特許第6072025号(P6072025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072025
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】圧電セラミック無鉛材料
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/475 20060101AFI20170123BHJP
   H01L 41/39 20130101ALI20170123BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C04B35/475
   H01L41/39
   H01L41/187
【請求項の数】5
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2014-517738(P2014-517738)
(86)(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公表番号】特表2014-523845(P2014-523845A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】EP2012062721
(87)【国際公開番号】WO2013004622
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2015年6月22日
(31)【優先権主張番号】102011078536.1
(32)【優先日】2011年7月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511004645
【氏名又は名称】セラムテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】CeramTec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フリーデリケ アーペル
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ユルゲン シュライナー
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア フォイクト
【審査官】 國方 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−184268(JP,A)
【文献】 特開2011−187847(JP,A)
【文献】 特開2008−239482(JP,A)
【文献】 特開平11−171643(JP,A)
【文献】 特表2011−518757(JP,A)
【文献】 特開2005−082422(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0289525(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01231192(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01253122(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/22,35/42−35/51
H01L 41/187、41/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電セラミック無鉛材料であるチタン酸ビスマスナトリウムの製造方法であって、ナトリウムおよびビスマス源としてビスマス酸ナトリウム(NaBiO3)を使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記圧電セラミック材料を水系中で混合し且つ粉砕することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸素空孔の割合が最小化されていることを特徴とする、チタン酸ビスマスナトリウム製の圧電セラミック無鉛材料を製造するための、請求項1または2に記載の方法
【請求項4】
鉛の割合が0.1質量%未満であることを特徴とする、チタン酸ビスマスナトリウム製の圧電セラミック無鉛材料を製造するための、請求項3に記載の方法
【請求項5】
前記圧電セラミック無鉛材料が、センサ技術、並びに、アクチュエータ技術の分野において用いられるものであることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、チタン酸ビスマスナトリウムに基づく圧電性無鉛材料、その製造方法およびその使用である。
【0002】
圧電性セラミック(圧電セラミック)は、センサ技術(力、加速度および圧力の測定)およびアクチュエータ技術(位置決め技術および超音波生成)の分野における広い応用領域を有している。
【0003】
圧電セラミック、殊にKFZ技術(ノックセンサ、回転速度センサ、バックセンサ(Rueckfahrsensoren))を使用するためには、機能的パラメータが熱および時間安定性(高いキュリー温度、低い温度係数および低いエージング速度)で、高い圧電性作用を有する材料が必須である。
【0004】
圧電セラミック材料は、長らく、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)とチタン酸鉛(PbTiO3)との固溶体(混合結晶)に基づく組成物からなっている。基本の系の多様な改質は、原子価、イオン半径および化学結合の特性に関して当該のイオンの前提条件が満たされた場合に、金属イオンを置換することおよび/または添加することによって、限定的な濃度内で可能である。
【0005】
元のイオンに対して相違する原子価のイオンを用いたドーピングによる基本組成物の改質は、誘電特性および電気機械特性の多様性をもたらす。
【0006】
チタン酸ジルコニウム酸鉛セラミックの代用として、特定の前提条件下で、ペロブスカイト構造を有する化合物、例えばBiFeO3、KNbO3、NaNbO3、Na0.5Bi0.5TiO3が利用される。
【0007】
これらの圧電セラミックは、強誘電体に属する。セラミックの強誘電体として、無鉛組成物、例えば(K,Na)NbO3、(Sr1-xBax)Nb25も知られているが、しかしながらそれらは公知のPZTベースの系の特性に達していない。
【0008】
総じて、基本の系の様々な改質によって既に非常に多様な組成が存在し、このことによって、多くの場合、種々の変化する機能について圧電性材料の誘電特性および電気機械特性のそれぞれ用途に適合した仕様を実現することが可能である。
【0009】
公知のチタン酸ジルコニウム酸鉛セラミックの場合の欠点は、主成分として使用される酸化鉛、正確にはPb2+が、ペロブスカイト格子内で固く結合されていることである。酸化鉛の環境適合性が悪いことに基づき、将来的に有利には無鉛圧電セラミックが使用されるべきである。無鉛系の分野において、前途有望であるとして際立っている系は、Bi0.5Na0.5TiO3系(チタン酸ビスマスナトリウム(BNT))である。しかし、これらの系はいくつかの欠点も有している:
水中での炭酸ナトリウムの溶解性およびそれに起因する均質性の問題に基づき、チタン酸ビスマスナトリウムの製造の際に際して、溶剤としてエタノールが利用される。これは、爆発性の物質を用いた作業についての義務並びに環境面での義務を守らなければならないことにつながり、そのことは煩雑な方法および高価な装置という結果となる。無鉛系の使用によって達成される長所の一部は、この追加的な義務によって再度帳消しになる。
【0010】
さらには、チタン酸ビスマスナトリウムの焼結に際して、酸素空孔が生じ、それによって材料の伝導率が上昇し且つ分極が阻害されるという問題がある。
【0011】
従って、本発明の課題は、水系において製造を行うことができる、最小限の酸素空孔を有するチタン酸ビスマスナトリウム系での無鉛圧電セラミック材料を提供することであった。
【0012】
従って、工程における酸素空孔の形成についての制御が、本発明による方法の本質的な特徴である。
【0013】
本発明の基礎をなす課題は、主請求項の特徴によって解決される。有利な構成は、下位請求項内で定義される。
【0014】
それに応じて、チタン酸ビスマスナトリウム製の圧電セラミック無鉛材料の製造のための本発明による方法は、ナトリウムおよびビスマス源としてビスマス酸ナトリウム(NaBiO3)を使用することが想定されている。
【0015】
Bi0.53+Na0.51+Ti4+32-(BNT)系において、化学両論組成比の化合物が存在する。酸素空孔は、異物、即ち不純物によって、またはか焼および焼結の工程によっても発生することがある。これは、Na1+Bi5+32-の使用によって防止される。この化合物においては、酸素濃度はBNTに比べて高く、且つ、焼結の際にBi5+からBi3+への還元によって酸素が放出される。
【0016】
従って、焼結は有利には酸素を含まない雰囲気中で行われ、そのことは酸素空孔の発生を防止する/最小化するか、またはいずれにせよ本質的に低減させる。
【0017】
それに加えて、焼結温度を50℃だけ下げることができる。それにより、溶融温度に対する大きな差異(例えば約1250℃であり得る)がもたらされる。従って、工程温度の低下によって、この方法は、エネルギー効率もより良くなる。
【0018】
本発明の好ましいさらなる構成によれば、圧電セラミック材料を水系において混合し且つ粉砕する。これは、爆発性の物質を用いた作業のための義務が適用されないという利点を有し、なぜなら、溶剤としてのエタノールを用いないからである。
【0019】
PZTセラミックの鉛含有率に基づく環境面での義務も同様に適用されず、なぜなら、鉛含有率が最小化されており、特に好ましくは鉛の割合は0.1質量%未満であるからである。
【0020】
本発明による圧電セラミックの無鉛材料は、例えばセンサ技術、殊に力、加速度および圧力の測定、並びに、殊に位置決めおよび超音波発生のアクチュエータ技術の分野において使用することができる。