(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071884
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】アベリノ角膜ジストロフィー診断用システム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
C12Q1/68 AZNA
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-531500(P2013-531500)
(86)(22)【出願日】2011年9月30日
(65)【公表番号】特表2013-542723(P2013-542723A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】KR2011007272
(87)【国際公開番号】WO2012044121
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2013年6月3日
【審判番号】不服2015-22823(P2015-22823/J1)
【審判請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0096103
(32)【優先日】2010年10月1日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511250242
【氏名又は名称】アベリノ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AVELLINO CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】イ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ジョングク
【合議体】
【審判長】
中島 庸子
【審判官】
山崎 利直
【審判官】
高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−523442(JP,A)
【文献】
特表2010−514427(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/047436(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C12Q
C12N
PubMed
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の手段を含むアベリノ角膜ジストロフィー診断用システム:
(a)ネットワークを介して試料に対する情報及び検査依頼書を、入力手段を含むサーバーに伝送して診断サービスを要請して、そして前記要請に応答して出力手段を含むサーバーから伝えられるアベリノ角膜ジストロフィー判別結果データの提供を受けて保存する少なくとも一つのクライアントを含むクライアントグループ;
(b)前記試料に対する情報、前記検査依頼書、試料DNAにTGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅できる配列番号1及び2で表されるプライマー対と前記エクソン4部位に突然変異を含まないTGFBI遺伝子を検出できるプローブとを添加して測定した第1PCR増幅値、及び試料DNAにTGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅できる配列番号1及び2で表されるプライマー対と前記エクソン4部位に突然変異を含むTGFBI遺伝子を検出できるプローブとを添加して測定した第2PCR増幅値、の入力を受けるための入力手段;
(c)前記第1PCR増幅値が、第2PCR増幅値の5〜9倍の場合正常と判別し、第1PCR増幅値と第2PCR増幅値の比が1:1.5〜1.5:1の場合アベリノ角膜ジストロフィー異型接合子と判別し、第2PCR増幅値が第1PCR増幅値の5〜9倍の場合アベリノ角膜ジストロフィー同型接合子と判別し、それらでなければ試料DNAが、正常、アベリノ角膜ジストロフィー異型接合子、又はアベリノ角膜ジストロフィー同型接合子のいずれかであると判別しない分析手段;及び
(d)前記分析手段の判別結果を出力するための出力手段。
【請求項2】
前記第1PCR増幅値と第2PCR増幅値とをそれぞれ2つの軸に沿ってプロットした2次元の形質選別プロットを提供する表示手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のアベリノ角膜ジストロフィー診断用システム。
【請求項3】
前記第1PCR増幅値及び第2PCR増幅値が、試料DNAに、TGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅できる配列番号1及び2で表されるプライマー対、前記エクソン4部位に突然変異を含まないTGFBI遺伝子を検出できるプローブ、及び前記エクソン4部位に突然変異を含むTGFBI遺伝子を検出できるプローブを、共に添加してPCRを行うことによって、同時に測定されることを特徴とする請求項1に記載のアベリノ角膜ジストロフィー診断用システム。
【請求項4】
前記試料に対する情報が、試料の種類、依頼者名、依頼機関名、採取日、採取時間及び連絡先のいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載のアベリノ角膜ジストロフィー診断用システム。
【請求項5】
前記試料は、口腔粘膜細胞、血液及び毛根のいずれか一つであることを特徴とする請求項4に記載のアベリノ角膜ジストロフィー診断用システム。
【請求項6】
前記検査依頼書は、遺伝子検査同意書を含むことを特徴とする請求項1に記載のアベリノ角膜ジストロフィー診断用システム。
【請求項7】
前記増幅値を出力するPCR装置をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のアベリノ角膜ジストロフィー診断用システム。
【請求項8】
前記試料のDNAの260nmでの吸光度及び280nmでの吸光度を入力して、試料DNAの濃度及び純度を演算する第1演算手段と、前記プローブ、前記プライマー対及び蒸溜水の量を演算する第2演算手段とをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のアベリノ角膜ジストロフィー診断用システム。
【請求項9】
前記エクソン4部位に突然変異を含まないTGFBI遺伝子を検出できるプローブは、コドン124位置が「CGC」であるTGFBI遺伝子を検出できるプローブであることを特徴とする請求項1に記載のアベリノ角膜ジストロフィー診断用システム。
【請求項10】
前記コドン124位置が「CGC」であるTGFBI遺伝子を検出できるプローブは、配列番号3で表されるプローブであることを特徴とする請求項9に記載のアベリノ角膜ジストロフィー診断用システム。
【請求項11】
前記エクソン4部位に突然変異を含むTGFBI遺伝子を検出できるプローブは、コドン124位置が「CAC」であるTGFBI遺伝子を検出できるプローブであることを特徴とする請求項1に記載のアベリノ角膜ジストロフィー診断用システム。
【請求項12】
前記コドン124位置が「CAC」であるTGFBI遺伝子を検出できるプローブは、配列番号4で表されるプローブであることを特徴とする請求項11に記載のアベリノ角膜ジストロフィー診断用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アベリノ角膜ジストロフィー診断用システムに関し、より詳細には入力された第1PCR増幅値及び第2PCR増幅値の比を利用して、正常及びアベリノ角膜ジストロフィーを判別するアベリノ角膜ジストロフィー診断用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
角膜ジストロフィー(corneal dystrophy)は、角膜中心に混濁が生じ、さらに年を取るにつれて、徐々に混濁が多くなって視力が低下する常染色体優性遺伝疾患であり、アベリノ角膜ジストロフィー(Avellino corneal dystrophy)、顆粒状角膜ジストロフィー(Granular corneal dystrophy)、格子状角膜ジストロフィー(lattice type I corneal dystrophy)及び輪状角膜ジストロフィー(Reis-bucklers corneal dystrophy)等があり、βIG−H3蛋白質をコードする遺伝子の突然変異によって発生する。
【0003】
これらのうち、アベリノ角膜ジストロフィー患者は、年齢が進むにつれて、異型接合体(heterozygote)は、視力の大幅な損失を示し、同型接合体(homozygote)の場合には6才から失明する。アベリノ角膜ジストロフィーは、従来、顆粒型角膜ジストロフィーと総称された疾患であったが、遺伝子の違いが発見され、1988年分離命名された疾患である。世界で最も一般的な角膜ジストロフィーとして知られており、遺伝子検査の結果、国内に1/340〜1/1000の間の有病率(heterozygoteの場合)となっており、かなり一般的な疾病である(Holland, E.J. et al., Ophthalmology, 99:1564, 1992; Kennedy, S.M. et al., Br. J. Ophthalmol., 80:489, 1996;Dolmetsch, A.M. et al., Can. J. Ophthalmol., 31:29, 1996; Afshari, N.A. et al., Arch. Ophthalmol., 119:16, 2001;Stewart, H.S. Hum. Mutat., 14:126, 1999)。
【0004】
本発明者等は、異型接合体のアベリノ角膜ジストロフィー患者が、レーシック手術を受けると、約2年後から角膜混濁が急激に増加して、失明することを発見した(Jun, RM et al., Ophthalmolgy, 111:463, 2004)。以前は、レーシック、またはエクシマレーザー手術が角膜ジストロフィー患者の混濁を取り除くとの予測を基に多くの手術が行われた。国内のこれまで施術されたレーシック手術は約30万件と推定され、国内のアベリノ角膜ジストロフィーの異型接合子の頻度を最小限の計算値である1/1000と見ても300人が視力を失っていると推測することができる。レーシック手術を受けた患者は、主に20〜30代の生産活動を行っている人口で、これらの失明は社会的、経済的に深刻な問題と判断される。また、2000年以後レーシック手術の手術適用が公表された米国の場合、黒人においてもアベリノ角膜ジストロフィー患者のレーシック手術による失明が発見され始め、世界中の多くの患者が手術を受けた後、疾病が進んでいるものと推測できる。
【0005】
従って、レーシック手術の施術前に、アベリノ角膜ジストロフィー患者に対する正確な診断を行って、レーシック手術による症状の進行を防止しなければならないが、従来の眼科における眼科医が顕微鏡で眼球混濁を検査することだけで、アベリノ角膜ジストロフィーと診断され、症状が進行していない患者の場合は発見できず、レーシック手術を施行し、失明に発展する場合も度々発生しており、正確でかつ迅速な角膜ジストロフィーの診断方法が切に求められるのが現状である。
それと共に、既存検査は医師の熟練度及び患者の状態といった個人差によって検査結果が変わる場合があって、信頼度と正確性がさらに高い診断方法の開発が求められている。
【0006】
そこで、本発明者等は、眼科医視力矯正手術前に正確に診断されなければならないアベリノ症を含む角膜ジストロフィーを診断するための新しいシステムを提供しようと鋭意努力した結果、試料のDNAにTGFBI遺伝子(Transforming growth factor b-induced gene)のエクソン4部位を増幅できるプライマー対と前記エクソン4部位に突然変異を含まないTGFBI遺伝子を検出できるプローブを添加して測定した第1PCR増幅値と試料DNAにTGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅できるプライマー対と前記エクソン4部位に突然変異を含むTGFBI遺伝子を検出できるプローブを添加して測定した第2PCR増幅値を比較して、前記第1PCR増幅値が第2PCR増幅値の5〜9倍の場合正常であり、第1PCR増幅値と第2PCR増幅値の比が1:1.5〜1.5:1の場合アベリノ角膜ジストロフィー異型接合子であり、第2PCR増幅値が第1PCR増幅値の5〜9倍の場合、アベリノ角膜ジストロフィー同型接合子であることを確認し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、医師の熟練度に影響されることなく、より簡単でかつ正確な診断が可能なアベリノ角膜ジストロフィー診断のための新しい診断システムを提供するところにある。
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、下記の手段を含むアベリノ角膜ジストロフィー診断用システムを提供する:
(a)ネットワークを介して試料に対する情報及び検査依頼書を、入力手段を含むサーバーに伝送して診断サービスを要請して、前記要請に応答して出力手段を含むサーバーから伝えられるアベリノ角膜ジストロフィー判別結果データの提供を受けて保存する少なくとも一つのクライアントを含むクライアントグループ;
(b)前記試料に対する情報、前記検査依頼書、試料DNAにTGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅できるプライマー対と前記エクソン4部位に突然変異を含まないTGFBI遺伝子を検出できるプローブとを添加して測定した第1PCR増幅値、及び試料DNAにTGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅できるプライマー対と前記エクソン4部位に突然変異を含むTGFBI遺伝子を検出できるプローブとを添加して測定した第2PCR増幅値の入力を受けるための入力手段;
(c)前記第1PCR増幅値が、第2PCR増幅値の5〜9倍の場合、正常と判別し、第1PCR増幅値と第2PCR増幅値の比が1:1.5〜1.5:1の場合アベリノ角膜ジストロフィー異型接合子と判別し、第2PCR増幅値が第1PCR増幅値の5〜9倍の場合アベリノ角膜ジストロフィー同型接合子と判別する分析手段;及び
(d)前記分析手段の判別結果を出力するための出力手段。
本発明はまた、前記アベリノ角膜ジストロフィー診断用システムを含むコンピュータで読み込み可能な媒体(computer readable medium or media)を提供する。
【0009】
本発明はまた、前記アベリノ角膜ジストロフィー診断用システムを含むコンピュータを提供する。
本発明は、さらに前記アベリノ角膜ジストロフィー診断用システム、または前記コンピュータで読み込み可能な媒体を利用するアベリノ角膜ジストロフィー診断方法を提供する。
【0010】
本発明の他の特徴及び具現例は、以下の詳細な説明及び添付された特許請求範囲からより一層明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】PCR増幅データを利用したアベリノ角膜ジストロフィー診断方法の全過程を示した図である。
【
図2】システム運営者のサーバーに表示されるオンライン依頼書情報書である。
【
図3】生データを利用したDNA濃度及び純度計算結果を示す。
【
図4】第1PCR増幅値と第2PCR増幅値とを利用した形質選別プロット及びその結果表を示す。
【
図5】医療機関用遺伝子分析結果報告書の例示画面である。
【
図6】個人用遺伝子分析結果報告書の例示画面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたあらゆる技術的・科学的用語は、本発明が属する技術分野に熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。通常、本明細書において使用された命名法及び以下で詳述する実験方法は、本技術分野において周知であり、しかも汎用されるものである。
【0013】
本発明の詳細な説明などにおいて使用される主な用語の定義は、下記の通りである。
【0014】
本願において、「アベリノ角膜ジストロフィー」とは、第2型顆粒型殻膜ジストロフィー(Granular Corneal dystrophy type II)ともいい、両眼角膜中心部に混濁が発生する疾患であり、常染色体優生遺伝をする遺伝疾患で、TGFBI遺伝子のエクソン4部位のCGC配列がCACに突然変異し、BIGH3蛋白質の124番目のアミノ酸がアルギニンからヒスチジンに変異(R124H)する遺伝子異常によって現れる疾患である。
【0015】
本願において、「異型接合子」とは、親から受け継いだ一対の遺伝子のうちの一つにだけ、突然変異が存在する場合で、「アベリノ角膜ジストロフィー異型接合子」とは、親から受け継いだ一対のTGFBI遺伝子の中一つにだけ突然変異が存在する場合をいう。
【0016】
本願において、「同型接合子」とは、親から受け継いだ一対の遺伝子全てに突然変異が存在する場合で、「アベリノ角膜ジストロフィー同型接合子」とは、親から受け継いだ一対のTGFBI遺伝子全てに突然変異が存在する場合をいう。
【0017】
本願において、「プログラム」または「コンピュータプログラム」とは、一般に特定プログラミング言語の規則に符合し、特定機能、任務、または問題を解決したり実行するのに必要な「コードセグメント」に分けられる宣言及び陳述、または命令で構成される統語論的単位を意味する。プログラミング言語は、一般にプログラムを表現するための人工言語である。
【0018】
本願において、「システム」または「コンピュータシステム」とは、一般に一つ以上のコンピュータ、周辺装置及びデータ処理を行うソフトウェアを意味する。「ユーザー」又は「システム運営者」とは、一般にデータ処理及び情報交換のために「システム運営者装置」(例:コンピュータ、無線装置等)を介してアクセスするコンピュータネットワークを利用する人を含む。「コンピュータ」とは、一般に人の介入なしに数多くの算術演算及び論理演算をはじめとする実質的な計算を行える機能的単位である。
【0019】
本願において、「コンピュータで読み込み可能な媒体」とは、限定されるものではないが、ハードディスク、フロッピーディスク、コンパクトディスク、マグネト−オプチカルディスク(magneto-optical disc)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory)、リードオンリーメモリ(Read Only Memory)、またはフラッシュメモリ(flash memory)であってもよい。さらに、本願で用いられるコンピュータで読み込み可能な媒体は、一つのコンピュータ内に含まれてもよく、またはネットワークで分散(distribute)してもよい。この時、ネットワークは、LAN(local area network)またはWAN(wide area network)のような任意の従来のネットワークシステムを用いてもよい。本願で用いられるネットワークやサーバーは、従来知らされたネットワークやサーバーの形態を利用することができ、例えば、World Wide Webアプリケーションを用いてもよく、World Wide Webサーバーであってもよい。
【0020】
一観点において、本発明は、PCR増幅データを利用したアベリノ角膜ジストロフィー診断用システムに関し、下記の手段を含むことを特徴とする:
(a)ネットワークを介して試料に対する情報及び検査依頼書を、入力手段を含むサーバーに伝送して診断サービスを要請して、前記要請に応答して出力手段を含むサーバーから伝えられるアベリノ角膜ジストロフィー判別結果データの提供を受けて保存する少なくとも一つのクライアントを含むクライアントグループ;
(b)前記試料に対する情報、前記検査依頼書、試料DNAにTGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅できるプライマー対と前記エクソン4部位に突然変異を含まないTGFBI遺伝子を検出できるプローブとを添加して測定した第1PCR増幅値、及び試料DNAにTGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅できるプライマー対と前記エクソン4部位に突然変異を含むTGFBI遺伝子を検出できるプローブとを添加して測定した第2PCR増幅値、の入力を受けるための入力手段;
(c)前記第1PCR増幅値が、第2PCR増幅値の5〜9倍の場合、正常と判別し、第1PCR増幅値と第2PCR増幅値の比が1:1.5〜1.5:1の場合アベリノ角膜ジストロフィー異型接合子と判別し、第2PCR増幅値が第1PCR増幅値の5〜9倍の場合アベリノ角膜ジストロフィー同型接合子と判別する分析手段;及び
(d)前記分析手段の判別結果を出力するための出力手段。
【0021】
図1は、PCR増幅データを利用したアベリノ角膜ジストロフィー診断方法の全過程を図示した図面であり、以下に
図1を参照しながら説明する。
本発明は、好ましくは、ネットワークを介して前記試料に対する情報及び検査依頼書を前記入力手段を含むサーバーに伝送して、診断サービスを要請し、前記要請に応答して前記出力手段を含むサーバーから伝えられるアベリノ角膜ジストロフィー判別結果データの提供を受けて保存する少なくとも一つのクライアントを含むクライアントグループをさらに含んでもよい。
【0022】
前記試料に対する情報が、試料の種類、依頼者名、依頼機関名、採取日、採取時間及び連絡先のいずれか一つ以上を入力でき、この時、前記試料は、口腔粘膜細胞、血液及び毛根のいずれか一つを利用することができる。さらに、前記検査依頼書は、遺伝子検査同意書を含んでもよい。
【0023】
さらに、前記試料のDNAの260nmでの吸光度及び280nmでの吸光度をデータとして入力することができ、第1演算手段は、前記吸光度を利用して、試料DNAの濃度及び純度を演算する。また、全試料の個数と対照群を考慮して、プローブ、プライマー対及び蒸溜水の量を演算する第2演算手段を含んでもよい。そして、前記演算された前記試料DNAの濃度及び純度を利用して、試料DNAの量を決めることができる。
【0024】
前記プローブは、エクソン4部位に突然変異を含まないTGFBI遺伝子を検出できるプローブとエクソン4部位に突然変異を含むTGFBI遺伝子を検出できるプローブを意味し、前記プライマー対は、TGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅できるプライマー対を意味する。一方、PCRを行うための試薬としては、Taqポリメラーゼ、dNTP、MgCl
2、PCR緩衝溶液等が用いられる。
【0025】
この時、前記TGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅できるプライマー対は、TGFBI遺伝子のコドン124位置を増幅できるプライマー対であり、好ましくは配列番号1及び2で表されるプライマー対である。また、前記エクソン4部位に突然変異を含まないTGFBI遺伝子を検出できるプローブは、コドン124位置が「CGC」であるTGFBI遺伝子を検出できるプローブであり、好ましくは配列番号3で表されるプローブである。また、前記エクソン4部位に突然変異を含むTGFBI遺伝子を検出できるプローブは、コドン124位置が「CAC」であるTGFBI遺伝子を検出できるプローブであり、好ましくは配列番号4で表されるプローブである。
TGFBI遺伝子のコドン124位置を増幅するためのプライマー対
配列番号1:5'−TCCACCACCACTCAGCTGTA−3'
配列番号2:5'−CCATCTCAGGCCTCAGCTT−3'
コドン124位置が「CGC」であるTGFBI遺伝子を識別するためのプローブ
配列番号3:5'−CACGGACCGCACGGA−3'
コドン124位置が「CAC」であるTGFBI遺伝子を識別するためのプローブ
配列番号4:5'−CACGGACCACACGGA−3'
【0026】
本発明に係るアベリノ角膜ジストロフィー診断用システムは、追加的に前記演算されたプローブ、プライマー対及び蒸溜水の量を適用して、試料DNAにTGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅できるプライマー対と前記エクソン4部位に突然変異を含まないTGFBI遺伝子を検出できるプローブを添加して測定した第1PCR増幅値と、試料DNAにTGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅できるプライマー対と前記エクソン4部位に突然変異を含むTGFBI遺伝子を検出できるプローブを添加して測定した第2PCR増幅値を出力するPCR装置を含んでもよい。前記PCR装置は、リアルタイムPCRプログラムがセットされてもよい。
【0027】
この時、PCRを行う際に、好ましくは迅速な処理のために試料DNAにTGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅できるプライマー対、前記エクソン4部位に突然変異を含まないTGFBI遺伝子を検出できるプローブ、及び前記エクソン4部位に突然変異を含むTGFBI遺伝子を検出できるプローブを共に添加してPCRを行うことによって、第1PCR増幅値及び第2PCR増幅値が同時に測定できる。
【0028】
前記出力された第1PCR増幅値及び第2PCR増幅値は、入力手段に入力された後、分析手段で第1PCR増幅値が第2PCR増幅値の5〜9倍の場合、正常と判別し、第1PCR増幅値と第2PCR増幅値の比が1:1.5〜1.5:1である場合、アベリノ角膜ジストロフィー異型接合子と判別し、第2PCR増幅値が第1PCR増幅値の5〜9倍の場合、アベリノ角膜ジストロフィー同型接合子と判別されることになる。この時、好ましくは、前記第1PCR増幅値が第2PCR増幅値の7〜8倍の場合、正常と判別し、第2PCR増幅値が第1PCR増幅値の7〜8倍の場合、アベリノ角膜ジストロフィー同型接合子と判別する。
【0029】
前記第1PCR増幅値と第2PCR増幅値とをそれぞれ2つの軸に沿ってプロットした2次元の形質選別プロットを提供する表示手段をさらに含んでもよい。この時、前記2次元形質選別プロットは、第1PCR増幅値はX軸とし、第2PCR増幅値はY軸として示す場合、プロット上で右側下段に表示される時、正常と判別し、これと対称の位置に表示される時、アベリノ同型接合子と判別する。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当分野において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0031】
実施例1.アベリノ角膜ジストロフィーの診断例
1−1:試料情報及び検査依頼書の入力
個人クライアント、または個人クライアントの試料を採取した医療機関から構成されるクライアントグループは、試料に対する情報及び検査依頼書をシステム運営者のサーバーに伝送する。
【0032】
この時、試料に対する情報は、試料の種類、依頼者名、依頼機関名、採取日、採取時間、及び連絡先等を入力し、採取された形態に応じて試料の種類を全血、口腔上皮、及び毛根のいずれか一つを選択した。尚、検査依頼書作成前段階として遺伝子検査同意書の作成を含む。
この時、システム運営者のサーバーに表示されるオンライン依頼書情報は
図2のようになる。
【0033】
1−2:試料DNAの濃度及び純度演算
本発明に係るアベリノ角膜ジストロフィー診断システムは、試料DNAの濃度及び純度を算出するための第1演算手段を含む。
【0034】
試料のDNAの260nmでの吸光度及び280nmでの吸光度を測定できるGenios機器(TECAN、オーストリア)は、このシステムに連結でき、この時、前記機器と連結されたシステム運営者の装置(コンピュータ)上にXFluor4(TECAN、オーストリア)プログラムが実行されて吸光度が測定され、DNAの濃度と純度が演算されることになる。
【0035】
即ち、「XFluor4→Edit→Measurement parameter」で「Absorbance」を選択した後、「Meas.params」の吸収波長は260nm、「Number of reads」は、2回程度指定した後確認ボタンを押す。次に、「XFluor4→Start measurement」押せば260nmでの吸光度が測定される。
【0036】
再び、「XFluor4→Edit→Meas.params」で吸収波長は、280nm、「Number of reads」は、2回程度指定した後、確認ボタンを押す。次に、「XFluor4→Start measurement」を押せば280nmでの吸光度が測定される。
【0037】
OD
260=1である時、二重螺旋DNAの濃度は、約50ng/μLに該当するため、260nmでの値からブランク値を差し引いた後、50を掛けるとDNA濃度が算出される。また、260nmおよび280nmで吸光度を測定した後、両者の比(OD
260/OD
280)からDNAの純度が分かるが、一般にOD
260/OD
280の比が、1.8から2.0ならば純度が良いと判定する。
図3は、生データを利用したDNA濃度及び純度計算結果を示す。
【0038】
1−3:PCR増幅のための試料、プライマー対、蒸溜水等の量演算及びPCR増幅値の出力
本発明に係るアベリノ角膜ジストロフィー診断システムは、PCR増幅のための試料DNAの量を算出するための第2演算手段及びPCR装置を含む。
【0039】
準備前サンプル個数と対照群の正常(Normal、NN)、アベリノ角膜ジストロフィー異型接合子(Heterozygote、HN)、アベリノ角膜ジストロフィー同型接合子(homozygote、HH)、陰性対照群(negative control、NTC)を合算して、損失を減らすために0.2μLを加えて、プローブ、プライマー対及び蒸溜水の量を演算した。試料のDNAの量は、前記演算された試料DNAの濃度及び純度を利用して決めた。
【0040】
この時、用いられたTGFBI遺伝子のエクソン4の突然変異部位、即ちコドン124位置を増幅するためのプライマー対、変異がない正常遺伝子断片と結合するプローブ、即ちコドン124位置が「CGC」であるTGFBI遺伝子を識別するためのプローブ及び変異がある遺伝子断片と結合するプローブ、即ちコドン124位置が「CAC」であるTGFBI遺伝子を識別するためのプローブは、下記のようになる。この時、変異がない正常遺伝子断片と結合するプローブは、VICで標識し、変異がある遺伝子断片と結合するプローブは、FAMで標識し、相補的な遺伝子断片との結合が容易になるようMGB(minor groove binder)を付着した。
TGFBI遺伝子のコドン124位置を増幅するためのプライマー対
配列番号1:5'−TCCACCACCACTCAGCTGTA−3'
配列番号2:5'−CCATCTCAGGCCTCAGCTT−3'
コドン124位置が「CGC」であるTGFBI遺伝子を識別するためのプローブ
配列番号3:5'−CACGGACCGCACGGA−3'
コドン124位置が「CAC」であるTGFBI遺伝子を識別するためのプローブ
配列番号4:5'−CACGGACCACACGGA−3'
【0041】
次に、PCR装置(Applied Biosystems社)でPCR値を得るために、リアルタイムPCRプログラムを実行する。即ち、RT−PCR機器画面のStep one software V2.0をダブルクリックした後、「Advanced setup」を押せば、「Experiment Properties」という最初の画面が出る。次に、「Step One(商品名) Instrument(48wells)、Genotyping」に指定する。「Experiment Properties」の下を見ると「Plate Setup」で「SNP Assay」を「ACD probe」に指定して、48well plateが描かれた画面にA列1行にACD1、A列2行にACD2のような方式で48wellを全部指定する。「Run Method」でサイクル数を36に変える。
【0042】
PCR反応のための反応液のプライマー容量は、0.0625μLになるようにしており、プローブ容量は5μLになるように、蒸溜水は2.9375μLになるように、試料DNAは2μLになるようにして、合わせて10μLのマスターミックスを用いて、Sepupでは下記の通り実験のためのセットを行った。
<温度条件>
Pre−read:60℃、30秒
Holding:95℃、10分
Cyclying:95℃、3〜15秒
60℃、30秒〜1分→36サイクル
Post−read:60℃、30秒
【0043】
1−4:PCR増幅値を利用したアベリノ角膜ジストロフィー判別
実施例1−3のVID陽性値(TGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅するプライマー対及び正常遺伝子断片と結合するプローブを添加して測定した第1PCR増幅値)とFAM陽性値(TGFBI遺伝子のエクソン4部位を増幅するプライマー対及び変異遺伝子断片と結合するプローブを添加して測定した第2PCR増幅値)を
図4のように、形質選別プロットで示した。
【0044】
この時、本発明のシステムの分析手段は、第1PCR増幅値が第2PCR増幅値の5〜9倍の場合、正常と判別し、第1PCR増幅値と第2PCR増幅値の比が1:1.5〜1.5:1の場合、アベリノ角膜ジストロフィー異型接合子と判別し、第2PCR増幅値が第1PCR増幅値の5〜9倍の場合、アベリノ角膜ジストロフィー同型接合子と判別して、
図4の左側に色塗りして正常であるか否かを表示する。
【0045】
1−5:アベリノ角膜ジストロフィー判別結果の出力及び伝送
実施例1−4の判別結果は、
図5とともに、画面出力される。この時、
図6と同じように、個人結果紙として判別されることができる。このような結果はネットワークを介して前記試料に対する情報及び検査依頼書を伝送してきたクライアントグループに転送される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上、説明した通り、本発明に係るアベリノ角膜ジストロフィー診断用システムは、医師の熟練度に影響されることなく、より簡単でかつ正確な診断が可能なアベリノ角膜ジストロフィー診断のための新しい診断システムを提供する長所がある。特に、全工程がシステム化されて体系的になっており、診断が正確であり、多くの検査対象者も容易に管理できるため有用である。
【0047】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]