(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電気光学結晶が、第2の面をさらに備え、前記電気光学デバイスが、前記第2の面と向かい合うように配設された第2の電極基板をさらに備え、前記第2の電極基板が、第2の厚さを有する第2の基板材料と前記第2の基板材料に結合された第2の電極コーティングとを備え、前記電圧源が前記第2の電極コーティングに電気的に結合される、請求項1に記載の電気光学デバイス。
少なくとも、前記第1の電極コーティングが、前記第1の基板材料と前記電気光学結晶との間に位置するか、又は前記第2の電極コーティングが前記第2の基板材料と前記電気光学結晶との間に位置する、請求項2に記載の電気光学デバイス。
前記第1の電極コーティング又は前記第2の電極コーティングの少なくとも一方に配設された反射防止コーティングをさらに備える、請求項2に記載の電気光学デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0020]本発明の実施形態によれば、縦電極形状を有するポッケルスセルの形をした光スイッチが提供される。本発明のいくつかの実施形態によれば、駆動電圧は結晶厚さと無関係で、結晶は開口面内で等方性である。後述のように、電界を印加するのに使用される電極は、光学的開口と重なり合い、したがって、透明又は半透明であり、光伝搬を可能にする。
【0013】
[0021]リング電極を有するポッケルスセルは、結晶表面の一部が露出されないが、フリンジング効果が低減された縦電界を実現するためにより厚い結晶(すなわち、より高い厚さ:開口比を有する結晶)を使用している。したがって、この設計では、吸収及び熱複屈折が増大する。その結果、大きい開口を有するようにリング電極デバイスを調整するのは困難である。プラズマ(低圧気相)電極を有する縦デバイスが構成されているが、このような電極では、プラズマと電気光学結晶が密に接触する必要がある。プラズマは、電気光学結晶の開口面から放熱が生じるのを妨げ、それによって、デバイスにおいて、結晶内での高出力レーザ光の残留光吸収による熱の問題が生じがちになる。プラズマ電極は、デバイスの複雑さも増大させ、ガス取扱いシステムが必要になり、真空システムに漏れが生じる可能性があり、プラズマ浸食及びアーク発生のような電極の問題が生じる可能性があるためコスト及び堅牢性が影響を受ける。
【0014】
[0022]本発明の実施形態は、縦構成の電極として透明導電性固体を利用する。「透明」を本明細書で使用するときは、透過率が100%未満である低吸収材料を含む。したがって、「透明」は、100%の透過率を示すものではなく、関心対象の波長での高い透過率、たとえば、80%よりも高いか、85%よりも高いか、90%よりも高いか、95%よりも高いか、96%よりも高いか、97%よりも高いか、98%よりも高いか、99%よりも高い透過率を示す。十分な光透過が可能な透明電極は、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、その他の透明導電性材料のような材料を使用する極めて薄い金属層又は透明導電性酸化物(TCO)に基づく様々な種類のコーティングプロセス(たとえば、化学蒸着、スパッタリング、蒸着、電子ビーム蒸着、スプレーコーティングなど)を使用して製造されてもよい。TCOは、ディスプレイ用のデバイス及び光電池において広く使用されている。
【0015】
[0023]本発明者は、透明電極の光吸収は非零であると判定した。この残留吸収によって、電極は短い光パルスに関連する光損傷を受けやすくなる。たとえば、パルス吸収によって、コーティングを破壊する恐れのある過渡熱応力が生じる。さらに、電極吸収はコーティング厚さが厚くなるにつれて増大し、一方、電極直列抵抗(シート抵抗)は、コーティング厚さが薄くなるにつれて増大する。したがって、スイッチング速度と電極コーティングにおける光損傷抵抗との兼合いがとられる。現在の所、光損失抵抗が高く(コーティング吸収率が〜1%よりも低い)且つシート抵抗が低い(〜100オーム/平方)、DKDPに対する適切なコーティングは実現されていない。大部分のTCOコーティングプロセスは、ガラス基板、たとえば、ディスプレイのような商業用途向けに開発されており、高温(蒸着時及び/又は蒸着後焼きなまし時の基板温度は〜300℃)を使用して透過性と抵抗の兼合いを向上させている。ガラス基板はそのような高温のプロセスに適合するが、電気光学結晶は一般に、そのような高温プロセスに適していない。たとえば、DKDP結晶は145℃で破壊的な相転移を受ける。したがって、KDP及びDKDPのような電気光学結晶に直接ITOをコーティングする試みによって電極の損傷しきい値が低くなるか又は直列抵抗が高くなっている。
【0016】
[0024]
図2は、本発明の一実施形態による電気光学デバイスの簡略化された斜視図である。印加電圧を印加することによって光入射の偏向状態を変化させる例示的な電気光学デバイスがポッケルスセルである。本明細書全体にわたって、本発明の実施形態によって実現される電気光学デバイスの例としてポッケルスセルについて説明するが、本発明はポッケルスセル実装形態に限定されない。他の電気光学デバイスも本発明の範囲内に含まれる。
【0017】
[0025]一実装形態では、ポッケルスセル電極は、電気光学結晶ではなく透明光基板に透明導電性固体コーティング(すなわち、電極フィルム)を蒸着させ、コーティングされた基板を縦形状の電気光学結晶のすぐ近くに位置させることによって形成される。電極フィルムに電圧を印加して電気光学結晶を横切る電界を生じさせる。いくつかの実施形態ではわずかな距離の位置にコーティングと結晶とのギャップが維持され、容量電圧降下、したがってスイッチング電圧が低減され又は最低限に抑えられる。本発明の各実施形態は、透明導電性コーティング用の基板を電気光学結晶の選択とは無関係に最適化することが可能になることを含め、多数の利点を実現する。基板としては、コーティングの過渡冷却を向上させ(熱伝導性及び定積熱容量を向上させ)、コーティング熱応力を低減させ(膨張係数をコーティングに一致させ)、高温の処理との適合性を改善する(抵抗及び透過性を向上させるコーティング焼きなましを可能にする)基板を選択することができる。別の利点は、適切な基板を選択することによって、高透過性(高光損傷しきい値)低抵抗電極を非プラズマ設計で実現できることである。
【0018】
[0026]さらに、電極と結晶との間のギャップに透明熱伝導媒体を充填し、結晶の面冷却を実現することができる。面冷却は、いくつかの縁冷却技術と比較して熱複屈折効果を低減させるのでいくつかの実施形態において好ましい。図を明確にするために
図2には反射防止(AR)コーティングが図示されていないことに留意されたい。本明細書全体にわたってより完全に説明するように、ARコーティングを光学素子の1つ又は複数の表面に塗布して性能を向上させてもよい。当業者には、多数の変形例、修正例、及び代替例が認識されよう。
【0019】
[0027]本発明の一実施形態によれば、印加電圧を印加することによって光入射の偏向状態を変化させる電気光学デバイスが提供される。この電気光学デバイスは、電気光学結晶220と一対の電極基板210/230(
図2に示す実施形態では結晶の各側に1枚の基板)とを含む。各電極基板は、電極とも呼ばれ、電極基板の1つ又は複数の表面上に透明導電性コーティング212/232を含む。電極基板は、透明冷却材材料を内部に支持することのできる所定の厚さを有するギャップによって電気光学結晶から分離される。一実施形態では、電極は電気光学結晶に直接押し付けられ、ギャップ寸法がほぼ零になる。一実施形態では、光入射は、電気光学結晶の各面に垂直な方向に沿って伝搬し、導電性のコーティングが施された電極表面は結晶面と光学的開口の両方に平行に配向される。したがって、デバイスは透過モードで動作する。
【0020】
[0028]
図2を参照する。
図2に示す電気光学結晶220は、所定の厚さt
Xを有する重水素化リン酸二水素カリウム(DKDP)を含む。本発明の実施形態によれば、電気光学結晶(たとえば、DKDP)の厚さは約t
X=3mm〜約t
X=30mmまでの範囲であり、たとえばt
X=5mmである。本明細書で説明するポッケルスセルに使用するにはこれよりも薄い結晶(たとえば、厚さ5mm)が適している。その理由は、結晶が薄いほど総合的な結晶吸収が低下するために熱複屈折効果が低減するか又は最低限に抑えられることである。5mmよりも薄い結晶が本発明の範囲内に含まれ、このような結晶は悪影響及び機械的堅牢性を低減させる。
図3に関して説明するように、電極ギャップに気体主体の冷却材を利用する実施形態では、ギャップ内の電界がギャップ冷却材の絶縁破壊電界E
BRよりも低い電界に維持されるように電気光学結晶の厚さt
Xとして十分な厚さが実現される。
E
GAP=ε’V
SWITCH/t
X<E
BR
上式において、ε’は電気光学結晶の誘電率であり、V
SWITCHはスイッチング電圧(たとえば、所望の偏光回転度に応じて結晶半波長電圧又は4分の1波長電圧)である。たとえば、半波長電圧で動作する厚さが10mmのDKDP結晶の場合、ギャップ電界は307kV/cmである。したがって、He:SF
6ガス冷却材には代表的なギャップ厚さ値のt〜1mmが適切である。本明細書全体にわたって説明するように、他の実施形態では、ギャップ厚さが数ミル(たとえば25〜50μm)以下に薄くされる。したがって、数ミクロンから数10ミリメートルの範囲のギャップ厚さが本発明の範囲内に含まれる。
【0021】
[0029]
図2に示す電気光学デバイスはDKDP結晶を利用するが、電気光学効果及び良好な光透過性を示す他の固体を他の実施形態において使用するのも適切である。たとえば、他の適切な電気光学結晶には、非重水素化KDP、ニオブ酸リチウム、チタンリン酸カリウム(KTP)、チタンリン酸ルビジウム(RTP)、チタンヒ酸ルビジウム(RTA)、β−ホウ酸バリウム(BBO)などが制限なしに含まれる。さらに、
図2に示す電気光学デバイスは2つの電極基板を利用するが、この特定の実装形態は本発明の実施形態では必須ではなく、他の実施形態では単一の電極基板を利用してもよい。一例として、プラズマ電極ポッケルスセル(PEPC)による電極素子を第1の電極として利用し、本明細書で説明する電極基板を第2の基板として使用して電気光学デバイスを形成してもよい。さらに、以下に
図8に関して説明するように、反射実装形態において単一の電極基板を利用してもよい。当業者には、多数の変形例、修正例、及び代替例が認識されよう。
【0022】
[0030]電極基板210/230(基板とも呼ぶ)は、高光透過率、機械的剛性、及び電極コーティング212/232を形成するのに適した基板を実現する任意の適切な材料で作られてもよい。一例として、電極基板は、たとえば厚さが1mmのサファイア基板であってもよい。サファイアは、透過性が高く、熱伝導性が良好であり、定積熱容量が大きいので本明細書で説明する用途に適している。サファイアはまた、ITOに厳密に一致する熱膨張係数(7x10
−6/K)を示し、これは、ITO吸収による過渡熱による電極コーティングにおける応力は最低限に抑えられることを意味する。したがって、本発明の各実施形態は界面応力によるデバイス故障を防止する。一実施形態では、サファイアは、光伝搬方向に対して光学的に等方的に垂直になるように配向され、それによって、基板による偏光の変化が回避される。一例として、基板平面はc面サファイアであってもよい。ただし、この特定の構成は本発明に必須ではない。
【0023】
[0031]代替基板材料には、セレン化亜鉛、酸化亜鉛、リン酸ガリウム、これらの材料から作られたセラミクス、それらの組合せなどが制限なしに含まれる。これらの基板のうちのいくつかは、より低い熱性能に結合されたサファイアよりもコストが安い。ガラス及び石英ガラスを基板として使用してもよい。ただし、これらの基板では熱性能のさらなる低下を伴うことがある。いくつかの実施形態では、電極基板は、波長板機能を実現して光学系の余分な波長板に置き換わり、それによって、利用される光学素子の数を削減してもよい。したがって、電極基板は、電極コーティングを形成するための適切な基板表面並びに波長板として二重機能を果たすことができる。実際には、電極基板は、波長板用途に適切なように、波長板機能を実現するように互いに結合された複数のプレートであってもよい。
【0024】
[0032]再び
図2を参照する。電極基板210/230の1つ又は複数の表面に透明導電性電極コーティング212/232(電極コーティング又は透明導電性電極薄膜とも呼ばれる)が設けられる。一実施形態では、この電極コーティングは酸化インジウムスズ(たとえば、In
2O
3に10%〜20%のスズを含有した物質)(ITO)を使用して、約5nm〜約50nmの厚さ範囲で製造される。コーティング厚さは、コーティングの透過性と電気的抵抗との兼合いを最適化するように特定の用途に応じて調整されてもよい。一例として、ITOをコーティングプロセス時に100℃を超える温度に維持された基板に蒸着させ、コーティングプロセス後に100℃を超える温度で焼きなまししてもよい。
【0025】
[0033]
図2に示す実施形態では、電極コーティングは、コーティングされる電極表面が電気光学結晶220に面するように配向される。この配向は、容量電圧の降下を低減させ(すなわち、基板全体にわたって電圧の降下が生じなくなり)、したがってスイッチング電圧を低下させることを含む利点をもたらす。代替配向では、コーティングされる表面が電気光学結晶から離れる方向を向くように電極コーティングが配向される。この場合、一般にスイッチング電圧が高くなるが、構成によっては、コーティングされる導電性表面と外部電源との間の電気接点の製造が簡略化される。
【0026】
[0034]代替コーティング材料には任意の透明導電性酸化物(酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛など)、任意の薄い金属コーティング(金、銀、アルミニウムなど)、有機発光ダイオード(OLED)デバイスに使用される透明導電性ポリマー、又はその他の適切な透明導電性コーティングが含まれる。当業者には、多数の変形例、修正例、及び代替例が認識されよう。
【0027】
[0035]電極コーティングは、スパッタリング、TCOのO
2分圧中の反応スパッタリング、熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンビーム支援蒸着、化学蒸着、浸漬コーティング、スプレーコーティングなどを含む、様々な技術のいずれかによって蒸着させることができる。いくつかの実装形態では、電極材料と基板との間に付着層、たとえばCr又はTiが設けられる。他の実施形態では、HfO
2、シリケート層などの硬質コーティングを緩衝層、インピーダンス整合層などとして働くように電極コーティングを形成する前に基板に蒸着させてもよい。電極基板に直接電極コーティングを形成することは、本発明の実施形態では必須ではなく、単なる一例として説明される。
【0028】
[0036]コーティング及び任意の蒸着後焼きなまし時の基板温度及び条件(たとえば、温度、1つ又は複数の周囲気体、1つ又は複数の不活性ガス、圧力など)を電極コーティングの所望の透過性及び電気抵抗を実現するように最適化してもよい。蒸着及び/又は焼きなまし時の代表的な温度は、300℃近くであってもよい。ITOの蒸着に使用される代表的な焼きなましガスは、Ar又はN
2のような不活性ガス中の10%O
2である。透明導電性コーティングを電気光学結晶に蒸着させる試みとは異なり、本明細書で利用される電極基板は高温処理に適しており、そのため、高透過性と高導電性の両方を有する透明導電性コーティングの(たとえば、蒸着による)形成が可能になる。
【0029】
[0037]各電極コーティングと電気光学結晶との間のギャップは一般に、約0mm〜約1mmの範囲である。特定の実施形態では、ギャップは0.5mmである。本明細書全体にわたって説明するように、ギャップは用途に応じて異なり、静止冷却材はより小さいギャップを伴い、流動冷却材はより大きいギャップを伴う。いくつかの実装形態では、ギャップは、機械的安定性、堅牢性、及び一様性の制約との兼合いをとりながらスイッチング電圧を最低限に抑えるようにできるだけ薄くされる。スイッチング電圧は次式によって与えられる。
V
SWITCH=(V
π/m){1+2(t
GAP/ε’
GAP)/(t
X/ε’
X)}
上式で、V
πは結晶半波長電圧であり、t
Xは電気光学結晶の厚さであり、t
GAPはギャップ厚さであり、ε’
Xは電気光学結晶の誘電定数であり、ε’
GAPはギャップ中の材料の誘電定数である。整数mは、スイッチング構成を表す(半波長の場合はm=1、4分の1波長の場合はm=2)。いくつかの実装形態では、ギャップ厚さは、開口全体にわたる光透過性一様性に対するギャップの変化の影響を最低限に抑えるように調整される。いくつかの実施形態では、20kV〜30kV程度のスイッチング電圧に100ns〜150ns程度のスイッチング時間が与えられる。特定の設計では、50ns程度のスイッチング時間が実現される。他のスイッチング電圧及びスイッチング時間も本発明の範囲内に含まれる。
【0030】
[0038]局所的な結晶偏光回転は結晶中の局所電界に依存する。ギャップ寸法がデバイスの開口全体にわたって一定ではない場合、出射偏光が非一様になることがある。この非一様性が偏光子同士の間に配置されると、光強度プロファイルが横方向において非一様になることがある。たとえば、高度に重水素化されたKDP(V
π/m=6.4kV、ε’
X=48、t
X=25mm)を主体とするt
GAP=0.2mmギャップである(ε’
GAP=1)半波長スイッチの場合、ギャップ寸法が10μm変化すると結晶電圧が136V変化する。これによって局所光強度が0.45%変化する。
【0031】
[0039]ギャップ厚さの変化は、たわみを生じさせる(高圧冷却材を使用することによる)電極全体にわたる機械的組立ての不完全さ、振動、及び圧力差によって生じることがある。流動冷却材を使用する設計の場合、ギャップ厚さは、結晶を横切る流れによる圧力降下が十分に低くなるように適切な幅で設定される。いくつかの実装形態では、圧力降下によって、ギャップ厚さは高圧流動気体(たとえば、2〜5気圧)の場合は約0.1mmになり、流動液体の場合は0.4mmになる。
【0032】
[0040]上述のように、一実施形態では、ギャップ厚さがほぼ零まで薄くされる。このことは、電極を機械的に電気光学結晶に押し付けること(「ドライ接点」と呼ばれる技術)を含むいくつかの方法によって実現されてもよい。ドライ接点方法は、接触表面の清浄度に細心の注意が払われ、レーザによる損傷を受けやすい欠陥が形成されるのを回避するという利点をもたらす。別の方法は、電極と結晶表面との「直接接合」(「拡散接合」、「非接着接合」、又は「ウェハ接合」とも呼ばれる)である。このプロセスは、接触表面にSiO
2主体の材料、たとえばARコーティングで使用できるゾルゲル材料をコーティングすることを含んでもよい。ゾルゲル材料を使用すると、電極基板と電気光学結晶との間に結合層を形成することができ、したがってギャップが非零になるが、電極基板と電気光学結晶とが物理的に直接接触する。これらの用途ではゾルゲルの代わりに無機流体を使用してもよい。さらに別の方法は、透明接着剤による接合である。この方法は、高光フルエンス及び高光パワーに耐えることのできる接着剤を使用する。ギャップ厚さを実質的に零まで薄くする他の方法も本発明の範囲内に含まれ、このような方法は一例としてのみ示される。当業者には、多数の変形例、修正例、及び代替例が認識されよう。
【0033】
[0041]電極基板と電気光学結晶との間のギャップ領域内に流動「冷却材」材料又は静止「冷却材」材料を設けて電気光学結晶の冷却を容易にしてもよい。この冷却材は、透明な気体、液体などを含んでもよい。一実装形態では、SF
6ガスが2.5気圧で使用され、一方、別の実装形態では、SF
6とHeの(体積比が)1:1の混合物が5気圧で利用される。静止冷却材の設計では、少なくとも2.5気圧の分圧を有するSF
6又は他の適切なガスを含む気体を使用して絶縁破壊を防止することができる。この気体にヘリウムを付加すると、冷却ガスの熱伝導性が向上する。気体冷却材の組成にある分圧の酸素を含めて、高レーザフルエンス又は高レーザパワーでのTCOの化学的分解を抑制してもよい。冷却材の流動を、冷却材がレーザ照射中にデバイス内を流れるパルス形態で実現し、照射中に静止流体を供給し、次いで照射と照射の合間に流動流体を使用して熱を除去してもよい。したがって、本発明の各実施形態に流動冷却材を組み込むことには、冷却材が所与の期間中のある時点で非零流量を有する実装形態が含まれる。
【0034】
[0042]冷却液を使用する実装形態では、ギャップ領域にフッ素化デカリン(デカヒドロナフタレン)が供給される。この「冷却材」の目的は、結晶面と電極との間に熱伝導経路を設け(電極面が外部から冷却されると仮定する)、結晶面の上方で流動を生じさせることによって熱を直接除去するか又は他の冷却機能を実現することであってもよい。透明電極に関して説明したように、冷却材材料の透過性に関しては100%の透過率は必須ではなく、高透過率値であればよい。
【0035】
[0043]デバイスが、基板面を外部流動流体で面冷却することによって外部から冷却される実施形態では、基板厚さは一般に、機械的強度との兼合いをとりながら(熱抵抗を低くするために)できるだけ薄くされる。機械的強度要件は、ギャップ「冷却材」と基板の外部の媒体との間に差圧が生じた場合に影響を受ける。
【0036】
[0044]上述のように、液体、気体、及びそれらの組合せを冷却材として使用してもよい。液体を静止冷却材又は流動冷却材として使用してもよい。流動冷却液によってもたらされる利点は、高光フルエンスによって生じる炭化副産物を液体から連続的に濾過して永久的な光劣化を防止できることである。流動冷却材は、上記に静止冷却材に関して示したのと同じ気体を使用しても、或いは光損傷を受けない透明液体を使用してもよい。当業者には明らかなように、デバイス冷却には、流動流体に熱を伝達して、次いでこの流動流体をデバイスの外部で冷却する(さらに濾過してもよい)ことを含めてもよい。これらの冷却設計は、熱複屈折効果を低減させるか又は最低限に抑える面冷却を実現することができる。
【0037】
[0045]
図2に示すように、電極基板と電気光学結晶は、光入射部から光出射部まで延びる光路に沿って配設されている。一実施形態では、様々な光学素子の中心は、様々な図示の光学素子を含む単一の光学系を形成するように光路に沿って配設される。したがって、この実施形態では、電極基板は電気光学結晶にその互いに向かい合う側面において隣接し、電極基板及び電気光学結晶の入射表面及び出射表面は互いに平行である。他の実施形態では、入射表面及び出射表面は、概ね互いに平行であるが反射を低減させるように傾斜している。互いに平行な表面は本発明に必須ではないことに留意されたい。一例として、電極表面及び電気光学結晶表面は湾曲しており、湾曲表面全体にわたって一定の気体を供給することができる。したがって、本明細書で「平行」を使用するとき、平行な平面が必須であるわけではない。当業者には、多数の変形例、修正例、及び代替例が認識されよう。
【0038】
[0046]
図3は、流動冷却材を含む本発明の一実施形態によるポッケルスセルの簡略化された側面図である。
図3〜
図7は、ポッケルスセルとして使用される本発明の実施形態について説明するための図であるが、実装形態はポッケルスセルとしての使用に制限されず、他の電気光学デバイスが本発明の範囲内に含まれる。したがって、ポッケルスセルの説明は、本発明の様々な態様を例示することのできる例示的な実施形態を示すためのみになされている。ギャップ領域内の冷却材が
図3に示すように流動するとき、この冷却材を上述のようにデバイス冷却に使用してもよい。高エネルギー又は高出力動作の下での信頼性を制限することのある、レーザによる冷却材劣化によって形成される粒子及び汚染物質の蓄積を防止するために、流動冷却材を外部で濾過してもよい。
図3を明確にするために、ARコーティングは図示されていないが、ARコーティングを利用してもよい。
【0039】
[0047]電極基板310/330は電極コーティング312/332を含む。電気光学結晶320を横切る電圧を印加してもよい。電極コーティングと電気光学結晶との間の各ギャップは厚さが等しいように示されているが、このことは本発明の実施形態では必須ではない。
【0040】
[0048]
図4は、外部流動冷却材を含む本発明の一実施形態によるポッケルスセルの簡略化された側面図である。
図4に示す実施形態では、電極ギャップ内の冷却材は静止冷却材であり、外部冷却を利用して熱が静止冷却材から外部ヒートシンク(図示せず)まで伝達される。
図4に示す実施形態では、電極基板の外面の上方を流れる別個の冷却材が、この流動冷却材を含む外部の一対の窓と一緒に設けられる。一実装形態では、流動冷却材(すなわち、外部冷却材)は高圧ヘリウムガスを含む。流動冷却材は高電界中には配設されないので、絶縁破壊を防止するうえでSF
6は必須ではない。流動気体冷却材に加えて、流動液体冷却材を使用してもよい。
図4を明確にするために、ARコーティングは図示されていないが、ARコーティングを利用してもよい。
【0041】
[0049]
図4に示す外部窓は、石英ガラス又はサファイアのような光損傷を受けない任意の透明材料であってもよい。外部窓の厚さとしては、差圧に伴う応力複屈折による偏光歪みを回避する厚さが選択される。
【0042】
[0050]
図5は、横伝導を含む本発明の一実施形態によるポッケルスセルの簡略化された側面図である。
図5に示す代替設計は、電極基板の縁部から放熱させる(すなわち、電極基板の横伝導)ことによってデバイスが伝導冷却される。この手法は、サファイア、ZnO、ZnSのような十分な熱伝導性を有する電極基板を利用する。ガラス基板又はシリカ基板はこの実装形態にはそれほど適していないが、電極基板として使用してもよい。
【0043】
[0051]
図6は、本発明の一実施形態による反射防止コーティングを含むポッケルスセルの簡略化された側面図である。代表的な実装形態では、このデバイスのすべての適切な表面は、たとえば
図6に示すようにARコーティングされる。ARコートに適切な表面には、電気光学結晶の両面(644/646)、両方の電極基板の両面(640/642及び648/650)、及び追加の冷却流体を閉じ込めるのに使用される任意の外部窓の表面が含まれる。ARコーティングは、導電コーティング上に塗布されてもよい(すなわち、図示の実装形態では、層スタックは電極基板/導電コーティング(620/622)/ARコーティング(642/648)である)。特定の用途に応じて、これらの表面のうちの1つ又は複数にARコーティングを施して電気光学デバイスの光透過率を向上させてもよい。特定の用途に応じて、これらの表面のうちの1つ又は複数を傾斜させて光エタロン効果を軽減させるか又は最低限に抑えてもよい。したがって、
図6に示す実装形態ではすべての表面がコーティングされるが、このことは本発明では必須ではない。一例として、流動液体冷却材を使用するいくつかの実装形態では、液体冷却材は、屈折率整合機能を実現し、電気光学結晶上のARコーティング及び電極コーティングの必要性を低減させるか又は無くすことができる。したがって、実装形態に応じてARコーティングされない表面があってもよい。当業者には、多数の変形例、修正例、及び代替例が認識されよう。
【0044】
[0052]
図7は、本発明の一実施形態による複屈折補償を含む1組のポッケルスセルの簡略化された側面図である。特定の冷却形状の場合、又は光パワーが非常に高い場合、電気光学デバイスは、望ましくない残留熱複屈折を示すことがある。この場合、
図7に示すように間に配置された光回転子と直列に接続された2つの電気光学デバイスを使用して熱複屈折を補償してもよい。光回転子は、石英又は亜ジチオン酸カリウムのようなキラル(光学的に活性の)結晶によって実現されてもよい。1μm波長で動作する場合、石英回転子は厚さが約13.7mmである。回転子結晶は一般に、ARコーティングされる。代替として、光回転子は磁場中のファラデー回転子材料を使用してもよい。適切なファラデー回転子結晶には、テルビウムガリウムガーネット、ある種のドープガラスなどが含まれる。
【0045】
[0053]
図7に示す実施形態では、同一又はほぼ同一の厚さを有する電気光学結晶を使用することが望ましい。補償される複屈折が横電極構成よりもずっと少ないので、厚さの一致に関する公差は、横構成の場合よりも著しく緩和される。たとえば、高度に重水素化された(98%)KDPから成る厚さが25mmの結晶は、熱複屈折率が3.6x10
−4であり、必要とされる厚さ一致精度は0.26mmに等しいかそれよりも低い精度である。
図7を明確にするために、ARコーティングは図示されていないが、ARコーティングを利用してもよい。
【0046】
[0054]過度の熱複屈折を補償する代替手法では、電気光学結晶の周囲を別個に加熱する。このことは、たとえば、抵抗ヒータ、追加の光源からの照射、又はその他の適切な技術によって実現されてもよい。
【0047】
[0055]
図8は、本発明の一実施形態による反射式スイッチの簡略化された側面図である。この実装形態では、上記に透過モードデバイスに関して説明したのと同じ電極手法を反射モードデバイスに適用する。
図8に示すように、単一の電極が、一面が透明導電性薄膜820でコーティングされた透明基板を含むギャップ結合型電極基板810の形で使用される。金属ヒートシンク860を使用して放熱させてもよい。図示の実施形態ではギャップ内の冷却材は任意に使用される。
図8に示す設計の変形例として、金属ブロックに高反射(HR)コーティング850で被膜して電気光学デバイスの光スループットと光損傷しきい値の両方を改善してもよい。電気光学結晶を横切る電圧を印加すると、入射光の偏向を修正することが可能になり、スイッチング機能が実現される。ARコーティング840/842/844が図示されている。当業者には、多数の変形例、修正例、及び代替例が認識されよう。
【0048】
[0056]本発明の一実施形態によれば、反射性電気光学デバイスが提供される。この反射性電気光学デバイスは、入射表面及び出射表面と、出射表面に結合された電極コーティングとを有する電極基板を備える。反射性電気光学デバイスは、第1の表面と第2の表面とを有する電気光学結晶も含む。電気光学結晶の第1の表面は、電極コーティングから所定の厚さを有するギャップの分だけ分離される。電気光学結晶の第2の表面にHRコーティングが結合される。電気光学結晶は、電気光学結晶の第2の表面に熱的に結合されたヒートシンクに取り付けられる。電極基板の入射表面に入射した光は、電極基板、透明な電極コーティング、ギャップ、及び電気光学結晶を通過する。光は次いで、HRコーティングによって反射され、
図8に示すように上記の構造を逆方向に通過する。
【0049】
[0057]
図9は、本発明の一実施形態によるポッケルスセルを動作させる方法を示す簡略化されたフローチャートである。この方法は、入射表面と、出射表面と、出射表面に結合された第1の電極コーティングとを有する第1の電極基板を有するポッケルスセルを用意すること(910)を含む。ポッケルスセルは、第1の電極基板に隣接するように配設された電気光学結晶と、入射表面、出射表面、及び入射表面に結合された第2の電極コーティングを有する第2の電極基板も有する。一例として、電気光学結晶はDKDPであってもよい。本明細書の全体にわたって説明するように、第1の電極コーティングはITOを含んでもよく、第2の電極コーティングはITOを含んでもよい。この方法は、第1の偏向状態を有する入射光線を第1の電極基板の入射表面に当たるように向けるステップ(912)と、入射光線の少なくとも一部を第1の電極基板を通過させるステップ(914)と、入射光線の少なくとも一部を第1の電極コーティングを通過させるステップ(916)も含む。
【0050】
[0058]この方法は、第1の電極コーティングと第2の電極コーティングとの間に電圧を印加するステップ(918)と、電気光学結晶を使用して第1の偏向状態を第2の偏向状態に変更するステップ(920)とをさらに含む。いくつかの実施形態では、偏向状態を変更すると、それに伴って、半波長の第2の偏向状態と第1の偏向状態との間に位相差が生じ、一方、他の実施形態では、偏向状態を変更すると、それに伴って、4分の1波長の第2の偏向状態と第1の偏向状態との間に位相差が生じる。したがって、ポッケルスセルは、半波長板、4分の1波長板などとして機能することができる。動作時に、ポッケルスセルは直線偏向状態の光を円偏向状態、楕円偏向状態などに変換してもよい。さらに、この方法は、入射光線の少なくとも一部を第2の電極コーティングを通過させるステップ(922)と、入射光線の少なくとも一部を第2の電極基板を通過させるステップ(924)を含む。
【0051】
[0059]
図9に示す特定の各ステップが本発明の一実施形態によるポッケルスセルを動作させる特定の方法を構成することを了解されたい。他のステップシーケンスを代替実施形態によって実行してもよい。たとえば、本発明の代替実施形態は、上記に説明した各ステップを異なる順序で実行してもよい。さらに、
図9に示す個々のステップは、個々のステップの必要に応じて様々なシーケンスで実行できる複数のサブステップを含んでもよい。さらに、特定の用途に応じてさらなるステップを追加しても或いはステップを削除してもよい。当業者には多数の変形例、修正例、及び代替例が認識されよう。
【0052】
[0060]透明導電性薄膜においてレーザによって生じる加熱による熱応力及び機械的応力をシミュレートした。薄膜の基板の最適化による変化を調べた。膜及び基板の特性を表1に示す。厚さが100nmの焼きなましされた膜及び焼きなましされていない膜のITO光吸収について代表的な値を選択した。
【表1】
【0053】
[0061]コーティングにおいてレーザによって生じる加熱による熱力学的衝撃を、過渡1次元熱ソルバを使用し、温度依存材料パラメータを使用してシミュレートした。すべてのシミュレーションに100nmのコーティング厚さを使用した。フルエンス0.35J/cm
2及び持続時間3nsの方形レーザパルスを仮定し、薄膜内の一様な容積加熱によってシミュレートした。これは、透過率が2%であり膜圧が100nmであるとき、パルス時の2.33x10
17W/m
3ピーク熱負荷に相当する。
【0054】
[0062]熱シミュレーションによってITO表面及びITO−基板界面における最高温度が得られる。界面温度を使用し、次式を使用して、コーティングにおいて熱によって生じる応力及び歪みを推定することができる。
歪みε=ΔαΔT
応力σ=Eε
上式で、ΔTは界面での温度上昇であり、ΔαはITOと基板との間の熱膨張差であり、Eはコーティングのヤング率である。
【0055】
[0063]レーザによる熱力学的負荷のシミュレーション結果が表2に示されている。DKDP上に焼きなましされていないITOを設けた場合、コーティング温度はかなり高くなる。対応する機械的応力は、たとえばITOの165MPa曲げ強度と比べて(膨張係数の顕著な不一致のために)極めて高い。145℃ではDKDPの破壊的な相転移が生じるので、DKDP基板には焼きなましを実施できない。これらの結果は、(材料の吸収率が高いので)光吸収が高く、DKDPの熱特性が不十分であり、ITOとDKDPの膨張係数の不一致が顕著であることに起因して、DKDPにITOを蒸着させた場合に実現可能な光損傷しきい値が小さくなることを半定量的に明確に示す。
【表2】
表2は、(コーティングの吸収を低下させる)焼きなましが熱力学的負荷を改善されたレベルまでどのように向上させるかも示す。すなわち、レーザによるITOの最大温度上昇は、一般にTCO膜に使用される焼きなまし温度(300〜500℃)と同様である。これらの結果は、ガラス基板上のITOにおいて光損傷耐性が向上することを明確に示す。
【0056】
[0064]最後に、シミュレーションは、シリカに対する焼きなましされたITOの界面応力が依然としてある程度の高さを有することを示す(198MPa)。同じ膜がサファイア基板上ではずっと低い応力を示す。その理由は、サファイアは、熱伝導率が高いために界面から熱をよりうまく逃がすことができるとともに、ITOとの膨張係数の一致度が高いことである。これらの結果は、ITOをサファイア基板に蒸着させたときにレーザによる加熱に対して著しく堅牢になる(界面応力が80倍低くなる)ことを示す。
【0057】
[0065]以下に、本発明の各実施形態に関係するデバイス設計及び性能に関する計算を示す。各設計では、25x25cm
2の開口を仮定し、高度に重水素化されたzカットDKDP結晶を利用している。計算に使用されたDKDP特性は、
吸収係数、z:0.25%/cm
誘電定数、z:48
半波長電圧:6.4kV
熱伝導率、z:1.2W/m−K
熱伝導率、xy:1.4W/m−K
In V
πの温度係数=d InV
π/dT:0.0132/K
キュリー温度:222K
キュリー定数:3572K
熱膨張、z:44ppm/K
熱膨張、xy:24.9ppm/K
機械的剛性テンソルC
ij:ランドルトベルンシュタインから取得したデータである。
ITOコーティング吸収については、電極当たり2%と仮定した。
【0058】
[0066]フルエンス0.345J/cm
2及び繰返し率16Hzの光線を仮定して各設計を評価した。これは、パルスエネルギー215.6J及び平均出力3.45kWがポッケルスセルに入射したことに相当する。
【0059】
[0067]このシミュレーション方法では、スイッチング電圧及びデバイス容量(フリンジ電界を無視した平面平行コンデンサ近似)に関する解析式、内部結晶温度変化に関する解析式、並びに流動冷却材の熱上昇に関する解析式を使用した。差圧による機械的プレート歪み(たわみ)には解析級数展開を使用した。
【0060】
[0068]乱流には平滑流路のペチュホフ相関を使用し、層流にはダルシーの式を使用して、流体流による圧力降下を計算した。乱流にはグニーリンスキー相関を使用し、層流には均一温度相関を使用して、流動流体境界層を横切る対流熱伝導を算出した。これらの結果では、平滑な流路、完全に発達した流れを仮定し、流路に対する遷移に伴う圧力降下を無視している。
【0061】
[0069]実験データから求めた相関を使用して気体乱流中の光散乱による損失を推定し、たとえば、N
2に関して結果を得て、この結果をグラッドストーン−デイル係数の比を使用して他の気体に対して調整した。
【0062】
[0070]「オフ」状態(印加電圧なし)における消光比低下が、熱複屈折によって低下し、それによって、わずかな光がスイッチから漏れる。この漏れを温度分布の有限要素計算と、その結果得られる、レーザによる加熱(結晶吸収)に起因するDKDP中の歪み分布によって推定した。これらの計算では、結晶の異方性の熱特性及び機械的特性を使用した。次式を使用して歪み分布を複屈折にマッピングした。
δn=n
3p
66ε
xy
上式で、pは歪み−光学係数である。
【0063】
[0071]これは、本発明者の詳細な結果では、分離又は逆消光比として報告されており、分離は、理想的なデバイスでは0.0であり、有限熱複屈折を用いて次式によって与えられる。
sin
22πδnL/λ
面冷却されるデバイスは理想的には、冷却材の熱上昇による線形横方向温度勾配にもかかわらず熱複屈折をまったく示さないべきであるが、レーザ光線の有限範囲では一般に、レーザ光線の縁部における横方向熱拡散によって有限複屈折が生じる。
【0064】
[0072]算出された複屈折による消光比低下には、熱複屈折のみが含まれる。この低下には、差圧が生じた窓及び基板の応力複屈折は含まれず、これらの効果は、必要に応じて、機械的な応力を受ける材料の厚さを厚くすることによって軽減させることができる。
【0065】
[0073]「オン」状態(非零印加電圧)では、電極のたわみ及び結晶全体にわたる熱的変動によって光出力偏向(及び偏光子を横切った後の強度)の横方向の変化を導入することができる。結晶中の局所電界に関する平行板コンデンサ式を使用してたわみ効果を推定した。V
xの温度係数及びDKDP誘電定数の温度変化(キュリーの法則)から温度効果を推定した。
【0066】
[0074]以下の節では、本発明の実施形態による4つの異なる設計について詳細に説明する。すべての場合に、以下の設計制約を満たした。
【0067】
[0075](
図1のzに沿った)内部縦方向温度変化が確実に<1℃になるようにDKDP結晶厚さを常に制限した。これによって、結晶内の内部応力が破断限界の6%未満に維持される。
【0068】
[0076]気体内の電界が常に気体の絶縁破壊電界よりも1.8倍低くなるようにDKDP厚さと気体の組成及び圧力との組合せを常に調整した。
【0069】
[0077]ギャップ厚さは常に少なくとも25ミクロンとした。
【0070】
[0078]流動冷却材の圧力降下は1psiを超えた。
【0071】
[0079]窓及び基板の厚さは、これらの材料全体にわたる差圧による破断に対する安全マージンの少なくとも1.5倍の安全マージンを実現するのに常に十分な厚さとした。
【0072】
[0080]冷凍を不要にするためにデバイスに対する冷却材入口温度を300Kとした。
【0073】
[0081]4つの例示的な設計を以下のように要約することができる。
【0074】
[0082]代表的な設計では、21〜31kVの半波長スイッチング電圧が必要である。ある種の設計では、スイッチング電圧が7〜8kV程度に低くなるが、これらの設計では、25〜50ミクロンの安定したギャップ寸法を維持する必要があり、熱複屈折をより受けやすい。
【0075】
[0083]液体冷却デバイスは、熱複屈折を極めて低くすることができ、薄い(<8mm)DKDP結晶及びサファイア基板を使用することができる。このようなデバイスの最も重要な課題は、高光パワー及び高光フルエンスで液体冷却材を長期的に安定させることである。
【0076】
[0084]気体冷却材を有するデバイスは、気体絶縁破壊を回避するために厚いDKDP結晶(25mm)及び高気体圧力(5気圧)を必要とする。この場合、厚い基板及び厚い窓が必要である。また、熱複屈折が増大することによって局所消光比が顕著に失われる(1.2%)。このように小さくなった消光値は、結晶の狭い領域に局所化される。
【0077】
[0085]横方向冷却デバイスでは局所消光がより低下する(>2%)。
【0078】
[0086]設計1:ギャップ中に流動気体冷却材を含む面冷却設計(
図3を参照することができる)
【0079】
[0087]設計パラメータ
結晶厚さ:25mm
ギャップ厚さ:1.0mm
基板:c面サファイア
基板厚さ:20mm
冷却材:He:SF
6の体積比が5気圧で1:1
冷却材流量:18m/s
【0080】
[0088]熱冷却性能
冷却材の熱上昇:0.3℃
結晶内部温度上昇:0.9℃
境界層温度上昇2.6℃(結晶冷却材界面)
総結晶温度上昇:3.8℃
冷却材流圧力降下:0.5psi
【0081】
[0089]電気的性能
半波長スイッチ電圧:30.9kV
キャパシタンス:257pF
【0082】
[0090]電気光学性能
光吸収:4.6%(KDPとITO)
光散乱損失:0.16%(SF
6ガス)
局所消光低下:1.22%(熱複屈折)
透過時のコントラスト低下
たわみ <0.01%
横方向温度変化 <0.01%
【0083】
[0091]ギャップ中の電界が気体の破壊電界よりも1.8倍低いレベルにあり、ギャップを0.7mmまで小さくし、冷却材流量を8.4m/sに変更し、0.6Cの熱上昇を可能にすることによって、スイッチング電圧を23.5kVまで低下させてもよいことに留意されたい。これらの変更によってデバイスのキャパシタンスが337pFに増大し、2cmの基板厚さによって十分な破断抵抗が実現され、基板のたわみ(冷却材が加圧されることによる局所的なスイッチ電圧の変化)が防止され、サファイアの代わりに9.2cmシリカ基板を使用してもよい。しかし、ITOの損傷抵抗が低下する可能性が高い。
【0084】
[0092]設計2:ギャップ中に流動液体冷却材を含む面冷却設計(
図3を参照することができる)
【0085】
[0093]設計パラメータ
結晶厚さ:8mm
ギャップ厚さ:0.4mm
基板:c面サファイア
基板厚さ:5mm
冷却材:フッ素化デカリン
冷却材流量:0.24m/s
【0086】
[0094]熱冷却性能
冷却材の熱上昇:0.1℃
結晶内部温度上昇:0.1℃
境界層温度上昇:2.0℃(結晶冷却材界面)
総結晶温度上昇:2.2℃
冷却材流圧力降下:1.0psi
【0087】
[0095]電気的性能
半波長スイッチ電圧:20.8kV
キャパシタンス:1194pF
【0088】
[0096]電気光学性能
光吸収:4.2%(KDPとITO)
光散乱損失:0%(SF
6ガス)
局所消光低下:0.02%(熱複屈折)
透過時のコントラスト低下
たわみ <0.01%
横方向温度変化 <0.01%
【0089】
[0097]液体冷却材を外部で濾過し(ミクロ細孔)レーザによる低下によって生じる可能性のある不純物を除去できることに留意されたい。
【0090】
[0098]設計3:基板の外部に流動液体冷却材を含む面冷却設計(
図4を参照することができる)
【0091】
[0099]設計パラメータ
結晶厚さ:25mm
ギャップ厚さ:0.050mm
ギャップ材料:He:SF
6の静止時体積比が5気圧で1:1
基板:c面サファイア
基板厚さ:1mm
窓:石英ガラス
窓厚さ:10mm
冷却材:He:SF
6の体積比が5気圧で1:1
冷却材流量:25.5m/s
【0092】
[0100]熱冷却性能
冷却材の熱上昇:0.4℃
結晶内部温度上昇:0.9℃
境界層温度上昇:4.8℃(結晶冷却材界面)
総結晶温度上昇:6.1℃
冷却材流圧力降下:0.2psi
【0093】
[0101]電気的性能
半波長スイッチ電圧:7.6kV
キャパシタンス:1041pF
【0094】
[0102]電気光学性能
光吸収:4.6%(KDPとITO)
光散乱損失:0%(SF
6ガス)
局所消光低下:TBD、>1.22%(熱複屈折)
透過時のコントラスト低下
たわみ 0%
横方向温度変化 <0.01%
【0095】
[0103]ギャップ中の電界が気体の破壊電界よりも1.8倍低いレベルであり、冷却材中ではSF
6の乱流が生じないので、散乱損失がほぼ零であり、基板全体にわたる圧力降下が生じないので、基板の厚さは機械的堅牢性要件によってのみ制限され、基板全体にわたる圧力降下が生じないので、たわみによるコントラストの低下が生じず、この設計の変形例では、気体の取扱いを簡略化するために、ギャップと気体と流動冷却材のすべてに1:1のHe:Sf
6混合物を使用することに留意されたい。この場合、境界層の上昇は2.6℃に低下し、総温度上昇は4.1℃に低下する。しかし、光散乱損失が0.03%に増大する。
【0096】
[0104]設計4:ギャップ中に静止ガスを含む縁部冷却(伝導冷却)設計(
図5を参照することができる)
【0097】
[0105]設計パラメータ
結晶厚さ:25mm
ギャップ厚さ:0.025mm
ギャップ材料:He:SF
6の静止時体積比が5気圧で1:1
基板:c面サファイア
基板厚さ:23mm
流動冷却材:なし
【0098】
[0106]熱冷却性能
横方向温度変化:1.8℃(結晶開口を横切る変化)
結晶内部温度上昇:0.9℃
総結晶温度上昇:計算しない
【0099】
[0107]電気的性能
半波長スイッチ電圧:7.0kV
キャパシタンス:1131pF
【0100】
[0108]電気光学性能
光吸収:4.6%(KDPとITO)
光散乱損失:0%(SF
6ガス)
局所消光低下:2.1%(熱複屈折)
透過時のコントラスト低下
たわみ 0%
横方向温度変化 0.03%
【0101】
[0109]ギャップ中の電界が気体の破壊電界よりも1.8倍低いレベルであり、冷却材中ではSF
6の乱流が生じないので、散乱損失がほぼ零であることに留意されたい。
【0102】
[0110]本明細書で説明した例及び実施形態が例示のためのみのものであり、当業者にはその点を考慮した様々な修正及び変更が構想され、それらの修正及び変更が本出願の趣旨及び範囲並びに添付の特許請求の範囲内に含まれることも理解されたい。