特許第6072056号(P6072056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6072056ATP−結合カセットトランスポーターの修飾因子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072056
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ATP−結合カセットトランスポーターの修飾因子
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/04 20060101AFI20170123BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20170123BHJP
   G01N 33/566 20060101ALI20170123BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 7/12 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20170123BHJP
   A61K 31/553 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C07D498/04CSP
   G01N33/53 D
   G01N33/566
   C12Q1/02
   A61P43/00 121
   A61K45/00
   A61P43/00 105
   A61P7/10
   A61P3/06
   A61P3/10
   A61P43/00 111
   A61P5/14
   A61P17/00
   A61P35/00
   A61P19/08
   A61P13/02
   A61P7/12
   A61P13/12
   A61P25/00
   A61P25/28
   A61P25/16
   A61P21/02
   A61P25/14
   A61P21/04
   A61P11/00
   A61P27/02
   A61P37/02
   A61K31/553
   C07D498/04 116
【請求項の数】16
【全頁数】79
(21)【出願番号】特願2014-541272(P2014-541272)
(86)(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公表番号】特表2014-534236(P2014-534236A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】US2012064217
(87)【国際公開番号】WO2013070961
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年11月2日
(31)【優先権主張番号】61/557,043
(32)【優先日】2011年11月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/610,257
(32)【優先日】2012年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598032106
【氏名又は名称】バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】アダム・アール・ルッカー
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ジョセフ・リトラー
(72)【発明者】
【氏名】アヌスヤ・チョウドゥリー
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・エル・ハリソン
(72)【発明者】
【氏名】ラビカント・ベルリ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ピー・ライアン
(72)【発明者】
【氏名】リーツォン・ジアン
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルド・ルス−ルシス
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−533351(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0131492(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/053471(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/133751(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/133951(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
II:
【化1】
[式中、それぞれの出現について独立して:
Rは、H、OH、OCH3 であるか、あるいは2つのRは一緒になって、-OCH2O-または-OCF2O-を形成し;
R1は、Hまたは2までの C1-C6 アルキルであり;
R2は、Hまたはハロであり;
R3は、HまたはC1-C6 アルキルであり;
Yは、O またはNR4でありおよび、
R4は、HまたはC1-C6 アルキルである]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項2】
2つのRが一緒になって、-OCF2O-を形成し、R1がHであり、およびR2がFである、式IIで示される化合物またはその医薬上許容される塩である、請求項1に記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項3】
2つのRが一緒になって、-OCF2O-を形成し、R1がHであり、R2がFであり、およびR3 がCH3である、式IIで示される化合物またはその医薬上許容される塩である、請求項1またはに記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項4】
式IIa:
【化2】
[式中、R2は、Hまたはハロである]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩である、請求項1に記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項5】
R2がFである、請求項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項6】
下記式:
【化3】
または
【化4】
で示される化合物またはその医薬上許容される塩である、請求項1に記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項7】

【化5】
で示される化合物またはその医薬上許容される塩である、請求項1に記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項8】
(i)請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩; および、
(ii)医薬上許容される担体、
を含む医薬組成物。
【請求項9】
さらに、粘液溶解薬、気管支拡張剤、抗生物質、抗感染薬、抗炎症剤、CFTR 修正剤、CFTR 増強剤、または栄養剤から選択されるさらなる剤を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩を含む、細胞の膜における機能的 ABC トランスポーターの数を上昇させる医薬。
【請求項11】
ABC トランスポーターがCFTRである、請求項10に記載の医薬。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩を含む、対象における、ABC トランスポーター活性に関係づけられる、状態、疾患、または障害を治療するための医薬。
【請求項13】
状態、疾患、または障害が、嚢胞性線維症、気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固-線維素溶解欠損症、プロテインC欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、脂質加工欠損症、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無ベータリポ蛋白血症、リソソーム蓄積症、I細胞病/偽性ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ病/テイ・サックス、クリグラー・ナジャーII型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、メラノーマ、グリカン糖鎖異常 CDG 1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT 欠乏症、尿崩症 (di)、神経身体的 di、腎性 DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッヘル病、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病、ポリグルタミン神経障害、ハンチントン、脊髄小脳失調症 I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体、筋緊張性ジストロフィー、海綿状脳症、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病、ファブリー病、ストロイスラー・シャインカー症候群、COPD、眼球乾燥疾患、またはシェーグレン疾患から選択される、請求項12に記載の医薬。
【請求項14】
状態、疾患、または障害が、嚢胞性線維症、気腫、COPD、または眼球乾燥疾患から選択される、請求項12または13に記載の医薬。
【請求項15】
R2がHまたはハロである式IIaの化合物:
【化6】
を調製する方法であって、以下を含む方法:
(a)式I−5の化合物をカルボニルジイミダゾール (CDI)と溶媒の存在下で接触させることにより、式I−4の化合物を得ること;
【化7】

(b)式I−4の化合物を酸化剤と溶媒の存在下で接触させることにより、式I−3の化合物を得ること;
【化8】
および、
(c)式I−3の化合物を塩基と溶媒の存在下で接触させることにより、式IIaの化合物を得ること。
【化9】
【請求項16】
R2がHまたはFである、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2011年11月8日出願の米国仮出願第61/557,043号および2012年3月13日出願の米国仮出願第61/610,257号からの優先権を主張し、それらの内容全体を引用により本出願に含める。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、ATP-結合カセット (「ABC」) トランスポーターまたはその断片、例えば、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子 (Cystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator)(「CFTR」)の修飾因子 (modulator)、その組成物およびそれらによる方法に関する。本発明はまた、かかる修飾因子を用いるABC トランスポーターに媒介される疾患を治療する(treating)方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ABC トランスポーターは、多種多様な薬剤(pharmacological agent)、潜在的に毒性の薬物、および生体異物、ならびにアニオンの輸送を調節する膜トランスポータータンパク質のファミリーである。ABC トランスポーターは、それらの特定の活性のために細胞のアデノシン三リン酸 (ATP) に結合し、利用する、同属の(homologous)膜タンパク質である。これらのトランスポーターのいくつかは、多剤耐性タンパク質(例えば、MDR1-P 糖タンパク質、または多剤耐性タンパク質、MRP1)として見出されており、化学療法薬に対して悪性癌細胞を防御する。現在までに、48のABC トランスポーターが同定されており、それらの配列同一性および機能に基づいて7つのファミリーに分類されている。
【0004】
ABC トランスポーターは、体内における様々な重要な生理的役割を調節し、有害な環境化合物に対する防御を提供する。このため、それらはトランスポーターにおける欠陥(defect) に関連する疾患の治療、標的細胞からの薬物輸送の防止、およびABC トランスポーター活性の調節が有益であり得るその他の疾患における介入のための、重要な創薬標的を表す。
【0005】
一般に疾患に関連するABC トランスポーターファミリーの1つのメンバーは、cAMP/ATP-媒介アニオンチャンネルである、CFTRである。CFTRは様々な細胞型、例えば、吸収および分泌上皮細胞において発現しており、そこでそれは、膜を横切るアニオン流動(flux) ならびにその他のイオンチャンネルおよびタンパク質の活性を調節する。上皮細胞において、CFTRが正常に機能することは、身体全体、例えば、呼吸および消化組織の電解質輸送の維持のために重要である。CFTRは、それぞれが6つの膜貫通ヘリックスおよびヌクレオチド結合ドメイン含有する、膜貫通ドメインのタンデムリピートからできているタンパク質をコードする、およそ 1480 アミノ酸から構成される。2つの膜貫通ドメインはチャンネル活性および細胞輸送を調節する複数のリン酸化部位を有する、大きい、極性の、調節性 (R)-ドメインにより連結されている。
【0006】
CFTRをコードする遺伝子が同定され、配列決定されている (Gregory、R. J. et al. (1990) Nature 347:382-386; Rich、D. P. et al. (1990) Nature 347:358-362を参照されたい)、(Riordan、J. R. et al. (1989) Science 245:1066-1073)。この遺伝子における欠陥はCFTR内での突然変異をもたらし、その結果、ヒトにおけるもっとも一般的な致死的遺伝性疾患である、嚢胞性線維症 (「CF」)がもたらされる。嚢胞性線維症は、米国においておよそ2,500人に1人の乳幼児に影響を及ぼす。一般米国集団において、1000万までの人々が明らかな悪影響を伴わずに単一コピーのこの欠陥遺伝子を担持している。対照的に、二コピーのCF 関連遺伝子を有する個体は、CFの衰弱性および致死的効果、例えば、慢性肺疾患を患っている。
【0007】
嚢胞性線維症を有する患者において、呼吸上皮において内因的に発現しているCFTRにおける突然変異は、イオンおよび液体輸送における不均衡をもたらす、低下した頂端側アニオン分泌を導く。その結果として起こるアニオン輸送の低下は、肺における増強した粘液蓄積および最終的に CF 患者において死をもたらす付随的な微生物感染に寄与している。呼吸疾患に加えて、CF 患者は典型的には胃腸の問題および膵機能不全を患っており、これは治療されないで放置されると、結果として死に至る。さらに、嚢胞性線維症である男性の大部分は不妊であり、嚢胞性線維症である女性においては妊孕性が低下している。二コピーのCF 関連遺伝子の重篤な効果とは対照的に、単一コピーのCF 関連遺伝子を有する個体はコレラおよび下痢に起因する脱水に対する抵抗性の上昇を示し - おそらくこれは集団における比較的高頻度のCF遺伝子を説明するものである。
【0008】
CF 染色体のCFTR遺伝子の配列解析により、様々な疾患の原因となる突然変異が明らかにされた (Cutting, G. R. et al. (1990) Nature 346:366-369; Dean, M. et al. (1990) Cell 61:863:870; および Kerem, B-S. et al. (1989) Science 245:1073-1080; Kerem, B-S et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:8447-8451)。現在までに、> 1000の疾患の原因となるCF遺伝子における突然変異が同定されている(http://www.genet.sickkids.on.ca/cftr/)。もっとも広く行き渡った突然変異は、CFTR アミノ酸配列の位置 508におけるフェニルアラニンの欠失であり、一般にΔF508-CFTRと称されている。この突然変異は嚢胞性線維症の症例のおよそ 70%において起こっており、重篤な疾患に関連している。
【0009】
ΔF508-CFTRにおける残基 508の欠失は、新生タンパク質が正しくフォールディングすることを阻止する。この結果、突然変異体タンパク質がERを出ることができなくなり、細胞膜へと通行する(traffic)ことができなくなる。その結果、膜に存在するチャンネルの数が野生型 CFTRを発現する細胞において観察されるものと比べてはるかに少なくなる。障害された輸送に加えて、突然変異は、欠陥のあるチャンネル開閉をもたらす。また、膜におけるチャンネルの数の低下および欠陥のある開閉(gating)は上皮を横切るアニオン輸送の低下を導き、欠陥のあるイオンおよび液体輸送がもたらされる(Quinton、P. M. (1990)、FASEB J. 4: 2709-2727)。しかしながら、研究により、膜における低下した数のΔF508-CFTRは、たとえ野生型 CFTR未満であっても、機能的(functional)であることが示されている (Dalemans et al. (1991)、Nature Lond. 354: 526-528; Denning et al.、前掲; Pasyk and Foskett (1995), J. Cell. Biochem. 270: 12347-50)。ΔF508-CFTRに加えて、欠陥のある輸送、合成、および/またはチャンネル開閉をもたらす、CFTRにおけるその他の疾患の原因となる突然変異が上方-または下方-制御されている可能性があり、アニオン分泌を変化させ、疾患進行および/または重症度を修飾している可能性がある。
【0010】
CFTRはアニオンに加えて様々な分子を輸送するが、この役割 (アニオンの輸送)は、上皮を横切るイオンおよび水の輸送の重要な機構における一要素を表すことが明白である。他の要素には、上皮Na+ チャンネル、ENaC、Na+/2Cl-/K+ コトランスポーター、Na+-K+-ATPase ポンプおよび側底膜 K+ チャンネルが挙げられ、これらはクロライドの細胞への取り込みについて責任がある。
【0011】
これらの要素は、それらの選択的発現および細胞内での局在化を介して、上皮を横切る方向性輸送を達成するためにともに働いている。クロライド吸収は、頂端膜に存在するENaC およびCFTRの協調した活性および細胞の側底面に発現するNa+-K+-ATPase ポンプおよびCl- チャンネルによって起こる。管腔側からのクロライドの二次的(Secondary)能動輸送は、細胞内クロライドの蓄積を導き、これは次いでCl- チャンネルを介して受動的に細胞から離れることができ、その結果、方向性輸送が起こる。側底面上の Na+/2Cl-/K+ コトランスポーター、Na+-K+-ATPase ポンプおよび側底膜 K+ チャンネルおよび管腔側上のCFTRの配置は、管腔側上のCFTRを介するクロライドの分泌を協調している。水はおそらくそれ自体能動的に輸送されることはないので、その上皮を横切る流れはナトリウムおよびクロライドの細胞間隙流によって生じる小さな経上皮浸透圧勾配に依存している。
【0012】
嚢胞性線維症に加えて、CFTR 活性の調節はCFTRにおける突然変異により直接的にもたらされるものではないその他の疾患、例えば、分泌性疾患およびその他のCFTRにより媒介されるタンパク質フォールディング疾患のために有益でありうる。これらには、限定されるものではないが、気腫、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、眼球乾燥疾患、およびシェーグレン症候群が含まれる。
【0013】
COPD は、進行性であって完全には可逆的ではない気流制限により特徴づけられる。気流制限は、粘液分泌過多、気腫、および細気管支炎に起因する。突然変異体または野生型 CFTRの活性化因子は、粘液分泌過多およびCOPDにおいて一般的なものである障害された粘液線毛クリアランスの有望な治療を提供する。具体的には、CFTRを横切るアニオン分泌の上昇は、粘液を水分補給するための気道表面液体への液体輸送および繊毛周囲(periciliary)液粘性の最適化を促進しうる。これは、増強した粘液線毛クリアランスおよびCOPDに関連する症状の低減を導くであろう。眼球乾燥疾患は、涙液生産の低下および異常な涙液層脂質、タンパク質およびムチンプロファイルによって特徴づけられる。眼球乾燥には多くの原因があり、そのいくつかとしては、高齢、生体内レーザー屈折矯正術(Lasik eye surgery)、関節炎、薬物療法、化学/熱傷、アレルギー、および疾患、例えば、嚢胞性線維症およびシェーグレン症候群が挙げられる。CFTRを介するアニオン分泌の上昇は、角膜内皮細胞および眼を囲む分泌腺からの液体輸送を増強して、角膜水和を上昇させるであろう。これは、眼球乾燥疾患に関連する症状を軽減するために役立つであろう。シェーグレン症候群は、免疫系が身体全体にわたる、例えば、眼、口、皮膚、呼吸組織、肝臓、腟、および腸の水分産生腺を攻撃する自己免疫疾患である。症状としては、眼球乾燥、口、および腟、ならびに肺疾患が挙げられる。この疾患はまた、関節リウマチ、全身性狼瘡、全身性硬化症、および多発性筋炎(polymypositis)/皮膚筋炎に関連している。欠陥のあるタンパク質輸送が疾患を引き起こすと考えられており、この疾患についての治療選択肢は制限されている。CFTR 活性の修飾因子は疾患により苦しめられている様々な器官に水分補給し、関連する症状を高める(elevate)のに役立つ可能性がある。
【0014】
上記のように、ΔF508-CFTRにおける残基 508の欠失が、新生タンパク質が正しくフォールディングすることを阻止し、その結果、この突然変異体タンパク質がERを出て、細胞膜へと通行する(traffic)ことができなくなると考えられている。その結果、不十分な量の成熟タンパク質が細胞膜に存在することとなり、上皮組織内でのクロライド輸送が有意に低下する。実際、ER 機構によるABC トランスポーターの欠陥のある ER プロセシングのこの細胞現象は、CF 疾患のためだけではなく、広範なその他の孤立性および遺伝性疾患のための根底にある基礎であることが示されている。ER 機構が誤動作しうる2つの方法は、分解を導くタンパク質のER 排出との共役の喪失によるか、 またはこれらの欠陥のある/誤って折り畳まれたタンパク質のER 蓄積によるかのいずれかである[Aridor M, et al., Nature Med., 5(7), pp 745- 751 (1999); Shastry, B.S., et al., Neurochem. International, 43, pp 1-7 (2003); Rutishauser, J., et al., Swiss Med Wkly, 132, pp 211-222 (2002); Morello, JP et al., TIPS, 21, pp. 466- 469 (2000); Bross P., et al., Human Mut., 14, pp. 186-198 (1999)]。第一のクラスのER 機能不全に関連する疾患は、嚢胞性線維症 (上記のように誤って折り畳まれた ΔF508-CFTRに起因する)、気腫 (a1-アンチトリプシン; 非Pizバリアント (non Piz variant) に起因する)、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固-線維素溶解欠損症(Coagulation-Fibrinolysis deficiencis)、例えば、プロテインC欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、脂質加工 (Lipid processing)欠損症、例えば、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無ベータリポ蛋白血症、リソソーム蓄積症、例えば、I細胞病/偽性ハーラー、ムコ多糖症 (リソソームプロセシング酵素に起因する)、サンドホフ病/テイ・サックス (β-ヘキソサミニダーゼに起因する)、クリグラー・ナジャーII型 (UDP-グルクロニル-シアル酸-トランスフェラーゼ(glucuronyl-sialyc-transferase) に起因する)、多腺性内分泌障害/高インスリン血症(Hyperinsulemia)、真性糖尿病 (インスリン受容体に起因する)、ラロン小人症 (成長ホルモン受容体に起因する)、ミエロペルオキシダーゼ欠損症(Myleoperoxidase deficiency)、原発性副甲状腺機能低下症 (Primary hypoparathyoidism)( プレプロ副甲状腺ホルモンに起因する)、メラノーマ (チロシナーゼに起因する)である。後のクラスのER 機能不全に関連する疾患は、グリカン糖鎖異常(glycanosis) CDG 1型、気腫 (α1-アンチトリプシン (PiZ variant) に起因する)、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症 (I、II、IV型プロコラーゲンに起因する)、遺伝性低フィブリノーゲン血症 (フィブリノーゲンに起因する)、ACT 欠乏症(deficiency) (α1-抗キモトリプシンに起因する)、尿崩症 (DI)、神経身体的(Neurophyseal) DI (バソプレシン(Vasopvessin)ホルモン/V2-受容体に起因する)、腎性 DI (アクアポリン IIに起因する)、シャルコー・マリー・トゥース症候群 (末梢ミエリンタンパク質22に起因する)、ペリツェウス・メルツバッヘル病、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病 (βAPPおよびプレセニリンに起因する)、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺(Progressive supranuclear plasy)、ピック病、いくつかのポリグルタミン神経障害(polyglutamine neurological disorders)、例えば、ハンチントン、脊髄小脳失調症 (Spinocerebullar ataxia)I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体(Dentatorubal pallidoluysian)、および筋緊張性ジストロフィー、ならびに海綿状脳症、例えば、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病 (プリオンタンパク質プロセシング欠陥に起因する)、ファブリー病 (リソソーム α-ガラクトシダーゼ Aに起因する)およびストロイスラー・シャインカー症候群 (Prp プロセシング欠陥に起因する)である。
【0015】
CFTR 活性の上方制御に加えて、CFTR 修飾因子によるアニオン分泌の低下は、上皮水輸送が分泌促進物質に活性化されたクロライド輸送の結果として劇的に上昇している、分泌性下痢の治療のために有益でありうる。この機構はcAMPの上昇およびCFTRの刺激を伴う。
【0016】
下痢には多数の原因があるが、過剰なクロライド輸送に起因する下痢性疾患の主な結果は、すべてに共通であり、脱水、アシドーシス、障害された増殖および死が含まれる。
【0017】
急性および慢性下痢は、世界の多くの地域において主要な医学的問題を表す。下痢は、5歳未満の小児において、栄養障害における重要因子であり、かつ、主な死因(5,000,000 死/年)である。
【0018】
分泌性下痢はまた、後天性免疫不全症候群 (AIDS)および慢性炎症性腸疾患 (IBD)の患者における危険な状態(condition)でもある。先進国から開発途上国への毎年1600万の旅行者が下痢を発症し、下痢の重症度および症例数は旅行の国および地域に依存する。
【0019】
家畜および愛玩動物、例えば、ウシ、ブタおよびウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコおよびイヌにおける下痢はまた、下痢(scours)としても知られ、これらの動物における主な死因である。下痢は、あらゆる主要な移行(transition)、例えば、 離乳または物理的移動に起因して、ならびに様々な細菌またはウイルス感染に応答して起こり得、一般的に、動物の出生後数時間内に起こる。
【0020】
もっとも一般的な下痢を引き起こす細菌は、K99 毛(pilus) 抗原を有する毒素原性大腸菌(enterotoxogenic E-coli) (ETEC)である。下痢の一般的なウイルスの原因としては、ロタウイルスおよびコロナウイルスが挙げられる。その他の感染病原体としては、とりわけ、クリプトスポリジウム、ランブル鞭毛虫、およびサルモネラが挙げられる。
【0021】
ロタウイルス感染の症状としては、水様便の排泄、脱水および脱力が挙げられる。コロナウイルスは、新生児動物においてより重篤な疾病をもたらし、ロタウイルス感染よりも高い死亡率を有する。しかしながら、しばしば、幼い動物は、2以上のウイルスまたはウイルス性および細菌性微生物の組み合わせにより同時に感染されることがありうる。これは劇的に疾患の重症度を上昇させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、哺乳類の細胞膜におけるABC トランスポーターの活性を調節するために用いることができる、ABC トランスポーター活性の修飾因子、およびその組成物に対する必要性が存在する。
【0023】
ABC トランスポーター活性のかかる修飾因子を用いる、ABC トランスポーターに媒介される疾患を治療する方法に対する必要性が存在する。
【0024】
哺乳類のエクスビボ(ex vivo)細胞膜における、ABC トランスポーター活性を調節する方法に対する必要性が存在する。
【0025】
哺乳類の細胞膜におけるCFTRの活性を調節するために用いることができる、CFTR 活性の修飾因子に対する必要性が存在する。
【0026】
CFTR 活性のかかる修飾因子を用いる、CFTR-媒介疾患を治療する方法に対する必要性が存在する。
【0027】
哺乳類のエクスビボ細胞膜における、CFTR 活性を調節する方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
発明の概略
本発明の化合物、およびその医薬上許容される組成物は、ABC トランスポーター活性、特に CTFR 活性の修飾因子として有用であることがこのたび判明した。これらの化合物は一般式 I:
【化1】
I
を有するか、またはその医薬上許容される塩であり、ここで、それぞれの出現について独立して(independenly for each occurrence):
Yは、OHまたはNHであり; および、
Xは、CO2Jであり;
ここで、Jは、HまたはC1-C6 アルキルであり;
Rは、H、OH、OCH3 であるか、あるいは2つのRは一緒になって、-OCH2O-または-OCF2O-を形成し;
R1は、Hまたは2までの (up to two)C1-C6 アルキルであり;
R2は、Hまたはハロであり; および、
R3は、HまたはC1-C6 アルキルであり;
あるいはYおよびXは、一緒になって、式 IIの化合物:
【化2】
II
またはその医薬上許容される塩を形成し、ここで、それぞれの出現について独立して:
Rは、H、OH、OCH3 であるか、あるいは2つのRは一緒になって、-OCH2O-または-OCF2O-を形成し;
R1は、Hまたは2までの C1-C6 アルキルであり;
R2は、Hまたはハロであり;
R3は、Hまたは C1-C6 アルキルであり;
Yは、OまたはNR4であり; および、
R4は、HまたはC1-C6 アルキルである。
【0029】
本発明はまた、式 IおよびIIの化合物を調製する方法を提供する。
【0030】
これらの化合物およびその医薬上許容される組成物は、様々な疾患、障害、または状態、例えば、これらに限定されないが、嚢胞性線維症、気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固-線維素溶解欠損症、プロテインC欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、脂質加工欠損症、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無ベータリポ蛋白血症、リソソーム蓄積症、I細胞病/偽性ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ病/テイ・サックス、クリグラー・ナジャーII型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、メラノーマ、グリカン糖鎖異常 CDG 1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT 欠乏症、尿崩症、神経生理学的(neurophysiol)、腎性、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッヘル病、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病、ポリグルタミン神経障害、ハンチントン、脊髄小脳失調症 I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体、筋緊張性ジストロフィー、海綿状脳症、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病、ファブリー病、ストロイスラー・シャインカー症候群、COPD、眼球乾燥疾患、およびシェーグレン疾患を治療する、またはその重症度を和らげるために有用である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において用いる場合、以下の定義を特に断りのない限り適用する。
【0032】
「ABC-トランスポーター」という用語は、本明細書において用いる場合、すくなくとも1つの結合ドメインを含むABC-トランスポータータンパク質またはその断片を意味し、ここで、該タンパク質またはその断片はインビボまたはインビトロにて存在する。「結合ドメイン」という用語は、本明細書において用いる場合、修飾因子に結合することができるABC-トランスポーターの上のドメインを意味する。例えば、Hwang、T. C. et al.、J. Gen. Physiol. (1998): 111(3)、477-90を参照されたい。
【0033】
「CFTR」という用語は、本明細書において用いる場合、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子または制御因子活性の能力があるその突然変異を意味し、例えば、これらに限定されないが、ΔF508 CFTRおよびG551D CFTR (例えば、CFTR 突然変異については、http://www.genet.sickkids.on.ca/cftr/を参照されたい)が挙げられる。
【0034】
「調節する」という用語は、本明細書において用いる場合、例えば、活性を、測定可能な量により、上昇または低下させることを意味する。ABC トランスポーター、例えば、CFTR アニオンチャンネルの活性を上昇させることにより、ABC トランスポーター活性、例えば、 CFTR 活性を調節する化合物は、アゴニストと称される。ABC トランスポーター、例えば、CFTR アニオンチャンネルの活性を低下させることにより、ABC トランスポーター活性、例えば、 CFTR 活性を調節する化合物はアンタゴニストと称される。アゴニストは、ABC トランスポーター、例えば、 CFTR アニオンチャンネルと相互作用して、内因性リガンド結合に応答して受容体が細胞内シグナルを伝達する能力を上昇させる。アンタゴニストは、ABC トランスポーター、例えば、 CFTRと相互作用し、内因性リガンドまたは基質と受容体上の結合部位について競合し、内因性リガンド結合に応答して受容体が細胞内シグナルを伝達する能力を低下させる。
【0035】
「ABC トランスポーターに媒介される疾患を治療するまたはその重症度を低下させる」という表現は、ABC トランスポーターおよび/またはCFTR 活性により直接的に引き起こされる疾患の治療および ABC トランスポーターおよび/またはCFTR アニオンチャンネル活性により直接的に引き起こされるものではない疾患の症状の軽減の両方をいう。その症状がABC トランスポーターおよび/またはCFTR 活性によりに影響を及ぼされ得る疾患の例としては、これらに限定されないが、嚢胞性線維症、気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固-線維素溶解欠損症、例えば、プロテインC欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、脂質加工欠損症、例えば、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無ベータリポ蛋白血症、リソソーム蓄積症、例えば、I細胞病/偽性ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ病/テイ・サックス、クリグラー・ナジャーII型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、メラノーマ、グリカン糖鎖異常 CDG 1型、気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT 欠乏症、尿崩症 (DI)、神経生理学的 DI、腎性 DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッヘル病、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病、いくつかのポリグルタミン神経障害、例えば、ハンチントン、脊髄小脳失調症 I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体、および筋緊張性ジストロフィー、ならびに海綿状脳症、例えば、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病、ファブリー病、ストロイスラー・シャインカー症候群、COPD、眼球乾燥疾患、およびシェーグレン疾患が挙げられる。
【0036】
本発明の目的のために、化学元素は、the Periodic Table of the Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 75th Edにしたがって同定される。さらに、有機化学の一般原則は、それらの全内容を引用により本明細書に含める、「Organic Chemistry」, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausolito: 1999,および「March's Advanced Organic Chemistry」, 5th Ed., Ed.: Smith, M.B. and March, J., John Wiley & Sons, New York: 2001に記載されている。
【0037】
本明細書において用いる場合、「脂肪族」という用語は、そのそれぞれが、以下に示すように置換されていてもよい、用語、アルキル、アルケニル、アルキニルを包含する。
【0038】
本明細書において用いる場合、「アルキル」基は、1-12 (例えば、1-8、1-6、または1-4)の炭素原子を含有する飽和脂肪族炭化水素基をいう。アルキル基は、直鎖状または分枝状でありうる。アルキル基の例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチル、または2-エチルヘキシルが挙げられる。アルキル基は、一以上の置換基、例えば、ハロ、ホスホ、シクロ脂肪族 [例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、ヘテロシクロ脂肪族 [例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル [例えば、(脂肪族)カルボニル、(シクロ脂肪族)カルボニル、または(ヘテロシクロ脂肪族)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド(amido)[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、またはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ [例えば、脂肪族アミノ、シクロ脂肪族アミノ、またはヘテロシクロ脂肪族アミノ]、スルホニル [例えば、脂肪族-SO2-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、シクロ脂肪族オキシ、ヘテロシクロ脂肪族オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはヒドロキシにより置換されていてもよい (即ち、所望により置換されている)。限定されるものではなく、置換(substituted)アルキルのいくつかの例としては、カルボキシアルキル (例えば、HOOC-アルキル、アルコキシカルボニルアルキル、およびアルキルカルボニルオキシアルキル)、シアノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルアルキル、アラルキル、(アルコキシアリール)アルキル、(スルホニルアミノ)アルキル (例えば、 (アルキル-SO2-アミノ)アルキル)、アミノアルキル、アミドアルキル、(シクロ脂肪族)アルキル、またはハロアルキルが挙げられる。
【0039】
本明細書において用いる場合、「アルケニル」基は、2-8 (例えば、2-12、2-6、または2-4)の炭素原子およびすくなくとも1つの二重結合を含有する脂肪族炭素基をいう。アルキル基と同様に、アルケニル基は、直鎖状または分枝状でありうる。アルケニル基の例としては、これらに限定されないが、アリル、イソプレニル、2-ブテニル、および2-ヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は、一以上の置換基、例えば、ハロ、ホスホ、シクロ脂肪族 [例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、ヘテロシクロ脂肪族 [例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル [例えば、(脂肪族)カルボニル、(シクロ脂肪族)カルボニル、または(ヘテロシクロ脂肪族)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド [例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、またはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ [例えば、脂肪族アミノ、シクロ脂肪族アミノ、ヘテロシクロ脂肪族アミノ、または脂肪族スルホニルアミノ]、スルホニル [例えば、アルキル-SO2-、シクロ脂肪族-SO2-、またはアリール-SO2-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、シクロ脂肪族オキシ、ヘテロシクロ脂肪族オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはヒドロキシにより置換されていてもよい(can be optionally substituted with)。 限定されるものではなく、置換アルケニルのいくつかの例としては、シアノアルケニル、アルコキシアルケニル、アシルアルケニル、ヒドロキシアルケニル、アラルケニル、(アルコキシアリール)アルケニル、(スルホニルアミノ)アルケニル (例えば、 (アルキル-SO2-アミノ)アルケニル)、アミノアルケニル、アミドアルケニル、(シクロ脂肪族)アルケニル、またはハロアルケニルが挙げられる。
【0040】
本明細書において用いる場合、「アルキニル」基は、2-8 (例えば、2-12、2-6、または2-4)の炭素原子を含有し、すくなくとも1つの三重結合を有する脂肪族炭素基をいう。アルキニル基は、直鎖状または分枝状でありうる。アルキニル基の例としては、これらに限定されないが、プロパルギルおよびブチニルが挙げられる。アルキニル基は、一以上の置換基、例えば、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、スルファニル [例えば、脂肪族スルファニルまたはシクロ脂肪族スルファニル]、スルフィニル [例えば、脂肪族スルフィニルまたはシクロ脂肪族スルフィニル]、スルホニル [例えば、脂肪族-SO2-、脂肪族アミノ-SO2-、またはシクロ脂肪族-SO2-]、アミド [例えば、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニル、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノまたはヘテロアリールアミノカルボニル]、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミド、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、シクロ脂肪族、ヘテロシクロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アシル [例えば、(シクロ脂肪族)カルボニルまたは(ヘテロシクロ脂肪族)カルボニル]、アミノ [例えば、脂肪族アミノ]、スルホキシ、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、(シクロ脂肪族)オキシ、(ヘテロシクロ脂肪族)オキシ、または(ヘテロアリール)アルコキシにより置換されていてもよい。
【0041】
本明細書において用いる場合、「アミド」は、「アミノカルボニル」および「カルボニルアミノ」の両方を包含する。単独でまたは別の基と関連して用いられる場合、これらの用語は、アミド基、例えば、末端に用いられる場合、-N(RX)-C(O)-RY または-C(O)-N(RX)2をいい、内部的に用いられる場合、-C(O)-N(RX)- または-N(RX)-C(O)- をいい、ここで、RXおよびRY は、以下に規定する通りである。アミド基の例としては、アルキルアミド (例えば、アルキルカルボニルアミノまたはアルキルアミノカルボニル)、(ヘテロシクロ脂肪族)アミド、(ヘテロアラルキル)アミド、(ヘテロアリール)アミド、(ヘテロシクロアルキル)アルキルアミド、アリールアミド、アラルキルアミド、(シクロアルキル)アルキルアミド、またはシクロアルキルアミドが挙げられる。
【0042】
本明細書において用いる場合、「アミノ」基は、-NRXRYをいい、ここで、RXおよびRYのそれぞれは、独立して、そのそれぞれが本明細書に規定され、置換されていてもよい、水素、脂肪族、シクロ脂肪族、(シクロ脂肪族)脂肪族、アリール、アリール脂肪族(araliphatic)、ヘテロシクロ脂肪族、(ヘテロシクロ脂肪族)脂肪族、ヘテロアリール、カルボキシ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、(脂肪族)カルボニル、(シクロ脂肪族)カルボニル、((シクロ脂肪族)脂肪族)カルボニル、アリールカルボニル、(アリール脂肪族)カルボニル、(ヘテロシクロ脂肪族)カルボニル、((ヘテロシクロ脂肪族)脂肪族)カルボニル、(ヘテロアリール)カルボニル、または(ヘテロアリール脂肪族)カルボニルである。アミノ基の例としては、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアリールアミノが挙げられる。「アミノ」という用語が末端基(例えば、アルキルカルボニルアミノ)ではない場合、それは -NRX-により表される。RX は、上記に規定したものと同じ意味を有する。
【0043】
本明細書において用いる場合、単独でまたは「アラルキル」、「アラルコキシ」、または「アリールオキシアルキル」におけるように、より大きい部分の一部として用いられる、「アリール」基は、単環式 (例えば、フェニル); 二環式 (例えば、インデニル、ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル);および三環式 (例えば、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、またはテトラヒドロアントラセニル、アントラセニル) 環系であって、単環式環系が芳香族であるか、または二環式または三環式環系における環のすくなくとも1つが芳香族であるものをいう。二環式および三環式基としては、ベンゾ縮合(benzofused) 2-3 員炭素環式環が挙げられる。例えば、ベンゾ縮合基としては、二以上の C4-8 炭素環式部分と縮合したフェニルが挙げられる。アリールは、一以上の置換基、例えば、脂肪族 [例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル]; シクロ脂肪族; (シクロ脂肪族)脂肪族; ヘテロシクロ脂肪族; (ヘテロシクロ脂肪族)脂肪族; アリール; ヘテロアリール; アルコキシ; (シクロ脂肪族)オキシ; (ヘテロシクロ脂肪族)オキシ; アリールオキシ; ヘテロアリールオキシ; (アリール脂肪族)オキシ; (ヘテロアリール脂肪族)オキシ; アロイル; ヘテロアロイル; アミノ; オキソ (ベンゾ縮合二環式または三環式 アリールの非-芳香族炭素環式環におけるもの); ニトロ; カルボキシ; アミド; アシル [例えば、(脂肪族)カルボニル; (シクロ脂肪族)カルボニル; ((シクロ脂肪族)脂肪族)カルボニル; (アリール脂肪族)カルボニル; (ヘテロシクロ脂肪族)カルボニル; ((ヘテロシクロ脂肪族)脂肪族)カルボニル; または(ヘテロアリール脂肪族)カルボニル]; スルホニル [例えば、脂肪族-SO2- またはアミノ-SO2-]; スルフィニル [例えば、脂肪族-S(O)- またはシクロ脂肪族-S(O)-]; スルファニル [例えば、脂肪族-S-]; シアノ; ハロ; ヒドロキシ; メルカプト; スルホキシ; ウレア; チオウレア; スルファモイル; スルファミド; またはカルバモイルにより置換されていてもよい。あるいは、アリールは、非置換であってもよい。
【0044】
置換アリールの非限定的な例としては、ハロアリール [例えば、モノ-、ジ (例えば、 p、m-ジハロアリール)、および(トリハロ)アリール]; (カルボキシ)アリール [例えば、(アルコキシカルボニル)アリール、((アラルキル)カルボニルオキシ)アリール、および(アルコキシカルボニル)アリール]; (アミド)アリール [例えば、(アミノカルボニル)アリール、(((アルキルアミノ)アルキル)アミノカルボニル)アリール、(アルキルカルボニル)アミノアリール、(アリールアミノカルボニル)アリール、および(((ヘテロアリール)アミノ)カルボニル)アリール]; アミノアリール [例えば、((アルキルスルホニル)アミノ)アリールまたは((ジアルキル)アミノ)アリール]; (シアノアルキル)アリール; (アルコキシ)アリール; (スルファモイル)アリール [例えば、(アミノスルホニル)アリール]; (アルキルスルホニル)アリール; (シアノ)アリール; (ヒドロキシアルキル)アリール; ((アルコキシ)アルキル)アリール; (ヒドロキシ)アリール、((カルボキシ)アルキル)アリール; (((ジアルキル)アミノ)アルキル)アリール; (ニトロアルキル)アリール; (((アルキルスルホニル)アミノ)アルキル)アリール; ((ヘテロシクロ脂肪族)カルボニル)アリール; ((アルキルスルホニル)アルキル)アリール; (シアノアルキル)アリール; (ヒドロキシアルキル)アリール; (アルキルカルボニル)アリール; アルキルアリール; (トリハロアルキル)アリール; p-アミノ-m-アルコキシカルボニルアリール; p-アミノ-m-シアノアリール; p-ハロ-m-アミノアリール;または(m-(ヘテロシクロ脂肪族)-o-(アルキル))アリールが挙げられる。
【0045】
本明細書において用いる場合、「アリール脂肪族」、例えば、「アラルキル」基は、アリール基により置換されている脂肪族基 (例えば、C1-4 アルキル基) をいう。「脂肪族」、「アルキル」、および「アリール」は、本明細書中に規定されている。アリール脂肪族、例えば、アラルキル基の例は、ベンジルである。
【0046】
本明細書において用いる場合、「アラルキル」基は、アリール基により置換されているアルキル基 (例えば、C1-4 アルキル基) をいう。「アルキル」および「アリール」の両方は、上記に規定されている。アラルキル基の例は、ベンジルである。アラルキルは、一以上の置換基、例えば、 脂肪族 [例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル、例えば カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、またはハロアルキル、例えば、 トリフルオロメチル]、シクロ脂肪族 [例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミド [例えば、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、またはヘテロアラルキルカルボニルアミノ]、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、アルキルスルファニル、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミド、オキソ、またはカルバモイルにより置換されていてもよい。
【0047】
本明細書において用いる場合、「二環式環系」は、2つの環を形成する8-12 (例えば、9、10、または11) 員構造を含み、ここで、2つの環はすくなくとも1つの原子を共通して(例えば、2原子を共通して)有する。二環式環系としては、ビシクロ脂肪族(例えば、ビシクロアルキルまたはビシクロアルケニル)、ビシクロヘテロ脂肪族、二環式アリール、および二環式ヘテロアリールが挙げられる。
【0048】
本明細書において用いる場合、「炭素環」または「シクロ脂肪族」基は、 そのそれぞれが、以下に示すように置換されていてもよい、「シクロアルキル」基および「シクロアルケニル」基を包含する。
【0049】
本明細書において用いる場合、「シクロアルキル」基は、3-10 (例えば、5-10)の炭素原子の飽和炭素環式単環式-または二環式 (縮合または架橋) 環をいう。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、キュビル(cubyl)、オクタヒドロ-インデニル、デカヒドロ-ナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2.]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、または((アミノカルボニル)シクロアルキル)シクロアルキルが挙げられる。
【0050】
「シクロアルケニル」基は、本明細書において用いる場合、一以上の二重結合を有する、3-10 (例えば、4-8) の炭素原子の非-芳香族炭素環式環をいう。シクロアルケニル基の例としては、シクロペンテニル、1,4-シクロヘキサ-ジ-エニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、ヘキサヒドロ-インデニル、オクタヒドロ-ナフチル、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、ビシクロ[2.2.2]オクテニル、またはビシクロ[3.3.1]ノネニルが挙げられる。
【0051】
シクロアルキルまたはシクロアルケニル基は、一以上の置換基、例えば、リン(phosphor)、脂肪族 [例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル]、シクロ脂肪族、(シクロ脂肪族) 脂肪族、ヘテロシクロ脂肪族、(ヘテロシクロ脂肪族) 脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、(シクロ脂肪族)オキシ、(ヘテロシクロ脂肪族)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、(アリール脂肪族)オキシ、(ヘテロアリール脂肪族)オキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アミノ、アミド [例えば、(脂肪族)カルボニルアミノ、(シクロ脂肪族)カルボニルアミノ、((シクロ脂肪族)脂肪族)カルボニルアミノ、(アリール)カルボニルアミノ、(アリール脂肪族)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロ脂肪族)カルボニルアミノ、((ヘテロシクロ脂肪族)脂肪族)カルボニルアミノ、(ヘテロアリール)カルボニルアミノ、または(ヘテロアリール脂肪族)カルボニルアミノ]、ニトロ、カルボキシ [例えば、HOOC-、アルコキシカルボニル、またはアルキルカルボニルオキシ]、アシル [例えば、(シクロ脂肪族)カルボニル、((シクロ脂肪族) 脂肪族)カルボニル、(アリール脂肪族)カルボニル、(ヘテロシクロ脂肪族)カルボニル、((ヘテロシクロ脂肪族)脂肪族)カルボニル、または(ヘテロアリール脂肪族)カルボニル]、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、スルホニル [例えば、アルキル-SO2- およびアリール-SO2-]、スルフィニル [例えば、アルキル-S(O)-]、スルファニル [例えば、アルキル-S-]、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミド、オキソ、またはカルバモイルにより置換されていてもよい。
【0052】
本明細書において用いる場合、「複素環(ヘテロ環)」または「ヘテロシクロ脂肪族」という用語は、そのそれぞれが、以下に示すように置換されていてもよい、ヘテロシクロアルキル基およびヘテロシクロアルケニル基を包含する。
【0053】
本明細書において用いる場合、「ヘテロシクロアルキル」基は、3-10 員単環式-または二環式 (縮合または架橋) (例えば、5-から10-員単環式-または二環式) 飽和環構造であって、環原子の一以上がヘテロ原子 (例えば、N、O、S、またはそれらの組み合わせ)であるものをいう。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、1,4-ジオキソラニル、1,4-ジチアニル、1,3-ジオキソラニル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、モルホリニル、チオモルホリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロチオクロメニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロピリジニル(octahydropyrindinyl)、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロベンゾ[b]チオフォンイル、2-オキサ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクチル、および2,6-ジオキサ-トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニルが挙げられる。単環式ヘテロシクロアルキル基は、フェニル部分と縮合して、ヘテロアリールとして分類されるであろう構造、例えば、テトラヒドロイソキノリンを形成していてもよい。
【0054】
「ヘテロシクロアルケニル」基は、本明細書において用いる場合、一以上の二重結合を有する単環式-または二環式 (例えば、5-から10-員単環式-または二環式) 非-芳香族環構造であって、環原子の一以上がヘテロ原子 (例えば、N、O、またはS)であるものをいう。単環式および二環式ヘテロシクロ脂肪族は、標準的化学命名法にしたがって番号付される。
【0055】
ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル基は、一以上の置換基、例えば、リン、脂肪族 [例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル]、シクロ脂肪族、(シクロ脂肪族)脂肪族、ヘテロシクロ脂肪族、(ヘテロシクロ脂肪族)脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、(シクロ脂肪族)オキシ、(ヘテロシクロ脂肪族)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、(アリール脂肪族)オキシ、(ヘテロアリール脂肪族)オキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アミノ、アミド [例えば、(脂肪族)カルボニルアミノ、(シクロ脂肪族)カルボニルアミノ、((シクロ脂肪族) 脂肪族)カルボニルアミノ、(アリール)カルボニルアミノ、(アリール脂肪族)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロ脂肪族)カルボニルアミノ、((ヘテロシクロ脂肪族) 脂肪族)カルボニルアミノ、(ヘテロアリール)カルボニルアミノ、または(ヘテロアリール脂肪族)カルボニルアミノ]、ニトロ、カルボキシ [例えば、HOOC-、アルコキシカルボニル、またはアルキルカルボニルオキシ]、アシル [例えば、(シクロ脂肪族)カルボニル、((シクロ脂肪族) 脂肪族)カルボニル、(アリール脂肪族)カルボニル、(ヘテロシクロ脂肪族)カルボニル、((ヘテロシクロ脂肪族)脂肪族)カルボニル、または(ヘテロアリール脂肪族)カルボニル]、ニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、スルホニル [例えば、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニル]、スルフィニル [例えば、アルキルスルフィニル]、スルファニル [例えば、アルキルスルファニル]、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミド、オキソ、またはカルバモイルにより置換されていてもよい。
【0056】
「ヘテロアリール」基は、本明細書において用いる場合、4から15の環原子を有する単環式、二環式、または三環式環系であって、環原子の一以上がヘテロ原子 (例えば、N、O、S、またはそれらの組み合わせ) であり、単環式環系が芳香族であるかまたは二環式または三環式環系における環のすくなくとも1つが芳香族であるものをいう。ヘテロアリール基には、2から3の環を有するベンゾ縮合環系が含まれる。例えば、ベンゾ縮合基には、1または2の4から8 員ヘテロシクロ脂肪族部分 (例えば、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、またはイソキノリニル)とベンゾ縮合しているものが含まれる。ヘテロアリールのいくつかの例は、アゼチジニル、ピリジル、1H-インダゾリル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフリル、イソキノリニル、ベンズチアゾリル(benzthiazolyl)、キサンテン、チオキサンテン、フェノチアジン、ジヒドロインドール、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリル、シノリル、キノリル、キナゾリル、シノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、イソキノリル、4H-キノリジル、ベンゾ-1,2,5-チアジアゾリル、または1,8-ナフチリジルである。
【0057】
限定されるものではなく、単環式ヘテロアリールとしては、フリル、チオフェニル、2H-ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル(thazolyl)、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、2H-ピラニル、4-H-ピラニル(pranyl)、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジル、または1,3,5-トリアジル(triazyl)が挙げられる。単環式ヘテロアリールは、標準的化学命名法にしたがって番号付される。
【0058】
限定されるものではなく、二環式ヘテロアリールとしては、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、ベンゾ[b]フリル、ベキソ(bexo)[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダジル(benzimidazyl)、ベンズチアゾリル、プリニル、4H-キノリジル、キノリル、イソキノリル、シノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、1,8-ナフチリジル、またはプテリジルが挙げられる。二環式ヘテロアリールは、標準的化学命名法にしたがって番号付される。
【0059】
ヘテロアリールは、一以上の置換基、例えば、 脂肪族 [例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル]; シクロ脂肪族; (シクロ脂肪族)脂肪族; ヘテロシクロ脂肪族; (ヘテロシクロ脂肪族)脂肪族; アリール; ヘテロアリール; アルコキシ; (シクロ脂肪族)オキシ; (ヘテロシクロ脂肪族)オキシ; アリールオキシ; ヘテロアリールオキシ; (アリール脂肪族)オキシ; (ヘテロアリール脂肪族)オキシ; アロイル; ヘテロアロイル; アミノ; オキソ (二環式または三環式ヘテロアリールの非-芳香族炭素環式または複素環におけるもの); カルボキシ; アミド; アシル [例えば、脂肪族カルボニル; (シクロ脂肪族)カルボニル; ((シクロ脂肪族)脂肪族)カルボニル; (アリール脂肪族)カルボニル; (ヘテロシクロ脂肪族)カルボニル; ((ヘテロシクロ脂肪族)脂肪族)カルボニル; または(ヘテロアリール脂肪族)カルボニル]; スルホニル [例えば、脂肪族スルホニルまたはアミノスルホニル]; スルフィニル [例えば、脂肪族スルフィニル]; スルファニル [例えば、脂肪族スルファニル]; ニトロ; シアノ; ハロ; ヒドロキシ; メルカプト; スルホキシ; ウレア; チオウレア; スルファモイル; スルファミド; またはカルバモイルにより置換されていてもよい。あるいは、ヘテロアリールは、非置換であってもよい。
【0060】
置換ヘテロアリールの非限定的な例としては、 (ハロ)ヘテロアリール [例えば、モノ-およびジ-(ハロ)ヘテロアリール]; (カルボキシ)ヘテロアリール [例えば、(アルコキシカルボニル)ヘテロアリール]; シアノヘテロアリール; アミノヘテロアリール [例えば、((アルキルスルホニル)アミノ)ヘテロアリールおよび ((ジアルキル)アミノ)ヘテロアリール]; (アミド)ヘテロアリール [例えば、アミノカルボニルヘテロアリール、((アルキルカルボニル)アミノ)ヘテロアリール、((((アルキル)アミノ)アルキル)アミノカルボニル)ヘテロアリール、(((ヘテロアリール)アミノ)カルボニル)ヘテロアリール、((ヘテロシクロ脂肪族)カルボニル)ヘテロアリール、および((アルキルカルボニル)アミノ)ヘテロアリール]; (シアノアルキル)ヘテロアリール; (アルコキシ)ヘテロアリール; (スルファモイル)ヘテロアリール [例えば、(アミノスルホニル)ヘテロアリール]; (スルホニル)ヘテロアリール [例えば、(アルキルスルホニル)ヘテロアリール]; (ヒドロキシアルキル)ヘテロアリール; (アルコキシアルキル)ヘテロアリール; (ヒドロキシ)ヘテロアリール; ((カルボキシ)アルキル)ヘテロアリール; (((ジアルキル)アミノ)アルキル]ヘテロアリール; (ヘテロシクロ脂肪族)ヘテロアリール; (シクロ脂肪族)ヘテロアリール; (ニトロアルキル)ヘテロアリール; (((アルキルスルホニル)アミノ)アルキル)ヘテロアリール; ((アルキルスルホニル)アルキル)ヘテロアリール; (シアノアルキル)ヘテロアリール; (アシル)ヘテロアリール [例えば、(アルキルカルボニル)ヘテロアリール]; (アルキル)ヘテロアリール、および (ハロアルキル)ヘテロアリール [例えば、トリハロアルキルヘテロアリール]が挙げられる。
【0061】
「ヘテロアリール脂肪族」 (例えば、ヘテロアラルキル基) は、本明細書において用いる場合、ヘテロアリール基により置換されている脂肪族基 (例えば、C1-4 アルキル基) をいう。「脂肪族」、「アルキル」および「ヘテロアリール」は、上記に規定されている。
【0062】
「ヘテロアラルキル」基は、本明細書において用いる場合、ヘテロアリール基により置換されているアルキル基 (例えば、C1-4 アルキル基) をいう。「アルキル」および「ヘテロアリール」の両方は、上記に規定されている。ヘテロアラルキルは、一以上の置換基、例えば、アルキル (例えば、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、およびハロアルキル、例えば、トリフルオロメチル)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、アルキルスルファニル、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミド、オキソ、またはカルバモイルにより置換されていてもよい。
【0063】
本明細書において用いる場合、「環状部分」および「環状基」は、それらのそれぞれが先に規定されている、単環式-、二環式-、および三環式環系、例えば、シクロ脂肪族、ヘテロシクロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールをいう。
【0064】
本明細書において用いる場合、「架橋二環式環系」は、二環式ヘテロ環状脂肪族環系または二環式シクロ脂肪族環系であって、環が架橋されているものをいう。架橋二環式環系の例としては、これらに限定されないが、アダマンタニル、ノルボルナニル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.2.3]ノニル、2-オキサビシクロ[2.2.2]オクチル、1-アザビシクロ[2.2.2]オクチル、3-アザビシクロ[3.2.1]オクチル、および2,6-ジオキサ-トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニルが挙げられる。架橋二環式環系は、一以上の置換基、例えば、アルキル (例えば、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、およびハロアルキル、例えば、トリフルオロメチル)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、アルキルスルファニル、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミド、オキソ、またはカルバモイルにより置換されていてもよい。
【0065】
本明細書において用いる場合、「アシル」基は、ホルミル基または RX-C(O)- (例えば、 アルキル-C(O)-、「アルキルカルボニル」としても称される) をいい、ここで、 RX および「アルキル」は、先に規定されている。アセチルおよびピバロイルは、アシル基の例である。
【0066】
本明細書において用いる場合、「アロイル」または「ヘテロアロイル」 は、アリール-C(O)- またはヘテロアリール-C(O)- をいう。アロイルまたはヘテロアロイルのアリールおよびヘテロアリール部分は、先に規定されるように置換されていてもよい。
【0067】
本明細書において用いる場合、「アルコキシ」基は、アルキル-O- 基をいい、ここで、「アルキル」は、先に規定されている。
【0068】
本明細書において用いる場合、「カルバモイル」基は、構造 - O-CO-NRXRY または -NRX-CO-O-RZを有する基をいい、ここで、RXおよびRY は、上記に規定されており、RZ は、脂肪族、アリール、アリール脂肪族、ヘテロシクロ脂肪族、ヘテロアリール、またはヘテロアリール脂肪族でありうる。
【0069】
本明細書において用いる場合、「カルボキシ」 基は、末端基として用いられる場合、-COOH、-COORX、-OC(O)H、-OC(O)RXをいい; あるいは内部基として用いられている場合、-OC(O)- または-C(O)O-をいう。
【0070】
本明細書において用いる場合、「ハロ脂肪族」基は、1-3のハロゲンにより置換されている脂肪族基をいう。例えば、用語、ハロアルキルは、基 -CF3を含む。
【0071】
本明細書において用いる場合、「メルカプト」基は、-SHをいう。
【0072】
本明細書において用いる場合、「スルホ」基は、末端に用いられる場合、-SO3Hまたは -SO3RX をいい、あるいは、内部的に用いられる場合、-S(O)3-をいう。
【0073】
本明細書において用いる場合、「スルファミド」基は、末端に用いられる場合、構造 -NRX-S(O)2-NRYRZ をいい、内部的に用いられる場合、-NRX-S(O)2-NRY-をいい、ここで、RX、RY、およびRZ は、上記に規定されている。
【0074】
本明細書において用いる場合、「スルホンアミド」基は、末端に用いられる場合、構造 -S(O)2-NRXRY または-NRX-S(O)2-RZをいい;または、内部的に用いられる場合、-S(O)2-NRX- または-NRX -S(O)2-をいい、ここで、RX、RY、およびRZ は上記に規定されている。
【0075】
本明細書において用いる場合、「スルファニル」基は、末端に用いられる場合、-S-RX をいい、内部的に用いられる場合、-S- をいい、ここで、RX は、上記に規定されている。スルファニルの例としては、脂肪族-S-、シクロ脂肪族-S-、アリール-S-、等が挙げられる。
【0076】
本明細書において用いる場合、「スルフィニル」基は、末端に用いられる場合、-S(O)-RXをいい、内部的に用いられる場合、-S(O)- をいい、ここで、RX は、上記に規定されている。例示的なスルフィニル基としては、脂肪族-S(O)-、アリール-S(O)-、(シクロ脂肪族(脂肪族))-S(O)-、シクロアルキル-S(O)-、ヘテロシクロ脂肪族-S(O)-、ヘテロアリール-S(O)-、等が挙げられる。
【0077】
本明細書において用いる場合、「スルホニル」基は、末端に用いられる場合、-S(O)2-RXをいい、内部的に用いられる場合、-S(O)2-をいい、ここで、RX は、上記に規定されている。例示的なスルホニル基としては、脂肪族-S(O)2-、アリール-S(O)2-、(シクロ脂肪族(脂肪族))-S(O)2-、シクロ脂肪族-S(O)2-、ヘテロシクロ脂肪族-S(O)2-、ヘテロアリール-S(O)2-、(シクロ脂肪族(アミド(脂肪族)))-S(O)2-等が挙げられる。
【0078】
本明細書において用いる場合、「スルホキシ」基は、末端に用いられる場合、-O-SO-RX または-SO-O-RXをいい、内部的に用いられる場合、-O-S(O)-または-S(O)-O-をいい、ここで、RX は、上記に規定されている。
【0079】
本明細書において用いる場合、「ハロゲン」または「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素をいう。
【0080】
本明細書において用いる場合、単独でまたは別の基と関連して用いられる、用語、カルボキシに包含される、「アルコキシカルボニル」は、基、例えば、アルキル-OC(O)- をいう。
【0081】
本明細書において用いる場合、「アルコキシアルキル」 は、アルキル基、例えば、 アルキル-O-アルキル-をいい、ここで、アルキルは、上記に規定されている。
【0082】
本明細書において用いる場合、「カルボニル」は、-C(O)- をいう。
【0083】
本明細書において用いる場合、「オキソ」は、=Oをいう。
【0084】
本明細書において用いる場合、「ホスホ」という用語は、ホスフィナートおよびホスホナートをいう。ホスフィナートおよびホスホナートの例には、-P(O)(RP)2が含まれ、ここで、 RPは、脂肪族、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、(シクロ脂肪族)オキシ、(ヘテロシクロ脂肪族)オキシ、アリール、ヘテロアリール、シクロ脂肪族またはアミノである。
【0085】
本明細書において用いる場合、「アミノアルキル」は、構造 (RX)2N-アルキル-をいう。
【0086】
本明細書において用いる場合、「シアノアルキル」は、構造 (NC)-アルキル-をいう。
【0087】
本明細書において用いる場合、「ウレア」基は、構造 -NRX-CO-NRYRZ をいい、「チオウレア」基は、末端に用いられる場合、構造 -NRX-CS-NRYRZ をいい、内部的に用いられる場合、-NRX-CO-NRY- または-NRX-CS-NRY-をいい、ここで、RX、RY、および RZ は、上記に規定されている。
【0088】
本明細書において用いる場合、「グアニジン」基は、構造 -N=C(N(RXRY))N(RXRY) または -NRX-C(=NRX)NRXRY をいい、ここで、RXおよびRY は、上記に規定されている。
【0089】
本明細書において用いる場合、「アミジノ」基という用語は、構造 -C=(NRX)N(RXRY) をいい、ここで、RXおよびRY は、上記に規定されている。
【0090】
一般に、「近接(vicinal)」という用語は、二以上の炭素原子を含む基の上の置換基の配置であって、置換基が隣接する炭素原子に結合しているものをいう。
【0091】
一般に、「ジェミナル(geminal)」という用語は、二以上の炭素原子を含む基の上の置換基の配置であって、置換基が同じ炭素原子に結合しているものをいう。
【0092】
用語「末端に」および「内部的に」は、置換基内での基の位置をいう。基が、残りの化学構造にさらに結合してない、置換基の末端に存在している場合、基は末端にある。カルボキシアルキル、即ち、RXO(O)C-アルキルは、末端に用いられているカルボキシ基の例である。基が、化学構造の置換基の中央に存在する場合、基は、内部にある。アルキルカルボキシ (例えば、アルキル-C(O)O- またはアルキル-OC(O)-) およびアルキルカルボキシアリール (例えば、アルキル-C(O)O-アリール- またはアルキル-O(CO)-アリール-)は、内部的に用いられているカルボキシ基の例である。
【0093】
本明細書において用いる場合、「脂肪族鎖」は、分枝状または直鎖状脂肪族基 (例えば、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基) をいう。直鎖状脂肪族鎖は、構造 -[CH2]v-を有し、ここで、vは、1-12である。分枝状脂肪族鎖は、一以上の脂肪族基により置換されている直鎖状脂肪族鎖である。分枝状脂肪族鎖は、構造-[CQQ]v-を有し、ここで、それぞれのQは、独立して水素または脂肪族基であるが; Qはすくなくとも1つの場合において脂肪族基でなければならない。用語、脂肪族鎖は、アルキル鎖、アルケニル鎖、およびアルキニル鎖を含み、ここで、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、上記に規定されている。
【0094】
「置換されていてもよい」という表現は、「置換または非置換」という表現と互換的に用いられる。本明細書に記載するように、本発明の化合物は、例えば、上記に一般的に示されているように、あるいは本発明の特定のクラス、サブクラス、およびスピーシーズにより例示されているように、所望により一以上の置換基により置換されていてよい。本明細書に記載するように、可変部(variable) R1、R2、および R3、および本明細書に記載される式に含まれるその他の可変部は、特定の基、例えば、アルキルを包含する。特に断りのない限り、可変部R1、R2、および R3、およびその他のそのなかに含まれる可変部についての特定の基のそれぞれは、本明細書に記載される一以上の置換基により置換されていてもよい。特定の基のそれぞれの置換基はさらに、ハロ、シアノ、オキソ、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アリール、シクロ脂肪族、ヘテロシクロ脂肪族、ヘテロアリール、ハロアルキル、およびアルキルの1から3により置換されていてもよい。例えば、アルキル基は、アルキルスルファニルにより置換されていてもよく、アルキルスルファニルは、ハロ、シアノ、オキソ、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アリール、ハロアルキル、およびアルキルの1から3により置換されていてもよい。さらなる例として、(シクロアルキル)カルボニルアミノのシクロアルキル部分は、ハロ、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、ハロアルキル、およびアルキルの1から3により置換されていてもよい。2つのアルコキシ基が同じ原子または隣接する原子に結合している場合、それら2つのアルコキシ基はそれらが結合している原子と一緒になって環を形成していてもよい。
【0095】
一般に、「置換」という用語は、「所望により」、「されていてもよい」という用語とともに用いられるか否かにかかわらず、特定の置換基のラジカルによる、所与の構造における水素ラジカルの交換をいう。特定の置換基は、定義において先に、および化合物の記載およびその実施例において以下に記載されいてる。特に断りのない限り、置換されていてもよい基は、基のそれぞれの置換可能な位置にて置換基を有し得、あらゆる所与の構造における二以上の位置が、特定の群から選択される二以上の置換基により置換されていてもよい場合、置換基はそれぞれの位置において、同一であっても異なっていてもよい。環置換基、例えば、ヘテロシクロアルキルは、別の環、例えば、シクロアルキルに結合して、スピロ-二環式環系を形成していてもよく、例えば、両方の環は1つの共通の原子を共有する。当業者であれば認識するように、本発明により想定される置換基の組合せは、安定なまたは化学的に可能な化合物の形成をもたらす組合せである。
【0096】
「安定なまたは化学的に可能な」という表現は、本明細書において用いる場合、それらの生産、検出、および好ましくはそれらの回収、精製、および本明細書に開示される目的の一以上のための使用を可能とするような状態に供された場合、実質的に変化されない化合物をいう。いくつかの態様において、安定な化合物または化学的に可能な化合物は、40℃またはそれより低い温度にて、水分の非存在下でまたはその他の化学的に反応性の条件下で少なくとも1週間維持された場合に、実質的に変化されないものである。
【0097】
本明細書において用いる場合、「有効量」は、処置された患者に対して治療効果を与えるために必要とされる量として規定され、典型的には患者の年齢、表面積、重量、および状態に基づいて決定される。動物およびヒトのための用量(ミリグラム/平方メートル体表面積に基づく)の相互関係は、Freireich et al., Cancer Chemother. Rep., 50: 219 (1966) により記載されている。体表面積はおよそ患者の身長および体量から決定され得る。例えば、Scientific Tables、Geigy Pharmaceuticals、Ardsley、New York、537 (1970) を参照されたい。本明細書において用いる場合、「患者」は、哺乳類、例えば、ヒトをいう。
【0098】
特に断りのない限り、本明細書において示される構造はまた、構造のすべての異性体 (例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何的 (または立体配座))形態; 例えば、それぞれの不斉中心についてRおよびS 配置、(Z)および(E)二重結合異性体、および(Z) および(E) 立体配座異性体を含むことが意図される。それゆえ、本発明の化合物の単一の立体化学的異性体ならびにエナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何的 (または立体配座) 混合物は本発明の範囲内である。特に断りのない限り、本発明の化合物のすべての互変異性形態は本発明の範囲内である。さらに、特に断りのない限り、本明細書において示される構造はまた、一以上の同位体的富化された(enriched) 原子の存在においてのみ異なる化合物を含む意図である。例えば、水素の重水素またはトリチウムによる交換、または炭素の 13C-または 14C-富化された(enriched) 炭素による交換を除いては本発明の構造を有する化合物は本発明の範囲内である。かかる化合物は、例えば、生物検定における分析ツールまたはプローブとして、または治療薬として有用である。
【0099】
本発明の化合物は、ABC トランスポーターの有用な修飾因子であり、ABC トランスポーターに媒介される疾患の治療において有用である。
【0100】
別の態様において、本発明は式 Iの化合物に注目するものであり、ここで、2つのRは一緒になって、-OCF2O-を形成し、R1 はHであり、およびR2 はFである。別の態様において、2つのRは一緒になって、-OCF2O-を形成し、R1 はHであり、R2 はFであり、およびR3 はCH3である。別の態様において、2つのRは一緒になって、-OCF2O-を形成し、R1 はHであり、R2はFであり、R3はCH3であり、および XはCO2Hである。別の態様において、2つのRは一緒になって、-OCF2O-を形成し、R1はHであり、R2 はFであり、R3 はCH3であり、X はCO2Hであり、およびYはOHである。
【0101】
別の態様において、本発明は式 IIの化合物に注目するものであり、ここで、2つのRは一緒になって、-OCF2O-を形成し、R1 はHであり、および R2はFである。別の態様において、2つのRは一緒になって、-OCF2O-を形成し、R1 はHであり、R2は Fであり、およびR3は CH3である。
【0102】
別の態様において、本発明は、式 Iaを有する化合物:
【化3】
Ia
またはその医薬上許容される塩に注目するものであり、ここで:
R2は、Hまたはハロである。
【0103】
別の態様において、R2はFである。
【0104】
別の態様において、本発明は、式 IIaを有する化合物:
【化4】
IIa
またはその医薬上許容される塩に注目するものであり、ここで:
R2は、Hまたはハロである。
【0105】
別の態様において、R2 はFである。
【0106】
別の態様において、本発明は、下記化合物:
【化5】
または
【化6】
に注目するものである。
【0107】
別の態様において、本発明は、下記化合物:
【化7】
または
【化8】
に注目するものである。
【0108】
別の側面において、本発明は、(i) 請求項1から12のいずれかの化合物;および(ii) 医薬上許容される担体を含む医薬組成物に注目するものである。別の態様において、組成物はさらに、粘液溶解薬、気管支拡張剤(bronchodialator)、抗生物質、抗感染薬、抗炎症剤、CFTR 修正剤(corrector)、CFTR 増強剤、または栄養剤(nutritional agent) から選択されるさらなる剤を含む。
【0109】
別の側面において、本発明は、細胞の膜における機能的 ABC トランスポーターの数を上昇させる方法に注目するものであり、該方法は、細胞を本発明の化合物と接触させる工程を含む。別の態様において、ABC トランスポーターはCFTRである。
【0110】
別の側面において、本発明は、対象における、ABC トランスポーター活性に関係づけられる (implicated by)、状態、疾患、または障害を治療する方法に注目するものであり、該方法は、対象に本発明の化合物または組成物を投与する工程を含む。
【0111】
別の態様において、状態、疾患、または障害は、嚢胞性線維症、気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固-線維素溶解欠損症、プロテインC欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、脂質加工欠損症、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無ベータリポ蛋白血症、リソソーム蓄積症、I細胞病/偽性ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ病/テイ・サックス、クリグラー・ナジャーII型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、メラノーマ、グリカン糖鎖異常 CDG 1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT 欠乏症、尿崩症 (di)、神経身体的 di、腎性 DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッヘル病、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病、ポリグルタミン神経障害、ハンチントン、脊髄小脳失調症 I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体、筋緊張性ジストロフィー、海綿状脳症、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病、ファブリー病、ストロイスラー・シャインカー症候群、COPD、眼球乾燥疾患、またはシェーグレン疾患から選択される。別の態様において、状態、疾患、または障害は、嚢胞性線維症、気腫、COPD、または眼球乾燥疾患から選択される。
【0112】
別の側面において 本発明は、インビトロまたはインビボでの、生物学的サンプルにおけるABC トランスポーターまたはその断片の活性の測定における使用のためのキットに注目するものであり、該キットは: (i) 本発明の化合物;および(ii) a)化合物を生物学的サンプルと接触させること; および b)該 ABC トランスポーターまたはその断片の活性を測定すること、についての指示書を含む。
【0113】
別の態様において、キットはさらに、a)さらなる化合物を生物学的サンプルと接触させること; b)該さらなる化合物の存在下で該 ABC トランスポーターまたはその断片の活性を測定すること、および、 c)さらなる化合物の存在下でのABC トランスポーターの活性と、第一の化合物の存在下でのABC トランスポーターの密度(density) を比較すること、についての指示書を含む。
【0114】
別の側面において、本発明は、式 Iaの化合物:
【化9】
Ia
を調製する方法を含み、ここで、可変部は上記の通りであり、該方法は、式I-2の化合物の塩基による処理を含む。
【化10】
【0115】
この側面の一つの態様において、R2は、HまたはFである。
【0116】
別の態様において、処理は、式 I-2の化合物を溶媒の存在下で塩基と接触させることを含む。一つの態様において、塩基は、アルカリまたはアルカリ金属水酸化物または炭酸塩である。一つの態様において、塩基は、Na2CO3、NaHCO3、NaOHおよびLiOHから選択される。典型的には、化学量論的過剰の塩基が使用される。典型的には 約 2から約 10 当量の塩基が式 1-2の化合物のモルに対して使用される。より典型的には、約 4から約 6 モル当量の塩基が使用される。
【0117】
一つの態様において、溶媒は、単独で用いられるかまたは別の液体と混合されている、極性溶媒、例えば、アルコールまたはエーテルである。一つの態様において、溶媒は、メタノールである。別の態様において、溶媒は、アセトニトリルと混合されたメタノールである。別の態様において、溶媒は、イソプロパノールと混合されたメタノールである。典型的には 約 4 から約 8 体積の溶媒が使用される。より典型的には、約 5 から約 7 体積の溶媒が使用される。
【0118】
式 I-2の化合物からIaの変換は、典型的には、出発物質の生成物への変換を可能にするために十分な温度で十分な時間行われる。典型的には、温度はおよそ室温である。
【0119】
別の態様において、式 I-2の化合物から式 Iaの化合物を調製する方法は、溶媒の存在下で式 I-2の化合物を水酸化物または炭酸塩であるアルカリまたはアルカリ土類金属塩基と接触させることを含む。一つの態様において、アルカリまたはアルカリ土類金属塩基は、Na2CO3 であり、溶媒は、メタノールである。
【0120】
別の側面において、本発明は、式 I-3の化合物から式 I-2の化合物を調製する方法を含み:
【化11】
該方法は、式 I-3の化合物を酸化剤と溶媒の存在下で接触させて式 I-2の化合物を提供することを含み; ここで、可変部は上記の通りである。
【0121】
この側面の一つの態様において、R2は、HまたはFである。
【0122】
一つの態様において、酸化剤は、KMnO4およびNaMnO4からなる群から選択される。一つの態様において、酸化剤はNaMnO4である。典型的には、式 I-3の化合物のモルに対してモル過剰の酸化剤が使用される。 典型的には、1.01 から1.2 モル当量の酸化剤が使用される。より典型的には、1.05 当量の酸化剤が使用される。
【0123】
一つの態様において、溶媒は、単独で用いられるかまたは別の液体と混合されている、極性非プロトン性溶媒である。一つの態様において、溶媒は、アセトンである。典型的には、約 5 から約 15 体積の溶媒が使用される。より典型的には、約 7 から約 13 体積の溶媒が使用され、より典型的には、約 9 から約 11 体積の溶媒が使用される。
【0124】
式 I-3の化合物のI-2への変換は、典型的には、出発物質の生成物への変換を可能にするために十分な温度で十分な時間行われる。典型的には、温度は、室温より低い。例えば、温度は、およそ-10 から約 10℃である。より典型的には、温度は、およそ-5 から約 5℃である。
【0125】
別の態様において、式 I-3の化合物から式 I-2の化合物を調製する方法は、式 I-3の化合物を酸化剤と溶媒の存在下で接触させることを含む。一つの態様において、酸化剤はNaMnO4であり、溶媒は、アセトンである。
【0126】
別の側面において、本発明は、式 I-4の化合物から式 I-3の化合物を調製する方法を含み:
【化12】
該方法は、式 I-4の化合物を酸化剤と溶媒の存在下で接触させて、式 I-3の化合物を提供することを含み; ここで、可変部は上記の通りである。
【0127】
この側面の一つの態様において、R2は、HまたはFである。
【0128】
一つの態様において、酸化剤は、三酸化硫黄ピリジン錯体、重クロム酸ピリジニウム (PDC)、所望により2-メチル-2-ブテンの塩素スカベンジャーとしての存在下でのN-クロロスクシンイミド (NCS)/ ベンゼンスルフェンアミド (PhSNHtBu)、RuCl3/NaIO4、テトラメチルピペリジン N-オキシド (TEMPO)/ビスアセトキシヨードベンゼン (BIAB)/NaHCO3、および2-ヨードキシ安息香酸 (IBX) からなる群から選択される。一つの態様において、酸化剤は、三級アミン塩基および塩素スカベンジャーとしての2-メチル-2-ブテンの存在下でのN-クロロスクシンイミド (NCS)/ ベンゼンスルフェンアミド (PhSNHtBu)である。このプロセスにおいて使用することができる三級アミン塩基は当業者に周知であり、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、DBN、およびコリジンが挙げられる。一つの態様において、三級アミン塩基は、コリジンである。典型的には、式 I-4の化合物のモル数に対して触媒量のPhSNHtBuが使用され、NCS、三級アミン塩基、および2-メチル-2-ブテンがモル過剰にて使用される。例えば、式 I-4の化合物のモル数に対して0.1から0.3 モル当量のPhSNHtBu が使用され、1.1から1.5当量のNCS、1-3当量の三級アミン塩基、および1-3 モル当量の2-メチル-2-ブテンが使用される。より典型的には、例えば、式 I-4の化合物のモル数に対して、0.15 から0.25 モル当量の PhSNHtBu が使用され、1.1から1.3 当量のNCS、1.5-2.5 当量の三級アミン塩基、および1.5-2.5 モル当量の2-メチル-2-ブテンが使用される。
【0129】
一つの態様において、溶媒は、単独で用いられるかまたは別の液体と混合されている、極性非プロトン性溶媒である。一つの態様において、溶媒は、ジクロロメタンである。典型的には、約 5 から約 10 体積の溶媒が使用される。より典型的には、約 6 から約 8 体積の溶媒が使用される。
【0130】
式 I-4の化合物のI-3への変換は、典型的には、出発物質の生成物への変換を可能にするために十分な温度で十分な時間行われる。典型的には、温度は、室温より低い。例えば、温度は、およそ-10 から約 10℃である。より典型的には、温度は、およそ-5 から約 5℃である。
【0131】
別の態様において、式 I-4の化合物から式 I-3の化合物を調製する方法は、式 I-3の化合物を三級アミン塩基および塩素スカベンジャーとしての2-メチル-2-ブテンの存在下でのN-クロロスクシンイミド (NCS)/ ベンゼンスルフェンアミド (PhSNHtBu)と溶媒の存在下で接触させることを含む。一つの態様において、三級アミン塩基および溶媒は、ジクロロメタンである。
【0132】
別の側面において、本発明は、式 I-5の化合物から式 I-4の化合物を調製する方法を含み:
【化13】
該方法は、式 I-4の化合物をカルボニルジイミダゾール (CDI)と溶媒の存在下で接触させて、式 I-4の化合物を提供することを含み; ここで、 可変部は上記の通りである。
【0133】
この側面の一つの態様において、R2は、HまたはFである。
【0134】
一つの態様において、式 I-5の化合物のモルに対してモル過剰の CDI が使用される。典型的には、1.1から 3 モル当量の CDI が使用される。より典型的には、1.5から 2.5 モル当量の CDI が使用される。
【0135】
一つの態様において、溶媒は、単独で用いられるかまたは別の液体と混合されている、極性溶媒である。一つの態様において、溶媒は、エーテルまたはジクロロメタンである。一つの態様において、溶媒は、ジクロロメタンである。典型的には、約 12 から約 16 体積の溶媒が使用される。より典型的には、約 13 から約 15 体積の溶媒が使用される。
【0136】
式 I-5の化合物のI-4への変換は、典型的には、出発物質の生成物への変換を可能にするために十分な温度で十分な時間行われる。典型的には、温度は、室温より低い。例えば、温度は、およそ-20 から約 10℃である。より典型的には、温度は、およそ-15 から約 5℃である。
【0137】
別の態様において、式 I-5の化合物から式 I-4の化合物を調製する方法は、式 I-5の化合物をCDIと溶媒の存在下で接触させることを含む。一つの態様において、溶媒は、ジクロロメタンである。
【0138】
別の側面において、本発明は、式 Iaの化合物を調製する方法を提供し:
【化14】
Ia
該方法は、式 I-1のエステルを式 Iaの化合物へと変換することを含み:
【化15】
ここで、それぞれの出現について独立して:
R2は、Hまたはハロであり; および、
R4は、C1-C6 アルキルまたはベンジルである。
【0139】
この側面の一つの態様において、R2は、HまたはFであり、R4は、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、またはベンジルである。
【0140】
別の態様において、R2は、HまたはFであり、R4は、イソプロピルまたはベンジルである。
【0141】
別の態様において、変換することは、式 I-1の化合物を溶媒の存在下で塩基と接触させることを含む。一つの態様において、塩基は、アルカリまたはアルカリ金属水酸化物である。一つの態様において、塩基は、NaOHまたはLiOHである。
【0142】
一つの態様において、溶媒は、単独で用いられるかまたは別の液体と混合されている、極性溶媒、例えば、アルコールまたはエーテルである。一つの態様において、溶媒は、メタノールである。別の態様において、溶媒は、水と混合されたメタノールである。別の態様において、溶媒は、テトラヒドロフランである。別の態様において、溶媒は、水と混合されたテトラヒドロフランである。
【0143】
式 I-1の化合物のIaへの変換は、典型的には、ある温度で出発物質の生成物への変換を可能にするために十分な時間行われる。典型的には、温度は、室温より高い。より典型的には、温度は、およそ50℃である。典型的には、反応時間は、約1 時間から約 24 時間である。
【0144】
別の態様において、式 I-1の化合物から式 Iaの化合物を調製する方法は、式 I-1の化合物をアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物と溶媒の存在下で接触させることを含む。一つの態様において、アルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物は、LiOHまたはNaOHであり、溶媒は、単独のまたは水と混合された、メタノールであるかまたは、単独のまたは水と混合された、THFである。
【0145】
別の側面において、本発明は、式 IIaの化合物またはその医薬上許容される塩を調製する方法を含み:
【化16】
IIa
ここで、 R2は、Hまたはハロであり; 該方法は以下を含む:
式 I-3の化合物を式 IIaの化合物へと変換すること。
【化17】
【0146】
この側面の一つの態様において、R2は、HまたはFである。
【0147】
一つの態様において、処理は、式 I-3の化合物を溶媒の存在下で塩基と接触させることを含む。一つの態様において、塩基は、アルカリまたはアルカリ金属水酸化物または炭酸塩である。一つの態様において、塩基は、NaOH、KOH、およびLiOHから選択される。一つの態様において、塩基は、NaOHである。典型的には、化学量論的過剰の塩基が使用される。典型的には、式 1-3の化合物のモルに対して約 2から約 10 当量の塩基が使用される。より典型的には、約 4 から約 6 モル当量の塩基が使用される。典型的には、塩基は水中の溶液として使用される。
【0148】
一つの態様において、溶媒は、単独で用いられるかまたは別の液体と混合されている、極性溶媒、例えば、アルコールまたはエーテルである。一つの態様において、溶媒は、メタノールである。別の態様において、溶媒は、アセトニトリルと混合されたメタノールである。別の態様において、溶媒は、イソプロパノールと混合されたメタノールである。典型的には、約 4 から約 8 体積の溶媒が使用される。より典型的には、約 5 から約 7 体積の溶媒が使用される。
【0149】
式 I-2の化合物のIaへの変換は、典型的には、ある温度で出発物質の生成物への変換を可能にするために十分な時間行われる。典型的には、温度はおよそ室温である。
【0150】
別の態様において、式 I-2の化合物から式 Iaの化合物を調製する方法は、式 I-2の化合物を水酸化物または炭酸塩であるアルカリまたはアルカリ土類金属塩基と溶媒の存在下で接触させることを含む。一つの態様において、アルカリまたはアルカリ土類金属塩基は、Na2CO3であり、溶媒は、メタノールである。
【0151】
別の側面において、本発明は、式 Iaの化合物を調製する方法を含み:
【化18】
Ia
ここで、 可変部は上記の通りであり、該方法は、以下を含む:
(a)式 I-3の化合物を酸化剤と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 I-2の化合物を得ること;
【化19】
および、
(b)式 I-2の化合物を塩基と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 Iaの化合物を得ること。
【化20】
【0152】
この側面の一つの態様において、R2は、HまたはFである。
【0153】
別の側面において、本発明は、式 Iaの化合物を調製する方法を含み:
【化21】
Ia
ここで、可変部は上記の通りであり、該方法は以下を含む:
(a)式 I-4の化合物を酸化剤と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 I-3の化合物を得ること;
【化22】
(b)式 I-3の化合物を酸化剤と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 I-2の化合物を得ること;
【化23】
および、
(c)式 I-2の化合物を塩基と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 Iaの化合物を得ること。
【化24】
【0154】
この側面の一つの態様において、R2は、HまたはFである。
【0155】
別の側面において、本発明は、式 Iaの化合物を調製する方法を含み:
【化25】
Ia
ここで、 可変部は上記の通りであり、該方法は以下を含む:
(a)式 I-5の化合物をカルボニルジイミダゾール (CDI)と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 I-4の化合物を得ること;
【化26】
(b)式 I-4の化合物を酸化剤と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 I-3の化合物を得ること;
【化27】
(c)式 I-3の化合物を酸化剤と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 I-2の化合物を得ること;
【化28】
および、
(d)式 I-2の化合物を塩基と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 Iaの化合物を得ること。
【化29】
【0156】
この側面の一つの態様において、R2は、HまたはFである。
【0157】
別の側面において、本発明は、式 IIaの化合物を調製する方法を含み:
【化30】
IIa
ここで、 可変部は上記の通りであり、該方法は以下を含む:
(a)式 I-4の化合物を酸化剤と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 I-3の化合物を得ること;
【化31】
および、
(b)式 I-3の化合物を塩基と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 IIaの化合物を得ること。
【化32】
【0158】
この側面の一つの態様において、R2は、HまたはFである。
【0159】
別の側面において、本発明は、式 IIaの化合物を調製する方法を含み:
【化33】
IIa
ここで、 可変部は上記の通りであり、該方法は以下を含む:
(a)式 I-5の化合物をカルボニルジイミダゾール (CDI)と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 I-4の化合物を得ること;
【化34】
(b)式 I-4の化合物を酸化剤と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 I-3の化合物を得ること;
【化35】
および、
(c)式 I-3の化合物を塩基と上記の通りの溶媒の存在下で接触させて式 IIaの化合物を得ること;
【化36】
【0160】
この側面の一つの態様において、R2は、HまたはFである。
【0161】
別の側面において、本発明は、以下である化合物:
【化37】
を含み、
ここで、 R2およびR4 は、上記の通りである。
【0162】
別の側面において、本発明は、以下である化合物:
【化38】
を含み、
ここで、 R2 およびR4 は、上記の通りである。
【0163】
別の側面において、本発明は、以下である化合物:
【化39】
を含み、
ここで、 R4 は、iPr またはベンジルである。
【0164】
別の側面において、本発明は、以下である化合物:
【化40】
を含み、
ここで、 R4 は、iPr またはベンジルである。
【0165】
式 Iおよび式 IIの化合物の合成の概要
式 Iの化合物は、以下のスキーム1から 5にしたがって、酸塩化物部分とアミン部分とをカップリングさせること、次いで閉環させることによって調製することができる。
スキーム 1:酸塩化物部分の合成
【化41】
R = H、OH、OCH3であるか、あるいは2つのRは一緒になって、-OCH2O-または-OCF2O-を形成し; R1 = Hまたは2までの R1 = C1-C6 アルキルである。
【0166】
スキーム 1 は、RおよびR1 置換 ベンゾ-シクロプロパンカルボニルクロライドの調製を示し、これはスキーム 3において使用され、式 Iの化合物のアミド結合が作られる。
スキーム 2:酸塩化物部分の代替的合成
【化42】
R = H、OH、OCH3であるか、あるいは2つのRは一緒になって、-OCH2O-または-OCF2O-を形成し; R1 = Hまたは2までの R1 = C1-C6 アルキルである。
【0167】
スキーム 2は、必要な酸塩化物の代替的合成を提供する。R-置換 5-ブロモベンゼンがシアノ酢酸エチルとパラジウム触媒の存在下で結合され(coupled with) 、対応するアルファシアノエチルエステルが形成される。エステル部分のカルボン酸へのけん化によりシアノエチル化合物が得られる。シアノエチル化合物のR1 置換 1-ブロモ-2-クロロエタンによる塩基の存在下でのアルキル化によりシアノシクロプロピル化合物が得られる。シアノシクロプロピル化合物の塩基による処理によりカルボン酸塩が得られ、これは酸による処理によりカルボン酸に変換される。カルボン酸の酸塩化物への変換は次いで塩素化剤、例えば、塩化チオニル等を用いて達成される。
スキーム 3:アミン部分の合成
【化43】
R2 = Hまたはハロであり; R3 = HまたはC1-C6 アルキルである。
【0168】
スキーム 3は、式 Iの化合物のアミン部分の薗頭(Sonagashira)/閉環プロトコールを介する合成の概要を提供する。示されるシリル保護プロパルギルアルコールから、プロパルギルクロリドへの変換、次いでグリニャール試薬の形成、および引き続く求核置換により、 ((R3-置換-ブタ-3-イニルオキシ)メチル)ベンゼンが提供され、これは合成の別の工程において使用される。アミン部分を完成するために、4-ニトロ-3-R2-アニリンがまずブロム化され、次いで(R)-1-(4-アミノ-2-ブロモ-5-R2-置換-フェニルアミノ)-3-(ベンジルオキシ)プロパン-2-オールのトルエンスルホン酸塩に、アニリンアミノ基の(R)-2-(ベンジルオキシメチル)オキシランによるアルキル化に始まり、次いでニトロ基の対応するアミンへの還元が行われる二工程プロセスにて変換される。生成物と((R3-置換-ブタ-3-イニルオキシ)メチル)ベンゼン (上記)とのパラジウム触媒によるカップリングにより、中間体アルキニル(akynyl) 化合物が提供され、これは次いで閉環されてインドール部分となり、ベンジル保護アミン部分が生成する。
スキーム 4:酸塩化物とアミン部分とのカップリング
【化44】
R = H、OH、OCH3であるか、あるいは2つのRは一緒になって、-OCH2O-または-OCF2O-を形成し; R1 = Hまたは2までの R1 = C1-C6 アルキルであり; R2 = Hまたはハロであり; R3 = H またはC1-C6 アルキルである。
【0169】
スキーム 4は、酸とアミン部分とのカップリングを示す。第一工程において、(R)-1-(5-アミノ-2-(1-(ベンジルオキシ)-2-メチルプロパン-2-イル)-6-R2-1H-インドール-1-イル)-3-(ベンジルオキシ)プロパン-2-オールが1-(R-置換-5-イル)シクロプロパンカルボニルクロライドと結合され、式 Iの化合物へのベンジル保護前駆体が提供される。この工程は塩基および溶媒の存在下で行われ得る。塩基は、有機塩基、例えば、トリエチルアミンであり得、溶媒は、有機溶媒、例えば、 DCMまたはDCMおよびトルエンの混合物でありうる。
【0170】
最終工程において、ベンジル化中間体が脱保護されて式 Iの化合物への前駆体が生成する。脱保護工程は、ベンジル基を除去するために十分な還元条件を用いて達成され得る。還元条件は、水素化条件、例えば、パラジウム触媒の存在下での水素ガスであり得、アルコールが提供される。この物質は、直接的に式 Iの化合物へと微生物酸化を介して変換され得る。
スキーム 5:閉環による式IIの化合物の生成
【化45】
R = H、OH、OCH3であるか、あるいは2つのRは一緒になって、-OCH2O-または-OCF2O-を形成し; R1 = Hまたは2までの R1 = C1-C6 アルキルであり; R2 = Hまたはハロであり; R3 = H またはC1-C6 アルキルである。
【0171】
スキーム 5は、式 IIの化合物の調製を提供する。スキーム 4に示された生成物はジクロロメタン中の重クロム酸ピリジニウムにより酸化されて、式 IIの化合物が提供される。
スキーム 6:酸化および加水分解による式 Iの化合物の生成
【化46】
R = H、OH、OCH3であるか、あるいは2つのRは一緒になって、-OCH2O-または-OCF2O-を形成し; R1 = Hまたは2までの R1 = C1-C6 アルキルであり; R2 = Hまたはハロであり; R3 = H またはC1-C6 アルキルであり; X = CO2Jであり、ここで、J = HまたはC1-C6 アルキルである。
【0172】
スキーム 6は式 IIの化合物から式 Iの化合物の調製を提供する。スキーム 5に示される式 IIの化合物のセライトの存在下での炭酸銀による酸化によりはじめに環状ラクトン生成物が得られ、これは2N 水酸化ナトリウムの存在下で加水分解されて式 Iの化合物が提供される。
スキーム 7: 式 Iの化合物を調製する代替的方法
【化47】
【0173】
スキーム 7は、式 Iの化合物を調製する代替的方法を提供する。スキーム 5の生成物はジクロロメタン中のカルボニルジイミダゾールにより処理され、次いで、酸後処理 (workup)により炭酸エステルが提供される。引き続く工程は、一級アルコールのアルデヒドへの酸化および引き続いてカルボン酸への酸化、次いで脱保護を含み、式 Iの化合物が得られる。アルコールをアルデヒドへと変換する酸化条件には、一級アルコール部分の三酸化硫黄ピリジン錯体を用いるパリック・デーリング酸化が含まれ、対応するアルデヒドが得られる。一級アルコールをアルデヒドへと変換する代替的酸化剤としては、重クロム酸ピリジニウム (PDC)、所望により2-メチル-2-ブテンの塩素スカベンジャーとしての存在下でのN-クロロスクシンイミド (NCS)/ベンゼンスルフェンアミド (PhSNHtBu)、RuCl3/NaIO4、テトラメチルピペリジン N-オキシド (TEMPO)/ビスアセトキシヨードベンゼン (BIAB)/NaHCO3、または2-ヨードキシ安息香酸 (IBX)が挙げられる。アルデヒドをカルボン酸(carboxylic)へと変換する酸化条件には、過マンガン酸ナトリウムまたはカリウムが含まれる。メタノール中の炭酸ナトリウム-媒介脱保護により式 Iの化合物が提供される。
スキーム 8:カルボン酸へのワンポット酸化
【化48】
【0174】
あるいは、カルボン酸のワンポット合成は、スキーム 8に示すようにテトラプロピルアンモニウムペルルテナート (TPAP) /N-メチルモルホリン N-オキシド (NMO) 一水和物を用いて達成され得る。この変換のために使用され得るその他の酸化剤には、オキソン/TPAP/NMO/TBAB、およびKMnO4が含まれる。
スキーム 9:加水分解による式 Iの化合物の形成
【化49】
【0175】
保護カルボン酸は、塩基を用いて脱保護されることにより、スキーム 9に示される式 Iaの化合物が形成され得る。この変換のために使用されうる塩基には、NaOH、Na2CO3、NaHCO3、または Na2CO3/NaHCO3が含まれる。
スキーム 10:式 Iの化合物の代替的合成
【化50】
【0176】
スキーム 10は、スキーム 3および4に記載されているものと類似の薗頭/閉環プロトコールを介する式 Iの化合物を製造するための代替的プロセスを提供する。示されるシリル保護プロパルギルアルコールから、プロパルギルクロリドへの変換、次いでグリニャール試薬の形成および引き続く求核置換により、((R3-置換-イソプロピルエステルが提供され、これは合成の別の工程において使用される。アミン部分を完成するために、4-ニトロ-3-R2-アニリンがまずブロム化され、次いで(R)-1-(4-アミノ-2-ブロモ-5-R2-置換-フェニルアミノ)-3-(ベンジルオキシ)プロパン-2-オールのトルエンスルホン酸塩に、アニリンアミノ基の(R)-2-(ベンジルオキシメチル)オキシランによるアルキル化に始まり、次いでニトロ基の対応するアミンへの還元が行われる二工程プロセスにて変換される。生成物とR3-置換-イソプロピルエステル (上記)とのパラジウム触媒によるカップリングにより、中間体アルキニル(akynyl) 化合物が提供され、これは次いで閉環されてインドール部分となり、ベンジル保護アミン部分が生成する。同じプロセスがシリル-プロパルギルアルコールから使用され得、ベンジルエステルが得られる。スキーム 4にしたがう引き続く1-(R-置換-5-イル)シクロプロパンカルボニルクロライドとのカップリングにより、式 Iの化合物のイソプロピルエステルが提供される。
スキーム 11:イソプロピルエステルの加水分解
【化51】
【0177】
スキーム 11 のイソプロピルエステルの加水分解により、式 Iaの化合物が提供される。この変換のために使用されうる塩基には、アルカリおよびアルカリ金属水酸化物が含まれ; NaOH、またはLiOHが、例えば使用され得る。
スキーム 12: R2 がFである式 IaおよびIIaの化合物の合成
【化52】
【0178】
スキーム 12は、R2がFである式 IaまたはIIaの化合物の合成を示す。第一工程において、ジオールがカルボニルジイミダゾールにより処理され、ジオール部分が炭酸エステルとして保護され、次いで、所望により2-メチル-2-ブテンの塩素スカベンジャーとしての存在下で使用される、酸化剤である、N-クロロスクシンイミド (NCS)/ベンゼンスルフェンアミド (PhSNHtBu)により、中間体アルデヒドが提供される。中間体アルデヒドは、過マンガン酸塩による処理、次いで塩基、例えば、Na2CO3の存在下での脱保護により、式 Iaの化合物に変換され、所望のカルボン酸がナトリウム塩として得られ、ここで、 R2はFである。あるいは、中間体アルデヒドは、塩基、例えば、 Na2CO3による処理を介して式 IIaの化合物に変換され、ここで、R2はFである。
【0179】
製剤、投与、および使用
したがって、本発明の別の側面において、医薬上許容される組成物が提供され、ここで、これらの組成物は、本明細書に記載するいずれかの化合物を含み、および所望により、医薬上許容される担体、補助剤または媒体を含む。特定の態様において、これらの組成物は、所望によりさらに一以上のさらなる治療薬を含む。
【0180】
本発明の化合物のいくつかは、治療のために遊離型にて、あるいは適切な場合、その医薬上許容される誘導体またはプロドラッグとして存在しうることがまた認識されるであろう。本発明にしたがって、医薬上許容される誘導体またはプロドラッグとしては、これらに限定されないが、医薬上許容される塩、エステル、かかるエステルの塩、または必要とする患者に投与された場合、直接的または間接的に、それ以外は(as otherwise)本明細書に記載される化合物、またはその代謝産物または残基を提供する能力がある、いずれかのその他の付加体または誘導体が挙げられる。
【0181】
本明細書において用いる場合、「医薬上許容される塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび下等動物の組織と接触しての使用に好適であり、過度の毒性、刺激、アレルギー応答等を起こさず、合理的なリスク・ベネフィット比に釣り合った、塩をいう。「医薬上許容される塩」は、レシピエントに投与された場合、直接的または間接的に、本発明の化合物または阻害的に活性のその代謝産物または残基を提供する能力がある、本発明の化合物のあらゆる非-毒性の塩またはエステルの塩を意味する。
【0182】
医薬上許容される塩は当該技術分野において周知である。例えば、S. M. Berge、et al. は、医薬上許容される塩を詳細に、引用により本明細書に含める、J. Pharmaceutical Sciences、1977、66、1-19において記載している。本発明の化合物の医薬上許容される塩には、好適な無機および有機酸および塩基に由来するものが含まれる。医薬上許容される非-毒性の酸付加塩の例は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸または有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸と形成された、あるいは当該技術分野において使用されているその他の方法、例えば、イオン交換を用いることにより形成された、アミノ基の塩である。その他の医薬上許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が挙げられる。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびN+(C1-4アルキル)4 塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書に開示される化合物のあらゆる塩基性窒素-含有基の四級化も想定する。水または油-可溶性または分散性生成物は、かかる四級化により得られうる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。さらなる医薬上許容される塩としては、適切な場合、非-毒性の、対イオン、例えば、ハライド、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩を用いて形成された、アンモニウム、四級アンモニウム、およびアミンカチオンが挙げられる。
【0183】
上記のように、本発明の医薬上許容される組成物はさらに、医薬上許容される担体、補助剤、または媒体を含み、これには、本明細書において用いる場合、所望の特定の剤形に適している、あらゆるすべての溶媒、希釈剤、またはその他の液体媒体、分散または懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存料、固体結合剤、潤滑剤等が含まれる。Remington's Pharmaceutical Sciences、Sixteenth Edition、E. W. Martin (Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1980) は、医薬上許容される組成物を処方することにおいて使用される様々な担体およびその調製のための公知の技術を開示している。あらゆる通常の担体媒体(medium)が、例えば、なんらかの望ましくない生物学的効果を生成することによりあるいは(or otherwise)有害な様式で医薬上許容される組成物のいずれかのその他の成分と相互作用することにより、本発明の化合物と不適合性である場合を除き、その使用は本発明の範囲内であるとして考慮される。医薬上許容される担体として役立ち得る物質のいくつかの例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロック重合体、羊毛脂、糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース; デンプン、例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン; セルロースおよびその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロース; トラガント末; 麦芽; ゼラチン; タルク; 賦形剤、例えば、カカオバターおよび坐薬ワックス; 油、例えば、ピーナッツ油、綿実油;ベニバナ油; ゴマ油; オリーブ油; トウモロコシ油および大豆油; グリコール; 例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール; エステル、例えば、 オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル; 寒天; 緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム; アルギン酸; 発熱物質非含有(pyrogen-free)水; 等張生理食塩水; リンゲル液; エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびにその他の非-毒性の適合性潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色料、解除剤、コーティング剤、甘味料、香味料および芳香剤(perfuming agent)、保存料および抗酸化剤もまた、策定者の判断にしたがって、組成物中に存在させることができる。
【0184】
さらに別の側面において、本発明は、ABC トランスポーター活性に関係づけられる状態、疾患、または障害を治療する方法を提供する。特定の態様において、本発明は、ABC トランスポーター活性の欠乏症(deficiency) に関係づけられる状態、疾患、または障害を治療する方法を提供し、該方法は、式(IまたはIa)の化合物を含む組成物を、それを必要とする対象、好ましくは哺乳類に投与することを含む。
【0185】
特定の好ましい態様において、本発明は、嚢胞性線維症、気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固-線維素溶解欠損症、例えば、プロテインC欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、脂質加工欠損症、例えば、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無ベータリポ蛋白血症、リソソーム蓄積症、例えば、I細胞病/偽性ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ病/テイ・サックス、クリグラー・ナジャーII型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、メラノーマ、グリカン糖鎖異常 CDG 1型、気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT 欠乏症、尿崩症 (DI)、神経身体的 DI、腎性 DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッヘル病、神経変性疾患、例えば、 アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病、いくつかのポリグルタミン神経障害、例えば、ハンチントン、脊髄小脳失調症 I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体、および筋緊張性ジストロフィー、ならびに海綿状脳症、例えば、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病 (プリオン タンパク質プロセシング欠陥に起因する)、ファブリー病、ストロイスラー・シャインカー(Straussler-Scheinker)疾患、分泌性下痢、多発性嚢胞腎疾患、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、眼球乾燥疾患、およびシェーグレン症候群を治療する方法を提供し、該方法は、該哺乳類に有効量の式 (IまたはIa)の化合物または上記に示すようなその好ましい態様を含む組成物を投与する工程を含む。
【0186】
代替的な好ましい態様によると、本発明は、該哺乳類に組成物を投与する工程を含む嚢胞性線維症を治療する方法を提供し、該方法は、該哺乳類に有効量の、式 (IまたはIa)の化合物、または上記に示すようなその好ましい態様を含む組成物を投与する工程を含む。
【0187】
本発明によると、化合物または医薬上許容される組成物の「有効量」は、嚢胞性線維症、気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固-線維素溶解欠損症、例えば、プロテインC欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、脂質加工欠損症、例えば、 家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無ベータリポ蛋白血症、リソソーム蓄積症、例えば、I細胞病/偽性ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ病/テイ・サックス、クリグラー・ナジャーII型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、メラノーマ、グリカン糖鎖異常 CDG 1型、気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT 欠乏症、尿崩症 (DI)、神経身体的 DI、腎性 DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッヘル病、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病、いくつかのポリグルタミン神経障害、例えば、ハンチントン、脊髄小脳失調症 I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体、および筋緊張性ジストロフィー、ならびに 海綿状脳症、例えば、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病、ファブリー病、ストロイスラー・シャインカー疾患、分泌性下痢、多発性嚢胞腎疾患、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、眼球乾燥疾患、およびシェーグレン症候群の一以上を治療するまたはその重症度を和らげるために有効な量である。
【0188】
本発明の方法によると、化合物および組成物は、嚢胞性線維症、気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固-線維素溶解欠損症、例えば、プロテインC欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、脂質加工欠損症、例えば、 家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無ベータリポ蛋白血症、リソソーム蓄積症、例えば、 I細胞病/偽性ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ病/テイ・サックス、クリグラー・ナジャーII型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症(Hyperinsulemia)、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、メラノーマ、グリカン糖鎖異常 CDG 1型、気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT 欠乏症、尿崩症 (DI)、神経身体的 DI、腎性 DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッヘル病、神経変性疾患 例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病、いくつかのポリグルタミン神経障害、例えば、ハンチントン、脊髄小脳失調症 I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体、および筋緊張性ジストロフィー、ならびに 海綿状脳症、例えば、 遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病、ファブリー病、ストロイスラー・シャインカー 疾患、分泌性下痢、多発性嚢胞腎疾患、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、眼球乾燥疾患、およびシェーグレン症候群の一以上を治療するために、またはそれらの重症度を和らげるために有効なあらゆる量およびあらゆる投与経路を用いて投与され得る。
【0189】
必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、感染の重症度、特定の剤(agent)、その投与様式等に依存して、対象によって変動するであろう。本発明の化合物は好ましくは、投与の容易さおよび用量の均一性のために用量単位形態にて処方される。「用量単位形態」という表現は、本明細書において用いる場合、治療されるべき患者のために適切な物理的に別々の単位の剤をいう。しかしながら、本発明の化合物および組成物の一日使用総量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されるであろうことが理解されるであろう。あらゆる特定の患者または生物のための特定の有効な用量レベルは、様々な因子に依存するであろうし、かかる因子としては、例えば、以下が挙げられる:治療されるべき障害および障害の重症度; 使用される特定の化合物の活性; 使用される特定の組成物; 患者の年齢、体重、全体的な健康、性別および食事;投与時間、投与経路、使用される特定の化合物の排泄率;治療の持続時間;使用される特定の化合物と組合せてまたは同時に使用される薬物および医学技術分野に周知の同様の因子。「患者」という用語は、本明細書において用いる場合、動物、好ましくは、哺乳類を意味し、もっとも好ましくはヒトである。
【0190】
本発明の医薬上許容される組成物は、ヒトおよびその他の動物に、経口的に、直腸性に、非経口的に、嚢内に、腟内に、腹腔内に、局所的に (粉末、軟膏、または点滴剤により)、頬側に、経口または点鼻薬として等、治療されるべき感染の重症度に応じて投与され得る。特定の態様において、本発明の化合物は、経口的または非経口的に、約 0.01 mg/kg対象体重/日から約 50 mg/kg対象体重/日、および好ましくは約 1 mg/kg対象体重/日 から約 25 mg/kg対象体重/日の用量レベルにて、一日一回以上投与され得ることにより、所望の治療効果が得られる。
【0191】
経口投与のための液体剤形としては、これらに限定されないが、医薬上許容される乳濁液、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が挙げられる。活性の化合物に加えて、液体剤形は、当該技術分野において一般に使用されている不活性な希釈剤、例えば、水またはその他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油 (具体的には、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物を含有していてもよい。不活性な希釈剤に加えて、経口組成物はまた、補助剤、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味料、および芳香剤を含んでいてもよい。
【0192】
注射用調製物、例えば、無菌注射用水性または油性懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて公知の技術にしたがって処方され得る。無菌注射用調製物はまた、非-毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液としての、無菌注射用溶液、懸濁液 または乳濁液であってよい。使用されうる許容される媒体および溶媒のなかでも、水、リンゲル液、U.S.P.および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、無菌の、固定油が通常、溶媒または懸濁化剤として使用される。この目的のために、あらゆる無刺激性(bland)固定油を使用することができ、例えば、合成 モノ-またはジグリセリドが挙げられる。さらに、注射剤の調製において、脂肪酸、例えば、オレイン酸が使用される。
【0193】
注射用製剤は、例えば、細菌-保持フィルターを介した濾過により、または、使用前に無菌水またはその他の無菌注射用媒体に溶解または分散され得る無菌固体組成物の形態における滅菌剤を組み込むことにより、無菌化され得る。
【0194】
本発明の化合物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅くすることがしばしば望ましい。これは水溶解性が不良な結晶性または非晶質物質の液体懸濁液の使用により達成され得る。化合物の吸収速度は次いでその溶解速度に依存し、次いで、結晶サイズおよび結晶形に依存しうる。あるいは、非経口的に投与された化合物形態の遅延性吸収は、化合物を油媒体に溶解するまたは懸濁させることにより達成される。注射用持効性製剤形態は、生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸-ポリグリコライド中に化合物のマイクロカプセル(microencapsule) マトリクスを形成させることにより、作られる。化合物のポリマーに対する比および使用される特定のポリマーの性質に応じて、化合物放出速度が制御され得る。その他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル) およびポリ(無水物)が挙げられる。持効性注射用製剤はまた、身体組織に適合性のリポソームまたはマイクロエマルション中に化合物を封入することによっても調製される。
【0195】
直腸または腟投与のための組成物は、好ましくは、本発明の化合物を、環境温度では固体であるが、身体温度では液体であり、それゆえ直腸または膣腔にて融解して活性の化合物を放出する、好適な非刺激性の賦形剤または担体、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐薬ワックスと混合することによって調製され得る坐薬である。
【0196】
経口投与のための固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、および顆粒が挙げられる。かかる固体剤形において、活性の化合物は、すくなくとも1つの不活性な、医薬上許容される賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウム、および/または、a) 充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b) 結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアラビアゴム等、c) 湿潤剤、例えば、グリセロール、d) 崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、e) 溶液遅延剤、例えば、パラフィン、f) 吸収促進剤、例えば、四級アンモニウム化合物、g) 湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート等、h) 吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土、および、i) 潤滑剤、例えば、 タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤および丸剤の場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでいてもよい。
【0197】
類似のタイプの固体組成物はまた、充填剤として軟および硬充填(filled)ゼラチンカプセルにおいて、賦形剤、例えば、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコール等を用いて使用することもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、および顆粒の固体剤形は、コーティングおよび殻、例えば、腸溶コーティングおよびその他の医薬処方技術分野に周知のコーティングを用いて調製することができる。それらは所望により乳白剤を含んでいてもよく、有効成分のみを、または優先的に、腸管の特定の部分において、所望により、遅延性様式にて放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例としては、重合物質およびワックスが挙げられる。類似のタイプの固体組成物はまた、充填剤として軟および硬充填(filled) ゼラチンカプセルにおいて、賦形剤、例えば、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコール等を用いて使用され得る。
【0198】
活性の化合物はまた、一以上の賦形剤を上記のように伴うマイクロカプセル化形態におけるものであってもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、および顆粒の固体剤形は、コーティングおよび殻、例えば、腸溶コーティング、放出制御コーティングおよびその他の医薬処方技術分野に周知のコーティングを用いて調製することができる。かかる固体剤形において、活性の化合物は、すくなくとも1つの不活性な希釈剤、例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプンと混合され得る。かかる剤形はまた、正常な習慣の通りに、不活性な希釈剤以外のさらなる物質、例えば、錠剤化潤滑剤およびその他の錠剤化補助剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび結晶セルロースを含んでいてもよい。カプセル、錠剤および丸剤の場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでいてもよい。それらは所望により乳白剤を含んでいてもよく、有効成分のみ、あるいは優先的に、腸管の特定の部分において、所望により、遅延性様式にて放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例としては、重合物質およびワックスが挙げられる。
【0199】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、噴霧剤、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性の成分は、無菌条件下で医薬上許容される担体および、必要とされるうる場合あらゆる必要とされる保存料または緩衝剤と混合される。眼用製剤、点耳薬、および点眼薬はまた、本発明の範囲内であると考慮される。さらに、本発明は、経皮パッチの使用を考慮し、それは化合物の身体への制御された送達を提供するという追加の利点を有する。かかる剤形は化合物を適当な媒体中に溶解または分配することによって調製される。吸収促進薬もまた、化合物の皮膚を横切る流動を上昇させるために使用することができる。速度は、速度制御膜を提供することにより、あるいは、化合物をポリマーマトリックスまたはゲルに分散することにより、制御することができる。
【0200】
上記に一般的に記載されるように、本発明の化合物は、ABC トランスポーターの修飾因子として有用である。したがって、いかなる特定の理論にも拘束される意図はないが、化合物および組成物は、ABC トランスポーターの機能亢進または不活性が疾患、状態、または障害に関係する、疾患、状態、または障害を治療するか、またはその重症度を和らげるために特に有用である。ABC トランスポーターの機能亢進または不活性が特定の疾患、状態、または障害に関係する場合、疾患、状態、または障害はまた、「ABC トランスポーターに媒介される疾患、状態、または障害」としても称され得る。したがって、別の側面において、本発明は、ABC トランスポーターの機能亢進または不活性が疾患状況に関係する、疾患、状態、または障害を治療するまたはその重症度を和らげるための方法を提供する。
【0201】
本発明においてABC トランスポーターの修飾因子として利用される化合物の活性は、当該技術分野において一般的に記載される方法および本明細書における実施例において記載される方法にしたがってアッセイされ得る。
【0202】
本発明の化合物および医薬上許容される組成物は併用療法において使用されうること、即ち、化合物および医薬上許容される組成物は一以上のその他の所望の治療学または医学的手技と同時に、それらに先立って、またはそれらに引き続いて投与され得ることも認識されるであろう。組合せ治療計画を使用するための治療法 (治療学または手技)の特定の組合せは、所望の治療学および/または手技の適合性および達成すべき所望の治療効果を考慮するであろう。使用される治療法は同じ障害のために所望の効果を達成するものであってもよいし(例えば、本発明の化合物は同じ障害を治療するために使用される別の剤と同時に投与され得る)、あるいはそれらは異なる効果を達成するものであってもよい (例えば、いずれかの副作用の制御)ことも認識されるであろう。本明細書において用いる場合、特定の疾患、または状態を治療または予防するために通常投与されるさらなる治療薬は、「治療されるべき疾患、または状態のために適切な」ものとして知られる。
【0203】
一つの態様において、さらなる治療薬は、粘液溶解薬、気管支拡張剤、抗生物質、抗感染薬、抗炎症剤、本発明の式 Iの化合物以外のCFTR 修飾因子、または栄養剤から選択される。
【0204】
一つの態様において、さらなる治療薬は抗生物質である。本明細書において有用な例示的な抗生物質としては、トブラマイシン、例えば、トブラマイシン 吸入粉末 (TIP)、アジスロマイシン、アズトレオナム、例えば、エアロゾル化形態のアズトレオナム、アミカシン、例えば、そのリポソーム製剤、シプロフロキサシン、例えば、吸入による投与のために好適なその製剤、レボフロキサシン(levoflaxacin)、例えば、そのエアロゾル化製剤、および2つの抗生物質の組合せ、例えば、ホスホマイシンおよびトブラマイシンが挙げられる。
【0205】
別の態様において、さらなる剤はムコライト(mucolyte)である。本明細書において有用な例示的なムコライトとしては、プルモザイム(登録商標)が挙げられる。
【0206】
別の態様において、さらなる剤は気管支拡張剤である。例示的な気管支拡張剤(bronchodialtor)としては、アルブテロール、硫酸メタプロテレノール(metaprotenerol sulfate)、酢酸ピルブテロール、サルメテロール、または硫酸テトラブリン(tetrabuline sulfate)が挙げられる。
【0207】
別の態様において、さらなる剤は、肺気道表面液体を修復することにおいて有効なものである。かかる剤は細胞の内外への塩の移動を改善し、肺気道内の粘液がより水和されることを可能とし、それゆえ、より容易に除去される(cleared)ようにする。例示的なかかる剤としては、高張食塩水、デヌホソル四ナトリウム ([[(3S,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-3-ヒドロキシオキソラン-2-イル]メトキシ-ヒドロキシホスホリル] [[[(2R,3S,4R,5R)-5-(2,4-ジオキソピリミジン-1-イル)-3,4-ジヒドロキシオキソラン-2-イル]メトキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]リン酸水素塩)、またはブロンキトール(bronchitol) (マンニトールの吸入製剤)が挙げられる。
【0208】
別の態様において、さらなる剤は、抗炎症剤、即ち、肺における炎症を低減しうる剤である。本明細書において有用な例示的なかかる剤としては、イブプロフェン、ドコサヘキサエン酸 (DHA)、シルデナフィル、吸入グルタチオン、ピオグリタゾン、ヒドロキシクロロキン、またはシンバスタチンが挙げられる。
【0209】
別の態様において、さらなる剤は、式 Iの化合物以外のCFTR 修飾因子であり、即ち、CFTR 活性を調節する効果を有する剤である。例示的なかかる剤としては、アタルレン (「PTC124(登録商標)」; 3-[5-(2-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]安息香酸)、シナプルチド、ランコブチド、デペレスタット (ヒト組換え好中球エラスターゼ阻害剤)、およびコビプロストン (7-{(2R、4aR、5R、7aR)-2-[(3S)-1,1-ジフルオロ-3-メチルペンチル]-2-ヒドロキシ6-オキソオクタヒドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル}ヘプタン酸)が挙げられる。
【0210】
別の態様において、さらなる剤は栄養剤である。例示的な栄養剤としては、パンクレリパーゼ (パンクレアチン酵素補充療法剤(pancreating enzyme replacement))、例えば、パンクレアーゼ(登録商標)、パンクレアカルブ(Pancreacarb)(登録商標)、ウルトラーゼ(Ultrase)(登録商標)、またはクレオン(登録商標)、リプロトマーゼ(Liprotomase)(登録商標) (以前はトリジテク(Trizytek)(登録商標))、アクアデクス(Aquadeks)(登録商標)、またはグルタチオン吸入が挙げられる。一つの態様において、さらなる栄養剤はパンクレリパーゼである。
【0211】
別の態様において、さらなる剤は、ゲンタマイシン、クルクミン、シクロホスファミド、4-フェニル酪酸塩、ミグルスタット、フェロジピン、ニモジピン、フィロキシン(Philoxin)B、ゲニエステイン(geniestein)、アピゲニン、cAMP/cGMP 修飾因子、例えば、ロリプラム、シルデナフィル、ミルリノン、タダラフィル、アムリノン、イソプロテレノール、アルブテロール、およびアルメテロール(almeterol)、デオキシスパガリン、HSP 90 阻害剤、HSP 70 阻害剤、プロテオソーム(proteosome)阻害剤、例えば、エポキソミシン、ラクタシスチン等から選択される化合物である。
【0212】
別の態様において、さらなる剤は、WO 2004028480、WO 2004110352、WO 2005094374、WO 2005120497、または WO 2006101740に開示されている化合物である。別の態様において、さらなる剤は、CFTR 調節活性を示すベンゾ[c]キノリジニウム誘導体またはCFTR 調節活性を示すベンゾピラン誘導体である。別の態様において、さらなる剤は、米国特許第7,202,262号、米国特許第6,992,096号、US20060148864、US20060148863、US20060035943、US20050164973、WO2006110483、WO2006044456、WO2006044682、WO2006044505、WO2006044503、WO2006044502、またはWO2004091502に開示されている化合物である。別の態様において、さらなる剤は、WO2004080972、WO2004111014、WO2005035514、WO2005049018、WO2006099256、WO2006127588、または WO2007044560に開示されている化合物である。別の態様において、さらなる剤は、N-(5-ヒドロキシ2,4-ジtert-ブチル-フェニル)-4-オキソ-1H-キノリン-3-カルボキサミドである。
【0213】
一つの態様において、100 mgの式 Iの化合物がそれを必要とする対象に投与され得、次いで150 mgのN-(5-ヒドロキシ-2,4-ジtert-ブチル-フェニル)-4-オキソ-1H-キノリン-3-カルボキサミド (化合物 2)の共-投与が行われ得る。別の態様において、100 mgの式 Iの化合物がそれを必要とする対象に投与され得、次いで250 mgの化合物 2の共-投与が行われ得る。これらの態様において、投薬量は本発明の一以上の錠剤の投与により達成され得る。化合物 2は、化合物 2および医薬上許容される担体を含む医薬組成物として投与され得る。投与の持続時間は、疾患の寛解が達成されるかまたは対象の医師が勧めるまで続き得、例えば、投与の持続時間は、1週間未満、1 週間、2 週間、3 週間、または1か月またはそれより長い期間であり得る。共-投与期間は、式 Iの化合物単独での投与期間により先行され得る。例えば、それらは100 mgの化合物 1の2 週間の投与、次いで 150 mgまたは250 mgの化合物 2のさらに1週間の共-投与でありうる。
【0214】
一つの態様において、100 mgの式 Iの化合物が1日1回 それを必要とする対象に投与され得、次いで 150 mgの化合物 2の1日1回の共-投与が行われ得る。別の態様において、100 mgの式 Iの化合物が1日1回それを必要とする対象に投与され得、次いで 250 mgの化合物 2の1日1回の共-投与が行われ得る。これらの態様において、投薬量は本発明の一以上の錠剤の投与により達成され得る。化合物 2 は化合物 2 および医薬上許容される担体を含む医薬組成物として投与され得る。投与の持続時間は、疾患の寛解が達成されるかまたは対象の医師が勧めるまで続き得、例えば、投与の持続時間は、1週間未満、1 週間、2 週間、3 週間、または1か月またはそれより長い期間であり得る。共-投与期間は、式 Iの化合物単独での投与期間により先行され得る。例えば、100 mgの式 Iの化合物の2 週間の投与、次いで 150 mgまたは250 mgの化合物 2のさらに1 週間の共-投与であり得る。
【0215】
一つの態様において、100 mgの式 Iの化合物が1日1回それを必要とする対象に投与され得、次いで 150 mgの化合物 2の共-投与が12 時間毎に行われ得る。別の態様において、100 mgの式 Iの化合物が1日1回 それを必要とする対象に投与され得、次いで 250 mgの化合物 2の共-投与が12 時間毎に行われ得る。これらの態様において、投薬量は、本発明の一以上の錠剤の投与により達成され得る。化合物 2 は、化合物 2および医薬上許容される担体を含む医薬組成物として投与され得る。投与の持続時間は、疾患の寛解が達成されるかまたは対象の医師が勧めるまで続き得、例えば、投与の持続時間は、1週間未満、1 週間、2 週間、3 週間、または1か月またはそれより長い期間でありうる。共-投与期間は式 Iの化合物単独での投与期間により先行され得る。例えば、100 mgの式 Iの化合物の2 週間の投与、次いで150 mgまたは250 mgの化合物 2 のさらに1 週間の共-投与でありうる。
【0216】
これらの組合せは本明細書に記載される疾患、例えば、嚢胞性線維症を治療するために有用である。これらの組合せはまた、本明細書に記載されるキットにおいても有用である。
【0217】
本発明の組成物に存在するさらなる治療薬の量は治療薬を唯一の活性の剤として含む組成物にて通常投与される場合の量を超えない(no more than)であろう。好ましくは、本明細書において開示されている組成物におけるさらなる治療薬の量は、その剤を唯一の治療的に活性の剤として含む組成物に通常存在する量の約 50%から100%にわたるであろう。
【0218】
本発明の化合物またはその医薬上許容される組成物はまた、埋め込み型医療機器、例えば、人工関節、人工弁、移植血管、ステントおよびカテーテルをコーティングために組成物中に組み込むことができる。したがって、本発明は、別の側面において、上記に一般的に記載されるような、および本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおける、本発明の化合物、および該埋め込み型装置のコーティングのために好適な担体を含む、埋め込み型装置をコーティングするための組成物を含む。さらに別の側面において、本発明は、上記に一般的に記載されるような、および本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおける、本発明の化合物および該埋め込み型装置のコーティングのために好適な担体を含む組成物によりコーティングされた埋め込み型装置を含む。好適なコーティングおよびコーティングされた埋め込み型装置の一般的調製は、米国特許第 6,099,562号; 第 5,886,026号; および第 5,304,121号に記載されている。コーティングは典型的には、生体適合性ポリマー物質、例えば、 ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびそれらの混合物である。コーティングは所望により、フルオロシリコーン、多糖、ポリエチレングリコール、リン脂質またはそれらの組み合わせの好適なトップコートにより覆われることにより、組成物において制御放出特性を与えうる。
【0219】
本発明の別の側面は、生物学的サンプルまたは患者における(例えば、インビトロまたはインビボで)、ABC トランスポーター活性を調節することに関し、かかる方法は、式 Iの化合物または該化合物を含む組成物を患者に投与すること、またはそれを該生物学的サンプルと接触させることを含む。「生物学的サンプル」という用語は、本明細書において用いる場合、限定されるものではなく、細胞培養物またはその抽出物; 哺乳類またはその抽出物から得られた生検物質; および血液、唾液、尿、大便、精液、涙、またはその他の体液またはそれらの抽出物を含む。
【0220】
生物学的サンプルにおけるABC トランスポーター活性の調節は、当業者に公知の様々な目的のために有用である。かかる目的の例としては、これらに限定されないが、生物学的および病理学的現象におけるABC トランスポーターの研究; およびABC トランスポーターの新しい修飾因子の比較評価が挙げられる。
【0221】
さらに別の態様において、アニオンチャンネルの活性をインビトロまたはインビボで調節する方法が提供され、かかる方法は、該チャンネルを式IまたはIaの化合物と接触させる工程を含む。好ましい態様において、アニオンチャンネルはクロライドチャンネルまたは炭酸水素イオンチャンネルである。別の好ましい態様において、アニオンチャンネルはクロライドチャンネルである。
【0222】
代替的態様によると、本発明は、細胞の膜における機能的 ABC トランスポーターの数を上昇させる方法を提供し、かかる方法は、該細胞を式 (IまたはIa)の化合物と接触させる工程を含む。「機能的ABC トランスポーター」という用語は、本明細書において用いる場合、輸送活性の能力があるABC トランスポーターを意味する。好ましい態様において、該機能的 ABC トランスポーターはCFTRである。
【0223】
別の好ましい態様によると、ABC トランスポーターの活性は、膜電位差を測定することにより測定される。生物学的サンプルにおける膜を横切る電位差を測定する手段は、当該技術分野において公知のあらゆる方法、例えば、光学的膜電位アッセイまたはその他の電気生理学的方法を使用することができる。
【0224】
光学的膜電位アッセイは、Gonzalez and Tsien (Gonzalez, J. E. and R. Y. Tsien (1995) 「Voltage sensing by fluorescence resonance energy transfer in single cells」 Biophys J 69(4): 1272-80, およびGonzalez, J. E. and R. Y. Tsien (1997) 「Improved indicators of cell membrane potential that use fluorescence resonance energy transfer」 Chem Biol 4(4): 269-77を参照されたい) により記載されている電位感受性 FRET センサーを、蛍光変化を測定するための器具使用、例えば、電位/イオンプローブリーダー (VIPR) と組合せて利用する(Gonzalez, J. E., K. Oades, et al. (1999) 「Cell-based assays and instrumentation for screening ion-channel targets」 Drug Discov Today 4(9): 431-439を参照されたい)。
【0225】
これらの電位感受性アッセイは、膜-可溶性、電位感受性色素、DiSBAC2(3)、および、細胞膜の外葉に付着されてFRET ドナーとして作用する蛍光リン脂質、CC2-DMPE、の間の蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)における変化に基づく。膜電位 (Vm)における変化は負に荷電した DiSBAC2(3)が細胞膜を横切って再分布することをもたらし、それによりCC2-DMPEからのエネルギー移動の量が変化する。蛍光発光における変化はVIPRTM IIを用いてモニターされ得、これは、細胞に基づくスクリーンを96-または384-ウェルマイクロタイタープレートにて行うために設計された統合液体ハンドラおよび蛍光検出器である。
【0226】
別の側面において、本発明は、生物学的サンプルにおけるインビトロまたはインビボでのABC トランスポーターまたはその断片の活性の測定における使用のためのキットを提供し、かかるキットは、以下を含む: (i) 式 (IまたはIa)の化合物または上記態様のいずれかの化合物を含む組成物; および (ii) a.)組成物を生物学的サンプルと接触させること、およびb.) 該 ABC トランスポーターまたはその断片の活性を測定すること、のための指示書。一つの態様において、キットはさらに、a.)さらなる組成物を生物学的サンプルと接触させること; b.)該さらなる化合物の存在下で該 ABC トランスポーターまたはその断片の活性を測定すること、および、c.)さらなる化合物の存在下でのABC トランスポーターの活性を、式 (IまたはIa)の組成物の存在下でのABC トランスポーターの密度と比較すること、 のための指示書を含む。 好ましい態様において、キットは、CFTRの密度を測定するために使用される。
【0227】
本明細書に記載される本発明がより完全に理解され得るために、以下の実施例を示す。これらの実施例は例示的な目的のみのためであり、いかなる様式にも本発明を限定するように解釈するべきではないということを理解されたい。
【実施例】
【0228】
実施例
試薬および化合物
Vitride(登録商標) (水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム [またはNaAlH2(OCH2CH2OCH3)2]、トルエン中65 重量 (wgt)% 溶液) は、Aldrich Chemicalsから購入した。3-フルオロ-4-ニトロアニリンは、Capot Chemicalsから購入した。 5-ブロモ-2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソールは、Alfa Aesarから購入した。2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-カルボン酸は、Saltigo (Lanxess Corporationの提携会社) から購入した。
【0229】
本出願中どこにおいても、化合物名が化合物の構造を正しく記載していない場合があり得、その場合は構造が化合物名に取って代わり、支配する。
【0230】
酸塩化物部分
【0231】
(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-メタノールの合成
【化53】
【0232】
市販の2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-カルボン酸 (1.0 当量(eq))をトルエン (10 体積)中でスラリーにする(slurried)。Vitride(登録商標) (2 当量) を添加漏斗を介して15-25℃の温度を維持する速度で添加する。添加の最後に温度を40℃に2時間上昇させ、次いで、10% (w/w) 水性(aq.)NaOH (4.0 当量)を注意深く添加漏斗を介して添加して、40-50℃の温度を維持する。さらに30分間の撹拌後、層を40℃で分離させる。有機相を20℃に冷却し、次いで水 (2 x 1.5 体積) で洗浄し、乾燥させ (Na2SO4)、ろ過し、濃縮して、粗 (2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-メタノールを得、これは直接的に次の工程に使用される。
【0233】
5-クロロメチル-2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソールの合成
【化54】
【0234】
(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-メタノール (1.0 当量) をMTBE (5 体積) に溶解する。触媒量のDMAP (1 mol %) を添加し、SOCl2 (1.2 当量) を添加漏斗を介して添加する。SOCl2 を反応器における温度を15-25℃に維持する速度で添加する。温度を30℃に1 時間上昇させ、次いで、20℃に冷却し、次いで水 (4 体積) を添加漏斗を介して添加し、30℃未満の温度を維持する。さらに30分間の撹拌後、層を分離させる。有機層を撹拌し、10% (w/v) 水性NaOH (4.4 体積) を添加する。15から 20 分間の撹拌後、層を分離させる。有機相を次いで乾燥させ (Na2SO4)、ろ過し、濃縮して、粗 5-クロロメチル-2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソールを得、これは直接的に次の工程に使用される。
【0235】
(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-アセトニトリルの合成
【化55】
【0236】
DMSO (1.25 体積)中の5-クロロメチル-2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール (1 当量) の溶液をDMSO (3 体積)中のNaCN (1.4 当量)のスラリーに、30-40℃の間の温度を維持して、添加する。混合物を1 時間撹拌し、次いで、水 (6 体積)、次いで MTBE (4 体積) を添加する。30 分間の撹拌後、層を分離する。水層を、MTBE (1.8 体積) で抽出する。合わせた有機層を水 (1.8 体積) で洗浄し、乾燥させ (Na2SO4)、ろ過し、濃縮して、粗 (2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-アセトニトリル (95%) を得、これは直接的に次の工程に使用される。
【0237】
(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-シクロプロパンカルボニトリルの合成
【化56】
【0238】
50% w/w NaOHのストック溶液を窒素散布(sparge) により16時間以上脱気した。適切な量のMTBE を同様に数時間脱気した。窒素でパージした反応器に、脱気したMTBE (143 mL)、次いで、(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-アセトニトリル (40.95 g、207.7 mmol)およびテトラブチルアンモニウムブロミド (2.25 g、10.38 mmol) を入れた。混合物の体積を注意し、混合物を窒素散布により30 分間脱気した。十分に脱気したMTBE を入れて混合物を脱気の前の最初の体積に戻す。撹拌混合物に23.0 ℃にて脱気した 50% w/w NaOH (143 mL) を10 分間かけて入れ、次いで 1-ブロモ-2-クロロエタン (44.7 g、311.6 mmol)を30 分間かけて入れた。反応を% 変換について1時間間隔にてHPLCにより解析した。サンプリングの前に、撹拌を停止させ、相を分離させた。上層(top)有機相を解析のためにサンプル採取した。 % 変換 > 99 %が観察された時 (典型的には2.5 - 3時間後)、反応混合物を10 ℃に冷却し、温度 < 25 ℃を維持するような速度で水 (461 mL) を入れた。温度を20 - 25 ℃に調整し、相を分離した。注意: 完全な相分離のためには十分な時間を割り当てるべきである。水相をMTBE (123 mL) で抽出し、合わせた有機相を1 N HCl (163mL)および5% NaCl (163 mL) で洗浄した。MTBE中の(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-シクロプロパンカルボニトリルの溶液を40 - 50 ℃で164 mLに減圧下で濃縮した。溶液にエタノール (256 mL) を入れ、再度 164 mLに減圧下で50 - 60 ℃で濃縮した。エタノール (256 mL) を入れ、混合物を 164 mL に減圧下で 50 - 60 ℃で濃縮した。結果として得られた混合物を20 - 25 ℃に冷却し、エタノールで希釈して266 mLとし、次の工程に備えた。 1H NMR (500 MHz、DMSO) δ 7.43 (d、J = 8.4 Hz、1H)、7.40 (d、J = 1.9 Hz、1H)、7.30 (dd、J = 8.4、1.9 Hz、1H)、1.75 (m、2H)、1.53 (m、2H)。
【0239】
1-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-シクロプロパンカルボン酸の合成
【化57】
【0240】
先の工程からの、エタノール中の(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-シクロプロパンカルボニトリルの溶液に6 N NaOH (277 mL) を20 分間かけて入れ、77 - 78 ℃の内部温度に45 分間かけて加熱した。反応進行を16時間後にHPLCによりモニターした。注意: (2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-シクロプロパンカルボニトリルおよび(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-シクロプロパンカルボニトリルの部分加水分解に起因する一級アミドの両方の消費が、モニターされた。% 変換 > 99 % が観察された時 (典型的には16時間後に100% 変換)、反応混合物を25 ℃に冷却し、エタノール (41 mL)およびDCM (164 mL) を入れた。溶液を10 ℃に冷却し、温度 < 25 ℃を維持するような速度で6 N HCl (290 mL) を入れた。20 - 25 ℃へと昇温させた後、相を分離した。底面有機相を収集し、上層水相を DCM (164 mL) で逆抽出した。注意:水相は高濃度の無機塩に起因して抽出前および後にいくらか濁っていた。有機物質(organics)を合わせ、減圧下で濃縮して164 mLとした。トルエン (328 mL) を入れ、混合物を164 mL に70 - 75 ℃で凝縮した。混合物を45 ℃に冷却し、MTBE (364 mL) を入れ60 ℃で20 分間撹拌した。溶液を25 ℃に冷却し、研磨濾過して(polish filtered)残留する無機塩を除去した。MTBE (123 mL)を使用して反応器をすすぎ、固体を収集した。合わせた有機物質を浄化した反応器移し、次の工程に備えた。
【0241】
1-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-シクロプロパンカルボン酸の単離
【化58】
【0242】
先の工程からの1-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-シクロプロパンカルボン酸の溶液を減圧下で濃縮して164 mLとし、トルエン (328 mL) を入れ164 mLに70 - 75 ℃で濃縮した。混合物を次いで100 - 105 ℃に加熱し、均一な溶液を得た。その温度で30 分間の撹拌後、溶液を5 ℃に2 時間かけて冷却し、5 ℃で3 時間維持した。混合物を次いでろ過し、反応器および収集した固体を冷 1:1 トルエン/n-ヘプタン (2 X 123 mL) で洗浄した。物質を減圧下で55 ℃で17 時間乾燥させて1-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-シクロプロパンカルボン酸をオフホワイトの結晶性固体として提供した。1-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-シクロプロパンカルボン酸を(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-アセトニトリルから79% 収率にて単離し(単離を含めて3 工程)そのHPLC 純度は99.0% AUCであった。ESI-MS m/z 計算値242.04、実測値 241.58 (M+1)+; 1H NMR (500 MHz、DMSO) δ 12.40 (s、1H)、7.40 (d、J = 1.6Hz、1H)、7.30 (d、J = 8.3 Hz、1H)、7.17 (dd、J = 8.3、1.7 Hz、1H)、1.46 (m、2H)、1.17 (m、2H)。
【0243】
酸塩化物部分の代替的合成
(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-酢酸エチル-アセトニトリルの合成
【化59】
【0244】
反応器を窒素でパージし、900 mLのトルエンを入れた。溶媒を窒素散布により16時間以上(no less than)脱気した。反応器に次いでNa3PO4 (155.7 g、949.5 mmol)、次いで、ビス(ジベンジリデンアセトン) パラジウム (0) (7.28 g、12.66 mmol)を入れた。ヘキサン中のtert-ブチルホスフィンの10% w/w 溶液 (51.23 g、25.32 mmol) を10 分間かけて23 ℃で窒素でパージされた添加漏斗から入れた。混合物を50 分間撹拌させ、その時点で 5-ブロモ-2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール (75 g、316.5 mmol) を1 分間かけて添加した。さらに50 分間撹拌後、混合物にシアノ酢酸エチル (71.6 g、633.0 mmol) を5 分間かけて入れ、次いで 水 (4.5 mL)を一部にて入れた。混合物を70 ℃に40 分間かけて加熱し、反応物の生成物へのパーセント変換について1 - 2時間ごとにHPLCにより解析した。変換が観察された後(典型的には5 - 8時間後に100% 変換)、混合物を 20 - 25 ℃に冷却し、セライトパッドでろ過した。セライトパッドをトルエン (2 X 450 mL) ですすぎ、合わせた有機物質を300 mL に減圧下で 60 - 65 ℃で濃縮した。濃縮物に225mL DMSO を入れ、溶媒の活発な蒸留が止まるまで減圧下で70 - 80 ℃で濃縮した。溶液を20 - 25 ℃に冷却し、900 mLにDMSOにより希釈し工程 2に備えた。 1H NMR (500 MHz、CDCl3) δ 7.16 - 7.10 (m、2H)、7.03 (d、J = 8.2 Hz、1H)、4.63 (s、1H)、4.19 (m、2H)、1.23 (t、J = 7.1 Hz、3H)。
【0245】
(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-アセトニトリルの合成
【化60】
【0246】
上記からの(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-酢酸エチル-アセトニトリルのDMSO 溶液に3 N HCl (617.3 mL、1.85 mol) を内部温度 < 40 ℃を維持しながら 20 分間かけて入れた。混合物を次いで75℃に1時間かけて加熱し、% 変換について1 - 2時間ごとにHPLCにより解析した。> 99%の変換が観察された時に (典型的には5 - 6 時間後)、反応を20 - 25 ℃に冷却し、抽出の間に完全な相分離を可能にするために十分な時間、MTBE (2 X 525 mL) で抽出した。合わせた有機抽出物を 5% NaCl (2 X 375 mL) で洗浄した。溶液を次いで、冷却したレシーバフラスコを備えた1.5 - 2.5 Torr 減圧蒸留のために適切な機器に移した。溶液を減圧下で< 60℃で濃縮して溶媒を除去した。(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-アセトニトリルを次いで結果として得られた油から125 - 130 ℃ (オーブン温度)および1.5 - 2.0 Torrで蒸留した。(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-アセトニトリルを清澄油として5-ブロモ-2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール (2 工程)から66% 収率にて、91.5% AUCのHPLC 純度 (95%のw/w アッセイに対応する) にて単離した。1H NMR (500 MHz、DMSO) δ 7.44 (br s、1H)、7.43 (d、J = 8.4 Hz、1H)、7.22 (dd、J = 8.2、1.8 Hz、1H)、4.07 (s、2H)。
【0247】
残りの工程は酸部分の合成について上記したものと同一である。
【0248】
アミン部分
2-ブロモ-5-フルオロ-4-ニトロ(ntro)アニリンの合成
【化61】
【0249】
フラスコに3-フルオロ-4-ニトロアニリン (1.0 当量)、次いで、酢酸エチル (10 体積) を入れ、撹拌してすべての固体を溶解させた。N-ブロモスクシンイミド (1.0 当量) を22 ℃の内部温度を維持するように一部ずつ添加した。反応の最後に、反応混合物をロータリーエバポレーター(rotavap)で減圧下で濃縮した。残渣を蒸留水 (5 体積)中にスラリーにして(slurried)、スクシンイミドを溶解し、除去した。(スクシンイミドはまた、後処理(workup) 手順によっても除去しうる)。水をデカントし、固体を2-プロパノール (5 体積)中で一晩スラリーにした(slurried)。結果として得られたスラリーをろ過し、ウェットケーキを2-プロパノールで洗浄し、真空オーブンで50℃で一晩 N2 流(bleed)を用いて恒量に達するまで乾燥させた。黄色がかった褐色固体を単離した(50% 収率、97.5% AUC)。その他の不純物は、ブロモ-位置異性体 (1.4% AUC)およびジ-ブロモ付加体 (1.1% AUC)であった。 1H NMR (500 MHz、DMSO)
δ 8.19 (1 H、d、J = 8.1 Hz)、7.06 (br. s、2 H)、6.64 (d、1 H、J = 14.3Hz)。
【0250】
ベンジルグリコール化-4-アンモニウム-2-ブロモ-5-フルオロアニリントシレート塩の合成
【化62】
【0251】
N2下の徹底的に乾燥させフラスコに以下を入れた:活性化粉末化 4A 分子ふるい (2-ブロモ-5-フルオロ-4-ニトロアニリンに基づき50 重量%)、2-ブロモ-5-フルオロ-4-ニトロアニリン (1.0 当量)、過塩素酸亜鉛二水和物(20 mol%)、およびトルエン (8 体積)。混合物を室温でNMT 30 分間撹拌した。最後に、トルエン (2 体積) 中の(R)-ベンジルグリシジルエーテル (2.0 当量) を一様な流れにて添加した。反応を80℃ (内部温度) に加熱し、およそ 7 時間または2-ブロモ-5-フルオロ-4-ニトロアニリンが<5%AUCとなるまで撹拌した。
【0252】
反応を室温に冷却し、セライト (50 重量%)、次いで酢酸エチル (10 体積) を添加した。結果として得られた混合物をろ過してセライトおよびふるいを除去し、酢酸エチル (2 体積) で洗浄した。濾液を塩化アンモニウム溶液 (4 体積、20% w/v) で洗浄した。有機層を炭酸水素ナトリウム溶液 (4 体積 x 2.5% w/v) で洗浄した。有機層をロータリー・エバポレーター(rotovap)で減圧下で濃縮した。結果として得られたスラリーを酢酸イソプロピル (10 体積)に溶解し、この溶液を Buchi 水素化器(Hydrogenator) に移した。
【0253】
水素化器に5重量% Pt(S)/C (1.5 mol%) を入れ、混合物をN2下で30℃ (内部温度)で撹拌した。反応にN2、次いで水素を流した。水素化器圧力を1 Barの水素に調整し、混合物を迅速に撹拌した (>1200 rpm)。反応の最後に、触媒をセライトのパッドでろ過し、ジクロロメタン (10 体積) で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮した。あらゆる残存する酢酸イソプロピルをジクロロメタン (2 体積)で追跡し(chased with)、ロータリーエバポレーターで濃縮して乾燥させた。
【0254】
結果として得られた残渣をジクロロメタン (10 体積)に溶解した。p-トルエンスルホン酸一水和物 (1.2 当量) を添加し、一晩撹拌した。生成物をろ過し、ジクロロメタン (2 体積) で洗浄し、吸引乾燥させた。ウェットケーキを乾燥トレイに移し、そして真空オーブンに入れ、45℃でN2 流(bleed)にて恒量に達するまで乾燥させた。ベンジルグリコール化-4-アンモニウム-2-ブロモ-5-フルオロアニリントシレート塩をオフホワイトの固体として単離した。
【0255】
キラル純度を決定したところ、 >97%eeであった。
【0256】
(3-クロロ-3-メチルブタ-1-イニル)トリメチルシランの合成
【化63】
【0257】
プロパルギルアルコール (1.0 当量) を容器に入れた。水性塩酸 (37%、3.75 体積) を添加し、撹拌を始めた。固体アルコールの溶解の間に、わずかな吸熱 (5-6 ℃) が観察される。結果として得られた混合物を一晩撹拌したところ (16時間)、ゆっくりと暗赤色となった。30 L ジャケット付(jacketed)容器に水 (5 体積) を入れ、これを次いで、10 ℃に冷却する。反応混合物をゆっくりと減圧により水へと移し、混合物の内部温度を25 ℃未満に維持する。ヘキサン (3 体積) を添加し、結果として得られる混合物を0.5時間撹拌する。相を落ち着かせ、水相 (pH < 1)を排出し、捨てた。有機相をロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮し、生成物を赤色油として得た。
【0258】
(4-(ベンジルオキシ)-3,3-ジメチルブタ-1-イニル)トリメチルシランの合成
【化64】
【0259】
方法 A
この部分におけるすべての当量および体積の記載は、250gの反応に基づく。マグネシウムくず(turning)(69.5 g、2.86 mol、2.0 当量) を3 L 4-首反応器に入れ、マグネティックスターラーを用いて窒素下で0.5時間撹拌した。反応器を氷-水浴に浸漬した。THF (1.8 L、7.2 体積)中のプロパルギルクロリド (250 g、1.43 mol、1.0 当量) の溶液をゆっくりと反応器に撹拌しながら最初の発熱 (〜10 ℃)が観察されるまで添加した。グリニャール試薬形成を1H-NMR 分光法を用いるIPCにより確認した。いったん発熱が鎮静したら、残りの溶液をゆっくりとバッチ温度 <15 ℃を維持して添加した。添加には〜3.5時間必要であった。結果として得られた濃緑色混合物をデカントして2 L 蓋つきビンに入れた。
【0260】
この部分におけるすべての当量および体積の記載は、500gの反応に基づく。22 L 反応器にTHF (1.5 L、3 体積)中のベンジルクロロメチルエーテル (95%、375 g、2.31 mol、0.8 当量) の溶液を入れた。反応器を氷-水浴中で冷却した。上記のように調製した2つのグリニャール試薬のバッチを合わせ、次いで添加漏斗を介してゆっくりとバッチ温度を25 ℃未満に維持しながらベンジルクロロメチルエーテル溶液に添加した。添加には、1.5時間必要であった。反応混合物を一晩撹拌した(16時間)。
【0261】
この部分におけるすべての当量および体積の記載は、1 kgの反応に基づく。15% 塩化アンモニウムの溶液を30 L ジャケット付反応器 (8.5 kgの水中1.5 kg、10 体積)中に調製した。溶液を5 ℃に冷却した。上記のように調製した2つのグリニャール反応混合物を合わせ、次いでヘッダー(header)容器を介して塩化アンモニウム溶液へと移した。発熱がこの急冷(quench)において観察され、これは内部温度を25 ℃未満に維持するような速度にて行った。いったん移動が完了したら、容器ジャケット温度を25 ℃に設定した。ヘキサン (8 L、8 体積) を添加し、混合物を0.5時間撹拌した。相を落ち着かせた後、水相 (pH 9)を排出し、捨てた。残存する有機相を水 (2 L、2 体積) で洗浄した。有機相を22 L ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮し、粗生成物をオレンジ色油として得た。
【0262】
方法 B
マグネシウム くず(turnings) (106 g、4.35 mol、1.0 当量) を22 L 反応器に入れ、次いでTHF (760 mL、1 体積) に懸濁した。容器を氷-水浴中で冷却し、バッチ温度が2 ℃に達するようにした。THF (4.5 L、6 体積)中のプロパルギルクロリド (760 g、4.35 mol、1.0 当量) の溶液をゆっくりと反応器に添加した。100 mL を添加した後、添加を停止させ、混合物を13 ℃の発熱が観察されるまで撹拌し、これはグリニャール試薬開始を示す。発熱が鎮静したら、さらに500 mLのプロパルギルクロリド溶液をバッチ温度 <20 ℃を維持しつつゆっくりと添加した。グリニャール試薬形成を1H-NMR 分光法を用いるIPCにより確認した。残りのプロパルギルクロリド溶液をゆっくりと添加し、バッチ温度 <20 ℃を維持した。添加には、〜1.5時間必要であった。結果として得られた濃緑色溶液を0.5時間撹拌した。グリニャール試薬形成を1H-NMR 分光法を用いるIPCにより確認した。非希釈(Neat) ベンジルクロロメチルエーテルを反応器添加漏斗に入れ、次いでバッチ温度を25 ℃未満に維持して反応器に滴下した。添加には、1.0時間必要であった。反応混合物を一晩撹拌した。水性後処理(workup) および濃縮を方法 Aにおけるものと同じ手順および物質の相対量を用いて行い、生成物をオレンジ色油として得た。
【0263】
4-ベンジルオキシ-3,3-ジメチルブタ-1-インの合成
【化65】
【0264】
30 L ジャケット付反応器にメタノール (6 体積)を入れ、これを次いで、5 ℃に冷却した。水酸化カリウム (85%、1.3 当量) を反応器に添加した。水酸化カリウムが溶解すると15-20 ℃ 発熱が観察された。ジャケット温度を25 ℃に設定した。メタノール (2 体積)中の4-ベンジルオキシ-3,3-ジメチル-1-トリメチルシリルブタ-1-イン (1.0 当量) の溶液を添加し、結果として得られた混合物をHPLCによりモニターして反応が完了するまで撹拌した。25 ℃での典型的な反応時間は3-4時間である。反応混合物を水 (8 体積) で希釈し、次いで0.5時間撹拌する。ヘキサン (6 体積) を添加し、結果として得られた混合物を0.5時間撹拌した。相を落ち着かせ、次いで水相 (pH 10-11)を排出し、捨てた。有機相を、水 (8 体積)中のKOH (85%、0.4 当量) の溶液、次いで、水 (8 体積) で洗浄した。有機相を次いでロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、標題物質を黄色-オレンジ色油として得た。この物質の典型的な純度は80% の範囲におけるものであり、主に一つの不純物が存在した。 1H NMR (400 MHz、C6D6) δ 7.28 (d、2 H、J = 7.4 Hz)、7.18 (t、2 H、J = 7.2 Hz)、7.10 (d、1H、J = 7.2 Hz)、4.35 (s、2 H)、3.24 (s、2 H)、1.91 (s、1 H)、1.25 (s、6 H)。
【0265】
N-ベンジルグリコール化-5-アミノ-2-(2-ベンジルオキシ-1,1-ジメチルエチル)-6-フルオロインドールの合成
方法 A
ベンジルグリコール化 4-アミノ-2-(4-ベンジルオキシ-3,3-ジメチルブタ-1-イニル)-5-フルオロアニリンの合成
【化66】
【0266】
ベンジルグリコール化 4-アンモニウム-2-ブロモ-5-フルオロ(flouro)アニリントシレート塩を、EtOAc (5 体積)および飽和 NaHCO3 溶液 (5 体積)中の固体の清澄な有機層が達成されるまでの撹拌により遊離塩基にした。結果として得られた層を分離し、有機層を飽和 NaHCO3 溶液 (5 体積) で、次いで塩水で洗浄し、減圧下で濃縮してベンジルグリコール化(glocolated) 4-アンモニウム-2-ブロモ-5-フルオロ(flouro)アニリントシレート塩を油として得た。
【0267】
次いで、フラスコにベンジルグリコール化 4-アンモニウム-2-ブロモ-5-フルオロ(flouro)アニリントシレート塩 (遊離塩基、1.0 当量)、Pd(OAc) (4.0 mol%)、dppb (6.0 mol%) および粉末化 K2CO3 (3.0 当量) を入れ、アセトニトリル (6 体積) を用いて室温で撹拌した。結果として得られた反応混合物をおよそ30 分間換気しながら(with vent) N2中で泡立てることにより脱気した。次いで、アセトニトリル (2 体積)に溶解した4-ベンジルオキシ-3,3-ジメチルブタ-1-イン (1.1 当量)を速い流れにて添加し、80℃に加熱し、4-アンモニウム-2-ブロモ-5-フルオロ(flouro)アニリントシレート塩の完全な消費が達成されるまで撹拌した。反応スラリーを室温に冷却し、セライトのパッドでろ過し、アセトニトリル (2 体積) で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、残渣をEtOAc (6 体積) に再溶解した。有機層をNH4Cl 溶液 (20% w/v、4 体積)および塩水 (6 体積)で2回洗浄した。結果として得られた有機層を濃縮し、褐色油を得、そのまま次の反応に用いた。
【0268】
N-ベンジルグリコール化-5-アミノ-2-(2-ベンジルオキシ-1,1-ジメチルエチル)-6-フルオロインドールの合成
【化67】
【0269】
ベンジルグリコール化 4-アミノ-2-(4-ベンジルオキシ-3,3-ジメチルブタ-1-イニル)-5-フルオロアニリンの粗油をアセトニトリル (6 体積) に溶解し、(MeCN)2PdCl2 (15 mol%)を室温で添加した。結果として得られた混合物をN2を用いて換気しながら(with vent)およそ 30 分間脱気した。次いで、反応混合物を80℃でN2 ブランケット(blanket)下で一晩撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、セライトのパッドでろ過し、ケーキをアセトニトリル (1 体積)で洗浄した。結果として得られた濾液を減圧下で濃縮し、EtOAc (5 体積)に再溶解した。Deloxane-II THP (N-ベンジルグリコール化-5-アミノ-2-(2-ベンジルオキシ-1,1-ジメチルエチル)-6-フルオロインドールの理論収率に基づいて5 重量%)を添加し、室温で一晩撹拌した。混合物を次いでシリカのパッド(2.5 インチ奥行、6 インチ径フィルター)でろ過し、EtOAc (4 体積) で洗浄した。濾液を濃縮して暗褐色残渣とし、そのまま次の反応に用いた。
【0270】
粗 N-ベンジルグリコール化-5-アミノ-2-(2-ベンジルオキシ-1,1-ジメチルエチル)-6-フルオロインドールの再精製:
【0271】
粗 N-ベンジルグリコール化-5-アミノ-2-(2-ベンジルオキシ-1,1-ジメチルエチル)-6-フルオロインドールをジクロロメタン (〜1.5 体積) に溶解し、シリカのパッドではじめに30% EtOAc/ヘプタンを用いてろ過し、ここで不純物を捨てた。次いでシリカパッドを50% EtOAc/ヘプタンで洗浄して、N-ベンジルグリコール化-5-アミノ-2-(2-ベンジルオキシ-1,1-ジメチルエチル)-6-フルオロインドールをかすかな色が濾液中に観察されるまで単離した。この濾液を減圧下で濃縮して褐色油を得、これは室温で静置しておくと結晶化した。1H NMR (400 MHz、DMSO) δ 7.38-7.34 (m、4 H)、7.32-7.23 (m、6 H)、7.21 (d、1 H、J = 12.8 Hz)、6.77 (d、1H、J = 9.0 Hz)、6.06 (s、1 H)、5.13 (d、1H、J = 4.9 Hz)、4.54 (s、2 H)、4.46 (br. s、2 H)、4.45 (s、2 H)、4.33 (d、1 H、J = 12.4 Hz)、4.09-4.04 (m、2 H)、3.63 (d、1H、J = 9.2 Hz)、3.56 (d、1H、J = 9.2 Hz)、3.49 (dd、1H、J = 9.8、4.4 Hz)、3.43 (dd、1H、J = 9.8、5.7 Hz)、1.40 (s、6 H)。
【0272】
N-ベンジルグリコール化(glycolated)-5-アミノ-2-(2-ベンジルオキシ-1,1-ジメチルエチル)-6-フルオロインドールの合成
方法 B
【化68】
【0273】
酢酸パラジウム (33 g、0.04 当量)、dppb (94 g、0.06 当量)、および炭酸カリウム (1.5 kg、3.0 当量)を反応器に入れる。遊離塩基とした油であるベンジルグリコール化(glocolated)4-アンモニウム-2-ブロモ-5-フルオロ(flouro)アニリン (1.5 kg、1.0 当量) をアセトニトリル (8.2 L、4.1 体積) に溶解し、次いで反応器に添加した。混合物に窒素ガスをNLT 1時間散布した。アセトニトリル中の4-ベンジルオキシ-3,3-ジメチルブタ-1-イン (70%、1.1 kg、1.05 当量) の溶液を混合物に添加し、次いで窒素ガスをNLT 1 時間散布した。混合物を80 ℃に加熱し、次いで一晩撹拌した。HPLC によるIPCを行い、反応を16時間後に完了するように決定する。混合物を環境温度に冷却し、次いでセライトのパッド (228 g) でろ過した。反応器およびセライトパッドをアセトニトリル (2 x 2 L、2 体積) で洗浄した。有機相を22 L ロータリーエバポレーターで8 L の溶媒が収集されるまで濃縮すると、7 L (3.5 体積) のアセトニトリル中に粗生成物が生じる。
【0274】
ビス-アセトニトリルジクロロパラジウム (144 g、0.15 当量) を反応器に入れた。粗溶液を反応器に移し戻し、ロータリー・エバポレーターバルブをアセトニトリル (4 L、2 体積) で洗浄した。合わせた溶液に窒素ガスをNLT 1時間散布した。反応混合物を80 ℃にNLT 16時間加熱した。HPLCによる処理中制御は出発物質の完全な消費を示す。反応混合物をセライト (300 g)でろ過した。反応器およびフィルターケーキをアセトニトリル (3 L、1.5 体積) で洗浄した。合わせた濾液をロータリーエバポレーションにより濃縮して油とした。油を酢酸エチル (8.8 L、4.4 体積) に溶解した。溶液を20% 塩化アンモニウム (5 L、2.5 体積)、次いで 5% 塩水 (5 L、2.5 体積) で洗浄した。シリカゲル (3.5 kg、1.8 重量当量)のシリカゲルを有機相に添加し、これを一晩撹拌した。 Deloxan THP II 金属スカベンジャー (358 g)およびヘプタン (17.6 L) を添加し、結果として得られた混合物をNLT 3時間撹拌した。混合物を焼結ガラス漏斗でろ過した。フィルターケーキをヘプタン (25 L)中の30% 酢酸エチルで洗浄した。合わせた濾液を減圧下で濃縮して、N-ベンジルグリコール化-5-アミノ-2-(2-ベンジルオキシ-1,1-ジメチルエチル)-6-フルオロインドールを褐色ペースト (1.4 kg)として得た。
【0275】
ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドの合成
【化69】
【0276】
1-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-シクロプロパンカルボン酸 (1.3 当量) をトルエン (1-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-シクロプロパンカルボン酸に基づいて、2.5 体積)中にスラリーにし(slurried)、混合物を60℃に加熱した。SOCl2 (1.7 当量)を添加漏斗を介して添加した。結果として得られた混合物を2 時間撹拌した。トルエンおよび過剰の SOCl2をロータリーエバポレーター(rotavop)を用いて留去した。さらなるトルエン (1-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-シクロプロパンカルボン酸に基づいて、2.5 体積) を添加し、再度蒸留した。粗酸塩化物をジクロロメタン (2 体積) に溶解し、添加漏斗を介して、ジクロロメタン (7 体積)中のN-ベンジルグリコール化-5-アミノ-2-(2-ベンジルオキシ-1,1-ジメチルエチル)-6-フルオロインドール (1.0 当量)、およびトリエチルアミン (2.0 当量)の混合物に0-3 ℃ (内部温度)を維持しながら添加した。結果として得られた混合物を0℃で4 時間撹拌し、次いで室温まで一晩昇温させた。蒸留水 (5 体積) を反応混合物に添加し、NLT 30 分間撹拌し、層を分離した。有機相を 20 重量% K2CO3 (4 体積 x 2) で洗浄し、次いで塩水洗浄し(4 体積)、濃縮して、粗ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドを粘調褐色油として得、これをさらにシリカパッド濾過を用いて精製した。
【0277】
シリカゲルパッド濾過: 粗ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドを酢酸エチル (3 体積) に活性炭 Darco-G (ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドの理論収率に基づいて、10重量%) の存在下で溶解し、室温で一晩撹拌した。この混合物に、ヘプタン (3 体積) を添加し、シリカゲルのパッド (粗ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドの2x 重量) でろ過した。シリカパッドを酢酸エチル/ヘプタン (1:1、6 体積) でまたはわずかな色が濾液中に検出されるまで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮して、ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドを粘調性赤褐色油として得、直接的に次の工程において使用した。
【0278】
再精製: ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドをジクロロメタン (ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドの理論収率に基づいて、1 体積) に再溶解し、シリカゲルパッド (粗 ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドの2x 重量)にロードした。シリカパッドをジクロロメタン (ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドの理論収率に基づいて、2 体積) で洗浄し、濾液を捨てた。シリカパッドを 30% 酢酸エチル/ヘプタン (5 体積) で洗浄し、濾液を減圧下で濃縮して、ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドを粘調性赤橙色油として得、直接的に次の工程において使用した。
【0279】
(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドの合成
【化70】
【0280】
方法 A
20 L オートクレーブを3回窒素ガスで流し、次いでパラジウム炭素(palladium on carbon) (Evonik E 101 NN/W、5% Pd、60% wet、200 g、0.075 mol、0.04 当量) を入れた。オートクレーブを次いで窒素で3回流した。THF (8 L、6 体積)中の粗ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミド (1.3 kg、~1.9 mol) の溶液をオートクレーブに吸引により添加した。容器にキャップをし、次いで 3回窒素ガスで流した。穏やかに撹拌しながら、容器を3回水素ガスで流し、窒素で希釈することにより大気に排出した。オートクレーブを水素で3 Barに加圧し、撹拌速度を800 rpmに上昇させた。迅速な水素取り込みが観察された (溶解)。いったん取り込みが鎮静したら、容器を50 ℃に加熱した。
【0281】
安全性目的のために、恒温装置を各作業日(work-day) の最後に止めた。容器を水素で4 Barに加圧し、次いで水素タンクから単離した。
【0282】
丸2日間の反応の後、さらなるPd / C (60 g、0.023 mol、0.01 当量) を混合物に添加した。これは窒素ガスで3回流すこと、次いで触媒を固体添加ポートから添加することによって行った。反応の再開を先のように行った。丸4 日後、反応を、出発物質だけでなくモノ-ベンジル化中間体に対応するピークもの消失により、HPLCにより完了したとみなした。
【0283】
反応混合物をセライトパッドでろ過した。容器およびフィルターケーキをTHF (2 L、1.5 体積) で洗浄した。セライトパッドを次いで水で湿らせ、ケーキを適切に捨てた。合わせた濾液およびTHF 洗浄液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、粗生成物を黒色油、1 kgとして得た。
【0284】
以下の精製における当量および体積は、1 kgの粗物質に基づく。粗黒色油を1:1 酢酸エチル-ヘプタンに溶解した。混合物を1:1 酢酸エチル-ヘプタンで飽和させておいたフリット(fritted) 漏斗中のシリカゲルのパッド (1.5 kg、1.5 重量当量)に入れた。シリカパッドをまず1:1 酢酸エチル-ヘプタン (6 L、6 体積)で流し次いで純粋な酢酸エチル (14 L、14 体積)で流した。溶出液を4 画分にて収集し、それをHPLCにより解析した。
【0285】
以下の精製における当量および体積は、0.6 kgの粗物質に基づく。画分 3 をロータリーエバポレーションにより濃縮し、褐色泡状物質 (600 g)を得、次いで MTBE (1.8 L、3 体積) に再溶解した。暗褐色溶液を環境温度で一晩撹拌し、その時間の間に、結晶化が起こった。ヘプタン (55 mL、0.1 体積) を添加し、混合物を一晩撹拌した。混合物をブフナー漏斗を用いてろ過し、フィルターケーキを3:1 MTBE-ヘプタン (900 mL、1.5 体積) で洗浄した。フィルターケーキを1時間風乾させ、次いで環境温度で16時間減圧乾燥させ、253 gの(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドをオフホワイトの固体として得た。
【0286】
以下の精製のための当量および体積は、1.4 kgの粗物質に基づく。上記シリカゲル濾過からの画分2 および 3ならびに先の反応からの物質を合わせて濃縮し、 1.4 kgの黒色油を得た。混合物を上記のシリカゲル濾過 (1.5 kgのシリカゲル、3.5 L、2.3 体積の1:1 酢酸エチル-ヘプタン、次いで、9 L、6 体積の純粋な酢酸エチルにより溶出)に再び供し、これを濃縮すると褐色泡状固体 (390 g)が得られた。
【0287】
以下の精製のための当量および体積は、390 gの粗物質に基づく。褐色固体はMTBEに不溶性であったので、メタノール (1.2 L、3 体積) に溶解した。ロングパス蒸留ヘッドを備えた4 L モートン反応器を用いて、混合物を蒸留して2 体積とした。MTBE (1.2 L、3 体積) を添加し、混合物を再び蒸留して2 体積とした。第二部分のMTBE (1.6 L、4 体積) を添加し、混合物を再び蒸留して2 体積とした。第三部分のMTBE (1.2 L、3 体積) を添加し、混合物を再び蒸留して3 体積とした。留出物のGCによる解析により、それは、〜6% メタノールからなることが明らかとなった。恒温装置を48 ℃ (MTBE-メタノール 共沸混合物の沸点である、52 ℃より低い) に設定した。混合物を2時間かけて20 ℃に冷却し、その時間の間に比較的速い結晶化が起こった。混合物を2時間撹拌した後、ヘプタン (20 mL、0.05 体積) を添加し、混合物を一晩(16時間)撹拌した。混合物をブフナー漏斗を用いてろ過し、フィルターケーキを3:1 MTBE-ヘプタン (800 mL、2 体積) で洗浄した。フィルターケーキを1時間風乾させ、次いで 環境温度で16時間減圧乾燥させ、130 gの(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドをオフホワイトの固体として得た。
【0288】
方法 B
ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドをTHF (3 体積) に溶解し、次いで 乾燥するまで除き(stripped to dryness)、あらゆる残留する溶媒を除去した。ベンジル保護 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドをTHF (4 体積) に再溶解し、5重量% Pd/C (2.5 mol%、60% wet、Degussa E5 E101 NN/W)を含有する水素化器に添加した。反応の内部温度を50℃に調整し、N2 (x5)、次いで、水素 (x3)で流した。水素化器圧力を3 Barの水素に調整し、混合物を迅速に撹拌した(>1100 rpm)。反応の最後に、触媒をセライトのパッドでろ過し、THF (1 体積) で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮して褐色泡状残渣を得た。結果として得られた残渣をMTBE (5 体積)および 0.5N HCl 溶液 (2 体積)に溶解し、蒸留水 (1 体積) を添加した。混合物をNLT 30 分間撹拌し、結果として得られた層を分離した。有機相を10重量% K2CO3 溶液 (2 体積 x2) で洗浄し、次いで塩水で洗浄した。有機層をシリカゲル (25 重量%)、Deloxan-THP II (5重量%、75% wet)、およびNa2SO4 を含有するフラスコに添加し、一晩撹拌した。結果として得られた混合物をセライトのパッドでろ過し、10%THF/MTBE (3 体積) で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮して、粗 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドを淡褐色泡状物質として得た。
【0289】
母液からの(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドの回収: 選択肢 A
【0290】
シリカゲルパッド濾過: 母液を減圧下で濃縮して褐色泡状物質を得、ジクロロメタン (2 体積) に溶解し、シリカのパッドでろ過した (3x 重量の粗 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミド)。シリカパッドを酢酸エチル/ヘプタン (1:1、13 体積) で洗浄し、濾液を捨てた。シリカパッドを10% THF/酢酸エチル (10 体積) で洗浄し、濾液を減圧下で濃縮し、(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドを淡褐色泡状物質として得た。上記結晶化手順の後、残りの(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドを単離した。
【0291】
母液からの(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドの回収:選択肢 B
【0292】
シリカゲルカラムクロマトグラフィー:シリカゲルでのクロマトグラフィー(50% 酢酸エチル/ヘキサンから100% 酢酸エチル)の後、所望の化合物を淡褐色泡状物質として単離した。上記結晶化手順の後、残りの(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドを単離した。
【0293】
(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドのさらなる再結晶
【0294】
固体 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミド (1.35 kg)をIPA (5.4 L、4 体積) に懸濁し、次いで82 ℃に加熱した。溶解が完了したら(目視)、ヘプタン (540 mL、0.4 体積) をゆっくりと添加した。混合物を58 ℃に冷却した。混合物を次いでゆっくりと51 ℃に冷却し、その時間の間に、結晶化が起こる。熱源を切り、再結晶混合物を自然に一晩冷却させた。混合物を卓上(benchtop) ブフナー漏斗を用いてろ過し、フィルターケーキをIPA (2.7 L、2 体積) で洗浄した。フィルターケーキを気流下で漏斗中で8時間乾燥させ 、次いで、減圧下で45-50 ℃で一晩オーブン-乾燥させて、1.02 kgの再結晶 (R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドを得た。LC/MS (M+1) 521.5. LC/RT (分) 1.69。1H NMR (400.0 MHz、CD3CN) d 7.69 (d、J = 7.7 Hz、1H)、7.44 (d、J = 1.6Hz、1H)、7.39 (dd、J = 1.7、8.3Hz、1H)、7.31 (s、1H)、7.27 (d、J = 8.3Hz、1H)、7.20 (d、J = 12.0 Hz、1H)、6.34 (s、1H)、4.32 (d、J = 6.8 Hz、2H)、4.15 - 4.09 (m、1H)、3.89 (dd、J = 6.0、11.5 Hz、1H)、3.63 - 3.52 (m、3H)、3.42 (d、J = 4.6 Hz、1H)、3.21 (dd、J = 6.2、7.2 Hz、1H)、3.04 (t、J = 5.8 Hz、1H)、1.59 (dd、J = 3.8、6.8 Hz、2H)、1.44 (s、3H)、1.33 (s、3H) および 1.18 (dd、J = 3.7、6.8 Hz、2H) ppm。
【0295】
(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドはまた、引用により本明細書に含めるUS 公開特許出願 US20090131492に開示されている、いくつかの合成経路の一つにより調製することもできる。
【0296】
1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-((4R)-8-フルオロ-2-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)-1,1-ジメチル-1,2,4,5-テトラヒドロ-[1,4]オキサゼピノ[4,5-α]インドール-9-イル)シクロプロパンカルボキサミドの合成
【化71】
【0297】
方法 A
(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミド (11.5 mmol、1 当量)をDCM (51 mL、8.5 体積) に懸濁した。デス・マーチン・ペルヨージナンの溶液(DCM中0.3 M、12.8 mmol、1.1 当量) を環境温度で添加した。混合物を反応がHPLCにより完了したとみなされるまで撹拌した。亜硫酸ナトリウムの5% 水溶液を添加し、混合物を 4時間まで撹拌した。相を分離し、次いで、有機相を1 N HCl、塩水で洗浄し、次いでロータリーエバポレーションにより濃縮した。残渣をクロマトグラフィーにより精製した。精製物質の収率は、7および15%の間であった。
【0298】
方法 B
(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミド (48.03 mmol、1 当量) を酢酸エチル (1.25 L、50 体積) に溶解し、加熱した。シリカ-支持(supported) 重クロム酸ピリジニウム (Si-PDC、48.03 mmol、1 当量) を撹拌熱溶液に入れた。反応をHPLCにより完了したとみなされるまで撹拌した。反応混合物をシリカゲルのパッドでろ過し、フィルターケーキを酢酸エチル (2 x 100 mL、2 x 4 体積) で洗浄した。母液をロータリーエバポレーションにより濃縮し、残渣をクロマトグラフィーにより精製した。精製物質の収率は13.5%であった。
【0299】
(R)-2-(5-(1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミド)-1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-1H-インドール-2-イル)-2-メチルプロパン酸の合成
【化72】
【0300】
3.62 gの1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-((4R)-8-フルオロ-2-ヒドロキシ4-(ヒドロキシメチル)-1,1-ジメチル-1,2,4,5-テトラヒドロ-[1,4]オキサゼピノ[4,5-α]インドール-9-イル)シクロプロパンカルボキサミドを、600 mLのトルエンとともに1 L フラスコに入れ、撹拌して溶解させた。14.5 g のセライト中のAg2CO3。不均一な懸濁液を90℃に加熱し、7 時間この温度で保持した。懸濁液を次いで環境温度まで自然に冷却させ、セライトでろ過した。セライトをHPLCにより生成物が出てこなくなるまで酢酸エチルで洗浄し、1.24 gの粗ラクトンを得た。
【0301】
粗ラクトンの精製を、フラッシュクロマトグラフィーにより行った。フラッシュカラムに22 gのシリカを添加した。35:65 (酢酸エチル-ヘキサン)を用いて、15-20 mL 画分を収集した。ラクトンが富化された(enriched) 画分を合わせることにより、860 mgの粗ラクトンを得た。860 mgの粗ラクトンを6 mLの酢酸エチルに溶解した。2N NaOHを一部ずつ添加し、一方、同時に加水分解の完了 (ラクトンの<5% が残存)についてHPLCをモニターした。加水分解の完了 (ラクトンの<5%が残存)には1.3 mLの 2N NaOHが必要とされた。水溶液(aq)のpH = 10-11。 pHを0.5 mLの2N HClの添加により、3-4へと下げた。二相性混合物を15 分間撹拌し、層を落ち着かせた。生成物を含有する有機層 (水層のHPLCは生成物を示さない) を3 mLのH2Oで洗浄し、無水 MgSO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して、435 mgの(R)-2-(5-(1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミド)-1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-1H-インドール-2-イル)-2-メチルプロパン酸を得た。LC/MS M+1 = 535.14。
【0302】
(R)-2-(5-(1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミド)-1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-1H-インドール-2-イル)-2-メチルプロパン酸の代替的合成
【化73】
【0303】
工程 1. 以下の調製:
【化74】
【0304】
(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミド (50 g、1.0 当量)をジクロロメタン (700 mL、14 体積) に懸濁し、次いで -10℃に冷却した。固体カルボニルジイミダゾール (CDI、34.2 g、2.2 当量) を添加した。反応をHPLCにより完了についてモニターした。水 (1 L、20 体積) を混合物に添加し、相を分離した。有機相をTHFへと溶媒交換し、総体積を500 mL (10 体積)に調整した。2 M HCl (400 mL、8 体積) をTHF 溶液に添加した。混合物を HPLCによりすべてのピークが合わさって単一ピークとなるまで(およそ 4時間) 撹拌した。トルエン (700 mL、14 体積) を混合物に添加し、相分離を起こらせた。有機相を水 (400 mL、8 体積) で洗浄した。有機相を減圧下で濃縮して、明褐色泡状物質とした。泡状物質を酢酸イソプロピル (IPA、700 mL、14 体積) に懸濁し、80℃に加熱した。 n-ヘプタン (236 mL、4.7 体積) を75℃より高い温度を維持する速度で添加した。混合物を1時間あたり10-15℃の速度で20℃に冷却した。結晶化がおよそ 65℃で起こった。混合物を次いでろ過した。固体を 1:1 IPA-ヘプタン (120 mL、2.4 体積) で洗浄し、55℃で6 時間減圧乾燥させた。
【0305】
工程 2. 以下の調製:
【化75】
【0306】
工程 1からの生成物をジクロロメタン (110 mL 20 体積) に溶解し、次いで 10℃に冷却した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン (7.0 mL、4 当量) を混合物に添加した。 DMSO (11 mL、2 体積)中のSO3ピリジン錯体 (3.3 g、2 当量)の溶液を次いで、0-10℃の間の内部反応温度を維持する速度で、20 分間の期間をかけて添加した。反応がHPLC 解析に基づいて完了したら、水 (55 mL、10 体積) を混合物に0-10℃の間の内部温度を維持する速度で添加した。いくらかのガス放出が観察された。反応混合物を次いで25℃まで昇温させた。相を分離し、有機相を 1 M HCl (220 mL、40 体積)、次いで、NaHCO3 (220 mL、40 体積) で洗浄した。混合物を減圧下で濃縮して、白色泡状物質を得、これをさらに精製せずに使用した。
【0307】
代替的手順において、工程 1からの生成物(43.5 g、79.1 mmol) をトルエン (305 mL、7 体積) に溶解した。溶液を濃縮して残留する IPAを除去した。残留する固体を次いでジクロロメタン (305 mL、7 体積) に溶解した。2-メチル-2-ブテン (11.2 g、159 mmol、2.0 当量)、2,4,6-コリジン (19.3 g、159 mmol、2.0 当量)およびPhSNH-t-Bu (2.9 g、16 mmol、0.20 当量) を添加した。混合物を-5 - 0℃に冷却した。N-クロロスクシンイミド (11.9 g、89 mmol、1.12 当量) を内部温度を2℃未満に維持して、0.5 - 1 g 部分ずつ添加した。いったん反応が完了したら、水性 HCl (2 M、151 mL、3.5 体積) を混合物に添加した。混合物を0.5時間撹拌しつつ、環境温度へと昇温させた。撹拌を停止させ、相を分離した。有機相を5% Na2SO3 (200 mL、4.6 体積)、次いで、水 (200 mL、4.6 体積) で洗浄した。有機相を次いで濃縮してオレンジ色油とし、これをイソプロパノール (270 mL、6.2 体積)に取った(taken up in)。混合物を71℃に加熱して油を溶解し、次いで、およそ 10℃ /時間の速度で40℃に、次いで5℃ /時間の速度で25℃に冷却した。混合物をブフナー漏斗を用いてろ過した。ウェットケーキをイソプロパノール (131 mL、3 体積) で洗浄した。固体生成物を65℃で一晩減圧乾燥させた。
【0308】
工程 3. 以下の調製:
【化76】
【0309】
工程 2からのアルデヒドをアセトン (20 体積) に溶解し、混合物を0℃に冷却した。過マンガン酸ナトリウム (NaMnO4、水中40% 溶液、1.1 当量) をゆっくりと添加した。反応の進行をHPLCによりモニターした。HPLC 解析に基づいて反応が完了したら、水 (10 体積) をゆっくりと添加したところ、固体が溶液から沈殿した。混合物をろ過した。固体をアセトンで洗浄した。合わせたアセトン層を濃縮して生成物をオレンジ色泡状物質としてのナトリウム 塩として得た。
【0310】
代替的手順において、工程 2からのアルデヒド (35 g、64.3 mmol) をアセトン (210 mL、6 体積) に溶解した。混合物を濃縮して残留する IPAを除去した。残留する泡状物質をアセトン (350 mL、10 体積) に溶解し、結果として得られた溶液を-5 - 0℃に冷却した。NaMnO4 (40 重量%、d = 1.391 g / mL、17.22 mL、1.05 当量) を、混合物を5℃未満の温度に維持しつつ10 の等しい部分にわけて添加した。反応混合物をHPLC による完了まで(およそ 30 分間) 撹拌した。水 (350 mL、10 体積)、次いで、セライトを温度を制御しながら混合物にゆっくりと添加した。混合物を0℃で1時間撹拌し、次いでセライトでろ過した。褐色 MnO2 ウェットケーキを 1:1 アセトン-水 (150 mL、4.3 体積) で洗浄した。アセトンを合わせた濾液から蒸留により除去した。NaCl (およそ 17.5 g、0.5 重量当量) を水相 (およそ水中5 重量%) に添加した。水相を2-メチルテトラヒドロフラン (350 mL、10 体積) で抽出した。有機相を懸濁液が観察されるまで、2-メチルテトラヒドロフランを用いて共沸乾燥させた(azeotroped dry)。混合物を濃縮して粗オレンジ色油を得、これをエタノール (350 mL、10 体積) に懸濁し、次いで1時間撹拌した。その後、混合物をセライトのパッドでろ過した。ケーキをエタノール (70 mL、2 体積) で洗浄した。溶媒をアセトニトリルに交換し、その時間の間に、結晶化が起こった。混合物をブフナー漏斗を用いてろ過した。生成物である、白色固体をアセトニトリル (70 mL、2 体積) で洗浄し、55℃で一晩減圧乾燥させた。
【0311】
工程 4. (R)-2-(5-(1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミド)-1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-1H-インドール-2-イル)-2-メチルプロパン酸の調製
【化77】
【0312】
工程 3の生成物(5 g、8.6 mmol) をメタノール (200 mL) に溶解し、炭酸ナトリウム (Na2CO3、15 g、17 当量) を添加した。混合物を反応がHPLCにより観察して完了するまで、通常およそ 24時間撹拌した。反応混合物をブフナー漏斗を用いてろ過した。溶媒を水に交換し、体積を50 mL (10 体積)に調整した。アセトニトリル (50 mL、10 体積) を添加した。混合物中の水をゆっくりと35℃での減圧蒸留により共沸除去させた(azeotroped out)。アセトニトリルを固体物質が沈殿し始めるまでスチル・ポット(still pot)中で連続して置換した。沈殿をブフナー漏斗を用いてろ過した。濾過を生成物がHPLCにより純粋となるまで繰り返した。混合物を濃縮して明褐色泡状物質を得た。固体物質をIPAに懸濁し、次いで60℃に2 時間加熱した。懸濁液を25℃に再冷却し、次いで1 時間撹拌した。混合物をブフナー漏斗を用いてろ過し、ケーキをIPA (10 mL、2 体積) で洗浄した。固体を60℃で少なくとも 24 時間、あるいはIPA含量が1H-NMR 解析により0.5 重量パーセント未満となるまで、減圧乾燥させた。
【0313】
代替的手順において、工程 3の生成物のNa 塩(17.5 g、28 mmol、1.0 当量) をメタノール (105 mL、6 体積) に溶解し、無水(ahydrous)炭酸ナトリウム (15.1 g、142 mmol、5 当量) を添加した。反応混合物をセライトのパッドでろ過した。フィルターケーキをメタノール (35 mL、2 体積) で洗浄した。混合物を濃縮して最終質量を63 gとした。アセトニトリル (53 mL、3 体積) を混合物に添加した。濁った溶液をブフナー漏斗を用いてろ過し、清澄溶液を得た。混合物を蒸留して体積を半分にした。アセトニトリル (70 mL、4 体積) をゆっくりと混合物に添加し-生成物がおよそ 5 分間以内に結晶化した。最後の二工程は必要とされる場合、さらに 1-2回繰り返してもよい。混合物を次いで2時間以上撹拌した。白色スラリーをブフナー漏斗を用いてろ過した。フィルターケーキをアセトニトリル (35 mL、2 体積) で洗浄した。固体生成物である、ナトリウム塩を、55℃で一晩減圧乾燥させた。
【0314】
以下の表1は、 1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-((4R)-8-フルオロ-2-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)-1,1-ジメチル-1,2,4,5-テトラヒドロ-[1,4]オキサゼピノ[4,5-α]インドール-9-イル)シクロプロパンカルボキサミドについての分析データを記載する。
【0315】
表1
【表1】
【0316】
化合物のΔF508-CFTR 修正特性を検出および測定するためのアッセイ
化合物のΔF508-CFTR 調節特性をアッセイするための膜電位光学的方法。
アッセイは、NIH 3T3 細胞における機能的 ΔF508-CFTR の上昇についての読み取りとして、蛍光プレートリーダー (例えば、FLIPR III, Molecular Devices, Inc.)を用いて膜電位における変化を測定するために蛍光電位検知色素を利用する。応答のための駆動力は、細胞が以前に化合物により処理された後、引き続き、電位検知色素を添加される、単一液体添加工程によるチャンネル活性化と併せてのクロライドイオン勾配の生成である。
【0317】
修正(Correction)化合物の同定
ΔF508-CFTRに関連する輸送欠陥を修正する小分子を同定するために;単一-添加 HTS アッセイ型式を開発した。細胞を含有するアッセイプレートを組織培養インキュベーターで37℃、5%CO2、90% 湿度で〜2-4 時間インキュベートする。細胞は次いでアッセイプレートの底面に接着後、化合物曝露についての準備ができる。
【0318】
細胞を組織培養インキュベーターで37℃、5%CO2、90% 湿度で被験化合物の存在下または非存在下で (ネガティブコントロール) 16-24 時間無血清培地中でインキュベートした。細胞を引き続いて3Xクレブス・リンゲル液ですすぎ、電位検知再分布色素を添加した。ΔF508-CFTRを活性化するために、10 μM フォルスコリンおよびCFTR 増強剤である、ゲニステイン (20 μM)をCl--非含有培地とともに各ウェルに添加した。Cl--非含有培地の添加は、ΔF508-CFTR 活性化に応答してCl- 流出を促進し、結果として得られた膜脱分極を光学的に電位センサー色素を用いてモニターした。
【0319】
増強剤(Potentiator)化合物の同定
ΔF508-CFTRの増強剤を同定するために、二重-添加 HTS アッセイ型式を開発した。このHTS アッセイは、温度-修正(corrected) ΔF508 CFTR NIH 3T3 細胞におけるΔF508 CFTR の開閉(コンダクタンス)の上昇についての測定値としてFLIPR III 上の膜電位の変化を測定するために蛍光電位検知色素を利用する。応答のための駆動力は、細胞が以前に増強剤化合物(またはDMSO 媒体コントロール)により処理された後、引き続き再分布色素を添加される、蛍光プレートリーダー、例えば、FLIPR IIIを用いる単一液体添加工程におけるフォルスコリンによるチャンネル活性化と併せてのCl- イオン勾配である。
溶液:
バス溶液 #1: (mMにおける) NaCl 160、KCl 4.5、CaCl2 2、MgCl2 1、HEPES 10、pH 7.4 、NaOH含有。
クロライド-非含有バス溶液: バス溶液 #1におけるクロライド塩がグルコン酸塩により置換されている。
【0320】
細胞培養
ΔF508-CFTRを安定に発現するNIH3T3 マウス線維芽細胞が膜電位の光学的測定のために使用される。細胞を37℃、5% CO2および90 % 湿度にて、175 cm2 培養フラスコ中、2 mM グルタミン、10 % ウシ胎仔血清、1 X NEAA、β-ME、1 X ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)、および25 mM HEPESを追加したダルベッコ変法イーグル培地に維持する。すべての光学的アッセイのために、384-ウェルのマトリゲル-コーティングプレート中に〜20,000/ウェルにて細胞を播種し、2 時間37℃で培養した後、増強剤アッセイのために、27 ℃で24 時間培養した。修正アッセイのためには、細胞を27 ℃ または37 ℃で化合物有および無で16 - 24 時間培養する。化合物のΔF508-CFTR 調節特性をアッセイするための電気生理学的アッセイである。
【0321】
1.ウッシングチャンバーアッセイ
ウッシングチャンバー実験をΔF508-CFTRを発現する極性気道上皮細胞にて行ってさらに光学的アッセイにて同定したΔF508-CFTR 修飾因子を特徴づけた。非-( Non-)CFおよびCF 気道上皮を気管支組織から単離し、以前に記載されているようにして培養し (Galietta, L.J.V., Lantero, S., Gazzolo, A., Sacco, O., Romano, L., Rossi, G.A., & Zegarra-Moran, O. (1998) In Vitro Cell. Dev. Biol. 34, 478-481)、NIH3T3-条件培地でプレコーティングされたCostar(登録商標) Snapwell(商標)フィルターに蒔いた。4日間後、頂端側培地を除去し、細胞を気液界面にて>14 日間使用前に培養した。この結果、線毛性の完全に分化した円柱状細胞の単層が生じ、これは気道上皮に特徴的な特色である。非-CF HBEをいかなる既知の肺疾患も有さない非喫煙者から単離した。CF-HBE をΔF508-CFTRについてホモ接合性の患者から単離した。
【0322】
Costar(登録商標) Snapwell(商標) 細胞培養挿入断片(insert)上で培養したHBEをウッシングチャンバー (Physiologic Instruments、Inc.、San Diego、CA)に乗せ基底外側から頂端側へのCl- 勾配 (ISC) の存在下で経上皮抵抗性および短絡回路電流を電位固定系 (Department of Bioengineering、University of Iowa、IA)を用いて測定した。簡単に説明すると、HBEを電位固定記録条件(Vhold = 0 mV) 下で37℃で調べた。基底外側溶液は、(mMにおいて) 145 NaCl、0.83 K2HPO4、3.3 KH2PO4、1.2 MgCl2、1.2 CaCl2、10 グルコース、10 HEPES (NaOH によりpHは 7.35に調整した)を含有しており、頂端側溶液は、(mMにおいて) 145 Naグルコン酸塩、1.2 MgCl2、1.2 CaCl2、10 グルコース、10 HEPES (NaOH によりpHは 7.35に調整した)を含有していた。
【0323】
修正(Correction)化合物の同定
典型的なプロトコールは、基底外側から頂端膜へのCl- 濃度勾配を利用した。この勾配を設定するために、正常リンゲルを側底膜上に使用し、一方、頂端側 NaClを等モルのグルコン酸ナトリウムにより置換し (NaOHを用いてpH 7.4に滴定)、上皮を横切る大きなCl- 濃度勾配を作った。すべての実験はインタクトな単層を用いて行った。ΔF508-CFTRを完全に活性化するために、フォルスコリン (10 μM)、PDE 阻害剤、IBMX (100 μM) およびCFTR 増強剤、ゲニステイン (50 μM) を頂端側に添加した。
【0324】
その他の細胞型において観察されるように、ΔF508-CFTRを発現する疾患 CF 患者 (CF-HBE) から単離したFRT 細胞およびヒト気管支上皮細胞の低温でのインキュベーションは、細胞膜におけるCFTRの機能的密度を上昇させる。修正化合物の活性を決定するために、細胞を被験化合物とともに24-48 時間37℃でインキュベートし、引き続いて記録の前に3X洗浄した。化合物-処理細胞におけるcAMP- およびゲニステイン-媒介 ISC を37℃コントロールに対して正規化し、野生型-HBEにおけるCFTR 活性のパーセンテージ活性として表した。細胞の修正化合物とのプレインキュベーションは、cAMP- およびゲニステイン-媒介 ISC を37℃コントロールと比較して有意に上昇させた。
【0325】
増強剤(Petentiator)化合物の同定
典型的なプロトコールは、基底外側から頂端膜への Cl- 濃度勾配を利用した。この勾配を設定するために、正常リンゲルを側底膜上で使用し、一方、頂端側 NaClを等モルのグルコン酸ナトリウムにより置換し(NaOHを用いてpH 7.4に滴定)、上皮を横切る大きなCl- 濃度勾配を作った。フォルスコリン (10 μM)およびすべての被験化合物を細胞培養挿入断片の頂端側に添加した。推定 ΔF508-CFTR 増強剤の有効性を、公知の増強剤、ゲニステインのものと比較した。
【0326】
2. パッチクランプ記録
ΔF508-NIH3T3 細胞における総Cl- 電流を以前に記載されているようにして穿孔-パッチ記録配置を用いてモニターした(Rae, J., Cooper, K., Gates, P., & Watsky, M. (1991) J. Neurosci. Methods 37, 15-26)。電位固定記録を22℃でAxopatch 200B パッチクランプ増幅器 (Axon Instruments Inc.、Foster City、CA)を用いて行った。ピペット液は、(mMにおいて) 150 N-メチル-D-グルカミン (NMDG)-Cl、2 MgCl2、2 CaCl2、10 EGTA、10 HEPES、および240 μg/ml アンホテリシン-B (HClによりpHは7.35に調整)を含有していた。細胞外培地は、(mMにおいて) 150 NMDG-Cl、2 MgCl2、2 CaCl2、10 HEPES (HClによりpHは7.35に調整)を含有していた。パルス発生、データ収集、および解析は、Clampex 8 (Axon Instruments Inc.) と併せてDigidata 1320 A/D インターフェースを備えたPCを用いて行った。ΔF508-CFTRを活性化するために、10μM フォルスコリンおよび20 μM ゲニステインをバスに添加し、電流電圧関係を30秒ごとにモニターした。
【0327】
修正(Correction)化合物の同定
細胞膜における機能的 ΔF508-CFTRの密度を上昇させる修正化合物の活性を決定するために、本発明者らは、上記の穿孔-パッチ-記録技術を使用して、修正化合物による24-時間処理の後に電流密度を測定した。ΔF508-CFTRを完全に活性化するために、10 μM フォルスコリンおよび20μM ゲニステインを細胞に添加した。本発明者らの記録条件の下で、27℃での24-時間インキュベーションの後の電流密度は、37 ℃での24-時間インキュベーションの後に観察されたものよりも高かった。これらの結果は、細胞膜におけるΔF508-CFTRの密度に対する低温インキュベーションの公知の効果と一致する。CFTR電流密度に対する修正化合物の効果を決定するために、細胞を10 μM の被験化合物とともに24 時間37℃でインキュベートし、電流密度を27℃および37℃ コントロールと比較した(% 活性)。記録の前に、細胞を細胞外記録培地で3X洗浄してあらゆる残存する被験化合物を除去した。10 μMの修正化合物とのプレインキュベーションは、37℃ コントロールと比較して有意にcAMP-およびゲニステイン-依存電流を上昇させた。
【0328】
増強剤(Potentiator)化合物の同定
ΔF508-CFTR 増強剤がΔF508-CFTRを安定に発現するNIH3T3 細胞における巨視的 ΔF508-CFTR Cl- 電流 (IΔF508)を上昇させる能力をまた、穿孔-パッチ-記録技術を用いて研究した。光学的アッセイから同定した増強剤は光学的アッセイにおいて観察されたものと同様の効力および有効性にてIΔF508の用量依存的上昇を惹起した。調べたすべての細胞において、増強剤適用の前およびその間の逆転電位は 約 -30 mVであり、これは計算 ECl (-28 mV)である。
【0329】
細胞培養
ΔF508-CFTR を安定に発現するNIH3T3 マウス線維芽細胞をホールセル記録のために使用する。細胞は、175 cm2 培養フラスコ中 37℃、5% CO2 および90 % 湿度で2 mM グルタミン、10 % ウシ胎仔血清、1 X NEAA、β-ME、1 X ペニシリン/ストレプトマイシン、および 25 mM HEPES を追加したダルベッコ変法イーグル培地に維持する。ホールセル記録のために、2,500 - 5,000 細胞をポリ-L-リジン-コーティングしたガラスカバーガラスに播種し、増強剤の活性を試験するために使用する前に24 - 48 時間27 ℃で培養し;修正化合物有または無で37 ℃でインキュベートして、修正剤の活性を測定した。
【0330】
3.単一チャンネル記録
NIH3T3 細胞にて発現している野生型-CFTR および温度-修正 ΔF508-CFTRの開閉活性を、以前に記載されているようにして切除されたインサイドアウト膜パッチ記録を用いて (Dalemans, W., Barbry, P., Champigny, G., Jallat, S., Dott, K., Dreyer, D., Crystal, R.G., Pavirani, A., Lecocq, J-P., Lazdunski, M. (1991) Nature 354, 526 - 528)、Axopatch 200B パッチクランプ増幅器 (Axon Instruments Inc.)を用いて観察した。ピペットは、(mMにて): 150 NMDG、150 アスパラギン酸、5 CaCl2、2 MgCl2、および10 HEPES (トリス塩基によりpHは7.35に調整)を含有していた。バスは、(mMにて): 150 NMDG-Cl、2 MgCl2、5 EGTA、10 TES、および14 トリス塩基 (HClによりpH は7.35に調整)を含有していた。切除後、野生型-およびΔF508-CFTRの両方を1 mM Mg-ATP、75 nMのcAMP依存性プロテインキナーゼの触媒サブユニット (PKA; Promega Corp. Madison, WI)を添加することにより活性化し、および10 mM NaFを添加してタンパク質ホスファターゼを阻害し、これにより電流ランダウンを阻止した。ピペット電位を80 mVに維持した。チャンネル活性を、 ≦ 2の活性のチャンネルを含有する膜パッチから解析した。同時開口の最大数により、実験の過程の間に活性のチャンネルの数を決定した。単一チャンネル電流振幅を決定するために、120秒のΔF508-CFTR 活性から記録したデータを100 Hzにて「オフライン」フィルターをかけ、次いで全-ポイント振幅ヒストグラムを構築するために使用し、これはBio-Patch Analysis ソフトウエア (Bio-Logic Comp. France)を用いて多重ガウス関数(multigaussian function)と適合させた。総顕微鏡的電流および開確率 (Po)を 120 秒のチャンネル活性から決定した。Po は、Bio- Patch ソフトウエアを用いるか、または関係 Po = I/i(N)から決定し、ここで、I =平均電流、i = 単一チャンネル電流振幅、およびN = パッチにおける活性のチャンネルの数である。
【0331】
細胞培養
ΔF508-CFTRを安定に発現するNIH3T3 マウス線維芽細胞を切除(excised)-膜 パッチクランプ記録のために使用する。細胞は175 cm2 培養フラスコ中、37℃ で5% CO2および90 % 湿度にて2 mM グルタミン、10 % ウシ胎仔血清、1 X NEAA、β-ME、1 X ペニシリン/ストレプトマイシン、および25 mM HEPESを追加したダルベッコ変法イーグル培地に維持する。単一チャンネル記録のために、2,500 - 5,000 細胞をポリ-L-リジン-コーティングしたガラスカバーガラスに播種し、使用前に24 - 48 時間27 ℃で培養した。
【0332】
表 2において、以下の意味を適用する:
EC50:「+++」は、<2 uMを意味し; 「++」は、2 uMから5 uMの間を意味し; 「+」は、5 uMから25 uMの間を意味する。
% 有効性: 「+」は、< 25%を意味し; 「++」は、25%および100%の間を意味し; 「+++」は、> 100%を意味する。
【0333】
表 2
【表2】
【0334】
その他の態様
本発明をその詳細な説明と併せて記載してきたが、上記の記載はまったく例証するためのものであり、添付の請求項の範囲によって規定される、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。その他の側面、利点、および改変は、以下の請求項の範囲内である。