(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072128
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ポリエチレン容器、プリフォームおよびボトルの製造のための射出延伸ブロー成形法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/06 20060101AFI20170123BHJP
C08F 10/02 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
B29C49/06
C08F10/02
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-87508(P2015-87508)
(22)【出願日】2015年4月22日
(62)【分割の表示】特願2011-532568(P2011-532568)の分割
【原出願日】2009年10月2日
(65)【公開番号】特開2015-178276(P2015-178276A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2015年5月15日
(31)【優先権主張番号】08167437.6
(32)【優先日】2008年10月23日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/209,883
(32)【優先日】2009年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ゴットシャルク,アンヤ
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,マイク
【審査官】
阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−140033(JP,A)
【文献】
特表2005−500220(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/039475(WO,A1)
【文献】
特開2000−296826(JP,A)
【文献】
特開平11−171923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00− 49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン容器の製造のための射出延伸ブロー成形法であって、当該方法は、
1)ポリエチレン物質を210〜260℃の温度で射出成形に付してプリフォームにし;
2)115〜130℃にて、得られたプリフォーム内に延伸棒を挿入し、延伸して、該プリフォームを軸方向中心に誘導し、そして0.1〜4MPaの加圧ガスを導入してブロー成形を完成するように導入することにより、得られたプリフォームを延伸ブロー成形に付す;各工程を含み、
ここで、該ポリエチレン物質は、密度が0.945g/cm3以上を示し且つF/E比値が60以上を示すエチレン(コ)ポリマーを含む、前記射出延伸ブロー成形法。
【請求項2】
エチレン(コ)ポリマーを、エチレンホモポリマー類、4〜8個の炭素原子を有するアルファー−オレフィンモノマー単位を含有するエチレンコポリマー類、およびそれらの混合物から選択する、請求項1に記載の射出延伸ブロー成形法。
【請求項3】
エチレン(コ)ポリマーのメルトフローレートEが0.1g/10分以上である、請求項1又は2に記載の射出延伸ブロー成形法。
【請求項4】
第1段階でプリフォームを製造し室温に冷却し、次いで、第2段階で再加熱および延伸ブロー成形に付す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出延伸ブロー成形法。
【請求項5】
プリフォームを製造し室温に冷却しないで延伸ブロー成形に付す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出延伸ブロー成形法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン容器、特にボトルの製造のための射出延伸ブロー成形法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出延伸ブロー成形法は、一段階および二段階双方とも、熱可塑性ポリマー材料、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる容器の製造ために当業界で慣用的に使用されている。事実、PETは上述方法に使用するのに特に適していることが示されている。何故なら、PETは広範囲の温度(加工性の窓:window of processability)で操作でき、しかも優れた機械特性および高い透明性を示す成形品が得られるからである。
【0003】
しかし、耐熱性および耐薬品性のような技術的欠点のため、PETに代わる他の熱可塑性材料の強い必要性がある。特に、結晶性オレフィンポリマー類およびコポリマー類(特に、ポリプロピレンやポリエチレン)は、PETと比較して優れた機械特性および熱特性を示すことが知られている。したがって、オレフィンポリマーを射出延伸ブロー成形に付すことによる、多くの技術的解決法がポリマー容器、特にボトルを得るために当業界で提案されている。
【0004】
しかし、EP−A−0654340号公報に説明されているように、ポリエチレンの射出延伸ブロー成形は多くの技術的困難性を含む。この文献では、これらの困難性は、中心ダイとプリフォームとの間の境に気体を入れ、次いで、プリフォームを射出用モールドから放出し、さらに特定のプロセス条件を選択することにより克服できるとある。しかし、実施例は、乳白色のボトルしか得られていないように、光学特性が依然として悪いことも示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特定のメルトフローレート値(後に定義する)および密度を示すポリエチレンを使用することにより、価値のある機械特性および光学特性を有する延伸ブロー成形容器が、慣用的な射出延伸ブロー成形法技術の修正を必要とすることなく、特に、射出モールドからプリフォームを放出前に前記気体の導入の必要性なく得られることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明はポリエチレン容器を製造するための射出延伸ブロー成形法を提供することであり、当該方法では、ポリエチレン物質として、密度が0.945g/cm
3以上(ISO 1183に準拠して測定)を示し、F/E比が60以上(ISO 1133に準拠して測定)を示すエチレン(コ)ポリマーを使用する。
【0007】
特に、本発明の方法は、上述エチレン(コ)ポリマーからなるもしくは含むプリフォームを延伸ブロー成形に付すことを含む。
したがって、前記射出延伸ブロー成形法は、
1) ポリエチレン物質を射出成形に付してプリフォームにし;
2) 得られたプリフォームを延伸ブロー成形に付す;各工程を含み、
ここで、該ポリエチレン物質は、密度が0.945g/cm
3以上、特に、0.945g/cm3〜0.960g/cm3(ISO 1183に準拠して測定)を示し且つF/E比値が60以上、特に、60〜100(ISO 1133に準拠して測定)を示す前記ポリエチレン(コ)ポリマーを含む。
【0008】
本発明では、「エチレンコポリマー」の定義は、エチレンホモポリマー類および4〜8個の炭素原子を有するα−オレフィンモノマー単位を含有する(好ましくは10重量%まで)エチレンコポリマー類ならびにこれらの混合物から選択されるポリマー物質を含む。
前記4〜8個の炭素原子を有するα−オレフィンモノマー単位の例は、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよび4−メチル−1−ペンテンである。1−ブテンが好適である。
【0009】
F/E比は、21.6kgの荷重を用い190℃で測定した(条件Fとも呼ぶ)メルトフローレートと2.16kgの荷重を用い190℃で測定した(条件Eとも呼ぶ)メルトフローレートとの間の比である。
【0010】
前記エチレン(コ)ポリマーの好適な特徴は:
− 密度が950g/cm3以上、特に、952g/cm3以上で、上限が最も好ましくは0.960g/cm3であり、
− F/E比値が70以上、より好ましくは、75以上、特に、80以上で、上限が最も好ましくは、100であり、
− メルトフローレートEが0.1g/10分以上、より好ましくは、0.5g/10分以上、特に、0.1もしくは0.5〜10g/10分である。
【0011】
メルトフローレートE値が0.5g/10分、もしくはそれ以上、特に1g/10分、もしくはそれ以上(好適な上限は10g/10分)は、ポリエチレン(コ)ポリマーの密度が0.955g/cm3以下のとき特に好適である。
【0012】
前記エチレン(コ)ポリマー類は市場で入手できる。前記特性を備えた特定の市販ポリマー類は実施例で示す。それらは配位触媒の共存下で重合プロセスにより得ることができる(コ)ポリマー類のファミリーに属する。当該プロセスおよびそれから得られる(コ)ポリマー類は当業界で広く記載されている。特に、チグラー・ナッタ触媒の共存下で重合プロセスを行うことができる。
【0013】
周知のように、チグラー・ナッタ重合触媒は、周期表のI〜III族金属の有機化合物(例えば、アルキルアルミニウム)、および周期表のIV〜VIII族遷移金属の無機化合物(例えば、ハロゲン化チタン)の反応生成物を含み、好ましくはハロゲン化マグネシウムに担持する。このような触媒を用いて使用される重合条件も、通例、周知である。
【0014】
前記エチレン(コ)ポリマーは慣用添加剤も含有する。これらの添加剤の例は、熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、金属不活剤、過酸化物破壊剤、および塩基性共安定剤(basic costabilizer)等であり、典型的には、0.01重量%〜10重量%、好ましくは、0.1〜5重量%の量で使用する。
【0015】
通例、本発明のプロセスでは、前記プリポリマーは、当業界で周知の処理および装置を使用して、適切なモールド中に溶融ポリマーを射出することにより得られる。ポリマー物質を射出してプリポリマーを得る温度は、使用する特定のポリマー組成物に依存して当業者により選択されるべきである。好適な射出温度は210〜260℃である。典型的な射出圧力は32〜78MPa(320〜780バール)である。このようなプロセス工程に使用するモールドは、射出延伸ブロー成形装置でプリフォームを製造するのに使用されるいずれかの慣用モールドであることができる。
【0016】
該プロセスにおける工程1)および2)の双方は、同一機械、いわゆる単一段階(single-stage)プロセスで行うことができる。このような場合、プリフォームを室温に冷却することなく操作する。
【0017】
または、そして好ましくは、工程1)を第1装置で行うことができ(第1プロセス段階)、続いて、第2プロセス段階で、得られたプリフォームを延伸ブロー成形用の第2装置2)に送る(いわゆる第2段階プロセス)。このような場合、プリフォームを延伸ブロー成形前に室温(約25℃)に冷却することができる。
【0018】
典型的には、単一段階プロセスのための延伸ブロー成形温度は115〜130℃である。第2段階プロセスについては、プリフォームを再加熱して典型温度115〜130℃にすることもできる。より好ましくは、単一段階プロセスおよび/または第2段階プロセスについての温度は122〜128℃であり、最大温度は、本発明プロセスで使用する標準ポリエチレンの融点より相当低い。赤外線加熱装置を典型的に使用するが、当業者はポリマー組成物の特性と両立するいずれの加熱源でも使用できることを了解するであろう。プリフォームは、典型的には、熱を平均的に分配するために回転させながら、加熱装置のバンクに沿って運搬する。プリフォームは、プリフォーム表面の過熱をできるだけ少なくするように加熱中もしくは加熱後に冷却用空気と接触させることもできる。予備加熱プリフォームが加熱装置を出たら、プリフォームをブロー成形に移す。
【0019】
一般に、プロセス工程2)を行うために、延伸棒をプリフォーム内に挿入し、延伸し、軸方向中心にプリフォームを誘導する。0.1〜4MPa(1〜40バール)、好ましくは0.4〜2MPa(4〜20バール)の加圧ガス(好ましくは空気)を最終容器またはボトルのブロー成形を完成するように導入する。場合により、加圧ガスを2段階で導入することができ、0.1〜2MPa(1〜20バール)、好ましくは0.4〜1.2MPa(4〜12バール)の加圧ガスを導入することにより予備ブローを行い、次いで、それより高い圧力で最終ブロー成形を行う。延伸比は、好ましくは、2〜4である。
【0020】
前述したように、本発明のプロセスは、高物理的−機械的特性を示すポリマー容器を得ることができる。特に、高耐衝撃性、および低曇り度値、好ましくは50%以下の曇り度値を示す容器、特定的にはボトルを得ることができる。
【実施例】
【0021】
下記の実施例は、射出延伸−ブロー成形ボトルの製造に関連しているが、例証のために与えるもので、目的を制限するものではない。
2種類の500mlボトルを製造する。
【0022】
種類1は、0.959g/cm3の密度(ISO 1183)、0.25g/10分のメルトフローレートEおよび84のF/E比を示し、Lyondellbasellより商標Hostalen ACP5831Dで販売されているエチレンポリマーを使用することにより製造する。種類2は、0.954g/cm
3の密度(ISO 1183)、1.45g/10分のメルトフローレートEおよび87.5のF/E比を示し、Lyondellbasellより商標Hostalen ACP6541 A UVで販売されているエチレンポリマーを使用することにより製造する。
【0023】
表1にプロセス条件を示し、表2に得られたボトルの特性を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】