特許第6071911号(P6071911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071911
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】難燃性物質および中間体としての使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/53 20060101AFI20170123BHJP
   C08F 16/32 20060101ALI20170123BHJP
   C08F 20/30 20060101ALI20170123BHJP
   C08F 12/32 20060101ALI20170123BHJP
   C07F 9/6574 20060101ALI20170123BHJP
   C07F 9/32 20060101ALI20170123BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20170123BHJP
   C09K 21/14 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C07F9/53CSP
   C08F16/32
   C08F20/30
   C08F12/32
   C07F9/6574 A
   C07F9/32
   C09K21/12
   C09K21/14
【請求項の数】19
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2013-556264(P2013-556264)
(86)(22)【出願日】2013年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2013000480
(87)【国際公開番号】WO2013114866
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2015年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2012-19095(P2012-19095)
(32)【優先日】2012年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390016377
【氏名又は名称】片山化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】藤野 博良
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 智子
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−303260(JP,A)
【文献】 特開2006−251715(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/111121(WO,A1)
【文献】 特開2006−241241(JP,A)
【文献】 特開2006−001876(JP,A)
【文献】 特開2006−089534(JP,A)
【文献】 Polymer,2005年,46,p.6923-6932
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C07F 9/53
C07F 9/32
C07F 9/6574
C08F 12/32
C08F 16/32
C08F 20/30
C09K 21/12
C09K 21/14
・DB
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(A):
【化1】

で表される化合物であって、
ここで、
およびRはそれぞれ独立して、水素、アリール基、置換アリール基、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アミノ基、置換アミノ基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基または置換シクロアルキルオキシ基であるか、あるいはRとRとが一緒になって、さらなる環状骨格を形成し;
およびRは、それぞれ独立して、同一または異なるラジカル重合可能基であり、該ラジカル重合可能基は、非置換の、または、それぞれ独立してアルキル基もしくはアルコキシ基である置換基で置換された、以下の式:
【化8】

で表される基であり、
置換または非置換の
【化8A】

は、3位または4位に存在し
、RおよびRは、それぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基もしくは置換アルキル基、アルケニル基もしくは置換アルケニル基、アルキニル基もしくは置換アルキニル基、またはアルケニルカルボニル基もしくは置換アルケニルカルボニル基、アルコキシ基もしくは置換アルコキシ基、シクロアルキル基もしくは置換シクロアルキル基、アリール基もしくは置換アリール基、アリールオキシ基もしくは置換アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基もしくは置換シクロアルキルオキシ基、またはアミノ基もしくは置換アミノ基を示す、
化合物。
【請求項2】
前記RおよびRは同じ基であるか、前記RおよびRは一方がアルコキシ基であり他方がアリール基であるか、または、前記RおよびRが一緒になってさらなる環状骨格を形成するものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式(A)は、以下の式:
【化3】


【化4】
【化5】


【化6】

(ここで、Rcは、アルキルまたは置換アルキルである)、または
【化7】
(ここで、RdおよびReは、それぞれ独立して、アルキルまたは置換アルキルである)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物を含む、難燃剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物を含む、難燃性高分子の原料。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物が単独重合または共重合した重合体。
【請求項7】
前記重合体は、ラジカル重合性モノマーと共重合したものである、請求項に記載の重合体。
【請求項8】
前記ラジカル重合性モノマーは、スチレンおよびアクリル酸エステル類からなる群より選択される、請求項に記載の重合体。
【請求項9】
請求項に記載の重合体を含む、難燃剤。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物を単独重合または共重合させる工程を包含する、該化合物が単独重合または共重合した重合体の製造方法。
【請求項11】
以下の式:
【化10】

で表される化合物であって、
ここで、R11、R12、R13、R14、およびR15の少なくとも1つがラジカル重合可能基であり、R21、R22、R23、R24およびR25の少なくとも1つがラジカル重合可能基であり、R31、R32、R33、R34およびR35の少なくとも1つがラジカル重合可能基であり、該ラジカル重合可能基は、非置換の、または、それぞれ独立してアルキル基もしくはアルコキシ基である置換基で置換された、以下の式:
【化12】


で表される基であり、
置換または非置換の
【化12A】

は、3位または4位に存在し
11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35のうち他のものは、それぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アルケニルカルボニル基、置換アルケニルカルボニル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、置換シクロアルキルオキシ基、アミノ基または置換アミノ基を示す、
化合物。
【請求項12】
以下の式:
【化11】

で表される請求項1に記載の化合物であって、
ここで、
13、R23およびR33は、独立して、同一または異なるラジカル重合可能基であり、該ラジカル重合可能基は、非置換の、または、それぞれ独立してアルキル基もしくはアルコキシ基である置換基で置換された、以下の式:
【化12】


で表される基であり、
置換または非置換の
【化12B】

は、3位または4位に存在し
11、R12、R14、R15、R21、R22、R24、R25、R31、R32、R34およびR35は、それぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アルケニルカルボニル基、置換アルケニルカルボニル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、置換シクロアルキルオキシ基、アミノ基または置換アミノ基を示す、
化合物。
【請求項13】
請求項11または12に記載の化合物を含む、難燃剤。
【請求項14】
請求項11または12に記載の化合物を含む、難燃性高分子の原料。
【請求項15】
請求項11または12に記載の化合物が単独重合または共重合した重合体。
【請求項16】
前記重合体は、ラジカル重合性モノマーとの共重合したものである、請求項5に記載の重合体。
【請求項17】
前記ラジカル重合性モノマーは、スチレンおよびアクリル酸エステル類からなる群より選択される、請求項6に記載の重合体。
【請求項18】
請求項5に記載の重合体を含む、難燃剤。
【請求項19】
請求項11または12に記載の化合物を単独重合または共重合させる工程を包含する、該化合物が単独重合または共重合した重合体の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性物質および重合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性物質は、種々の用途に用いられるため、広い分野で用いられる。
【0003】
その中でも、架橋または重合することができる物質は、それ自体が難燃剤として使用することができる可能性を有する他、高分子または他の物質の修飾付加剤としての利用が期待されるため応用範囲はさらに広くなる。
【0004】
特許文献1(WO2004/111121)は、分子中に反応基を二つ持つ非ハロゲン系難燃剤を開示する。ポリマー架橋剤としての利用とされる。リンを含んでいるため難燃効果も期待できるとされている。しかし、重合性が低いとされている。
【0005】
非特許文献1(C.S. Wang et al., J of Applied Polymer Sci. 73、351(1999))はエポキシ樹脂への導入が可能な物質を開示している。難燃性のデータが記載されているが、構造上重合はできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2004/111121
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】C. S. Wang et al., J of Applied Polymer Sci. 73、351(1999)
【非特許文献2】C. S. Wang, ACS International Conference Paper Polymeric Materials, Sci. and Eng. 91. 394 (2004)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、難燃性物質および重合材料等を提供する。より詳細には、本発明は以下を提供する。
(1)以下の式(A):
【化101】
で表される化合物であって、
ここで、
およびRはそれぞれ独立して、水素、アリール基、置換アリール基、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アミノ基、置換アミノ基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基または置換シクロアルキルオキシ基であるか、あるいはRとRとが一緒になって、さらなる環状骨格を形成し;
およびRは、それぞれ独立して、同一または異なるラジカル重合可能基であり;
、RおよびRは、それぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基もしくは置換アルキル基、アルケニル基もしくは置換アルケニル基、アルキニル基もしくは置換アルキニル基、またはアルケニルカルボニル基もしくは置換アルケニルカルボニル基、アルコキシ基もしくは置換アルコキシ基、シクロアルキル基もしくは置換シクロアルキル基、アリール基もしくは置換アリール基、アリールオキシ基もしくは置換アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基もしくは置換シクロアルキルオキシ基、またはアミノ基もしくは置換アミノ基を示し、
ただし、式(A)が
【化102】


であり、RおよびRの両方がアリルである場合、R〜Rがすべて水素であるものは除く、
化合物。
(2) 前記RおよびRは同じ基であるか、前記RおよびRは一方がアルコキシ基であり他方がアリール基であるか、または、前記RおよびRが一緒になってさらなる環状骨格を形成するものである、項目(1)に記載の化合物。
(3) 前記式(A)は、以下の式:
【化103】


【化104】
【化105】


【化106】

(ここで、Rcは、アルキルまたは置換アルキルである)、または
【化107】
(ここで、RdおよびReは、それぞれ独立して、アルキルまたは置換アルキルである)である、項目(1)または(2)に記載の化合物。
(4)前記ラジカル重合可能基は、末端に不飽和二重結合を有する基である、項目(1)〜(3)のいずれか1項に記載の化合物。
(5)前記ラジカル重合可能基は、アリル、置換アリル、スチレン、置換スチレン、アクリル、置換アクリル、メタクリルまたは置換メタクリルである、項目(1)〜(4)のいずれか1項に記載の化合物。
(6)前記ラジカル重合可能基は、スチレン、置換スチレン、アクリル、置換アクリル、メタクリルまたは置換メタクリルである、項目(1)〜(5)のいずれか1項に記載の化合物。
(7)前記ラジカル重合可能基が以下の式:
【化108】

で示されるスチレンまたは置換スチレンであり、該メチレン基または置換メチレン基は、3位または4位に存在し、置換スチレンおよび置換メチレン基の置換基はそれぞれ独立してアルキル基またはアルコキシ基である、項目(1)〜(6)のいずれか1項に記載の化合物。
(8)前記ラジカル重合可能基がアクリル、置換アクリル、メタクリルまたは置換メタクリルであり、該アクリル、置換アクリル、メタクリルまたは置換メタクリルは、以下の式:
【化109】
で表され、
式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基または置換アリール基であり、
は、水素またはアルキル基である、項目(1)〜(7)のいずれか1項に記載の化合物。
(9)項目(1)〜(8)のいずれか1項に記載の化合物を含む、難燃剤。
(10)項目(1)〜(8)のいずれか1項に記載の化合物を含む、難燃性高分子の原料。
(11)項目(1)〜(8)のいずれか1項に記載の化合物が単独重合または共重合した重合体。
(12)前記重合体は、ラジカル重合性モノマーと共重合したものである、項目(11)に記載の重合体。
(13)前記ラジカル重合性モノマーは、スチレンおよびアクリル酸エステル類からなる群より選択される、項目(12)に記載の重合体。
(14)項目(11)〜(13)のいずれか1項に記載の重合体を含む、難燃剤。
(15)項目(1)〜(8)のいずれか1項に記載の化合物を単独重合または共重合させる工程を包含する項目(11)〜(13)のいずれか1項に記載の重合体の製造方法。
(16)以下の式:
【化110】

で表される化合物であって、
ここで、R11、R12、R13、R14、およびR15の少なくとも1つがラジカル重合可能基であり、R21、R22、R23、R24およびR25の少なくとも1つがラジカル重合可能基であり、R31、R32、R33、R34およびR35の少なくとも1つがラジカル重合可能基であり、R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35のうち他のものは、それぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アルケニルカルボニル基、置換アルケニルカルボニル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、置換シクロアルキルオキシ基、アミノ基または置換アミノ基を示す、
化合物。
(17)以下の式:
【化111】

で表される項目(16)に記載の化合物であって、
ここで、
13、R23およびR33は、独立して、同一または異なるラジカル重合可能基であり;
11、R12、R14、R15、R21、R22、R24、R25、R31、R32、R34およびR35は、それぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アルケニルカルボニル基、置換アルケニルカルボニル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、置換シクロアルキルオキシ基、アミノ基または置換アミノ基を示す、
化合物。
(18)前記ラジカル重合可能基は末端に不飽和二重結合を有する基である、項目(16)または(17)に記載の化合物。
(19)前記ラジカル重合可能基は、アリルもしくは置換アリル、スチレンもしくは置換スチレン、アクリルもしくは置換アクリルまたはメタクリルもしくは置換メタクリルである、項目(17)または(18)に記載の化合物。
(20)前記ラジカル重合可能基は、スチレンもしくは置換スチレン、アクリルもしくは置換アクリルまたはメタクリルもしくは置換メタクリルである、項目(17)〜(19)のいずれか1項に記載の化合物。
(21)前記ラジカル重合可能基は以下の式:
【化112】

で示されるスチレンもしくは置換スチレンであり、該スチレンもしくは置換スチレンのメチレン基または置換メチレン基は、3位または4位に存在し、置換スチレンおよび置換メチレン基の置換基はそれぞれ独立してアルキル基またはアルコキシ基である、項目(17)〜(20)のいずれか1項に記載の化合物。
(22)前記ラジカル重合可能基がアクリルもしくは置換アクリルまたはメタクリルもしくは置換メタクリルであり、該アクリルもしくは置換アクリルまたはメタクリルもしくは置換メタクリルは、以下の式:
【化113】
で表され、
式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基または置換アリール基であり、
は、水素またはアルキル基である、項目(17)〜(21)のいずれか1項に記載の化合物。
(23)項目(16)〜(22)のいずれか1項に記載の化合物を含む、難燃剤。
(24)項目(16)〜(22)のいずれか1項に記載の化合物を含む、難燃性高分子の原料。
(25)項目(16)〜(22)のいずれか1項に記載の化合物が単独重合または共重合した重合体。
(26)前記重合体は、ラジカル重合性モノマーとの共重合したものである、項目25に記載の重合体。
(27)前記ラジカル重合性モノマーは、スチレンおよびアクリル酸エステル類からなる群より選択される、項目(26)に記載の重合体。
(28)項目(25)〜(27)のいずれか1項に記載の重合体を含む、難燃剤。
(29)項目(16)〜(22)のいずれか1項に記載の化合物を単独重合または共重合させる工程を包含する項目(25)〜(27)のいずれか1項に記載の重合体の製造方法。
本発明は、上記各項目の特徴をさらに組み合わせたものも包含することが理解される。

【0009】
このように、本発明は、重合体として利用可能な難燃剤または難燃剤原料として利用可能な新規材料を提供する。本発明は、従来エポキシ樹脂として使用されているDOPO(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等
【0010】
【化1】
【0011】
をさらに改善し、重合体として利用可能な難燃剤を提供するにいたった。
【0012】
従って、本発明のこれらおよび他の利点は、以下の詳細な説明を読めば、明白である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、耐熱性、寸法安定性、難燃性に優れた重合体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】実施例1のW−1oのNMRデータ(H−NMR)である。
図1B】実施例1のW−1oのNMRデータ(31P−NMR)である。
図2A】実施例2のW−1hのNMRデータ(H−NMR)である。
図2B】実施例2のW−1hのNMRデータ(31P−NMR)である。
図3A】実施例3のW−4oのNMRデータ(H−NMR)である。
図3B】実施例3のW−4oのNMRデータ(31P−NMR)である。
図4A】実施例4のW−2hのNMRデータ(H−NMR)である。
図4B】実施例4のW−2hのNMRデータ(31P−NMR)である。
図4-2】実施例4のW−2hの質量スペクトルデータを示す。
図5A】実施例5のW−2oのNMRデータ(H−NMR)である。
図5B】実施例5のW−2oのNMRデータ(31P−NMR)である。
図6A】実施例6のW−3hのNMRデータ(H−NMR)である。
図6B】実施例6のW−3hのNMRデータ(31P−NMR)である。
図7A】実施例7のW−3oのNMRデータ(H−NMR)である。
図7B】実施例7のW−3oのNMRデータ(31P−NMR)である。
図7-2】実施例7のW−3oの質量スペクトルデータを示す。
図8A】実施例8のT−4のNMRデータ(H−NMR)である。
図8B】実施例8のT−4のNMRデータ(31P−NMR)である。
図9A】実施例9のW−6oのNMRデータ(H−NMR)である。
図9B】実施例9のW−6oのNMRデータ(31P−NMR)である。
図10A】実施例10のW−7oのNMRデータ(H−NMR)である。
図10B】実施例10のW−7oのNMRデータ(31P−NMR)である。
図11A】実施例11のW−8oのNMRデータ(H−NMR)である。
図11B】実施例11のW−8oのNMRデータ(31P−NMR)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0016】
(用語の定義等)
本明細書中、「ハロゲン」とはフッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
【0017】
本明細書中、「アルキル」とは、炭素数1〜15、例えば、炭素数1〜10、例えば、炭素数1〜6、例えば、炭素数1〜3の直鎖または分枝状のアルキルを包含し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、n−へプチル、イソヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、n−ノニルおよびn−デシル等が挙げられる。
【0018】
本明細書中、「アルコキシ」、「ハロゲノアルキル」、「ヒドロキシアルキル」、「ハロゲノアルコキシ」、「ヒドロキシアルコキシ」、「アルコキシカルボニル」、「ハロゲノアルコキシカルボニル」、「アルコキシカルボニルアルキル」、「アルキルアミノ」、「アミノアルキル」、「アルコキシアルコキシ」、「アルコキシアルケニル」、「アルコキシアルケニルオキシ」、「アルコキシカルボニルアルケニル」、「アルコキシアルキニル」、「アルコキシカルボニルアルキニル」、「アルキルカルバモイル」、「ヒドロキシアルキルカルバモイル」、「アルコキシイミノ」、「アルキルチオ」、「アルキルスルホニル」、「アルキルスルホニルアミノ」、「アルキルスルホニルアルキルアミノ」、「アルキルスルホニルイミノ」、「アルキルスルフィニルアミノ」、「アルキルスルフィニルアルキルアミノ」、「アルキルスルフィニルイミノ」、「アルキルスルファモイル」、「アルキルスルフィニル」、「シクロアルキル」、「シクロアルコキシ」、「シクロアルコキシカルボニル」、「シクロアルキルアミノ」、「シクロアルキルカルバモイル」、「シクロアルキルアルキル」、「シクロアルキルアルコキシ」、「シクロアルキルアルキルアミノ」、「シクロアルキルアルコキシカルボニル」、「シクロアルキルアルキルカルバモイル」、「アリールアルキル」、「アリールアルコキシ」、「アリールアルキルアミノ」、「アリールアルコキシカルボニル」、「アリールアルキルカルバモイル」、「複素環アルキル」、「複素環アルコキシ」、「複素環アルキルアミノ」、「複素環アルコキシカルボニル」、「複素環アルキルカルバモイル」、「ヘテロアリールアルキル」、「ヘテロアリールアルコキシ」のアルキル部分も上記「アルキル」と同様である。
【0019】
本明細書中、「置換アルキル」、「置換アルコキシ」の置換基としては置換基群αから選択される1以上の基が挙げられる。
【0020】
ここで置換基群αとは、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲノアルコキシ、ヒドロキシアルコキシ、アルコキシアルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、アシルアミノ、アルキルアミノ、イミノ、ヒドロキシイミノ、アルコキシイミノ、アルキルチオ、カルバモイル、アルキルカルバモイル、ヒドロキシアルキルカルバモイル、スルファモイル、アルキルスルファモイル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニルアミノ、アルキルスルホニルアルキルアミノ、アルキルスルホニルイミノ、アルキルスルフィニルアミノ、アルキルスルフィニルアルキルアミノ、アルキルスルフィニルイミノ、シアノ、ニトロ、炭素環式基および複素環式基(それぞれの炭素環および複素環はハロゲン、アルキル、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群から選択される1以上の基で置換されていてもよい)からなる群である。
【0021】
したがって、本明細書において「アルコキシ」とは、アルキル基が酸素原子に結合した構造であるため、本明細書中、「アルコキシ」とは、炭素数1〜15、例えば、炭素数1〜10、例えば、炭素数1〜6、例えば、炭素数1〜3の直鎖または分枝状のアルコキシ、すなわちアルキルが結合した酸素に結合した基を包含し、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n−ブチルオキシ、イソブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、n−ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、n−へプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、n−ノニルオキシおよびn−デシルオキシ等が挙げられる。
【0022】
本明細書中、「置換アルコキシ」、「置換アルコキシカルボニル」の置換基としては上記置換基群αから選択される1以上の基が挙げられる。
【0023】
本明細書中、「ハロゲノアルキル」の態様としては、トリフルオロメチル、フルオロメチル、トリクロロメチル等が挙げられる。
【0024】
本明細書中、「ハロゲノアルコキシ」の態様としては、トリフルオロメトキシ、フルオロメトキシ、トリクロロメトキシ等が挙げられる。
【0025】
本明細書中、「アルケニル」とは、任意の位置に1以上の二重結合を有する炭素数2〜15、例えば、炭素数2〜10、例えば、炭素数2〜6、例えば、炭素数2〜4の直鎖または分枝状のアルケニルを包含する。具体的にはビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、プレニル、ブタジエニル、ペンテニル、イソペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、イソヘキセニル、ヘキサジエニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル等を包含する。
【0026】
本明細書中、「アルキニル」とは、任意の位置に1以上の三重結合を有する炭素数2〜10、例えば、炭素数2〜8、例えば、炭素数3〜6の直鎖または分枝状のアルキニルを包含する。具体的には、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等を包含する。これらはさらに任意の位置に二重結合を有していてもよい。
【0027】
本明細書中、「置換アルケニル」、「置換アルキニル」、「置換アルケニルオキシ」、「置換アルキニルオキシ」、「置換アルケニルチオ」、「置換アルキニルチオ」、「置換アルケニルオキシカルボニル」、「置換アルキニルオキシカルボニル」、「置換アルケニルスルフィニル」、「置換アルキニルスルフィニル」、「置換アルケニルスルホニル」、および「置換アルキニルスルホニル」の置換基としては上記置換基群αから選択される1以上の基が挙げられる。
【0028】
本明細書中、「アルコキシアルケニル」、「アルコキシカルボニルアルケニル」、「アルケニルオキシ」、「アルケニルオキシカルボニル」、「アルコキシアルケニルオキシ」、「アルケニルチオ」、「アルケニルスルフィニル」、「アルケニルスルホニル」および「アルケニルアミノ」のアルケニル部分は上記「アルケニル」と同様である。
【0029】
本明細書中、「アルコキシアルキニル」、「アルコキシカルボニルアルキニル」、「アルキニルオキシ」、「アルコキシアルキニルオキシ」、「アルキニルオキシカルボニル」、「アルキニルスルフィニル」、「アルキニルスルホニル」、「アルキニルチオ」および「アルキニルアミノ」のアルキニル部分は上記「アルキニル」と同様である。
【0030】
本明細書中、「置換アミノ」、「置換カルバモイル」、「置換チオカルバモイル」および「置換スルファモイル」の置換基としては、アルキル、アシル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アリール等の炭素環式基および複素環式基等から選択される1〜2個の基が挙げられる。
【0031】
本明細書中、「アシル」とは、炭素数1〜10の脂肪族アシル、炭素環カルボニルおよび複素環カルボニルを包含する。具体的には、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、アクリロイル、プロピオロイル、メタクリロイル、クロトノイル、ベンゾイル、シクロヘキサンカルボニル、ピリジンカルボニル、フランカルボニル、チオフェンカルボニル、ベンゾチアゾールカルボニル、ピラジンカルボニル、ピペリジンカルボニル、チオモルホリノ等が例示される。
【0032】
本明細書中、「アシルオキシ」および「アシルアミノ」のアシル部分は上記「アシル」と同様である。
【0033】
本明細書中、「置換アシル」および「置換アシルオキシ」の置換基としては、置換基群αから選択される1以上の基が挙げられる。また、炭素環カルボニルおよび複素環カルボニルの環部分は、アルキル、置換基群α、および置換基群αから選択される1以上の基により置換されたアルキルから選択される1以上の基により置換されていてもよい。
【0034】
本明細書中、「炭素環式基」としては、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリールおよび非芳香族縮合炭素環式基等を包含する。
【0035】
本明細書中、「シクロアルキル」とは炭素数3〜10、例えば、炭素数3〜8、例えば、炭素数4〜8の炭素環式基であり、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルおよびシクロデシル等を包含する。
【0036】
本明細書中、「シクロアルキルアルキル」、「シクロアルキルオキシ」、「シクロアルキルアルコキシ」、「シクロアルキルチオ」、「シクロアルキルアミノ」、「シクロアルキルアルキルアミノ」、「シクロアルキルスルファモイル」、「シクロアルキルスルホニル」、「シクロアルキルカルバモイル」、「シクロアルキルアルキルカルバモイル」、「シクロアルキルアルコキシカルボニル」および「シクロアルキルオキシカルボニル」のシクロアルキル部分も上記「シクロアルキル」と同様である。
【0037】
本明細書中、「シクロアルケニル」とは、上記「シクロアルキル」の環中の任意の位置に1以上の二重結合を有しているものを包含し、具体的にはシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロへプチニル、シクロオクチニルおよびシクロヘキサジエニル等が挙げられる。
【0038】
本明細書中、「アリール」とは、フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル等を包含し、特にフェニルが挙げられる。
【0039】
本明細書において「アリールオキシ」とは、アリール基が酸素原子に結合した構造をいう。本明細書において「置換アリールオキシ」とは、アリールオキシ基における水素が他の置換基に置換されたものをいう。
【0040】
本明細書中、「置換アリール」、「置換アリールオキシ」、「置換シクロアルキル」、「置換シクロアルキルオキシ」の置換基としては置換基群αから選択される1以上の基が挙げられる。
【0041】
本明細書中、「非芳香族縮合炭素環式基」とは、上記「シクロアルキル」、「シクロアルケニル」および「アリール」から選択される2個以上の環状基が縮合した非芳香族基を包含し、具体的にはインダニル、インデニル、テトラヒドロナフチルおよびフルオレニル等が挙げられる。
【0042】
本明細書において、RおよびRが形成する「さらなる環状骨格」は、複素原子としてりんを含む任意の環式基をいう。そのようなさらなる環状骨格としては、例えば、複素環式基(例えば、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、非芳香族縮合複素環式基、置換非芳香族縮合複素環式基)、これらがさらに環式基(例えば、アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、非芳香族縮合炭素環式基等の炭素環式基、置換炭素環式基等)と縮合した二環、三環を挙げることができる。
【0043】
本明細書中、「炭素環」、「炭素環オキシ」、「炭素環アルキル」、「炭素環アルコキシ」、「炭素環アルコキシカルボニル」、「炭素環チオ」、「炭素環アミノ」、「炭素環アルキルアミノ」、「炭素環カルボニル」、「炭素環スルファモイル」、「炭素環スルフィニル」、「炭素環スルホニル」、「炭素環カルバモイル」、「炭素環アルキルカルバモイル」および「炭素環オキシカルボニル」の炭素環部分も「炭素環式基」と同様である。
【0044】
本明細書中、「アリールアルキル」、「アリールオキシ」、「アリールオキシカルボニル」、「アリールアルコキシカルボニル」、「アリールチオ」、「アリールアミノ」、「アリールアルコキシ」、「アリールアルキルアミノ」、「アリールスルホニル」、「アリールスルファモイル」、「アリールカルバモイル」および「アリールアルキルカルバモイル」のアリール部分も上記「アリール」と同様である。
【0045】
本明細書中、「複素環式基」としては、O、S、N、Pから任意に選択されるヘテロ原子を環内に1以上有する複素環式基を包含し、具体的にはピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアゾリル、トリアジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル等の5〜6員のヘテロアリール;ジオキサニル、チイラニル、オキシラニル、オキセタニル、オキサチオラニル、アゼチジニル、チアニル、チアゾリジニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、モルホリノ、チオモルホリニル、チオモルホリノ、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロチアゾリル、テトラヒドロチアゾリル、テトラヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジニル、ヘキサヒドロアゼピニル、テトラヒドロジアゼピニル、テトラヒドロピリダジニル等の非芳香族複素環式基;インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、インドリニル、イソインドリニル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、プリニル、プテリジニル、ベンゾピラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、チエノピリジル、チエノピロリル、チエノピラゾリル、チエノピラジニル、フロピロリル、チエノチエニル、イミダゾピリジル、イミダゾピラゾリル、ピラゾロピリジル、ピラゾロピラジニル、チアゾロピリジル、ピラゾロピリミジニル、ピラゾロトリアニジル、ピリダゾロピリジル、トリアゾロピリジル、イミダゾチアゾリル、ピラジノピリダジニル、ジヒドロチアゾロピリミジニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロベンズオキサジニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、テトラヒドロベンゾチエニル、テトラヒドロベンゾフリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキソニル、クロマニル、クロメニル、オクタヒドロクロメニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロベンゾオキセジニル、ジヒドロベンゾジオキセピニル、ジヒドロチエノジオキシニル、ホスフィンドリジノ、イソホスフィンドロ、ホスフィンドロ、イソホスフィノリノ、ホスフィノリノ、スピロホスホリノ等の2環の縮合複素環式基(Pを含む2環の複素環式基としては、ホスフィンドリジノ、イソホスフィンドロ、ホスフィンドロ、イソホスフィノリノ、ホスフィノリノ、スピロホスホリノが挙げられる。);
カルバゾリル、アクリジニル、キサンテニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、ジベンゾフリル、イミダゾキノリル、テトラヒドロカルバゾリル、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイドヒドロキノン(HCA−HQ)ホスファントリジノ、アクリドホスフィノ、ホスファトレノ、フェノキサホスフィノ、フェノホスファジノ等の3環の縮合複素環式基等(Pを含む3環の複素環式基としては、ホスファントリジノ、アクリドホスフィノ、ホスファトレノ、フェノキサホスフィノ、フェノホスファジノが挙げられる。)を包含する。例えば、5〜6員のヘテロアリールまたは非芳香族複素環式基である。
【0046】
本明細書中、「複素環」、「複素環アルキル」、「複素環オキシ」、「複素環チオ」、「複素環カルボニル」、「複素環オキシカルボニル」、「複素環アルコキシ」、「複素環アミノ」、「複素環スルファモイル」、「複素環スルフィニル」、「複素環スルホニル」、「複素環カルバモイル」、「複素環オキシカルボニル」、「複素環アルキルアミノ」、「複素環アルコキシカルボニル」および「複素環アルキルカルバモイル」の複素環部分も上記「複素環式基」と同様である。
【0047】
上記「複素環式基」の結合手はいずれの環に位置していてもよい。
【0048】
本明細書中、「ヘテロアリール」とは、上記「複素環式基」のうち、芳香族環式基であるものを包含する。「ヘテロアリールアルキル」および「ヘテロアリールアルコキシ」のヘテロアリール部分も同様である。
【0049】
本明細書中、「アルキレン」とは、炭素数1〜10、例えば、炭素数1〜6、例えば、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状の2価の炭素鎖を包含する。具体的にはメチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、メチルトリメチレン等である。
【0050】
本明細書中、「アルキレンジオキシ」のアルキレン部分も上記「アルキレン」と同様である。
【0051】
本明細書中、「アルケニレン」とは、任意の位置に二重結合を有する直鎖または分枝状の炭素数2〜10、例えば、炭素数2〜6、例えば、炭素数2〜4の2価の炭素鎖を包含する。具体的にはビニレン、プロペニレン、ブテニレン、ブタジエニレン、メチルプロペニレン、ペンテニレンおよびヘキセニレン等が挙げられる。
【0052】
本明細書中、「アルキニレン」とは、任意の位置に三重結合を有し、さらに二重結合を有していてもよい、直鎖または分枝状の炭素数2〜10、例えば、炭素数2〜6、例えば、炭素数2〜4の2価の炭素鎖を包含する。具体的にはエチニレン、プロピニレン、ブチニレン、ペンチニレンおよびヘキシニレン等が挙げられる。
【0053】
本明細書中、「置換アルキレン」、「置換アルケニレン」、および「置換アルキニレン」の置換基としては置換基群αから選択される置換基が挙げられ、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ等である。
【0054】
本明細書中、「ラジカル重合可能基」とは、ラジカル反応により重合する任意の基をいう。代表的な例としては、置換基において末端に不飽和二重結合を有する基などを挙げることができるがこれに限定されない。このようなラジカル重合可能基としては、アリル、置換アリル、スチレン、置換スチレン、アクリル、置換アクリル、メタクリル、置換メタクリル等を挙げることができるがこれらに限定されない。好ましくは、ラジカル重合可能基としては、スチレン、置換スチレン、アクリル、置換アクリル、メタクリルまたは置換メタクリルが使用されうる。理論に束縛されることを望まないが、アリルまたは置換アリルに比べて、本発明のような難燃性の化合物において、重合可能性が高いことが本明細書において見出されたからである。また、生成物の種類にもよるが、概してアリル型化合物よりも、化合物の結晶性が良い。このことは容易に固体の粉末として取り出すことが可能であり産業上有用である点で優れている。
【0055】
本明細書中、本発明の重合体を製造するために使用されうる「ラジカル重合モノマー」とは、本発明の化合物と重合体を形成しうるモノマーであって、結果として重合体が製造されるものであり、例えばこのようなラジカル重合モノマーとしては、スチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、2−t−ブトキシスチレン、3−t−ブトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、2−クロロメチルスチレン、3−クロロメチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、3−ブロモスチレン、4−ブロモスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン;エチレン、ブタジエン、プロピレン;塩化ビニル、塩化ビニリデン;酢酸ビニル;アクリロニトリル;N−ビニルピロリドン;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸フルフリル、アクリル酸グリシジル;アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸フルフリル、メタクリル酸グリシジル;メタクリルアミド;等を挙げることができる。
【0056】
本明細書中、「溶媒和物」とは、例えば有機溶媒との溶媒和物、水和物等を包含し、公知の方法により、溶媒和物、水和物に変換され得る。本発明は、本発明の化合物が溶媒和物を形成する場合、そのような溶媒和物をも包含することが理解される。適切な溶媒和物としては、アセトン、2−ブタノール、2−プロパノール、エタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等との溶媒和物が挙げられる。例えば、非毒性かつ水溶性である、水和物または溶媒和物(例えば、エタノール等)が挙げられる。溶媒和物または水和物を形成する時は、任意の数の溶媒分子または水分子と配位していてもよい。
【0057】
本発明の化合物は、塩(製薬上許容されるものであってもそうでなくてもよい)を包含する。本発明は、本発明の化合物が塩を形成する場合、そのような溶媒和物をも包含することが理解される。例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウムまたはカリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム等)、マグネシウム、遷移金属(亜鉛、鉄等)、アンモニウム、有機塩基およびアミノ酸との塩、または無機酸(塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸またはヨウ化水素酸等)、および有機酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸、グルタル酸、リンゴ酸、安息香酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはエタンスルホン酸等)との塩が挙げられる。特に塩酸、リン酸、酒石酸またはメタンスルホン酸等が挙げられる。これらの塩は、通常行われる方法によって形成させることができる。
【0058】
本発明の化合物は、特定の異性体に限定するものではなく、全ての可能な異性体(ケト−エノール異性体、イミン−エナミン異性体、ジアステレオ異性体、光学異性体および回転異性体等)やラセミ体を含むものである。
【0059】
本発明の化合物の一つ以上の水素、炭素または他の原子は、水素、炭素または他の原子の同位体で置換され得る。本発明の化合物は、本発明の化合物のすべての放射性標識体を包含する。本発明の化合物のそのような「放射性標識化」、「放射性標識体」などは、それぞれが本発明に包含され、代謝薬物動態研究ならびに結合アッセイにおける研究および/または診断ツールとして有用である。また、医薬品としても有用でありうる。
【0060】
本発明の化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、それぞれH、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、123Iおよび36Clのように、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素および塩素が包含される。本発明の放射性標識化合物は、当該技術分野で周知の方法で調製できる。例えば、本発明の標識化合物は、例えば、トリチウムを用いた触媒的脱ハロゲン化反応によって、本発明の特定の化合物にトリチウムを導入することで調製できる。この方法は、適切な触媒、例えばPd/Cの存在下、塩基の存在下または非存在下で、本発明の化合物が適切にハロゲン置換された前駆体とトリチウムガスとを反応させることを包含する。他のトリチウム標識化合物を調製するための適切な方法としては、文献Isotopes in the Physical and Biomedical Sciences, Vol. 1, Labeled Compounds (Part A), Chapter 6 (1987年)を参照することができる。14C-標識化合物は、14C炭素を有する原料を用いることによって調製できる。
【0061】
(一般調製法)
本発明の化合物の合成方法としては、例えば、以下の化合物
【0062】
【化2】
【0063】
は、以下の化合物:
【0064】
【化3】
【0065】
を出発原料とし、これを例えばハロアルキルチルスチレン(例えば、4-クロロメチルスチレン)、ハロゲン化メタクリロイルまたはハロゲン化アクリロイル(例えば、アクリル酸クロリド)等と、塩基存在下で、N,N-ジメチルアセトアミド等の溶媒中反応させて重合性の基を導入することができる。この場合、末端に不飽和基等が導入される。なお、化合物(II)は公知であり、例えば、商品名(HCA−HQ)として三光化学株式会社より市販されているものを用いることができる。塩基としては、トリエチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミン、トリアリルアミン、トリイソブチルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソアミルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、トリn−オクチルアミン、ピリジン、ピペリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMDEA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等を使用することができる。溶媒としてはジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を使用することができる。参考とすることができる文献としては、特許4339314号を挙げることができるがそれらに限定されない。これらの方法は、ウイリアムソンのエーテル合成法を利用したものである。この合成方法では、ハロゲン化アルキルとナトリウムアルコキシドまたはナトリウムフェノキシドとを反応させてエーテルを得ることができる。混合エーテルの合成にも有用であり工業的にも利用されうる。ハロゲン化アルキルのかわりに硫酸ジアルキルも利用することができ、芳香族エーテルを合成することができる。
【0066】
別の合成方法としては、例えば、以下のOX−4として片山化学工業株式会社から市販され、また北興化学からも商品名PPQ(登録商標)として市販されている出発原料として使用して
【0067】
【化4】
【0068】
これを例えばハロアルキルチルスチレン(例えば、4−クロロメチルスチレン)、ハロゲン化メタクリロイルまたはハロゲン化アクリロイル(例えば、アクリル酸クロリド)等と、例えば、塩基存在下で、氷浴上で溶媒中反応させて重合性の基を導入して、ジフェニル型の本発明の化合物を製造することができる。塩基としては、トリエチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミン、トリアリルアミン、トリイソブチルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソアミルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、トリn−オクチルアミン、ピリジン、ピペリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMDEA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等を使用することができる。溶媒としてはジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を使用することができる。参考とすることができる文献としては、特許4339314号を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0069】
上記のような出発材料が市販されていない場合は、ベンゾキノンを利用して合成することができる。
【0070】
すなわち、ホスフィンオキシドに所望のRおよびRが結合したもの(RおよびRは本明細書において別の場所で定義される)を提供し、これに、ベンゾキノンを適切な溶媒(例えば、トルエン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP))に溶解し、例えば、0℃〜200℃の範囲(なお、温度範囲はこれに限定されるものではない)の適宜の温度で必要に応じて適宜加熱し、攪拌して析出した沈澱を吸引ろ過により回収し適宜の溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等)で必要に応じて洗浄し、必要に応じて減圧乾燥して所望のヒドロキシル体を製造することができる。そして、これを出発材料として、これを例えばハロアルキルチルスチレン(例えば、4−クロロメチルスチレン)、ハロゲン化メタクリロイル(例えば、メタクリル酸クロリド)またはハロゲン化アクリロイル(例えば、アクリル酸クロリド)等と、例えば、塩基(例えば、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミン、トリアリルアミン、トリイソブチルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソアミルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、トリn−オクチルアミン、ピリジン、ピペリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMDEA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等存在下で、氷浴上で溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等)中反応させて重合性の基を導入して、所望のRおよびRが結合した二官能基化合物を製造することができる。ホスフィンオキシドに所望のRおよびRが結合したものは例えば、一当量の三塩化リンを二当量のリチウム試薬やGrignard試薬と反応させ、水で処理する手法を利用して合成することができる。このようなベンゾキノンを利用した合成法について、参考とすることができる文献としては、Ching Hsuan Lin et al., polymer. 51. 414(2010)等を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0071】
別の実施形態では、例えば、
【0072】
【化5】
【0073】
を合成したい場合、ジシクロヘキシルホスフィンオキシドにベンゾキノンを適切な溶媒(例えば、トルエン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP))に溶解し、例えば、0℃〜200℃の範囲(なお、温度範囲はこれに限定されるものではない)の適宜の温度で必要に応じて適宜加熱し、攪拌して析出した沈澱を吸引ろ過により回収し適宜の溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等)で必要に応じて洗浄し、必要に応じて減圧乾燥してヒドロキシル体を製造することができる。これを出発材料として、これを例えばハロアルキルチルスチレン(例えば、4−クロロメチルスチレン)、ハロゲン化メタクリロイル(例えば、メタクリル酸クロリド)またはハロゲン化アクリロイル(例えば、アクリル酸クロリド)等と、例えば、塩基(例えば、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミン、トリアリルアミン、トリイソブチルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソアミルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、トリn−オクチルアミン、ピリジン、ピペリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMDEA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等)存在下で、氷浴上で溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等)中反応させて重合性の基を導入して、ジシクロ型の二官能基化合物を製造することができる。参考とすることができる文献としては、C. S. Wang et al., J of Appllied Polymer Sci. 73, 351(1999)等を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0074】
【化6】
【0075】
を合成したい場合、フェニルホスフィン酸モノエチルエステルにベンゾキノンを適切な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP))に溶解し、例えば、0℃〜200℃の範囲(なお、温度範囲はこれに限定されるものではない)の適宜の温度で必要に応じて適宜加熱し、攪拌して析出した沈澱を吸引ろ過により回収し適宜の溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等)で必要に応じて洗浄し、必要に応じて減圧乾燥してヒドロキシル体を製造することができる。これを出発材料として、これを例えばハロアルキルチルスチレン(例えば、4−クロロメチルスチレン)、ハロゲン化メタクリロイル(例えば、メタクリル酸クロリド)またはハロゲン化アクリロイル(例えば、アクリル酸クロリド)等と、例えば、塩基(例えば、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミン、トリアリルアミン、トリイソブチルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソアミルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、トリn−オクチルアミン、ピリジン、ピペリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMDEA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等)存在下で、氷浴上で溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等)中反応させて重合性の基を導入して、モノシクロモノアルコキシ型の二官能基化合物を製造することができる。参考とすることができる文献としては、C. S. Wang et al., J of Appllied Polymer Sci. 73, 351(1999)等を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0076】
【化7】
【0077】
を合成したい場合、ジブチルホスフィンオキシドにベンゾキノンを適切な溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等)に溶解し、例えば、0℃〜200℃の範囲(なお、温度範囲はこれに限定されるものではない)の適宜の温度で必要に応じて適宜加熱し、攪拌して析出した沈澱を吸引ろ過により回収し適宜の溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等)で必要に応じて洗浄し、必要に応じて減圧乾燥してヒドロキシル体を製造することができる。これを出発材料として、これを例えばハロアルキルチルスチレン(例えば、4−クロロメチルスチレン)、ハロゲン化メタクリロイル(例えば、メタクリル酸クロリド)またはハロゲン化アクリロイル(例えば、アクリル酸クロリド)等と、例えば、塩基(例えば、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミン、トリアリルアミン、トリイソブチルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソアミルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、トリn−オクチルアミン、ピリジン、ピペリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMDEA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、等)存在下で、氷浴上で溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等)中反応させて重合性の基を導入して、モノシクロモノアルコキシ型の二官能基化合物を製造することができる。参考とすることができる文献としては、C. S. Wang et al., J of Appllied Polymer Sci. 73, 351(1999)を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0078】
三官能基型の化合物合成法も、二官能基型のものに準じて製造することができる。例えば、例えば、以下の化合物を
【0079】
【化8】
【0080】
(トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキシド)を出発材料として、これを例えばハロアルキルチルスチレン(例えば、4−クロロメチルスチレン)、ハロゲン化メタクリロイル(例えば、メタクリル酸クロリド)またはハロゲン化アクリロイル(例えば、アクリル酸クロリド)等と、例えば、塩基存在下で、氷浴上で溶媒中反応させて重合性の基を導入して、三官能基型の本発明の化合物を製造することができる。塩基としては、トリエチルアミン、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミン、トリアリルアミン、トリイソブチルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソアミルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、トリn−オクチルアミン、ピリジン、ピペリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMDEA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等を使用することができる。溶媒としてはジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を使用することができる。参考とすることができる文献としては、Friedrichsen et al. J. Am. Chem. Soc., 112. 8931(1990)等を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0081】
1つの例示的実施形態では、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキシドは片山化学工業株式会社にて販売される(トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキシド;商品名OX−7;この物質は、Eurolabs Limited (UNITED KINGDOM) カタログNo.6548;Yanjin Technology Co.Ltd.(CHINA) カタログNo.23 としても入手可能である。)一当量の三塩化リンや塩化ホスホリルと三当量の4−メトキシフェニルマグネシウムブロミドの反応生成物を三臭化ホウ素にて処理することによって製造することができる。参考にしうる文献としてはFriedrichsen et al. J. Am. Chem. Soc., 112. 8931(1990)を挙げることができる。
【0082】
1つの例示的実施形態では、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキシド以外のものは、4−メトキシフェニルマグネシウムブロミドの代わりに、2−メトキシフェニルマグネシウムブロミド、3−メトキシフェニルマグネシウムブロミドとの反応させることによって合成することもできる。
【0083】
このほか、使用されうるハロゲン化剤としては、塩素化剤〔例えば、オキサリルクロリド、塩化水素、塩化チオニル、塩化スルフリル、ホスゲン(二塩化カルボニル)、塩素、三塩化リン、五塩化リン、N−クロロコハク酸イミド、次亜塩素酸ナトリウム〕、臭素化剤(例えば、臭化水素、臭化チオニル、臭素、三臭化リン、N−ブロモコハク酸イミド)、ヨウ素化剤(例えば、ヨウ素、ヨウ化カリウム、ヨウ化水素酸、一塩化ヨウ素)、フッ素化剤(例えば、フッ素、フッ化水素、四フッ化硫黄)等が挙げられる。
【0084】
このほか本発明の合成法において参照しうる文献としては、化学大辞典第1版(1989)217ページ、化学大辞典第1版(1989)490ページ等を挙げることができるがこれに限定されない。
【0085】
(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。
【0086】
(難燃性二官能基化合物)
1つの局面では、本発明は、以下の式(A):
【0087】
【化9】
【0088】
で表される化合物を提供する。この化合物において、式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、アリール基、置換アリール基、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アミノ基、置換アミノ基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基または置換シクロアルキルオキシ基であるか、あるいはRとRとが一緒になって、さらなる環状骨格(例えば、HCA−HQとして三光化学株式会社より市販されるものが含まれ、この場合、Raがフェニル、Rbがフェノキシ、Pを含む環を形成するものである)を形成し;
およびRは、それぞれ独立して、同一または異なるラジカル重合可能基であり;
、RおよびRは、それぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基もしくは置換アルキル基、アルケニル基もしくは置換アルケニル基、アルキニル基もしくは置換アルキニル基、またはアルケニルカルボニル基もしくは置換アルケニルカルボニル基、アルコキシ基もしくは置換アルコキシ基、シクロアルキル基もしくは置換シクロアルキル基、アリール基もしくは置換アリール基、アリールオキシ基もしくは置換アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基もしくは置換シクロアルキルオキシ基、またはアミノ基もしくは置換アミノ基を示し、
ただし、式(A)が
【0089】
【化10】
【0090】
であり、RおよびRの両方がアリルである場合、R〜Rがすべて水素であるものは除かれる。
【0091】
1つの実施形態では、本発明の化合物は、(A)の式において、前記RおよびRは同じ基であるか、前記RおよびRは一方がアルコキシ基であり他方がアリール基であるか、または、前記RおよびRが一緒になってさらなる環状骨格を形成するものである。
【0092】
1つの実施形態では、本発明の化合物において、前記式(A)は、以下の式:
【0093】
【化11】
【0094】
【0095】
【化12】
【0096】
【化13】
【0097】
【0098】
【化14】
【0099】
(ここで、Rcは、アルキルまたは置換アルキルである)、または
【0100】
【化15】
【0101】
(ここで、RdおよびReは、それぞれ独立して、アルキルまたは置換アルキルである)である。
【0102】
1つの実施形態では、前記ラジカル重合可能基は、末端に不飽和二重結合を有する基でありうる。例えば、このようなラジカル重合可能基としては、アリル、置換アリル、スチレン、置換スチレン、アクリル、置換アクリル、メタクリルまたは置換メタクリルでありうる。好ましいラジカル重合可能基としては、スチレン、置換スチレン、アクリル、置換アクリル、メタクリルまたは置換メタクリルを挙げることができる。理論に束縛されることを望まないが、アリルまたは置換アリルに比べて、本発明のような難燃性の化合物において、重合可能性が高いことが本明細書において見出されたからである。式Aの化合物に対してアリル型は、粘調性液体であり取り扱いが難しい。しかし、スチレン型やアクリル型は固体で存在するため扱いが容易であるため産業上有用な形態である。
【0103】
別の実施形態では、前記ラジカル重合可能基は、以下の式:
【0104】
【化16】
【0105】
で示されるスチレンまたは置換スチレンであり、該メチレン基または置換メチレン基は、3位または4位に存在し、置換スチレンおよび置換メチレン基の置換基はそれぞれ独立してアルキル基またはアルコキシ基である。
【0106】
別の実施形態では、前記ラジカル重合可能基がアクリル、置換アクリル、メタクリルまたは置換メタクリルであり、該アクリル、置換アクリル、メタクリルまたは置換メタクリルは、以下の式:
【0107】
【化17】
【0108】
で表され、
式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基または置換アリール基であり、Rは、水素またはアルキル基でありうる。
【0109】
(難燃性二官能基高分子の原料)
1つの局面において、本発明は、本発明の化合物を含む、難燃性高分子の原料を提供する。本発明の難燃性高分子の原料に含まれうる化合物は、(難燃性二官能基化合物)において記載される任意の化合物の形態を使用することができることが理解される。
【0110】
(難燃性二官能基化合物の重合体)
1つの局面において、本発明は、本発明の化合物が単独重合または共重合した重合体を提供する。本発明の重合体において利用されうる化合物は、(難燃性二官能基化合物)、あるいはこれに加えて必要に応じて(難燃性三官能基化合物)において記載される任意の化合物の形態を使用することができることが理解される。
【0111】
1つの実施形態において、本発明の重合体は、ラジカル重合性モノマーと共重合したものでありうる。1つの詳細な実施形態では、前記ラジカル重合性モノマーは、スチレンおよびアクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキル、メチルスチレン、エチルスチレン等のアルキルスチレン等)を挙げることができるがそれらに限定されない。より詳細には、本発明の重合体を製造するために使用されうるラジカル重合モノマーとしては、例えばこのようなラジカル重合モノマーとしては、スチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、2−t−ブトキシスチレン、3−t−ブトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、2−クロロメチルスチレン、3−クロロメチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、3−ブロモスチレン、4−ブロモスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン;エチレン、ブタジエン、プロピレン;塩化ビニル、塩化ビニリデン;酢酸ビニル;アクリロニトリル;N−ビニルピロリドン;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸フルフリル、アクリル酸グリシジル;アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸フルフリル、メタクリル酸グリシジル;メタクリルアミド;等を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0112】
(二官能基型難燃剤)
1つの局面において、本発明は、本発明の化合物および/または重合体を含む難燃剤を提供する。本発明の難燃剤に含まれうる化合物または重合体は、(難燃性二官能基化合物)または(難燃性二官能基化合物の重合体)、あるいはこれに加えて必要に応じて(難燃性三官能基化合物)または(難燃性三官能基化合物の重合体)において記載される任意の化合物の形態を使用することができることが理解される。
【0113】
(二官能基重合体の製造方法)
1つの局面において、本発明は、本発明の化合物を単独重合または共重合させる工程を包含する、本発明の重合体の製造方法を提供する。本発明の難燃剤に含まれうる化合物または重合体は、(難燃性二官能基化合物)または(難燃性二官能基化合物の重合体)において記載される任意の化合物の形態を使用することができ、あるいはこれに加えて必要に応じて(難燃性三官能基化合物)または(難燃性三官能基化合物の重合体)において記載される任意の化合物の形態を使用することができることが理解される。重合体については、(難燃性二官能基化合物)および(難燃性三官能基化合物)の両方に記載される化合物または適用可能な特徴を含んでいてもよい。
【0114】
(難燃性三官能基化合物)
1つの局面において、本発明は、以下の式:
【0115】
【化18】
【0116】
で表される化合物を提供する。この化合物において式中、R11、R12、R13、R14、およびR15の少なくとも1つがラジカル重合可能基であり、R21、R22、R23、R24およびR25の少なくとも1つがラジカル重合可能基であり、R31、R32、R33、R34およびR35の少なくとも1つがラジカル重合可能基であり、R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35のうち他のものは、それぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アルケニルカルボニル基、置換アルケニルカルボニル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、置換シクロアルキルオキシ基、アミノ基または置換アミノ基を示す。
【0117】
1つの実施形態では、本発明は、以下の式:
【0118】
【化19】
【0119】
で表される化合物を提供する。この化合物において式中、R13、R23およびR33は、独立して、同一または異なるラジカル重合可能基であり;
11、R12、R14、R15、R21、R22、R24、R25、R31、R32、R34およびR35は、それぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アルケニルカルボニル基、置換アルケニルカルボニル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、置換シクロアルキルオキシ基、アミノ基または置換アミノ基を示す。
【0120】
1つの実施形態では、前記ラジカル重合可能基は末端に不飽和二重結合を有する基である。例えば、このようなラジカル重合可能基としては、アリル、置換アリル、スチレン、置換スチレン、アクリル、置換アクリル、メタクリルまたは置換メタクリルでありうる。好ましいラジカル重合可能基としては、スチレン、置換スチレン、アクリル、置換アクリル、メタクリルまたは置換メタクリルを挙げることができる。理論に束縛されることを望まないが、アリルまたは置換アリルに比べて、本発明のような難燃性の化合物において、重合可能性が高いことが本明細書において見出されたからである。また、反応活性基が3つ存在することから、二官能基型と比較して架橋構造を密に形成することができる。その結果、耐熱性を向上させた重合物を製造することができうる。
【0121】
別の実施形態では、前記ラジカル重合可能基は、以下の式:
【0122】
【化20】
【0123】
で示されるスチレンもしくは置換スチレンであり、該スチレンもしくは置換スチレンのメチレン基または置換メチレン基は、3位または4位に存在し、置換スチレンおよび置換メチレン基の置換基はそれぞれ独立してアルキル基またはアルコキシ基である。
【0124】
別の実施形態では、前記ラジカル重合可能基がアクリル、置換アクリル、メタクリルまたは置換メタクリルであり、該アクリル、置換アクリル、メタクリルまたは置換メタクリルは、以下の式:
【0125】
【化21】
【0126】
で表され、
式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基または置換アリール基であり、Rは、水素またはアルキル基でありうる。
【0127】
(難燃性三官能基高分子の原料)
1つの局面において、本発明は、本発明の化合物を含む、難燃性高分子の原料を提供する。本発明の難燃性高分子の原料に含まれうる化合物は、(難燃性三官能基化合物)において記載される任意の化合物の形態を使用することができることが理解される。
【0128】
(難燃性三官能基化合物の重合体)
1つの局面において、本発明は、本発明の化合物が単独重合または共重合した重合体を提供する。本発明の重合体において利用されうる化合物は、(難燃性三官能基化合物)、あるいはこれに加えて必要に応じて(難燃性二官能基化合物)において記載される任意の化合物の形態を使用することができることが理解される。
【0129】
1つの実施形態において、本発明の重合体は、ラジカル重合性モノマーと共重合したものでありうる。1つの詳細な実施形態では、前記ラジカル重合性モノマーは、スチレンおよびアクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキル、メチルスチレン、エチルスチレン等のアルキルスチレン等)を挙げることができるがそれらに限定されない。より詳細には、本発明の重合体を製造するために使用されうるラジカル重合モノマーとしては、例えばこのようなラジカル重合モノマーとしては、スチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、2−t−ブトキシスチレン、3−t−ブトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、2−クロロメチルスチレン、3−クロロメチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、3−ブロモスチレン、4−ブロモスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン;エチレン、ブタジエン、プロピレン;塩化ビニル、塩化ビニリデン;酢酸ビニル;アクリロニトリル;N−ビニルピロリドン;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸フルフリル、アクリル酸グリシジル;アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸フルフリル、メタクリル酸グリシジル;メタクリルアミド;等を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0130】
(三官能基型難燃剤)
1つの局面において、本発明は、本発明の化合物および/または重合体を含む難燃剤を提供する。本発明の難燃剤に含まれうる化合物または重合体は、(難燃性三官能基化合物)または(難燃性三官能基化合物の重合体)、あるいはこれに加えて必要に応じて(難燃性二官能基化合物)または(難燃性二官能基化合物の重合体)において記載される任意の化合物の形態を使用することができることが理解される。
【0131】
(三官能基重合体の製造方法)
1つの局面において、本発明は、本発明の化合物を単独重合または共重合させる工程を包含する、本発明の重合体の製造方法を提供する。本発明の難燃剤に含まれうる化合物または重合体は、(難燃性三官能基化合物)または(難燃性三官能基化合物の重合体)において記載される任意の化合物の形態を使用することができ、あるいはこれに加えて必要に応じて(難燃性二官能基化合物)または(難燃性二官能基化合物の重合体)において記載される任意の化合物の形態を使用することができることが理解される。重合体については、(難燃性二官能基化合物)および(難燃性三官能基化合物)の両方に記載される化合物または適用可能な特徴を含んでいてもよい。
【0132】
(さらなる実施形態)
1つの実施形態では、本発明の化合物は、反応性の異なる2種類以上の化合物、すなわち、1分子中の上記官能基の数が異なる2種類以上の化合物を併用することができる。この場合は、これによって、架橋に要する反応速度を制御できるので、急激な架橋反応の進行による樹脂組成物の収縮を防止することができる。本発明の化合物または重合体は、1分子内に少なくとも1つのラジカル重合可能な基(代表的には、末端不飽和結合)を有している有機環状リン化合物を用いるので、基に含まれる末端不飽和結合等を、熱または放射線によって樹脂と結合して反応させることができる。これにより、難燃剤成分が樹脂中に安定して存在するので、難燃剤のブリードアウトを防止して、少量の添加でも難燃性を長期間付与できる。
【0133】
1つの実施形態において、複数の環を含む化合物を用いる場合は、分子量が増大し、エネルギー的にも安定化させることができる。この場合は、これにより熱分解温度が向上するので、樹脂への混練、成形時における難燃剤の気化や、成形時の熱や剪断による難燃剤の分解を防止でき、成形性が向上させることができる。また、炭素を多く含有することで、樹脂分解時にススが生成、堆積することによって難燃性が向上する、いわゆるチャー効果も得られる。
【0134】
(難燃性樹脂加工品)
1つの局面において、本発明は、本発明の難燃性化合物および重合体を難燃性樹脂加工品として用いることを提供する。
【0135】
1つの実施形態では、本発明を難燃性樹脂加工品として用いる場合、本発明の化合物または重合体と、樹脂とを含有する樹脂組成物を固化した後、加熱または放射線の照射によって前記樹脂と前記化合物または重合体とを反応させて得られる難燃性樹脂加工品として本発明が利用されうる。1つの実施形態では、この難燃性樹脂加工品全体に対し、前記化合物または重合体は1〜20質量%含有されうるがこれに限定されない。この難燃性樹脂加工品は、本発明の化合物または重合体の末端不飽和結合を、加熱または放射線の照射によって樹脂と反応させることができ、難燃剤成分が樹脂中に安定して存在させることができる。これにより難燃剤のブリードアウトを防止して難燃性効果が向上するので、難燃性樹脂加工品全体に対する本発明の化合物または重合体の添加量が1〜20質量%と少量であっても、難燃性を長期間付与できる。また、本発明の化合物または重合体と樹脂との結合によって、樹脂が3次元網目構造に架橋化させることができるので、得られる樹脂加工品の化学的安定性、耐熱性、機械特性、電気特性、寸法安定性、難燃性、および成形性の全てに優れる樹脂成形品を得ることができ、特に耐熱性および機械強度を向上させることができる。更に薄肉成形加工もすることができる。
【0136】
1つの実施形態では、本発明の難燃性樹脂加工品において、前記樹脂組成物が、本発明の化合物または重合体を2種類以上含有し、少なくとも1種類が多官能性の前記反応性難燃剤であること様なものを用いることができる。この実施形態によれば、反応性の異なる難燃剤の併用によって架橋に要する反応速度を制御できるので、急激な架橋反応の進行による樹脂の収縮等を防止することができる。また、多官能性の難燃剤の含有によって、上記の有機環状リン化合物による均一な3次元網目構造が形成されるので、耐熱性、難燃性が向上するとともに、より安定した樹脂物性が得られる。
【0137】
1つの実施形態では、難燃性樹脂加工品においては、前記樹脂組成物が、本発明の化合物および重合体以外の更なる難燃剤を更に含有し、このような更なる難燃剤として、末端に少なくとも1つの不飽和基を有する環状の含窒素化合物を使用することができる。この実施形態によれば、末端に少なくとも1つの不飽和基を有する環状の含窒素化合物によっても、化合物または重合体と樹脂との結合によって樹脂が3次元網目構造に架橋できるので、併用によって難燃剤として作用する化合物または重合体全体のコストダウンを図りつつ、得られる樹脂加工品の化学的安定性、耐熱性、機械特性、電気特性、寸法安定性、難燃性、および成形性の全てに優れる樹脂成形品を得ることができる。また、窒素を含有するので、特に樹脂としてポリアミド系樹脂を用いた場合に樹脂との相溶性がより向上させることができる。
【0138】
1つの実施形態では、本発明の難燃性樹脂加工品においては、前記樹脂組成物が、本発明の化合物または重合体以外のさらなる難燃剤を更に含有し、該さらなる難燃剤が、反応性を有しない添加型の難燃剤であってもよい。本発明の化合物または重合体に、例えば、リン酸エステル系、メラミン系、水酸化金属、シリコン系等の反応性を有しない添加型の難燃剤を併用することによって、本発明の化合物または重合体単独の場合に比べて難燃性を更に向上でき、また、難燃剤のコストダウンを達成しうる。
【0139】
1つの実施形態では、更に、本発明の難燃性樹脂加工品においては、前記樹脂組成物が、難燃性を有しないが前記樹脂との反応性を有する架橋剤を更に含有することができ、この架橋剤が、主骨格の末端に不飽和基を有する多官能性のモノマーまたはオリゴマーでありうる。この実施形態によっても、架橋剤と樹脂との結合によって、樹脂が3次元網目構造に架橋できるので、得られる樹脂加工品の化学的安定性、耐熱性、機械特性、電気特性、寸法安定性、難燃性、および成形性の全てに優れる樹脂成形品を得ることができる。
【0140】
1つの実施形態において、本発明の難燃性樹脂加工品においては、前記難燃性樹脂加工品全体に対して1〜35質量%の無機充填剤を含有することができる。なかでも、前記無機充填剤としてシリケート層が積層してなる層状のクレーを含有し、前記層状のクレーを前記難燃性樹脂加工品全体に対して1〜10質量%含有することが好ましい。この実施形態によれば、架橋に伴う収縮や分解を抑え、寸法安定性に優れる樹脂加工品を得ることができる。また、無機充填剤としてシリケート層が積層してなる層状のクレーを含有した場合には、ナノオーダーで層状のクレーが樹脂中に分散することにより樹脂とのハイブリット構造を形成させることができる。これによって、得られる難燃性樹脂加工品の耐熱性、機械強度等を向上させることができる。
【0141】
更なる実施形態では、本発明の難燃性樹脂加工品においては、前記難燃性樹脂加工品全体に対して5〜40質量%の強化繊維を含有することができる。この実施形態によれば、強化繊維の含有により、樹脂加工品の引張り、圧縮、曲げ、衝撃等の機械的強度を向上させることができ、更に水分や温度に対する物性低下を防止することができる。
【0142】
1つの実施形態では、本発明の難燃性樹脂加工品においては、前記樹脂と本発明の化合物および重合体とが、例えば、線量約10kGy以上の電子線またはγ線の照射によって反応して得られるものを利用してもよい。この実施形態によれば、樹脂を成形等によって固化した後に、放射線によって架橋できるので、樹脂加工品を生産性よく製造することができる。また、上記範囲の線量とすることにより、線量不足による3次元網目構造の不均一な形成や、未反応の架橋剤残留によるブリードアウトを防止することができる。また、特に、照射線量を10〜45kGyとすれば、線量過剰によって生じる酸化分解生成物に起因する、樹脂加工品の内部歪みによる変形や収縮等も防止することができる。
【0143】
更に別の実施形態では、本発明の難燃性樹脂加工品においては、前記樹脂と本発明の化合物および重合体とが、前記樹脂組成物を成形する温度より5℃以上高い温度で反応して得られることもできる。この実施形態によれば、放射線照射装置等が不要であり、特に熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物において使用することができる。
【0144】
また別の実施形態では、本発明の難燃性樹脂加工品においては、前記難燃性樹脂加工品が、成形品、塗膜、封止剤より選択される1つであることが好ましい。本発明の難燃性樹脂加工品は、上記のように優れた難燃性を有し、しかもブリードアウトを防止できるので、通常の樹脂成形品のみならず、コーティング剤等として塗膜化したり、半導体や液晶材料等の封止剤としても好適に用いられる。
【0145】
更に、上記の難燃性樹脂加工品においては、前記難燃性樹脂加工品が、電気部品または電子部品として用いられるものであることが好ましい。本発明の難燃性樹脂加工品は、上記のように、耐熱性、機械特性、電気特性、寸法安定性、難燃性、および成形性の全てに優れるので、特に上記の物性が厳密に要求される、電気部品、電子部品として特に好適に用いられる。
【0146】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0147】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0148】
以下に、本発明の難燃性化合物、重合体、およびこれの製造法等の実施例を記載する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではないことが理解される。実施例で使用した化合物は、特に断りにない限り、シグマアルドリッチジャパン、和光純薬、東京化成、関東化学、キシダ化学から入手可能な化合物を用いた。なお、略語として以下を用いた。Etはエチルを示す。n−Buはn−ブチルを示す。
【0149】
(NMRの方法)
JEOL ECX−400(Hは400MHz、31Pは161.8MHz)またはJEOL LA−500(H−NMRは500MHz、31Pは161.8MHz)にて、製造業者のプロトコルに従い分析を行った。
【0150】
(質量スペクトルの方法)
JEOL MSRouteでIonization Mode(EI+)にて分析を行った。
【0151】
(実施例1)
本実施例では二官能基アリル型の化合物であるW−1oを合成した。合成原料としては、片山化学工業株式会社から市販されるもの(カタログ番号OX−4)を用いた。
【0152】
【化22】
【0153】
(W−1oの合成条件)
窒素置換した三つ口フラスコにOX−4を77.6gと炭酸カリウム17.5gを入れ、N,N−ジメチルアセトアミド750mLを加えた。さらに、臭化アリル225gを加え80℃12時間で加熱攪拌を行った。この時、加熱開始から0.5時間毎に炭酸カリウムを8.57g6回加えた。反応終了後、吸引濾過により沈殿を取り除き反応液を濃縮した。得られた濃縮液を氷水中に加え生じた沈殿を減圧乾燥した。そのNMRの結果は図1Aおよび図1Bに示す。
【0154】
収量78.1g(収率80.0%) 純度95.81g(31P-NMR) 粘調性褐色液体
1H-NMR (500MHz、DMSO) δ:4.31(3H,d,J=5.22Hz), 4.53(3H, d, J=5.22), 4.98(2H, dd, J=12.63, 20.87), 5.42(1H, ddd, J=22.51) 6.00(1H, ddd, J=38.16Hz), 7.28-7.05(3H, m), 7.78-7.48(10H, m)
31P-NMR(161.8MHz、DMSO):24.72
W-1oで表わされる化合物の分子式:C24H23O3P 理論分子量:390.1385
得られたサンプルの分子式の実測値:390.1372。
【0155】
(実施例2:二官能基アクリル型の化合物の例)
本実施例では二官能基アクリル型の化合物であるW−4hを合成した。合成原料としては、三光株式会社から市販されるもの(商品名:HCA−HQ)を用いた。
【0156】
【化23A】
【0157】
【化23B】

【0158】
(W−4hの合成条件)
窒素置換した三つ口フラスコにHCA−HQを5.0gはかりとり、ジメチルメチルホルムアミド(DMF)50mlを加え50℃で溶解を行った。ここに、トリエチルアミン4.3mL加えた。氷浴で冷却を行いアクリル酸クロリドを2.49mL加えた。約1時間反応を行った後、溶媒を濃縮した。濃縮物をクロロホルム20mL水20mLで抽出した後、クロロホルム層を水20mLで2回洗浄した。得られたクロロホルム層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を濃縮、得られた固体を減圧乾燥した。そのNMRの結果は図2Aおよび図2Bに示す。
【0159】
収量は5.1g(収率80.5%)、純度91.0%(31P−NMR)、薄い黄色の粉体
1H-NMR (500MHz、CDCl3) δ:5.90(1H,d,J=1.1Hz), 6.09(1H,d,J=1.1Hz), 6.35(1H,t,J=1.2Hz), 6.44(1H,d,J=1.1Hz), 6.62(1H,d,J=1.1Hz), 6.85(1H,t,J=1.1Hz), 7.12 - 8.10(11H, m )
31P-NMR(161.8MHz、CDCl3):17.70。
【0160】
(実施例3:二官能基アクリル型の化合物の例)
本実施例では二官能基アクリル型の化合物であるW−4oを合成した。合成原料としては、片山化学工業株式会社から市販されるもの(商品名:OX−4)を用いた。
【0161】
【化24】
【0162】
(W−4oの合成条件)
窒素置換した三つ口フラスコにOX−4を5gはかりとりDMF25mLに溶解した。ここにトリエチルアミン4.55mL加えた。氷浴で冷却を行い、アクリル酸クロリドを2.62mL加えた。一時間攪拌を行った後、溶媒を濃縮した。濃縮物をクロロホルム20mL、水20mLで抽出した後、クロロホルム層を水20mLで2回洗浄した。得られたクロロホルム層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を濃縮し、得られた濃縮物を減圧乾燥した。そのNMRの結果は図3Aおよび図3Bに示す。
【0163】
収量は2.51g(収率37.2%)、純度は67.4%(1H-NMR)、薄い黄色の粘調液体
1H-NMR (500MHz、CDCl3) δ:5.74(1H,t,J=46.4Hz),5.76(1H,d,J=25.5Hz),6.16(1H,d,J=10.4Hz),6.17(1H,d,J=16.7Hz),6.27(1H,t,J=24.0Hz),6.58(1H,d,J=17.3)
31P-NMR(161.8MHz、CDCl3):25.66。
【0164】
(実施例4:二官能基メタクリル型の化合物の例)
本実施例では二官能基メタクリル型の化合物であるW−2hを合成した。合成原料としては、三光株式会社から市販されるもの(商品名:HCA−HQ)を用いた。
【0165】
【化25】
【0166】
その合成スキームを示す。
【0167】
【化26】
【0168】
(W−2hの合成条件)
窒素置換した三つ口フラスコにHCA−HQを5.0gはかりとり、DMF50mlを加え50℃で溶解を行った。ここに、トリエチルアミン4.3mL加えた。氷浴で冷却を行いメタクリル酸クロリドを2.32mL加えた。約1時間反応を行った後、溶媒を濃縮した。濃縮物をクロロホルム20mL水20mLで抽出した後、クロロホルム層を水20mLで2回洗浄した。得られたクロロホルム層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を濃縮、得られた固体を減圧乾燥した。そのNMRの結果は図4Aおよび図4Bに示す。図4−2には、質量スペクトルの結果を示す。
【0169】
収量は5.3g(収率73.0%)、純度100%(31P-NMR)、薄い赤色の粉体、融点181℃
1H-NMR (500MHz、CDCl3) δ:1.50(3H,s),2.10(3H,s),5.19(1H,s),5.19(1H,s),5,82(1H,s),6.40(1H,s),7,12-7.68(8H,m),7.98-8.10(3H,m)
31P-NMR(161.8MHz、CDCl3):18.75
W-2hで表わされる化合物の分子式:C26H21O6P 理論分子量:460.1076
得られたサンプルの分子式の実測値:460.1485
(実施例5:二官能基アクリル型の化合物の例)
本実施例では二官能基アクリル型の化合物であるW−2oを合成した。合成原料としては、片山化学工業株式会社から市販されるもの(商品名:OX−4)入手可能なものを用いた。
【0170】
【化27】
【0171】
(W−2oの合成条件)
窒素置換した三つ口フラスコにOX−4を5gはかりとりDMF25mLに溶解した。ここにトリエチルアミン4.55mL加えた。氷浴で冷却を行い、メタクリル酸クロリドを3.67mL加えた。一時間攪拌を行った後、溶媒を濃縮した。濃縮物をクロロホルム20mL、水20mLで抽出した後、クロロホルム層を水20mLで2回洗浄した。得られたクロロホルム層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を濃縮し、得られた濃縮物を減圧乾燥した。そのNMRの結果は図5Aおよび図5Bに示す。
【0172】
収量は3.2g(収率44.5%)、純度は95.5%(31P-NMR)、褐色の粘調液体
1H-NMR (500MHz、CDCl3) δ:1.65(3H,s),2.03(3H,s),5.47(1H,s),5,76(1H,s),5,83(1H,s),6.32(1H,s),7,26-7.56(10H,m),7.66-7.74(3H,m)
31P-NMR(161.8MHz、CDCl3):26.09。
【0173】
(実施例6:二官能基スチレン型の化合物の例)
本実施例では二官能基スチレン型の化合物であるW−3hを合成した。合成原料としては、三光株式会社から市販されるもの(商品名:HCA-HQ)を用いた。
【0174】
【化28】
【0175】
(W−3hの合成条件)
窒素置換した三つ口フラスコにHCA−HQを10.0gはかりとり、DMF50mLを加え、60℃で溶解した。ここに炭酸ナトリウムを5.27g加え60℃で加熱攪拌を行った。さらに、4−クロロメチルスチレン8.58mLを反応液に滴下し16時間加熱攪拌を行った。反応液を吸引濾過し沈殿物を取り除いた後、濃縮を行った。濃縮液をクロロホルム60mLと水60mLで抽出した。クロロホルム層は水60mLで2回洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を濃縮し、得られた濃縮物は減圧乾燥した。そのNMRの結果は図6Aおよび図6Bに示す。
【0176】
収量6.76g(収率39.4%)、純度73.3%(31P-NMR)、褐色の粘調液体
1H-NMR (500MHz、CDCl3) δ:4.80(2H,s),5.19(2H,s),5.29(2H,dd,J=34.4,27.9Hz),5,77(2H,dd,J=15.0,18.4Hz),6.62(1H,t,J=8.48Hz),6.75(1H,t,J=9.98),7.70-7.75(11H,m)
31P-NMR(161.8MHz、CDCl3):20.74。
【0177】
(実施例7:二官能基スチレン型の化合物の例)
本実施例では二官能基スチレン型の化合物であるW−3oを合成した。合成原料としては、片山化学工業株式会社から市販されるもの(商品名:OX−4)を用いた。
【0178】
【化29】
【0179】
合成スキームを以下に示す。
【0180】
【化30】
【0181】
(W−3oの合成条件)
窒素置換した三つ口フラスコにOX−4を3.10gはかりとり、DMF15mLを加え、60℃で溶解した。ここに炭酸カリウムを2.76g加え60℃で加熱攪拌を行った。さらに、4−クロロメチルスチレン3.31mLを反応液に滴下し16時間加熱攪拌を行った。反応液を吸引濾過し沈殿物を取り除いた後、濃縮を行った。濃縮液をクロロホルム40mLと水40mLで抽出した。クロロホルム層は水40mLで2回洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を濃縮し、得られた濃縮物は減圧乾燥した。そのNMRの結果は図7Aおよび図7Bに示す。図7−2には、質量スペクトルの結果を示す。
【0182】
収量3.1g(収率57.1%)、純度63.6%(31P-NMR)、褐色の粘調液体
1H-NMR (500MHz、CDCl3) δ:4.78(2H,s),5.05(2H,s),5.26(2H,dd,J=14.0,13.5Hz),5,75(2H,dd,J=22.5,22.6Hz),6.39(1H,dd,J=12.0,22.5Hz),6.86(1H,dd,J=11.5,11.0Hz),7.08-7.69(18H,m)
31P-NMR(161.8MHz、CDCl3):27.25
W-3oで表わされる化合物の分子式:C36H15O3P 理論分子量:542.2011
得られたサンプルの分子式の実測値:542.2011。
【0183】
(実施例8:三官能基型の化合物の例)
本実施例では三官能基型の化合物であるT−4を合成した。合成原料としては、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキシドとして片山化学工業株式会社から市販されるもの(商品名OX−7)入手可能なものを用いた。
【0184】
【化31】

【0185】
【化32】
【0186】
窒素置換したシュレンク型フラスコにトリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキシド130.8μLはかりとり、DMF1mLに溶解した。この溶液に、トリエチルアミン101.19μL加え、0℃に冷却した。さらに、アクリル酸クロリド80.8μL加え1時間攪拌を行った。反応液を減圧乾燥し、重クロロホルムで溶解しNMRにより分析を行ったところ、T−4が67.0%反応していることが確認できた。そのNMRの結果は図8Aおよび8Bに示す。
1H-NMR (500MHz、CDCl3) δ5.85(6H,d,J=12.3Hz),6.35(3H,dd,J=22.4Hz)7.00-7.20(12H,m)
31P-NMR(161.8MHz、CDCl3):27.96。
【0187】
(実施例9:二官能基アクリル型の化合物の例)
本実施例では二官能基アクリル型のうち、リン含有部分がジシクロヘキシルである化合物であるW−6oを合成した。合成原料としては、ジシクロヘキシルホスフィンオキシドとして中間物商事株式会社から販売されるもの(カタログ番号無し。なお、この物質はBeiJing Hwrk Chemicals Limted.(CHINA) カタログNo.10292 としても入手可能である。)を用いた。
【0188】
【化33】
【0189】
(W−6oの合成)
ジシクロヘキシルホスフィンオキシド1.77g、ベンゾキノン0.54gをトルエン5mLに溶解した。この溶液を50℃で一晩加熱攪拌を行った。析出した沈殿を吸引濾過により回収し、アセトン3mLで3回洗浄を行った。この沈殿を減圧乾燥し1.69gの乳白色の沈殿を得た。この結晶32.24mgをDMF1mLに溶解し、トリエチルアミン27.88μL加えた。溶液を0℃に冷却しメタクリル酸クロリド19.35μL加え、一時間攪拌を行った。反応液を減圧乾燥し重クロロホルムで溶解、31P−NMRにより分析を行ったところW−6oが76.7%得られたことが確認できた。そのNMRの結果は図9Aおよび図9Bに示す。
【0190】
1H-NMR (500MHz、CDCl3) δ1.00-1.83(20H,m),1.96(3H,s),2.00(3H,s),5.68(1H,s),5.81(1H,s),6.14(1H,s),6.25(1H,s),7.00-7.30(3H,m)
31P-NMR(161.8MHz、CDCl3):46.79。
【0191】
(実施例10:二官能基アクリル型の化合物の例)
本実施例では二官能基アクリル型のうち、リン含有部分がアリールおよびモノエチルエステルである化合物であるW−7oを合成した。合成原料としては、フェニルホスフィン酸モノエチルエステルとしてAldrichから市販されるもの(カタログ番号:415642−5ML)を用いた。
【0192】
【化34】
【0193】
(W−7oの合成)
フェニルホスフィン酸モノエチルエステル45.21mLとベンゾキノン32.4gをTHF150mLに溶解、18時間加熱還流した。反応終了後溶液を濃縮、酢酸エチル50mLで再結晶を行い、緑みの黒色で光沢のある結晶を2.22g得た。この結晶27.82mgをDMF1mLに溶解し、トリエチルアミン27.88μL加えた。溶液を0℃に冷却しメタクリル酸クロリド19.35μL加え、一時間攪拌を行った。反応液を減圧乾燥し重クロロホルムで溶解、31P−NMRにより分析を行ったところW−7oが33.7%得られたことが確認できた。そのNMRの結果は図10Aおよび図10Bに示す。31P-NMR(161.8MHz、CDCl3):26.97。
【0194】
(実施例11:二官能基アクリル型の化合物の例)
本実施例では二官能基アクリル型のうち、リン含有部分がジブチルである化合物であるW−7oを合成した。合成原料としては、ジブチルホスフィンオキシドとして中間物商事株式会社から入手可能なもの(カタログ番号なし。なお、この物質は、Yantai Gem Chemicals Co.,Ltd.(CHINA) カタログNo.無しからも入手可能である。)を用いた。
【0195】
【化35】
【0196】
(W−8oの合成)
ジブチルホスフィンオキシド810mg、ベンゾキノン540mgをトルエン5mLに溶解した。この反応液を50℃で20時間加熱攪拌を行った。この反応液を濃縮し、酢酸エチル2mLで再結晶を行ったところ、乳白色の粉体を29mg得る事が出来た。この粉体27.03mgをDMF1mLに溶解し、トリエチルアミンを27.88μL加えた。溶液を0℃に冷却し、メタクリル酸クロリド19.35μLを加え一時間攪拌を行った。反応液を減圧乾燥し、重クロロホルムに溶解、31P−NMRにより分析を行ったところW−8oが10.7%得られたことが確認できた。そのNMRの結果は図11Aおよび図11Bに示す。
1H-NMR (500MHz、CDCl3) δ1.12-1.47(6H,m),1.74-1.91(8H,m),1.94(3H,s),2.05(3H,s),2.06-2.24(4H,m),5.77(1H,s),5.94(1H,s),6.18(1H,s),6.24(1H,s),7.00-7.20(3H,m)
31P-NMR(161.8MHz、CDCl3):39.40。
【0197】
(比較例1:ジビニルベンゼン架橋ポリマーの合成(難燃性の比較例)
フラスコに、スチレン50mL、ジビニルベンゼン(純度50%)6.24mL、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.43g、アセトン218mLを加えフラスコを窒素置換した。溶液を脱気した後、20時間加熱還流を行った。この反応液を室温まで放冷し、メタノール500mL中に滴下した。析出した沈殿を回収し減圧乾燥を行い27.5gの白色粉末を得た。(収率54.3%)
(比較例2:ジビニルベンゼン架橋ポリマーの燃焼試験)
比較例1で合成したジビニルベンゼン架橋ポリマーを1gアルミホイルに乗せた。ここに、約2秒火を近づけるとサンプルは黒煙を上げながら燃焼し完全に燃え尽きた。
【0198】
(実施例12:リン含有架橋ポリマーの合成)
フラスコに、実施例4で合成したw−2h10.05g、スチレン50mL、AIBN1.43gを入れ、アセトン218mLに溶解した。フラスコを窒素置換し、溶液を脱気し、加熱還流を20時間行った。反応後、反応液を室温まで放冷し、メタノール500mL中に滴下した。析出した沈殿を回収し減圧乾燥を行い29.2gの白色粉末を得た。収率は52.8%であった。
【0199】
(実施例13:リン含有架橋ポリマーの燃焼試験)
実施例12で合成したリン含有架橋ポリマーを1gアルミホイルに乗せた。ここに、2秒火を接触させたところ、着火はしなかった。さらに火を2〜5秒、合計40秒接触させたが着火する事は無かった。
【0200】
(実施例14:リン含有重合体の合成)
本実施例では、実施例1で合成したW−1oの重合反応を行った。
【0201】
シュレンク型フラスコにAIBN3.28mg、W−1o 19.5mgをはかりとり、スチレン114.45μLとアセトン0.5mLを加えた。この溶液を脱気し、窒素雰囲気下で70℃、17時間加熱攪拌を行った。反応終了後、溶液を濃縮した物を回収した。回収量は105mgであった。この回収物を分析した結果、W−1oは重合反応をせずにモノマーとして残っていることが確認できた。
【0202】
(実施例15:リン含有重合体の合成)
本実施例では、実施例4で合成したW-2hの重合反応を行った。
【0203】
シュレンク型フラスコにAIBN3.28mg、W−2h 22.2mgをはかりとり、スチレン114.45μLとアセトン0.5mLを加えた。この溶液を脱気し、窒素雰囲気下で70℃、17時間加熱攪拌を行った。反応終了後、溶液を濃縮した物を回収した。回収量は112mgであった。
【0204】
(実施例16:リン含有重合体の合成)
本実施例では、実施例7で合成したW−3oの重合反応を行った。シュレンク型フラスコにAIBN3.28mg、W−3o 27.13mgをはかりとり、スチレン114.45μLとアセトン0.5mLを加えた。この溶液を脱気し、窒素雰囲気下で70℃、17時間加熱攪拌を行った。反応終了後、溶液を濃縮した物を回収した。回収量は116mgであった。
【0205】
(実施例17:難燃剤を用いた製品例)
実施例1〜16で製造した物質または重合体は、難燃性の樹脂加工品、例えば、難燃性の樹脂(エンジニアプラステック)、例えば、難燃性ポリエチレン(PE)、難燃性架橋PE、難燃性ポリプロピレン(PP)、難燃性ポリスチレン(PS)、難燃性ABS(アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン (Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合合成樹脂)、難燃性ポリカーボネート(PC)、難燃性ポリエチレンテレフタラート(PET)、難燃性変性ポリフェニレンエーテル(PPE)に使用される。
【0206】
これらの難燃性の樹脂(エンジニアプラステック)は、難燃性樹脂加工品、例えば繊維、電気電子機器、OA機器、電線、ケーブル、建築製品、半導体封止剤、絶縁材、シール材などに加工され利用される。
【0207】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0208】
以上のように、本発明に係る化合物、重合体およびその製造方法は、難燃剤、絶縁材料として好適なポリマーを製造するための原料や方法として有用である。また、本発明の製造方法は、上記のような化合物または重合体を製造するための原料や方法として有用である。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4-2】
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7-2】
図8A
図8B
図9B
図11A
図9A
図10A
図10B
図11B