(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部が、前記第1駆動部及び前記第2駆動部の一方を所定の回転数で駆動させながら、前記第1駆動部及び前記第2駆動部の他方を所定のトルクで駆動させることで、前記供試体の回転ねじり試験を行う、
請求項4に記載のねじり試験装置。
【発明の概要】
【0004】
動力伝達装置は、自動車等に搭載されて実際に使用される際には、動力伝達軸が回転した状態で、入出力軸にそれぞれ荷重が加えられる。しかしながら、上記の従来の試験方法では、動力伝達軸は試験中に静止した状態におかれるため、実際の使用環境下での性能を正確に評価することができなかった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたものである。
【0006】
本発明の実施形態に係るねじり試験装置は、動力伝達装置である供試体の入出力軸にトルクを与えるねじり試験装置であって、供試体の入力軸に接続される第1駆動部と、供試体の出力軸に接続される第2の駆動部とを備え、第1及び第2駆動部は、サーボモータと、サーボモータの出力軸の回転を減速して出力する減速機と、供試体の入力軸又は出力軸が取り付けられ、減速機の出力を供試体の入力軸又は出力軸に伝達するチャックと、減速機の出力をチャックへ伝達すると共に、減速機が出力するトルクを検出するトルクセンサと、チャックの回転数を検出する回転計と、を備える。
【0007】
この構成によれば、入出力軸が回転した状態で各入出力軸にねじり荷重が加えられるという動力伝達装置の実際の使用条件に近い負荷を供試体に与えることができるため、供試体の性能のより正確な評価が可能になる。また、各入出力軸のトルクと回転数が検出されるため、試験時の供試体の状態を詳細に把握することができる。
【0008】
また、トルクセンサとチャックとを連結するスピンドルと、スピンドルを回転自在に支持する軸受部とを備え、減速機は、ギアケースと、軸受と、軸受を介してギアケースに支持されたギア機構とを備え、サーボモータの駆動力を供試体まで伝達する減速機のギア機構、トルクセンサ、及びスピンドルを含む動力伝達軸の荷重が、スピンドル及び減速機のギア機構において支持される構成としてもよい。
【0009】
この構成によれば、サーボモータの駆動力を供試体まで伝達する動力伝達軸において特に重量が大きく、かつ動力伝達軸の両端部に配置されるギア機構及びチャックの直近において動力伝達軸が支持されるため、動力伝達軸に大きな歪みが加わらず、正確な試験が可能になると共に、耐久性に優れたねじり試験装置が提供される。
【0010】
また、減速機の出力軸とチャックとの間に取り付けられ、トルクセンサから延びる信号線に接続されたスリップリングと、回転するスリップリングと接触した状態でねじり試験装置のベースプレートに対して固定され、スリップリングを介して入力されたトルクセンサの信号を出力する端子を備えたブラシと、を備えた構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、供試体の入出力軸と共に高速で回転するトルクセンサの信号を有線で外部に取り出すことが可能になる。
【0012】
また、第1駆動部及び第2駆動部の駆動を制御する制御部を備え、制御部は、第1駆動部及び第2駆動部の一方を所定の回転数で駆動させながら、第1駆動部及び第2駆動部の他方を所定のトルクで駆動させることで、供試体の回転ねじり試験を行う構成としてもよい。
【0013】
また、複数の第2の駆動部を備え、制御部は、供試体の入力軸が所定の回転数で回転するように第1駆動部を駆動させながら、供試体の複数の出力軸にそれぞれ個別に設定されたトルクを与えるように複数の第2駆動部を駆動させる構成としてもよい。
【0014】
この構成によれば、複数の出力軸を有する供試体に対しても、実際の使用条件に近い負荷を与える試験が可能になる。
【0015】
また、制御部は、複数の第2駆動部の回転数差の設定値と、複数の第2駆動部のトルクの和の設定値を記録する設定値記録手段と、回転数差の設定値とトルクの和の設定値に基づいて、供試体の複数の出力軸に与えるトルクをそれぞれ個別に設定するトルク設定手段と、を備える構成としてもよい。
【0016】
また、複数の第2駆動部の回転計の検出結果に基づいて、複数の第2駆動部の回転数差の計測値を取得する回転数差計測手段を備え、トルク設定手段は、設定値記録手段に記録された回転数差の設定値と、回転数差計測手段により取得された回転数差の計測値に基づいて、供試体の複数の出力軸に与えるトルクの設定値を補正する構成としてもよい。
【0017】
これらの構成によれば、例えばディファレンシャルギアを含む供試体について、ディファレンシャルギアを差動させた状態での回転ねじり試験を適切に行うことが可能になる。
【0018】
また、複数の第1駆動部を備え、複数の第1駆動部により、供試体の複数の入力軸に対して、それぞれ個別に設定されたトルクを与えるか、又はそれぞれ個別に設定された回転数で回転させる構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、複数の入力軸を有する供試体(例えば、ハイブリッド自動車の動力分配機構等)に対しても、実際の使用条件に近い負荷を与える試験が可能になる。
【発明の効果】
【0020】
入出力軸が回転した状態で各入出力軸にねじり荷重が加わる実際の使用条件下での動力伝達装置の性能を正確に評価可能なねじり試験装置を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るねじり試験装置100の側面図である。本実施形態のねじり試験装置100は、2つの回転軸を有する供試体T1(例えばFR車用トランスミッションユニット)の回転ねじり試験を行う装置である。すなわち、ねじり試験装置100は、供試体T1の2つの回転軸を同期回転させながら2つの回転軸の回転に位相差を与えることで、トルクを負荷しながら供試体T1の2つの回転軸を回転させる。本実施形態のねじり試験装置100は、第1駆動部110、第2駆動部120、及びねじり試験装置100の動作を統合的に制御するコントローラCを備えている。
【0023】
先ず、第1駆動部110の構造について説明する。
図2は、第1駆動部110の一部を切り欠いた側面図である。第1駆動部110は、本体110aと、この本体110aを所定の高さで支持するベース110bを備えている。本体110aは、サーボモータ112、減速機113、ケース114、スピンドル115、チャック装置116、トルクセンサ117、スリップリング119a及びブラシ119bを備えており、本体110aはベース110bの最上部に水平に配置された可動プレート111上に組み立てられている。サーボモータ112は、出力軸(不図示)を水平方向に向けて、可動プレート111上に固定されている。また、ベース110bの可動プレート111は、サーボモータ112の出力軸方向(
図1における左右方向)にスライド移動可能に設けられている。
【0024】
サーボモータ112の出力軸(不図示)は、カップリング(不図示)により減速機113の入力軸(不図示)に連結されている。減速機113の出力軸113aは、トルクセンサ117の一端に連結されている。トルクセンサ117の他端は、スピンドル115の一端に連結されている。スピンドル115は、ケース114のフレーム114bに固定された軸受114aにより回転自在に支持されている。スピンドル115の他端には、供試体T1の一端(回転軸の一つ)を第1駆動部110に取り付ける為のチャック装置116が固定されている。サーボモータ112を駆動すると、サーボモータ112の出力軸の回転運動が、減速機113によって減速された後、トルクセンサ117、スピンドル115及びチャック装置116を介して、供試体T1の一端に伝達されるようになっている。また、スピンドル115には、スピンドル115の回転角を検出するロータリーエンコーダ(不図示)が取り付けられている。
【0025】
図2に示されるように、減速機113は、ケース114のフレーム114bに固定されている。また、減速機113は、ギアケースと、軸受を介してギアケースにより回転自在に支持されたギア機構とを備えている(不図示)。すなわち、ケース114は、減速機113からチャック装置116に至る動力伝達軸を覆うと共に、この動力伝達軸を減速機113及びスピンドル115の位置で回転自在に支持する装置フレームとしての機能も有する。すなわち、トルクセンサ117の一端が接続される減速機113のギア機構と、トルクセンサ117の他端が接続されるスピンドル115は、いずれも軸受を介してケース114のフレーム114bに回転自在に支持されている。そのため、トルクセンサ117には、減速機113のギア機構やスピンドル115(及びチャック装置116)の重量による曲げモーメントが加わらず、試験荷重(ねじり荷重)のみが加わるため、高い精度で試験荷重を検出することができる。
【0026】
トルクセンサ117の一端側の円筒面には、複数のスリップリング119aが形成されている。一方、可動プレート111には、スリップリング119aを外周側から囲むようにブラシ保持フレーム119cが固定されている。ブラシ保持フレーム119cの内周には、それぞれ対応するスリップリング119aと接触する複数のブラシ119bが取り付けられている。サーボモータ112が駆動して、トルクセンサ117が回転している状態では、ブラシ119bは、スリップリング119aとの接触を保ちつつ、スリップリング119a上でスリップする。トルクセンサ117の出力信号はスリップリング119aに出力されるよう構成されており、スリップリング119aと接触するブラシ119bを介して、トルクセンサ117の出力信号を第1駆動部110の外部に取り出せるようになっている。
【0027】
第2駆動部120(
図1)は、第1駆動部110と同一の構造となっており、サーボモータ122を駆動するとチャック装置126が回転する。チャック装置126には、供試体T1の他端(回転軸の一つ)が固定される。なお、供試体T1のハウジングは、支持フレームSに固定されている。
【0028】
本実施形態のねじり試験装置100は、FR車用のトランスミッションユニットである供試体T1の出力軸Oと入力軸I(エンジン側)を、夫々第1駆動部110と第2駆動部120のチャック装置116、126に固定した状態で、サーボモータ112、122によって同期させて回転駆動すると共に、両チャック装置116、126の回転数(あるいは回転の位相)に差を持たせることにより供試体T1にねじり荷重を加えるものである。例えば、第2駆動部120のチャック装置126を等速回転駆動させると共に、第1駆動部110のトルクセンサ117が検出するトルクが所定の波形に従って変動するようにチャック装置116を回転駆動して、トランスミッションユニットである供試体T1に周期的に変動するトルクが加わるようにする。
【0029】
このように、本実施形態のねじり試験装置100は、トランスミッションユニットの入力軸Iと出力軸Oの双方をサーボモータ122、112によって精密に駆動することが可能であるため、トランスミッションユニットを回転駆動させながら、トランスミッションユニットの各軸に変動トルクを加えることにより、自動車の実際の走行状態に近い条件で試験を行うことができる。
【0030】
トランスミッションユニットのように、入力軸Iと出力軸Oがギアなどを介して連結されている装置のねじり試験を行う場合、入力軸Iと出力軸Oに加わるトルクの大きさは必ずしも一致しない。そのため、ねじり試験時の供試体T1の挙動をより正確に把握する為には、入力軸I側と出力軸O側とで個別にトルクを計測できるようにすることが好ましい。本実施形態においては、上記のように第1駆動部110と第2駆動部120の双方にトルクセンサが設けられているため、トランスミッションユニット(供試体T1)の入力軸I側と出力軸O側とでトルクを個別に計測することができる。
【0031】
なお、上記の例ではトランスミッションユニットの入力軸I側を等速回転駆動し、出力軸O側でトルクを付与する構成としているが、本発明は上記の例に限定されるものではない。すなわち、トランスミッションユニットの出力軸O側を等速回転駆動すると共に、入力軸I側に変動トルクを加える構成としてもよい。或いは、トランスミッションユニットの入力軸I側と出力軸O側の双方を、それぞれ変動する回転数で回転駆動させる構成としてもよい。また、回転数では制御せず、各軸のトルクのみを制御する構成としてもよい。また、トルクや回転数を所定の波形に従って変動させる構成としてもよい。トルクや回転数は、例えばファンクションジェネレータで発生させた任意の波形に従って変動させることができる。また、実際の走行試験で計測したトルクや回転数の波形データに基づいて、供試体T1の各軸のトルクや回転数を制御することもできる。
【0032】
本実施形態のねじり試験装置100は、様々な寸法のトランスミッションユニットに対応できるように、チャック装置116と126との間隔を調整可能となっている。具体的には、可動プレート駆動機構(不図示)により、第1駆動部110の可動プレート111が、ベース110bに対してチャック装置116の回転軸方向(
図1中左右方向)に移動可能となっている。なお、ねじり試験を行っている間は、図示しないロック機構によって可動プレート111はベース110bに強固に固定されている。また、第2駆動部120も、第1駆動部110と同様の可動プレート駆動機構を備えている。
【0033】
以上説明した本発明の第1の実施形態に係るねじり試験装置100は、FR車用のトランスミッションユニットに対して回転ねじり試験を行うものであるが、本発明は第1の実施形態の構成に限定されるものではなく、他の動力伝達機構の回転ねじり試験を行う為の装置も又、本発明に含まれる。以下に説明する本発明の第2、第3及び第4実施形態は、夫々FF車用のトランスミッションユニット、ディファレンシャルギアユニット、及び4WD車用のトランスミッションユニットの試験に適したねじり試験装置の構成例である。
【0034】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係るねじり試験装置200の平面図である。上述のように、本実施形態は、FF車用のトランスミッションユニットを供試体T2とする回転ねじり試験に適したねじり試験装置の構成例である。供試体T2は、ディファレンシャルギアを内蔵するトランスミッションユニットであり、入力軸Iと、左側出力軸OL及び右側出力軸ORを有している。
【0035】
本実施形態のねじり試験装置200は、供試体T2の入力軸Iを駆動する第1駆動部210、左側出力軸OLを駆動する第2駆動部220及び右側出力軸ORを駆動する第3駆動部230を備えている。また、ねじり試験装置200は、その動作を統合的に制御するコントローラCを備えている。第1駆動部210、第2駆動部220及び第3駆動部230の構造は、共に第1実施形態の第1駆動部110や第2駆動部120のものと同一であるため、重複する具体的構成の説明は省略する。
【0036】
本実施形態のねじり試験装置200を用いて供試体T2のねじり試験を行う場合は、例えば第1駆動部210によって入力軸Iを所定の回転数で駆動し、同時に、第2駆動部220及び第3駆動部230によって、所定のトルクが加わるように左側出力軸OL及び右側出力軸ORを回転駆動する。
【0037】
上記のように第1駆動部210、第2駆動部220及び第3駆動部230を制御することによって、トランスミッションユニットを回転駆動させながら、トランスミッションユニットの各軸に変動トルクを加えることにより、自動車の実際の走行状態に近い条件で試験を行うことができる。
【0038】
また、本実施形態のねじり試験装置200を使用して試験を行うトランスミッションユニットは、入力軸Iと左側出力軸OL及び右側出力軸ORがギアなどを介して連結された装置であり、そのねじり試験を行う場合は、入力軸Iと左側出力軸OL及び右側出力軸ORとに加わるトルクの大きさは一致しない。また、左側出力軸OLと右側出力軸ORに加わるトルクも、必ずしも一致するとは限らない。そのため、ねじり試験時の供試体T2の挙動をより正確に把握する為には、入力軸I、左側出力軸OL及び右側出力軸ORに加わるトルクを個別に計測できるようにすることが好ましい。本実施形態においては、第1駆動部210、第2駆動部220、第3駆動部230の全てにトルクセンサが設けられているため、トランスミッションユニット(供試体T2)の入力軸I、左側出力軸OL及び右側出力軸ORのそれぞれに加わるトルクを個別に計測することができる。
【0039】
なお、左側出力軸OLのトルクと右側出力軸ORのトルクとが同一の波形を描くように第2駆動部220及び第3駆動部230が制御される構成としてもよく、又、両者が異なる(例えば逆位相の)波形を描くように第1駆動部210、第2駆動部220及び第3駆動部230が制御される構成としてもよい。
【0040】
また、左側出力軸OLと右側出力軸ORを等速回転駆動し、速度が一定周期で変動するように入力軸Iを駆動する構成としてもよい。或いは、入力軸I、左側出力軸OL及び右側出力軸ORの全てを、回転数が個別に変動するよう駆動する構成としてもよい。
【0041】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図4は、本発明の第3実施形態に係るねじり試験装置300の平面図である。本実施形態は、FR車用のディファレンシャルギアユニットを供試体T3とする回転ねじり試験に適したねじり試験装置の構成例である。第2の実施形態と同様に、供試体T3は、入力軸I、左側出力軸OL及び右側出力軸ORを有している。
【0042】
本実施形態のねじり試験装置300は、供試体T3の入力軸Iを駆動する第1駆動部310、左側出力軸OLを駆動する第2駆動部320及び右側出力軸ORを駆動する第3駆動部330を備えている。また、ねじり試験装置300は、その動作を統合的に制御するコントローラCを備えている。第1駆動部310、第2駆動部320及び第3駆動部330の構造は、共に第1実施形態の第1駆動部110や第2駆動部120と同一であるため、重複する具体的構成の説明は省略する。
【0043】
本実施形態のねじり試験装置300により供試体T3のねじり試験を行う場合は、例えば第1駆動部310によって入力軸Iを所定の回転数で駆動し、同時に、第2駆動部320及び第3駆動部330によって、左側出力軸OL及び右側出力軸ORにそれぞれトルクが加わるように駆動する。
【0044】
上記のように第1駆動部310、第2駆動部320及び第3駆動部330を制御することによって、供試体T3の各軸を回転駆動しながら供試体T3の各軸に変動トルクを加えることにより、実際の使用状態に近い条件で試験を行うことができる。
【0045】
ディファレンシャルギアユニットも又、トランスミッションユニットと同様に、入力軸Iと左側出力軸OL及び右側出力軸ORとがギアを介して連結された装置であり、そのねじり試験を行う場合は、入力軸Iに加わるトルクの大きさと左側出力軸OL及び右側出力軸ORに加わるトルクの大きさとは一致しない。また、左側出力軸OLと右側出力軸ORに加わるトルクの大きさも、必ずしも一致するとは限らない。そのため、試験時の供試体T3の挙動をより正確に把握する為には、入力軸I、左側出力軸OL及び右側出力軸ORのトルクを個別に計測できるようにすることが望ましい。本実施形態においては、第1駆動部310、第2駆動部320、第3駆動部330の全てにトルクセンサが設けられているため、ディファレンシャルギアユニット(供試体T3)の入力軸I、左側出力軸OL及び右側出力軸ORのそれぞれに加わるトルクを個別に計測することができる。
【0046】
なお、入力軸Iの回転数と左側出力軸OL及び右側出力軸ORの回転数とが同一の波形を描くように第2駆動部320及び第3駆動部330が制御される構成としてもよく、又、両者が異なる(例えば入力軸Iとの速度差が逆位相となるような)波形を描くように第2駆動部320及び第3駆動部330が制御される構成としてもよい。
【0047】
また、左側出力軸OL及び右側出力軸ORを等速回転駆動し、入力軸Iを速度が一定周期で変動するように駆動する構成としてもよい。或いは、入力軸I、左側出力軸OL及び右側出力軸ORの全てを、回転数が変動するよう駆動する構成としてもよい。
【0048】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態に係るねじり試験装置400の平面図である。本実施形態のねじり試験装置400は、4つの回転軸を有する供試体T4の回転ねじり試験に適したねじり試験装置の構成例である。以下、一例として、4WDシステムを供試体T4として試験を行う場合について説明する。供試体T4は、図示しないトランスミッション、フロントディファレンシャルギア、トランスファー及び電子制御多板クラッチを備えたFFベースの電子制御式4WDシステムである。供試体T4は、エンジンに接続される入力軸Iと、左右の前輪用のドライブシャフトに接続される左側出力軸OL及び右側出力軸ORと、後輪に動力を伝達するプロペラシャフトに接続される後部出力軸OPを有している。入力軸Iから供試体T4に入力された駆動力は、供試体T4に備わるトランスミッションにより減速された後、フロントディファレンシャルギアを介して、左側出力軸OLと右側出力軸ORに分配される。また、フロントディファレンシャルギアに伝達された駆動力の一部は、トランスファーにより分岐されて、後部出力軸OPから出力されるように構成されている。
【0049】
本実施形態のねじり試験装置400は、供試体T4の入力軸Iを駆動する第1駆動部410、左側出力軸OLを駆動する第2駆動部420、右側出力軸ORを駆動する第3駆動部430及び後部出力軸OPを駆動する第4駆動部440を備えている。また、ねじり試験装置400は、その動作を統合的に制御するコントローラCを備えている。第1駆動部410、第2駆動部420、第3駆動部430及び第4駆動部440の構造は、共に第1実施形態の第1駆動部110や第2駆動部120と同一であるため、重複する具体的構成の説明は省略する。
【0050】
次に、ねじり試験装置400を用いた供試体T4の回転ねじり試験において実行される制御の一例を説明する。上述のように、供試体T4はフロントディファレンシャルギア(不図示)を備えており、左側出力軸OLと右側出力軸ORに加わるトルクの差により、左側出力軸OLと右側出力軸ORとの回転数差が生じるように構成されている。以下に説明する回転ねじり試験は、供試体T4に内蔵されたフロントディファレンシャルギアを差動させた状態(すなわち、左側出力軸OLと右側出力軸ORに回転数差を与えた状態)で、供試体T4の回転ねじり試験を行うものである。具体的には、入力軸Iを一定の回転数で回転させながら、左側出力軸OLと右側出力軸ORを回転数差を与えた状態で駆動し、供試体T4の性能を評価するものである。また、以下に説明する本実施形態の回転ねじり試験では、左側出力軸OLと右側出力軸ORに加えられるトルクの和が一定となるような制御が行われる。
【0051】
図6は、ねじり試験装置400による回転ねじり試験の手順を表すフローチャートである。本実施形態では、入力軸Iを一定の回転数で駆動しながら、左側出力軸OLと右側出力軸ORが所定の回転数差で回転し、且つ、左側出力軸OLと右側出力軸ORに加わるトルクの合計が一定となるように、左側出力軸OL及び右側出力軸ORにトルク負荷を加えて回転ねじり試験が行われる。なお、
図6に示される処理は、コントローラCによって実行される。
【0052】
図6に示されるねじり試験装置400の制御では、まず、予め設定された各種設定値(試験条件)が、コントローラCが備える記憶装置(不図示)から読み取られる(S1)。設定値には、例えば、第1駆動部410(入力軸I)の回転数N1、第2駆動部420(左側出力軸OL)と第3駆動部430(右側出力軸OR)の回転数差(ΔN=N2−N3)及びトルク負荷の和(Tm2+Tm3)、第4駆動部440(後部出力軸OP)のトルクTm4が含まれる。表1は、S1において読み込まれる各種設定値の例を示す。
【0054】
なお、本実施形態では、第1駆動部410に対しては回転数を制御量とする回転数制御を行い、第2駆動部420、第3駆動部430及び第4駆動部440に対してはトルクを制御量とするトルク制御が行われる。なお、第2駆動部420と第3駆動部430については、回転数差を制御する必要があるため、回転数制御が適用されるのが通常である。しかしながら、供試体T4に内蔵されるフロントディファレンシャルギア(不図示)は、左側出力軸OLと右側出力軸ORに加わる僅かなトルク差により動作が急激に変化するため、制御(直接的には制御値の検出)の遅れが大きい回転数制御では、実際に自動車に搭載されたときに供試体T4に加えられる負荷を高い精度で再現することができないことが本発明者の研究によって判明した。そこで、本実施形態では、左側出力軸OLと右側出力軸ORに与える回転数差の設定値に基づいて、左側出力軸OLと右側出力軸ORに加えるべきトルクの目標値を計算して、第2駆動部420と第3駆動部430に対してトルク制御を行う構成が採用されている。
【0055】
上記の設定値の読み込み(S1)に続いて、第2駆動部420及び第3駆動部430に対するトルク制御の目標値が計算される(S2)。処理S2においては、まず第2駆動部420の回転数N2及び第3駆動部430の回転数N3の予測値が計算される。
【0056】
供試体T4の前輪の変速比rは、入力軸Iの回転数N1、左側出力軸OLの回転数N2及び右側出力軸ORの回転数N3を用いて、次の数式1により表される。
【0058】
数式1を変形すると、次の数式2が得られる。
【0060】
また、回転数差ΔNの定義より、次の数式3が得られる。
【0062】
回転数N2及びN3は、上記の数式2と数式3からなる連立方程式の解である次の数式4及び数式5により、それぞれ表される。
【0065】
第2駆動部420、第3駆動部430の回転数の設定値N2、N3は、上記の数式4、数式5に、処理S1において取得された設定値N1、ΔN(表1)及び既知の変速比r=0.1を代入して算出される。本実施形態では、N2=6rpm、N3=4rpmとなる。
【0066】
次に、第2駆動部420のトルクTm2及び第3駆動部430のトルクTm3の目標値の初期値が計算される。本実施形態では、回転数差ΔNを一定にするために、トルクTm2とTm3は同一の目標値に設定する必要がある。従って、トルクTm2及びTm3の目標値は、次の数式6により計算される。
【0068】
次に、コントローラCは、第1駆動部410に対して回転数N1の目標値を含む駆動指令を出力する(S3)。
【0069】
次に、コントローラCは、第4駆動部440に対して、トルクTm4の目標値を含む駆動指令を出力する(S4)。
【0070】
次に、コントローラCは、第2駆動部420、第3駆動部430に対して、それぞれのトルクTm3、Tm4の目標値を含む駆動指令を出力する(S5)。
【0071】
次に、コントローラCは、第1駆動部410、第2駆動部420、第3駆動部430及び第4駆動部440にそれぞれ設けられたエンコーダ(不図示)からの信号に基づいて、各駆動部の回転数N1、N2、N3及びN4(単位:rpm)を計測する(S6)。
【0072】
次に、コントローラCは、第1駆動部410、第2駆動部420、第3駆動部430及び第4駆動部440にそれぞれ設けられたトルクセンサ117からの信号に基づいて、各駆動部のトルクTm1、Tm2、Tm3及びTm4(単位:N・m)を計測する(S7)。
【0073】
次に、コントローラCは、上記の処理S6、S7における計測結果である回転数N1、N2、N3、N4及びトルクTm1、Tm2、Tm3、Tm4を、コントローラCに内蔵されたメモリに記録する(S8)。
【0074】
次に、コントローラCは、上記の処理S6において取得された回転数N2、N3の計測結果から、回転数差ΔN=N2−N3を計算する(S9)。そして、処理S9において得られた回転数差ΔNの計測結果が適正か否かが判断される(S10)。具体的には、処理S9において得られた回転数差ΔNの計測結果をその設定値(表1)と比較して、計測結果と設定値との差が所定の範囲を超えていれば、回転数差ΔNが適正に制御されていないと判断し(S10:NO)、第2駆動部420のトルクTm2及び第3駆動部430のトルクTm3の目標値を補正(S12)した後、処理S3に戻って再び各駆動部に駆動指令を与える。
【0075】
処理S12において、トルクTm2及びTm3の目標値の補正は、次の数式7及び数式8にそれぞれ示されるように、トルクTm2及びTm3に対して補正値αを加減することによって行われる。
【0078】
また、補正値αは、次の数式9により計算される。但し、ΔN
set及びΔN
meas.は、それぞれ第2駆動部420と第3駆動部430の回転数差(ΔN=N2−N3)の設定値及び計測結果である。
【0080】
回転数差ΔNの計測結果と設定値との差が所定の範囲内であれば、回転数差ΔNが適正に制御されていると判断する(S10:YES)。ねじり試験装置400の制御を終了せずに継続する場合には(S11:NO)、各種設定値(表1)に更新があったか否かが確認される(S13)。設定値が更新されていれば(S13:YES)、処理S1に戻って設定値を再び読み取る。また、設定値が更新されていなければ(S13:NO)、処理S3に戻って各駆動部に駆動指令を与える。
【0081】
上記のように第1駆動部410、第2駆動部420、第3駆動部430及び第4駆動部440を制御することによって、左側出力軸OLと右側出力軸ORに回転数差が与えられた状態での供試体T4の回転ねじり試験が可能になる。
【0082】
なお、上記の第4実施形態では、第2駆動部420(左側出力軸OL)と第3駆動部430(右側出力軸OR)の回転数差ΔN及びトルク負荷の和(Tm2+Tm3)を一定とする条件下で第2駆動部420及び第3駆動部430をトルク制御する構成が採用されているが、本発明の制御方法はこの構成に限定されない。例えば、回転数差ΔNの条件を設定せず、予め設定した静的又は動的トルクTm2及びTm3を第2駆動部420及び第3駆動部430にそれぞれ加える構成としてもよい。また、トルク負荷の和(Tm2+Tm3)を一定とする条件を設定せず、回転数差ΔNが維持されるように、第2駆動部420及び第3駆動部430を回転数制御する構成としてもよい。
【0083】
また、上記の第4実施形態では、第1駆動部410が一定の回転数で駆動されるが、第1駆動部410の回転数を例えば所定の波形に従って変動させて回転ねじり試験を行う構成としてもよい。例えば、左側出力軸OLの回転数と右側出力軸ORの回転数とが同一の波形に従って変化するように第2駆動部420及び第3駆動部430が制御される構成としてもよく、又、両者が異なる(例えば入力軸Iとの速度差が逆位相となるような)波形に従って変化するように第2駆動部420及び第3駆動部430が制御される構成としてもよい。
【0084】
また、上記の第4実施形態では、第4駆動部440が一定のトルクで駆動されるが、第1駆動部410のトルクを例えば所定の波形に従って変動させて回転ねじり試験を行う構成としてもよい。また、上記の第4実施形態では、左側出力軸OLと右側出力軸ORの回転数差が一定になるように制御されるが、左側出力軸OLと右側出力軸ORの回転数差を例えば所定の波形に従って変動させて回転ねじり試験を行う構成としてもよい。
【0085】
また、上記の第4実施形態の供試体T4は、入力軸I、左側出力軸OL、右側出力軸OR及び後部出力軸OPがギアなどを介して連結されている装置であるため、回転ねじり試験において各軸に加わるトルクの大きさは一致しない。そのため、ねじり試験時の供試体T4の挙動をより正確に把握する為には、入力軸I、左側出力軸OL、右側出力軸OR及び後部出力軸OPのトルクを個別に計測することが好ましい。本実施形態においては、第1駆動部410、第2駆動部420、第3駆動部430、第4駆動部440の全てにトルクセンサが設けられているため、供試体T4の入力軸I、左側出力軸OL、右側出力軸OR及び後部出力軸OPに加わるトルクを個別に計測することができる。
【0086】
また、左側出力軸OL、右側出力軸OR及び後部出力軸OPを等速回転駆動し、入力軸Iを回転数が一定周期で変動するように駆動する構成としてもよい。或いは、入力軸I、左側出力軸OL、右側出力軸OR及び後部出力軸OPの全てを、回転数が変動するよう駆動する構成としてもよい。
【0087】
また、上記の各実施形態は、いずれも回転ねじり試験を行う例であるが、いずれかの駆動部の回転を止めて反力部とすることにより、ねじり試験装置100、200、300、400を使用して通常のねじり試験を行うこともできる。
【0088】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。