(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照しながら、本
実施形態に係る漏水探索装置および漏水探索方法
を詳細に説明する。
【0018】
本実施形態に係る漏水探索装置及び漏水探索方法は、非導電性配管内を流通する導電性流体に高周波電流を流し、導電性流体に沿って流れる高周波電流の磁界の強度を外部から認識することによって、非導電性配管の漏水個所を特定する。漏水個所では外部から認識できる磁界の強度が極端に減衰する。このため、非導電性配管内を導電性流体が圧送されていない場合でも、容易に漏水個所が特定できる。
【0019】
なお、本実施形態において、非導電性配管とは、たとえば塩ビ管を想定している。しかし、塩ビ管に限らず、たとえば、導電性配管の外周を被導電性材料で覆って配管としては被導電性としたものも含む。
【0020】
また、本実施形態において導電性流体とは、水(水道水、地下水など)を想定している。しかし、水に限らず、たとえば、流体の導電率が5μS/cm以上の流体であれば漏水個所を特定できる。
【0021】
(漏水探索装置の構成)
図1は、本実施形態に係る漏水探索装置の送信部の外観図である。
図2は、本実施形態に係る漏水探索装置の受信部および通報部の外観図である。
図3は、本実施形態に係る漏水探索装置を用いた漏水探索のイメージ図である。
【0022】
漏水探索装置10は、
図3に示すように、送信部11、受信部12、通報部13を備える。
【0023】
送信部11は、
図1に示すように、送信出力調整部111、インピーダンス調整部112、送信出力表示部113、および金属体80と接続する+端子と対地極と接続する−端子を備える。
【0024】
送信部11は、非導電性配管20に取付けられる金属体80を介して、非導電性配管20内を流通する導電性流体30に+端子より高周波電流40を送信する。高周波電流40は、非導電性配管20を中心に電磁波50を生成する。
【0025】
送信出力調整部111は、高周波電流40の送信出力強度を調整する。非導電性配管20の配管長に応じて送信出力強度を調整することで、配管長に応じた電磁波強度の減衰を補正する。
【0026】
インピーダンス調整部112は、導電性流体30のインピーダンスを適合させる。インピーダンス特性の異なる導電性流体30のインピーダンスを適合させることで、高周波電流40の電流成分を認識する。
【0027】
送信出力表示部113は、高周波電流40の送信出力強度をリアルタイムに表示する。操作者側は送信出力強度の表示を確認しながら、送信出力強度を調整する。
【0028】
受信部12は、
図2に示すように、アンテナ121、グリップ122、ボックス123を備える。ボックス123には、受信感度調整部124を備える。ボックス123に音響発生部125をさらに備えることもできる。受信部12は、高周波電流40が生成する電磁波50を外部70から受信する。
【0029】
アンテナ121は、外部70の地面または建造物の壁面の近いところで高周波電流40が生成する電磁波50を捕捉する。アンテナ121の形状およびグリップ122との取付け方は任意であるが、グリップ122とT字型に取付けることが好ましい。方向性が明確で、これを活かして非導電性配管の分流部や曲げ部にも追従しやすい。
【0030】
受信感度調整部124は、捕捉した電磁波50の強弱に応じて受信感度を調整する。受信感度をアップすることで、相対的に強度の弱い電磁波50が検出できるようになる。漏水箇所60では、
図3に示すように電磁波の入力感度が極端に低下するので、さらに漏水箇所を正確に特定するためには受信感度をアップすることが必要になる。一方、受信感度をダウンすることで、相対的に強度の強い電磁波50が検出できるようになり、逆に、相対的に強度の弱い電磁波50は検出できなくなる。
【0031】
音響発生部125は、電磁波の入力感度に応じた大きさの音響を発生する。操作者は音響の大きさにより、非導電性配管20の埋設位置を確認できる。
【0032】
通報部13は、
図2に示すように、受信部12のボックス123内に取付ける。通報部13は、受信された電磁波50の強弱により漏水箇所60を通報する。漏水箇所60に対応する外部70の位置A点においては、受信部12が他の箇所で検出する電磁波の強さよりも減衰するため、電磁波の入力感度は他の箇所よりも低い。通報部13は、受信感度調整部124により調整された受信感度に対する電磁波50の入力感度を表示することにより漏水箇所を通報する。なお、音響発生部125により通報することもできる。通報部13の詳細な動作については後述する。
【0033】
図3は、本発明に係る漏水探索装置10を用いた漏水探索のイメージ図である。
【0034】
図3に示すように、地中または建造物の壁内には非導電性配管20が埋設されている。非導電性配管20には、外部70から繋げられる金属体80が取付けられる。非導電性配管20内には、導電性流体30が流通し、非導電性配管20に破損個所があれば、漏水箇所60で漏水が発生する。
【0035】
本発明に係る漏水探索装置10は、送信部11の+端より金属体80を介して非導電性配管20内を流通する導電性流体30に高周波電流40を送信する。送信部11の−端は対地極に接続する。受信部12より高周波電流40が生成する電磁波50を外部70で受信しながら、図示する探索方向に前進する。通報部13より受信された電磁波の強弱により漏水箇所60に対応する外部70の位置A点を特定する。
【0036】
図4は、
図3のX方向で検出される電磁波の入力感度を示す図である。この図において、縦軸は受信部12で受信される電磁波の入力感度を示し、横軸は、金属体80から
図1に示した探索方向に向かう距離Xを示す。
【0037】
図を見れば明らかなように、受信部12で受信される、漏水箇所60に対応する外部70の位置A点における電磁波の入力感度は、他の箇所で受信される電磁波の入力感度よりも極端に減衰している。本発明に係る漏水探索装置10は、電磁波の入力感度が極端に減衰している位置を探索する。
【0038】
図5は、
図3の非導電性配管20を中心に生成する電磁波50のY方向における電磁波強度を示す図である。この図において、縦軸は高周波電流40が生成する電磁波強度を示し、横軸は、埋設管、すなわち非導電性配管20から
図3に示した外部70に向かう距離Yを示す。
【0039】
図を見れば明らかなように、電磁波強度は距離Yの増加に伴って距離Yの二乗に反比例しながら減衰する。
【0040】
(漏水探索装置の動作)
次に、本実施形態に係る漏水探索装置10の動作を説明する。
図6は、本発明に係る漏水探索装置10の動作フローチャートである。なお、
図6に示した動作フローチャートは、本実施形態に係る漏水探索方法の手順を示すものでもある。
【0041】
図6の動作フローチャートにおいて、段階S100の動作は漏水探索装置10の操作者(探索者)が行い、段階S200の動作は送信部11が行う。段階S300の動作は受信部12が行い、段階S400からS600の動作は通報部13が行う。
【0042】
<段階S100>
図3に示した漏水探索装置10の操作者が、漏水探索前に送信部11および受信部12に対して電磁波強度測定準備を実施する。この段階の具体的な処理は、
図7のフローチャートに示す。電磁波強度測定準備の詳細な処理は後述する。
【0043】
<段階S200>
操作者は、
図3に示すように、送信部11の+端子を金属体80に接続し、−端子に接続される対地極を地中に埋設する。操作者は送信部11の電源をオンさせる。送信部11は、電磁波強度測定準備段階で適宜調整後の高周波電流40を導電性流体30に送信し続ける。導電性流体30を流れる高周波電流40は電磁波50を生成する。電磁波50の強度は、非導電性配管20を中心とする入力感度が外部70から探索しやすい程度である。
【0044】
<段階S300>
操作者は、受信部12のアンテナ121を非導電性配管20の配管路上に位置させ、アンテナ121を非導電性配管20の配管路に沿って移動させる。受信部12は、非導電性配管20を中心に生成されている電磁波50を受信する。配管路上電磁波受信の詳細な処理は後述する。
【0045】
<段階S400>
操作者は、アンテナ121を非導電性配管20の配管路に沿って移動させ、配管路上を進む。
図3に示すように、非導電性配管20の漏水箇所60では、受信部12が受信する電磁波50の強度が極端に減衰する。通報部13は、電磁波50の強度が極端に減衰したときに漏水箇所60を特定するための通報を出力する。漏水個所探索の詳細な処理は後述する。
【0046】
<段階S500>
漏水箇所60が検出されたか否かについて判断する。漏水箇所60が検出されなかったときには、段階S300に移行して、その先の非導電性配管20の配管路上の漏水箇所60を同じ方法で探索する。
【0047】
<段階S600>
漏水箇所60が検出されたときには、操作者に漏水の検出を通報する。漏水の検出の通報は、通報部13に「漏水検出」という表示を出力することにより行っても良いし、音響発生部125から警報音を出力することにより行っても良い。
【0048】
次に、段階S100、段階S300、段階S400の詳細な処理を示すサブルーチンフローチャートについて説明する。
【0049】
図7は、
図6の動作フローチャートのステップS100のサブルーチンフローチャートである。
【0050】
<段階S101>
送信部11の+端子と内部に導電性流体30が流通する非導電性配管20に取付けた金属体80をケーブルで接続し、送信部11の−端子と接地極とを接続した状態で、送信部11の電源をONにして、導電性流体30に高周波電流40を送信する。金属体80は、非導電性配管20のバルブおよび継ぎ手部分等、導電性があって直接導電性流体30と接触していればよい。
【0051】
高周波電流40は非導電性配管20と対地間の電気的遮蔽作用により非導電配管20内の導電性流体20に流れ、非導電性配管20を中心とする電磁波50を生成する。
【0052】
<段階S102>
送信出力調整部111より、非導電性配管20の管径および漏水探索範囲に合せて高周波電流40の送信出力強度を適宜調整する。管径が太いまたは漏水探索範囲が広いときには、比較的大きな送信出力強度に調整する。送信出力表示部113の表示を確認しながら、調整することが好ましい。
【0053】
インピーダンス調整部112より、導電性流体30のインピーダンスを適合させる。
【0054】
<段階S103>
受信部12の電源をONにして、アンテナ121より外部70の地面または壁面の近いところで高周波電流40が生成する電磁波50を捕捉する。
【0055】
<段階S104>
受信感度調整部124より、捕捉した電磁波50の強弱に応じて受信感度を調整する。通報部13の表示を確認しながら、後述する漏水探索がしやすい感度に設定することが好ましい。この段階において、必要に応じて送信出力強度も合わせて適宜調整し、電磁波強度測定準備を完了する。
【0056】
図8は、
図6の動作フローチャートのステップS300のサブルーチンフローチャートである。
【0057】
<段階S301>
配管路の探索が必要か否かについて判断される。漏水箇所60を探索する前に、埋設された非導電性配管20の埋設位置がわかるときには、配管路が既に特定できるため、配管路の探索は不要である。
【0058】
<段階S302>
配管路の探索が必要であるときには、さらに当該配管路の探索は分流位置からの配管路探索か否かについて判断される。分流位置からの配管路探索ではないときには、既知の配管路によりその探索方向も決めているため、直接段階S306へ移行する。
【0059】
分流位置とは上記の金属体80のように、外部70に露出される単なる二つの非導電性配管20の継ぎ部およびバルブ部の位置であってよいが、これに限らず、埋設された非導電性配管20の任意の継ぎ部の位置も含む。継ぎ部の埋設位置によっては複数の非導電性配管20が互いに接続し、導電性流体30を分流する。
【0060】
<段階S303>
分流位置からの配管路探索であるときには、探索方向が決まっていないため、分流位置を中心に周囲の電磁波50を受信しながら、電磁波強度測定を行う。
【0061】
<段階S304>
周囲で受信される電磁波50において、相対的に電磁波50の入力感度が高い位置には、非導電性配管20が埋設されていると判断され、配管路を特定する。
【0062】
複数の非導電性配管20が埋設されているときには、各非導電性配管20の埋設位置における電磁波の入力感度は互いに異なることもあるが、それぞれの探索範囲内で相対的に入力感度が高い(後述する)ため、配管路を特定することができる。
【0063】
<段階S305>
特定した一または複数の配管路のうち、一つを選択して、分流位置からの方向を探索方向と決める。
【0064】
<段階S306>
探索方向を前進し、探索方向と交差する方向に受信部12を移動しながら電磁波50を受信し、電磁波強度測定を行う。
【0065】
<段階S307>
探索方向と交差する方向に受信される電磁波50のうち、相対的に電磁波の入力感度が高い位置には、非導電性配管20が埋設されていると判断され、配管路を特定する。
【0066】
図9は、配管路探索イメージ図である。非導電性配管20内の導電性流体30に流れる高周波電流40が生成する電磁波50は、
図5で示したように電磁波強度は距離Yの増加に伴って距離Yの二乗に反比例しながら減衰する。
【0067】
非導電性配管20中心から距離aを離れた外部70の位置B点においては、電磁波強度が相対的に高い電磁波50aが受信され、電磁波の入力感度も相対的に高い。一方、非導電性配管20中心から距離b(b>a)を離れた外部70の位置C、D点においては、電磁波強度が相対的に低い電磁波50bが受信され、電磁波の入力感度も相対的に低い。
【0068】
したがって、相対的に電磁波の入力感度の高い外部70位置B点に、非導電性配管20が埋設されていると判断され、配管路を特定する。
【0069】
図10は、
図6の動作フローチャートのステップS400のサブルーチンフローチャートである。
【0070】
<段階S401>
特定した非導電性配管20の配管路上の電磁波強度測定を行い、受信される電磁波50の入力感度の変化を通報部13の表示より確認し、入力感度の急降下(極端な減衰)が発生するか否かについて判断する。電磁波50の入力感度の急降下が発生していなければ、通報部13は漏水箇所不検出と判断する。
【0071】
<段階S402>
電磁波50の入力感度の急降下が発生していれば、受信感度調整部124により、受信感度をアップする。
【0072】
非導電性配管20の埋設深度が深くなったときにも、電磁波50の入力感度の急降下が発生するが、受信感度をアップすることで、相対的に強度の弱い電磁波も検出できる。
【0073】
一方、漏水箇所60においては、
図11で示すように、非導電性配管20内の導電性流体30が対地間と短絡状態になり、通常電磁波強度の電磁波50dを受信する代わりに、電磁波強度が著しく減衰した電磁波50cを受信する。この場合、受信感度をアップしても、電磁波50cの入力感度が得られにくい。
【0074】
さらに、漏水箇所60を通って先の配管路を探索方向に前進すると、再び電磁波50の入力感度が徐々に上昇する。漏水箇所60で漏れなかった導電性流体30に高周波電流40が流れるため、再び電磁波50の強度が強くなるからである。
【0075】
一方、非導電性配管20の埋設深度の変化により変化した受信感度は、その先の配管路を探索方向に前進しても、電磁波50の入力感度はあまり変化しない。
【0076】
したがって、通報部13は漏水箇所60を検出したと判断できる。
【0077】
<段階S403>
受信感度をアップすることで、電磁波50の入力感度が再度得られるか否かについて判断する。電磁波50の入力感度が再度得られるときには、通報部13は漏水箇所60が検出されなかったと判断する。
【0078】
<段階S404>
受信感度をアップしても、電磁波50の入力感度が得られないときには、通報部13は漏水箇所60が検出されたと判断する。
【0079】
以上のように、本実施形態に係る漏水探索装置によれば、漏水音の聞き分けができる熟練作業員を要することなく、かつ非導電性配管に特別な措置を取ることなく、容易に漏水箇所を検出することができる。また、本実施形態に係る漏水探索方法によれば、事前に配管路の探索をする必要はなく、配管路を探索しながら、容易に漏水箇所を検出することができる。
【0080】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。