特許第6072162号(P6072162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6072162
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】車両用窓ガラス昇降装置及び車両
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/43 20150101AFI20170123BHJP
   E05F 15/689 20150101ALI20170123BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20170123BHJP
   B60J 3/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   E05F15/43
   E05F15/689
   B60J1/00 C
   B60J3/00 H
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-153910(P2015-153910)
(22)【出願日】2015年8月4日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146434
【氏名又は名称】株式会社城南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】池田 博之
(72)【発明者】
【氏名】竹原 秀明
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】梅原 定二
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 礼兼
(72)【発明者】
【氏名】柏木 秀明
(72)【発明者】
【氏名】小林 真由
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−186915(JP,A)
【文献】 特開2007−186916(JP,A)
【文献】 特開2007−145295(JP,A)
【文献】 特開2006−341824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−15/78
B60J 1/00
B60J 3/00−3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに配置され窓ガラスを上下方向に移動させる駆動機構と、
前記駆動機構を制御する制御部と、
前記ドア及び前記窓ガラスが閉まっている状態において前記窓ガラスの外縁の少なくとも一部に沿って前記窓ガラスよりも車室内側に設けられた検出ラインを撮像するカメラと、を備え、
前記制御部は、前記カメラによって撮像された前記検出ラインの少なくとも一部が異物によって遮蔽された遮蔽状態を検出する検出手段と、前記駆動機構による前記窓ガラスの移動時に前記検出手段によって前記遮蔽状態が検出されたとき、前記窓ガラスによる挟み込みを防止するための挟み込み防止動作を前記駆動機構に行わせる挟み込み防止手段とを有し、
前記検出手段は、前記窓ガラスへのサンシェードの取り付け状態を検出するサンシェード取付検出部と、前記サンシェード取付検出部が検出した前記サンシェードの取り付け状態に応じて、前記遮蔽状態を検出する前記検出ラインの範囲を切り替える検出範囲切替部と、を備えた、
車両用窓ガラス昇降装置。
【請求項2】
前記サンシェード取付検出部は、前記サンシェードが取り付けられたこと、および、前記サンシェードが取り付け途中であることを検出可能に構成され、
前記検出範囲切替部は、前記サンシェード取付検出部が前記サンシェードが取り付け途中であることを検出しているとき、または、前記サンシェードが取り付けられたことを検出したときに、前記遮蔽状態を検出する前記検出ラインの範囲を、予め設定した範囲に切替えるように構成される、
請求項1に記載の車両用窓ガラス昇降装置。
【請求項3】
前記サンシェードは、前記ドアに収納可能に設けられおり、
前記挟み込み防止手段は、前記サンシェード取付検出部が前記サンシェードが取り付け途中であることを検出したとき、前記遮蔽状態の検出の有無にかかわらず、前記窓ガラスを移動させないように前記駆動機構を制御するように構成される、
請求項2に記載の車両用窓ガラス昇降装置。
【請求項4】
前記車両は、前記ドア及び前記窓ガラスが閉まっている状態で前記窓ガラスの外縁に接する窓枠を有し、
前記サンシェードは、前記窓枠から引き出されるように前記ドアに収納可能に設けられており、
前記カメラは、前記窓枠の前記窓ガラスよりも車室内側の内周縁面に配置されると共に、前記サンシェードを非収納とし取り付けた際に、前記車両の前後方向における前記サンシェードよりも前側または後側の少なくとも一方に配置される、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用窓ガラス昇降装置。
【請求項5】
前記カメラは、少なくとも1つのレンズを含む光学系と、前記光学系によって被写体像が結像される撮像素子とを有し、前記窓枠の前記窓ガラスよりも車室内側の内周縁面に形成された開口に対応する位置に、前記光学系の光軸が前記開口を通るように配置されており、
前記開口は、前記サンシェードを非収納とし取り付けた際における前記サンシェードの前側の端部の近傍、または、前記サンシェードを非収納とし取り付けた際における前記サンシェードの後側の端部の近傍に形成される、
請求項4に記載の車両用窓ガラス昇降装置。
【請求項6】
前記サンシェードには、判定用マーカが設けられており、
前記サンシェード取付検出部は、前記カメラが撮像した画像から、前記サンシェードが取り付けられたときの前記判定用マーカの位置を含むように予め設定された取付判定領域内で前記判定用マーカが検出されたとき、前記窓ガラスに前記サンシェードが取り付けられたことを検出するように構成される、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用窓ガラス昇降装置。
【請求項7】
前記判定用マーカは、前記サンシェードの収納時に前記カメラに撮像される位置に形成され、
前記サンシェード取付検出部は、前記カメラが撮像した画像から、前記サンシェードの収納時の前記判定用マーカの位置を含むように予め設定された収容判定領域内、および、前記取付判定領域内で前記判定用マーカが検出されないとき、前記サンシェードが取り付け途中であることを検出するように構成される、
請求項6に記載の車両用窓ガラス昇降装置。
【請求項8】
前記サンシェードの取り付け状態を検出するセンサを備え、
前記サンシェード取付検出部は、前記センサの出力に基づき、前記窓ガラスへの前記サンシェードの取り付け状態を検出するように構成される、
請求項1乃至7の何れか1項に記載の車両用窓ガラス昇降装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の車両用窓ガラス昇降装置を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用窓ガラス昇降装置及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には、窓ガラスの開閉操作を容易とするため、窓ガラスを自動で昇降させる車両用窓ガラス昇降装置が搭載されている。
【0003】
車両用窓ガラス昇降装置は、車両のドアに配置され窓ガラスを上下方向に移動させる駆動機構と、駆動機構を制御する制御部と、を備えて構成されている。
【0004】
車両用窓ガラス昇降装置では、窓ガラスを電動で昇降させるために、窓ガラスによる挟み込みを防止する機構が設けられるのが一般的である。
【0005】
このような機構として、窓ガラスを駆動するモータの回転数の変化を監視し、窓ガラスの上昇中に負荷が増加しモータの回転数が減少したときに、窓ガラスによる異物の挟み込みが発生したと判定し、窓ガラスの移動方向を反転させ自動で下降させる等の各種安全動作を行わせるものが知られている。
【0006】
しかし、このような機構では、実際に異物(人体の一部等)が挟まれた後に安全動作が行われるので、人体に荷重が加わってしまうという観点から、安全性に対して問題があった。例えば、このような機構では、窓ガラスの締切を挟み込みと誤検知しないように窓ガラスの締切端から例えば4mmの領域が不感帯となっていることが多く、例えば、幼児の指が挟まれた際には安全動作が行われないおそれもあり、改善が望まれていた。
【0007】
このような問題を解決した車両用窓ガラス昇降装置として、特許文献1がある。
【0008】
特許文献1では、窓ガラスよりも車室内側で、かつ、窓ガラスよりも車両の前方側の下方にカメラを設置し、当該カメラにより撮像した画像を基に、窓ガラスによる挟み込みのおそれがある異物を検出し、窓ガラスを自動で下降させる等の各種安全動作を行わせる点が記載されている。
【0009】
また、特許文献1では、窓枠周辺に塗布したマーカや窓枠の輪郭のエッジ等を異物判定用の特徴量として用い、特徴量として用いるマーカ等とカメラとの間に異物が介在したときに、各種安全動作を行わせる点が記載されている。
【0010】
特許文献1のように、カメラで撮像した画像から窓ガラスに挟み込まれる可能性のある異物を検出することで、挟み込みが発生する前に安全動作を行わせることが可能になり、安全性がより向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−186915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、搭乗者が日差しを避けるために、窓ガラスにサンシェードを取り付けることがある。近年では、サンシェードをドアに内蔵した車両も多く知られている。
【0013】
従来技術では、サンシェードを取り付ける際に、当該サンシェードがカメラとマーカ等の間に位置してしまい、窓ガラスによる挟み込みのおそれがないにもかかわらず、窓ガラスを自動で下降させる、あるいは窓ガラスの移動を停止させる等の安全動作が行われてしまうおそれがある。昇降操作時に窓ガラスを上昇もしくは下降させることができなくなる場合もある。
【0014】
また、取り付け時にサンシェードがカメラとマーカ等の間に位置しない場合であっても、風によるサンシェードのばたつきによって、サンシェードの一部がカメラとマーカ等の間に位置し、上述の安全動作が行われるおそれがあり、対策が望まれる。
【0015】
そこで、本発明は、サンシェードを取り付けた際の誤作動を抑制可能な車両用窓ガラス昇降装置及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、車両のドアに配置され窓ガラスを上下方向に移動させる駆動機構と、前記駆動機構を制御する制御部と、前記ドア及び前記窓ガラスが閉まっている状態において前記窓ガラスの外縁の少なくとも一部に沿って前記窓ガラスよりも車室内側に設けられた検出ラインを撮像するカメラと、を備え、前記制御部は、前記カメラによって撮像された前記検出ラインの少なくとも一部が異物によって遮蔽された遮蔽状態を検出する検出手段と、前記駆動機構による前記窓ガラスの移動時に前記検出手段によって前記遮蔽状態が検出されたとき、前記窓ガラスによる挟み込みを防止するための挟み込み防止動作を前記駆動機構に行わせる挟み込み防止手段とを有し、前記検出手段は、前記窓ガラスへのサンシェードの取り付け状態を検出するサンシェード取付検出部と、前記サンシェード取付検出部が検出した前記サンシェードの取り付け状態に応じて、前記遮蔽状態を検出する前記検出ラインの範囲を切り替える検出範囲切替部と、を備えた、車両用窓ガラス昇降装置を提供する。
【0017】
本発明によれば、「検出手段は、窓ガラスへのサンシェードの取り付け状態を検出するサンシェード取付検出部と、サンシェード取付検出部が検出したサンシェードの取り付け状態に応じて、遮蔽状態を検出する検出ラインの範囲を切り替える検出範囲切替部と、を備えた、」という構成を有することにより、サンシェードの取り付け状態に応じて、遮蔽状態を検出する検出ラインの範囲を切り替えることが可能となり、サンシェードの取り付け時に遮蔽状態を検出する検出ラインの範囲を適宜に設定しておくことで、サンシェードを取り付けた際の誤作動を抑制することが可能になる。
【0018】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、前記車両用窓ガラス昇降装置を備えた車両を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、サンシェードを取り付けた際の誤作動を抑制可能な車両用窓ガラス昇降装置及び車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態に係る車両用窓ガラス昇降装置の概略構成図である。
図2】(a)は、サンシェードをドア内に収納した際のドアを車室側の上方から見た概略図、(b)は、サンシェードを取り付けた際のドアを車室側の上方から見た概略図である。
図3】サンシェードを取り付けた際のドアを車両の前方側の下方から見た概略図である。
図4】(a)は、カメラを含む位置での断面図、(b)は(a)のカメラを設けた部分の拡大図である。
図5】サンシェードが収納されているときの検出範囲を模式的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
図6】サンシェードが取り付けられたときの検出範囲を模式的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
図7】カメラの設置位置を説明する図である。
図8】本発明の一変形例において、サンシェードが取り付けられたときの検出範囲を模式的に示す斜視図である。
図9】2台のカメラを用いた場合において、サンシェードが取り付けられたときの検出範囲を模式的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
図10】(a),(b)サンシェードの取り付け状態を検出するセンサの一例を示す概略構成図である。
図11】車両用窓ガラス昇降装置の制御フローを示すフロー図である。
図12】遮蔽状態検出処理のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る車両用窓ガラス昇降装置の概略構成図である。
【0023】
図1に示すように、車両用窓ガラス昇降装置1を搭載する車両のドア(車両用ドア)2は、窓ガラス3を格納する格納部21と、格納部21の上方に設けられた枠部22と、を有している。格納部21の車室内側には、格納部21を覆うようにドアトリム23が取り付けられている。
【0024】
枠部22は、車両の前後方向における格納部21の後側の端部から上方に延びる後方立設部22aと、後方立設部22aよりも前側で格納部21から上方に延びる前方立設部22bと、後方立設部22aの上端部から前方立設部22bの上端部に至る上方延設部22cと、からなる。窓ガラス3の全閉時には、枠部22とドアトリム23の上端部とに囲まれた空間に、窓ガラス3が配置されることになる。つまり、枠部22とドアトリム23の上端部とが、窓枠25を構成している。本実施の形態では、窓枠25とは、ドア2及び窓ガラス3が閉まっている状態で窓ガラス3の外縁に接する部分をいう。
【0025】
車両用窓ガラス昇降装置1は、窓ガラス3を駆動する駆動機構4と、駆動機構4を制御する制御部5と、を備えている。
【0026】
駆動機構4は、窓枠25に対して窓ガラス3を上下方向に移動させるものであり、DCモータ等のモータ41と、モータ41の駆動力を窓ガラス3の上下方向の運動力に変換する動力変換機構42と、を備えている。動力変換機構42としては、例えば、窓ガラス3を支持しガイドレールに沿って摺動するキャリアプレートを備え、モータ41の駆動力によりワイヤをガイドレールに沿って摺動させることで、ワイヤに取り付けたキャリアプレートおよび窓ガラス3をガイドレールに沿って上下方向に移動させるウインドレギュレータ等を用いることができる。また、動力変換機構42としては、Xアーム式のレギュレータやその他の方式のものを用いることもできる。
【0027】
ドア2には、窓ガラス3を昇降操作するためのスイッチ(SW)24が設けられている。スイッチ24の出力信号線は、制御部5に接続されている。スイッチ24は、例えば、2段階クリック式の揺動スイッチからなり、下降側となる一端側を1段階クリックした際には下降側第1段階クリック信号、下降側となる一端側を2段階クリックした際には下降側第2段階クリック信号、上昇側となる他端側を1段階クリックした際には上昇側第1段階クリック信号、上昇側となる他端側を2段階クリックした際には上昇側第2段階クリック信号を、制御部5に出力するように構成されている。
【0028】
制御部5は、スイッチ24からの信号に応じて駆動機構4を制御し、窓ガラス3を上下方向に移動させるものである。制御部5は、CPU、メモリ、インターフェイス、ソフトウェア等を適宜組み合わせたコントロールユニットとしてドア2に搭載されている。なお、制御部5は、ドア2以外では例えば車両のミラーやシート等の制御を行う電子制御ユニット(ECU)に、機能として搭載されていてもよい。
【0029】
制御部5は、スイッチ24から下降側第1段階クリック信号が入力された際には、当該信号が入力されている間は窓ガラス3を下降し、下降側第2段階クリック信号が入力された際には、窓ガラス3が最下部まで下降されるか再びスイッチ24が操作されるまで窓ガラス3を自動的に下降するように駆動機構4を制御するように構成される。また、制御部5は、スイッチ24から上昇側第1段階クリック信号が入力された際には、当該信号が入力されている間窓ガラス3を上昇し、上昇側第2段階クリック信号が入力された際には、窓ガラス3が最上部まで上昇されるか再びスイッチ24が操作されるまで窓ガラス3を自動的に上昇するように駆動機構4を制御する。
【0030】
また、本実施の形態では、ドア2には、サンシェード100が設けられている。サンシェード100は、窓枠25の一部であるドアトリム23の上面Sからから引き出されるようにドア2に収納可能に設けられている。サンシェード100を引き出すサンシェード引き出し口101は、ドアトリム23の上面Sにおける窓ガラス3よりも車室内側に設けられており、サンシェード100は、窓ガラス3よりも車室内側に取り付けられるように構成されている。
【0031】
本実施の形態では、手動で取り付けるタイプのサンシェード100を備える場合について説明する。サンシェード100は、その上端部に形成された把持部102と、把持部102の下端部に連結されたメッシュ状のサンシェード本体103と、を備えている。把持部102の上端部には、車幅方向に突出した係止突起104が形成され、この係止突起104がサンシェード引き出し口101の周縁に係止することにより、サンシェード100のドア2内への脱落が防止されるように構成されている。
【0032】
また、把持部102には、2つのフック穴105が形成されており、このフック穴105に、枠部22の上方延設部22cから垂下するように形成されたフック106をそれぞれ係止させることで、サンシェード100が固定されるように構成されている。
【0033】
サンシェード100は、例えば、サンシェード本体103をロール状に丸めてドア2内に収納される。ドア2内には、サンシェード100のサンシェード本体103を巻き取るための部材(図9(a)に示すロール92)が備えられており、この部材をサンシェード100をドア2内に引き込むように付勢しておくことで、フック106の係止を解除した際にサンシェード100が自動的にドア2内に引き込まれ収納されるように構成されている。
【0034】
ここでは、車両の前後方向における後方に偏った位置にサンシェード100が設けられている場合について説明する。車両の前後方向における窓ガラス3の前方の領域の一部は、サンシェード100が取り付けられたときにサンシェード100により覆われない領域となる。
【0035】
なお、ここで説明したサンシェード100の構成はあくまで一例であり、例えば、スイッチ操作等により自動的に取り付けられるタイプのサンシェードを用いることもできる。
【0036】
以下、窓ガラス3による挟み込みを防止する構成について説明する。
【0037】
車両用窓ガラス昇降装置1は、ドア2及び窓ガラス3が閉まっている状態において窓ガラス3の外縁の少なくとも一部に沿って窓ガラス3よりも車室内側に設けられた検出ライン6を撮像するカメラ7を備えている。本実施の形態では、このカメラ7で撮像した画像を基に、窓ガラス3による挟み込みのおそれがある異物が存在するのか否かを判断することになる。カメラ7の具体的な構成、および取付位置については、後述する。
【0038】
検出ライン6は、窓ガラス3による挟み込みのおそれがある異物が存在するのか否かを判断する基準となるものであり、窓ガラス3よりも車室内側に設定されている。検出ライン6の具体的な構成、および設定位置については、後述する。
【0039】
また、本実施の形態では、検出ライン6に向かって赤外光を照射する光源8をさらに備えている。カメラ7は、光源8から照射されて検出ライン6で反射した赤外光を撮像する赤外線カメラから構成される。光源8を備えることで、夜間および夜間以外の赤外線が届かない暗い場所、例えば地下駐車場等であっても、挟み込みのおそれがある異物を検出することが可能になる。光源8としては、近赤外光を照射するものを用いることができる。
【0040】
制御部5は、カメラ7によって撮像された検出ライン6の少なくとも一部が異物によって遮蔽された遮蔽状態を検出する検出部51と、駆動機構4による窓ガラス3の移動時に検出部51によって遮蔽状態が検出されたとき、窓ガラス3による挟み込みを防止するための挟み込み防止動作を駆動機構4に行わせる挟み込み防止部52と、を有している。検出部51は、本発明の検出手段の一態様であり、挟み込み防止部52は、本発明の挟み込み防止手段の一態様である。検出部51と挟み込み防止部52の具体的な制御内容については、後述する。
【0041】
次に、カメラ7と検出ライン6の具体的な構成等について説明する。
【0042】
図2(a)は、サンシェード100をドア2内に収納した際のドア2を車室側の上方から見た概略図、図2(b)は、サンシェード100を取り付けた際のドア2を車室側の上方から見た概略図である。また、図3は、サンシェード100を取り付けた際のドア2を車両の前方側の下方から見た概略図、図4(a)は、カメラ7を含む位置での断面図、図4(b)は図4(a)のカメラを設けた部分の拡大図である。
【0043】
図2〜4に示すように、本実施の形態に係る車両用窓ガラス昇降装置1では、カメラ7は、少なくとも1つのレンズを含む光学系71と、光学系71によって被写体像が結像される撮像素子72と、を有しており、光学系71は、ドアトリム23の上面Sに形成された開口23aに対応する位置に、光学系71の光軸Cが開口23aを通るように配置されている。
【0044】
つまり、本実施の形態では、カメラ7がドアトリム23の上面Sに設けられている。ここで、ドアトリム23の上面Sとは、ドアトリム23の上端部における外面のことであり、鉛直方向の上方から視認可能な面である。ドアトリム23の上面Sは、車幅方向(水平方向)に対して傾斜していてもよい。ドアトリム23は、一般に、その上面Sの位置が、窓ガラス3の近傍、すなわち格納部21から窓ガラス3が導出される導出口21aの近傍で最も高くなり、窓ガラス3から離れるほど低くなるように湾曲して形成されている。よって、ドアトリム23の上面Sとは、ドアトリム23における窓ガラス3(導出口21a)の近傍の部分における外面(窓枠25の下側の内周縁面に相当する部分)であるといえる。
【0045】
開口23aは、導出口21aよりも車室内側に形成されており、カメラ7の光学系71は、導出口21aの車室内側に光軸Cが位置するように配置されている。ここでは、図4(a)の断面図において光学系71の光軸Cが鉛直方向と一致するようにカメラ7を配置しているが、光学系71の光軸Cは鉛直方向に対して車両の前後方向や車幅方向に傾斜していてもよく、カメラ7の取付位置や所望の撮像範囲に応じて適宜調整するとよい。
【0046】
本実施の形態では、カメラ7は、ドアトリム23の上面Sにおける車両の前側の位置(窓ガラス3に面したドアトリム23の上面Sにおける前側の位置)に設けられた孔23bに配置されている。なお、ここでは、一例としてドアトリム23の上面Sにカメラ7を設ける場合を説明するが、カメラ7を設置する位置は、上方延設部22cの下方側の面であってもよい。カメラ7を設置する位置の詳細については後述するが、本実施の形態では、車両の前後方向におけるサンシェード100よりも前方で、かつ、サンシェード100の前方の端部の近傍に、カメラ7が設置されている。
【0047】
カメラ7は、全体として円柱状に形成されており、その先端部には、径方向外方に突出するフランジ73が形成されている。カメラ7は、ドアトリム23の上方から孔23bに挿入され、フランジ73を孔23bの周縁に形成された凹部23cに収容し、かつ、孔23bの下方の周縁に設けられた係止爪23dをカメラ7に設けられた溝(図示せず)に係合することで、ドアトリム23に固定される。なお、ここでは、カメラ7の先端面とドアトリム23の上面Sとを一致させるように構成しているが、カメラ7の先端面は、ドアトリム23の上面Sから上方に突出していてもよいし、ドアトリム23の上面Sよりも下方に位置していてもよい。また、ここでは、光学系71の一部が開口23aの上方に位置するようにカメラ7を配置しているが、光学系71が開口23aの下方に位置するようにカメラ7を配置しても構わない。また、カメラ7をドアトリム23に固定する構造や、カメラ7の挿入方向については、特に限定するものではなく、適宜変更可能である。
【0048】
カメラ7は、その撮像範囲(視野角)が、窓ガラス3の移動領域の全てをカバーするように構成されることが望ましい。具体的には、窓ガラス3が完全に格納される場合には、カメラ7は、その視野角が、車両の後方側においては、鉛直方向上方から後方立設部22aの下端部まで、車両の前方側においては、鉛直方向上方から前方立設部22bの下端部までの範囲をカバーするように設定されることが望ましい。また、窓ガラス3が完全に格納されない場合には、カメラ7は、その視野角が、鉛直方向上方から窓ガラス3を最下部に移動させた際の窓ガラス3の上端(上縁)と後方立設部22aの交差位置まで、車両の前方側においては、鉛直方向上方から窓ガラス3を最下部に移動させた際の窓ガラス3の上端(上縁)と前方立設部22bとの交差位置までの範囲をカバーするように設定されることが望ましい。
【0049】
カメラ7の光学系71としては、上述の範囲での異物の検出を可能とすべく、広角レンズを用いることが望ましい。ここでは、光学系71として、複数のレンズを組み合わせ、視野角が車両の前後方向で180°以上、取付ばらつきを考慮して190°の超広角レンズを用いた。
【0050】
また、撮像素子72としては、異物の検出を速やかに行うため、なるべく画像の読み出し速度が速いものを用いることが望ましい。本実施の形態では、撮像素子72として、CMOS(Complementary MOS)イメージセンサを用いた。
【0051】
検出ライン6は、ドア2及び窓ガラス3が閉まっている状態において窓ガラス3の外縁の少なくとも一部に沿って形成されており、窓ガラス3よりも車室内側に設定されている。本実施の形態では、枠部22の全体に沿うように、かつ、窓ガラス3から車室内側に離間するように、検出ライン6を設定した。
【0052】
検出ライン6は、窓枠25に沿うように設定されていればよく、ドア2側に設定されてもよいし、車体側に設定されてもよい。例えば、窓ガラス3から枠部22の車室内側の端部(端面)までの距離D(図4(a)参照)の狭い車両においては、検出ライン6を車体側に設定してもよい。なお、検出ライン6は連続していなくてもよく、その一部がドア2側に設定され、その一部が車体側にそれぞれ設定されていてもよい。
【0053】
本実施の形態では、一例として、検出ライン6をドア2側に設定する場合について説明する。この場合、検出ライン6は、枠部22全体の内周縁面に、窓ガラス3から車室内側に離間するように設定されることになる。なお、枠部22の内周縁面とは、枠部22の窓ガラス3に臨む面であり、後方立設部22aにおける車両の前方側の面、前方立設部22bにおける車両の後方側の面、上方延設部22cの下方側の面である。つまり、枠部22の内周縁面とは、枠部22の外周面のうち窓ガラス3の近傍の部分である。
【0054】
光源8は、検出ライン6の全体を照射するように構成される。ここでは、4つの光源8を用いて、枠部22の全体の内周面に設定された検出ライン6に赤外線を照射するように構成したが、光源8の個数はこれに限定されるものではない。また、ここでは、カメラ7の近傍のドアトリム23の上面Sに光源8を配置したが、光源8の配置はこれに限定されず、例えば枠部22の内周縁面に光源8が配置されていてもよい。
【0055】
検出ライン6は、赤外光を照射したときに周囲の部材と異なる輝度となるように構成される。例えば、ドア2を閉じたときにドア2を構成する金属(板金)と車体側のゴム部材(ウエスト)とが隣接する場合、それらの境界(すなわちドア2と車体の境界)を検出ライン6として用いることができる。また、枠部22の内周縁面が樹脂で構成されている場合には、当該樹脂の一部に凹凸を設けて赤外線の反射率が周囲と異なるラインを形成し、このラインを検出ライン6として用いることも可能である。なお、これに限らず、検出ライン6は、赤外線の反射率が高い塗料を枠部22の内周面に塗布して構成されてもよいし、赤外線を照射したときの輝度が周囲と異なる既存の部材から構成されてもよい。検出ライン6を車体側に設定する場合も同様である。
【0056】
なお、本実施の形態においては、窓ガラス3の下降中においても、遮蔽状態が検出されたときには、挟み込み防止動作を行うように構成されている。これは、窓ガラス3を下降している際に指等の人体の一部が導出口21aに巻き込まれてしまうことを抑制するためである。導出口21aの周囲には、格納部21(ドア2の内部空間)への水等の侵入を抑止すべく、窓ガラス3に摺接するリップシール30aを有するウェザーストリップ30が設けられているが、窓ガラス3の下降時には、このリップシール30aを巻き込みつつ衣類や指等の人体の一部が格納部21側に巻き込まれてしまうおそれがある。本実施の形態によれば、このような巻き込みを抑制し、より安全性を高めることが可能である。なお、窓ガラス3の下降中に遮蔽状態が検出された際に実行される挟み込み防止動作には、窓ガラス3を下降させる動作は含まない。
【0057】
以下、カメラ7の光学系71と検出ライン6との間で、異物が配置されたときに遮蔽状態となる位置を連続させた面を検出面9と呼称する。検出面9は、光学系71の具体的な構造にもよるが、光学系71の中心(車幅方向、高さ方向、および車両の前後方向における中心)と検出ライン6とを結ぶ面と略等しくなる。なお、検出面9はその全体が連続した面でなくてもよく、例えば検出ライン6が連続してない場合などには、検出面9は複数の面で構成されることになる。また、検出ライン6を点とした場合におけるカメラ7の光学系71と検出ライン6との間で異物が配置されたときに遮蔽状態となる位置を連続させた線も、検出面9に含まれる。検出面9を複数の面または線で構成する場合、安全性を確保するために、隣接する面または線の間隔は、少なくとも幼児の指の太さ(例えば4mm)以下とされることが望ましい。
【0058】
次に、制御部5の制御内容について説明する。
【0059】
検出部51は、カメラ7で撮像した画像の画像処理を行い、検出ライン6を抽出する画像処理部51aと、画像処理部51aで画像処理を行った画像を基に、検出ライン6の少なくとも一部が異物によって遮蔽された遮蔽状態となっているかを判定する遮蔽状態判定部51bと、を備えている。
【0060】
画像処理部51aにおける検出ライン6を抽出する具体的な方法については、特に限定するものではないが、例えば、カメラ7で撮像した画像をトリミングして不要部分を除き、ポスタリゼーション処理もしくは2値化処理もしくはエッジ検出処理を行うことで、周囲の部材と輝度の異なる検出ライン6を抽出することができる。
【0061】
遮蔽状態判定部51bでは、例えば、予め遮蔽状態となっていない状態の画像(画像処理部51aによる画像処理後の画像)を初期状態画像として記憶しておき、当該初期状態画像と、画像処理部51aから出力された画像とを比較することで、両検出ライン6が異物によって遮蔽されているか否かを判定するように構成される。遮蔽状態判定部51bは、例えば、初期状態画像と、画像処理部51aから出力された画像とを比較し、抽出した検出ライン6のエッジの差分や検出ライン6の面積の差分が予め設定した異物判定閾値を超えたとき、遮蔽状態であると判定するように構成される。
【0062】
本実施の形態では、遮蔽状態判定部51bは、後述する検出範囲切替部51dで設定された検出範囲内の検出ライン6のみを対象として、遮蔽状態の有無を判定するように構成されている。
【0063】
挟み込み防止部52は、駆動機構4による窓ガラス3の移動時に検出部51によって遮蔽状態が検出されたとき、窓ガラス3による挟み込みを防止するための挟み込み防止動作を駆動機構4に行わせる。挟み込み防止動作としては、窓ガラス3の移動を停止させる動作や、窓ガラス3を安全な位置まで下降させる動作や、車室内に設置した警報装置による音や光により操作者に警告を行う動作や、これらを組み合わせた動作が含まれる。
【0064】
本実施の形態では、挟み込み防止部52は、後述するサンシェード取付検出部51cによりサンシェード100が取り付け途中であることが検出されたとき、遮蔽状態の検出の有無にかかわらず、窓ガラス3を移動させないように駆動機構4を制御するように構成されている。これは、サンシェード100の取り付け途中には搭乗者の手等が窓ガラス3に近接し、窓ガラス3による挟み込みが発生してしまうおそれがあるためである。
【0065】
本実施の形態では、サンシェード100が取り付け途中であることを検出したときに窓ガラス3を移動させないようにしているため、サンシェード100の取り付け途中に窓ガラス3による挟み込みが発生するおそれがなくなる。よって、後述するサンシェード取付検出部51cがサンシェード100が取り付け途中であることを検出したときには、遮蔽状態の判定を行わないように遮蔽状態判定部51bを構成し、システム負荷を低減するようにしてもよい。
【0066】
また、制御部5は、スイッチ24により窓ガラス3の移動が指示された後であって窓ガラス3の移動開始前に、検出部51によって遮蔽状態が検出されたとき、スイッチ24からの指示を無効とする指示無効部53をさらに備えている。指示無効部53を備えることによって、遮蔽状態が検出されている際にはそもそも窓ガラス3が移動しないことになるため、安全性をより高めることができる。
【0067】
さらに、本実施の形態に係る車両用窓ガラス昇降装置1では、検出部51は、窓ガラス2へのサンシェード100の取り付け状態を検出するサンシェード取付検出部51cと、サンシェード取付検出部51cが検出したサンシェード100の取り付け状態に応じて、遮蔽状態を検出する検出ライン6の範囲を切り替える検出範囲切替部51dと、を備えている。
【0068】
本実施の形態では、サンシェード取付検出部51cは、サンシェード100が取り付けられたこと(サンシェード100の取り付けが完了したこと)、および、サンシェード100が取り付け途中であること(サンシェード100の取り付けが完了しておらず、かつ、サンシェード100が収納されていない状態であること)を、それぞれ検出可能に構成されている。
【0069】
本実施の形態では、サンシェード100に判定用マーカ110を設け、この判定用マーカ110が所定の領域にあるか否かを画像処理部51aで画像処理した画像から検出することで、サンシェード100の取り付け状態を判断するようにサンシェード取付検出部51cを構成した。このように構成することで、サンシェード100の取り付け状態を検出するセンサ等を設けることなく、低コストにサンシェード100の取り付け状態を検出することが可能になる。
【0070】
具体的には、サンシェード取付検出部51cは、カメラ7が撮像した画像(画像処理部51aで画像処理した画像)から、予め設定された取付判定領域内で判定用マーカ110が検出されたとき、窓ガラス3にサンシェード100が取り付けられたことを検出するように構成されている。取付判定領域は、サンシェード100が取り付けられたときの判定用マーカ110の位置を含むように、適宜な領域に設定される。取付判定領域は、風によるサンシェード100のばたつきの影響を考慮して、サンシェード100が取り付けられたことを確実に検出できるように、余裕をもった範囲に設定されることが望ましい。
【0071】
なお、サンシェード取付検出部51cは、判定用マーカ110が、予め設定された取付判定領域内にある状態が所定時間継続したときに、窓ガラス3にサンシェード100が取り付けられたことを検出するように構成されてもよい。このように構成することで、サンシェード100の取り付け直後に、サンシェード100を取り付けた搭乗者の手が退避する前に遮蔽状態が検出されてしまうことを抑制できる。
【0072】
また、サンシェード取付検出部51cは、カメラ7が撮像した画像から、予め設定された収容判定領域内で判定用マーカ110が検出されたとき、サンシェード100がドア2に収納されていることを検出するように構成されている。収容判定領域は、サンシェード100の収納時の判定用マーカ110の位置を含むように、適宜な領域に設定される。
【0073】
さらに、サンシェード取付検出部51cは、収容判定領域内、および、取付判定領域内で判定用マーカ110が検出されないとき、サンシェード100が取り付け途中であることを検出するように構成されている。
【0074】
判定用マーカ110は、例えば、赤外線の反射率が高い高反射材からなり、サンシェード100と一体に設けられている。なお、検出ライン6を誤って判定用マーカ110と判定してしまうことを避けるために、判定用マーカ110としては、検出ライン6と明らかに異なる形状とするか、または検出ライン6と異なる赤外線の反射率となるものを用いることが望ましい。これにより、カメラ7が撮像した画像中の検出ライン6と重なる領域であっても、取付判定領域や収容判定領域を設定することが可能になる。
【0075】
判定用マーカ110は、サンシェード100が取り付けられたとき、および、サンシェード100がドア2内に収納されたときに、カメラ7で確実に撮像できる位置に設けられる。本実施の形態では、車両の前後方向における前方にカメラ7を設置しているため、把持部102の前方かつ上方の端部に、把持部102の前面と上面とにわたるように判定用マーカ110を設けた(図6(a)参照)。なお、判定用マーカ110は1つである必要はなく、例えば、取付判定用と収納判定用とで異なる判定用マーカ110を用いるようにしても構わない。
【0076】
検出範囲切替部51dは、サンシェード100の取り付け状態に応じて、検出ライン6の検出範囲を切り替えるものである。
【0077】
本実施の形態では、検出範囲切替部51dは、サンシェード取付検出部51cがサンシェード100が取り付けられたことを検出したとき、遮蔽状態を検出する検出ライン6の範囲を、予め設定した範囲に切り替えるように構成されている。なお、これに限らず、本実施の形態では、サンシェード100の取り付け途中には、遮蔽状態の検出の有無にかかわらず窓ガラス3が移動しないように制御されているため、検出範囲切替部51dは、サンシェード100が取り付け途中であることが検出されているときに、遮蔽状態を検出する検出ライン6の範囲を、予め設定した範囲に切り替えるように構成されてもよい。つまり、検出範囲切替部51dは、サンシェード取付検出部51cがサンシェード100が取り付け途中であることを検出した時点から、サンシェードが取り付けられたことを検出した時点までの間の期間に、遮蔽状態を検出する検出ライン6の範囲を、予め設定した範囲に切替えるように構成されていればよい。
【0078】
検出範囲切替部51dは、サンシェード100が収納されていることが検出されているときには、サンシェード100による影響がないため、窓ガラス3の移動領域全体をカバーできるように、検出ライン6の検出範囲を設定するように構成される。ここでは、検出ライン6の全体を検出範囲に設定するように検出範囲切替部51dを構成した。サンシェード100の収納時の検出範囲を図5(a),(b)に模式的に示す。
【0079】
また、検出範囲切替部51dは、サンシェード100が取付けられたことが検出されたときには、カメラ7と検出ライン6との間にサンシェード100が位置する範囲、および、サンシェード100が風によりばたついた際にサンシェード100により遮蔽状態が検出されるおそれがある範囲を除いた範囲の検出ライン6を検出範囲に設定するように構成される。
【0080】
本実施の形態では、車両の前後方向における後方に偏った位置にサンシェード100が設けられており、サンシェード100が取り付けられたときに、窓ガラス3の前方の領域の一部がサンシェード100により覆われないように構成されている。そこで、本実施の形態では、このサンシェード100により覆われない窓ガラス3の前方の領域において窓ガラス3による挟み込みを防止するために、サンシェード100よりも前方に位置する検出ライン6を検出範囲に設定するように、検出範囲切替部51dを構成した。また、カメラ7は、サンシェード100が取り付けられた際にサンシェード100よりも前方に位置する検出ライン6を撮像できるように、サンシェード100を非収納とし取り付けた際に車両の前後方向におけるサンシェード100よりも前側に設置されている。サンシェード100が取付けられたときの検出範囲を図6(a),(b)に模式的に示す。
【0081】
図6(a),(b)に示すように、本実施の形態では、サンシェード100が取付けられたときには、上方延設部22cに形成される検出ライン6のうち、サンシェード100の前側の端部よりも前方の検出ライン6と、前方立設部22bに形成される検出ライン6とを、検出範囲に設定するように検出範囲切替部51dを構成している。ここでは、風によるサンシェード100のばたつきの影響を受けないように、上方延設部22cに形成される検出ライン6のうち、サンシェード100の前側の端部から前方に所定距離の範囲の検出ライン6を検出範囲から除くようにした。
【0082】
本実施の形態では、サンシェード100が取付けられたときには、窓ガラス3のうちサンシェード100の前方のサンシェード100により覆われていない領域と対向するように検出面9が形成されることになる。すなわち、本実施の形態によれば、サンシェード100が覆われていない領域に異物が侵入したときに、挟み込み防止動作を行うことが可能になる。
【0083】
なお、サンシェード100による誤動作を抑制するために、サンシェード100が取り付けられたときに挟み込み防止動作を行わないように構成することも考えられる。しかし、車両においては窓ガラス3の全体がサンシェード100で覆われない場合も多く、このような場合に、サンシェード100に覆われていない領域において窓ガラス3による挟み込みが発生する可能性がある。よって、この場合、確実に窓ガラス3による挟み込みを防止し安全性を確保するためには、サンシェード100が取り付けられているときには窓ガラス3を移動できないように構成する必要があった。これに対して、本実施の形態によれば、サンシェード100が取り付けられたときであっても、サンシェード100により覆われていない領域での異物の侵入を検知し、窓ガラス3による挟み込みを防止することが可能になる。その結果、サンシェード100が取り付けられているときにも窓ガラス3の移動(例えば換気のために窓ガラス3を開いたり閉じたりする操作)を許容することが可能になり、安全性と利便性を共に向上することが可能になる。
【0084】
安全性をより向上させるためには、サンシェード100が覆われていない領域の略全体で異物の侵入を検出できるようにすることが望ましいといえる。そこで、本実施の形態では、図7に示すように、カメラ7を設ける開口23aを、サンシェード100を非収納とし取り付けた際におけるサンシェード100の前側の端部の近傍のドアトリム23の上面Sに形成し、サンシェード100の前側の端部の近傍にカメラ7を設置した。なお、カメラ7を、サンシェード100の前側の端部よりも前方に移動させるほど、異物の侵入を検出できる範囲が小さくなる(サンシェード100で覆われておらず、かつ、異物の侵入を検出できない領域が増加する)ので、カメラ7は、サンシェード100の前側の端部よりも前方の領域で、かつ、サンシェード100の前側の端部の直近の領域(図示破線で囲った領域A)に設置することが望ましいといえる。なお、ここではカメラ7の全体がサンシェード100の前側の端部よりも前方に設置されている場合を示しているが、これに限らず、少なくとも、カメラ7の光学系71の中心位置が、サンシェード100の前側の端部よりも前方に位置していればよい。
【0085】
ここでは、カメラ7をドアトリム23の上面Sに設ける場合を説明したが、これに限らず、上方延設部22cの下方側の面で、かつ、サンシェード100の前側の端部よりも前方の領域で、かつ、サンシェード100の前側の端部の直近の領域にカメラ7を設けても、同様の作用効果を得ることができる。この場合、前方立設部22bの後方の面とドアトリム23の上面Sと後方立設部22aの前方の面に連続するように検出ライン6を形成することが望ましい。
【0086】
また、検出ライン6とカメラ7(光学系71の中心位置)の車幅方向における位置は、なるべくサンシェード100の車幅方向の位置に近い位置に設けることが望ましい。これにより、検出面9とサンシェード100の間に形成される隙間を小さくすることが可能になり、当該隙間を異物(人体の一部等)が通過して窓ガラス3に挟まれてしまうこと(例えば、検出面9がサンシェード100よりも車室内側に形成されている場合に両者の隙間から検出面9の窓ガラス3側の空間に異物が侵入してしまうこと、および、検出面9がサンシェード100よりも窓ガラス3側に形成されている場合に両者の隙間からサンシェード100の窓ガラス3側の空間に異物が侵入してしまうこと)を抑制できる。
【0087】
なお、例えば、ドア2の形状等の影響で車幅方向におけるサンシェード100と近い位置に検出ライン6とカメラ7を設けることが困難な場合等には、図8に示すように、サンシェード100の近傍にて車幅方向に延びる追加検出ライン61を設け、検出面9とサンシェード100間の隙間を異物が通過してしまうことを抑制するように構成してもよい。図8の例では、車幅方向においてサンシェード100よりも車室内側に検出ライン6を形成しているため、追加検出ライン61は、サンシェード100が取り付けられたときに検出範囲となる上方延設部22cに形成された検出ライン6のサンシェード100側の端部から、車幅方向に沿って窓ガラス3側に延びるように形成されている。車幅方向においてサンシェード100よりも窓ガラス3側に検出ライン6を形成した場合には、サンシェード100が取り付けられたときに検出範囲となる上方延設部22cに形成された検出ライン6のサンシェード100側の端部から、車幅方向に沿って車室内側に延びるように追加検出ライン61を形成するとよい。追加検出ライン61を形成する場合、検出範囲切替部51dは、サンシェード100が取り付けられた時の検出範囲に、追加検出ライン61を含めるように構成される。検出範囲切替部51dは、サンシェード100が取り付けられていない通常時には、検出範囲から追加検出ライン61を除外するように構成されてもよい。
【0088】
また、ここでは、車両の前後方向における後方に偏った位置にサンシェード100が設けられており、サンシェード100が取り付けられたときに、窓ガラス3の前方の領域の一部がサンシェード100により覆われないように構成されている場合について説明したが、サンシェード100を設ける位置等についてはこれに限定されない。例えば、車両の前後方向における前方に偏った位置にサンシェード100が設けられ、サンシェード100が取り付けられたときに、窓ガラス3の後方の領域の一部がサンシェード100により覆われないように構成されている場合には、サンシェード100の後側の端部よりも後方の領域で、かつ、サンシェード100の後側の端部の直近の領域の窓枠25の内周縁面(ドアトリム23の上面Sまたは上方延設部22cの下方側の面)にカメラ7を設けるとよい。
【0089】
さらに、サンシェード100が取り付けられたときに、窓ガラス3の前方の領域の一部と、窓ガラス3の後方の領域の一部がサンシェード100により覆われないように構成されている場合には、2台のカメラ7を用い、サンシェード100の前後にそれぞれカメラ7を設けるように構成してもよい。この場合、図9(a),(b)に示すように、一方のカメラ7を、サンシェード100の前側の端部よりも前方の領域で、かつ、サンシェード100の前側の端部の直近の領域に設け、他方のカメラ7bを、サンシェード100の後側の端部よりも後方の領域で、かつ、サンシェード100の後側の端部の直近の領域に設けるとよい。これにより、サンシェード100を取り付けた際に、サンシェード100により覆われない前後の領域において、異物の侵入を検出し窓ガラス3による挟み込みを防止することが可能になる。
【0090】
ここで、サンシェード100の取り付け状態を検出する手段の変形例を説明しておく。
【0091】
本実施の形態では、判定用マーカ110を用いてサンシェード100の取り付け状態を検出する場合について説明したが、これに限らず、サンシェード100の端部(把持部102やサンシェード本体103の縁部)や部材同士の境界面を判定用マーカとして用いてもよい。また、例えば把持部102全体を高反射材で構成する等して、サンシェード100を構成する部材そのものを判定用マーカとして用いてもよい。
【0092】
さらに、サンシェード100の取り付け状態をセンサにより検出するように構成してもよい。すなわち、サンシェード100の取り付け状態を検出するセンサを備え、当該センサの出力に基づき、窓ガラス3へのサンシェード100の取り付け状態を検出するようにサンシェード取付検出部51cを構成してもよい。例えば、サンシェード100の収納時にサンシェード100全体がドア2内に収納され判定用マーカ110によるサンシェード100の取り付け状態の検出が困難な構造となっている場合には、センサによるサンシェード100の取り付け状態の検出が有効である。
【0093】
サンシェード100の取り付け状態を検出するセンサの一例を図10(a),(b)に示す。なお、図10(a),(b)に示すセンサ91,93はあくまで一例であり、センサの具体的な構成等はこれに限定されない。
【0094】
図10(a)に示すセンサ91は、サンシェード100を巻き取るロール92の回転角度を検出する回転角センサである。センサ91により検出したロール92の回転角度により、サンシェード100の取り付け状態を検出することが可能である。センサ91として用いる回転角センサの具体的な構成は特に限定するものではないが、例えば、ロール92と共に回転するように設けられた回転軸の回転に応じて抵抗値が変化する可変抵抗素子を用い、当該可変抵抗素子の抵抗値を検出することでロール92の回転角度を検出するものを用いることができる。また、例えば光学式や磁気式のロータリエンコーダ等をセンサ91として用いることも可能である。
【0095】
図10(b)に示すセンサ93は、フック106に設けられ、フック106を把持部102のフック穴105に係止した際に、フック穴105の周縁の把持部102に押下されオンとなるスイッチから構成されている。このようなセンサ93を用いることで、サンシェード100が取り付けられたことを検出することが可能になる。
【0096】
なお、サンシェード100の取り付け状態を検出するセンサは1つである必要はなく、複数のセンサを組み合わせて用いることができる。また、センサによるサンシェード100の取り付け状態の検出と、判定用マーカ110によるサンシェード100の取り付け状態の検出とを、併用することも可能である。例えば、サンシェード100がドア2内に収納されているか否かをセンサにより検出し、判定用マーカ110が取付判定領域にあるか否かによりサンシェード100が取り付けられているかを検出するように構成することも可能である。
【0097】
さらにまた、サンシェード100がスイッチ操作等により自動で取り付けられるタイプのものである場合には、サンシェード100の移動制御を行う機構から、サンシェード100の位置情報等の情報を取得するように構成してもよい。この場合、サンシェード取付検出部51cは、サンシェード100の移動制御を行う機構から入力された位置情報等の情報を基に、サンシェード100の取り付け状態を検出するように構成されることになる。
【0098】
次に、車両用窓ガラス昇降装置1の制御フローについて説明する。
【0099】
図11に示すように、車両用窓ガラス昇降装置1では、まず、ステップS1にて、制御部5が、スイッチ24から信号が入力されたかを判断する。ステップS1にてNOと判断された場合、ステップS2にて、制御部5が、カメラ7の電源をオフ(または電源オフの状態を継続)して、ステップS1に戻る。なお、図示していないが、光源8の電源がオンとなっている場合には、ステップS2にて光源8の電源をオフにする。
【0100】
ステップS1にてYESと判断された場合、ステップS3にて、制御部5が、カメラ7の電源をオン(または電源オンの状態を継続)し、ステップS4に進む。ここでは図示を省略しているが、カメラ7で撮像するための照度が不足している場合には、ステップS3にて光源8の電源をオンにする。
【0101】
ステップS4では、検出部51(画像処理部51aおよび遮蔽状態判定部51b)が、カメラ7で撮像した画像を基に、遮蔽状態を検出する処理(遮蔽状態検出処理)を行う。遮蔽状態検出処理の詳細については、後述する。その後、ステップS5にて、指示無効部53が、検出部51により遮蔽状態が検出されたかを判断する。
【0102】
ステップS5でYESと判断された場合、指示無効部53は、窓ガラス3による挟み込みのおそれがあると判断し、窓ガラス3の移動を行わずに(すなわちスイッチ24からの信号を無効として)ステップS1に戻る。
【0103】
ステップS5にてNOと判断された場合、ステップS6にて、制御部5が、スイッチ24から入力された信号が、第1段階クリック信号(下降側第1段階クリック信号または上昇側第1段階クリック信号)であるかを判断する。
【0104】
ステップS6でYESと判断された場合、ステップS7にて、制御部5が、駆動機構4を制御して、窓ガラス3の移動制御を行う。
【0105】
その後、ステップS8にて、検出部51が、カメラ7で撮像した画像を基に、遮蔽状態を検出する処理(遮蔽状態検出処理)を行う。遮蔽状態検出処理の詳細については、後述する。その後、ステップS9にて、挟み込み防止部52が、検出部51により遮蔽状態が検出されたかを判断する。
【0106】
ステップS9でYESと判断された場合、窓ガラス3による挟み込みのおそれがあるため、ステップS10にて、挟み込み防止部52が、窓ガラス3の移動を停止させる、あるいは、窓ガラス3を安全な位置まで下降させる等の挟み込み防止動作を実行する。その後、ステップS18にて制御部5が窓ガラス3の移動を終了した後に、ステップS2に戻る。このように、本実施の形態では、スイッチ24から第1段階クリック信号の入力中に遮蔽状態が検出された場合には、挟み込み防止動作を行った後に窓ガラス3の移動を終了する。
【0107】
ステップS9でNOと判断された場合、窓ガラス3による挟み込みのおそれはないので、ステップS11にて、制御部5が、スイッチ24から信号が入力されているかを判断する。ステップS11でNOと判断された場合、スイッチ24の操作が終了したことになるので、ステップS18にて制御部5が窓ガラス3の移動を終了した後に、ステップS2に戻る。ステップS11でYESと判断された場合、ステップS6に戻り、窓ガラス3の移動を継続する。
【0108】
他方、ステップS6でNOと判断された場合、すなわち、スイッチ24から第2段階クリック信号(下降側第2段階クリック信号または上昇側第2段階クリック信号)が入力された場合、ステップS12にて、制御部5が、駆動機構4を制御して、窓ガラス3の移動制御を行う。
【0109】
その後、ステップS13にて、検出部51が、カメラ7で撮像した画像を基に、遮蔽状態を検出する処理(遮蔽状態検出処理)を行う。遮蔽状態検出処理の詳細については、後述する。その後、ステップS14にて、挟み込み防止部52が、検出部51により遮蔽状態が検出されたかを判断する。
【0110】
ステップS14でYESと判断された場合、窓ガラス3による挟み込みのおそれがあるため、ステップS15にて、挟み込み防止部52が挟み込み防止動作を実行する。その後、ステップS18にて窓ガラス3の移動を終了した後に、ステップS2に戻る。つまり、本実施の形態では、スイッチ24から第2段階クリック信号が入力され窓ガラス3を移動させている際に遮蔽状態が検出された場合には、挟み込み防止動作を行った後に窓ガラス3の移動を終了する。
【0111】
ステップS14でNOと判断された場合、窓ガラス3による挟み込みのおそれはないので、ステップS16にて、制御部5が、窓ガラス3が端まで(上端または下端の位置まで)移動されたかを判断する。ステップS16でYESと判断された場合、ステップS18にて、制御部5が窓ガラス3の移動を終了した後に、ステップS2に戻る。なお、窓ガラス3の位置情報は、モータ41の内部に組み込んだホールICを用いて生成した回転パルス、または電流リップルを用いて取得するとよい。
【0112】
ステップS16でNOと判断された場合、ステップS17にて、スイッチ24から新たな信号が入力されたか(第2段階クリック信号の入力後に新たな信号が入力されたか)を判断する。ステップS17でYESと判断された場合、ステップS6に戻る。ステップS17でNOと判断された場合、ステップS12に戻り、窓ガラス3の移動を継続する。つまり、第2段階クリック信号が入力された場合、遮蔽状態が検出されるか、窓ガラス3が端まで移動するか、あるいは新たな信号がスイッチ24から入力されるまで、窓ガラス3の移動を継続する。
【0113】
図12に示すように、ステップS4,S8,S13の遮蔽状態検出処理では、まず、ステップS20にて、サンシェード取付検出部51cが、カメラ7が撮像した画像(画像処理部51aが画像処理した画像)を基に、取付判定領域内に判定用マーカ110があるか、収容判定領域内に判定用マーカ110があるかを判断し、サンシェード100の取り付け状態の検出を行う。ステップS20では、取付判定領域内で判定用マーカ110が検出されたときには、サンシェード100が取り付けられたことを検出し、取付判定領域内および収容判定領域内で判定用マーカ110が検出されなかったときには、サンシェード100が取り付け途中であることを検出する。
【0114】
その後、ステップS21にて、ステップS20でサンシェード100が取り付けられたことを検出したかを判断する。ステップS21にてYESと判断された場合、ステップS22にて、検出範囲切替部51dが、検出ライン6の検出範囲を、予め設定したサンシェード100が取り付けられているときの範囲(サンシェード取付時範囲)に設定し、ステップS26に進む。
【0115】
ステップS21にてNOと判断された場合、ステップS23にて、ステップS20でサンシェード100が取り付け途中であることを検出したかを判断する。ステップS23にてYESと判断された場合、ステップS24にて、挟み込み防止部52が窓ガラス3の移動を停止させ、遮蔽状態の検出を行わずに図11のステップS2に戻る。
【0116】
ステップS23にてNOと判断された場合、ステップS25にて、検出範囲切替部51dが、検出ライン6の検出範囲を、サンシェード100を取り付けていない通常時の検出範囲(ここでは検出ライン6の全体)に設定し、ステップS26に進む。
【0117】
ステップS26では、遮蔽状態判定部51bが、カメラ7が撮像した画像(画像処理部51aが画像処理した画像)を基に、検出範囲切替部51dにより設定された検出範囲内で遮蔽状態の検出処理を行う。その後、リターンする。
【0118】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る車両用窓ガラス昇降装置1では、窓ガラス3へのサンシェード100の取り付け状態を検出するサンシェード取付検出部51cと、サンシェード取付検出部51cが検出したサンシェード100の取り付け状態に応じて、遮蔽状態を検出する検出ライン6の範囲を切り替える検出範囲切替部51dと、を備えている。
【0119】
このように構成することで、サンシェード100の取り付け状態に応じて遮蔽状態を検出する検出ライン6の範囲を異ならせることが可能となり、サンシェード100の取り付け時に遮蔽状態を検出する検出ライン6の範囲を適宜に設定しておくことで、サンシェード100を取り付けた際の誤作動を抑制することが可能になる。
【0120】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0121】
[1]車両のドア(2)に配置され窓ガラス(3)を上下方向に移動させる駆動機構(4)と、前記駆動機構(4)を制御する制御部(5)と、前記ドア(2)及び前記窓ガラス(3)が閉まっている状態において前記窓ガラス(3)の外縁の少なくとも一部に沿って前記窓ガラス(3)よりも車室内側に設けられた検出ライン(6)を撮像するカメラ(7)と、を備え、前記制御部(5)は、前記カメラ(7)によって撮像された前記検出ライン(6)の少なくとも一部が異物によって遮蔽された遮蔽状態を検出する検出手段(51)と、前記駆動機構(4)による前記窓ガラス(3)の移動時に前記検出手段(51)によって前記遮蔽状態が検出されたとき、前記窓ガラス(3)による挟み込みを防止するための挟み込み防止動作を前記駆動機構(4)に行わせる挟み込み防止手段(52)とを有し、前記検出手段(51)は、前記窓ガラス(3)へのサンシェード(100)の取り付け状態を検出するサンシェード取付検出部(51c)と、前記サンシェード取付検出部(51c)が検出した前記サンシェード(100)の取り付け状態に応じて、前記遮蔽状態を検出する前記検出ライン(6)の範囲を切り替える検出範囲切替部(51d)と、を備えた、車両用窓ガラス昇降装置(1)。
【0122】
[2]前記サンシェード取付検出部(51c)は、前記サンシェード(100)が取り付けられたこと、および、前記サンシェード(100)が取り付け途中であることを検出可能に構成され、前記検出範囲切替部(51d)は、前記サンシェード取付検出部(51c)が前記サンシェード(100)が取り付け途中であることを検出しているとき、または、前記サンシェード(100)が取り付けられたことを検出したときに、前記遮蔽状態を検出する前記検出ライン(6)の範囲を、予め設定した範囲に切替えるように構成される、[1]に記載の車両用窓ガラス昇降装置。
【0123】
[3]前記サンシェード(100)は、前記ドア(2)に収納可能に設けられおり、前記挟み込み防止手段(52)は、前記サンシェード取付検出部(51c)が前記サンシェード(100)が取り付け途中であることを検出したとき、前記遮蔽状態の検出の有無にかかわらず、前記窓ガラス(3)を移動させないように前記駆動機構(4)を制御するように構成される、[2]に記載の車両用窓ガラス昇降装置(1)。
【0124】
[4]前記車両は、前記ドア(2)及び前記窓ガラス(3)が閉まっている状態で前記窓ガラス(3)の外縁に接する窓枠(25)を有し、前記サンシェード(100)は、前記窓枠(25)から引き出されるように前記ドア(2)に収納可能に設けられており、前記カメラ(7)は、前記窓枠(25)の前記窓ガラス(3)よりも車室内側の内周縁面に配置されると共に、前記サンシェード(100)を非収納とし取り付けた際に、前記車両の前後方向における前記サンシェード(100)よりも前側または後側の少なくとも一方に配置される、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の車両用窓ガラス昇降装置(1)。
【0125】
[5]前記カメラ(7)は、少なくとも1つのレンズを含む光学系(71)と、前記光学系(71)によって被写体像が結像される撮像素子(72)とを有し、前記窓枠(25)の前記窓ガラス(3)よりも車室内側の内周縁面に形成された開口(23a)に対応する位置に、前記光学系71の光軸が前記開口(23a)を通るように配置されており、前記開口(23a)は、前記サンシェード(100)を非収納とし取り付けた際における前記サンシェード(100)の前側の端部の近傍、または、前記サンシェード(100)を非収納とし取り付けた際における前記サンシェード(100)の後側の端部の近傍に形成される、[4]に記載の車両用窓ガラス昇降装置(1)。
【0126】
[6]前記サンシェード(100)には、判定用マーカ(110)が設けられており、前記サンシェード取付検出部(51c)は、前記カメラ(7)が撮像した画像から、前記サンシェード(100)が取り付けられたときの前記判定用マーカ(110)の位置を含むように予め設定された取付判定領域内で前記判定用マーカ(110)が検出されたとき、前記窓ガラス(3)に前記サンシェード(100)が取り付けられたことを検出するように構成される、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の車両用窓ガラス昇降装置。
【0127】
[7]前記判定用マーカ(110)は、前記サンシェード(100)の収納時に前記カメラ(7)に撮像される位置に形成され、前記サンシェード取付検出部(51c)は、前記カメラ(7)が撮像した画像から、前記サンシェード(100)の収納時の前記判定用マーカ(110)の位置を含むように予め設定された収容判定領域内、および、前記取付判定領域内で前記判定用マーカ(110)が検出されないとき、前記サンシェード(110)が取り付け途中であることを検出するように構成される、[6]に記載の車両用窓ガラス昇降装置(1)。
【0128】
[8]前記サンシェード(100)の取り付け状態を検出するセンサを備え、前記サンシェード取付検出部(51c)は、前記センサの出力に基づき、前記窓ガラス(3)への前記サンシェード(100)の取り付け状態を検出するように構成される、[1]乃至[7]の何れか1項に記載の車両用窓ガラス昇降装置(1)。
【0129】
[9][1]乃至[8]の何れか1項に記載の車両用窓ガラス昇降装置(1)を備えた車両。
【0130】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0131】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0132】
例えば、上記実施の形態では言及しなかったが、車両用窓ガラス昇降装置1には、モータ41の回転数を監視し、窓ガラス3の上昇中に負荷が増加しモータ41の回転数が減少したときに、窓ガラスによる異物の挟み込みが発生したと判定し、窓ガラス3の移動方向を反転させ自動で下降させる等の各種安全動作を行わせる安全装置が備えられてもよい。
【0133】
また、上記実施の形態では、車両の後側のドア2に適用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、本発明は車両の前側のドアにも適用可能である。
【0134】
さらに、上記実施の形態では、枠部22を有するドア2に適用する場合を説明したが、本発明は、ドア2側に枠部22を有さないハードトップドアにも適用可能である。
【符号の説明】
【0135】
1…車両用窓ガラス昇降装置
2…ドア
3…窓ガラス
4…駆動機構
5…制御部
6…検出ライン
7…カメラ
51…検出部(検出手段)
51a…画像処理部
51b…遮蔽状態判定部
51c…サンシェード取付検出部
51d…検出範囲切替部
52…挟み込み防止部(挟み込み防止手段)
100…サンシェード
110…判定用マーカ
【要約】
【課題】サンシェードを取り付けた際の誤作動を抑制可能な車両用窓ガラス昇降装置及び車両を提供する。
【解決手段】窓ガラス3を移動させる駆動機構4と、駆動機構4を制御する制御部5と、ドア2及び窓ガラス3が閉まっている状態において窓ガラス3の外縁に沿って設けられた検出ライン6を撮像するカメラ7と、を備え、制御部5は、カメラ7によって撮像された検出ライン6が異物によって遮蔽された遮蔽状態を検出する検出部51と、窓ガラス3の移動時に遮蔽状態が検出されたとき、窓ガラス3による挟み込みを防止する動作を駆動機構4に行わせる挟み込み防止部52とを有し、検出部51は、サンシェード100の取り付けを検出するサンシェード取付検出部51cと、サンシェード100の取り付けを出したとき、遮蔽状態を検出する検出ライン6の範囲を予め設定した範囲に切り替える検出範囲切替部51dとを備えた。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12