特許第6072180号(P6072180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6072180アマチャヅル由来の新規な糖転移酵素及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072180
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】アマチャヅル由来の新規な糖転移酵素及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12P 33/00 20060101AFI20170123BHJP
   C12N 9/10 20060101ALI20170123BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170123BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20170123BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20170123BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20170123BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20170123BHJP
   A01H 5/00 20060101ALI20170123BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20170123BHJP
   A01K 67/033 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C12P33/00ZNA
   C12N9/10
   C12N15/00 A
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A01H5/00 A
   A01K67/027
   A01K67/033 501
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-184541(P2015-184541)
(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公開番号】特開2016-59383(P2016-59383A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2015年9月17日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0125149
(32)【優先日】2014年9月19日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515238703
【氏名又は名称】コリア アドヴァンスド インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】515262971
【氏名又は名称】インテリジェント シンセティック バイオロジー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】キム スン チャン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ギルツ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン スク‐チェ
(72)【発明者】
【氏名】キム ウーヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イム スーファン
(72)【発明者】
【氏名】イム ワン‐テク
【審査官】 小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/051215(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/051214(WO,A1)
【文献】 Phytomedicine,2005年,Vol. 12,p. 638-643
【文献】 Chem. Pharm. Bull.,1989年,Vol. 37, No. 1,p. 135-139
【文献】 J. Nat. Prod.,2004年,Vol. 67,p. 942-952
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 − 15/90
C12N 9/24 − 9/46
C12P 1/00 − 37/06JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20位の炭素にグリコシド結合(glycosidic bond)で連結されたグルコースを有するPPD(protopanaxadiol)系又はPPT(protopanaxatriol)系ジンセノサイドと、配列番号1のアミノ酸配列からなるUDP−糖転移酵素(uridine diphosphate glycosyltransferase)タンパク質、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む形質転換体前記ポリヌクレオチドを含むベクターを含む形質転換体、又は前記タンパク質を含む前記形質転換体の培養物反応させることを含む、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースがグリコシル化された、PPD系又はPPT系ジンセノサイドを製造する方法。
【請求項2】
前記20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースを有するPPD系又はPPT系ジンセノサイドは、CK(compound K)、F2、Rd、F1、Rg及びReからなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グリコシル化されたジンセノサイドの製造は、CKのギペノシド(Gypenoside)LXXVへの変換、F2のギペノシド(Gypenoside)XVIIへの変換、RdのRbへの変換、F1のノトジンセノサイド(Notoginsenoside)Uへの変換、Rgのノトジンセノサイド(Notoginsenoside)R3への変換、及びReのグルコ−Re(gluco-Re)への変換からなる群から選択される1つ以上の変換過程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
20位の炭素にグリコシド結合(glycosidic bond)で連結されたグルコースを有するPPD(protopanaxadiol)系又はPPT(protopanaxatriol)系ジンセノサイドと、配列番号1のアミノ酸配列からなるUDP−糖転移酵素(uridine diphosphate glycosyltransferase)タンパク質、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む形質転換体、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを含む形質転換体、又は前記タンパク質を含む前記形質転換体の培養物反応させることを含む、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースを有するPPD系又はPPT系ジンセノサイドをグリコシル化するための方法
【請求項5】
前記20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースを有するPPD系又はPPT系ジンセノサイドは、CK(compound K)、F2、Rd、F1、Rg及びReからなる群から選択される1つ以上である、請求項に記載の方法
【請求項6】
前記グリコシル化は、CKのギペノシド(Gypenoside)LXXVへのグリコシル化、F2のギペノシド(Gypenoside)XVIIへのグリコシル化、RdのRbへのグリコシル化、F1のノトジンセノサイド(Notoginsenoside)Uへのグリコシル化、Rgのノトジンセノサイド(Notoginsenoside)R3へのグリコシル化、及びReのグルコ−Re(gluco-Re)へのグリコシル化からなる群から選択される少なくとも1つのグリコシル化である、請求項に記載の方法
【請求項7】
配列番号1のアミノ酸配列からなる、分離したUDP−糖転移酵素(Uridine diphosphate-glycosyltransferase)タンパク質。
【請求項8】
前記タンパク質は、PPD(protopanaxadiol)系又はPPT(protopanaxatriol)系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合(glycosidic bond)で連結されたグルコースに対して糖転移活性を有する、請求項に記載のUDP−糖転移酵素(uridine diphosphate glycosyltransferase)タンパク質。
【請求項9】
請求項のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項11】
請求項10の発現ベクターを含む形質転換細胞。
【請求項12】
請求項11の形質転換細胞が含まれる、ヒトを除く生物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPD(protopanaxadiol)系又はPPT(protopanaxatriol)系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合(glycosidic bond)で連結されたグルコースに対して糖転移活性を有する、新規なUDP−糖転移酵素(uridine diphosphate glycosyltransferase)タンパク質及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ジンセノサイドはグリコシル化されたダンマラン(dammarane)系の四環トリテルペン(tetracyclic triterpene)であり、ジンセノサイドはアグリコン(aglycone)の構造によってプロトパナキサジオール系(protopanaxadiol-type, PPD系)ジンセノサイド、プロトパナキサトリオール系(protopanaxatriol-type, PPT系)ジンセノサイド及びオレアノール酸系(oleanolic acid系)ジンセノサイドの3種類に分類される。これら3つのグループは、さらに化合物構造中の環の3位の炭素、6位の炭素及び20位の炭素位置にグリコシド結合により付着する糖部分(アグリコン)(sugar moieties(aglycones))の位置及び数によって分類される。また、PPDとPPTは異なる水酸化パターン(hydroxylation pattern)を有する。PPDは3位、12位及び20位の炭素位置に−OH基を有するのに対して、PPTは3位、6位、12位及び20位の炭素位置に−OH基を有する。前記PPD及びPPTがグルコースや他の糖にグリコシル化されると様々なジンセノサイドに変換される。PPDがグリコシル化された形態のジンセノサイドには、ジンセノサイドRb、Rd、F2、Rg、Rh、CK(Compound K)、Rb、Rc、C−MC(Compound MC)、C−Y(Compound Y)などがあり、PPTがグリコシル化された形態のジンセノサイドにはRg、Rh、F1、Rf、Re及びRgなどがある。
【0003】
一方、ジンセノサイド生合成経路については部分的にのみ知られている。前記生合成経路は、IPP異性化酵素(IPI)、GPP合成酵素(GPS)、FPP合成酵素(FPS)、スクアレン合成酵素(SS)及びスクアレンエポキシダーゼ(SE)の作用によりイソペンテニル二リン酸(isopentenyl diphosphate)及びDMADP(dimethylallyldiphosphate)の一連の縮合反応が起こり、オキシドスクアレン(oxidosqualene)が合成されるまでは他のトリテルペン経路とその経路を一部共有することが知られている(非特許文献1,2,3)。オキシドスクアレンは、トリテルペン・シクラーゼ(triterpene cyclase)であるDS(dammarenediol-II synthase)によりダンマレンジオール−II(dammarenediol-II)に環化される。ダンマレンジオール−IIは、3位及び20位の炭素にヒドロキシ基を有し、p450酵素であるPPDS(protopanaxadiol synthase)により12位の炭素に水酸化(hydroxylation)されてPPDに変換される。PPDSは、他のp450タンパク質であるPPTS(protopanaxatirol synthase)により6位の炭素が水酸化されてPPTに変換される。PPDは3位及び/又は20位の炭素がグリコシル化されて各種PPD系ジンセノサイドに変換され、PPTは6位及び/又は20位の炭素がグリコシル化されて各種PPT系ジンセノサイドに変換される。
【0004】
UDP(Uridine diphosphate)−糖転移酵素(UGT, UDP-glycosyltransferase)は、UDP−糖からホルモンや二次代謝産物などの様々な代謝物質に糖を転移する酵素である。UGTは、一般に代謝物質の溶解性、安定性、保存性、生体活性又は生物学的利用可能性を高めるために、生合成経路における最後の段階で作用する。植物代謝物質の驚くべき多様性から分かるように、各植物のゲノムは異なるUGTを約数百個保有している。例えば、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物モデルにおいては、アミノ酸に基づいて分類された14のグループ(グループA〜グループN)に属する107個のUGTsを含む。しかし、ジンセノサイド生合成酵素としてDS、PPDS及びPPTSは報告されているものの、ジンセノサイド生合成に関与するUGTについてはほとんど明らかにされていないので、特定のジンセノサイドの作製のためにジンセノサイドを基質とするUGTを解明する必要がある。
【0005】
また、異なるUGTは、糖供与体(sugar donor)及び糖受容体(sugar acceptor)の両方に対して基質特異性を示す。例えば、UGT78D2は、UDP−グルコースからフラボノール(kaempferol, quercetin)及びアントシアニン(caynidin)の3位の炭素にグルコースを転移することにより、フラボノール−3−O−グルコシド(flavonol 3-O-glucosides)及びシアニジン−3−O−グルコシド(cyanidin 3-O-glucoside)をそれぞれ作製する。このようなグリコシル化は、in vivoにおいて安定性及び保存性に必須であると考えられる。逆に、UGT89C1は、UDP−ラムノース(rhamnose)のラムノースをフラボノール−3−O−グルコシド(flavonol-3-O-glucosides)の7位の炭素に転移し、フラボノール−3−O−グルコシド−7−O−ラムノシド(flavonol-3-O-glucoside-7-O-rhamnoside)を作製する。前記UGT89C1の場合、UDP−ブドウ糖とアントシアニン−3−O−グルコシドのどちらも基質として用いないため、UGT78D2とは異なるUDP−糖及び受容体(acceptor)に対して異なる特異性を示すことが知られている。このように、異なる種類のUGTにおいては、基質特異性及び位置特異性が異なることがあるので、各UGTにおける基質特異性及び位置特異性を解明する必要がある。
【0006】
こうした背景の下、本発明者らは、基質特異性及び位置特異性を有し、特定のジンセノサイドの生合成に用いられる新規なUDP−糖転移酵素を開発するために鋭意努力した結果、アマチャヅル(Gynostemma pentaphyllum)からジンセノサイドに糖を転移する活性を有する新規な糖転移酵素であるGpUGT23を見出し、前記GpUGT23がPPD系及びPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに対して糖転移活性を有することを確認し、さらにそれをギペノシド(Gypenoside)LXXV、ギペノシド(Gypenoside)XVII、Rb、ノトジンセノサイド(Notoginsenoside)U、ノトジンセノサイド(Notoginsenoside)R3、又はグルコ−Re(gluco-Re)などの特定のジンセノサイドの作製に用いることができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ajikumar et al. Science, 330, 70-74. 2010
【非特許文献2】Ro et al. Nature, 440, 940-943. 2006
【非特許文献3】Sun et al. BMC genomics, 11, 262, 2010
【非特許文献4】Oh et al. Plant Cell, 16, 3045-3058. 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、PPD(protopanaxadiol)系又はPPT(protopanaxatriol)系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに対して糖転移活性を有するUDP−糖転移酵素タンパク質、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターが導入された形質転換体、又は前記形質転換体の培養物を用いて、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに糖が転移した、PPD又はPPT系ジンセノサイドを製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記UDP−糖転移酵素タンパク質、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターが導入された形質転換体、又は前記形質転換体の培養物を有効成分として含む、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースを有するPPD系又はPPT系ジンセノサイドに糖を転移するための組成物を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、前記PPD系又はPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに対して選択的な糖転移活性を有する、UDP−糖転移酵素タンパク質を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、前記発現ベクターを含む形質転換体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、PPD系又はPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに対して糖転移活性を有するUDP−糖転移酵素タンパク質、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターが導入された形質転換体、又は前記形質転換体の培養物を用いて、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースがグリコシル化された、PPD系又はPPT系ジンセノサイドを製造する方法を提供する。
【0013】
本発明における「UDP(uridine diphosphate)−糖転移酵素」とは、グリコシル供与体(glycosyl donor)からグリコシル受容体分子(glycosyl acceptor molecule)に単糖類部分を転移(transfer)する活性を有する酵素であり、具体的にはUDP−糖をグリコシル供与体として用いる酵素を意味する。本発明における前記UDP−糖転移酵素は「UGT」と混用される。前記ジンセノサイドUDP−糖転移酵素についてはほとんど明らかにされておらず、UDP−糖転移酵素活性を有するとしてもその基質特異性及び位置特異性が酵素の種類によって異なるので、高麗人参サポニンであるジンセノサイドに特異的に作用するUDP−糖転移酵素であるか否かは個別に解明する必要がある。
【0014】
本発明においては、PPD系ジンセノサイド及びPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに選択的に糖部分を転移することができる、アマチャヅル(Gynostemma pentaphyllum)由来の新規なUDP−糖転移酵素が見出された。本発明において見出されたUDP−糖転移酵素は、PPD系ジンセノサイド又はPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースにUDP−グルコースの糖部分を選択的に転移する活性を有する。よって、本発明において見出されたUDP−糖転移酵素は、特にこれらに限定されるものではないが、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに糖を転移することにより、PPD系ジンセノサイドであるCK、F2及びRdをそれぞれギペノシドLXXV(Gyp75と混用)、ギペノシドXVII(Gyp17と混用)及びジンセノサイドRbに変換することができ、またPPT系ジンセノサイドであるF1、Rg及びReをそれぞれノトジンセノサイドU、ノトジンセノサイドR3及びグルコ−Reに変換することができる。このような活性を有するジンセノサイドUDP−糖転移酵素は明らかにされておらず、本発明者らにより見出されたものである。
【0015】
本発明において見出されたUDP−糖転移酵素は、アマチャヅル由来のUDP−糖転移酵素であり、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含んでもよく、前記アミノ酸配列により定義されるものであってもよい。本発明の一実施例においては、配列番号1で表されるアミノ酸配列により定義されるUDP−糖転移酵素を「GpUGT23」と命名した。
【0016】
このような本発明のUDP−糖転移酵素は、配列番号1で表されるアミノ酸配列だけでなく、前記配列と70%以上、具体的には80%以上、より具体的には90%以上、さらに具体的には95%以上、さらになお具体的には98%以上、最も具体的には99%以上の類似性を示すアミノ酸配列であって、実質的にPPD系又はPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに糖を転移できる活性を有するタンパク質であれば制限されず、また実質的にUDP−糖転移酵素と同一又は対応する生物学的活性を有するアミノ酸配列であれば、配列番号1で表されるアミノ酸配列において一部の配列が欠失、変更、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質変異体も本発明に含まれることは言うまでもない。
【0017】
本発明における「類似性」とは、2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド部分間の同一性の割合を意味する。一部分から他の部分までの配列間の相同性は周知の当該技術により決定される。例えば、相同性は、配列情報を整列させて容易に入手可能なコンピュータプログラムを用いて、2つのポリヌクレオチド分子又は2つのポリペプチド分子間の配列情報を直接整列させることにより決定される。前記コンピュータプログラムは、BLAST(NCBI)、CLC Main Workbench(CLC bio)、MegAlignTM(DNASTAR Inc)などであるが、相同性を決定できるプログラムであれば制限なく用いられる。また、ポリヌクレオチド間の相同性は、相同領域間に安定した二本鎖を形成する条件下でポリヌクレオチドをハイブリッド化し、その後単鎖特異的なヌクレアーゼで分解し、分解したフラグメントのサイズにより決定することができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の前記UDP−糖転移酵素は、PPD系又はPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに選択的に糖を転移する活性を有するので、これを20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースを有するPPD系又はPPT系ジンセノサイドに適用すると、グリコシル化されたジンセノサイドを作製することができる。
【0019】
本発明における「20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースを有するPPD系又はPPT系ジンセノサイド」とは、PPD系又はPPT系ジンセノサイドの20位の炭素の−OH基と糖が共有結合した形態のジンセノサイドをいう。前記糖は、特にこれに限定されるものではないが、具体的にはグルコースであり、前記20位の炭素にグリコシド結合を有するジンセノサイドは、20位の炭素にO−グルコシドを有する。前記20位の炭素の−OH基とグルコースが共有結合により連結されたPPD系又はPPT系ジンセノサイドの例としては、CK(compound K)、F2、Rd、F1、Rg又はReが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明における「PPD系ジンセノサイド」とは、ダンマラン(dammarane)系サポニンであり、3位、12位及び20位の炭素位置に−OH基を有するPPD、又は前記PPDの前記−OH基が1つ以上のグリコシル化されたジンセノサイドをいう。
【0021】
本発明における「PPT系ジンセノサイド」とは、ダンマラン系サポニンであり、3位、6位、12位及び20位の炭素位置に−OH基を有するPPT、又は前記PPTの前記−OH基がグリコシル化されたジンセノサイドをいう。
【0022】
前記PPD系又はPPT系ジンセノサイドは、分離及び精製された形態のジンセノサイドを用いることもでき、植物、例えば高麗人参又は紅参の粉末又は抽出物に含まれるジンセノサイドを用いることもできる。すなわち、サポニンを含む高麗人参又は紅参の粉末又は抽出物を直接ジンセノサイドとして用いて本発明の方法を実施することもできる。また、化学的に合成されたジンセノサイドを用いることもできる。本発明における高麗人参としては、公知の様々な高麗人参を用いることができ、オタネニンジン(Panax ginseng)、アメリカニンジン(P. quiquefolius)、サンシチニンジン(P. notoginseng)、トチバニンジン(P. japonicus)、ミツバニンジン(P. trifolium)、ヒマラヤニンジン(P. pseudoginseng)及びベトナムニンジン(P. vietnamensis)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本発明における「20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースがグリコシル化されたPPD系又はPPT系ジンセノサイド」とは、PPD系又はPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに糖、好ましくはグルコースが転移してグリコシル化されたジンセノサイドであり、例えばギペノシドLXXV、ギペノシドXVII、Rb、ノトジンセノサイドU、ノトジンセノサイドR3、グルコ−Reなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本発明における「グルコ−Re(gluco-Re)」とは、ジンセノサイドReの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースがグリコシル化された形態のジンセノサイドを意味する。
【0025】
また、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースを有するPPD系又はPPT系ジンセノサイドを変換してグリコシル化されたジンセノサイドを作製する際に、前記UDP−糖転移酵素をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター、前記ベクターが導入された形質転換体、又は前記形質転換体の培養物が用いられる。
【0026】
前記UDP−糖転移酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2で表されるヌクレオチド配列により定義されるポリヌクレオチドであることが好ましく、配列番号2で表されるヌクレオチド配列だけでなく、前記配列と70%以上、具体的には80%以上、より具体的には90%以上、さらに具体的には95%以上、最も具体的には98%以上の類似性を示すヌクレオチド配列であって、実質的にGpUGT23タンパク質の活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列であれば制限なく用いられる。また、遺伝暗号の縮退度(genetic code degeneracy)により配列番号1のアミノ酸配列をコードする塩基配列及びその変異体も本発明に含まれる。
【0027】
本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターとは、適当な宿主細胞において標的タンパク質を発現する発現ベクターであり、核酸挿入物が発現するように作動可能に連結された必須の調節因子を含む核酸産物をいう。このように作製された組換えベクターを宿主細胞に形質転換(transformation)又はトランスフェクション(transfection)させることにより、標的とするタンパク質を得ることができる。
【0028】
本発明が提供するポリヌクレオチドを含む発現ベクターには、特にこれらに限定されるものではないが、大腸菌由来プラスミド(pYG601BR322、pBR325、pUC118及びpUC119)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)由来プラスミド(pUB110及びpTP5)、酵母由来プラスミド(YEp13、YEp24及びYCp50)、及びアグロバクテリウム媒介形質転換に用いられるTiプラスミドが含まれる。ファージDNAの具体例としては、λ−ファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11及びλZAP)が挙げられる。また、レトロウイルス(retrovirus)、アデノウイルス(adenovirus)、又はワクシニアウイルス(vaccinia virus)などの動物ウイルス、バキュロウイルス(baculovirus)などの昆虫ウイルス、二本鎖植物ウイルス(例えば、CaMV)、一本鎖ウイルス又はジェミニウイルス由来のウイルスベクターも用いられる。
【0029】
また、本発明のベクターとして、核酸発現活性化タンパク質(例えば、B42など)が連結された融合プラスミド(fusion plasmid,例えば、pJG4−5)を用いてもよい。また、本発明において回収される標的タンパク質の精製を容易にするために、プラスミドベクターは必要に応じて他の配列をさらに含んでもよい。このような融合プラスミドには、GST、GFP、His−tag、Myc−tagなどがタグ(tag)として含まれてもよいが、本発明の融合プラスミドがこれらの例に限定されるものではない。
【0030】
また、前記融合タンパク質の作製において、クロマトグラフィー工程を含んでもよく、前記融合タンパク質は、特にアフィニティークロマトグラフィーにより精製される。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼが融合された場合はこの酵素の基質であるグルタチオンが用いられ、ヘキサヒスチジンが用いられた場合はNi−NTA His−結合レジンカラム(Novagen, USA)を用いることにより所望の標的タンパク質を容易に回収することができる。
【0031】
本発明のポリヌクレオチドをベクターに挿入するために、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限部位又はクローニング部位に挿入する方法が用いられる。
【0032】
本発明のUDP−糖転移酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、ベクターに作動可能に連結されていてもよい。本発明のベクターは、プロモーター及び本発明の核酸以外に、エンハンサー(enhancer)などのシスエレメント(cis element)、スプライシングシグナル(splicing signal)、ポリA付加シグナル(poly A addition signal)、選択マーカー(selection marker)、リボソーム結合配列(ribosome binding sequence, SD sequence)などがさらに含まれてもよい。選択マーカーの例として、クロラムフェニコール抵抗性核酸、アンピシリン抵抗性核酸、ジヒドロ葉酸還元酵素(dihydrofolate reductase)、ネオマイシン抵抗性核酸などが挙げられるが、作動可能に連結される追加構成要素がこれらの例に限定されるものではない。本発明における「形質転換」とは、DNAを宿主に導入してDNAが染色体の因子として又は染色体統合完成により複製可能になることであり、外部のDNAを細胞内に導入して人為的に遺伝的な変化を起こす現象を意味する。
【0033】
前記形質転換により、本発明のUDP−糖転移酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター又は前記発現ベクターの一部を宿主細胞内に導入することができるが、ここで前記発現ベクターの一部とは、宿主細胞内に前記UDP−糖転移酵素タンパク質の活性を付与できるようにUDP−糖転移酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチド部分を含む発現ベクターの部分を意味する。例えば、アグロバクテリウム媒介形質転換法において宿主細胞内に転移されるTiプラスミドのT−DNAが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明の形質転換方法には任意の形質転換方法が用いられ、当業界の通常の方法で容易に行うことができる。一般に、形質転換方法には、CaCl沈殿法、CaCl法にDMSO(dimethyl sulfoxide)という還元物質を用いることにより効率を向上させたHanahan法、電気穿孔法(electroporation)、リン酸カルシウム沈殿法、原形質融合法、シリコンカーバイド繊維を用いた攪拌法、アグロバクテリウム媒介形質転換法、PEGを用いた形質転換法、デキストランサルフェート、リポフェクタミン及び乾燥/抑制媒介形質転換方法などがある。本発明のUDP−糖転移酵素をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを形質転換する方法は、これらの例に限定されるものではなく、当業界で通常用いられる形質転換又はトランスフェクション方法が制限なく用いられる。
【0035】
本発明において形質転換体の作製に用いられる宿主細胞の種類は、本発明のポリヌクレオチドを発現させるものであれば特に限定されるものではない。本発明に用いられる宿主の特定例としては、大腸菌(E. coli)などのエシェリキア(Escherichia)属細菌、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)などのバチルス(Bacillus)属細菌、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)などのシュードモナス(Pseudomonas)属細菌、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などの酵母、動物細胞、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。本発明に用いられる大腸菌菌株の具体例としては、CL41(DE3)、BL21又はHB101が挙げられ、バチルス・サブチリス菌株の具体例としては、WB700又はLKS87が挙げられる。
【0036】
本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターが導入された形質転換体は、形質転換細胞又は生物体の形態であってもよい。特にこれらに限定されるものではないが、前記生物体の例としては、タバコ、シロイヌナズナ、ジャガイモ、高麗人参、ゴマ、ユズ、デイジーなどが挙げられる。
【0037】
本発明のプロモーターは、本発明の核酸を宿主で発現させるものであれば、いかなるプロモーターを用いてもよい。例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーターなどの大腸菌又はファージ由来プロモーター、T7プロモーターなどの大腸菌感染性ファージ由来プロモーター、CaMV35S、MAS又はヒストンプロモーターが用いられる。また、tacプロモーターなどの人工的に変異させたプロモーターも用いられる。
【0038】
上記方法で形質転換された本発明のUDP−糖転移酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターが導入された形質転換体は、PPD系又はPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに対して選択的な糖転移活性を有し、例えばCKのギペノシドLXXVへの変換、F2のギペノシドXVIIへの変換、RdのRbへの変換、F1のノトジンセノサイドUへの変換、RgのノトジンセノサイドR3への変換、及びReのグルコ−Reへの変換からなる群から選択される1つ以上の転移活性を有するが、これらに限定されるものではない。
【0039】
また、本発明における「形質転換体の培養物」とは、前記形質転換体を培養して得た産物を意味する。前記培養物は、形質転換体を含む形態、及び前記形質転換体を含む培養液から遠心分離などで形質転換体を除去した形態をどちらも含む概念である。
【0040】
前記培養物は、本発明のUDP−糖転移酵素タンパク質を含むので、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースを有するPPD系又はPPT系ジンセノサイドをグリコシル化されたジンセノサイドに変換する活性を有し、例えばCKをギペノシドLXXVに、F2をギペノシドXVIIに、RdをRbに、F1をノトジンセノサイドUに、RgをノトジンセノサイドR3に、Reをグルコ−Reに変換することができる。
【0041】
このように、本発明のUDP−糖転移酵素タンパク質、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター、前記発現ベクターが導入された形質転換体、又は前記形質転換体の培養物を用いて、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースを有するPPD系又はPPT系ジンセノサイドをグリコシル化されたジンセノサイドに変換することができるので、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースがグリコシル化されたジンセノサイドが必要な分野、特にギペノシドLXXV、ギペノシドXVII、Rb、ノトジンセノサイドU、ノトジンセノサイドR3、グルコ−Reなどのジンセノサイドが必要な分野において上記方法が有用である。
【0042】
本発明の一実施例においては、PPD系及びPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに選択的にUDP−グルコースのグルコース部分を転移する活性を有し、配列番号1のアミノ酸配列で構成される新規なUDP−糖転移酵素をアマチャヅルから見出し、これをGpUGT23と命名した(実施例1)。このようにして見出されたGpUGT23タンパク質の酵素活性を解明するために、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースを有する代表的なPPD系又はPPT系ジンセノサイドである、CK、F2、Rd及びF1を用いて、本発明のGpUGT23と反応させてその変換活性を確認した。その結果、本発明のGpUGT23は、CKをギペノシドLXXVに、F2をギペノシドXVIIに、RdをRbに、F1をノトジンセノサイドUに変換した(図2及び図4)。これに対して、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースがなく、−OH基のみ有するPPD、Rh、Rg、PPT及びRhには、本発明のGpUGT23が糖転移を起こさないことが確認された(図3)。これは、GpUGT23がPPD系及びPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースにグルコース部分を特異的に転移する活性を有することを示唆するものである。
【0043】
本発明の他の態様は、PPD系又はPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに対して糖転移活性を有するUDP−糖転移酵素タンパク質、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターが導入された形質転換体、又は前記形質転換体の培養物を有効成分として含む、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースを有するPPD系又はPPT系ジンセノサイドをグリコシル化するための組成物を提供する。
【0044】
前記UDP−糖転移酵素タンパク質、ベクター、形質転換体、PPD系又はPPT系ジンセノサイド、及びグリコシル化されたジンセノサイドについては前述した通りである。
【0045】
本発明のさらに他の態様は、PPD系又はPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに対して糖転移活性を有するUDP−糖転移酵素タンパク質を提供する。
【0046】
前記UDP−糖転移酵素タンパク質については前述した通りである。
【0047】
本発明のさらに他の態様は、前記UDP−糖転移酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、前記発現ベクターを含む形質転換細胞、前記形質転換細胞が含まれる、ヒトを除く生物体を提供する。
【0048】
前記ポリヌクレオチド、発現ベクター、形質転換細胞及び生物体については前述した通りである。
【発明の効果】
【0049】
本発明のUDP−糖転移酵素は、PPD系又はPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに選択的に糖を転移する活性を有するタンパク質であるので、ギペノシドLXXV、ギペノシドXVII、Rb、ノトジンセノサイドUなどの20位の炭素に少なくとも2つの糖を有する特定のジンセノサイドの大量生産に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明のGpUGT23により糖転移されるPPD系及びPPT系ジンセノサイドを例示する図である。
図2】UDP−糖転移酵素であるGpUGT23がPPD系及びPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースにグルコースを付加してグリコシル化する活性を有することを示すTLC(thin-layer chromatography)の結果である。具体的には、GpUGT23がCK(Compound K)をギペノシドLXXVに、F2をギペノシドXVIIに、RdをRbに、F1をノトジンセノサイドUに変換することを示す図である。
図3】UDP−糖転移酵素であるGpUGT23が20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースのないPPD系及びPPT系ジンセノサイドには糖転移を起こさないことを示すHPLC(High performance liquid chromatography)の結果である。具体的には、20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースがなく、−OH基のみ有するPPD(A)、Rh(B)、Rg(C)、PPT(D)及びRh(E)にはGpUGT23が糖転移を起こさないことを示す図である。
図4】PPD系及びPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースにグルコースを付加してグリコシル化する活性を有することを示すHPLCの結果である。具体的には、GpUGT23がCKをギペノシドLXXV(A)に、F2をギペノシドXVII(B)に、RdをRb(C)に、F1をノトジンセノサイドU(D)に変換することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を下記実施例により詳細に説明する。ただし、下記例は本発明を例示するためのものにすぎず、下記例に本発明の範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
実施例1:アマチャヅル由来UDP−糖転移酵素GpUGT23のクローニング及び精製
アマチャヅル(Gynostemma pentaphyllum)cDNAからGpUGT23−F(5’−GATCGGATCCATGAAGAAAATTTTGATGTTTCC−3’,配列番号3)、GpUGT23−R(5’−GATCCTCGAGTATTTTTGCTTGACAAAGC−3’,配列番号4)プライマーを用いて、重合酵素によりPCRで遺伝子を増幅し、制限酵素であるBamHI及びXhoIにより遺伝子の各末端を切断した。その後、pET50(非特許文献4)ベクターにクローニングして発現ベクターを作製し、これを大腸菌BL21(DE3)−RIL菌株に形質転換してGpUGT23発現菌株を作製した。この菌株をIPTGでタンパク質発現を誘導し、その後タンパク質を得て、これをNi−NTA His−結合レジンを用いてGpUGT23酵素を精製した。
【0053】
実施例2:In vitro酵素アッセイ
精製されたGpUGT23(30μg)、ジンセノサイド化合物(5mM)及びUDP−グルコース(50mM)を含む反応緩衝液(10mM PBS緩衝液,pH7)において糖転移酵素アッセイを行った。このために、4つの異なる種類のジンセノサイド、すなわちCK(Compound K)、F2、Rd及びF1を用いて、本発明の酵素と反応させた。
【0054】
反応混合物は37℃で12時間培養して反応させ、その後その産物をTLC(thin-layer chromatography)又はHPLC(high performance liquid chromatography)で分析した。
【0055】
TLC分析は移動相(アセトン:メタノール:DDW=65:35:10 vol/vol)と共に60F254シリカゲルプレート(Merck, Germany)を用いて行った。TLCプレートの溶解した生成物(resolved product)を10%(vol/vol)硫酸(HSO)に噴射して検出し、次いで110℃で5分間加熱した(図2)。
【0056】
HPLC分析は、ODS(2)C18カラム(Phenomenex, USA)を用いて行った。水及びアセトニトリルの勾配適用(gradient application)時間と成分比は、1分当たり1mlの流速で、0分、68%水及び32%アセトニトリル;8分、35%水及び65%アセトニトリル;12分、0%水及び100%アセトニトリル;20分、0%水及び100%アセトニトリル;20.1分、68%水及び32%アセトニトリル;及び28分、68%水及び32%アセトニトリル(図3及び図4)であった。
【0057】
ジンセノサイドは、UV感知器(Agilent,USA)を用いて203nm波長でモニターした。
【0058】
実験例1:GpUGT23のPPD系及びPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースに特異的な糖転移酵素活性の確認
実施例2の方法でGpUGT23の基質特異性及び位置特異性(regioselectivity)の有無を確認した。
【0059】
まず、実施例1の組換えGpUGTであるGpUGT23をUDP−グルコース存在下で9種のジンセノサイド(PPD、Rh、Rg、CK、F2、Rd、PPT、F1及びRh)を用いて反応させたときに、CK、F2、Rd及びF1において反応が起こることをTLCにより確認した。
【0060】
これを再確認するために、異なる4種類のジンセノサイド(CK、F2、Rd及びF1)とGpUGT23を共に培養して反応させ、その後前記組換えGpUGT23により変換された生成物をTLCで分析した。その結果を図2に示す。変換結果は、移動したスポット(migrating spot)の位置と、標準試料として用いたCK、Gyp75(ギペノシドLXXV)、F2、Gyp17(ギペノシドXVII)、Rd、Rb及びF1が移動したスポットの位置を比較して確認した。
【0061】
その結果、GpUGT23は、CKをギペノシドLXXVに、F2をギペノシドXVIIに、RdをRbに、F1をノトジンセノサイドUにそれぞれ変換することが分かった(図2)。
【0062】
また、本発明者らは、TLCにより確認した結果をHPLCにより再確認した。その結果を図3及び図4に示す。
【0063】
その結果、本発明のGpUGT23は、TLCの結果と同様に、PPD、Rh、Rg、PPT及びRhとは反応せず(図3)、CK、F2、Rd及びF1のみをギペノシドLXXV、ギペノシドXVII、Rb及びノトジンセノサイドUに変換した(図4)。
【0064】
上記結果は全て、GpUGT23がPPD系及びPPT系ジンセノサイドの20位の炭素にグリコシド結合で連結されたグルコースにUDP−グルコースを転移する活性を有する酵素であることを示すものである。
【0065】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は、明細書ではなく特許請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態を含むものであると解釈すべきである。

図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]