレーザ脱毛装置。
【請求項3】
前記カバー上であって、前記2以上のレーザ光通過孔それぞれの近傍にタッチセンサを設けると共に、
前記レーザ光通過孔ごとのタッチセンサに配線接続する2以上のコネクタを前記カバー内部に有し、
前記カバーの位置を動かすことで、選択的に前記コネクタの一つと導通する請求項2に記載のレーザ脱毛装置。
【請求項4】
前記半球形状のカバーは、その回転軸がレーザ脱毛装置本体の長手方向軸に対し傾斜するよう取付けると共に、前記レーザ光の出射部とレーザ光通過孔との間に棒状導光体を前記レーザ脱毛装置本体の長手方向軸と直角に設け、
前記レーザ光通過孔のそれぞれが装置本体の正面に位置した際に、開口面が長手方向軸と平行になるように配置することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のレーザ脱毛装置。
【請求項5】
前記カバー内部に、このカバーと相似した半球形状であって前記カバーと一緒に回転する通電シフトサポータを設け、
この通電シフトサポータと前記カバーとの間に導電体を配したことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のレーザ脱毛装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚にレーザ光を照射して脱毛を行うレーザ脱毛装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脱毛の仕方には、レーザ脱毛以外にも、ワックス脱毛・針脱毛などがある。レーザ脱毛は、黒色または茶色に吸収される波長のレーザ光を皮膚に照射し、毛根等に熱的なダメージを与えることにより、毛の再生を抑制する脱毛法で、痛みが少なく時間も短くて済むため広く行われている。
【0003】
レーザ脱毛のうち高出力レーザを用いるものは、高度な知識と経験を有する医師による施術が必要とされる。これに対し低出力レーザを用いるものは、専門知識を必要とせず、家庭でも簡易に脱毛ができる。
【0004】
家庭用の場合は、安全が重要で、意図しないレーザ光照射を回避するため、レーザ光照射口を包囲するように3つのタッチセンサを配置し、1つでも皮膚に接触しない場合はレーザ光照射しないようになっている(特許文献1)。
【0005】
このためレーザ光出射部を覆うアタッチメントを違う長さのものに取り替えて、レーザ光の光源と皮膚との距離を変えることにより、皮膚に到達するレーザ光のエネルギ密度を変更する形式のもの(特許文献2)においては、すべてのアタッチメントにタッチセンサを取り付ける。
またレーザ光のほかにハロゲンランプのような予熱光源を併設して施術領域を加熱するもの(特許文献3)において、口径の違うアタッチメントに取り替えて予熱光源の照射範囲を変更する場合も、すべてのアタッチメントにタッチセンサを取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−278724
【特許文献2】特開2002−306230
【特許文献3】実用新案登録3028988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうしたアタッチメント付け替え式のレーザ脱毛装置では、アタッチメントを複数用意し、その中からひとつを適宜選んで付け替えるため、付け替えの手間が煩わしいばかりでなく、アタッチメントを紛失することもある。またアタッチメントと本体の間にゴミ等が挟み込まれ電気的な接続不良を生じると、タッチセンサが正しく作動せずレーザ光が照射されないおそれがある。
本発明が解決しようとする課題は、どのようにしたらアタッチメントの付け替えに伴う様々な弊害をなくして、レーザ光のエネルギ密度や光照射範囲を変更するか、である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、そのために次の技術的手段を講じる。
まず請求項1記載の発明は、レーザ光の出射部を覆う照射範囲変更カバーをレーザ脱毛装置の本体に装備し、前記カバーには口径の異なる2以上のレーザ光通過孔を設け、前記カバーの位置を動かすことで前記出射部に一のレーザ光通過孔を臨ませることを特徴とするレーザ脱毛装置である。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、前記カバーを半球形状に形成し、その開口縁をレーザ脱毛装置の本体に設けた円環状の孔部に回転自在に係合し、前記出射部の正面前方に一のレーザ光通過孔を臨ませることを特徴とする請求項1に記載のレーザ脱毛装置である。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、前記カバー上であって、前記2以上のレーザ光通過孔それぞれの近傍にタッチセンサを設けると共に、前記光通過孔ごとのタッチセンサに配線接続する2以上のコネクタを前記カバー内部に有し、前記カバーの位置を動かすことで、選択的に前記コネクタの一つと導通する請求項2に記載のレーザ脱毛装置である。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、前記半球形状のカバーは、その回転軸がレーザ脱毛装置本体の長手方向軸に対し傾斜するよう取付けると共に、前記レーザ光の出射部とレーザ光通過孔との間に棒状導光体を前記レーザ脱毛装置本体の長手方向軸と直角に設け、前記レーザ光通過孔のそれぞれが装置本体の正面に位置した際に、開口面が長手方向軸と平行になるように配置することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のレーザ脱毛装置である。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、前記カバー内部に、このカバーと相似した半球形状であって前記カバーと一緒に回転する通電シフトサポータを設け、この通電シフトサポータと前記カバーとの間に導電体を配したことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のレーザ脱毛装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、口径の異なる2以上のレーザ光通過孔のある照射範囲変更カバーをレーザ脱毛装置の本体に装備してレーザ光の出射部を覆い、このカバーの位置を動かすことでレーザ射出部に一のレーザ光通過孔を臨ませることにより、照射範囲を変更するためのアタッチメントを用いることなくレーザ光照射範囲を可変にすることができる。この構成によりアタッチメントを用いることがなくなるので、それを紛失しない。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、照射範囲変更カバーが半球形状であることにより、レーザ脱毛装置と皮膚表面との接触部分が滑らかな形状となり、装置を滑らせて使用する際に皮膚表面への負荷が少なくなる。また、そのカバーがレーザ脱毛装置の本体に設けた円環状の孔部に係合し、その円環に沿って回転することにより、直線的にカバーを動作させる場合と比較してレーザ脱毛装置全体をコンパクトにできる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、カバー上に設けた2以上のレーザ光通過孔それぞれの近傍にタッチセンサを設けると共に、レーザ光通過孔ごとのタッチセンサに配線接続する2以上のコネクタを前記カバー内部に有し、そのカバーの位置を動かし、選択的に上記コネクタの一つと導通することで、タッチセンサに接触している場合にのみ、脱毛を行うためのレーザを出射することができ安全に脱毛装置を使用することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、半球形状のカバーは、その回転軸がレーザ脱毛装置本体の長手方向軸に対し傾斜するよう取付けると共に、レーザ光通過孔のそれぞれが装置本体の正面に位置した際に開口面が長手方向軸と平行になるように配置するので、装置本体2の正面に位置するレーザ光通過孔を施術したい部位に容易に接触できる。また、他のレーザ光通過孔は皮膚に接触せず、円滑に使用できる。
さらに、レーザ光の出射部とレーザ光通過孔との間に棒状導光体を前記レーザ脱毛装置本体の長手方向軸と直角に設けるので、装置本体2の正面に位置するレーザ光通過孔より施術したい部位に向けレーザ光が真っ直ぐに照射される。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、カバー内部に一緒に回転する通電シフトサポータを設け、この通電シフトサポータとカバーとの間に導電体を配したことにより、配線部を強固に固定でき、断線などを生じることなく長期間安定して装置を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ脱毛装置の全体斜視図である。
図2図1のレーザ脱毛装置の正面図である。
図3図1のレーザ脱毛装置の側断面図である。
図4】照射範囲変更カバーを回転しスポット照射用レーザ光通過孔が正面を向いた状態の側断面図である。
図5図1のレーザ脱毛装置の動作図であり、(a)はワイド照射用レーザ光通過孔を正面に向けた状態、(b)は回転の途中、(c)はスポット照射用レーザ光通過孔を正面に向けた状態である。
図6】照射範囲変更カバーの取付け状態を説明するためのレーザ脱毛装置の側面図である。
図7図1のレーザ脱毛装置の回転部の組立方法を示す説明図であり、(a)は照射範囲変更カバーの斜視図、(b)は回転側導電体の斜視図、(c)は通電シフトサポータの斜視図、(d)は固定側導電体の斜視図である。
図8図7の通電の切換え方法を示す説明図である。
図9】タッチセンサを外した状態の照射範囲変更カバーを裏から見た斜視図である。
図10】通電シフトサポータを裏から見た斜視図である。
図11】通電シフトサポータの上に回転側導電体を重ねた状態の平面図である。
図12】他の実施形態に係るレーザ脱毛装置の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一つの実施形態について、図1乃至図11を用いて説明する。
【0020】
図1に示す本実施形態に係るレーザ脱毛装置1は、ABS樹脂等のエンジニアリングプラスチックからなる装置本体2に、口径の異なる2個のレーザ通過孔を備えた照射範囲変更カバー3を装備する。レーザ脱毛装置1は、主要な使用者である成人女性が片手で持ち施術を行うハンディタイプの装置で、角を丸めた縦長の直方体形状であり、軽量化を図っている。装置本体2内部には二次電池を装備し、充電を行うことで繰り返し使用できると共に、使用時には電源ケーブルを取り外して使用できる。なお、図示は省略したが、電源ケーブルの接続端子は、装置本体2の底部に設けている。
【0021】
装置本体2前面には、このレーザ脱毛装置1の電源が誤って入ることを防止するための安全ロック8を設け、図示は省略したが後面には脱毛装置1の電源のオン/オフを行う電源スイッチと、レーザ光及びフラッシュランプの光の強弱を調整する2個の調整ボタンとを設ける。
この強弱は、例えば、弱い方から順にレベル1、レベル2、…レベル5の5段階とし、以下のように照射時間の差により強弱をつける。レベル1はフラッシュランプの光を0.5秒照射し、レーザ光を0.5秒照射する。レベル2はフラッシュランプの光を0.75秒照射し、レーザ光を1.2秒照射する。レベル3はフラッシュランプの光を1秒照射し、レーザ光を1.8秒照射する。レベル4はフラッシュランプの光を1秒照射し、レーザ光を2.4秒照射する。レベル5はフラッシュランプの光を1秒照射し、レーザ光を3.0秒照射する。いずれの場合もフラッシュランプの光を照射に引続き、レーザ光を0.5秒照射するものであり、フラッシュランプの光の照射とレーザ光の照射のオーバラップ時間を約0.2秒とする。
更に装置本体2の側面にはフラッシュランプの光及びレーザ光を照射する際に押す光照射スイッチ16を設け、このスイッチ16を押しているときのみフラッシュランプの光及びレーザ光の照射が可能となる。なお、フラッシュランプの光及びレーザ光の照射や強弱を制御する制御回路Sは、装置本体2の内部に設ける。
【0022】
装置本体2の上方に、斜め上を向いた姿勢の半球形状の照射範囲変更カバー3を装備する。すなわち、照射範囲変更カバー3は、その回転軸3aを装置本体2の長手方向軸2aに対し角度θ傾斜して取付けられている。この角度θは鋭角であり、好ましくは約45度である(図6参照)。
この照射範囲変更カバー3には、二つのレーザ光通過孔5,6を設ける。回転レーザ光通過孔5,6の中心は、半球形状の照射範囲変更カバー3の回転中心と重なる円周上に配置し、180度に振り分けて配置する。このレーザ光通過孔5,6は、それぞれが装置本体2の正面に位置した際に、開口面が長手方向軸2aと平行になるように配置する(図6参照)。照射範囲カバー3を装備するとは、使用者が通常使用する場合には、このカバー3を取り外すことができないように設けることを言う。レーザ光通過孔の一方はワイド照射用レーザ光通過孔5であり、脚や腕など広範囲な体毛部を処理する場合に使用する。もう一方はスポット照射用レーザ光通過孔6であり、指などの狭い範囲の体毛部を処理する場合に使用する。これら、ワイド照射用レーザ光通過孔5とスポット照射用レーザ光通過孔6の二つの口径の異なるレーザ光通過孔を設けて、それぞれの通過孔にはガラス板を嵌め込む(図3図4参照)。
この照射範囲変更カバー3は、レーザ脱毛装置1の本体2に設けた円環状部に係合し、この円環状部に沿って時計回り及び反時計回りに回転する構成である(図5参照)。
照射範囲変更カバー3の回転動作を容易にするために、カバー上には二つの突起部4を設け、使用者はこの突起部4に指をかけて照射範囲変更カバー3を回転させる。照射範囲変更カバー3は、通常回転ロック機構により回転を拘束されているが、回転ロック解除レバー7により回転が可能となる。
この回転ロック機構の構成は以下のとおりである。
照射範囲変更カバー3の内部には、このカバー3と相似した半球形状の通電シフトサポータ13を設け(図7(c)参照)、通電シフトサポータ13の底部には、2個の凹部13a,13aを対向して設ける。回転ロック機構は、回転ロック解除レバー7と一体の嵌合板7aと、この通電シフトサポータ13により構成する。嵌合板7aは、本体2側に設けた出没自在の板状の部材であり、バネにより通電シフトサポータ13に向けて付勢する。嵌合板7aが凹部13aに嵌合した状態でロックされ、嵌合を解除することにより、回転自在になる。
5aは、照射範囲変更カバー3上のワイド照射用レーザ光通過孔5の近傍かつ照射範囲変更カバー3の周縁側に設けた平坦部である。
この平坦部5aとワイド照射用レーザ光通過孔5のガラス板とを略面一に形成する。
さらに、装置本体2前面上部と照射範囲変更カバー3の周縁部の所定の2箇所には、それぞれ位置合わせの目印17〜19を設ける。
【0023】
図3図4に示すように、レーザ光を発光し出射するレーザ出射部11を本体2内にレーザ光を本体の長手方向の面に垂直に照射するように設け、そのレーザ出射部11を覆うように照射範囲変更カバー3を設ける。ワイド照射用レーザ光通過孔5のガラス板とレーザ出射部11との間には棒状導光体10を設ける。なお、スポット照射用レーザ光通過孔6にもガラス板が嵌めこまれている。加えてレーザ照射を行う面の照度及び熱を確保するためのフラッシュランプ12をレーザ出射部11に隣接して設ける。
21は光漏れ防止用カバーであり、フラッシュランプ12を覆うカバー12aの上方に設けられており、フラッシュランプの光及びレーザ光を出射しない側の通過孔5又は6を塞ぐ。
ワイド照射用レーザ光通過孔5の近傍には、この通過孔5を包囲するように等配して3個のタッチセンサ9aを設け、スポット照射用レーザ光通過孔6の近傍には、この通過孔6を包囲するように等配して3個のタッチセンサ9bを設ける。ワイド照射用レーザ光通過孔5を用いてフラッシュランプの光及びレーザ光の照射を行う際には、その通過孔5の近傍にある3個のタッチセンサ9aが全て皮膚に接触していることを制御回路Sが確認し、フラッシュランプの光及びレーザ光の照射が可能となる。同様にスポット照射用レーザ光通過孔6を用いてフラッシュランプの光及びレーザ光の照射を行う際にも、その通過孔6の近傍にある3個のタッチセンサ9bの信号によりフラッシュランプの光及びレーザ光の照射が可能となる。このインターロック制御により、意図しない部位に誤ってフラッシュランプの光及びレーザ光が照射されてしまうおそれがなく装置の安全性が高められている。
20は、回転ロック解除レバー7の上部と左右を覆う被覆板である。この被覆板20の上部の板は、左右両端部が側面視でタッチセンサ9a,9bより所定寸法突出しており、本体の正面側に位置する通過孔5又は6を下に向けてテーブルの上などに置いた場合に、タッチセンサ9a,9bがテーブルなどに接触しない。また、被覆板20の上部の板は中央部分が凹んでいることにより、皮膚の弾力も伴い正しい位置で操作する際にタッチセンサ9a,9bと皮膚hとの接触の邪魔にならない。
【0024】
レーザ出射部11の動作時の発熱を熱伝導によって拡散させて性能の低下を抑えるため、レーザ出射部11を包むようにヒートシンクを設ける。ヒートシンクは熱伝導率のよいアルミニウム又はその合金等で鋳造され、また、表面積を増やすために複数の貫通孔を備え放熱効果が高められている。
【0025】
なお、照射範囲変更カバー3の形状を半球形状と表現したが、これはこのカバーが球体の一部の形状であることを意味し、厳密に球体の半分を利用したものでなくても問題ない。例えば、球体をその中心を通る軸方向に3等分した場合の一つであっても問題ない。
【0026】
また、図7に示すように、照射範囲変更カバー3と、このカバー3と相似した半球形状の通電シフトサポータ13の二つのパーツを相互に固定し、装置本体2に設けた円環状部の縁を挟み込む構成、即ち係合する構成とする。この構成により照射範囲変更カバー3は前記円環に沿う回転動作が可能となり、通電シフトサポータ13は照射範囲変更カバー3が回転するとその動作と一緒に回転する。
通電シフトサポータ13上には、タッチセンサ9と配線結合する回転側導電体14を嵌め込むための溝を形成し、導電体14(図7(b)参照)を挟み込んで照射範囲変更カバー3と固定する。加えて、通電シフトサポータ13内にレーザ通過孔5,6ごとのタッチセンサ全てに通電したコネクタ15a,15bを対向して固定する。
図8に示すように、コネクタ15a,15bには、それぞれ板状導電体151,152が5個ずつ固定されている。この内のそれぞれ3個がそれぞれ3個ずつあるタッチセンサ9a及びタッチセンサ9bに1対1で導通する。コネクタ15aの残りの2個は、両者間を導線で繋ぐ。コネクタ15bの残りの2個は、抵抗r(100kΩ程度)を介して両者間を連結する。この抵抗値の違いを制御回路Sが検出して、ワイド照射用レーザ光通過孔5側とスポット照射用レーザ光通過孔6側のいずれが導通しているかを判別する。
上記構成とすることでワイド照射用レーザ光通過孔5を用いてレーザ照射を行う場合には、コネクタ15aが装置本体2に設けた導電体に接触し、タッチセンサ9aの信号が導電体14及びコネクタ15aを通して装置本体2に設けた制御回路Sに送られる。他方スポット照射用レーザ光通過孔6を用いる場合には、コネクタ15bが装置本体2に設けた導電体に接触し、タッチセンサ9bの信号が回転側導電体14及びコネクタ15bを通して制御回路Sに送られる。
図7(d)に示すように、24は本体に設けた固定側導電体であり、外側に向けて付勢された出没自在の5本のピン24aを有する。このピン24aは、照射範囲変更カバー3と共に通電シフトサポータ13を回転することによりコネクタ15a,15bの板状導電体151又は152の底部と接触する。
【0027】
棒状導光体10は棒状のガラス製で、通過孔5,6に嵌められたガラス板の近傍まで伸びている(棒状導光体10とガラス板との間隙は3mm程度である)。そのため、図9図10に示すとおり、照射範囲変更カバー3及び通電シフトサポータ13の回転を妨げぬよう、照射範囲変更カバー3には通過孔5,6間を結ぶ円弧状の溝22を、通電シフトサポータ13には通過孔5,6間を結ぶ円弧状の孔23をそれぞれ設ける。
なお、91はタッチセンサ9a固定用の孔、92はタッチセンサ9b固定用の孔である。また、153は板状導電体固定用の長孔である。
【0028】
レーザ光は、GaAs(ガリウムアルセナイド)等の化合物半導体を用いたPN接合ダイオードに直接電流を流して励起される。このダイオードは、例えば波長700〜900nm、光出力5mW〜6Wのレーザ光を放射することが可能な半導体素子が適用されている。出射されたレーザ光は、光電気反応、光磁気反応、光力学反応、光化学反応、光免疫反応、光酵素反応等を誘起させる効果があり、光生物学的活性化により生体組織の新陳代謝を促して皮膚血行を高め、また、水分や血液に吸収され難いため、優れた皮膚深部への到達性を有する。
ここで、レーザを用いた脱毛原理について簡単に説明する。レーザ光は、他の光に比べてエネルギ密度が高いため、生体組織に照射した場合、照射部分の温度を比較的容易に上昇させることができる。これによりレーザ光は、生体組織の所望の部位の蛋白質の変成等を意図的に引き起こさせる光熱反応を誘起させることが可能である。レーザ脱毛は、エネルギ密度を比較的高く設定したレーザ光を体毛等の毛根に照射し、その毛母細胞の蛋白質の変成が促進されることにより、毛の成長を抑制する。これにより所望の脱毛効果を得るものである。
【0029】
フラッシュランプはハロゲンランプであり、放射される光の波長は950nmをピークに可視光から赤外光まで(450〜1650nm程度)の広い範囲を持っている。
本発明では、ワイド照射用レーザ光通過孔5を出たレーザ光及びフラッシュランプの光の皮膚に当たる単位面積当たりの量と、スポット照射用レーザ光通過孔6を出たレーザ光及びフラッシュランプの光の皮膚に当たる単位面積当たりの量が変わらないよう棒状導光体10を通過孔5,6に嵌められたガラス板の近傍まで伸ばすと共に、通過孔5,6にレンズでなくガラス板を嵌める。すなわち、棒状導光体10を、通過孔5,6に嵌められたガラス板の近傍まで伸ばしたので、レーザ光はほとんど拡散することなく皮膚に照射される。また、通過孔にはガラス板を嵌めたことによりフラッシュランプの光も通過孔の大小にかかわりなく、皮膚の単位面積当たりの強さはほぼ同じである。よって、レーザ光照射範囲による使用感に差がなく、快適に使用できる。
【0030】
カバー3上に設けたレーザ光通過孔5,6それぞれの近傍に、タッチセンサ9a,9bを設けると共に、レーザ光通過孔5,6ごとのタッチセンサ9a,9bに配線接続する2以上のコネクタ15a,15bを前記カバー3内部に有し、そのカバー3を動作させることで、制御回路Sが選択的に上記コネクタ15a,15bのいずれかと導通し、レーザ光又はフラッシュランプの光の照射を可能とする。この構成により、レーザ出射部11に臨んだレーザ光通過孔近傍のタッチセンサが皮膚に接触したときのみ、脱毛を行うためのレーザ光又はフラッシュランプの光を出射することができ安全に脱毛装置1を使用することができる。
【0031】
また、カバー3内部に一緒に回転する通電シフトサポータ13を設け、この通電シフトサポータ13とカバー3との間に回転側導電体14を配したことにより、配線部を強固に固定でき、断線などを生じることなく長期間安定してレーザ脱毛装置1を使用することができる。
【0032】
次に、レーザ脱毛装置1の使用方法について説明する。
レーザ脱毛装置1を使用する前に、レーザ脱毛装置1内に設けている二次電池に充電を行う。充電は電源コードをレーザ脱毛装置1の底部に設けた接続端子に接続して行う。十分に充電を終えたことをLED表示灯で確認し電源コードを取り外す。
【0033】
脚や腕、脇など広範囲な体毛部を処理する場合(図5(a)参照)には、ワイド照射用レーザ通過孔5がレーザ脱毛装置1の正面になるように、照射範囲変更カバー3を回転させる。回転させるときには、回転ロック解除レバー7を下に下げた状態で、突起部4に指を掛けて回転させる。この際に装置本体2前面上部の目印17と照射範囲変更カバー3の周縁部の目印18を合致させて回転ロック解除レバー7を戻すと、本体2に設けた嵌合板7aが一方の凹部13aに嵌合して適切な位置に固定できると共に、コネクタ15aと本体に設けた固定側導電体24とが導通する。
【0034】
次に安全ロック8をはずし、電源スイッチが作動する状態にする。電源スイッチを一度押すと、レーザ脱毛装置1は制御回路Sによりレーザの照射が可能な準備状態に保持される。レーザ光の強弱を調整する2個の調整ボタンにより所望の強度に調整した後、照射範囲変更カバー3のワイド照射用レーザ通過孔5を皮膚表面hの体毛部に接触させる(図6)。この接触状況はタッチセンサ9aを介して装置本体2に内蔵した制御回路Sが確認する。このタッチセンサ9aからの信号はインターロック信号として作用し、全てのプローブ9aが接触していることがレーザ照射の必要条件となる。この状態で、装置本体2の側面の光照射スイッチ16を押すと、先ずフラッシュランプの光がワイド照射用レーザ通過孔5を介し皮膚表面に照射される。これに引き続いてレーザ光が体毛部に照射される。フラッシュランプの光により皮膚が暖められ、これに続いて毛穴に届くレーザの熱を逃がし難くし、優れた脱毛効果を得ることができる。
平坦部5aは、照射用レーザ通過孔5と合さって大面積の接触部分となり、視認し難い脇などを脱毛する際のガイドとなる。
【0035】
上記施術を行った後、続けて指などの狭い範囲の体毛部を処理する場合(図5(c)参照)を説明する。回転ロック解除レバー7を下に下げた状態で、突起部4に指を掛けて照射範囲変更カバー3を回転させ、スポット照射用レーザ通過孔6を、レーザ脱毛装置1の正面に向ける。この際に装置本体2前面上部の目印17と照射範囲変更カバー3の周縁部の目印19を合致させて回転ロック解除レバー7を戻すと、本体2に設けた嵌合板7aがもう一方の凹部13aに嵌合して適切な位置に固定できると共に、コネクタ15bと本体に設けた固定側導電体24とが導通する。その後はワイド照射用レーザ通過孔5の場合と同様の施術を行う。なお施術を行った後は、電源スイッチを再度押すことにより、レーザ脱毛装置1の電源を落とし、安全ロック8によりロックを掛けて保管する。
【0036】
以上により、照射範囲を変更するためのアタッチメントを用いることなくレーザ光照射範囲を変更することができる。このように本実施形態のレーザ脱毛装置1ではアタッチメントを用いることがないので、それを紛失することがない。
【0037】
また、照射範囲変更カバー3が半球形状であることにより、レーザ脱毛装置1と皮膚表面との接触部分が滑らかな形状となり、装置1を滑らせて使用する際、皮膚表面への負荷が少なくなる。また、そのカバー3がレーザ脱毛装置1の装置本体2に設けた円環状の孔部に係合し、その円環に沿って回転することにより、直線的にカバーを動作させる場合と比較してレーザ脱毛装置1全体をコンパクトにできる。
【0038】
以上、本発明を実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこの実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で他の形態でも実施可能である。
前記本発明に係るレーザ脱毛装置1はレーザ光とフラッシュランプの光との併用を中心に述べたが、レーザ光のみで脱毛する装置についても同様に適用することができる。
例えば図12に示すように、装置本体2の内部にフラッシュランプを設けず、スポット照射用レーザ光通過孔6にガラス板でなく凸レンズLを嵌め込む。
ワイド照射用レーザ光通過孔5から出るレーザ光に対し、スポット照射用レーザ光通過孔6から出るレーザ光が強くなり、照射部位に応じて照射するレーザ光の強弱をつけることができる。
ただし、レーザ光とフラッシュランプの光とを併用すると、フラッシュランプの光により皮膚が暖められ、毛穴に届いたレーザの熱を逃がし難いので、脱毛効率がよい。
【0039】
また、別の実施形態として、照射範囲変更カバー3は半球形状としたが、ボード状にして、本体装置に装備し本体装置表面をスライドさせることも可能である。
【0040】
また、照射範囲変更カバー3に2個のレーザ通過孔5,6を設けたが、3個以上とすることも可能である。その場合、照射範囲変更カバー3上に設ける突起部4は通過孔同士の間に設ける構成が望ましい。
【0041】
ただし、照射範囲変更カバー3を半球形状として、さらにその回転軸3aを装置本体2の長手方向軸に対し約45度傾斜させ、レーザ光通過孔5,6のそれぞれが装置本体2の正面に位置した際に、開口面が長手方向軸2aと平行になるように配置することにより、装置本体2の正面に位置する回転レーザ光通過孔を施術したい部位に容易に接触できる。また、他の回転レーザ光通過孔を皮膚に接触させず、円滑に使用できる。
また、レーザ光通過孔を2〜4個にすると、レーザ光通過孔間が近接せず、照射範囲変更カバー3を円滑に回転できる。
【0042】
また、タッチセンサ9a,9bとコネクタ15a,15bとの接続を、ケーブルで行うことも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 レーザ脱毛装置
2 装置本体
3 照射範囲変更カバー
4 突起部
5 ワイド照射用レーザ光通過孔
6 スポット照射用レーザ光通過孔
7 回転ロック解除レバー
8 安全ロック
9a タッチセンサ(ワイド照射用レーザ光通過孔近傍)
9b タッチセンサ(スポット照射用レーザ光通過孔近傍)
10 棒状導光体
11 レーザ光出射部
12 フラッシュランプ
13 通電シフトサポータ
14 導電体
15a コネクタ(タッチセンサ9aと導通したもの)
15b コネクタ(タッチセンサ9bと導通したもの)
16 光照射スイッチ
図1
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