特許第6072193号(P6072193)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6072193
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】船舶のエンジンルーム構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20170123BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20170123BHJP
   F02D 19/08 20060101ALI20170123BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20170123BHJP
   B63J 2/06 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   F02M21/02 311E
   F02M21/02 Z
   F02D19/02 D
   F02D19/08 Z
   F02M21/02 X
   F02M21/02 V
   B63H21/38 B
   B63J2/06
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-214006(P2015-214006)
(22)【出願日】2015年10月30日
【審査請求日】2016年5月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】木塚 智昭
(72)【発明者】
【氏名】深尾 知
(72)【発明者】
【氏名】藤原 重治
(72)【発明者】
【氏名】平山 永遠
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏佳
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−172553(JP,A)
【文献】 特開2014−181861(JP,A)
【文献】 西藤浩一,天然ガス燃料船の実用化とNKの取組み,日本マリンエンジニアリング学会誌,日本,日本マリンエンジニアリング学会,2012年11月,第47巻 第6号,p.8-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/02
B63H 21/38
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム内に配置されるガスエンジンと、
前記ガスエンジンへ燃料ガスを導く、遮断弁が設けられた供給配管と、
前記エンジンルーム内に配置され、前記遮断弁を収容するケーシングと、
前記ケーシング内の空気を前記エンジンルーム外に導く換気配管と、
前記換気配管に設けられた換気ファンと、
前記ケーシングと前記ガスエンジンとの間で前記供給配管を包み込む外側配管であって、当該外側配管の内部および前記ケーシングの内部を介して前記換気配管と連通する空気取入口が設けられた外側配管と、
前記ケーシング内に収容された、前記供給配管を流れる燃料ガスの一部をサンプリングして熱量を計測し、熱量計測後の燃料ガスを前記ケーシング内に放出する熱量計と、
を備える、船舶のエンジンルーム構造。
【請求項2】
前記ガスエンジンには、複数の燃料噴射弁が設けられており、
前記供給配管は、前記複数の燃料噴射弁にそれぞれつながる複数の支流配管と、前記複数の支流配管と接続された主流配管を含み、
前記外側配管は、前記主流配管を包み込む第1配管と、各々が前記支流配管および前記燃料噴射弁を包み込む複数の第2配管を含む、請求項に記載の船舶のエンジンルーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶のエンジンルーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、原油資源量の問題や排ガス規制の問題などから、重油を燃料とするディーゼルエンジンに代えて、ガスエンジンを用いることが試みられている(例えば、特許文献1参照)。ガスエンジンは、船舶のエンジンルーム内に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−314316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスエンジンでは、燃料ガスの熱量が変化することがあるため、燃料ガスの熱量を燃料計により計測し、燃料ガスの熱量に基づいて空燃比や点火時期を制御することが望ましい。燃料ガスの熱量は、例えばサンプリング式の熱量計により計測することができる。
【0005】
ところで、ガスエンジンが配置される船舶のエンジンルームに関しては、IGCコードおよびIGFコードに、エンジンルームをガスセーフマシナリースペース(Gas safe machinery space)とするための規定がある。この規定によると、燃料ガスが漏れたときを考慮して、燃料ガスが流れる配管や燃料ガスに接する機器を別の構造体で包み込み(いわゆる、二重管構造)、この構造体の内部を常時換気しなければならない。このため、サンプリング式の熱量計を設ける場合は、どのような構成とすべきかが問題となる(熱量計自体の二重管構造およびサンプリングする燃料ガスを熱量計へ導く配管の二重管構造)。
【0006】
そこで、本発明は、サンプリング式の熱量計を含んだ二重管構造を簡単に実現することができる船舶のエンジンルーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の発明者らは、船舶のエンジンルーム内には、燃料ガスの遮断弁などを収容するケーシングが設けられることに着目し、このケーシング内にサンプリング式の熱量計を配置すれば、簡単に二重管構造を実現できることを見出した。本発明は、このような観点からなされたものである。
【0008】
すなわち、本発明の船舶のエンジンルーム構造は、エンジンルーム内に配置されるガスエンジンと、前記ガスエンジンへ燃料ガスを導く、遮断弁が設けられた供給配管と、前記遮断弁を収容するケーシングと、前記ケーシングと前記ガスエンジンとの間で前記供給配管を包み込む外側配管と、前記ケーシング内に収容された、前記供給配管を流れる燃料ガスの一部をサンプリングして熱量を計測する熱量計と、を備える、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、サンプリング式の熱量計が遮断弁と共にケーシング内に収容されるため、熱量計を含んだ二重管構造を簡単かつコンパクトに実現することができる。
【0010】
上記のエンジンルーム構造は、前記ケーシング内の空気を前記エンジンルーム外に導く換気配管と、前記換気配管に設けられた換気ファンと、をさらに備え、前記外側配管には、当該外側配管の内部および前記ケーシングの内部を介して前記換気配管と連通する空気取入口が設けられていてもよい。この構成によれば、空気取入口から外側配管の内部およびケーシングの内部を通って換気配管に至る換気用の空気の流れが形成される。
【0011】
前記熱量計は、熱量計測後の燃料ガスを前記ケーシング内に放出してもよい。この構成によれば、熱量計から放出された燃料ガスを、換気用の空気の流れを利用してエンジンルーム外に排出することができる。
【0012】
上記のエンジンルーム構造は、前記ケーシング内で前記供給配管から分岐して前記エンジンルーム外まで延びる開放配管であって、前記ケーシング内に収容される開放弁が設けられた開放配管をさらに備え、前記熱量計は、熱量計測後の燃料ガスを前記開放弁よりも下流側で前記開放配管に放出してもよい。この構成によれば、熱量計から放出された燃料ガスを、開放配管を利用してエンジンルーム外に排出することができる。
【0013】
例えば、前記ガスエンジンには、複数の燃料噴射弁が設けられており、前記供給配管は、前記複数の燃料噴射弁にそれぞれつながる複数の支流配管と、前記複数の支流配管と接続された主流配管を含み、前記外側配管は、前記主流配管を包み込む第1配管と、各々が前記支流配管および前記燃料噴射弁を包み込む複数の第2配管を含んでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、サンプリング式の熱量計を含んだ二重管構造を簡単に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る船舶のエンジンルーム構造を示す概略構成図である。
図2】変形例の船舶のエンジンルーム構造を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係る船舶のエンジンルーム構造を示す。船舶のエンジンルーム1内には、ガスエンジン2が配置されている。ガスエンジン2へは、供給配管3を通じて、エンジンルーム1外から燃料ガス(例えば、天然ガス)が導かれる。
【0017】
ガスエンジン2は、燃料ガスのみを燃焼させるガス専焼エンジンであってもよいし、燃料ガスと燃料油の一方または双方を燃焼させる二元燃料エンジンであってもよい。
【0018】
ガスエンジン2は、クランク軸21を含む。本実施形態では、クランク軸21が、プロペラ12が取り付けられた推進軸11と図略の減速機を介して連結されている。換言すれば、ガスエンジン2は、推進軸11を直接的に駆動する。ただし、図示は省略するが、ガスエンジン2は、発電機および電動機を介して推進軸11を間接的に駆動してもよい。また、本実施形態では、ガスエンジン2が4ストロークエンジンである。ただし、ガスエンジン2は、2ストロークエンジンであってもよい。
【0019】
具体的に、ガスエンジン2は、クランク軸21の軸方向に並ぶ複数のシリンダ22と、これらのシリンダ22にそれぞれ取り付けられた複数のシリンダヘッド23を含む。各シリンダヘッド23には、シリンダ22内の燃焼室と連通する給気路および排気路が形成されている。また、各シリンダヘッド23には、前記給気路内に燃料ガスを噴射する燃料噴射弁25が設けられている。ただし、燃料噴射弁25は、ガスエンジン2におけるシリンダヘッド23以外の部分に設けられていてもよい。
【0020】
供給配管3は、燃料噴射弁25にそれぞれつながる複数の支流配管3bと、これらの支流配管3bと接続された主流配管3aを含む。主流配管3aには、上流側から順に、第1遮断弁31、第2遮断弁32、圧力調整弁33、フィルタ34および圧力計35が設けられている。これらの機器31〜35は、ガスエンジン2の近くに配置される小型のケーシング5内に収容されている。ケーシング5は、例えば圧力容器である。また、供給配管3は、ケーシング5とガスエンジン2との間で、外側配管6に包み込まれている。
【0021】
外側配管6は、主流配管3aを包み込む第1配管61と、各々が供給配管3の支流配管3bおよび燃料噴射弁25を包み込む複数の第2配管62を含む。第1配管61は、ケーシング5から供給配管3の主流配管3aに沿って延びている。第1配管61の先端には、空気取入口63が設けられている。
【0022】
ケーシング5には、第1換気配管71が接続されている。つまり、第1換気配管71は、ケーシング5の内部および外側配管6の内部を介して空気取入口63と連通している。第1換気配管71は、ケーシング5内の空気をエンジンルーム1外へ導く。第1換気配管71には、換気ファン72が設けられている。また、換気配管71には、換気ファン72をバイパスするように第2換気配管73が接続されており、この第2換気配管73にも換気ファン74が設けられている。換気ファン72,74が稼働すると、図中に破線矢印で示すように、空気取入口63から外側配管6の内部およびケーシング5の内部を通って第1換気配管71に至る換気用の空気の流れが形成される。
【0023】
ケーシング5内では、第1開放配管41および第2開放配管43が供給配管3から分岐している。より詳しくは、第1開放配管41は、第1遮断弁31と第2遮断弁32の間で供給配管3から分岐しており、第2開放配管43は、圧力調整弁33とフィルタ34の間で供給配管3から分岐している。第1開放配管41および第2開放配管43は、エンジンルーム1外まで延びている。第1開放配管41および第2開放配管43には開放弁42,44がそれぞれ設けられており、これらの開放弁42,44はケーシング5内に収容されている。
【0024】
さらに、本実施形態では、ケーシング5内に熱量計8が収容されている。熱量計8は、供給配管3を流れる燃料ガスの一部をサンプリングして熱量を計測する。熱量計8は、サンプリング配管81により供給配管3の主流配管3aと接続されている。なお、サンプリング配管81が主流配管3aにつながれる位置は、ケーシング5内であればどの位置であってもよいが、圧力計35よりも下流側であることが望ましい。本実施形態では、熱量計8が、熱量計測後の燃料ガスをケーシング5内に放出する。例えば、熱量計8は、光学式のものである。
【0025】
以上説明したように、本実施形態のエンジンルーム構造では、サンプリング式の熱量計8が遮断弁31,33と共にケーシング5内に収容されるため、熱量計8を含んだ二重管構造を簡単かつコンパクトに実現することができる。
【0026】
また、本実施形態では、熱量計8が熱量計測後の燃料ガスをケーシング5内に放出するので、熱量計8から放出された燃料ガスを、換気用の空気の流れを利用してエンジンルーム1外に排出することができる。
【0027】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0028】
例えば、図2に示すように、熱量計8は、熱量計測後の燃料ガスを、開放弁44よりも下流側で第2開放配管43に放出してもよい。この構成によれば、熱量計8から放出された燃料ガスを、第1開放配管41を利用してエンジンルーム1外に排出することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 エンジンルーム
2 ガスエンジン
3 供給配管
3a 主流配管
3b 支流配管
31,33 遮断弁
41,43 開放配管
42,44 開放弁
6 外側配管
61 第1配管
62 第2配管
63 空気取入口
71,73 換気配管
72,74 換気ファン
8 熱量計
【要約】
【課題】サンプリング式の熱量計を含んだ二重管構造を簡単に実現することができる船舶のエンジンルーム構造を提供する。
【解決手段】船舶のエンジンルーム構造は、エンジンルーム内に配置されるガスエンジンと、ガスエンジンへ燃料ガスを導く、遮断弁が設けられた供給配管と、遮断弁を収容するケーシングと、ケーシングとガスエンジンとの間で供給配管を包み込む外側配管と、ケーシング内に収容された、供給配管を流れる燃料ガスの一部をサンプリングして熱量を計測する熱量計と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2