特許第6072067号(P6072067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許60720672−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド、その製造方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072067
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド、その製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/38 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   C07D317/38
【請求項の数】18
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-547794(P2014-547794)
(86)(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公表番号】特表2015-502374(P2015-502374A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】EP2012072589
(87)【国際公開番号】WO2013092011
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年11月11日
(31)【優先権主張番号】11195272.7
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503343336
【氏名又は名称】コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ハイモ ヴェルフレ
(72)【発明者】
【氏名】ブアクハート ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン ケーラー
(72)【発明者】
【氏名】ゾフィー プツィエン
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−527605(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02397474(EP,A1)
【文献】 Lewis M. D. et al.,Synthesis of L-660,631 methyl ester and related compounds,Tetrahedron Letters,1988年,29(19),2279-2282
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドであって、
【化1】
式中、RおよびRは、それぞれ互いに独立して水素、直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の炭素数1から12のアルキル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数6から12のアラルキル基および炭素数6から12のアルカリール基から選ばれるか、もしくはそれらが結合する窒素原子と共に5員から8員環を形成し、Rは水素および直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の炭素数1から12のアルキル基から選ばれるか、または、
およびRはそれぞれ水素であり、Rはn価の遊離基であり、nは1より大きい整数であり、該基は更にn−1個の一般式(II)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド基により置換されていることを特徴とする、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド。
【化2】
【請求項2】
およびRがそれぞれ水素であり、Rがメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、2−エチル−n−ヘキシル、n−ラウリル、シクロヘキシル、フェニルおよびベンジルから選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド。
【請求項3】
nが2から5である、請求項1に記載の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド。
【請求項4】
nが2から3である、請求項1に記載の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド。
【請求項5】
が直鎖状または分枝鎖状の炭素数2から22のアルキレン基、一般式−(AO)−(式中、Aは炭素数2から5のアルキレンであり、mは1から100である)で表されるポリエーテル基、ポリカーボネート基、ポリエステル基、ポリ(メタ)アクリレート基およびそれらの組み合わせから選ばれる、請求項3または4に記載の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドを製造する方法であって、式(III)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸
【化3】
を式R−NH−R(式中、R、RおよびRは上記の意味を有する)で表されるアミンと反応させることを特徴とする方法。
【請求項7】
脱水剤の存在下で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式(III)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸
【化4】
を、式R−NCO(式中、RおよびRは上記の意味を有する)で表されるイソシアネートと反応させることを特徴とする、Rが水素である、請求項1から5のいずれか一項に記載の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドを製造する方法。
【請求項9】
イソシアネートが、モノイソシアネートまたはn個のNCO基(nは上記の意味を有する)を有するポリイソシアネートである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
反応を、第3級アミン、有機金属化合物およびそれらの混合物から選ばれる触媒の存在下で行う、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
式(V)で表されるグリセロールカーボネート
【化5】
(式中、R水素および直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の炭素数1から12のアルキル基から選ばれる
を酸化して、式(III)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸を製造する、請求項6または8に記載の方法。
【請求項12】
酸化が、1,3,5−トリクロロイソシアヌル酸および2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のn−オキシドとの組み合わせを用いて行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
酸化が、好気性酸化として行われる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
ヒドロキシウレタンの製造のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドの使用。
【請求項15】
ヒドロキシカーボネートの製造のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドの使用。
【請求項16】
ヒドロキシスルファニルホルメートの製造のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドの使用。
【請求項17】
高分子のヒドロキシウレタン、ヒドロキシカーボネートおよび/またはヒドロキシスルファニルホルメートの製造のための、請求項14から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
アミンをブロックするための末端基としての、請求項1または2に記載の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド
【化1】
(式中、Rは、特に、n価の遊離基であり(n>1)、該基は更にn−1個の一般式(II)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド基により置換される)
【化2】
該2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドの製造方法、該方法に適した出発物質である式(III)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸の製造方法
【化3】
および(ポリ)ヒドロキシウレタン、(ポリ)ヒドロキシカーボネートおよび(ポリ)ヒドロキシスルファニルホルメートの製造のための、および更にアミンをブロックするための末端基としての当該2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドの使用に関する。
【0002】
構造的に類似した化合物は、従来技術において既に公知である。例えば、WO2004/003001A1号は一般式(VI)の化合物を記載している。
【0003】
【化4】
(式中、RおよびRはそれぞれ互いに独立した基であってよく、R+R=Oであるか、またはCR+Rは3員から6員のシクロアルキル基であってよい。Rは水素、直鎖状または分枝鎖状の炭素数1から8のアルキル、炭素数5から12のシクロアルキルまたは炭素数6から15のアリールであってよい。Rは直鎖状または分枝鎖状の、炭素数1から8のアルキルまたは炭素数6から15のアリールであってよい。)
WO2004/003001A1号は、一般的に、タイプ(VI)のエナンチオマーの酵素によるラセミ体分割を記載しているが、これらの化合物の合成については示していない。
【0004】
EP1941946A1号は、特に、特定のジ置換された有機カーボネートの製造のためのカーボニトリド触媒の使用について記載している。これらは一般式(VII)で表される化合物であっても良い。
【0005】
【化5】
(式中、R10およびR11は相互に独立して選択された、任意の置換基である。)
それらの置換基が意味し得るのは、アルキル、アリール、ヘテロアリールおよびエステル基COA(式中、Aも同様にアルキルまたはアリールであり、例えば、直鎖状または分枝鎖状の炭素数1から6のアルキル、好ましくは炭素数1から3のアルキル、そして特に好ましくはメチルまたはエチルであってよい)である。しかし、2−オキソ−1,3−ジオキソラン系の合成については述べられていない。
【0006】
JP2006−003433A号は、一般式(VIII)で表される化合物を含有する、液晶表示素子用封止剤組成物を開示している。
【0007】
【化6】
(式中、Rは水素、水酸基、シアノ基、カルボン酸基、任意に置換された芳香環、直鎖状、分枝鎖状または環状アルキル基、アシル基またはエステル基を表す。)
2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(R=COOH)も言及されている。
【0008】
EP0001088A1号は、特に一般式(IX)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソランを記載している。
【化7】
(式中、Rは水素またはCHであってよい。)
EP2397474A1号は、式(X)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸エステル
【化8】
(式中、Rは、好ましくはMeまたはEt、または更に最大n−1個の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシル基で置換されても良いn価の遊離基であってもよい)、
対応するエポキシ化合物のカルボキシル化によるそれらの製造方法、それらのエステル交換反応の方法、そして更にヒドロキシウレタン製造のための、およびアミンをブロックするための末端基としてのそれらの使用について記載している。
【0009】
US2010/0317838A1号は、式(XI)で表される化合物を記載している。
【0010】
【化9】
(式中、Z=Oであり、n=0である。遊離基W1およびW1aのうち、少なくとも一つは保護されたグリコシドを含有し、遊離基W1およびW1aのそれぞれは、互いに独立して、特にアミド基であってもよい。)
本願発明との差異は、本願発明には、保護されたグリコシド基が規定されていない点である。
【0011】
ポリイソシアネート系ポリウレタンは従来技術に属する。これらは、例えば、接着剤、封止材、注型用組成物として、防食のために、またはコーティングに使用される。このようにして得られた硬化した組成物が呈する、酸、アルカリおよび化学薬品に対する高い抵抗性は有利である。しかし、モノマー性低分子量(ポリ)イソシアネート化合物は、特にそれが揮発または拡散しやすい場合、毒性の点で許容できない。
【0012】
ポリウレタン系はまた、毒性の点で許容される環状カーボネート化合物から出発して得ることもできる。よって、たとえば、グリセロールカーボネート(4−(ヒドロキシメチル)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン)は化粧品に常用される。
【0013】
環状カーボネート化合物はアミンとの反応で開環し、それにより、特にヒドロキシウレタンが得られる(下記図式を参照)。
【0014】
【化10】
【0015】
グリセロールカーボネート系の欠点は、レギオ選択性が低く、そのため、反応経路A、BおよびCを辿ることになる点、該系の室温における反応性が比較的低い点、および開環比率を引き上げる触媒が、また明らかに逆反応をも促進し、該逆反応が、既に形成された生成物の部分的な分解を引き起こし得る点である。
【0016】
上記EP2397474A1号において、これらの問題は、Rにおけるエーテル基の代わりにエステル基を用いることにより、部分的に解決されている。この電子吸引基は反応速度の著しい上昇を引き起こし、反応経路Aが選択される。形成された第二のヒドロキシウレタン[I]の場合、逆反応は観察されなかった。しかしながら、2個またはそれ以上の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシル基を分子中に含有するバインダーの製造は困難である。なぜなら、該製造はエステル交換を介して行われ、その間、シクロカーボネート環もまた攻撃され得るからである。
【0017】
上記US2010/0317838A1号からは、この開環反応がRの性質に依存しない印象を受ける。(US2010/0317838A1号、請求項17を参照。該請求項は、同様にエステル基またはアミド基を含んでもよい請求項1に記載の化合物の開環に関する。)しかし、この印象は、甚だ紛らわしいものである。
【0018】
第一に、いくつかの研究によると(H.Tomita、F.Sanda、T.Endo、Journal of Polymer Science:Part A: Polymer Chemistry、Vol.39、3678−3685(2001)を参照)、4位をR基で置換した2−オキソ−1,3−ジオキソランの、アミンとの反応性は、以下の順に上昇する:R=Me<R=H<R=Ph<R=CHOPh<<R=CF
【0019】
第二に、ポリマー主鎖がエステル結合により結合している、つまり、下記の図式においてRがポリマー主鎖を表す、上記EP2397474A1号の生成物の場合、開環(硬化)反応は、エステル結合のアミノ分解をある程度伴い、そのアミノ分解により、不活性アルコールの形で主鎖が分離される。
【0020】
【化11】
【0021】
本願発明の目的は、上記した従来技術の欠点のうち、少なくともいくつかを実質的に回避することであった。一般的に言えば、本願発明の目的は、従来の技術に代わる、電子吸引基を有する2−オキソ−1,3−ジオキソラン系を提供することであった。特に、本願発明の目的は、毒性の点で許容され、容易に入手可能であり、アミン硬化剤との高い反応性を有し、更に(アミンによる攻撃をより受けにくいポリマー鎖への結合を有する)架橋性バインダーとして適する2−オキソ−1,3−ジオキソラン系を提供することであった。
【0022】
この目的は、独立請求項に記載した発明の構成により達成された。従属請求項は好ましい実施形態に関する。
【0023】
本願発明のアミドの場合、アミノ分解自体は可能ではない。何らかのアミノ交換反応が生じれば、形成されたアミンは反応性硬化剤として作用可能となり、環状カーボネート基を更に攻撃する。よって、生成物はより一層架橋され硬化される。これは下記の図式に示す反応の結果として生じ、以下に記載する実験部分にて明示される。
【0024】
【化12】
【0025】
本願発明は、式(I)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドであって、
【化13】
およびRは、それぞれ互いに独立して水素、直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の炭素数1から12のアルキル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数6から12のアラルキル基および炭素数6から12のアルカリール基から選ばれるか、もしくはそれらが結合する窒素原子と共に5員から8員環を形成し、Rは水素および直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の炭素数1から12のアルキル基から選ばれるか、または
およびRはそれぞれ水素であり、Rはn価の基であり、nは1より大きい整数であり、該基は、更に、一般式(II)
【化14】
で表されるn−1個の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド基により置換されることを特徴とする、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドを提供する。
【0026】
が結合する炭素原子は、更に炭素数1から12のアルキル基をも有することができる。4位の炭素原子も、また更に炭素数1から12のアルキル基を有することができる。これらは同時にあり得る。
【0027】
本願発明の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドにおいて、RおよびRは好ましくはそれぞれ水素であり、Rはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、2−エチル−n−ヘキシル、n−ラウリル、シクロヘキシル、フェニルおよびベンジルから選ばれる。
【0028】
本願発明の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドは、硬化性バインダーとして使用可能である。この場合、1より多い2−オキソ−1,3−ジオキソラン基に関する官能価(上記に規定)が必要とされる。好ましくは、nは2から5、特に、2から3である。
【0029】
この場合、Rは硬化性バインダーのポリマー骨格であり、直鎖状または分枝鎖状の炭素数2から22のアルキレン基、一般式−(AO)−(式中、Aは炭素数2から5のアルキレンであり、mは1から100である)で表されるポリエーテル基、ポリカーボネート基、ポリエステル基、ポリ(メタ)アクリレート基およびそれらの組み合わせから選ばれる。
【0030】
本願発明による2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド(I)の製造における主要な中間生成物は、式(III)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸である。
【0031】
【化15】
【0032】
本願発明は、更に式(I)の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドの製造のための方法を提供する。本願発明の一実施形態によると、該方法は、式(III)の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸を式R−NH−Rのアミンと反応させ、本願発明の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド(I)を得る(R、RおよびRは上記の意味を有する)ことを特徴とする。この反応により、RおよびRの双方が水素とは異なる場合の式(I)により表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドを得ることが可能である。
【0033】
この反応の最中に水が生じるため、該反応は、特に有利には脱水剤、ことにカルボジイミドの存在下で実施される。
【0034】
その他の実施形態によれば、式(III)の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸を、式R−NCOで表されるイソシアネートと反応させることにより、本願発明の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミド(I)(式中、R=水素、RおよびRは上記の意味を有する)を得ることができる。
【0035】
この実施形態によれば、式(III)の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸は、モノイソシアネートまたはn個のNCO基(nは上記の意味を有する)を有するポリイソシアネートと反応可能である。
【0036】
該反応は、好ましくは第三級アミン、有機金属化合物、およびそれらの混合物から選ばれる触媒の存在下で行われる。第三級アミンは、例えば、ジメチルシクロヘキシルアミン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、およびジアザビシクロウンデセン(DBU)から選ばれる。有機金属化合物は、例えば、ジブチル錫ジラウレート(DBTL)、ビスマスオクタノエートまたはビスマスネオデカノエート等のビスマスカルボキシレート、チタンまたはジルコニウムのアルコキシレートまたはカルボキシレート、および従来技術において公知の触媒等から選ばれる。
【0037】
本願発明による式R−NCOで表されるモノイソシアネートの場合、Rは好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、2−エチル−n−ヘキシル、n−ラウリル、シクロヘキシル、フェニルおよびベンジルから選ばれる。
【0038】
本願発明のポリイソシアネートは、好ましくはNCO官能価n(分子中のNCO基の数)=2から5、好ましくはn=2から3を有する、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート、または、脂肪族/芳香族イソシアネートの組み合わせである。
【0039】
好ましいポリイソシアネートは、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(TMDI)、ドデカメチレン1,12−ジイソシアネート、リシンジイソシアネートおよびリシンエステルジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート−IPDI)、1,4−ジイソシアナト−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、2,2’−、2,4’−および4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネートおよびシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート(CHDI)、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシル−2,2−プロパン、m−およびp−フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ジイソシアナトベンゼン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニル(TODI)、2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,2’−、2,4’−および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレン1,2−ジイソシアネートおよびナフタレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、m−およびp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、および上記イソシアネートのあらゆる望ましい混合物を含む。
【0040】
本願発明の目的のために、本願発明によるポリイソシアネートは、二量体(ウレトジオン)および三量体(イソシアヌレート)を含むようにも意図されている。ここで、特に重要なのは、HDI三量体である。さらに、例えば「ポリマーMDI」(n=1から8)などのオリゴマーも含まれる。
【0041】
【化16】
さらに、化学量論的に過剰なNCO基が存在する場合、ポリイソシアネートとポリオールとのプレポリマーも使用可能である。好ましいポリオールは、とりわけエチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位およびブチレンオキシド単位を含み得るポリオキシアルキレンポリオール(「ポリエーテルポリオール」とも呼ばれる)、脂肪族ジオールおよびポリオール、および更にポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオール、ヒマシ油、ヒドロキシル化およびエポキシ化大豆油、および上記ポリオールの混合物を含む。
【0042】
2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸とモノイソシアネートおよびポリイソシアネートとの反応生成物の典型的かつ非網羅的な例は、以下の図式に示す通りである。
【0043】
【化17】
【0044】
本願発明は、更に、上記式(III)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸の製造方法を提供する。当該2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸は、本願発明による2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドの製造における、主要な中間生成物である。
【0045】
本願発明の一つの実施態様において、式(III)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸は、式(IV)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸エステルを酸性媒体、好ましくは水性酢酸中で加水分解することにより製造できる。
【0046】
【化18】
(式中、RおよびRは上記の意味を有する。)
式(IV)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸エステルを、式RN−CHO(式中、Rおよび2は上記の意味を有する)で表されるホルムアミドと反応させることにより、式(IV)のエステルから本願発明による式(I)で表される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドを直接製造することも可能である。
【0047】
更に、その他の実施態様によれば、式(III)の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸は、式(V)で表されるグリセロールカーボネートを酸化することにより製造することができる。
【0048】
【化19】
(式中、Rは上記の意味を有する。)
より具体的には、例えば、N−オキシドに媒介された酸化、または、好気性酸化により製造可能である。
【0049】
N−オキシドに媒介された酸化は、1,3,5−トリクロロイソシアヌル酸および2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)とを用いて行うことができる。当該酸化はまた、過酸化水素を酸化剤として用い、例えば、マンガン塩の存在下において実施してもよい。
【0050】
好気性酸化においては、空気からの酸素または純粋な形の酸素を、酸化剤として使用する。好気性酸化は、Co、Mn、Cu、Feおよびそれらの混合物から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩、好ましくはMnの塩の存在下で好適に実施される。好気性酸化は、好ましくは、好適な溶媒または(例えば水性)酢酸中にて実施される。酸素圧は0.1から100バールの範囲である。TEMPO等のN−オキシドの存在が好ましい。好気性酸化は、特に、グリセロールカーボネート(4−(ヒドロキシメチル)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン)を酸化して2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸を形成するために好ましい。酸素供給源は、例えばマンガンイオンと過酸化水素との分解反応であってもよい。概して、上記の好気性酸化反応は、グリセロールカーボネートから製造される2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸の供給源を提供するという問題を、明快にかつ簡潔に解決する。
【0051】
本願発明は、更に、本願発明による2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドの、ヒドロキシウレタンの製造のための使用を提供する。本願発明のアミドは、上記の図式に示したとおり、R’−NHと反応し、ヒドロキシウレタンを生ずる。求核性窒素原子の攻撃の間、CONR基により近い酸素原子上の負の電荷が更に安定されるため、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸エステル(PCT/EP2011/058945)の場合のように、ここでも、第二級水酸基を有するヒドロキシウレタンが主として形成される。第二級水酸基を有するヒドロキシウレタンは、逆反応が起こらないという利点を有する。理論上、アミド基上のアミン攻撃も想定できる。しかしながら、当該アミンは、2−オキソ−1,3−ジオキソラン基のみを攻撃することが示された。
【0052】
ここで好適なアミンは、遊離基としてアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアルカリール基を有する第一級および第二級アミンである。第一級アミンは、第二級アミンに比べより早く反応する。脂肪族アミンは、芳香族アミンに比べより早く反応する。特に、Huntsman Corp.のJeffamine(R)やBASF SEのポリエーテルアミンなどの、比較的高い分子量を有する(ポリ)アミンが好適である。
【0053】
R’−NHで表される第一級アミンの場合、反応は以下に示すとおりである。ここには、第二級水酸基を有するヒドロキシウレタンを製造するための、好ましい反応のみを示す。
【0054】
【化20】
【0055】
本願発明は、更に、本願発明による2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドの、ヒドロキシカーボネートの製造のための使用を提供する。
以下の図式には、第二級水酸基を有するヒドロキシカーボネートを製造するための、好ましい反応のみを示す。式R’−OHで表される好ましいアルコールは、特に、上記したポリオールである。
【0056】
【化21】
【0057】
本願発明は、更に、本願発明による2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドの、以下の類似の図式によるヒドロキシスルファニルホルメートの製造のための使用を提供する。
【0058】
【化22】
【0059】
使用されるアミン、アルコールおよび/またはチオール、および本願発明による2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドの双方が多価である場合(R=n−1個の更なる2−オキソ−1、3−ジオキソラン−4−カルボキサミド基で置換されるn価の遊離基)、それらの反応により、ポリマー生成物、つまり、ポリマーのヒドロキシウレタン、ヒドロキシカーボネートおよび/またはヒドロキシスルファニルホルメートが得られる。つまり、多価2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドのバインダー(n>1)は、ポリアミン、ポリオールおよび/またはポリチオールにより容易に硬化される。
【0060】
よって、本願発明は、更に、本願発明による2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドの、ポリマーヒドロキシウレタン、ヒドロキシカーボネートおよび/またはヒドロキシスルファニルホルメートの製造のための使用に関する。
【0061】
ポリヒドロキシウレタン系の一つの利点は、これらの系が有する比較的高い親水性にあり、当該親水性はOH基の存在に由来する。本願発明により可能であるイソシアネートを含まない系は、その低い毒性の点で好ましいが、これらのOH基もまた、原則として、ポリイソシアネートとの架橋に利用可能である。
【0062】
更に、2−オキソ−1,3−ジオキソランに基づくポリヒドロキシウレタン系を製造する場合、たとえ湿気の存在下であっても、形成されるCOによる気泡形成が起こらない。その結果、従来のポリウレタン系においてしばしば問題とされる細孔および気泡を、ほとんど含まない被覆を形成することができる。
【0063】
加えて、このようなポリヒドロキシウレタン系の熱安定性もまた、従来のポリウレタン系の熱安定性に比べ高い。
【0064】
更に、低分子量の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドは、アミンをブロックするために末端基(所謂「エンドキャップ」)として使用することができ、この使用は、本願発明の更なる主題を構成する。これも、従来のアミン架橋されたポリウレタン系に関して興味深い。なぜなら、余剰のアミンは変色をもたらす可能性があり、一方、余剰のイソシアネートは毒性の点で許容できないためである。
【実施例】
【0065】
以下の実施例を参照して、本願発明をより詳細に例示する。
【0066】
例1:4−メトキシカルボニル−2−オキソ−1,3−ジオキソランの製造(参考)
【化23】
【0067】
炭酸ナトリウム80gを、1,000mLの三つ口フラスコ中の蒸留水200mLへ溶解した。溶液を10℃まで冷却した。次にメチルアクリレート58.5gを加え、約10分後に、同様に10℃で、7%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液400mLを攪拌しながら加えた。次いで、系を直ちにCOで強力にフラッシュした。温度は室温まで上昇させた。フラスコをCOで更に1時間、約25℃から30℃にて強力にフラッシュした。その間、氷浴を用いた不定期の冷却により、温度を上記の範囲に維持した。その結果生じた白色の固体を、吸引漏斗で濾別した。濾液は、4×90mLのジクロロメタンを用いて抽出した。組み合わされた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾別した。濾液は回転蒸発装置で除去した。純度97%のメチルエポキシプロピオネートが50から60%の収率で得られた。
【0068】
メチルエポキシプロピオネート20gを、t−ブチルメチルエーテル20gおよびテトラブチルアンモニウムブロミド1gと混合した。均一な混合物を100mLの圧力反応器に移し、温度40℃および二酸化炭素圧20バールで4日間にわたりカルボキシル化した。カルボキシル化の後、2相系が得られた;上相はt−ブチルメチルエーテルから構成され、下相は4−メトキシカルボニル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン(純度:94%(GC)、収率:94%)から構成されていた。
【0069】
【0070】
例2:4−メトキシカルボニル−2−オキソ−1,3−ジオキソランの製造(参考)
【化24】
【0071】
初期装入物として、濃度7%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液940mLを2,000mLの三つ口フラスコへ導入した。溶液は、氷/塩水浴を用いて0℃に冷却した。その後、メチルアクリレート58.5gを加え、得られた混合物を0℃で30分間保持した。次いで、低温混合物を取り出し、該混合物自体が昇温するように(65℃から70℃)、更に約1.5時間攪拌した。無色の混濁した溶液が形成された。次に、溶液を室温まで冷却し、4×150mLのジクロロメタンを用いて抽出を行った。組み合わされた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾別した。濾液は、回転蒸発装置で除去した。純度97%のメチルエポキシプロピオネートが70から80%の収率で得られた。これ以降の、4−メトキシカルボニル−2−オキソ−1,3−ジオキソランを製造するための反応は、例1に記載の通りに進められた。
【0072】
例3:4−メトキシカルボニル−2−オキソ−1,3−ジオキソランの製造(参考)
【化25】
【0073】
メチルエポキシプロピオネート20gを、アセトニトリル20g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド1.5g、およびZnBr1.5gと混合した。均一な混合物を、100mLの圧力反応器に移し、温度25℃および二酸化炭素圧30バールで6日間にわたりカルボキシル化した。カルボキシル化の後、混合物をアセトニトリル100gで希釈した。混合物を、酸化アルミニウムおよび活性炭を用いて精製した。次いで、アセトニトリルを留去した。これにより、4−メトキシカルボニル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン(純度:72%(GC)、収率:65%)が得られた。
【0074】
例4:4−メトキシカルボニル−2−オキソ−1,3−ジオキソランの製造(参考)
【化26】
【0075】
メチルエポキシプロピオネート20gを、t−ブチルメチルエーテル20g、テトラブチルアンモニウムブロミド1.5g、およびヨウ化カリウム1.5gと混合した。均一な混合物を、100mLの圧力反応器に移し、温度50℃および二酸化炭素圧30バールで6日間にわたりカルボキシル化した。カルボキシル化の後、2相系が得られた;上相はt−ブチルメチルエーテルから構成され、下相は4−メトキシカルボニル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン(純度:83%(GC)、収率:79%)から構成されていた。
【0076】
例5:4−メトキシカルボニル−2−オキソ−1,3−ジオキソランの酸加水分解
【化27】
【0077】
4−メトキシカルボニル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン73g(0.5モル)を、水11g(0.55モル)および酢酸48g(0.8モル)を用いて還流しながら、3時間にわたり加熱した。次いで、混合物をシクロヘキサンに加え、分離した油から、全ての揮発性成分を慎重に取り除き、無色の結晶性沈殿物が形成されるまで、残渣をメチレンクロリドと共に粉砕した。沈殿物をジエチルエーテルを用いて洗浄し、真空中で乾燥した。これにより、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸が得られた。
【0078】
【0079】
例6:N−オキシドにより媒介されたグリセロールカーボネートの酸化
【化28】
【0080】
(JOC2003;68;4999頁以降の記載と類似の手順)グリセロールカーボネート118.1g(1モル)、炭酸水素ナトリウム168g(2モル)、トリクロロイソシアヌル酸232g(1モル)、水18g(1モル)、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)1.5g(0.01モル)、およびNaBr5g(0.05モル)を初期装入物として、0℃のアセトン1.5Lへ攪拌しながら導入した。混合物を、室温になるまで放置し、更に12時間攪拌し、その後濾別した。濾液を蒸発により濃縮した。得られた油を、クロロホルムと共に還流下で加熱した。これにより、収率97%で2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸が得られた。
【0081】
例7:グリセロールカーボネートの好気性酸化
【化29】
グリセロールカーボネート(4−(ヒドロキシメチル)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン)118g(1モル)、N−ヒドロキシフタルイミド16.3g(0.1モル)、m−クロロ安息香酸7.8g(0.045モル)、およびコバルト(II)アセチルアセトネート1.3g(0.05モル)を氷酢酸300mLおよび酢酸エチル1L中へ溶解した。溶液を、酸素を用いて飽和し、酸素雰囲気中で還流しながら6時間加熱した。全ての揮発性成分を留去し、残渣をジエチルエーテルと共に粉砕した。不溶成分を、ジクロロメタンおよびトルエンを用いて洗浄し、除去した。これにより、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸を得た。収率は約15%であった。
【0082】
例8:グリセロールカーボネートの好気性酸化
【化30】
【0083】
グリセロールカーボネート(4−(ヒドロキシメチル)−2−オキソ−1,3ジオキソラン)11.81g(0.1モル)、二硝酸マンガン四水和物(Mn(NO・4HO)0.50g(0.002モル)、二硝酸コバルト六水和物(Co(NO・6HO)0.58g(0.002モル)、およびTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)1.88g(0.012モル)を、100mLの酢酸に溶解した。赤みを帯びた溶液を、室温で72時間にわたり酸素雰囲気中にて攪拌し、蒸発乾固させ、粗生成物を再結晶化により精製した。これにより、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸を白色から黄色の針状結晶状で得た。収率は約75%であり、解析データは既知のデータと一致した(例5)。
【0084】
例9:2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸とn−ブチルイソシアネートとの反応
【化31】
【0085】
(手順は、Synthesis2001;2、pp.243−246の記載と同様に行われた。)等モル量の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(4.089g;37ミリモル)およびn−ブチルイソシアネート(3.67g;37ミリモル)とを、無水THF100mLに溶解した。DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)1モル%を加え、混合物を、IRスペクトルが2,050cm−1におけるイソシアネートシグナルの消滅、および1,690cm−1におけるアミンシグナルの発現を示すまで、室温にて攪拌した。二酸化ケイ素を添加した後、混合物を濾別し、溶媒を除去した。残渣はシクロヘキサンから再結晶された。
【0086】
【0087】
例10:2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸とシクロヘキシルイソシアネートとの反応
【化32】
【0088】
(手順は、Synthesis2001;2、pp.243−246の記載と同様に行われた。)2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸2.56g(19ミリモル)およびシクロヘキシルイソシアネート2.42g(19ミリモル)とを、無水THF50mLに溶解した。DMAP0.05g(1モル%)を加え、混合物を室温で一晩中攪拌した。その間、無色の沈殿物が形成された。溶媒を除去し、残渣をジエチルエーテルを用いて抽出した。蒸発により、残渣から生成物が晶出した。これにより、N−シクロヘキシル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドを得た。
【0089】
【0090】
例11:2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸とHDIとの反応
【化33】
【0091】
(手順は、Synthesis2001;2、pp.243−246と同様に行われた。)HDI9.55g(57ミリモル)およびDMAP0.14g(14ミリモル)とを、無水THF20mLに溶解した。無水THF50mL中、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸15g(140ミリモル)の溶液を滴下し、得られた混合物を、室温で一夜攪拌した。得られた沈殿物を収集し、THFおよびエーテルとを用いて洗浄し、水から再結晶した。これにより二官能価アミドを得た。
【0092】
【0093】
例12:2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸とHDI三量体との反応
HDI三量体(Desmodur(R) N3600、Bayer AGまたは、Basonat(R) LR9064、BASF SE)80g(0.16モル)、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸64g(0.48モル)および、DMAP0.585g(4.8ミリモル)を1LのTHFに溶解し、室温で一夜攪拌した。次いで、活性炭10gおよび酢酸5ミリモルを加え、混合物を更に1時間攪拌した。その後、混合物を濾別し、溶媒を留去した。
【0094】
これにより、赤みを帯びた油状物130gが得られた。得られた油状物は、その後の硬化実験において、更に精製されることなく使用された。
【0095】
【0096】
例13:実施例12で得たバインダーを用いた硬化実験
例12で得たバインダー樹脂を、常用のアミン、つまり、イソフォロンジアミン(IPDA)およびトリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物(TMD)を用いて硬化した。結果(得られた混和性、ポットライフおよび室温にて3日間にわたり硬化した後のショアA硬度)を以下の表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示された結果から明らかなように、当該バインダー樹脂は、これらのアミンに対して、非常に高い反応性を有しており、その機械的特性も非常に良好である。
【0099】
例14:
EP2397474A1号によるエステルに対する本願発明によるカルボキサミドの優位性を明示するために、N−ブチル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドおよび2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸メチルエステルとを、n−ブチルアミンを用いて滴定した。カルボキサミドの場合、92±5モル%のアミンを使用し、一方、エステルの場合は114±5モル%のアミンを使用した。これは、エステル結合のアミノ分解が著しく進行していることを示している。
【0100】
更に、下記の表2に、それぞれ、2分子の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸メチルエステルと1分子の1,6ヘキサンジオール(「ヘキサンジオールジエステル」(HDDE))とからの反応生成物、および2分子の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸と1分子のHDI(「ヘキサメチレンジアミド:HMDA」)とからの反応生成物と、等モル量の前記した常用のアミン、つまり、IPDAおよびTMDとの反応生成物について、室温で7日間にわたり硬化した後の動的粘度[mPAs]を示す。カルボキサミド生成物の優位性がこのように明示されている。
【0101】
【表2】