特許第6071891号(P6071891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071891
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】成形機の安全装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/84 20060101AFI20170123BHJP
   B22D 17/26 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   B29C45/84
   B22D17/26 K
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-539564(P2013-539564)
(86)(22)【出願日】2012年8月27日
(86)【国際出願番号】JP2012071574
(87)【国際公開番号】WO2013058016
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年8月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-230734(P2011-230734)
(32)【優先日】2011年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正木 亮
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−062881(JP,A)
【文献】 特開2011−126251(JP,A)
【文献】 特開2010−099938(JP,A)
【文献】 特開2005−131819(JP,A)
【文献】 特開平10−113971(JP,A)
【文献】 特開平10−000670(JP,A)
【文献】 特開平09−141716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B22D 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインフレーム上に配置された固定盤及び可動盤を含む型締装置と、該型締装置の外周に配置された安全ドアとを有する成形機に備えられ、前記メインフレーム上における前記固定盤と前記可動盤の配列方向と平行に配置された安全バーと、前記可動盤に取り付けられ、前記安全ドアの開放時には前記安全バーに係合され、前記安全ドアの閉鎖時には前記安全バーとの係合が解除されるストッパとを備えた成形機の安全装置において、
前記安全バーは、前記ストッパを係合するための固定歯が長さ方向に複数個形成された本体部と、当該本底部の長さ方向の端部に設けられた偏心軸とからなり、前記安全ドアの開閉動作に連動して前記偏心軸の軸心周りに往復回転し、
前記安全ドアの開放時には、隣り合う2つの前記固定歯の間に前記ストッパが嵌り込む位置まで前記固定歯を突出させ、前記安全ドアの閉鎖時には、前記固定歯と前記ストッパとの係合が解除され、かつ前記安全バーと前記ストッパとが離隔する位置まで前記固定歯を退避させることを特徴とする成形機の安全装置。
【請求項2】
前記本体部と前記偏心軸は、前記本体部及び前記偏心軸のいずれか一方に形成された雄ねじと、前記本体部及び前記偏心軸のいずれか他方に形成された雌ねじを螺合することにより連結されていることを特徴とする請求項1に記載の成形機の安全装置。
【請求項3】
前記本体部の断面形状を角形に形成したことを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の成形機の安全装置。
【請求項4】
前記ストッパは、バー状に形成されていて、その一端が連結ピンを介して前記可動盤に回動自在にピン結合されており、前記固定歯は、前記可動盤を型締方向に移動させる際に前記ストッパと対向する面が垂直面で、前記可動盤を型開方向に移動する際に前記ストッパと対向する面が傾斜面となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の成形機の安全装置。
【請求項5】
前記安全バーに常時周方向の回転トルクを付与する回転トルク付与手段と、前記安全ドアの開放時に、前記回転トルク付与手段により付与される回転トルクに抗して、前記固定歯が前記ストッパと係合する方向に前記安全バーを回動する安全バー回動手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の成形機の安全装置。
【請求項6】
前記回転トルク付与手段として、前記安全バーの取り付けたウエイト及び前記安全バーと前記固定盤との間に張設された戻しばねのうちの少なくとも一方を備えたことを特徴とする請求項5に記載の成形機の安全装置。
【請求項7】
前記安全バー回動手段は、前記安全バーに一端が固定され、前記安全バーの半径方向に突出されたレバーと、前記安全ドアの内面に取り付けられ、前記安全ドアの閉鎖時に前記レバーと係合して、前記固定歯と前記ストッパとの係合が解除される方向に前記安全バーを回動するドッグ部材とからなることを特徴とする請求項5及び請求項6のいずれか1項に記載の成形機の安全装置。
【請求項8】
前記安全バー回動手段は、前記偏心軸に備えられた平歯車と、該平歯車に噛み合わされたラックと、前記安全ドアに取り付けられ、前記安全ドアの開閉動作に伴って前記ラックを駆動するドッグ部材とからなることを特徴とする請求項5及び請求項6のいずれか1項に記載の成形機の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機の安全装置に係り、特に、安全ドアが開いている状態における可動盤の型締方向への移動を機械的に阻止して、オペレータの安全を確保する機械式安全装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機やダイカストマシン等の成形機には、オペレータの安全を確保するため、型開閉機構の外周を覆う安全カバーが備えられており、この安全カバーの一部には、金型交換や製品取り出し等の作業を可能にするための安全ドアが備えられている。さらに、安全ドアが開いている状態における可動盤の型締方向への移動を阻止するため、安全ドアの開閉操作に連動する機械式安全装置が備えられている。機械式安全装置は、棒状体の周面の長さ方向に複数の固定歯を一定ピッチで形成してなり、固定金型が取り付けられる固定盤と可動金型が取り付けられる可動盤の配列方向と平行に配置されて、安全ドアの開閉操作に連動して周方向に所定角度だけ往復回転する安全バーと、可動盤に取り付けられ、安全ドアの開放時に安全バーの固定歯に係合されるストッパとからなる。安全ドアが閉じている状態においては、固定歯がストッパとの係合が解除される位置まで回動され、可動盤の移動が可能になる。一方、安全ドアが開いている状態においては、固定歯がストッパとの係合位置まで回動され、可動盤の型締方向への移動が阻止される。
【0003】
従来、上述した機械式安全装置の安全バーとしては、丸棒の周面に固定歯が形成され、固定歯が丸棒の軸心の周りに回転されるものが用いられている。また、前記ストッパとしては、板材をもってL字形に形成され、一端が連結ピンを介して可動盤に回動可能にピン結合されると共に、他端が安全バーに常時接触するものが用いられている(例えば、特許文献1の図1及び図3参照。)。特許文献1に記載の安全バーは、丸棒の固定歯形成部に対して90度位相をずらした部分が平面になっており、安全ドアが閉じている状態においては、当該平面に対向してストッパの一辺が摺接され、固定歯とストッパとの係合が解除されて、可動盤の移動が可能になる。一方、安全ドアが開いている状態においては、固定歯が前記ストッパの一辺と対向する位置まで回動され、固定歯にストッパが係合されて、可動盤の型締方向への移動が阻止される。
【0004】
また、特許文献1には、安全ドアの開閉操作に連動して安全バーをその周方向に90度往復回転する機構として、一端が安全バーに取り付けられて、安全バーの半径方向に突出するレバーと、当該レバーの先端部に取り付けられたローラと、安全バーに一方向の回転トルクを付与する回転トルク付与手段と、安全ドアの内面に取り付けられ、安全ドアの開閉操作に連動してローラと係合し、回転トルク付与手段により付与される回転トルクに抗して安全バーを逆方向に回転するカムとからなるものが開示されている(例えば、特許文献1の図5及び図6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−6320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の安全装置は、安全バーの周面にL字形に形成されたストッパの一部を常時接触させる構成であるため、可動盤の型開閉動作に伴って安全バーとストッパとが摺動し、摩耗粉や異音(摺動音)を発生しやすいという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安全ドアの開閉時に摩耗粉や異音を発生しにくく、耐久性及び静粛性に優れた成形機の安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため、メインフレーム上に配置された固定盤及び可動盤を含む型締装置と、該型締装置の外周に配置された安全ドアとを有する成形機に備えられ、前記メインフレーム上における前記固定盤と前記可動盤の配列方向と平行に配置された安全バーと、前記可動盤に取り付けられ、前記安全ドアの開放時には前記安全バーに係合され、前記安全ドアの閉鎖時には前記安全バーとの係合が解除されるストッパとを備えた成形機の安全装置において、前記安全バーは、前記ストッパを係合するための固定歯が長さ方向に複数個形成された本体部と、当該本底部の長さ方向の端部に設けられた偏心軸とからなり、前記安全ドアの開閉動作に連動して前記偏心軸の軸心周りに往復回転し、前記安全ドアの開放時には、隣り合う2つの前記固定歯の間に前記ストッパが嵌り込む位置まで前記固定歯を突出させ、前記安全ドアの閉鎖時には、前記固定歯と前記ストッパとの係合が解除され、かつ前記安全バーと前記ストッパとが離隔する位置まで前記固定歯を退避させることを特徴とする。
【0009】
安全バーとして、ストッパを係合するための固定歯が長さ方向に複数個形成された本体部と、該本体部の端部に設けられた偏心軸とからなるものを用いると、安全ドアの開閉動作に連動して偏心軸をその軸心周りに回転することにより、偏心軸の軸心を中心として本体部に形成された固定歯をスイングすることができる。よって、固定歯を可動盤に備えられたストッパに対する係合解除位置から係合位置まで突出させたり、係合位置から係合解除位置まで退避させることができ、安全バーにストッパを常時接触させる必要がなくなることから、安全バーとストッパの摺動に伴う摩耗粉の発生や異音の発生を防止することができる。
【0010】
また本発明は、前記構成の成形機の安全装置において、前記本体部と前記偏心軸は、前記本体部及び前記偏心軸のいずれか一方に形成された雄ねじと、前記本体部及び前記偏心軸のいずれか他方に形成された雌ねじを螺合することにより連結されていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によると、1本の長大な部材から本体部と偏心軸とが一体に形成された安全バーを削り出す場合に比べて、材料コスト及び加工コストを軽減できるので、安全バー、ひいては成形機の低コスト化を図ることができる。
【0012】
また本発明は、前記構成の成形機の安全装置において、前記本体部の断面形状を角形に形成したことを特徴とする。
【0013】
かかる構成によると、角形断面の本体部の一辺の長さと丸形断面の本体部の直径を同一としたとき、角形断面の本体部は、丸形断面の本体部に比べて、固定歯をストッパに係合させたときの固定歯とストッパの接触面積を大きくすることができる。よって、比較的小径の本体部を用いて型締方向への可動盤の移動を防止すること、或いは、丸形断面の本体部と同等サイズの角形断面の本体部を用いて可動盤停止力の強化を図ることができる。比較的小径の本体部を用いた場合には、材料コストの低減を図ることができ、丸形断面の本体部と同等サイズの角形断面の本体部を用いた場合には、安全性の向上を図ることができる。
【0014】
また本発明は、前記構成の成形機の安全装置において、前記ストッパは、バー状に形成されていて、その一端が連結ピンを介して前記可動盤に回動自在にピン結合されており、前記固定歯は、前記可動盤を型締方向に移動する際に前記ストッパと対向する面が垂直面で、前記可動盤を型開方向に移動する際に前記ストッパと対向する面が傾斜面となっていることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によると、安全ドアが開いており、したがってストッパが安全バーの固定歯に係合している状態においても、可動盤を型開方向に移動すると、ストッパが固定歯の傾斜面に当接し、ストッパに固定歯の傾斜面から垂直方向の分力が作用するので、連結ピンを中心としてストッパを回動させることができる。よって、ストッパと固定歯との係合を解除することができ、可動盤を所定の型開位置まで移動させることができる。
【0016】
また本発明は、前記構成の成形機の安全装置において、前記安全バーに常時周方向の回転トルクを付与する回転トルク付与手段と、前記安全ドアの閉鎖時に、前記回転トルク付与手段により付与される回転トルクに抗して、前記固定歯と前記ストッパとの係合が解除される方向に前記安全バーを回動する安全バー回動手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
かかる構成によると、安全ドアの閉鎖時においては、安全バー回動手段により安全バーの固定歯がストッパに対する係合解除位置まで確実に回動されるので、意図せず固定歯とストッパとが係合して安全ドアが開かなくなる等の不都合を確実に防止できる。また、安全ドアの開放時においては、回転トルク付与手段により安全バーの固定歯がストッパに対する係合位置まで確実に回動されるので、可動盤の不用意な型締方向への移動を確実に防止できる。
【0018】
また本発明は、前記構成の成形機の安全装置において、前記回転トルク付与手段として、前記安全バーに取り付けたウエイト及び前記安全バーと前記固定盤との間に張設された戻しばねのうちの少なくとも一方を備えたことを特徴とする。
【0019】
回転トルク付与手段としてウエイトを用いた場合にも、また、戻しばねを用いた場合にも、簡単な構成で安全バーを確実に一方向に付勢することができる。
【0020】
また本発明は、前記構成の成形機の安全装置において、前記安全バー回動手段は、前記安全バーに一端が固定され、前記安全バーの半径方向に突出されたレバーと、前記案内ドアの内面に取り付けられ、前記安全ドアの閉鎖時に前記レバーと係合して、前記固定歯と前記ストッパとの係合が解除される方向に前記安全バーを回動するドッグ部材とからなることを特徴とする。
【0021】
本構成の安全バー回動手段を用いると、安全ドアを閉方向に移動したとき、安全ドアに取り付けられたドッグ部材によって、安全バーに固定されたレバーの先端部が押し上げられ、安全バーが一方向に回転されて、ストッパと固定歯との係合が解除される。したがって、可動盤の型締方向への移動が可能になる。また、この状態から安全ドアを開方向に移動すると、安全ドアに取り付けられたドッグ部材と安全バーに固定されたレバーとの係合が解除されて、レバーの先端部が反転し、安全バーが他方向に回転されて、固定歯がストッパと係合可能な位置まで回動される。したがって、可動盤の型締方向への移動が阻止される。
【0022】
また本発明は、前記構成の成形機の安全装置において、前記安全バー回動手段は、前記偏心軸に備えられた平歯車と、該平歯車に噛み合わされたラックと、前記安全ドアに取り付けられ、前記安全ドアの開閉動作に伴って前記ラックを駆動するドッグ部材とからなることを特徴とする。
【0023】
本構成の安全バー回動手段を用いると、安全ドアを閉方向に移動したとき、安全ドアに取り付けられたドッグ部材がラックを駆動して平歯車を一方向に回転し、平歯車を固定した安全バーが一方向に回転されて、ストッパと固定歯との係合が解除される。したがって、可動盤の型締方向への移動が可能になる。また、この状態から安全ドアを開方向に移動すると、安全ドアに取り付けられたドッグ部材とラックとの係合が解除されて、ラックが下降し、平歯車及び安全バーが他方向に回転され、固定歯がストッパと係合可能な位置まで回動される。したがって、可動盤の型締方向への移動が阻止される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る成形機の安全装置は、安全バーとして、ストッパを係合するための固定歯が長さ方向に複数個形成された本体部と、該本体部の端部に設けられた偏心軸とからなるものを用いるので、安全バーにストッパを常時接触させる必要がなく、安全バーとストッパとの摺動に伴う摩耗粉の発生や異音の発生を防止することができる。よって、成形機の耐久性及び静粛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る安全装置が適用される射出成形機の斜視図である。
図2図1に示す射出成形機の型締機構部を示す要部斜視図である。
図3】実施形態に係る安全バーの正面図である。
図4】実施形態に係る安全バーの偏心軸側から見た側面図である。
図5】安全バーの回転位置に応じた固定歯とストッパとの係合状態の変化を示す説明図である。
図6】実施形態に係る安全装置の構成を示す射出成形機の要部斜視図である。
図7図6のA矢視図である。
図8】安全ドアの閉鎖時における安全バーの回転状態を示す射出成形機の要部斜視図である。
図9】安全ドアの開放時における安全バーの回転状態を示す射出成形機の要部斜視図である。
図10】安全バーの本体部に断面形状を角形とした場合におけるストッパとの係合状態を示す図である。
図11】固定歯の形成位置に対する偏心軸の偏心方向を変更した場合の効果を示す図である。
図12】第2実施形態に係る安全装置の安全ドア閉鎖時の状態を示す要部斜視図である。
図13】第2実施形態に係る安全装置の安全ドア開放時の状態を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、本発明に係る安全装置の実施形態を説明するに先立ち、本発明に係る安全装置が備えられる射出成形機の一例を、図1及び図2を用いて説明する。
【0027】
図1に示すように、本例の射出成形機は、横長に形成されたメインフレーム1上の長さ方向に、型締装置2と射出装置3とを対向に搭載してなる。型締装置2の外周は、安全カバー4にて覆われており、該安全カバー4の一部には、成形品の取り出しなどの所要の作業を可能にするための安全ドア5が、メインフレーム1の長さ方向にスライド可能に設けられている。その他、図1中の符号6は原料樹脂供給用のホッパ、符号7はスクリュが内蔵された加熱筒、符号8は成形機制御装置の表示・入力部を示している。
【0028】
型締装置2には、図2に示すように、固定側金型(図示省略)が取り付けられる固定盤11と、可動側金型(図示省略)が取り付けられる可動盤12とが備えられており、これら固定盤11及び可動盤12は、メインフレーム1上において対向に配置される。固定盤11はメインフレーム1上に固定され、可動盤12はメインフレーム1上に移動可能に取り付けられていて、可動盤12は、図示しない駆動機構を駆動することにより、固定盤11に接近する型締方向及び固定盤11から離隔する型開方向に移動する。安全ドア5は、固定盤11と、可動盤12を介して固定盤11と対向に配置された図示しない保持盤との間に橋架されたガイドレール13にスライド可能に取り付けられており、適宜開閉できるようになっている。
【0029】
以下、本発明に係る安全装置の第1実施形態を、図2図11を用いて説明する。
【0030】
実施形態に係る安全装置20は、これらの図に示すように、固定盤11と可動盤12との間に橋架された安全バー21と、可動盤12に取り付けられたストッパ22と、安全ドア5に取り付けられたドッグ部材23と、ドッグ部材23により上下動されるラック24と、安全バー21に取り付けられてラック24と噛み合わされた平歯車25とから構成される。ドッグ部材23、ラック24及び平歯車25は、安全ドア5の開閉動作に連動して安全バー21を回転駆動する安全バー回動手段を構成する。また、ラック24は、安全バー21に一定方向のトルクを付与する回転トルク付与手段としても機能する。
【0031】
安全バー21は、図3に示すように、ストッパ22を係合するための固定歯26が長さ方向に複数個形成された本体部27と、該本体部27の一端部に設けられた偏心軸28とからなる。なお、安全バー21としては、本体部27と偏心軸28とが1つの素材から削り出されたものを用いることもできるが、安価に製造するため、それぞれ別体に形成された本体部27と偏心軸28を、これら本体部27及び偏心軸28のいずれか一方に形成された雄ねじと、いずれか他方に形成された雌ねじを用いて螺合する等の適宜の手段を用いて一体化したものを用いることが望ましい。偏心軸28の軸心O2は、図4に示すように、本体部27の軸心O1を介して固定歯26の形成部分と反対側に配置される。固定歯26は、ストッパ22を内挿するための平坦面26aと、ストッパ22を係合するための垂直面26bと、ストッパ22の内挿及び離脱を容易化するための傾斜面26cとから構成されており、本体部27の長さ方向に一定ピッチで形成されている。垂直面26bは平坦面26aの偏心軸28側に形成され、傾斜面26cは平坦面26aを介してその反対側に形成される。偏心軸28の外面には、平歯車25が同心に取り付けられる。
【0032】
上述のように構成された安全バー21は、図6図9に示すように、偏心軸28が軸受30を介して固定盤11に連結されると共に、本体部27が可動盤12に開設された安全バー貫通孔31内に貫通される。これにより、安全バー21は、互いに対向に配置された固定盤11と可動盤21との間に橋架される。
【0033】
ストッパ22は、安全バー21に形成された固定歯26の平坦面26a内に挿入可能な板厚を有する板材をもってバー状に形成されており、その一端が連結ピン22aを介して可動盤12に回動可能に取り付けられている。可動盤12におけるストッパ22の設定位置は、図5(a)に示すように、固定歯26が横向きになるように安全バー21を回動したときには固定歯26に係合せず、この状態から偏心軸28の軸心O2を中心として安全バー21を90度回転し、図5(b)に示すように、固定歯26を垂直上向きに向けたときには固定歯26と係合するように調整される。また、これらの各図から明らかなように、ストッパ22と安全バー21の外周面とは、固定歯26の位置に関わりなく互いに接触しないように位置関係が調整される。
【0034】
なお、図4及び図5の例では、本体部27の断面形状を円形としたが、図10に示すように、角形とすることもできる。図10図5(b)との比較から明らかなように、角形断面の本体部27Aの一辺の長さSと丸形断面の本体部27の直径Dとを同一としたとき、角形断面の本体部27Aは、丸形断面の本体部27に比べて、固定歯26をストッパ22に係合させたときの固定歯26とストッパ22の接触面積Aを大きくすることができる。よって、比較的小径の本体部27Aを用いて型締方向への可動盤の移動を防止すること、或いは、丸形断面の本体部27と同等サイズの角形断面の本体部27Aを用いて可動盤の停止力の強化を図ることができる。
【0035】
また、図4及び図5の例では、偏心軸28の軸心O2を、本体部27の軸心O1を介して固定歯26の形成部分と反対側に配置したが、図11に示すように、偏心軸28の軸心O2を、本体部27の軸心O1と固定歯26の中心部分とをつなぐ線分に対して直交する方向に配置することもできる。このようにすると、図11図5(a)(b)との比較から明らかなように、偏心軸28の軸心を中心として安全バー21を一定角度回動したときの、ストッパ22の設定位置に対する固定歯26の移動距離を最大にすることができるので、固定歯26をストッパ22との係合位置から係合解除位置まで移動するための安全バー21の回転角度を最小にすることができる。よって、安全バー21の回動機構を簡略化できると共に、安全バー21の回動性を良好なものにすることができる。
【0036】
ドッグ部材23は、図8及び図9に示すように、板状体をもって山型に形成されており、溶接やビス止めなどの所要の手段をもって安全ドア5の内面に取り付けられている。ラック24は、軸受30の外面に上下動自在に取り付けられており、その外面にはローラ32が備えられている。ローラ32は、ドック部材23の移動経路上に配設されており、安全ドア5を閉じ方向に移動する過程でドッグ部材23と接触し、安全ドア5を更に閉じ方向に移動したときに、ドッグ部材23の傾斜面に沿って上向きに移動されるようになっている。ラック24の歯は、安全バー21の偏心軸28に固定された平歯車25と噛み合わされており、その上下動に応じて、安全バー21を所定の方向に回転駆動する。なお、ドッグ部材23の形状及びドア部材5に対するドッグ部材23の取付位置は、ドア部材5を完全に閉じたときに、ラック24が所定の高さ位置まで移動されてその状態を保持すると共に、ドア部材5が閉鎖状態から若干量(例えば、オペレータの手指が入る程度)開いたときに、ラック24がその可動範囲の最低位置まで移動されてその状態を保持するように設計される。また、ドッグ部材23によって上下動されるラック24の高低差とラック24及び平歯車25の歯数は、安全バー21を90度回転させるに足る値に設定される。
【0037】
以下、本実施形態に係る安全装置の動作について説明する。
【0038】
安全ドア5が閉じられている状態においては、ラック24がローラ32を介してドック部材23により上向きに移動されており、図5(a)及び図7に示すように、固定歯26が横向きとなる位置まで安全バー21が回転されている。したがって、これらの各図に示すように、固定歯26とストッパ22との係合が解除され、可動盤12は型締方向及び型開方向に自在に移動することができて、一連の射出成形動作を行うことができる。
【0039】
この状態から安全ドア5が開放されると、ローラ32とドック部材23との当接が解除されるので、ラック24が自重によって下向きに移動し、図5(b)及び図9に示すように固定歯26が垂直上向きとなる位置まで安全バー21が回転される。したがって、これらの各図に示すように、隣り合う2つの固定歯26の間にストッパ22が嵌り込み、仮にこの状態から可動盤12が型閉方向に移動しても、ストッパ22が固定歯26の垂直面26bに係合されるので、可動盤12の型締方向への移動が阻止される。
【0040】
しかしながら、ストッパ22は可動盤12に回転可能にピン結合されているため、隣り合う2つの固定歯26の間にストッパ22が嵌り込んだ状態から、可動盤12を型開方向に移動した場合には、ストッパ22の自由端は固定歯26の傾斜面26cに沿って上向きに回動し、固定歯26を順次乗り越えてゆく。よって、可動盤12を所定の型開位置まで移動することができる。
【0041】
本実施形態に係る射出成形機の安全装置は、安全バー21として、ストッパ22を係合するための固定歯26が長さ方向に複数個形成された本体部27と、該本体部27の端部に設けられた偏心軸28とからなるものを用いたので、偏心軸28を回転駆動することにより、固定歯26を、可動盤12に取り付けられたストッパ22と係合不能な位置から係合可能な位置まで突出させたり、ストッパ22と係合可能な位置から係合不能な位置まで退避させることができる。したがって、安全バー21にストッパを常時接触させる必要がなく、安全バー21とストッパ22との摺動に伴う摩耗粉の発生や異音の発生を抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る安全装置は、安全バー21の回動手段を、安全バー21の偏心軸28に固定された平歯車25と、該平歯車25に噛み合わされたラック24と、安全ドア5に取り付けられ、安全ドア5の開閉動作に伴ってラック24を駆動するドッグ部材23とから構成するので、安全ドア5の開閉操作に伴って安全バー21を確実に回転駆動することができる。
【0043】
以下、本発明に係る安全装置の第2実施形態を、図12及び図13を用いて説明する。
【0044】
これらの図から明らかなように、第2実施形態に係る安全装置は、断面形状が角型の本体部27Aを備えた安全バー21を用いたことを特徴とする。また、安全バー21に常時周方向の回転トルクを付与する回転トルク付与手段として、安全バー21と固定盤11との間に張設されたコイルばね(戻しばね)41を備えたことを特徴とする。更には、コイルばね41により付与される回転トルクに抗して、固定歯26とストッパ22との係合が解除される方向に安全バー21を回動する安全バー回動手段として、安全バー21に一端が固定され、安全バー21の半径方向に突出されたレバー42と、レバー42の先端部に取り付けられたローラ43と、案内ドア5の内面に取り付けられ、安全ドア5の閉鎖時にローラ43と係合して、固定歯26とストッパ22との係合が解除される方向に安全バー21を回動するドッグ部材44とからなることを特徴とする。なお、ローラ43については、省略することもできる。その他については、第1実施形態に係る安全装置と同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
本実施形態に係る安全装置は、安全ドア5を閉方向に移動したとき、安全ドア5に取り付けられたドッグ部材44とレバー42の先端部に取り付けられたローラ43とが当接し、安全ドア5を更に閉方向に移動すると、ドッグ部材44の傾斜によりレバー42の先端部が押し上げられる。これにより、安全バー21が一方向に回転されて、ストッパ22と固定歯26との係合が解除される。したがって、可動盤12の型締方向への移動が可能になる。また、この状態から安全ドア5を開方向に移動すると、安全ドアに取り付けられたドッグ部材44とレバー42の先端部に取り付けられたローラ43との当接が解除され、コイルばね(戻しばね)41の弾性力により安全バー21が原位置に復帰する。これにより、ストッパ22に固定歯26が係合されて、可動盤12の型締方向への移動が阻止される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、射出成形機やダイカストマシンなどの成形機に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 メインフレーム
2 型締装置
3 射出装置
4 安全カバー
5 安全ドア
6 ホッパ
7 加熱筒
8 表示・入力部
11 固定盤
12 可動盤
13 ガイドレール
21 安全バー
22 ストッパ
22a 連結ピン
23 ドッグ部材
24 ラック
25 平歯車
26 固定歯
26a 平坦面
26b 垂直面
26c 傾斜面
27,27A 本体部
28 偏心軸
30 軸受
31 安全バー貫通孔
32 ローラ
41 コイルばね(戻しばね)
42 レバー
43 ローラ
44 ドッグ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図13