特許第6072013号(P6072013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072013
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】生体適合性材料及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/10 20060101AFI20170130BHJP
   C04B 35/16 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   A61L27/10
   C04B35/16
【請求項の数】11
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-513003(P2014-513003)
(86)(22)【出願日】2012年6月1日
(65)【公表番号】特表2014-516714(P2014-516714A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】AU2012000625
(87)【国際公開番号】WO2012162753
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年5月20日
(31)【優先権主張番号】2011902160
(32)【優先日】2011年6月1日
(33)【優先権主張国】AU
(31)【優先権主張番号】2011903923
(32)【優先日】2011年9月23日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】513302097
【氏名又は名称】ザ・ユニヴァーシティ・オブ・シドニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ハラ・ズレイカット
(72)【発明者】
【氏名】セイェド−イマン・ローハニ−エスファハニ
(72)【発明者】
【氏名】コリン・ダンスタン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ・ジャオ・リ
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/003191(WO,A1)
【文献】 米国特許第03787900(US,A)
【文献】 The incorporation of strontium and zinc into a calcium-silicon ceramic for bone tissue engineering,Biomaterials,2010年,Vol.31, No.12,Page.3175-3184
【文献】 A novel hardystonite bioceramic: preparation and characteristics,Ceram Int,2005年,Vol.31, No.1,Page.27-31
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/00
C04B 35/00−35/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸ストロンチウムカルシウム亜鉛及びガーナイト(ZnAl2O4)を含む複合生体適合性セラミック材料。
【請求項2】
近似分子式Sr0.1Ca1.9ZnSi2O7のケイ酸ストロンチウムカルシウム亜鉛及びガーナイトを含む、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
ガーナイトの重量百分率が20%である、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
前記材料の気孔率が、75〜85%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
前記材料の圧縮強度が、4MPaである、請求項1から4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
前記材料の弾性率が、170MPaである、請求項1から5のいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
ポリグリコリド、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリラクチド、アルギネート、コラーゲン、キトサン、ポリアルキレンオキサレート、ポリ無水物、ポリ(グリコリド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリエステルアミド及び/又はポリデプシペプチドから選択される少なくとも1種の吸収性ポリマー材料を含むコーティングを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の材料。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の材料を含む、植込み型医療機器、骨インプラント、歯の詰め物又はバイオセメント又は植込み型薬物送達装置。
【請求項9】
複合生体適合性セラミック材料を調製するための方法であって、
ゾル-ゲル法によって、ストロンチウムがドープされたケイ酸カルシウム亜鉛粉末を生成するステップと、
回転ボールミル機によって、前記のストロンチウムがドープされたケイ酸カルシウム亜鉛粉末をアルミナ粉末と混合し、機械的に活性化させるステップと、
得られた粉末を乾燥及び焼結して、前記複合生体適合性セラミック材料を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項10】
複合生体適合性セラミック材料を調製するための組成物であって、アルミナと、ストロンチウムがドープされたハーディストナイト[SrxCa(2-x)ZnSi2O7](式中、xは0.05〜0.9である)の形態のSrがドープされたケイ酸カルシウム亜鉛とを含む、組成物。
【請求項11】
アルミナの量が、15重量%である、請求項10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、オーストラリア仮特許出願第2011902160号(2011年6月1日)及び第2011903923号(2011年6月23日)の利益を請求する。両特許出願の開示事項を、参照によって本明細書中に組み入れる。
【0002】
本発明は、生体適合性材料に関し、詳細には、2相又は複合生体適合性セラミック材料であって、第1相がドープされたケイ酸カルシウム亜鉛であり、第2相が金属酸化物である材料に関する。一実施形態において、本発明は、骨組織を含む組織の再生に使用するために開発した。他の実施形態において、本発明は、先行技術の植込み型医療機器の長期安定性を改善するためのコーティングとして開発した。別の実施形態において、本発明は、薬物送達に使用するために又は骨格組織再生のために開発した。別の実施形態において、本発明は、注射可能な形態での送達のために開発した。しかし、本発明はこれらの特定の使用分野に限定されないことはわかるであろう。
【背景技術】
【0003】
先行技術に関する以下の記述は、本発明を適切な技術的視点から位置づけるために及び本発明の利点をより十分に理解できるように提供する。しかし、本明細書全体にわたる先行技術についての記述は、このような先行技術が当技術分野において広範に知られていること又は当技術分野において周知の一般知識の一部を形成することを特別に又は暗黙に認めるものとみなしてはならないことを理解すべきである。
【0004】
生体組織としての骨には自己治癒能力があるが、場合によっては、原因のいかんを問わず、骨の損傷があまりに重度で自然治癒させることができず、したがって再生を刺激することために骨移植片が必要である。骨移植片には、自家移植片、同種移植片及び合成移植片の3つの主な種類がある。合成移植片は、限られた供給、供与部位の疼痛及び組織の免疫原性などの自家移植片及び同種移植片に伴う問題の多くを改善できるため、合成移植片の分野において、骨代用材としての研究がかなり行われている。
【0005】
進行性変性骨疾患(advanced degenerative bone disease)の場合、関節置換療法が依然として、疼痛及び苦痛の軽減に利用できる唯一の治療である。しかし、整形外科のこの領域において利用可能な技術は、決して満足とはいえない。例えば、オーストラリア人について言えば、年間に60000例を超える股関節及び膝関節の置換手術が必要とされ、これは、毎年およそ10%が増加していると推定される速度であり、それらのうち実に25%が、破損したインプラントの修正である[Graves, S.E.ら、The Australian Orthopaedic Association National Joint Replacement Registry. Med. J. Aust、2004年;180(5 Suppl):S31〜4頁]。骨ストック(bone stock)が損なわれている状況、又は初期のインプラント安定性が疑わしい状況(例えば、老年患者、外傷後の損傷(post-traumatic injury)又は修正手術)においてはさらなる合併症が起こり、これらの場合には通常は、短期的及び長期的な臨床結果が劣っている。平均余命が増加し及びインプラントを必要とする若年患者数が増加したため、より長いインプラント寿命の必要性が浮き彫りになっている。そのため、骨結合を介してセメントレスプロテーゼを生体骨に直接固定するための新規な微小改変(micro-engineered)面を開発し、それによって生涯にわたる機能負荷を支持するのに十分に強い安定な界面を提供しようとする生物医学研究が推進されている。現在の整形外科用装置の寿命に関する問題は深刻であり、この問題が、このような治療を必要とする高齢化人口からの需要の増加に伴ってもっぱら増加すると予想されることは明白である。これらの整形外科用装置の性能を向上させるための改善を行えれば、整形外科学界のみならず患者自身にも歓迎されることは明白である。
【0006】
骨細胞及び内皮細胞の移動、増殖及び分化を促進する3Dスキャフォールドが、整形外科手術のみならず顎顔面手術においてもますます重要になってきている。理想的な骨置換材料は、骨形成及び血管新生をサポートし、最小の線維形成反応を示し、骨再形成のための一時的な生体材料として機能すべきである。これらはまた、制御されたやり方で分解して、通常の生理機構によって代謝又は排泄できる無毒性の産物とならなければならない(Yaszemskiら、Biomaterials、1996年、17、175〜185頁)。スキャフォールドは、機械的強度を有し、応力遮蔽を防止するように骨と同様な弾性率を有するのみならず、繰り返し荷重下での疲労骨折を防止するのに十分な靭性を維持し続ける必要がある。現在のところ、骨組織再生に及び関節炎にかかった関節の、関節軟骨によるリサーフェシング(resurfacing)に利用可能な、成功した戦略はない。軟骨組織修復応答の欠如は、組織再生を促進する新しいモダリティーに対する大きな需要を生み出した。
【0007】
過去100年にわたって、骨成長を促進及び刺激するために並びにスキャフォールドとして、種々のセラミックが研究されてきた。例えば、1880年代には、硫酸カルシウム(焼き石膏)が利用された。しかし、硫酸カルシウムは、生物活性が比較的低く、分解速度が比較的速い(Tayら、Orthop. Clin. North Am.、1999年、30:615〜23頁)。1950年代には、ヒドロキシアパタイトが利用されたが、これは、分解速度が比較的遅く、機械的性質が不良であった(Wiltfang J.ら、J. Biomed. Mater. Res. 2002年;63:115〜21頁)。1970年代には、Bioglass(登録商標)が開発された。しかし、この材料は、固有の脆弱性のために取り扱いが比較的難しく、曲げ強さが比較的低い(Cordioli G.、Clin. Oral Implants Res. 2001年、13:655〜65頁)。1990年代には、ケイ酸カルシウムセラミックが、骨成長を刺激するために使用され始めた。これらは、潜在的な生物活性材料とみなされ、それらの分解産物は炎症反応を誘発しない。しかし、これらの材料には、それらの物理的及び生物学的性質を損なう以下のような欠陥が存在する:a.)必要な機械的性質と開気孔率とを兼ね備えることができない、b.)機械的強度が乏しいため、荷重負荷用途には好適ではない、c.)化学的不安定性が乏しい(分解速度が速い)ため、細胞の生存に悪影響をもたらし、しかも、長期生物学的用途を制限する高アルカリ性の状態を周囲環境にもたらす。
【0008】
より最近の他のセラミック、例えば、HAp、Bioverit(登録商標)、Ceraverit(登録商標)及び他のケイ酸カルシウムは、生体骨に接着し且つ幅広い臨床用途に適合する(すなわち、生物活性が良好である)ことが判明したが、これらの材料は比較的脆弱であるため、例えば脚に見られる皮質骨などの高負荷部位には使用できない。したがって、これらの材料は、良好な生物活性を有するが、植え込み後の生分解性が十分でなく、機械的強度が損なわれる[Hench L.L.、J Am Ceram. Soc. 1998年81:1705〜28]。これらは脆すぎ、頻繁に破砕する。少なくともこの理由のために、このような材料は典型的には、用途が金属インプラント上のコーティングに限定される。
【0009】
別の既知の材料は、ドープされたハーディストナイトであり、これは国際公開WO 2010/003191に詳述されている。ドープされたハーディストナイトは、Sr、Mg又はBaがドープされたハーディストナイト(Ca2ZnSi2O7)を含む生体適合性セラミック材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開WO2010/003191
【特許文献2】US6,162,537
【特許文献3】国際公開WO2006/047820
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Graves, S.E.ら、The Australian Orthopaedic Association National Joint Replacement Registry. Med. J. Aust、2004年;180(5 Suppl):S31〜4頁
【非特許文献2】Yaszemskiら、Biomaterials、1996年、17、175〜185頁
【非特許文献3】Tayら、Orthop. Clin. North Am.、1999年、30:615〜23頁
【非特許文献4】Wiltfang J.ら、J. Biomed. Mater. Res. 2002年;63:115〜21頁
【非特許文献5】Cordioli G.、Clin. Oral Implants Res. 2001年、13:655〜65頁
【非特許文献6】Hench L.L.、J Am Ceram. Soc. 1998年81:1705〜28頁
【非特許文献7】Xynos I.D.ら、「Ionic products of bioactive glass dissolution increase proliferation of human osteoblasts and induce insulin-like growth factor II mRNA expression and protein synthesis」、Biochem. Biophy. Res. Commun. 2000年;276:461〜465頁
【非特許文献8】Siriphannon P.ら、Formation of hydroxyapatite on CaSiO3 powders in simulated body fluid、J. Eur. Ceram. Soc. 2002年;22:511〜520頁
【非特許文献9】Roohani-Esfahani S.I.、Nouri-Khorasani S.、Lu Z.、Appleyard R.、Zreiqat H.、「The influence hydroxyapatite nanoparticle shape and size on the properties of biphasic calcium phosphate scaffolds coated with hydroxyapatite-PCL composites」、Biomaterials、2010年7月;31(21):5498〜509頁
【非特許文献10】Kokubo T.及びTakadama H、「How useful is SBF in predicting in vivo bone bioactivity?」、Biomaterials、(2006年)27、2907〜2915頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、前述の先行技術の欠点の少なくとも1つを克服若しくは改善すること、又は有用な代替手段を提供することである。
【0013】
本発明の特に好ましい形態の目的は、例えば植込み型医療機器の長期安定性を改善するために有用であり得る複合生体適合性セラミック材料及び/又はこのような材料を含む植込み型薬物送達装置を提供することである。
【0014】
文脈上他の意味に解すべきことが明白でない限り、本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、用語「含む(comprise、comprising)」などは、排他的又は網羅的な意味ではなく包含的な意味で、すなわち、「〜を含むがこれらに限定されない」という意味で解釈すべきである。
【0015】
本発明を、具体例を参照して説明するが、当業者には、本発明を多くの他の形態で具体化できることがわかるであろう。
【0016】
当業者ならば、用語「生体適合性」が双方向の応答、すなわち、材料に対する身体の応答及び身体に対する材料の応答を定義することがわかるであろう。医療機器の生体適合性とは、医療機器が、ホストにおいて著しい又は長期にわたる不所望な局所作用又は全身作用を引き起こすことなく、そのホストへの所望の組込み度でその目的とする機能を果たすことができることを指す。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様により、本発明は、第1の相及び第2の相を含む複合生体適合性セラミック材料であって、前記第1の相がドープされたハーディストナイト(Ca2ZnSi2O7)であり、前記第2の相がスピネル群の鉱物に属する金属酸化物である材料を提供する。
【0018】
第1の相は、国際公開WO2010/003191に詳述されている、ドープされたハーディストナイト(Ca2ZnSi2O7)である。ハーディストナイトには、ストロンチウム、バリウム及び/又はマグネシウムのうちの少なくとも1種がドープされている。第2の相は、スピネル群の鉱物に属する金属酸化物である。スピネルは、一般式A2+B23+O42-の鉱物の種類のいずれかであり、立方晶系/等軸晶系で結晶化し、酸化物アニオンが立方最密充填格子で配列され、カチオンA及びBが、格子中の八面体サイト及び四面体サイトの一部又は全てを占めている。A及びBは、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン、アルミニウム、クロム、チタン及びケイ素を含む、二価、三価又は四価のカチオンであることができる。好ましい実施形態において、金属酸化物はガーナイト(ZnAl2O4)であり、これは「亜鉛尖晶石」と称されることもある。しかし、他の実施形態において、金属酸化物は一般名「スピネル」(MgAl2O4)若しくはヘルシナイト(FeAl2O4)又はそれらの組合せである。
【0019】
本発明の第1の態様によって定義される材料は、前記第1の相及び前記第2の相の単独での生体適合性よりも大きい第1の相と第2の相との間の相乗的生体適合性を具体化する。
【0020】
好ましい一実施形態において、前記第1の相は、分子式[(SraBabMgc)Ca[2.0-Σ(a,b,c)]ZnSi2O7](式中、Σ(a,b,c)は0.05〜0.9である)を含み、前記第2の相は、分子式[(MgxZnyFez)Al2O4](式中、Σ(x,y,z)=1)を含む。
【0021】
別の実施形態において、前記第1の相は、式Sr0.1Ca1.9ZnSi2O7のケイ酸ストロンチウムカルシウム亜鉛である。一実施形態において、前記第1の相の重量百分率は、約70〜約99%であり、前記第2の相の個別の重量百分率は約30〜約1%である。
【0022】
好ましい一実施形態において、材料は、インプラントグレード又は医療グレードの材料である。材料は好ましくは、体液への曝露時にヒドロキシアパタイト層を形成し、それによって哺乳動物の体内における生体適合性を向上させる。
【0023】
他の好ましい実施形態において、材料は、約20〜約80%の気孔率、約20〜約500ミクロン平均細孔径及び/又は約2〜約15MPaの圧縮強度を有する。
【0024】
便宜上、以下の記述において、第1の相は、「相A」又は「Sr-HT」と称し、第2の相は、「相B」又は「鉱物酸化物」と称する。しかし、本発明のセラミック材料が実際の別個の不連続相を有していても有していなくてもよいこと、材料がこれらの「相」の均質混合物であっても、各「相」を含む、別個に識別可能な構成要素の多相系であってもよいことがわかるであろう。本発明の材料は、ドープされたハーディストナイト及び鉱物酸化物を含む複合材料である。
【0025】
相Aと相Bの混合物中の相Aの重量百分率は、70%程度に低くてもよいし、99%程度に高くてもよく、したがって、相Bの個別の重量百分率は30〜1%となる。詳細には、相Aの量は、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99重量%であることができ、相Bの(非個別の)量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30重量%であることができる。
【0026】
最終材料中の鉱物酸化物(相B)の百分率は、ドープされたハーディストナイト(相A)に添加されるアルミナの百分率に左右される。説明のために、一例としてガーナイトを用いて、アルミナを、ストロンチウムがドープされたハーディストナイトと高温で反応させると、部分融解が起こる。ガーナイト相が、この融解物から形成される。スキャフォールドが大規模融解により「崩壊する」傾向があるので、追加のアルミナは一定量を超えては添加できないことがわかっている。これは事実上、アルミナの最大添加量が、最終材料中に約20%のガーナイトをもたらす約15重量%であることを意味する。しかし、系は、約30%までのガーナイトを得るように構成できると考えられる。
【0027】
WO2010/003191において、ハーディストナイト(Hardsytonite)中のCaイオンをSrで部分的に置き換えることによってCa-Si系中でZnイオンとSrイオンとを合わせることによって、新規材料、ケイ酸ストロンチウムカルシウム亜鉛(Sr0.1Ca1.9ZnSi2O7)が得られた。この好ましい材料は、ソル-ゲル方法によって作られた。新しい材料は驚くべきことに、向上した生物学的性質を示し、これは意外なことに、関連する既知の材料よりも良好であった。本発明においては、Sr-HTを、ガーナイトと組合せた。この組合せによって、驚くべき相乗効果がもたらされた。すなわち、新しい複合セラミック材料は、個別の構成要素の合計よりも際だった性質を示した。本発明の新しい複合セラミック材料は、好ましくはSr-HTとガーナイトとの80/20(重量/重量)混合物を含み、生体適合性であるのみならず、市販材料又はSr-HT単独よりも優れた材料であることが明白である。新しい複合セラミック材料、Sr-HT/ガーナイト(80/20重量%)はまた、組成及び結晶構造がSr-HTとは異なり、以下のパラメーターの少なくとも1つ又は複数がSr-HTより優れている:組成;結晶構造;安定性;機械的強度(市販材料の100倍良好である)及び弾性率;親水性;耐破壊性;生物学的挙動、例えば、付着、延展及びヒト骨芽細胞分化の誘導(骨芽細胞=骨形成細胞)。
【0028】
驚くべきことに、Sr-HTとガーナイトの複合セラミック材料は、その骨伝導性及び骨誘導性によって示されるように、向上した生体適合性及び生物活性を示すことが発見された。さらに、Sr-HTとガーナイトの複合セラミック材料は、骨組織及び他の組織の再生に特に適している。一実施形態において、本発明の複合生体適合性セラミック材料は、関節炎にかかった関節をリサーフェシングして関節軟骨の成長を促進するのに特に有用である。他の実施形態において、本発明の複合生体適合性セラミック材料は、骨細胞及び内皮細胞の移動、増殖及び分化を促進する3Dスキャフォールドの開発において、例えば、整形外科手術及び顎顔面手術において有用であり、さらに、荷重負荷部分に十分な機械的性質をもたらす。本発明の生体適合性セラミック材料は、骨組織再生/形成及び血管新生をサポートし、さらにまた、最小の線維形成反応を示す。一形態において、本発明は、骨軟骨欠損のための複合セラミックスキャフォールドを提供する。他の形態において、本発明は、向上した長期インプラント安定性を向上させるために、現在使用されている整形外科用インプラント及び歯科用インプラント上にコーティング可能な材料を提供する。本発明の複合生体適合性セラミック材料は、骨格組織再生のためのコーティングとしても有用である。本発明はまた、再建及び修復の目的に加えて、美容目的に用途を見出し、例えば、本発明の材料は、鼻及び顎を美しくする若しくは脚を長くするために使用される。他方において、本発明は、顎顔面再建の用途に、整形外科用金属インプラント及び歯科用のコーティングに特に適切である。
【0029】
好ましい一実施形態において、材料は、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリラクチド、アルギネート、コラーゲン、キトサン、ポリアルキレンオキサレート、ポリ無水物、ポリ(グリコリド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリエステルアミド及び/又はポリデプシペプチドから選択される少なくとも1種の吸収性ポリマー材料でコーティングする。
【0030】
焼結中にアルミナとHTとの化学反応によりスキャフォールドのミクロ構造内にガーナイト相が生成されるため、Sr-HT/ガーナイトの組成物を単にその前駆体(Sr-HT及びアルミナ)の混合物と述べる又は予測することはできないことは、当業者ならばわかるであろう。同様に、この化学反応のため、機械的性質及び生物活性は、使用する前駆体に基づいて明確に予測することができない。さらに、アルミナは生物学的に不活性である(生物活性がない)ことが知られており、したがって、アルミナを生物活性セラミックの前駆体として使用することは、直感では理解できないことである。ガーナイトをその場で生成させて凝集性の生体適合性セラミック材料を生成できるのに対して、Sr-HTとガーナイトとの単純混合ではあまり均一でない材料が得られることは、驚くべきことである。
【0031】
理論に束縛されることを望まないが、比較的に小さい割合のガーナイトをSr-HT材料に添加すると、以下の2つの主要因により、機械的性質が改善されると考えられる:部分融解及びSr-HT粗粒間におけるガラス相の形成;並びにガラス相中における1ミクロン未満のガーナイト相の存在及びSr-HT粗粒の周囲で強い「拘束」のように挙動する強力なガラス-セラミック相の作製。
【0032】
第2の態様により、本発明は、第1の相及び第2の相を含む複合生体適合性セラミック材料であって、前記第1の相が、Sr、Mg、Ba又はそれらの組合せからなるドーパントの群から選択される元素がドープされたケイ酸カルシウム亜鉛を含み、第2の相が、金属アルミニウム酸化物を含み、金属がMg、Zn、Fe又はそれらの組合せから選択される材料を提供する。
【0033】
第一相に関して、好ましくは、ドーパント、すなわち、Sr、Mg、Ba又はそれらの組合せは、ケイ酸カルシウム亜鉛中のカルシウムを少なくとも部分的に置換する。ドーパントがSrである他の好ましい実施形態において、Sr-カルシウム亜鉛シリケート(Sr-calcium zinc silicate)の分子式は、[SrxCa(2-x)ZnSi2O7](式中、xは0.05〜0.9である)である。好ましくは、x=0.1であり、すなわち、前記第1の相は分子式[Sr0.lCa1.9ZnSi2O7]を含む。好ましい一実施形態において、カルシウムはMgで少なくとも部分的に置換されており、又はMgで完全に置き換えられていてもよい。
【0034】
好ましい一実施形態において、第2の相は、ガーナイト(ZnAl2O4)である。本発明の別の好ましい形態は、近似分子式Sr0.1Ca1.9ZnSi2O7のケイ酸ストロンチウムカルシウム亜鉛及びガーナイトを含む。
【0035】
望ましくは、ケイ酸ストロンチウムカルシウム亜鉛材料は、3つの特性ピークを有する以下の回折角2-θを有する透過型X線回折パターンを含む:「強い」強度のライン:31.44度;「中間の」強度のライン:29.225度、及び;3番目に強い強度のライン:36.565度。好ましくは、本発明の一実施態様のケイ酸ストロンチウムカルシウム亜鉛材料は、国際公開WO 2010/003191の図1Aのような透過型X線回折パターンを含む。
【0036】
好ましくは、本発明の複合生体適合性セラミック材料は、生理液中に置かれたときに生体適合性である。好ましくは、本発明の生体適合性材料は、体液への曝露時にヒドロキシアパタイト層を形成する。当業者ならばわかるように、ヒドロキシアパタイトの形成は、身体がその材料をそれ自身に特有であるものとして受け入れる有力な証拠として広く認識されており、インプラントが生体骨と化学的に接着するための必要条件である。
【0037】
相Aに関して、好ましくは、Sr:Ca比は約0.025〜0.85である。例えば、Sr:Ca比は、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.175、0.2、0.225、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825又は0.85の値を有することができる。言うまでもなく、これらの引用した例の間の比も許容できる。
【0038】
好ましくは、Sr-カルシウム亜鉛シリケートの分子式は、[SrxCa(2-x)ZnSi2O7](式中、xは0.05〜0.9である)である。好ましくは、x=0.1である。あるいは、xは、0.05、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、又は引用した数値の間の任意の値であることができる。Srドーパントは代わりにMg又はBaであることができることがわかるであろう。ドーパントは、Sr、Mg又はBaの混合物であることもできる。一部の実施形態において、ストロンチウムは、Mg及びBaからなる群から選択され得るバリアントで実質的に置換してもよい。
【0039】
前述のように、骨組織再生のためのバイオガラス、ガラス-セラミック、並びにCaO及びSiO2を含むバイオセラミックの開発は、過去30年間にわたって大いに注目されてきた。骨芽細胞の増殖、分化及び関連した遺伝子発現、並びに鉱質形成に対する、材料から放出されるCa-及びSi-含有イオン性生成物の刺激効果もまた、文書で十分に立証されている(例えば、Xynos I.D.ら、「Ionic products of bioactive glass dissolution increase proliferation of human osteoblasts and induce insulin-like growth factor II mRNA expression and protein synthesis」、Biochem. Biophy. Res. Commun. 2000年;276:461〜465頁を参照のこと)。CaSiO3をベースとする材料は、生物活性のため、骨組織再生及びインプラントコーティングのための潜在的な生物活性材料とみなされている。しかし、CaSiO3セラミックの主な欠陥は、溶解速度が比較的速く、周囲環境において高アルカリ性のpH値につながることである(例えば、Siriphannon P.ら、Formation of hydroxyapatite on CaSiO3 powders in simulated body fluid、J. Eur. Ceram. Soc. 2002年;22:511〜520頁を参照のこと)。実際に、チタン基材へのCaSiO3コーティングの接着は、コーティングの溶解速度が比較的速いため、擬似体液(SBF)中で浸漬時間の増加に伴って分解するため、さらなる生物学的用途が制限される。本発明者らは意外なことに、本発明の複合生体適合性セラミック材料が、これまで知られているケイ酸カルシウム及びこれまで知られているバイオセラミック材料と比較して、著しく改善された性質を有するバイオセラミックを提供することを見い出した。特に、特定の実施形態において、本発明の複合生体適合性セラミック材料は、CaSiO3材料の利点の多くを提供するが、その既知の欠点の多くを改善する。本発明の複合生体適合性セラミック材料は、CaSiO3材料と比較して、比較的減少したpHを伴う、比較的低減された溶解プロフィールを示す。さらに、ケイ酸カルシウムの高密度化が刺激され、アパタイト形成の能力は保持される。また、ヒト骨由来細胞の増殖が刺激される可能性がある。
【0040】
さらに、特定の実施形態において、本発明の複合セラミック生体適合性材料は、優れた機械的性質、例えば、曲げ強さ及び破壊靭性を示す。それはまた、骨細胞の付着及び増殖を可能にし得る。特に、特定の実施形態において、本発明の複合生体適合性セラミック材料は、骨との化学的接着を形成し、アパタイト層を形成する能力を有することが判明した。さらにまた、本発明の複合生体適合性セラミック材料は、CaSiO3と比較して、比較的低減した腐蝕を示した。
【0041】
第3の態様により、本発明は、複合生体適合性セラミック材料を調製するための方法であって、Sr、Mg、Ba又はそれらの組合せからなる群から選択される元素がドープされたケイ酸カルシウム亜鉛を生成するための前駆体材料のゾルを用意して、前記ゾルを第1のゾルに少なくとも部分的にゲル化するステップと、ガーナイトを生成するための前駆体材料のゾルを用意して、前記ゾルを第2のゾルに少なくとも部分的にゲル化するステップと、第1のゾルと第2のゾルを混合するステップと、乾燥させ、混合及び乾燥したゾルを焼結し、それによって複合生体適合性セラミック材料を形成するステップとを含む方法を提供する。
【0042】
第4の態様により、本発明は、複合生体適合性セラミック材料を調製するための方法であって、ゾル-ゲル法によって、ストロンチウムがドープされたケイ酸カルシウム亜鉛粉末を生成するステップと、回転ボールミル機によって、前記のストロンチウムがドープされたケイ酸カルシウム亜鉛粉末をアルミナ粉末と混合し、機械的に活性化させるステップと、得られた粉末を乾燥及び焼結して、前記複合生体適合性セラミック材料を形成するステップとを含む方法を提供する。好ましくは、混合及び機械的活性化は、回転ボールミル機により、1週間にわたって実施する。
【0043】
出発原料の粒子は、回転微粉砕機中で微粉砕し、それによって拡散及びアルミナ粒子とSr-HT粒子との反応性を促進する。微粉砕の間に、粒子は分解されてより小さくなり、表面積が増加し、その結果として、高温における拡散が向上する。さらに、Sr-HT粉末の間におけるアルミナ粉末の分布がより均一及び均質になるであろう。アルミナとSr-HT相との混合によるガーナイトの形成のメカニズムは不明である。しかし、理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、アルミナがSr-HTと反応し、その結果としてSr-HTの表面の一部の粒子が部分的に融解し得ると仮定する。次に、冷却段階において、ガーナイト(ZnAl2O4)の一部の結晶が、Al、O、Zn、Ca及びSi元素を含有する融解物から結晶化する可能性があり、未反応の元素はガラス相を形成するであろう。
【0044】
第3及び第4の態様による複合生体適合性セラミック材料はゾル-ゲルに由来する。しかし、他の実施形態において、本発明の複合生体適合性セラミック材料のあらゆる合成的製造方法が、本発明の範囲内であることがわかるであろう。例えば、別の実施形態において、出発原料を融解させ、冷却し、得られる材料を粉末化する。次いで、得られた粉末を、当業界でよく知られているようにして、成形し、ホットプレスすることができる。
【0045】
第5の態様により、本発明は、本発明の第3又は第4の態様による方法によって製造される複合生体適合性セラミック材料を提供する。
【0046】
第6の態様により、本発明は、複合生体適合性セラミック材料を調製するための組成物であって、アルミナと、ストロンチウムがドープされたハーディストナイト[SrxCa(2-x)ZnSi2O7](式中、xは約0.05〜約0.9である)の形態のSrがドープされたケイ酸カルシウム亜鉛とを含む組成物を提供する。
【0047】
第7の態様により、本発明は、本発明の第1、第2及び第5の態様によって定義される、複合生体適合性セラミック材料を含む植込み型医療機器を提供する。
【0048】
医療機器は好ましくは、3D植込み型スキャフォールド、再建手術のための整形外科用インプラント、歯科インプラント/プロテーゼ、脊椎インプラント、軟骨再生のための頭蓋顔面再建及び歯槽堤増大術用インプラント、骨軟骨欠損用インプラント、外科ファスナー(例えば、鉗子、クリップ、シース又はステープル)、手術用布、人工心臓弁(例えば、シース、フランジ、弁葉(leaf)又はヒンジ)、ストラット、ステント又はステント-グラフト、骨軟骨欠損用の二相スキャフォールド、血管新生及び骨組織内部成長を促進する骨組織再生及び顎顔面再建用のスキャフォールド、長期インプラント安定性を改善するための、現在使用されている整形外科用及び歯科用インプラントのコーティング、並びに薬物送達装置からなる群から選択される。しかし、多くの他の装置が本発明の範囲内であることがわかるであろう。他の実施形態において、本発明の複合生体適合性セラミック材料は、手術装置に又は手術装置のコーティングとして形成できる。また、本発明によって定義される複合生体適合性セラミック材料を含む、例えば骨インプラント、歯の詰め物又はバイオセメントも、本発明の範囲内である。
【0049】
一実施形態において、医療機器は、永久に植え込む。しかし、他の実施形態において医療機器は、一時的に植え込むことができる。一部の態様において、医療機器は、実質的に生分解性又は吸収性であることができる。
【0050】
一実施形態において、本発明の複合生体適合性セラミック材料を含む医療機器の気孔率は、約20〜約80%である。しかし、意図される又は望ましい使用によってはより小さい又はより大きい気孔率を有するように装置を配合又は生成できること、及びあらゆる気孔率範囲が本発明の範囲内となることがわかるであろう。例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90若しくは95%の気孔率又はこれらの例示的な数値の間の任意の気孔率も可能である。
【0051】
一実施形態において、装置の細孔径は、約20〜約500μm(ミクロン)である。しかし、意図される又は望ましい使用によってはより小さい又はより大きい細孔径を有するように装置を配合又は生成できること、及びあらゆる細孔径範囲が本発明の範囲内となることがわかるであろう。例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490又は500ミクロンの細孔径が可能であり、引用した例示的数値のいずれかの間の任意の細孔径も同様に可能である。
【0052】
本発明による植込み型装置は、インプラントとしてのそれらの使用を好適にする多くの性質、例えば、高い機械的強度、耐疲労性、耐蝕性、及び生体適合性を有する。インプラントは、動物に植え込むことができ、動物の非限定的例としては、爬虫類、鳥類及び哺乳動物が挙げられ、ヒトが特に好ましい。好ましくは、前記植込み型装置の圧縮強度は、約2〜15MPaである。
【0053】
本発明の装置は、種々の方法で、これらに限定するものではないが例えば、皮下への植え込み、皮膚表面への植え込み、口腔内への植え込み及び他の手術による植え込み方法で、体内に植え込むことができる。
【0054】
一実施形態において、本発明の複合生体適合性セラミック材料に、少なくとも1種の吸収性ポリマー材料をコーティングすることができ、吸収性ポリマー材料の非限定的例としては、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリラクチド、アルギネート、コラーゲン、キトサン、ポリアルキレンオキサレート、ポリ無水物、ポリ(グリコリド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリエステルアミド及び/又はポリデプシペプチドが挙げられる。
【0055】
あるいは、コーティング材料は、治癒促進薬、例えば、血栓形成阻害薬(thrombosis inhibitor)、血栓溶解薬、血管拡張物質、抗炎症薬、細胞増殖阻害薬、及び基質同化又は発現の阻害薬を含むことができ、このような物質の例は、Solutia Inc.に対するUS6,162,537に示されている。本発明はまた、植込み型医療機器をコーティングするために、ポリマーコーティング(例えば、吸収性ポリマー)を治癒促進薬と併用することを企図する。
【0056】
植込み型医療機器は、吸収性であるか、又は生分解に対して完全に不活性であることができる。装置が吸収性である場合、インビボ分解により、傷害組織を強化するスキャフォールドが後に残される。
【0057】
第8の態様により、本発明は、本発明の第1、第2又は第5の態様によって定義される複合生体適合性セラミック材料を含む骨インプラント、歯の詰め物又はバイオセメントを提供する。
【0058】
本発明の第9の態様によれば、植込み型医療機器の製造方法であって、本発明の第1、第2又は第5の態様によって定義される複合生体適合性セラミック材料を、基材に移し又は適用し、それによって前記植込み型医療機器を形成するステップを含む方法が提供される。
【0059】
支持面又は基材への生体適合性材料の適用方法は多数存在し、これらの方法はいずれも本発明の範囲内であることがわかるであろう。例えば、一実施形態において、材料は、プラズマ溶射によってコーティングする。当技術分野においてよく知られているように、この方法は、融解された又は熱軟化された材料を表面に吹き付けて、コーティングを提供するステップを本質的に含む。粉末の形態の材料を、高温プラズマフレーム中に注入し、そこで材料が急速に加熱され、高速に加速される。高温材料は基材表面に激突し、急速に冷却し、それによってコーティングを形成する。コーティングは厚さ約50μm(ミクロン)の高密度の構造を有し、接着強さがヒドロキシアパタイトコーティングより高い。
【0060】
本発明の第10の態様によれば、本発明の第1、第2又は第5の態様によって定義される複合生体適合性セラミック材料を含む植込み型薬物送達装置が提供される。薬物送達装置は、任意の薬物又は薬物の任意の組合せを送達するよう構成することができ、特定の用途に適合するように付形できることがわかるであろう。
【0061】
第11の態様により、本発明は、植込み型医療機器の長期安定性を改善するための方法であって、本発明の第1、第2又は第5の態様によって定義される複合生体適合性セラミック材料を前記装置にコーティングするステップを含む方法を提供する。
【0062】
好ましくは、コーティングはさらに、生体適合性ポリマーを含み、生体適合性ポリマーは、一実施形態において、ポリラクチドグリコール酸(PLGA)である。一形態において、植込み型医療機器は、骨軟骨欠損用の二相スキャフォールドである。
【0063】
本発明の第12の態様によれば、本発明の第1、第2又は第5の態様によって定義される複合生体適合性セラミック材料の、組織の再生又はリサーフェシングのための使用であって、前記再生又はリサーフェシングを少なくとも部分的に行うのに十分な期間、一定量の前記材料と前記組織を接触させることを含む使用が提供される。
【0064】
一実施形態において、組織と接触させる本発明の複合生体適合性セラミック材料は、国際公開WO2006/047820に開示された、S100A8若しくはS100A9ポリペプチド、又はプロモーターと操作可能に連結されたS100A8若しくはS100A9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいは骨及び軟骨の再生において重要であることが示されている任意の他のタンパク質を含む。
【0065】
本発明の第13の態様によれば、組織を再生又はリサーフェシングするための方法であって、前記再生又はリサーフェシングを少なくとも部分的に行うのに十分な期間、本発明の第1、第2又は第5の態様によって定義される複合生体適合性セラミック材料の一定量と前記組織を接触させるステップを含む方法が提供される。
【0066】
一実施形態において、組織と接触させる本発明の複合生体適合性セラミック材料は、国際公開WO2006/047820に開示された、S100A8若しくはS100A9ポリペプチド、又はプロモーターと操作可能に連結されたS100A8若しくはS100A9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいは骨及び軟骨の再生において重要であることが示されている任意の他のタンパク質を含む。
【0067】
本発明の第14の態様によれば、整形外科的欠損上に骨組織を形成するための、本発明の第1、第2又は第5の態様によって定義される複合生体適合性セラミック材料の使用であって、前記欠損を前記材料と所定の期間接触させることを含む使用が提供される。
【0068】
本発明の第15の態様によれば、整形外科的欠損上に骨組織を形成するための方法であって、本発明の第1、第2又は第5の態様によって定義される複合生体適合性セラミック材料と前記欠損を所定の期間接触させるステップを含む方法が提供される。
【0069】
本発明の第16の態様によれば、整形外科的状態を治療するための、本発明の第1、第2又は第5の態様によって定義される複合生体適合性セラミック材料の使用であって、このような治療を必要としている患者の該当部位を有効再生量の前記材料と接触させることによる使用が提供される。
【0070】
本発明の第17の態様によれば、整形外科的状態を治療するための方法であって、このような治療を必要としている患者の該当部位を、本発明の第1、第2又は第5の態様によって定義される複合生体適合性セラミック材料を含む生体適合性組成物の有効再生量と接触させるステップを含む方法が提供される。
【0071】
本発明の第18の態様によれば、組織を再生又はリサーフェシングするためのキットであって、本発明の第1、第2又は第5の態様によって定義される複合生体適合性セラミック材料と、組織再生を刺激及び加速する治療薬と、前記材料及び前記治療薬の逐次投与又は同時投与のための使用説明書とを含むキットが提供される。
【0072】
本発明の第19の態様によれば、組織を再生又はリサーフェシングするための、液体注射製剤の形態での、本発明の第1、第2又は第5の態様によって定義される複合生体適合性セラミック材料の使用が提供される。本発明の材料は好ましくは、好適な担体中に分散、懸濁又は溶解させる。次に、注射可能な分散液/懸濁液/溶液は、患者の標的部位に又はそれに近接して注射する。好適な担体及び注射技術は、十分に、当技術分野における適切な技術を有する者の知識及び能力の範囲内である。
【0073】
本発明の第20の態様によれば、組織を再生又はリサーフェシングするための方法であって、このような治療を必要としている患者に、本発明の第1、第2又は第5の態様によって定義される複合生体適合性セラミック材料の有効量を含む液体注射製剤を投与するステップを含む方法が提供される。
【0074】
本発明による複合生体適合性セラミック材料は、完全合成の骨移植片代用材として使用できる。細孔が相互接続されているため、材料は理想的な骨伝導性スキャフォールとして機能し、新しいホスト骨の形成をサポートする。本発明は、1つ又は複数の実施形態において、以下の利点の1つ又は複数を提供する:最適化された気孔率;改善された機械的強度及び弾性;向上した骨内部成長及び血管新生;移植法においてよく見られる潜在的な問題を回避する;用途に適合するようにほとんどあらゆる形状に形成可能である;使いやすい;自家骨髄若しくは血液と合体する;並びに/又は加速された及び向上した骨結合を示す。
【0075】
本発明の使用は、多種多様である。1つ又は複数の実施形態において、これは、皮質骨ではなく海綿骨を必要とする帯域における骨空隙充填又は増強;外傷後の骨欠損の充填、再建、又は荷重負荷がない若しくはある場合における矯正;外傷及び整形外科;嚢胞又は骨切断術によって引き起こされる空隙の充填、嵌入骨折によって生じる欠損の充填、海綿骨採取部位の補充、関節固定術及び偽関節;脊椎手術:後側方固定術、椎体間固定(ケージ充填材料として)、脊椎切除術(椎骨インプラントの充填材料として)、骨グラフト採取部位の補充、又は頭蓋顎顔面手術:下顎欠損の再建及びサイナスリフトに有用であり得る。
【0076】
本発明の好ましい実施形態を、添付した図を参照して、ごく一例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1図1A図1Dは、Sr-HT(A、B)及びSr-HT-20%ガーナイト(C、D)スキャフォールドのマクロ構造及びミクロ構造を示す顕微鏡写真である。これらは、亀裂及び欠損がない、Sr-HT-20%のガーナイトスキャフォールドの構造を、亀裂が入ったSr-HTスキャフォールド(矢印)と比較して示している。
図2】Sr-HT(A)及びSr-HT-20%ガーナイト(B)スキャフォールドの破断面を示す顕微鏡写真である。これは、それぞれについて異なる破断メカニズムを示している(Sr-HTスキャフォールドの亀裂は、微細孔を介して伝搬し、破局的な破壊を引き起こしたが、Sr-HT-20%ガーナイトスキャフォールドの切断は、粗粒を介して伝搬することによるものであり、このプロセスは高エネルギーを必要とする)。
図3図3のパート「A」は、(i)粗粒、(ii)ガラス相及び(iii)結晶性析出物(crystalline precipitate)の3つの成分を含むSr-HT-20%ガーナイトスキャフォールドの典型的なミクロ構造の元素マッピングを示す。図3のパート「B」は、Sr-HT-20%ガーナイトスキャフォールドのX線回折パターンを示す。図3のパート「C」は、3つの成分を通すスキャフォールドの表面の、指定されたパスによる元素のラインマッピングを示す。
図4A】気孔率が75%超の場合の、全ての現在入手可能な合成スキャフォールドと比較した(組成に関係なく)、Sr-HT-20%ガーナイトスキャフォールドの機械的性質を示すグラフである。
図4B】Sr-HT-20%ガーナイトスキャフォールドと、異なる気孔率(95%及び85%)を有する市販のHA/TCPスキャフォールドの、圧縮強度及び弾性率の比較を示すグラフである。各気孔率において、強度は、新しく開発したスキャフォールドでは、HA/TCPと比較して約100倍大きいことに注目されたい。
図4C】期間を次第に増加させて擬似体液に浸漬した後のSr-HT-20%ガーナイトスキャフォールドの機械的性質を示すグラフである。これは、体液への曝露により機械的性質が失われないことを示している。
図5】Sr-HT-20%ガーナイトスキャフォールドから放出されたイオン(Ca、Si、Zn、Sr及びAl)の濃度及び増加する浸漬時間における擬似体液の関連pHを示す表である。溶解は緩やかであり、pHの著しい変化はなく、重量損失及びイオンの放出はわずかであったことが明らかであることに注目されたい。これは、新たに開発されたスキャフォールドの安定性を反映している。
図6】トルイジンブルーインクを用いた拡散研究後の(左から右に向かってそれぞれ)Sr-HT、HA/TCP及びSr-HT/ガーナイト(20重量%)スキャフォールドの画像である。Sr-HT/ガーナイト(20重量%)スキャフォールドは、Sr-HT又はHA/TCPよりも、著しく広範囲に及ぶスキャフォールドのインク浸潤を誘発したことに注目されたい。これは、多孔質基質内における体液及び細胞の流動を必要とする生物学的用途にこれらのスキャフォールドを使用することが優れており、効果的であることを反映している。
図7】播種の1時間後及び24時間後における、初代ヒト骨由来細胞(HOB)の、HA/TCP、Sr-HT及びSr-HT/ガーナイト(20重量%)スキャフォールドへの付着(矢印)を示す顕微鏡写真である。
図8】種々の型のスキャフォールド上に播種されたHOBによるRunx-2に関するmRNA発現を示す(* p<0.05)グラフである。
図9】種々の型のスキャフォールド上に播種されたHOBによるオステオカルシンに関するmRNA発現を示す(* p<0.05)グラフである。
図10A】Sr-HTスキャフォールドの表面の走査電子顕微鏡観察を示す写真である。
図10B】Sr-HT/20%ガーナイトスキャフォールドの後方散乱画像である。図10A及び図10Bは、HT(「+」が付いている矢印)及びZnAl2O4結晶(「*」が付いている矢印)の2つの結晶相の存在を裏付けている。
図11A】擬似体液(SBF)中に7日間浸漬後のSr-HT/20%ガーナイトの表面変化を示す顕微鏡写真である。図11A’は、図Aの「枠で囲んだ」領域を、より高い倍率で示す顕微鏡写真である。
図11B】擬似体液(SBF)中に14日間浸漬後のSr-HT/20%ガーナイトの表面変化を示す顕微鏡写真である。図11B’は、図Bの「枠で囲んだ」領域を、より高い倍率で示す顕微鏡写真である。
図11C】擬似体液(SBF)中に28日間浸漬後のSr-HT/20%ガーナイトの表面変化を示す顕微鏡写真である。図11C’は、図Cの「枠で囲んだ」領域を、より高い倍率で示す顕微鏡写真である。
図12】調製したスキャフォールドを浸漬後の擬似体液中における経時的なpH変化を示すグラフである。これは、生理的pHレベル(pH7.4)の保持におけるSr-HT/20%ガーナイトの優越性を立証している。
図13】ウサギ橈骨の荷重負荷による臨界サイズ欠損に植え込まれたスキャフォールドを示す写真である。図13Aは、ウサギ橈骨に生じた骨欠損の寸法を示し、図13Bは、欠損内へのスキャフォールドの留置を示し(挿入写真は、挿入前のスキャフォールドを示す)、図13C(矢印)は、ウサギ前肢の欠損の解剖学的な位置を示す。
図14】12週における欠損の完全な架橋を示す、Sr-HT/20%ガーナイト(図中、「Sr-HT-ガーナイトスキャフォールド」と称する、下の画像)を、臨床的に使用されているTCP/HA(上の画像)と比較して示す、X線写真である。
図15】欠損の架橋のX線写真採点が、Sr-HT/20%ガーナイト(図中、「Sr-HT-ガーナイト」と称する)をベースとするスキャフォールドではTCP/HAと比較して優れていることを示すグラフである。
図16】代表的な非脱灰組織学的骨切片を示す写真である。Sr-HT/20%ガーナイト(図16B及び16D)が、TCP/HA(図16A及び6C)と比較して優れた新骨形成を誘発することを立証している。
図17】組織形態計測の測定値を示すグラフである。Sr-HT/20%ガーナイト(図中、「Sr-HT-ガーナイト」と称する)は、橈骨欠損の中点において優れた新骨形成を示し、これが骨欠損の有効な架橋であることを立証している。
【発明を実施するための形態】
【0078】
定義
本明細書及び特許請求の範囲において、以下の専門用語は、下記の定義に従って用いるものとする。本明細書中に使用する専門用語は、本発明の特定の実施形態を説明するためにのみ用いるのであって、限定を意図しないことも理解される。特に定義しない限り、本明細書中に使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関連する技術分野における当業者によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0079】
端点を用いた数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数値を含む(即ち、「1〜5」は、例えば、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、4.1685、5などを含む)。
【0080】
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で特定の利益をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかし、他の実施形態もまた、同じ又他の状況下で好ましい場合がある。さらにまた、1つ又は複数の実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを意味せず、本発明の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【0081】
本明細書中で使用する「インプラント」は、例えば外科手術によって、動物に完全に又は部分的に留置される物品又は装置を指す。動物は、ヒト、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジなどであることができる。
【0082】
実施例以外又は特に指定する以外では、本明細書中で用いる成分の量又は反応条件を表す全ての数値は、いずれの場合にも用語「約」で修飾されているものと理解すべきである。実施例は、本発明の範囲を制限することを意図しない。以下において及び特に指定する場合において、「%」は「重量%」を意味し、「比」は「重量比」を意味し、「部」は「重量部」を意味するものとする。しかし、百分率のみで通常表される特徴、例えば、気孔率は、この定義に従うものではないことはわかるであろう。
【0083】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメーターが近似値だとしても、具体例に記載した数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、任意の数値は本質的に、各試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる多少の誤差を含む。
【0084】
本明細書中で使用する「HT」は、ケイ酸カルシウム亜鉛(Ca2ZnSi2O7)を指し、「Sr-HT」は、ストロンチウムがドープされたケイ酸カルシウム亜鉛スキャフォールド、例えば、Sr0.1Ca1.9ZnSi2O7を指す。「TCP」は、リン酸三カルシウムに指す。「HA」は、ヒドロキシアパタイトを指す。
【0085】
本発明の好ましい実施形態について、以下に説明する。
【0086】
例えば骨再生に使用するための多孔質スキャフォールドへと製造できる新しいセラミック材料を開発した。この材料は2つの相を含む。一方の相は、ストロンチウムがドープされたケイ酸カルシウム亜鉛(Sr-Ca2O7Si2Zn)であり、他方の相は、ガーナイト(ZnAl2O4)である。ガーナイト相は約20重量%であり、Sr-(ケイ酸カルシウム亜鉛)は約80重量%である。セラミック粉末は好ましくは、ゾル-ゲル法及び機械的活性化法を組合せることによって調製する(先行出願AU2011902160に開示)。
【0087】
スキャフォールドの形態のこの複合セラミック材料は、約85%の気孔率及び約100%の細孔相互接続性を示す(これによって、海綿骨構造を再生する)を調製した。これは以下のように特徴付けられる。
【0088】
最初に、Sr-HT粉末を、ソル-ゲル方法によって調製した。次いで、アルミナ粉末とSr-HT粉末を混ぜ合わせ、回転ボールミル粉砕によって4日間活性化させた。得られた粉末とポリビニルアルコール溶液を混合することによって、セラミックスラリーを調製した。ポリマーフォームテンプレートを、セラミックスラリー中への浸漬によってコーティングし、次いでオーブン中で37℃において終夜乾燥させた。乾燥粉末がコーティングされたフォームテンプレートを、電気炉中で1250℃において3時間焼結し、それによって、ポリマーテンプレートを除去し、粉末を高密度化した。
【0089】
ここで添付図を参照すると、図1は、電界放出電子顕微鏡法によるストラット及び細孔形態のミクロ構造分析を示している。図1は、Sr-HTスキャフォールドが弱く、比較的高レベルの亀裂を含むのと比較して、Sr-HT:ガーナイト生体適合性材料(ガーナイト20重量%)には亀裂及び欠損がない構造であるを明白に示している。矢印は、スキャフォールド調製法に特徴的なスキャフォールドの不良な焼結能力に起因する多数の亀裂及び細孔を示している。しかし、これらの欠損は、Sr-HT/20重量%ガーナイトにおいては、部分融解によって排除された。
【0090】
図2は、FE-SEMによる、Sr-HT:ガーナイト生体適合性材料(ガーナイト20重量%)スキャフォールドの破断面のフラクトグラフィーを示す。これは、純粋なSr-HTスキャフォールドと比較して異なる破断メカニズムを示している。Sr-HTスキャフォールドに関して説明すると、亀裂は微細孔を介して伝搬し、破局的な破壊を引き起こしている。これに対して、Sr-HT:ガーナイト生体適合性材料(ガーナイト20重量%)に関しては、切断は粗粒の破裂によるものであり、これは非常に高い塑性変形エネルギーを必要とする。
【0091】
図3Aは、元素マッピングによるミクロ構造相解析を示している。図3Bに示されるSr-HT/20重量%ガーナイトスキャフォールドのX線パターンは、Sr-HT及びガーナイトの2つの相の存在を示している。FE-SEMは、(i)粗粒、(ii)ガラス相及び(iii)結晶性析出物の3つの成分からなるSr-HT:ガーナイト生体適合性材料(ガーナイト20重量%)を示した。粗粒はSr-HT相に属し、1ミクロン未満の結晶はガーナイト(ZnAl2O4)である。これは、高濃度のAl及びZnを示す元素分析によって確認されている。粗粒境界及びSr-HT粗粒周囲のガラス相は、高濃度の酸素、アルミニウム及びストロンチウムを特徴とする。
【0092】
図4は、湿潤条件及び乾燥条件における28日までのSr-HT:ガーナイト生体適合性材料(ガーナイト20重量%)の機械的性質(圧縮強度及び弾性率)を示している。製造したスキャフォールドの乾燥状態の圧縮強度及び弾性率はそれぞれ、約4MPa及び約170MPaであった。これらの強度は、海綿骨の機械的性質に類似しており、それらの組成にかかわらず、気孔率が75%より大きいいずれの骨スキャフォールドよりもはるかに高い。
【0093】
Sr-HT:ガーナイト生体適合性(ガーナイト20重量%)スキャフォールドの圧縮強度は、HA/TCP及びSr-HTスキャフォールドそれぞれの圧縮強度より40倍及び20倍大きい。Sr-HT:ガーナイト生体適合性(ガーナイト20重量%)スキャフォールドの弾性率は、HA/TCP及びSr-HTスキャフォールドそれぞれの弾性率より17及び10倍大きい。
【0094】
気孔率が95%のSr-HT:ガーナイト生体適合性(ガーナイト20重量%)スキャフォールドであっても、気孔率が85%の市販のHA/TCPスキャフォールドと比較してはるかに高い(約10倍)圧縮強度であることが明らかであり、このことは、本発明の複合セラミック材料が荷重負荷用途に関しても優れていることを示している。さらにまた、本発明のスキャフォールドの機械的性質は、擬似体液中に28日間浸漬後に依然としてほぼ一定である。
【0095】
図5は、擬似体液中でインキュベート後のAl、Zn、Si、Ca及びSrイオンの放出プロフィールを示している。結果は、Sr-HT:ガーナイト生体適合性(ガーナイト20重量%)スキャフォールドの非常に穏やかな分解挙動及び緩やかなイオン放出を経時的に示している。このことは、これらのイオンが、局所的な骨成長を促進する可能性があり得ること及びこれらの材料が徐々に吸収され得ることを示している。
【0096】
インク拡散の研究(図6を参照のこと)は、Sr-HT:ガーナイト生体適合性(ガーナイト20重量%)スキャフォールドが、3つの方向全てにおいて、スキャフォールド内部領域のインク浸潤のためのより良好な環境を提供することを示している。インクの拡散及びスキャフォールド表面による吸収による青色着色は、多孔質基質内における体液及び細胞の流動を必要とする生物学的用途において、これらのスキャフォールドを使用することが効果的であること強調している。
【0097】
生物学的データ
生物学的検査のために種々の群のスキャフォールドを調製した。
1- HA/TCP
2- Sr-HT
3- Sr-HT-5%ガーナイト
4- Sr-HT-11%ガーナイトスキャフォールド
5- Sr-HT-14%のガーナイトスキャフォールド
6- Sr-HT/ガーナイト(20重量%)スキャフォールド
【0098】
材料及び方法
初代HOBの単離及び培養
HOBを、以前に記載された(Roohani-Esfahani S.I.、Nouri-Khorasani S.、Lu Z.、Appleyard R.、Zreiqat H.、「The influence hydroxyapatite nanoparticle shape and size on the properties of biphasic calcium phosphate scaffolds coated with hydroxyapatite-PCL composites」、Biomaterials、2010年7月;31(21):5498〜509頁)ようにして、健常なヒト海綿骨から単離した。簡潔には、骨を、1mm3の試験片に分割し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で数回洗浄し、37℃においてPBS中0.02%(w/v)トリプシンで90分間消化させた。消化された細胞を、10%(v/v)熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)、2mM L-グルタミン、25mM Hepes緩衝液、2mMピルビン酸ナトリウム、30mg/mLペニシリン、100mg/mLストレプトマイシン及び1mMのL-アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩を補充したα-基礎培地(α-MEM)を含む完全培地中で培養した。細胞は、5%CO2を用いて37℃において培養し、培地は、コンフルエンスになるまで3日毎に新しくし、コンフルエンスになったら細胞を継代した。
【0099】
細胞の付着及び形態の観察
細胞が80〜90%のコンフルエンスに達したら、細胞を、TrypLE(登録商標)Expressを用いてトリプシン処理し、続いて遠心分離し、完全培地中に懸濁させて、mL当たり細胞11×104個の密度を有する細胞懸濁液を生成した。次いで、100μLの細胞懸濁液を、24ウェル細胞培養プレート中に置かれた各スキャフォールドに加えた。37℃のインキュベーター中で1時間インキュベート後、1mLの細胞培養培地を各ウェルに加えた。SEM観察のために、24時間の細胞を、4%のパラホルムアルデヒド溶液中で固定し、PBS中1%四酸化オスミウム中で1時間、後固定し、次に一連の段階的なエタノール溶液(30、50、70、90、95及び100%)中で脱水し、最後に、ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilizane)中で3分間乾燥させた。乾燥したコーティング試料に、金をスパッタリングしてから、標準的な手順を用いて走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。
【0100】
定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)
スキャフォールド上で培養したHOBから、Trizol試薬(Sigma)及びRNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いて製造業者の使用説明書に従って、全RNAを単離した。0.7μgの全RNAから、Omniscript RT Kitを用いて製造業者の使用説明書に従って、ファーストストランドcDNAを合成した。cDNAを、骨芽細胞関連遺伝子Runx-2及びオステオカルシンに関して分析した。これらの相対遺伝子発現レベルは、ハウスキーピング遺伝子[グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)]に正規化することによって得た。Runx-2、オステオカルシン及びGAPDHのmRNA発現レベルは、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を用いて分析した。
【0101】
結果-細胞付着
Sr-HT/ガーナイト(20重量%)上で培養し、Sr-HT及び市販のヒドロキシアパタイト/リン酸三カルシウム(HA/TCP)スキャフォールドと比較したHOBの典型的な形態が、図6が示されている。わずか1時間後であっても、HOB細胞は、Sr-HT/ガーナイト(20重量%)表面では十分に扁平であり(図7、矢印)、スキャフォールド表面のほとんどを被覆する多くの拡大された隆起物を成長させているのが観察される。これに対して、Sr-HT及びHA/TCPは、より少ない細胞を示し、これらは1時間においてはるかに多くが収縮したままであった。24時間において、延展は、Sr-HT-20%ガーナイトに関しては高レベルに保持され、他の材料に関して観察されるよりも依然として広範であった。新たに開発したSr-HT/ガーナイト(20重量%)と比較して、実質的に低減した延展が観察された。これらの結果は、開発したスキャフォールドの生体適合性を裏付け、骨芽細胞接着の卓越した促進を示している。細胞の数及び扁平度(degree of flattening)は、Sr-HT及び商業的に使用されているHA/TCPより著しく優れているようである。
【0102】
細胞分化
本発明の材料の生体適合性を検証するために、Sr-HT-ガーナイト(5重量%)、Sr-HT-ガーナイト(11重量%)、Sr-HT-ガーナイト(14重量%)及びSr-HT/ガーナイト(20重量%)を調製し、細胞分化の結果を、Sr-HT及びHA/TCPスキャフォールド上に播種された細胞の結果と、1時間及び24時間に関して比較した。重要な骨芽細胞分化マーカー(Runx-2及びオステオカルシン)のそれらの発現を、臨床的に使用されているHA/TCPスキャフォールド及びSr-HTスキャフォールドと比較した。Runx-2は、骨芽細胞分化における初期マスター転写因子であるのに対し、オステオカルシンは、骨芽細胞分化の後期マーカーである。結果は、Sr-HT-ガーナイト(14重量%)及びSr-HT/ガーナイト(20重量%)スキャフォールド上に播種されたHOB中における骨形成遺伝子の発現が、1日目には、HA/TCP及びSr-HTスキャフォールドと比較してRunx-2及びオステオカルシンの両者に関して著しく上方制御されていることを示した(図7を参照のこと)。これらの結果から、Sr-HT/ガーナイト(20重量%)スキャフォールドが骨芽細胞分化を活発にサポートし、インビボ骨伝導性の高い可能性を示すことがわかる。
【0103】
材料の特性決定
Sr-HT/20%ガーナイトの機械的性質を、走査型電子顕微鏡観察によってさらに特性決定した。これにより、この材料の2つの相の存在が確認される。
【0104】
図10Aは、Sr-HTスキャフォールドの表面の走査電子顕微鏡観察を示し、図10Bは、Sr-HT/20%ガーナイトスキャフォールドの後方散乱画像を示す。Sr-HT/20%ガーナイトスキャフォールドの後方散乱画像により、SrHT及びガーナイト(ZnAl2O4)結晶の2つの結晶相の存在が確認される。2つの結晶相に加えて、結晶相又は粗粒間に非晶質ガラス構成要素(「ガラス相」と称することもある)が存在し、これは、後方散乱画像中に暗色物質として現れる。
【0105】
擬似溶液中へのSr-HT/20%ガーナイトスキャフォールド浸漬の、アパタイト結晶形成に対する効果。
擬似溶液中への浸漬後のセラミック材料の表面におけるアパタイト結晶の形成は、インビボ生物活性を予測する(Kokubo T.及びTakadama H、「How useful is SBF in predicting in vivo bone bioactivity?」、Biomaterials、(2006年)27、2907〜2915頁)。擬似溶液中へのSr-HT/20%ガーナイトスキャフォールド浸漬の効果について研究を行った。これは、セラミック表面にアパタイト結晶が漸次形成されることを立証し、本発明の材料の生物活性及び臨床的有用性のさらなる証拠を示している。
【0106】
図11は、擬似体液(SBF)中に7日間(A、A')、14日間(B、B')及び28日間(C、C')浸漬後のSr-HT/20%ガーナイトの表面変化を示している。11A'、11B'及び11C'と付した図は、図11A、11B及び11Cの各領域をより高い倍率で示したものである。擬似体液(SBF)中にSr-HT/20%ガーナイトスキャフォールドを7日間浸漬後、スキャフォールドの分解が粗粒境界において始まった。14日後、この領域において、アパタイト結晶の核生成が検出できる。28日までに、ナノサイズのアパタイト結晶が成長し、スキャフォールドの表面を、特に粗粒境界において被覆していた。この時点で、表面中のガラス相及びZnAl2O4結晶が完全に分解され、アパタイト結晶に変態していた。
【0107】
ケイ酸カルシウムをベースとするセラミックの欠陥の1つは、擬似体液などの水溶液中に置かれた場合にアルカリ性の分解生成物を生成することである。これらは、インプラント周囲のpHを局所的に増加させ、組織傷害及び組織死をもたらす可能性がある。Sr-HT/20%ガーナイトセラミックはpHの増加を誘発せず、これらの材料と接触している水性液体は生理的なpH7.4に保持される。このことは、潜在的な生体適合性が大きいことを示している(図12を参照のこと)。
【0108】
Sr-HT-20%ガーナイトのインビボ評価
以前に記載された(Roohani-Esfahani S.I.ら、Biomaterials、2010年7月;31(21)5498〜509頁、2010年)ようにして、スキャフォールド構造を生成する犠牲テンプレートとして十分に網状のポリウレタンフォームを用いて、Sr-HT/20%ガーナイト又は臨床的に使用されている材料であるリン酸三カルシウム/ヒドロキシアパタイト(TCP/HA)を含む高多孔質の相互接続スキャフォールドを調製した。
【0109】
外科的調製物
TCP/HAと比較した、Sr-HT/20%ガーナイトのインビボ有効性を、ウサギ橈骨を貫いて発生した臨界サイズ欠損に、多孔質スキャフォールドを植え込むことによって評価した。このモデルにおいて、尺骨は著しい機械的なサポートを提供するが、部分的な体重負荷がスキャフォールドに伝達される。
【0110】
肘と手根の中間の前腕背内側面を2.5cm切開した。滅菌定規を用いて、この最初の切り込みに近接して1.5cmを測定し、軟組織を開創し、骨膜起子を掌側に入れ、橈骨に第2の切り込みを入れた。止血を行ってから、1.5cmの骨欠損にインプラントを挿入した。TCP/HA(n=6)及びSr-HT/20%ガーナイト(n=6)を、ウサギ一匹当たりインプラント1つとして植え込んだ(図13を参照のこと)。インプラントの留置後、傷を閉じた。その後、ウサギを回復させ、運動に十分な空間に12週間保持した。
【0111】
12週間後に、手術した肢をX線検査し、採取し、非脱灰技術を用いて組織形態計測評価に関して評価した。
【0112】
図13は、ウサギ橈骨の荷重負荷による臨界サイズ欠損に植え込まれたスキャフォールドを示している。図13Aは、ウサギ橈骨に生じた骨欠損の寸法を示している。図13Bは、欠損内へのスキャフォールドの留置を示している(挿入写真は、挿入前のスキャフォールドを示している)。図13Cは、ウサギ前肢の欠損の解剖学的な位置を示している。
【0113】
植え込みの12週間後に撮られた代表的なX線写真に見られるように、Sr-HT/20%ガーナイトスキャフォールドは、欠損を完全に架橋する、広範囲に及ぶ新骨形成をもたらすが、これに対して、臨床的に使用されている材料であるTCP/HAでは架橋がない(図14を参照のこと)。標準的な採点システム(Table 1(表1)を参照のこと)を用いた、修復された欠損の、専門家によるX線写真の盲検評価は、Sr-HT/20%ガーナイトによる欠損の架橋がTCPと比較して統計的に有意に改善されていることを立証している(図15を参照のこと)。
【0114】
【表1】
【0115】
図14は、12週における欠損の完全な架橋を示す、Sr-HT/20%ガーナイト(図中、「Sr-HT-ガーナイトスキャフォールド」と称する)を、臨床的に使用されているTCP/HAと比較する、X線写真解析を示す写真である。これらの代表的なX線写真において、欠損(矢印)は、TCP/HAの場合には半透明であることがわかる。これは、欠損が架橋されていないことを示している。これに対して、Sr-HT/20%ガーナイトでは、骨欠損が、欠損全体を架橋する新しい骨を含んでいるのが認められる。
【0116】
図15は、欠損の架橋のX線写真採点が、Sr-HT/20%ガーナイト(図中、「Sr-HT-ガーナイト」と称する)をベースとするスキャフォールドではTCP/HAと比較して優れていたことを示している。X線写真の採点は、セラミックに対して盲検化された2人の中立の獣医学専門家によって、標準的な採点システムに従って行われた。Sr-HT/20%ガーナイトをベースとするスキャフォールドではTCP/HAと比較して有意に高い欠損架橋スコアが得られた。
【0117】
欠損架橋及び新骨形成の組織学的評価
非脱灰組織学的評価を行い、TCP/HA又はSr-HT/20%ガーナイトのいずれかを含む、橈骨欠損を架橋する骨の存在を評価した。欠損端部の近傍及びその中点において切片を採取した。骨形成を、組織形態計測によって標準的な技術を用いて、各部位において定性的に及び中点において定量的に評価した。Sr-HT/20%ガーナイトでは、欠損端部及び中点のいずれにおいても広範囲に及ぶ新骨形成が観察された。これは、欠損架橋が完全であることを示している。これに対して、TCP/HAでは新骨形成がほとんど認められなかった(図16を参照のこと)。さらに、スキャフォールド構造は、Sr-HT/20%ガーナイトでは著しく良好に保存された。これは、優れた機械的性質と一致する。Sr-HT/20%ガーナイトスキャフォールド内の髄空間(矢印を参照のこと)の出現は、骨再形成が起こっていること及び正常な皮質構造が再生されていることを示している。欠損の中点における組織形態計測による評価により、Sr-HT/20%ガーナイトで処置された欠損中の骨形成レベルがTCP/HAと比較して有意に増加していることが確認された(図17を参照のこと)。
【0118】
図16は、代表的な非脱灰組織学的骨切片を示しており、これは、Sr-HT/20%ガーナイト(図16B及び16D)が優れた新骨形成を誘発することを立証している。発生した欠損の部位は、各顕微鏡写真中において円で囲まれている。各画像の右側の残りの骨は、欠損が導入されていない元の尺骨である。Sr-HT/20%ガーナイト(図16B及び16D)で処置されたウサギ橈骨欠損では、TCP/HA(図16A及び図16C)と比較して、欠損の中点及び端部のいずれにおいても、スキャフォールド全体にわたって成長している、増加した量の新骨(図上の黒色物質)が観察される(A及びBは欠損の中点から採取された切片である。これに対して、C及びDは欠損の端部からであった)。Sr-HT/20%ガーナイトスキャフォールドの構造は、その増加した機械的強度と一致して保存されるのに対して、TCP/HAでは、スキャフォールドの圧縮が観察される。Sr-HT/20%ガーナイトスキャフォールド(図16B及び図16D)内の髄空間(矢印)の出現は、骨再形成が起こっていること及び正常な皮質構造が再生されていることを示している。
【0119】
図17は、Sr-HT/20%ガーナイト(図中、「Sr-HT-ガーナイト」と称する)が、橈骨欠損の中点において優れた新骨形成を行い、これは骨欠損の架橋が有効であることを立証する組織形態計測の測定値を示している。新骨を強調するために、欠損の中間点からの非脱灰切片をトルイジンブルーによって染色した。Image Jソフトウェア(NIH、USA)を用いて、欠損の領域を規定し、この領域内の新骨を測定した。Sr-HT/20%ガーナイトでは、TCP/HAと比較して有意に大きい新骨面積が観察され、これは、より有効な欠損架橋を示している。
【0120】
結論として、本発明の複合セラミック材料は、曲げ強さ及び破壊靭性が増加した、好都合なバイオセラミック特性を示す。これはまた、改善された生物学的性質を示す。
【0121】
本発明を、具体例を参照して説明したが、本発明を多くの他の形態で具体化できることが当業者にはわかるであろう。特に、種々の記載された例の任意の一つの特徴は、他の記載された例のいずれかにおいて任意の組合せで提供し得る。
図1
図2
図3
図6
図7
図10A-10B】
図11A
図11B
図11C
図13
図14
図16
図4A
図4B
図4C
図5
図8
図9
図12
図15
図17