(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072007
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
B01J 19/08 20060101AFI20170123BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
B01J19/08 E
H05H1/24
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-509784(P2014-509784)
(86)(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公表番号】特表2014-514155(P2014-514155A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】FR2012050644
(87)【国際公開番号】WO2012153024
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年3月6日
(31)【優先権主張番号】1153982
(32)【優先日】2011年5月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ベデル
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・ジューヴ
【審査官】
神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−289801(JP,A)
【文献】
特開2007−317656(JP,A)
【文献】
特開2009−247966(JP,A)
【文献】
特開2010−080431(JP,A)
【文献】
特開2005−144445(JP,A)
【文献】
特開2008−049280(JP,A)
【文献】
特開2003−135582(JP,A)
【文献】
特開2004−041884(JP,A)
【文献】
特開2005−138076(JP,A)
【文献】
特表2010−532253(JP,A)
【文献】
特開2007−217229(JP,A)
【文献】
特開2008−049282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00−9/22
B01D 53/32−53/96
B01J 19/00−19/32
B01J 21/00−38/74
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイスであって、
二つの対向する主面を有する少なくとも一つの誘電体基板(3)であって、複数の第一電極(5)が互いに平行に該誘電体基板の二つの対向する主面のうち一方の主面の上に堆積されていて、複数の第二電極(6)が互いに平行に該誘電体基板の二つの対向する主面のうち他方の主面の上に堆積されていて、前記複数の第一電極及び前記複数の第二電極が電源(4)の二つの端子に接続されている、少なくとも一つの誘電体基板(3)と、
前記誘電体基板(3)並びに前記第一電極(5)及び前記第二電極(6)に接触しておらず且つ触媒を組み込んだ少なくとも一つの触媒支持体(7)とを備え、
前記触媒支持体が、前記複数の表面プラズマが発生する前記誘電体基板の表面の前方に存在していて、
前記複数の第一電極(5)及び前記複数の第二電極(6)が、前記複数の表面プラズマが前記第一電極(5)と前記第二電極(6)との間において前記誘電体基板(3)の二つの主面の各々の周辺に形成されるように配置されている、複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【請求項2】
前記第一電極及び前記第二電極が、電極間距離(8)が2mmから15mmの間の範囲内にあるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【請求項3】
前記第一電極及び前記第二電極の各々が、1mmから10cmの間の範囲内の幅を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【請求項4】
前記触媒支持体が、
セラミックであるジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化バナジウム、菫青石、WO3、TiO2、ZnO、及びこれらの混合物、並びに、
金属であるAl、Cu、Ni、Zn、ステンレス鋼、Ti、FeCrAl、及びこれらの混合物
から成る群から選択されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【請求項5】
前記触媒支持体が金属又はセラミックのハニカム状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【請求項6】
前記触媒支持体が1mmから10cmの間の範囲内の厚さを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【請求項7】
前記触媒支持体が、金属酸化物、窒化物、金属、及びこれらの混合物から成る群から選択された触媒を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【請求項8】
前記金属、前記金属酸化物又は前記窒化物が、Pt、Ag、Ru、Rh、Cu、Fe、Cr、Pd、Zn、Mn、Co、Ni、V、Mo、Au、Ir、及びCeから成る群から選択された金属に基づいていることを特徴とする請求項7に記載の複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【請求項9】
少なくとも二つの誘電体基板を備え、前記少なくとも一つの触媒支持体が、前記第一電極を備えた二つの主面の間に、又は前記第二電極を備えた二つの主面の間に配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【請求項10】
前記少なくとも二つの誘電体基板の間隔が10mmから15cmの間の範囲内であることを特徴とする請求項9に記載の複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【請求項11】
前記誘電体基板及び前記触媒支持体が5mmから10cmで離隔されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【請求項12】
前記第一電極及び前記第二電極が、電極間距離(8)が4mmから8mmの間の範囲内にあるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【請求項13】
前記第一電極及び前記第二電極の各々が、3mmから5mmの間の範囲内の幅を有することを特徴とする請求項1に記載の複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【請求項14】
前記少なくとも二つの誘電体基板の間隔が1cmから5cmの間の範囲内であることを特徴とする請求項9に記載の複数の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の存在下において、表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイスに関する。
【0002】
本発明の利用分野として、特に、ガスに含まれ得る汚染物質の分解、ガスの改質、再利用が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
ガス処理の分野において、プラズマを用いた方法は、汚染物質がガス内に少量含まれている場合に低エネルギーコストで大気温度において汚染物質を除去することができるので、特に有利となり得る。また、こうした方法は、二種類のガス状化合物間の反応温度を下げ、及び/又は、二種類の化合物間の反応を生じさせるのに必要なパワーを下げ得る。そのプラズマは、大気圧における体積プラズマ又は表面プラズマであり得る。
【0004】
大気プラズマの場合、誘電体バリア放電(DBD,dielectric barrier discharge)法が一般的に実施される。この方法は、二つの電極間にAC信号を印加することを備え、電気アークが形成されることを防止するために、二つの電極間に誘電体基板を介在させる(
図1)。
【0005】
体積DBDプラズマの場合、プラズマを発生させるのに必要な電圧が電極間隔(
図1)と共に増大し、誘電体基板の厚さがその誘電強度に関係しているので、電極間の間隔は数ミリメートルに制限される。電極間隔は、特に、誘電体基板の特性と印加電圧とに依存する。誘電体厚さは一般的に3mmから5mmの間であり、ガスが流れる自由空間も同程度の大きさとなり、これは顕著なヘッドロスを生じさせる。このような構成においては、特許文献1に記載されているように、触媒を、電極に対向する表面上に堆積させることによってプラズマ領域に導入することができる。触媒が導体の場合には、電極自体を触媒として用いることもできる。
【0006】
また、DBD法で、表面プラズマを発生させることもできる。プラズマは、誘電体基板の表面近傍に形成される。二つの電極が、その誘電体基板の両主面においてこの誘電体基板上に配置される(
図2)。
【0007】
電極間隔に応じて、プラズマ領域を調整することができる。この構成では、誘電体基板間の距離は、放電パラメータに無関係である。特許文献2に記載されているように、このような表面プラズマは、電極付近におけるガス速度の加速を生じさせる。非特許文献1に記載されているように、表面上の多数の電極によって、表面に垂直なジェット効果を生じさせることができる。
【0008】
特許文献3には、ガス雰囲気における汚染物質の分解のためのこのような表面プラズマの使用が与えられている。特許文献3には、電極間の空間において誘電体基板と接触している薄層状に配置された光触媒(TiO
2)の使用について記載されていて、このような触媒が、分解生成物を選択する。この場合、プラズマ領域における強力な消耗を防止するため、触媒を金属等の導体とすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0070127号明細書
【特許文献2】米国特許第7380756号明細書
【特許文献3】仏国特許発明第2918293号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Benard等、Thin Solid Films、第516巻、pp.6660−6667、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ガス処理のために、特に汚染物質の分解、ガスの改質、再利用のために、多様な触媒で表面プラズマを発生させることができるデバイスに関する。
【0012】
本発明は、ガス変換を改善するだけでなく、ヘッドロスを減らし、可能な限り低い消費電力及び可能な限り低い温度を提供することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、プラズマが、大気温度で存在しているガスから、ラジカル、イオン、活性種を発生させることができるガス処理デバイスを開発した。本デバイスは、ヘッドロスを制限し、表面プラズマよって活性化された種と触媒系との相互作用を促進することができる。
【0014】
触媒系は、種、特に汚染物質と相互作用して、プラズマ効率を上昇させて、反応の選択性に作用することもできる。
【0015】
より具体的には、本発明は、表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイスに関し、そのデバイスは以下のものを備える:
‐ 二つの対向する主面を有する少なくとも一つの誘電体基板。少なくとも一つの第一電極及び少なくとも一つの第二電極がその基板の二つの対向する主面の上にそれぞれ堆積されている。第一電極及び第二電極は電源の二つの端子に接続されている;
‐ 誘電体基板及び電極から独立していて且つ触媒を組み込んだ少なくとも一つの触媒支持体。
【0016】
電極との用語は、同じ電源に接続された等電位の一つの電極又は複数の電極のことを指称する。電源は有利にはAC信号又はパルス信号を有する。
【0017】
“複数の電極”とは、有利には互いに平行に配置された電極のことを指称する。
【0018】
“独立”とは本願において、触媒支持体が基板から物理的に独立していること、つまり、触媒支持体が基板に接触していないことによって、いずれの電極にも接触していないことを意味する。より具体的には、形成される表面プラズマは、触媒支持体と接触せず、プラズマが触媒支持体を劣化させる危険性が無い。表面プラズマは、ガス流に含まれて処理される種を基板表面に対して実質的に垂直に加速させて送ることを促進する。
【0019】
一般的に、本発明に係るデバイスを用いて処理されるガスは、VOC(Volatile Organic Compound、揮発性有機化合物)、NO
X(酸化窒素)等を備える。汚染物質の量は、応用及び処理されるガスの特性に応じて、1ppmから数千ppmとなり得る。
【0020】
上述のように、本発明に係るデバイスの構成は、ヘッドロスを制限し、表面プラズマによって生成される活性種と触媒支持体又は触媒との間の接触を増強することを可能にする。実際、二つの誘電体基板の間に触媒が存在することによって、ガスを処理するのに必要な消費電力を減少させることができる。プラズマが電極付近のガス速度の加速及び誘電体基板の表面に垂直なジェット効果を生じさせる場合、表面プラズマによって生成された種は、触媒支持体に向けられる(非特許文献1を参照)。
【0021】
表面プラズマは、第一電極と第二電極との間において、誘電体基板の二つの主面の各々の周辺に形成される点に留意されたい。
【0022】
更に、触媒支持体が電極を備えた誘電体基板から独立している本発明に係るデバイスは、従来技術のデバイスよりも多様性を提供する。二つの誘電体基板(一般的には多孔質体(発泡体やハニカム))の間に配置された触媒間に相乗効果が生じる。従って、本発明は、導電性又は絶縁性の触媒支持体(発泡体やハニカム)に備わった多様な触媒をプラズマと関係させることができる。他方では、本デバイスにおいて、触媒支持体の厚さは制限されず、二つの誘電体基板(存在する場合)間の間隔よりも薄ければよい。
【0023】
有利には、本発明に係るデバイスの第一電極又は第二電極は、有利には1mmから10cmの間、更に有利には3mmから5mmの間の範囲内の幅を有し得る。
【0024】
特定の実施形態では、各電極は、誘電体基板上に配置された等電位の複数の平行なストリップで形成され得て、基板の主面に平行な平面上への各電極の投影図は、インターディジット型となる。従って、誘電体基板の表面が有利に最適化されて、複数の表面プラズマが発生し得る。
【0025】
有利には、誘電体基板上に堆積させた電極の表面積は、それら電極を備えた誘電体基板の主面の全面積の10から90%、有利には30から50%の間に達する。
【0026】
誘電体基板の主面上に堆積させた電極は、処理されるガスの一般的な流れ方向に実質的に直交して又は実質的に平行に配置され得る。
【0027】
基板の主面に平行な平面上における電極投影図と電極投影図との間の距離として定義される電極間隔は、2mmから15mmの間、有利には4mmから8mmの間の範囲内である。
【0028】
更に、上述のように定義される電極間隔と電極幅との比は、典型的に0から2の間の範囲内である。
【0029】
好ましくは、各電極の厚さは1μmから2mmの間の範囲内である。
【0030】
有利には、触媒支持体は、高密度物質のプレート状; 金属又はセラミックの発泡体状; 又は、金属又はセラミックのハニカム状であり得る。触媒支持体は有利には:
‐ セラミック製: ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化バナジウム、菫青石(コーディアライト)、WO
3、TiO
2、ZnO、これらの混合物製;又は、
‐ 金属製: Al、Cu、Ni、Zn、ステンレス鋼、Ti、FeCrAl、これらの混合物製となる。
【0031】
更に、触媒支持体は一般的に有利には1mmから10cmの間の範囲内、更に有利には5mmから5cmの間の厚さを有する。
【0032】
触媒支持体は、有利には、酸化金属、窒化物、金属、これらの混合物、更に有利にはPt、Ag、Ru、Rh、Cu、Fe、Cr、Pd、Zn、Mn、Co、Ni、V、Mo、Au、Ir、Ceから成る群から選択可能な触媒を備える。
【0033】
ヘッドロスを制限するため、誘電体基板及び触媒支持体は、有利には5mmから10cmの間、更に有利には5mmから5cmの間で離隔される。
【0034】
誘電体基板は、有利には、シリカ、ガラス、アルミナから成る群から選択された物質製である。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明に係るデバイスは、互いに間隔の空けられた少なくとも二つの誘電体基板を備え得て、その間隔は好ましくは10mmから15cmの間、更に有利には1cmから5cmの間の範囲内である。本デバイスは、第一電極を備えた二つの主面の間、又は第二電極を備えた二つの主面の間に有利に配置された少なくとも一つの触媒支持体を備える。
【0036】
この構成では、触媒支持体は、投影図において電極及びプラズマの領域を少なくとも部分的に覆うように誘電体基板の間に配置される。
【0037】
触媒支持体は、その上にプラズマが発生する誘電体基板の表面の前方に配置される。
【0038】
特定の実施形態では、本発明に係る表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイスはシリンダー状である。誘電体基板及び触媒支持体がシリンダー状で同軸状である。誘電体基板を、シリンダー状の触媒支持体の内部に配置することができる。これは触媒支持体にも当てはまり、シリンダー状の誘電体基板の内部に配置することができる。
【0039】
一般的に、表面プラズマは900mbarから20barの間、より好ましくは900mbarから2barの間、更に好ましくは大気圧で発生し得る。
【0040】
また、本発明は、ガスに含まれ得る汚染物質(VOC、NO
X等)の分解、炭化水素やアルコールの改質、CO
2の再利用等のために上述の表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイスの使用にも関する。
【発明の効果】
【0041】
特に、本発明は以下の利点を有する:
‐ 想定される応用に応じて、誘電体基板間の距離を調整することができる;
‐ 想定される応用に応じて、触媒支持体の構造を変更することができる;
‐ 想定される応用に応じて、触媒の特性を選択することができる;
‐ 想定される応用に応じて、誘電体基板と触媒支持体との間の距離を調整して、ヘッドロスを制限することができる。
【0042】
本発明を例示するものとして与えられる以下の非限定的な図面及び例から、本発明及び結果としての利点がより良く明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】従来技術に従って二つの別々の誘電体基板上に堆積された二つの電極間に大気プラズマを形成する様子を示し、二枚の誘電体基板の一方が二つの電極の間に介在している。
【
図2】従来技術に従って、同一の誘電体基板の両面に堆積させた二つの電極間に表面プラズマを形成する様子を示す。
【
図3】本発明に係る表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイスを示し、そのデバイスは、二つの触媒支持体と電極で部分的に覆われた三つの誘電体基板とを備える。
【
図4】基板の主面に平行な同一平面への電極の投影図を示す。
【
図5】本発明に係る表面プラズマを用いてガスを処理するためのシリンダー状のデバイスを示し、そのデバイスは二つの誘電体基板と二つの触媒支持体とを備える。
【
図6】本発明に係る表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイスの断面図を示し、誘電体基板上に堆積させた第一電極と第二電極との間の電極間隔が示されている。
【
図7】ガス処理に関して従来技術に係るデバイス(ダイヤモンド)及び本発明に係るデバイス(正方形)に印加された比エネルギーに応じたトルエン変換率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
上述のように、
図1は、従来技術に従って電源(4)に接続された二つの電極(5、6)の間に大気圧体積プラズマ(1)を形成する様子を示す。二つの電極は、互いに離隔された二つの誘電体基板(3)上に堆積される。大気プラズマ(1)を、互いに離隔された二つの電極(5、6)の間に発生させ、それら二枚の電極は、一方では二枚の誘電体基板のうち一方によって、他方では基板同士を離隔する空間によって、互いに離隔される。
【0045】
図2は、他の従来技術の構成に従って電源(4)に接続された二つの電極(5、6)の間の各表面上に表面プラズマ(2)を形成する様子を示す。二つの電極は、同一の誘電体基板(3)の両面上に堆積される。
【0046】
図3は、本発明に係る表面プラズマを用いてガスを処理するためのデバイスの断面図を示す。このデバイスは、ウェーハ状の三つの誘電体基板(3)を備え、各ウェーハは二つの対向する主面を画定する。
【0047】
各基板の二つの対向する主面はそれぞれ第一電極(5)及び第二電極(6)を備え、電極は、電源(4)に接続された一組の平行なストリップとして形成される。
【0048】
触媒支持体(7)もウェーハ状であり、基板(3)間に介在している。触媒支持体(7)は、その周辺に表面プラズマが発生する誘電体基板の前方に配置される。
【0049】
図4は、
図3の同一の基板上の電極(5、6)をその基板に平行な平面に投影した投影図を示す。この投影図は、インターディジット型電極を示す。従って、電極間空間(8)が画定されているのが見て取れる(
図6)。
【0050】
図5は、本発明に係る表面プラズマを用いてガスを処理するためのシリンダー状デバイスを示す。二つの同軸シリンダー状誘電体基板が使用されて、それらの間に触媒支持体が、シリンダー状でそれら基板に対して同軸で介在しているのが見て取れる。更に、中央の触媒支持体が見て取れる。
【0051】
図6は、電極間空間(電極間隔)(8)を形成するように介在させた第一電極(5)及び第二電極(6)を備えた誘電体基板(3)の縦断面図を示す。
【0052】
例1及び例2は、55ppmのトルエンを有する乾燥空気中におけるトルエンの分解に関する。
【0053】
[例1(従来技術)]
矩形の反応器は、4cmの高さ、12cmの幅、15cmの長さを有する。ガス流入口が、ガス注入デバイス(この場合、55ppmのトルエン(除去したい汚染物質)を含有する乾燥空気)に接続され、一方の端部に位置し、ガス流出口が、トルエン変換率を求めるためのガスクロマトグラフィデバイスに接続され、他方の端部に位置する。
【0054】
幅12cmで長さ14cmの二つの誘電体基板を反応器内に配置する。誘電体(石英)製の幅2cmのシムを、反応器の両側に配置して、二つの誘電体基板間に3cmの間隔を空け得る。電極は、反応器の誘電体基板の全幅(8cm)を覆い(シムを除く)、つまり、反応器の主軸における電極の長さは略7.5cmである。
【0055】
電極は、幅3mmで長さ7.5cmの銅製である。
【0056】
図6の構成における電極間距離(8)は3mmである。誘電体基板の各表面は7つの電極を有する。電気的連続性を与えるため、誘電体基板の幅方向に沿って、電極を銅電気回路で相互接続する。第一電極(5)が電源に接続されて、第二電極が接地される。
【0057】
このデバイスを、ガスクロマトグラフィによって測定されるトルエンに対応するピークが安定して参照ピークが得られるまで、55ppmのトルエンを含有する空気に通す。
【0058】
プラズマによって消費される320J/Lの比エネルギーのために、電源に接続された電極に、±15kVの正弦波電圧を印加する。
【0059】
30分間後に、ガスクロマトグラフィによる対応ピークの領域の測定によって、トルエン変換率を求める。
【0060】
そして、プラズマの比エネルギーを低下させて、30分間後に、新たな変換率を求める。この手順をより低い比エネルギーに適用する。
【0061】
得られた結果が
図7のグラフに示されていて(ダイヤモンド)、プラズマによって消費された比エネルギーに対してトルエン変換率が示されている。“変換率”は、トルエンの分解率に関係している。トルエンの大部分はCO
2及びH
2Oに変換される。
【0062】
[例2(本発明)]
本デバイスは、厚さ5mmの菫青石(コーディアライト)製のハニカム触媒支持体を更に備える点を除いては、例1のものと同一である。
【0063】
触媒支持体は、二つの誘電体基板の間に配置され、各誘電体基板から12.5mm離される。触媒支持体は、誘電体基板のウェーハに対して垂直に向けられたチャネル内に略500ppmのプラチナと、500ppmのパラジウムとを備える。
【0065】
結果が
図7のグラフに示されている(正方形)。等価な比エネルギーに対して、本発明に係るデバイス(正方形)は、従来技術のもの(ダイヤモンド)よりも高い変換率を有する。従って、同一のトルエン変換率に対して、本発明に係るデバイスはあまりエネルギーを必要とせず、同一の比エネルギーに対して高い変換率を有する。
【符号の説明】
【0066】
2 表面プラズマ
3 誘電体基板
4 電源
5 第一電極
6 第二電極
7 触媒支持体