(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料およびテンプレートとして2種以上の化合物を用い、水熱合成してゼオライトを製造したゼオライトに、触媒活性能を有する金属を担持させる窒素酸化物浄化用触媒の製造方法であって、
前記テンプレートとして、モルホリンとトリエチルアミンを含み、
前記ゼオライトへの前記触媒活性能を有する金属の担持が、前記ゼオライトと前記金属の金属源と分散媒の混合物を調製し、前記混合物中の分散媒を除去した後に焼成し、かつ前記分散媒の除去を60分以下の時間で行うことにより行われる
ことを特徴とする窒素酸化物浄化用触媒の製造方法。
前記ゼオライトが、International Zeolite Association(IZA)が定めるコードで、CHA構造を有するゼオライトである、請求項1又は2に記載の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法。
前記ゼオライト中の骨格構造に含まれるケイ素原子、アルミニウム原子、リン原子の合計に対するケイ素原子の存在割合をx1、アルミニウム原子の存在割合をy1、リン原子の存在割合をz1としたとき、x1が0.05以上0.11以下、y1が0.3以上0.6以下、z1が0.3以上0.6以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法。
前記ゼオライトが、25℃の水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.03以上、0.25以下の範囲で相対蒸気圧が0.05変化したときに水の吸着量変化が0.10g/g以上となる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法。
前記ゼオライトの粒子径(前記テンプレートを除去した後、電子顕微鏡でゼオライトを観察した際の、任意の10〜30点のゼオライト粒子の一次粒子径の平均値)が、1μm以上15μm以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法。
前記ケイ素原子原料、前記アルミニウム原子原料、前記リン原子原料、前記テンプレートおよび水を混合して水性ゲルを調合し、150℃以上220℃以下の温度範囲のうち、最も高い温度である最高到達温度まで昇温する過程において、80℃から120℃までの温度域に1時間以上置き、最高到達温度から該最高到達温度より5℃低い温度までの温度に、5時間以上保持して水熱合成を行う、請求項1〜10のいずれか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
また、“質量%”、“質量ppm”及び“質量部”は、それぞれ“重量%”、“重量ppm”及び“重量部”と同義である。
【0018】
≪触媒の第1の態様〜第4の態様及び触媒の第5の態様〜第12の態様≫
以下、本発明の触媒の第1の態様〜第12の態様について詳細に述べる。
【0019】
<窒素酸化物とその浄化>
本発明が対象とする触媒により浄化される窒素酸化物としては、一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素等が挙げられる。なお以下これらをまとめてNOx類と呼ぶことがある。本明細書において窒素酸化物を浄化するとは、窒素酸化物を触媒上で反応させ、窒素と酸素等に転化することをいう。
この場合、窒素酸化物が直接反応してもよいが、浄化効率を上げる目的で触媒中に還元剤を共存させてもよい。還元剤としては、アンモニア、尿素、有機アミン類、一酸化炭素、炭化水素、水素等が用いられ、好ましくはアンモニア、尿素が用いられる。
【0020】
<触媒>
本発明が対象とする触媒とは、上記に記載した、窒素酸化物を浄化することができる触媒をいい、具体的にはゼオライトを含む窒素酸化物浄化用触媒をいう。(以下、単に触媒ということがある。)
【0021】
<ゼオライト>
本発明におけるゼオライトとは、International Zeolite Association(以下IZA)の規定によるゼオライト類をいい、具体的にゼオライトとしては、骨格構造を構成する原子として、少なくとも酸素、アルミニウム(Al)、リン(P)を含むもの(以下、アルミノフォスフェート類ということがある。)、少なくとも酸素、アルミニウム、ケイ素(Si)を含むもの(以下、アルミノシリケート類ということがある。)等が挙げられる。
【0022】
アルミノフォスフェート類とは、骨格構造を構成する原子として、少なくとも酸素、アルミニウム(Al)、リン(P)を含むものであり、これらの原子の一部が他の原子(Me)で置換されていても良い。他の原子(Me)としては、例えば周期表の2A族、3A族、4A族、5A族、7A族、8族、1B族、2B族、アルミニウム以外の3B族及び4B族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の原子が挙げられる。中でも、リン原子がヘテロ原子(Me1:但し、Me1は周期表の4B族元素)で置換されたMe−アルミノフォスフェートが好ましい。
【0023】
Me1は、1種含まれていても、2種以上含まれていても良い。好ましいMe1は、ケイ素またはゲルマニウムであり、更に好ましくはケイ素である。すなわちケイ素で置換されたアルミノフォスフェートであるシリコアルミノフォスフェートがより好ましい。
アルミノフォスフェート類の骨格構造を構成しているMe1、Al及びPの構成割合(モル比)は、特に限定されるものではないが、Me1、Al、Pの合計に対するMe1のモル比をx1、Alのモル比をy1、Pのモル比をz1とすると、x1は、通常0以上であり、好ましくは0.01以上であり、通常0.3以下である。
【0024】
また前記のy1は、通常0.2以上であり、好ましくは0.3以上であり、通常0.6以下であり、好ましくは0.5以下である。
また前記のz1は、通常0.3以上であり、好ましくは0.4以上であり、通常0.6以下であり、好ましくは0.5以下である。
【0025】
本発明において用いられるゼオライトが、シリコアルミノフォスフェートの場合、ゼオライト中のアルミニウム原子、リン原子およびケイ素原子の存在割合は、下記式(I)、(II)および(III)
0.05≦x1≦0.11 ・・・(I)
(式中、x1は骨格構造のケイ素とアルミニウムとリンの合計に対するケイ素のモル比を示す)
0.3≦y1≦0.6 ・・・(II)
(式中、y1は骨格構造のケイ素とアルミニウムとリンの合計に対するアルミニウムのモル比を示す)
0.3≦z1≦0.6 ・・・(III)
(式中、z1は骨格構造のケイ素とアルミニウムとリンの合計に対するリンのモル比を示す)
であることが好ましい。
【0026】
これは言い換えると、ゼオライト中の骨格構造に含まれるケイ素原子、アルミニウム原子、リン原子の合計に対するケイ素原子の存在割合をx1、アルミニウム原子の存在割合をy1、リン原子の存在割合をz1としたとき、x1が通常0.05以上、0.11以下、かつy1が通常0.3以上、0.6以下であり、かつz1が通常0.3以上、0.6以下であるゼオライトであることが好ましいことを意味する。
【0027】
さらにx1は好ましくは0.06以上、より好ましくは0.07以上、更に好ましくは0.075以上であり、通常0.11以下、好ましくは0.105以下、より好ましくは0.100以下、更に好ましくは0.095以下であるゼオライトであることが好ましいことを意味する。
また、本発明におけるゼオライトのゼオライト骨格内には他の元素が含まれていても良い。他の元素としては、リチウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、スズ、カルシウム、硼素などがあげられる。好ましくは、鉄、銅、ガリウムがあげられる。
【0028】
他の元素の含有量はゼオライト骨格中にケイ素とアルミニウムとリンの合計に対するモル比で、0.3以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1以下である。
なお、上記の元素の割合は元素分析により決定するが、本発明における元素分析は試料を塩酸水溶液で加熱溶解させ、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、以下ICP)発光分光分析により求める。
【0029】
アルミノシリケート類とは骨格構造を構成する原子として、少なくとも酸素、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)を含むものであり、これらの原子の一部が他の原子(Me2)で置換されていても良い。
【0030】
アルミノシリケート類の骨格構造を構成しているMe2、AlおよびSiの構成割合(モル比)は、特に限定されるものではないが、Me2、Al、Siの合計に対するMe2のモル比をx2、Alのモル比をy2、Siのモル比をz2とすると、x2は通常0以上であり、0.3以下である。x2が上限値より大きいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向がある。
【0031】
また前記y2は通常0.001以上であり、好ましくは0.02以上であり、通常0.5以下であり、好ましくは0.25以下である。
また前記z2は通常0.5以上であり、好ましくは0.75以上であり、通常0.999以下であり、好ましくは0.98以下である。
y2、z2が上記範囲外であると、合成が困難になる場合や、酸点が少なすぎてNOx分解活性が発現しない場合がある。
【0032】
他の原子Me2は、1種でも2種以上含まれていても良い。好ましいMe2は、周期表第3又は第4周期に属する元素である。
本発明の触媒において好ましく用いられるゼオライトとしては、骨格構造に少なくとも酸素原子とアルミニウム原子とリン原子とを含むゼオライトであり、より好ましくは結晶性アルミノフォスフェート類である。さらに好ましくは結晶性シリコアルミノフォスフェートである。
【0033】
<ゼオライトの骨格構造>
ゼオライトは通常結晶性であり、メタン型のSiO
4四面体あるいはAlO
4四面体あるいはPO
4四面体(以下、これらを一般化してTO
4とし、含有する酸素以外の原子をT原子という。)が、各頂点の酸素原子を共有し連結した規則的な網目構造を持つ。T原子としてはAl、P、Si以外の原子も知られている。網目構造の基本単位のひとつに、8個のTO
4四面体が環状に連結したものがあり、これは8員環と呼ばれている。同様に、6員環、10員環などもゼオライト構造の基本単位となる。
【0034】
なお、本発明におけるゼオライトの構造は、X線回折法(X−ray diffraction、以下 XRD)により決定する。
【0035】
本発明において好ましく用いられるゼオライトとしては、骨格構造中に8員環構造を有するゼオライトである。
具体的な8員環構造を有するゼオライトとしてはInternational Zeolite Association (IZA)が定めるコードで、ABW、AEI、AEN、AFN、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、ANA、APC、APD、ATN、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BIK、BPH、BRE、CAS、CDO、CGF、CGS、CHA、CLO、DAC、DDR、DFO、DFT、EAB、EDI、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、FER、GIS、GME、GOO、HEU、IHW、ITE、ITW、IWW、JBW、KFI、LAW、LEV、LOV、LTA、MAZ、MER、MFS、MON、MOR、MOZ、MTF、NAT、NSI、OBW、OFF、OSO、OWE、PAU、PHI、RHO、RRO、RSN、RTE、RTH、RWR、SAS、SAT、SAV、SBE、SFO、SIV、SOS、STI、SZR、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、ZONが挙げられるが、中でも、触媒活性の点から、CHA、FER、GIS、LTA、MOR、から選ばれるいずれかであるのが好ましく、特にCHAが好ましい。
【0036】
本発明において好ましく用いられるゼオライトとしては、アルミノフォスフェート、アルミノシリケートが挙げられ、具体的にはInternational Zeolite Association(IZA)が定めるコードで示すと、AEI、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、CHA、DFO、ERI、FAU、GIS、LEV、LTA、VFIのいずれかの構造を有するアルミノフォスフェート、アルミノシリケートが好ましく、AEI、AFX、GIS、CHA、VFI、AFS、LTA、FAU、AFYのいずれかがさらに好ましく、燃料由来の炭化水素を吸着しにくいことからCHA構造を有するゼオライトが最も好ましい。
【0037】
本発明におけるゼオライト類として、より好ましいものは、骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とを含むアルミノフォスフェート類であり、かつ8員環構造を有するゼオライトである。
本発明におけるゼオライト類は、基本単位として有する骨格構造を構成する成分とは別に、他のカチオンとイオン交換可能なカチオン種を持つものを含んでいてもよい。その場合のカチオンは特に限定されないが、プロトン、Li、Na、Kなどのアルカリ元素、Mg、Caなどのアルカリ土類元素、La、Ce等の希土類元素などが挙げられ、中でも、プロトン、アルカリ元素、アルカリ土類元素が好ましい。
【0038】
本発明におけるゼオライト類のフレームワーク密度は(以下、FDと略すことがある。)、特に限定されるものではないが、通常13.0T/nm
3以上、好ましくは、13.5T/nm
3以上、より好ましくは14.0T/nm
3以上であり、通常20.0T/nm
3以下、好ましくは19.0T/nm
3以下、より好ましくは17.5T/nm
3以下である。なお、フレームワーク密度(T/nm
3)は、ゼオライトの単位体積nm
3あたり存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する酸素以外の元素の原子)の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。前記下限値未満では、構造が不安定となる場合があったり、耐久性が低下する傾向があり、一方、前記上限値を超過すると吸着量、触媒活性が小さくなる場合があったり、触媒としての使用に適さない場合がある。
【0039】
本発明におけるゼオライトは、水蒸気の吸着特性としてある特定の相対蒸気圧の範囲内で大きく水の吸着量が変化する特徴を持つものが好ましい。吸着等温線で評価すると、通常、25℃の水蒸気吸着等温線では、相対蒸気圧0.03以上、0.25以下の範囲で相対蒸気圧が0.05変化したときに水の吸着量変化が0.10g/g以上となるものであり、好ましくは0.15g/g以上となるものである。
【0040】
相対蒸気圧の好ましい範囲は、0.035以上、0.15以下であり、更に好ましくは0.04以上、0.09以下である。また水の吸着量変化は、大きいほど吸着量差が大きく好ましいが、通常1.0g/g以下である。
本発明におけるゼオライトは、以下に述べる90℃で測定した水蒸気繰り返し吸脱着試験において、吸着維持率が高い方が好ましく、通常、吸着維持率は80%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であり、上限は特に制限されるものではないが、通常100%以下である。
【0041】
本発明におけるゼオライトは、後述する水蒸気繰り返し吸脱着試験において、吸着維持率が80%以上であることが好ましい。本発明におけるゼオライトは、90℃で測定した水蒸気繰り返し吸脱着試験後における水吸着量が、相対蒸気圧0.2の際の水吸着量に対して70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。上限は特に制限されるものではないが、通常100%以下であり、好ましくは95%以下である。
水蒸気繰り返し吸脱着試験としては、試料をT℃に保たれた真空容器内に保持し、T
1℃の飽和水蒸気雰囲気とT
2℃飽和水蒸気雰囲気にそれぞれ90秒曝す操作を繰り返す(T
1<T
2<T)。このときT
2℃の飽和水蒸気雰囲気に曝されたときに試料に吸着した水は、T
1℃の飽和水蒸気雰囲気で一部が脱着し、T
1℃に保った水だめに移動する。m回目の吸着からn回目の脱着で、5℃の水だめに移動した水の総量(Qn;m(g))と試料の乾燥重量(W(g))から一回あたりの平均吸着量(Cn;m(g/g))を以下のようにして求める。
【0042】
[Cn;m]=[Qn;m]/(n−m+1)/W
通常吸収、脱着の繰り返しは1000回以上行い、好ましくは2000回以上であり、上限は特に限定されるものではない。(以上の工程を「T−T
2−T
1の水蒸気繰り返し吸脱着試験」という。)
本発明において用いられるゼオライトの水蒸気繰り返し吸脱着試験としては、ゼオライト試料を90℃に保たれた真空容器内に保持し、5℃の飽和水蒸気雰囲気と80℃飽和水蒸気雰囲気にそれぞれ90秒曝す操作を繰り返す。それによって得られた上記数値より、一回あたりの平均吸着量(Cn;m(g/g)を求める。(90−80−5の水蒸気繰り返し吸脱着試験、以上の工程を「90℃で測定した際の水蒸気繰り返し吸脱着試験」ということがある。)
脱着試験の維持率とは、前記の水蒸気繰り返し吸脱着試験の1回から1000回の平均吸着量に対する1001回から2000回の平均吸着量の比を求めたものである。平均吸着量の維持率が高いということは、水の吸脱着の繰り返しが行われてもゼオライトが劣化しないことを示す。維持率は80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が好ましい。上限は全く劣化が起こらない100%である。
【0043】
水蒸気の繰り返し吸脱着によるゼオライトの変化は、試験前後においてのゼオライトの水蒸気吸着等温線の変化により観察できる。
水の吸脱着の繰り返しにより、ゼオライトの構造に変化がなければ、水蒸気吸着等温線には変化がなく、ゼオライトの構造が壊れるなど変化した場合は吸着量の低下が観察される。90℃での2000回の水蒸気繰り返し吸脱着試験を行い、試験前に対して試験後での25℃の相対蒸気圧が0.2の時の水吸着量は通常70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
【0044】
本発明のゼオライトは水蒸気繰り返し吸脱着試験の吸着維持率が高いことにより、窒素酸化物の浄化に優れる。本発明の触媒は、自動車等に搭載され使用されるときは、実際には水の吸脱着が繰り返し行われ、窒素酸化物の浄化が行われると考えられ、そのため水の繰り返し吸脱着時に劣化しないものが、排ガス浄化能力に優れた構造を有し、実用上優れた窒素酸化物の浄化能力を有するものと考えられる。
【0045】
本発明におけるゼオライトの粒子径は、電子顕微鏡でゼオライトを観察した際の、任意の10〜30点のゼオライト粒子の一次粒子径の平均値をいい、通常1μm以上であり、さらに好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であり、通常15μm以下であり、好ましくは10μm以下である。なお、本発明におけるゼオライトの粒子径は、下記に説明するゼオライトの製造において、テンプレートを除去した後の粒子径として測定した値をいう。
【0046】
本発明におけるゼオライトは、10%水蒸気を含む雰囲気下、800℃で10時間水蒸気処理した後、真空乾燥させて測定した固体
29Si―DD/MAS−NMRスペクトルを測定した際、通常、−110ppm近傍の信号強度の積分強度面積が小さいものが好ましい。
ゼオライト骨格中のケイ素原子は、通常Si(OX)
n(OY)
4−n(X、YはAl,P,Siなどの原子を表す。;n=0〜2を表す。)型の結合をとる。固体
29Si−DD/MAS−NMRで−95ppm付近に観測されるピークは、X,Yが共にケイ素原子以外の原子の場合に相当する。これに対して、−110ppm付近のピークはX,Yが共にケイ素原子の場合に相当し、SiO
2ドメインが形成されていることを示している。SAPOを触媒として用いる場合、骨格中に存在するSiサイトが触媒活性点として機能すると考えられる。したがって、ケイ素原子同士が集まったSiO
2ドメインが形成されると触媒活性低下の原因となると考えられる。したがって、−110ppm近傍の信号強度の積分強度面積は小さいことが好ましく、具体的には、−75〜−125ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−105〜−125ppmの信号強度の積分強度面積が25%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0047】
また本発明におけるゼオライトは、10%水蒸気を含む雰囲気下、800℃で10時間水蒸気処理した後、乾燥させて測定した固体
29Si―DD/MAS−NMRスペクトルにおいて、通常、−100ppm近傍の信号強度の積分強度面積が小さいものが好ましい。
−100ppm付近に観測されるピークは、Si(OX)
n(OY)
3−n(OH)の場合に相当する。このSi−OH基は、Si−O−X結合あるいはSi−O−Y結合が加水分解して生成したものであり、水蒸気によってゼオライト骨格の構造の一部が破壊されていることを示している。ゼオライト骨格の構造が破壊されれば、触媒表面積の低下、触媒活性点の減少等を経て触媒活性の低下を招くことから、−100ppm近傍の信号強度の積分強度面積は小さいことが望ましい。具体的には、−75〜−125ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−99〜−125ppmの信号強度の積分強度面積が40%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。
【0048】
<ゼオライトの製造方法>
本発明におけるゼオライトはそれ自体既知の化合物であり、通常用いられる方法に準じて製造することができる。本発明におけるゼオライトの製造方法は、特に限定されないが、例えば日本国特公平4−37007号公報、日本国特公平5−21844号公報、日本国特公平5−51533号公報、米国特許第4440871号公報、日本国特開2003−183020号公報、米国特許第4544538号公報等に記載の方法に準じて製造することができる。
【0049】
本発明において用いられるゼオライトは通常、構成原子として含む原子原料と、必要に応じてテンプレートを混合した後、水熱合成し、テンプレートを除去してゼオライトを得る。
アルミノシリケート類は、通常アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、(他の原子Meを含む場合は、さらに他の原子(Me)原子原料)および必要に応じてテンプレートを混合した後、水熱合成し、テンプレート除去して得る。
アルミノフォスフェート類は、通常、アルミニウム原子原料、リン原子原料、(他の原子Meを含む場合は、さらに他の原子(Me)原子原料)およびテンプレートを混合した後、水熱合成し、テンプレートを除去して得る。
【0050】
以下ゼオライトの製造方法の具体例として、Meとしてケイ素を含むアルミノフォスフェート類(シリコアルミノフォスフェート)の製造方法について説明する。
通常、ケイ素を含むアルミノフォスフェート類は、アルミニウム原子原料、リン原子原料、ケイ素原子原料、および必要に応じてテンプレートを混合した後、水熱合成によって得られる。テンプレートを混合した場合は、水熱合成後に通常テンプレートを除去する。
【0051】
<アルミニウム原子原料>
本発明におけるゼオライトのアルミニウム原子原料は特に限定されず、通常、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミン酸ナトリウムなどであって、擬ベーマイトが好ましい。
【0052】
<リン原子原料>
本発明に用いられるゼオライトのリン原子原料は通常リン酸であるが、リン酸アルミニウムを用いてもよい。
【0053】
<ケイ素原子原料>
本発明におけるゼオライトのケイ素原子原料は特に限定されず、通常、ヒュームドシリカ、シリカゾル、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸エチル、ケイ酸メチルなどであって、ヒュームドシリカが好ましい。
【0054】
<テンプレート>
本発明のゼオライトの製造に用いられるテンプレートとしては、公知の方法で使用される種々のテンプレートが使用でき、以下に示すテンプレートを用いることが好ましい。
【0055】
本発明に用いるテンプレートは(1)ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物、(2)アルキルアミン、の2つの群から各群につき1種以上の化合物を選択して用いる。
(1)ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物
ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物の複素環は通常5〜7員環であって、好ましくは6員環である。複素環に含まれるヘテロ原子の個数は通常3個以下、好ましくは2個以下である。窒素以外のヘテロ原子は任意であるが、窒素に加えて酸素を含むものが好ましい。ヘテロ原子の位置は特に限定されないが、ヘテロ原子が相互に隣り合わないものが好ましい。
【0056】
また、ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物の分子量は、通常、250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下であり、また通常30以上、好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。
このようなヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物として、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、キヌクリジン、ピロリジン、N−メチルピロリドン、ヘキサメチレンイミンなどが挙げられ、モルホリン、ヘキサメチレンイミン、ピペリジンが好ましく、モルホリンが特に好ましい。
【0057】
(2)アルキルアミン
アルキルアミンのアルキル基は、通常、鎖状アルキル基であって、アミン1分子中に含まれるアルキル基の数は特に限定されるものではないが、3個が好ましい。また本発明のアルキルアミンのアルキル基は一部水酸基等の置換基を有していてもよい。本発明のアルキルアミンのアルキル基の炭素数は4以下が好ましく、1分子中の全アルキル基の炭素数の合計が10以下がより好ましい。また、分子量で通常、250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下である。
【0058】
このようなアルキルアミンとしては、ジーn−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジ−n−ブチルアミン、ネオペンチルアミン、ジーn−ペンチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミン等があげられ、ジーn−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミンが好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0059】
(1)〜(2)のテンプレートの好ましい組み合わせとしては、モルホリン、トリエチルアミンを含む組合せである。テンプレートの混合比率は、条件に応じて選択する必要がある。
2種のテンプレートを混合させるときは、通常、混合させる2種のテンプレートのモル比が1:20から20:1、好ましくは1:10から10:1、さらに好ましくは1:5から5:1である。
【0060】
3種のテンプレートを混合させるときは、通常、3つ目のテンプレートのモル比は、上記で混合された(1)と(2)の2種のテンプレートの合計に対して1:20から20:1、好ましくは1:10から10:1、さらに好ましくは1:5から5:1である。
また、2種以上のテンプレートの混合比は特に限定されるものではなく、条件に応じて適宜選ぶことができるが、例えば、モルホリンとトリエチルアミンを用いる場合、モルホリン/トリエチルアミンのモル比は通常0.05以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上であり、通常20以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下である。
【0061】
その他のテンプレートが入っていても良いが、その他のテンプレートはテンプレート全体に対してモル比で通常20%以下であり、10%以下が好ましい。
本発明におけるテンプレートを用いるとゼオライト中のSi含有量をコントロールすることが可能であり、窒素酸化物浄化用触媒として好ましいSi含有量、Si存在状態にすることができる。その理由は明らかではないが、以下のような事が推察される。
例えば、CHA型構造のSAPOを合成する場合、ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物、例えばモルホリンはSi含有量の多いSAPOを比較的容易に合成しうる。しかしながら、Si含有量の少ないSAPOを合成しようとすると、デンス成分やアモルファス成分が多く、結晶化が困難である。また、アルキルアミン、例えばトリエチルアミンは、CHA構造のSAPOも限られた条件では合成可能であるが、通常、種々の構造のSAPOが混在しやすい。しかし逆に言えば、デンス成分やアモルファス成分では無く、結晶構造のものにはなりやすい。すなわち、それぞれのテンプレートはCHA構造を導くための特徴、SAPOの結晶化を促進させる特徴などを有している。これらの特徴を組み合わせる事により、相乗効果を発揮させ、単独では実現できなかった効果があらわれたと考えられる。
【0062】
<水熱合成によるゼオライトの合成>
上述のケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、テンプレートおよび水を混合して水性ゲルを調合する。混合順序は制限がなく、用いる条件により適宜選択すればよいが、通常は、まず水にリン原子原料、アルミニウム原子原料を混合し、これにケイ素原子原料、テンプレートを混合する。
【0063】
水性ゲルの組成は、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料およびリン原子原料を酸化物のモル比であらわすと、SiO
2/Al
2O
3の値は通常、0より大きく、好ましくは0.02以上であり、また通常0.5以下であり、好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。また同様の基準でのP
2O
5/Al
2O
3の比は通常0.6以上、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上であり、通常1.3以下、好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下である。
【0064】
水熱合成によって得られるゼオライトの組成は水性ゲルの組成と相関があり、所望の組成のゼオライトを得るためには水性ゲルの組成を適宜設定すればよい。テンプレートの総量は、水性ゲル中のアルミニウム原子原料を酸化物で表したときAl
2O
3に対するテンプレートのモル比で、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であって、通常4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下である。
【0065】
前記2つ以上の群から各群につき1種以上選択されたテンプレートを混合する順番は特に限定されず、テンプレートを調製した後その他の物質と混合してもよいし、各テンプレートをそれぞれ他の物質と混合してもよい。
また水の割合は、アルミニウム原子原料に対して、モル比で通常3以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上であって、通常200以下、好ましくは150以下、さらに好ましくは120以下である。
【0066】
水性ゲルのpHは通常5以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは6.5以上であって、通常10以下、好ましくは9以下、さらに好ましくは8.5以下である。
なお、水性ゲル中には、所望により、上記以外の成分を含有していても良い。このような成分としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩、アルコール等の親水性有機溶媒があげられる。含有する量は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩は、アルミニウム原子原料に対してモル比で通常0.2以下、好ましくは0.1以下であり、アルコール等の親水性有機溶媒は、水に対してモル比で通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。
【0067】
得られた水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、または結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、攪拌または静置状態で所定温度を保持する事により水熱合成する。水熱合成の反応温度は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上であって、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは220℃以下である。この温度範囲のうち、最も高い温度である最高到達温度まで昇温する過程において、80℃から120℃までの温度域に1時間以上置かれることが好ましく、2時間以上置かれることがより好ましい。この温度範囲での昇温時間が1時間未満であると、得られたテンプレート含有ゼオライトを焼成して得られるゼオライトの耐久性が不十分となる場合がある。また、80℃から120℃までの温度範囲内に1時間以上おかれることが耐久性の面で好ましい。更に好ましくは2時間以上である。
【0068】
一方、上記時間の上限は特に制限はないが、長すぎると生産効率の面で不都合な場合があり、通常50時間以下、生産効率の点で好ましくは24時間以下である。
前記温度領域の間の昇温方法は、特に制限はなく、例えば、単調に増加させる方法、階段状に変化させる方法、振動等上下に変化させる方法、およびこれらを組み合わせて行う方式など様々の方式を用いることができる。通常、制御の容易さから、昇温速度をある値以下に保持して、単調に昇温する方式が好適に用いられる。
【0069】
又、本発明では、最高到達温度付近に所定時間保持するのが好ましく、最高到達温度付近とは、該温度より5℃低い温度乃至最高到達温度を意味し、最高到達温度に保持する時間は、所望のものの合成しやすさに影響し、通常0.5時間以上、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。
【0070】
最高到達温度に達した後の温度の変化の方法は、特に制限はなく、階段状に変化させる方法、最高到達温度以下で、振動等上下に変化させる方法、およびこれらを組み合わせて行う方式など様々の方式を用いることができる。通常、制御の容易さ、得られるゼオライトの耐久性の観点から、最高到達温度を保持した後、100℃から室温までの温度に降温するのが好適である。
【0071】
<テンプレートを含有したゼオライト>
水熱合成後、生成物であるテンプレートを含有したゼオライトを水熱合成反応液より分離するが、テンプレートを含有したゼオライトの分離方法は特に限定されない。通常、濾過またはデカンテーション等により分離し、水洗、室温から150℃以下の温度で乾燥して生成物を得ることができる。
【0072】
次いで、通常テンプレートを含有したゼオライトからテンプレートを除去するが、その方法は特に限定されない。通常、空気または酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガスの雰囲気下に400℃から700℃の温度で焼成したり、エタノール水溶液、HCl含有エーテル等の抽出溶剤による抽出等の方法により、含有する有機物を除去することができる。好ましくは製造性の面で焼成による除去が好ましい。
本発明の触媒の製造においては、テンプレートを除去したゼオライトに金属を担持しても、テンプレートを含有したゼオライトに金属を担持した後にテンプレートを除去してもよいが、製造工程が少なく、簡便な点でテンプレートを含有したゼオライトに金属を担持した後にテンプレートを除去することが好ましい。
【0073】
ゼオライトに金属を担持する場合、一般的に用いられるイオン交換法ではテンプレートを焼成除去したゼオライトを用いる。これは、テンプレートが除去された細孔に金属がイオン交換することにより、イオン交換ゼオライトを製造するためであり、テンプレートを含有したゼオライトはイオン交換ができないため、触媒の製造には不向きである。本発明の製造方法ではイオン交換法を行なわず、テンプレートを含有したゼオライトを用い、金属との混合分散液から分散媒を除去し、下記する焼成を、テンプレート除去と同時にすることで触媒を製造することができるため、製造面で有利である。
【0074】
テンプレートを除去してから金属担持を行う場合は、通常、空気または酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガスの雰囲気下において、通常400℃以上700℃以下の温度で焼成する方法、エタノール水溶液、HCl含有エーテル等の抽出剤により抽出する方法等の種々の方法により、含有するテンプレートを除去することができる。
【0075】
本発明の窒素酸化物除去用触媒は、通常ゼオライトに、触媒活性能を有する金属を担持させることにより得られる。
<金属>
本発明において用いる金属は、ゼオライトに担持させて、触媒活性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、好ましくは鉄、コバルト、パラジウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニア等の中の群から選ばれる。更に好ましくは、鉄または銅の中から選ばれる。またゼオライトに担持させる金属は、2種以上の金属を組み合わせて担持してもよい。
【0076】
なお本発明において「金属」とは、必ずしも元素状のゼロ価の状態にあることをいうものではない。「金属」という場合、触媒中に担持された存在状態、例えばイオン性のまたはその他の種としての存在状態を含む。
本発明におけるゼオライトに担持させる金属の金属源としては、特に限定されないが、金属塩、金属錯体、金属単体、金属酸化物等が用いられ、好ましくは硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩などの無機酸塩または酢酸塩などの有機酸塩が用いられる。金属源は、後述する分散媒に可溶であっても不溶であってもよい。
【0077】
本発明において用いられる金属の担持量は、特に限定されないが、ゼオライトに対しての重量比で通常0.1%以上、好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1%以上であり、通常10%以下、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である。前記下限値未満では活性点が少なくなる傾向があり、触媒性能を発現しない場合がある。前記上限値超過では金属の凝集が著しくなる傾向があり、触媒性能が低下する場合がある。
【0078】
本願発明に用いられる触媒中には、還元剤を共存させて使用することもできる。このうち還元剤を共存させた場合、浄化が効率よく進行するので好ましい。還元剤としては、アンモニア、尿素、有機アミン類、一酸化炭素、炭化水素、水素等が用いられ、好ましくはアンモニア、尿素が用いられる。
【0079】
<窒素酸化物浄化用触媒>
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、その金属の電子ミクロスケールでの分布状態を、電子プローブマイクロアナライザー(Electron microprobe analysis、以下EMPAという)により元素マッピングをとることにより観察することができる。その観察方法は通常、触媒粉末を樹脂に包埋し、断面ミクロトーム(ダイヤ刃)にて切削を行った後に、10〜50μm
2の範囲の金属の元素マッピングをとり、200×200の画素の元素マップを作成することによって行う。
【0080】
本発明の触媒は通常、ゼオライト内での金属の分布が不均一で、一部に局所的に金属が存在し、好ましくは触媒表面に金属が多く担持されている。具体的には元素マッピングで、ゼオライト内での金属の分布が不均一であり、EMPAの金属の強度のマップ内での変動係数の高さで表すことができ、変動係数は20%以上であり、好ましくは25%以上である。変動係数は元素マップ中の全画素の金属強度の標準偏差を全画素の平均値で割って求めることができる。
【0081】
これは一般に用いられるイオン交換法で製造した触媒の場合、金属がゼオライト結晶内部まで一様に分布するため、実際に反応が起こるゼオライト結晶表面における金属量が少なくなり、浄化性能が低くなるものと推定される。本発明の触媒の製造方法はゼオライト内での金属分布を不均一にする方法であれば特に限定されるものではないが、好ましくはゼオライトと前記金属の金属源と分散媒の混合物を調製し、分散媒を除去することにより金属を担持した場合、ゼオライト表面に金属が偏在し、反応に寄与することができる金属量が多くなり、浄化性能が上がるものと考えられる。上記マップ内の金属の変動係数が20%以下の場合、金属がゼオライト内に一様に分散している状態となり、浄化性能が低くなる。上限については特に限定されるものではないが、通常100%以下であり、好ましくは50%以下である。
【0082】
本発明の触媒における金属の粒子径は、透過型電子顕微鏡(transmission electron microscope、以下TEM)により観察できる。
本発明の触媒に担持された金属の粒子径は、特に限定されるものではないが、その直径が、通常0.5nm以上、20nm以下であり、好ましくは下限が1nm以上であり、上限は好ましくは10nm以下で、より好ましくは5nm以下である。
【0083】
一般に用いられるイオン交換法により製造した場合は、金属はイオンとしてゼオライト内に微分散されており、その粒子径は0.5nm未満であるためTEMで観察することができない。イオン交換した金属は直接浄化反応には寄与せず、金属が凝集した状態が浄化反応に寄与するものと考えられる。また、含浸法を用い長時間で乾燥を行った場合は、金属が凝集し20nmより大きな粒子として観察される。金属が20nmより大きな粒子として凝集した場合は、金属の比表面積が小さくなり、反応に寄与できる金属表面が不十分で浄化性能が低下する。
【0084】
TEMの観察方法は通常、触媒粉末を粉砕したものをエタノールに分散させた後、乾燥させた試料を用いて観察を行う。試料の量は特に限定されないが、TEM観察した際に、ゼオライト粒の重なりが少なく、なおかつ、より多くのゼオライト粒を数μm角の1枚の写真に入れられる程度に多いことが好ましい。TEMで観察した場合、明るいゼオライト上にCu粒子が暗く観察することができる。
【0085】
観察時の加速電圧は200kVから800kVが好ましい。200kVより低い場合は、ゼオライト結晶を透過しきれず、担持された金属粒子を観察することができなくなり、800kVより高い場合は、コントラストがつかず金属粒子を観察することができなくなる。また、観察は高感度CCDカメラでの撮影を行う。ネガフィルム撮影では、ダイナミックレンジが狭く、ゼオライト粒が黒くつぶれてしまい、金属粒子を観察することができなくなる可能性がある。
【0086】
<アンモニアTPD>
本発明の触媒のアンモニア吸着量、及び吸着強度は、アンモニア昇温脱離法(Temperature Programmed Desorption 以下TPD法という)によるアンモニア吸着特性により測定することができる。
本発明の触媒のアンモニアTPD法におけるピーク温度は、特に限定されるものではないが、イオン交換法で担持された触媒に対して、高いほうが好ましく、通常250℃以上、好ましくは280℃以上であり、通常500℃以下であり、好ましくは350℃以下である。
【0087】
本発明の触媒のアンモニアTPD法により測定したアンモニア吸着量は、特に限定されるものではないが、より多いほうが窒素酸化物を還元する還元剤の吸着が増えるため好ましく、通常0.6mol/kg以上であり、好ましくは0.8mol/kg以上、より好ましくは0.9mol/kg以上である。上限は特に制限はないが、通常5mol/kg以下である。
【0088】
銅や鉄等の金属をゼオライト上に担持させた場合、これらの金属はイオン化しゼオライトの酸点上に担持される。そのため、活性金属が担持されたゼオライトの酸点にはアンモニアが吸着することが困難となり、アンモニアが活性金属上に弱く吸着する。そのため、アンモニアTPDにおける脱離温度が低くなり、通常150〜250℃にピークトップを持つことになる。しかし、窒素酸化物浄化用触媒として用いる場合、よりアンモニアが触媒に強力に吸着しているほうが、高SV下反応が進行することから、好ましいと考えられる。
【0089】
本発明の触媒におけるアンモニアTPDのピークトップ温度、及びアンモニア吸着量は下記のようにして求めることができる。吸着水を除去するために、試料をまず不活性雰囲気下400〜500℃に昇温し、1時間程度保持する。その後、100℃を維持しながらアンモニアを流通させ15〜30分間アンモニアを吸着させる。ゼオライトの酸点に吸着したアンモニウムイオン上にさらに水素結合したアンモニアを除去するために、水蒸気を導入し5分間接触させる操作を5〜10回繰り返す。上記処理後、不活性ガス流通下100〜610℃まで10℃/分の速度で昇温し、各温度にて脱着したアンモニア量を測定する。温度を横軸にとって、アンモニア量をプロットしたときのピークトップをアンモニアTPDのピークトップ温度とする。また、昇温過程で脱着したアンモニアの総量をアンモニア吸着量とする。
【0090】
本発明の触媒の第五の態様は水蒸気繰り返し吸脱着試験において、吸着維持率が80%以上であることを特徴とする。
本発明の触媒は、90℃で測定した水蒸気繰り返し吸脱着試験において、吸着維持率が高い方が好ましく、通常吸着維持率は80%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であり、上限は100%である。なお水蒸気繰り返し吸脱着試験は、前記本発明におけるゼオライトの水蒸気繰り返し吸脱着試験と同様である。
【0091】
本発明の触媒は、90℃で測定した水蒸気繰り返し吸脱着試験後における水吸着量が、相対蒸気圧0.2の時の水吸着量に対して70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
なお本試験条件は、前記本発明におけるゼオライトの試験条件と同様である。
【0092】
すなわち90℃での2000回の水蒸気繰り返し吸脱着試験を行い、試験前に対して試験後での25℃の相対蒸気圧が0.2の時の水吸着量が通常70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
本発明の触媒の水蒸気の繰り返し吸脱着による触媒の変化は、試験前後においての触媒の水蒸気吸着等温線の変化により観察できる。
水の吸脱着の繰り返しにより、触媒の構造に変化がなければ、水蒸気吸着等温線には変化がなく、触媒の構造が壊れるなど変化した場合は吸着量の低下が観察される。
【0093】
本発明の触媒は水蒸気繰り返し吸脱着試験の吸着維持率が高いことにより、窒素酸化物の浄化に優れ、かつ安定性が高い。本発明の触媒は、自動車等に搭載され使用されるときは、実際には水の吸脱着が繰り返し行われ、窒素酸化物の浄化が行われると考えられ、そのため水の繰り返し吸脱着時に劣化しないものが、排ガス浄化能力に優れた構造を有し、実用上優れた窒素酸化物の浄化能力を有するものと考えられる。
【0094】
<NO−IR>
本発明の触媒中に存在する金属の状態、および金属と窒素酸化物が反応するときの反応中間体は、一酸化窒素を吸着した触媒の赤外吸収スペクトル(以下NO−IRという)により観察することができる。
本発明の触媒は、触媒に一酸化窒素(NO)を吸着させる前後に25℃で測定したNO−IRの差において、1860〜1930cm
−1の間に2つ以上の吸収波長が存在することが望ましい。
また、本発明の触媒は、触媒に一酸化窒素(NO)を吸着させる前後に150℃で測定したNO−IRの差において、1757〜1990cm
−1のピーク強度の最大値に対する1525〜1757cm
−1のピーク強度の最大値の比が1以下であることが望ましい。
【0095】
窒素酸化物浄化能力が高い触媒は、微分散した金属イオンのほかに、前述したような0.5nm以上20nm以下の少し凝集した金属粒子を含んでいる。このような粒子に室温で一酸化窒素を吸着させると、金属イオンと金属凝集粒子のそれぞれに吸着し、1860〜1930cm
−1の領域に2つ以上のピークを与える。一般に用いられるイオン交換法により製造した触媒には、金属イオンのみがゼオライト内に均一に担持されている。このような触媒に室温で一酸化窒素を吸着させると、金属イオン上に吸着した一酸化窒素がNO−IRにおいて1860〜1930cm
−1の領域に単一の吸収ピークを与える。しかしながら、このような単一なイオンとして均一に担持された金属は、窒素酸化物浄化能力が低い。
【0096】
窒素酸化物のうち、一酸化窒素は反応しにくいことが知られている。そのため一酸化窒素はまず触媒によって酸化され二酸化窒素を生成する。生成した二酸化窒素が一酸化窒素と反応し窒素と水に分解する。一酸化窒素および二酸化窒素はNO−IRにおいてそれぞれ1757〜1990cm
−1、1525〜1757cm
−1に観察されるため、NO−IRによって触媒上に吸着している一酸化窒素および二酸化窒素の反応性を評価することができる。
触媒上に吸着している二酸化窒素の反応性が低いと、温度を上げても触媒上から二酸化窒素が除去されないため、NO−IRにおいて1525〜1757cm
−1に強いピークが観察される。NO−IRにおいて1525〜1757cm
−1のピークが小さいことは、二酸化窒素が速やかに一酸化窒素と反応し、触媒表面上から除去されたことを示している。
【0097】
本発明の触媒のNO−IRは下記のようにして測定することができる。
室温測定:
触媒粉末を吸着測定用セル内で真空下150℃まで昇温し1時間保持し前処理とする。30℃まで降温し、IRスペクトルを測定してバックグラウンドスペクトルとする。20PaのNOを導入し、都度IRスペクトルを採取する。
150℃測定:
室温測定が終わった後、試料セルを150℃まで昇温し1時間保持し前処理する。150℃のままIRスペクトルを採取し、バックグラウンドとする。20PaのNOを導入し、都度IRスペクトルを採取する。
【0098】
<電子スピン共鳴>
本発明の触媒中に銅を担持した場合、電子スピン共鳴(以下ESR)スペクトルにより、銅(II)イオンへの配位子(例えば酸素)がとる配位構造、および金属イオンと配位子との結合の性質などがわかる。
本発明の触媒中の金属の分布は不均一である。このような触媒中には、2種類以上の銅が存在する。例えばイオン交換した銅や、少しだけ凝集し5〜20nm程度のサイズを持つ銅などが触媒中に混在している。したがって、ESRスペクトルにおいて、銅(II)イオンに帰属されるg||因子が2つ以上存在する触媒は脱硝活性が高く望ましい。より好ましくは、これらの2種類以上のg||はともに2.3から2.5の間の値をとる。一般に用いられるイオン交換法により製造した触媒には、1種類の金属イオンのみがゼオライト内に均一に担持されている。このような触媒のESRスペクトルを測定すると、銅(II)イオンに帰属されるg||因子は1種類のみ得られる。しかしながら、このように単一なイオンとして均一に担持された金属は、窒素酸化物浄化能力が低い。
【0099】
本発明の触媒のESRスペクトルは以下のようにして測定することができる。
触媒粉末60mgを直径5mmの石英管に充填し、150℃で5時間乾燥ののち封管する。この試料管をESR測定装置に設置したのち、磁場変調100kHz、レスポンス0.1秒、磁場掃引時間15min、マイクロ波出力0.1mWでESRスペクトルを測定する。なお、中心磁場および掃引磁場幅は任意である。
【0100】
本発明の窒素酸化物浄化用触媒の粒子径は、通常15μm以下、好ましくは10μm以下であり、下限は、通常0.1μmである。必要に応じて、ジェットミル等の乾式粉砕またはボールミル等の湿式粉砕を行っても良い。なお触媒の平均粒径の測定方法は、上記ゼオライトの粒子径の測定方法と同じである。
本発明の窒素酸化物除去用触媒は、X線源としてCuKαを用いてXRD測定を行った際、ゼオライト由来のピークに加えて、回折角(2θ)21.2〜21.6度に回折ピークが観察されるものが好ましい。回折ピークを有するとは、回折角3〜50度の範囲において最も高強度のピーク高さに対して、21.2〜21.6度のピーク高さが1%以上、好ましくは2%以上、更に好ましくは5%以上であることを指す。ピーク高さは、回折ピークが存在しないベースラインより、ピークトップまでの高さを指す。
金属を担持したゼオライト触媒のX線回折測定は、触媒を処理することなくおこなってもよく、熱処理を行った後に行ってもよい。熱処理をする場合、熱処理温度は通常700度以上、好ましくは750度以上、通常1200℃以下、好ましくは1000℃以下、より好ましくは900℃以下で行う。また熱処理の時間は通常1時間以上、好ましくは2時間以上、通常100時間以下、好ましくは24時間以下である。
【0101】
本発明の窒素酸化物除去用触媒は、通常ゼオライトに、触媒活性能を有する金属を担持させることにより得られる。
【0102】
「金属担持方法」
本発明の触媒を製造する際のゼオライトへの金属種の担持方法としては、特に限定されないが、一般的に用いられるイオン交換法、含浸担持法、沈殿担持法、固相イオン交換法、CVD法等が用いられる。好ましくは、イオン交換法、含浸担持法である。
金属種の金属源としては、特に限定されるものではないが、通常金属の塩類が用いられ、例えば硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩酸塩等を用いることができる。
含浸担持を行うとき、スラリー状態から、短時間で乾燥させることが好ましく、スプレードライ法を用いて乾燥することがより好ましい。
【0103】
乾燥後、通常400℃から900℃で熱処理を行う。熱処理は金属の分散を高め、ゼオライト表面との相互作用を高めるため、700℃以上で熱処理を行うことが好ましい。熱処理の雰囲気は、特に限定はなく、大気下、窒素下、アルゴン下等の不活性雰囲気下で行われ、水蒸気が含まれてもよい。
なおここでいう熱処理とは、上述の本発明の窒素酸化物浄化用触媒の物性測定時に行う水蒸気処理等の処理や、本発明の窒素酸化物浄化用触媒を製造する際の、後述する焼成を含む処理をいう。 熱処理の方法は特に限定されず、マッフル炉、キルン、流動焼成炉などを用いることができるが、上記気体を流通させて焼成する方法が望ましい。気体の流通速度は特に限定されないが、通常粉体1gあたりの気体の流通量は、0.1ml/分以上、好ましくは5ml/分以上、通常100ml/分以下、好ましくは20ml/分以下の気体の流通下、熱処理して本発明によって得られる触媒を得る。
【0104】
粉体1gあたりの気体の流通量が前記下限値未満の流通量では乾燥粉体中に残存する酸が加熱時に除去されずゼオライトが破壊される可能性があり、前記上限値超過以上の流通量では粉体が飛散することがある。
本発明における熱処理を行う温度は特に限定されないが、通常250℃以上、好ましくは500℃以上、通常1000℃以下、好ましくは900℃以下で実施することができる。前記下限値未満では金属源が分解しないことがあり、前記上限値超過ではゼオライトの構造が破壊される可能性がある。
【0105】
本発明の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法は、上記の通り、少なくともアルミニウム原子とリン原子とを含むゼオライト、あるいは8員環構造を持つゼオライトと、金属源と分散媒の混合物から、混合物中の分散媒を除去した後に焼成し、かつ前記分散媒の除去を60分以下の時間で行うことを特徴とする窒素酸化物浄化用触媒の製造方法である。以下本発明の製造方法について詳述する。
【0106】
<窒素酸化物浄化用触媒の製造方法>
本発明の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法は、前記の通り、ゼオライトと金属と分散媒との混合物を調製し、前記混合物中の分散媒を除去した後に焼成し、かつ前記分散媒の除去を60分以下の時間で行うことを特徴とするものである。
【0107】
<ゼオライトと金属源と分散媒の混合物>
まず、ゼオライト、金属源、分散媒の混合物(以下、単に混合物ということがある)を調製する。
【0108】
本発明における分散媒とは、ゼオライトを分散させるための液体、をいう。本発明において用いられる混合物は、通常スラリー状あるいはケーキ状であるが、操作上の適用性からスラリー状が好ましい。
本発明において用いられる分散媒の種類は、特に限定されるものではないが、通常、水、アルコール、ケトンなどが使用され、加熱時の安全性の観点から、分散媒は水を使用することが望ましい。
【0109】
本発明において用いられる混合物の混合順序は、特に制限されるものではないが、通常、まず分散媒に金属源を溶解または分散し、これにゼオライトを混合する。上記の成分を混合して調製されるスラリー中の固形分の割合は、5質量%〜60質量%、好ましくは10質量%〜50質量%である。固形分の割合が前記下限値未満では、除去すべき分散媒の量が多くて、分散媒除去工程に支障をきたす場合がある。また、固形分の割合が前記上限値超過では、金属がゼオライト上に均一に分散しにくくなる傾向がある。
【0110】
本発明において用いられる混合物の調合温度は通常0℃以上、好ましくは10℃以上、通常80℃以下、好ましくは60℃以下である。
ゼオライトは通常、分散媒と混合すると発熱することがあり、調合温度を前記上限値超過とするとゼオライト自身が酸またはアルカリにより分解する可能性がある。調合温度の下限は分散媒の融点である。
【0111】
本発明において用いられる混合物の、調合時のpHは特に限定されないが、通常3以上、好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上であり、通常10以下、好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下である。pHを前記下限値未満あるいは上限値超過として調合するとゼオライトが破壊される可能性がある。
本発明において用いられる混合物には、混合物の粘度調整、あるいは分散媒の除去後の粒子形状、粒径制御のために各種の添加剤を加えてもよい。添加剤の種類は特に限定されないが、無機添加剤が好ましく、無機ゾル、粘土系添加剤等が挙げられる。無機ゾルではシリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾルなどが用いられるが、シリカゾルが好ましい。無機ゾルの平均粒子径は4〜60nm、好ましくは10〜40nmである。粘土系添加剤としては、セピオライト、モンモリナイト、カオリンなどが用いられる。
【0112】
添加剤の添加量は、特に限定されるものではないが、ゼオライトに対して重量比で50%以下、好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下である。重量比を前記上限値超過とすると、触媒性能が低下する場合がある。
本発明において用いられる混合物の混合の方法としては、十分にゼオライトと金属源が混合あるいは分散する方法であればよく、各種公知の方法が用いられるが、具体的には攪拌、超音波、ホモジナイザー等が用いられる。
【0113】
<分散媒の除去>
次に、本発明において用いられる混合物から分散媒を除去する。分散媒の除去の方法としては、短時間で分散媒を除去できる方法であれば特に限定されないが、好ましくは均一に噴霧した状態を経て、短時間に除去できる方法であり、より好ましくは均一に噴霧した状態を経て、高温の熱媒体と接触させて除去する方法であり、更に好ましくは均一に噴霧した状態を経て、高温の熱媒体として、熱風と接触させ乾燥させて除去することにより、均一な粉体を得ることのできる方法、『噴霧乾燥』である。
【0114】
本発明において噴霧乾燥を適用する場合、噴霧の方法としては、回転円盤による遠心噴霧、圧力ノズルによる加圧噴霧、二流体ノズル、四流体ノズル等による噴霧などを用いることができる。
噴霧したスラリーは、加熱した金属板や、高温ガスなどの熱媒体と接触することにより分散媒が除去される。いずれの場合も、熱媒体の温度は特に限定されないが、通常80℃以上、350℃以下である。前記下限値未満ではスラリーから十分に分散媒が除去できない場合があり、また前記上限値超過では金属源が分解し金属酸化物が凝集する場合がある。
【0115】
噴霧乾燥を用いる場合には、その乾燥条件については特に限定されないが、通常ガス入口温度を約200〜300℃、ガス出口温度を約60〜200℃として実施する。
本発明における混合物から分散媒を除去するために要する時間は、混合物中の分散媒の量が1質量%以下になるまでの時間をいい、水が分散媒の場合の乾燥時間は、混合物の温度が80℃以上になった時点から、混合物に含有する水の量が、得られた混合物中の1質量%以下になるまでの時間をいう。水以外の分散媒の場合の乾燥時間は、その分散媒の常圧における沸点より20℃低い温度になった時点から、混合物に含有する分散媒の量が、得られた混合物中の1質量%以下になるまでの時間をいう。分散媒の除去時間は60分以下であり、好ましくは10分以下、より好ましくは1分以下、更に好ましくは10秒以下であり、より短時間で乾燥することが望ましいので下限は特に限定されるものではないが、通常0.1秒以上である。
【0116】
前記上限値超過の時間をかけて混合物より分散媒を除去すると、金属を担持させるゼオライトの表面に金属源が凝集し不均一に担持されるため、触媒活性低下の原因となる。また一般的に金属源は酸性、またはアルカリ性を呈するため、分散媒の存在下でそれらの金属を含んだ状態で高温条件に長時間曝されると、金属原子を担持させたゼオライトの構造の分解が促進されると考えられる。そのため乾燥時間が長くなるほど触媒活性が低下すると考えられる。
【0117】
また、分散媒の除去後に得られる乾燥粉体の平均粒径は、特に限定されないが、乾燥を短時間で終了させることができるよう、通常1mm以下、好ましくは200μm以下、通常2μm以上となるように分散媒を除去するのが好ましい。
【0118】
<焼成>
分散媒の除去後、得られた乾燥粉体を、焼成することによって本発明の触媒を得る。焼成方法は特に限定されず、マッフル炉、キルン、流動焼成炉などを用いることができるが、気体を流通させて焼成し、本発明によって得られる触媒を得る方法が好ましい。気体の流通速度は特に限定されないが、通常粉体1gあたりの気体の流通量は、0.1ml/分以上、好ましくは5ml/分以上、通常100ml/分以下、好ましくは20ml/分以下である。前記気体の流通下、焼成して本発明の触媒を得る。粉体1gあたりの気体の流通量が前記下限値未満では乾燥粉体中に残存する酸が加熱時に除去されずゼオライトが破壊される可能性があり、前記上限値超過の流通量では粉体が飛散することがある。
【0119】
流通気体としては、特に限定されないが、空気、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴン、またはこれらの混合気体などを用いることができ、好ましくは空気が用いられる。また流通気体は水蒸気を含んでいても良い。還元雰囲気での焼成を用いることもでき、その場合、水素を気体中に混合したり、シュウ酸等の有機物を触媒に混ぜて焼成することができる。
本発明における焼成を行う温度は特に限定されないが、通常250℃以上、好ましくは500℃以上、通常1000℃以下、好ましくは900℃以下で実施することができる。前記下限値未満では金属源が分解しないことがあり、前記上限値超過ではゼオライトの構造が破壊される可能性がある。
【0120】
焼成時間は1秒〜24時間、好ましくは10秒〜8時間、さらに好ましくは30分〜4時間である。また焼成後、触媒を粉砕してもよい。
【0121】
「ゼオライト」
本発明で使用されるゼオライトは、骨格にケイ素原子、アルミニウム原子、リン原子を含むゼオライトが用いられる。
【0122】
また、本発明におけるゼオライトのフレームワーク密度は結晶構造を反映したパラメータであり、特に限定されるものではないが、IZAがATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Fifth Revised Edition 2001 に記載の数値で、通常10.0T/1000Å
3以上であって、好ましくは12.0T/1000Å
3以上である。
また通常18.0T/1000Å
3以下、好ましくは16.0T/1000Å
3以下である。さらに好ましくは15.0T/1000Å
3以下である。
【0123】
<触媒混合物>
本発明のゼオライトを含む触媒は、そのまま粉末状で用いても、シリカ、アルミナ、粘土鉱物等のバインダーと混合し、触媒を含んだ混合物(以下、触媒混合物ということがある)として用いてもよい。
【0124】
また成形性や強度を向上させるため、その性能を低下させない範囲で、各種の物質を添加してもよい。具体的にはアルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維類、セピオライト等の粘土鉱物類等を添加してもよく、好ましくはアルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維類である。
【0125】
<バインダー>
前記触媒混合物中に含まれるバインダーとしては通常、シリカ、アルミナ、セピオライト等の粘土鉱物類などの無機バインダー、あるいは有機バインダーであり、またシリコーン類、珪酸液、特定のシリカゾルあるいはアルミナゾル等の、架橋結合等により変性、または反応しバインダーとしての機能を発現するもの(以下、バインダー前駆体ということがある)でもよい。
【0126】
ここで、シリコーン類とは、主鎖にポリシロキサン結合を有するオリゴマーまたはポリマーを称し、ポリシロキサン結合の主鎖の置換基の一部が加水分解をうけてOH基となったものも含む。シリコーン類、珪酸液は室温〜300℃程度の低温温度域で縮合反応が進行する。また「特定のシリカゲル」とは前述の温度域で縮合反応が進行するものを意味する。
【0127】
前記触媒混合物中に含まれるバインダーとしては、好ましくは成形のし易さの面で、混合等の過程で架橋結合等により変性、または反応しバインダーとしての機能を発現するシリコーン類、珪酸液、特定のシリカゾルあるいはアルミナゾル等およびその混合物であり、より好ましくは下記の成形時の強度の観点から、シリコーン類、珪酸液およびその混合物であり、さらに好ましくは式(I)で示される化合物または珪酸液、およびその混合物である。
【0129】
〔ただし式(I)において、Rは、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルコキシまたはフェノキシであり、R’は、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル、アリール、アルケニルまたはアルキニルであり、nは、1ないし100の数である。〕
Rは、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリールオキシ基が挙げられ、これらは任意に置換されていても良い。更に好ましくは、それぞれ独立に非置換のアルコキシ基、アルキル基、アリールオキシ基が挙げられ、特に好ましくは、アルコキシ基であり、中でもエトキシ基あるいはメトキシ基が好ましく、最も好ましいのはメトキシ基である。
【0130】
R’は、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜6のアルケニル基または炭素数2〜6のアルキニル基であり、これらは任意に置換されていても良い。好ましくは非置換の炭素数1〜5のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基あるいはエチル基、最も好ましくはメチル基である。
上記式(I)の部分加水分解物は、R,R’の少なくとも一部が加水分解によりOH基となったものである。繰り返し単位nは、通常2〜100であり、好ましく2〜50、さらに好ましくは3〜30である。
【0131】
nの値に応じて、式(I)の化合物は、ここでは、モノマーの形で、あるいは長鎖の形態で、任意に分岐鎖の形態で存在する。
本発明で用いるシリコーン類としては、慣用的に、メチルシリケート、エチルシリケートと称されているアルキルシリケートが含まれる。
また、本発明における珪酸液は、珪酸アルカリ溶液からアルカリ金属イオンを除去したものである。アルカリ金属イオンの除去方法は特に限定されるものではないが、例えば、イオン交換等の公知の方法が採用でき、例えば、特許第3540040号公報、特開2003−26417号公報に記載されているように、珪酸ナトリウム溶液をH
+型のカチオン交換樹脂と接触させて調製される。珪酸アルカリは、珪酸ナトリウム以外に、珪酸カリウム、あるいはこれらの混合物が使用できるが、入手しやすさの観点から珪酸ナトリウムが好ましい。H
+型カチオン交換樹脂は、市販品、例えばダイアイオンSKT−20L(三菱化学社製)、アンバーライトIR−120B(ダウ・ケミカル社製)などを常法によりH
+型にイオン交換して用いる。使用するカチオン交換樹脂の必要量は、公知の知見により選択されるが、通常、少なくとも珪酸アルカリ中のアルカリ金属イオン量と同等以上のカチオン交換容量が得られる量である。イオン交換は流通式、バッチ式のいずれも可能であるが、通常は流通式が採用される。
【0132】
珪酸液中のSiO
2濃度は、特に限定されるものではないが、通常1〜10質量%、下記する成形時の強度の面で好ましくは2〜8質量%である。珪酸液は、安定化剤として少量のアルカリ金属イオン、有機アミン、四級アンモニウムのような有機塩基を含有していても良い。これら安定化剤の濃度は特に限定されるものではないが、アルカリ金属イオンを例に挙げると、珪酸液中の濃度は通常1質量%以下であり、吸着容量の面で好ましくは0.2重量%以下、特に0.0005〜0.15質量%が好ましい。
【0133】
アルカリ金属イオン濃度の制御は、100ppm程度以下までアルカリ金属イオンを除去した珪酸液にアルカリ金属水酸化物、水酸化物、珪酸ナトリウム等の可溶性塩を添加してもよいし、イオン交換条件によって残留するアルカリ金属イオン濃度を制御しても良い。
【0134】
<成形体>
本発明の窒素酸化物浄化用触媒、あるいは触媒混合物は造粒や成形をして使用することもできる。
【0135】
造粒や成形の方法は特に限定されるものではないが、各種公知の方法を用いて行うことができる。通常、前記触媒混合物を成形し、成形体として用いる。成形体の形状としては好ましくはハニカム状が用いられる。
また、自動車用等の排ガス触媒として用いられる場合、成形の方法としては塗布法や、成形法を用いハニカム状触媒にする。塗布法の場合、通常は本発明の窒素酸化物浄化用触媒をシリカ、アルミナ等の無機バインダーと混合し、スラリーを作製し、コージェライト等の無機物で作製されたハニカムの表面に塗布し、焼成することとにより作製される。成形法の場合、通常は本発明の窒素酸化物浄化用触媒をシリカ、アルミナ等の無機バインダーやアルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混練し、押出法や圧縮法等の成形を行い、引き続く焼成を行うことにより、好ましくはハニカム状の触媒を得る。
また成型体を得た後に、バインダーを表面に塗布することにより、成型体を強化してもよい。その場合、バインダーとしては前記のいずれのバインダーも用いることができるが、より好ましくは下記の成形時の強度の観点から、シリコーン類、珪酸液およびその混合物であり、さらに好ましくは式(I)で示される化合物または珪酸液、およびその混合物である。
【0136】
本発明の成形体は、好ましくは以下の3つの工程を含む工程により製造される。
(1)前記の窒素酸化物浄化用触媒、およびアルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維、およびバインダーを混合して触媒混合物を調製する第1工程、
(2)第1工程で得られた触媒混合物を、押出成型し、成形体前駆体を得る第2工程、
(3)第2工程で得られた成形体前駆体を150℃ないし800℃の範囲内の温度で焼成する第3工程
(第1工程)
第1工程では少なくとも窒素酸化物浄化用触媒、およびアルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維、およびバインダーを混合して触媒混合物を調製する。
【0137】
触媒混合物中の窒素酸化物浄化用触媒とバインダーとの配合割合は、通常、窒素酸化物浄化用触媒100重量部に対して、バインダーが酸化物換算で2〜40重量部、強度と触媒性能のバランスの面で好ましくは5〜30重量部の割合で使用する。
又、通常、触媒混合物には水を配合する。その配合割合は、成型方法にもよるが、通常、窒素酸化物浄化用触媒に対して10〜500重量部である。例えば押出成型の場合、窒素酸化物浄化用触媒に対して10〜50重量部、好ましくは10〜30重量部である。又、該触媒混合物には、第二工程での混練、押出の際の特性に応じて、流動性を高める目的で、メチルセルロース等のセルロース類、澱粉、ポリビニルアルコール等の可塑剤を加えてもよい。その配合割合は、窒素酸化物浄化用触媒100重量部に対して0.1〜5重量部、強度の面で好ましくは0.5〜2重量部である。
【0138】
(第2工程)
第2工程では、第1工程で得られた触媒混合物を、押出成型し、成形体前駆体を得る。
押出成型に使用する装置は、公知の押出成型機が使用できる。通常、窒素酸化物浄化用触媒、無機繊維、バインダー、水及び必要により可塑剤を加えて混練して、次いで押出成型機で成型する。成型の際の圧力には特に制限はないが、通常、5〜500kgf/cm
2程度である。成形後、通常、50℃から150℃程度の温度で乾燥して目的の成形体前駆体を得る。
【0139】
(第3工程)
第3工程では、第2工程で得られた成形体前駆体を150℃ないし900℃の範囲内の温度で焼成する。該温度は、好ましくは200℃以上であり、更に好ましくは250℃以上、特に好ましくは300℃以上であり、通常800℃以下が好ましく、さらに好ましくは700℃以下である。上記温度範囲で焼成することにより、実質的にバインダー前駆体の架橋結合が達成され、高い成形体の強度が得られる。
【0140】
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は窒素酸化物を含む排ガスを接触させて窒素酸化物を浄化することができる。窒素酸化物浄化用触媒と排ガスの接触条件は、一般的には空間速度100/h以上、好ましくは1000/h以上、また500000/h以下、好ましくは100000/h以下で用いられる。また温度は100℃以上、好ましくは150℃以上、また700℃以下、好ましくは500℃以下で用いられる。
【0141】
<触媒の使用方法>
本発明において用いられるゼオライトを含む触媒は、そのまま粉末状で用いても、シリカ、アルミナ、粘土鉱物等のバインダーと混合し、造粒や成形をして使用することもできる。また、自動車用等の排ガス触媒として用いられる場合、塗布法や、成形法を用い成形して用いることができ、好ましくはハニカム状に成形して用いることができる。
【0142】
本発明によって得られる触媒の成形体(以下、単に素子ということがある。)を塗布法によって得る場合、通常ゼオライト触媒とシリカ、アルミナ等の無機バインダーとを混合し、スラリーを作製し、コージェライト等の無機物で作製された成形体の表面に塗布し、焼成することとにより作成され、好ましくはこのときハニカム形状の成形体に塗布することによりハニカム状の触媒を得る。
本発明によって得られる触媒の成形体を成形法により得る場合、通常ゼオライトをシリカ、アルミナ等の無機バインダーやアルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混練し、押出法や圧縮法等の成形を行い、引き続き焼成を行うことにより作成され、好ましくはこのときハニカム形状に成形することによりハニカム状の素子を得る。
【0143】
本発明における触媒は、窒素酸化物を含む排ガスを接触させて窒素酸化物を浄化する。該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。具体的には、本発明の方法ではディーゼル自動車、ガソリン自動車、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化することができる。
【0144】
本発明における触媒を使用する際の、触媒と排ガスの接触条件としては特に限定されるものではないが、空間速度は通常100/h以上、好ましくは1000/h以上であり、通常500000/h以下、好ましくは100000/h以下であり、温度は通常100℃以上、好ましくは150℃以上、通常700℃以下、好ましくは500℃以下で用いられる。
本発明で用いられる窒素酸化物浄化触媒を使用して、窒素酸化物の浄化を行った後段の工程に、窒素酸化物浄化で消費されなかった余剰の還元剤を酸化する触媒を搭載し、排ガス中の還元剤を減少させることができる。その場合、酸化触媒として還元剤を吸着させるためのゼオライト等の担体に白金族等の金属を担持した触媒を用いることができるが、そのゼオライト、及び酸化触媒として本発明のゼオライト、及び触媒を用いることができる。
【実施例】
【0145】
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0146】
<実施例1A〜3A、比較例1A〜5A>
本発明の第1〜第4の態様についての実施例を以下に示す。
(XRDの測定方法)
X線源:Cu−Kα線
出力設定:40kV・30mA
測定時光学条件:
発散スリット=1°
散乱スリット=1°
受光スリット=0.2mm
回折ピークの位置:2θ(回折角)
測定範囲:2θ=3〜50度
スキャン速度:3.0°(2θ/sec)、連続スキャン
試料の調製:めのう乳鉢を用いて人力で粉砕した試料約100mgを、同一形状のサンプルホルダーを用いて試料量が一定となるようにした。
(組成分析の方法)
試料をアルカリ融解後、酸溶解し、得られた溶液を誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES法)により分析した。
【0147】
(TEMの測定方法)
試料作製方法として、乳鉢にエタノールと触媒粉末を入れ、乳鉢で10分程度粉砕を行った後、超音波洗浄機を用いて、エタノール中に分散させ、数分間放置後に、カーボン薄膜(公称15nm以下)を張ったマイクログリッド上に適量を滴下し、自然乾燥させる。
TEM観察条件
装置:日立製作所(現、日立ハイテクノロジーズ)製 H−9000UHR
加速電圧:300kV 高分解能像が得られる条件で調整
撮影:高感度CCDカメラ AMT社Advantage HR−B200
上記条件で、少なくとも3500平方μmの領域にあるゼオライト結晶を観察。
【0148】
(電子プローブマイクロアナライザー EMPAの測定方法)
前処理として、触媒粉末を、樹脂に包埋して断面ミクロトーム(ダイヤ刃)にて切削を行った後に、Au蒸着を行う。
装置:JEOL社製JXA−8100
電子銃:Wエミッター,加速電圧15kV,照射電流20nA
元素マッピング:分析面積15.6μm
2(×5000相当),収集時間200msec/point,
対象元素(分光結晶)Si(PET),Cu(LIFH)
(アンモニアTPD)
装置:日本ベル社製 TP5000型
試料量:30mg
使用ガス:キャリアガスHe, 吸着ガス 5%NH
3/He
前処理:試料をHe50ml/min下で450℃まで昇温し、1時間保持し100℃まで降温する。
アンモニア吸着:100℃を維持しながら、5%NH
3/Heガス50ml/分下で15分間吸着させる。
水蒸気処理:真空排気後、系内に水蒸気を導入し5分間接触させた後、真空排気を行う操作を7回繰り返した。
脱着測定:He50ml/分下で100℃から610℃まで10℃/分で昇温した。
【0149】
<水蒸気繰り返し吸脱着試験(「90−80−5の繰り返し耐久性試験」)>
水蒸気繰り返し吸脱着試験は、試料を90℃に保たれた真空容器内に保持し、5℃の飽和水蒸気雰囲気と80℃飽和水蒸気雰囲気にそれぞれ90秒曝す操作を繰り返す。このとき80℃の飽和水蒸気雰囲気に曝されたときに試料に吸着した水は、5℃の飽和水蒸気雰囲気で一部が脱着し、5℃に保った水だめに移動する。m回目の吸着からn回目の脱着で、5℃の水だめに移動した水の総量(Qn;m(g))と試料の乾燥重量(W(g))から一回あたりの平均吸着量(Cn;m(g/g))を以下のようにして求める。
【0150】
[Cn;m]=[Qn;m]/ (n−m+1)/W
通常吸収、脱着の繰り返しは1000回以上行い、好ましくは2000回以上であり、上限は特に限定されるものではない。
(以上の工程を「90℃で測定した際の水蒸気繰り返し吸脱着試験」という。)
【0151】
(NO−IR)
測定装置:日本分光社製 FT−IR6200 FV型
検出器:MCT
分解能:4cm
−1
積算回数:256回
試料量:約5mg
使用ガス:10%NO/He
サンプリング:試料をそのまま大気下で荒研磨したCaF板にすりつけ、吸着測定用セル内に封入した。
前処理(常温):試料を吸着測定用セル内で真空下150℃まで昇温し1時間保持して前処理を行い、その後30℃まで降温した。その際、スペクトルを採取し、バックグラウンドとした。
NO吸着(常温):前記前処理(常温)の後、真空ライン中の圧力計の指示に従い、20PaのNOを導入し、都度IRスペクトルを採取した。
前処理(150℃):前記NO吸着(常温)の後、試料を吸着測定用セル内で真空下150℃まで昇温し1時間保持して前処理を行い、そのまま150℃を維持した。その際、スペクトルを採取し、バックグラウンドとした。
NO吸着(150℃):真空ライン中の圧力計の指示に従い、20PaのNOを導入し、都度IRスペクトルを採取した。
【0152】
(ESR)
測定装置:JEOL社製 FA300
測定条件:中心磁場 任意
掃引磁場幅 任意
磁場変調 100kHz
レスポンス 0.1sec
磁場掃引時間 15min
マイクロ波出力 0.1mW
触媒粉末試料60mgを直径5mmの石英管に充填し、150℃で5時間乾燥の後封管した。
【0153】
(触媒活性の評価方法)
調製した触媒は以下の方法に基づき触媒活性を評価した。
触媒評価1
調製した触媒をプレス成型後、破砕して16〜28メッシュに整粒した。整粒した各触媒5mlを常圧固定床流通式反応管に充填した。触媒層に表1の組成のガスを2900ml/min(空間速度SV=35000/h)で流通させながら、触媒層を加熱した。150℃、175℃のそれぞれの温度で、出口NO濃度が一定となったとき、
(NO浄化率)={(入口NO濃度)―(出口NO濃度)}/(入口NO濃度)
の値によって触媒の窒素酸化物除去活性を評価した。
【0154】
触媒評価2
触媒量を1mlとし、空間速度SV=100000/hで流通させること以外は触媒評価1と同等の評価方法で窒素酸化物除去活性を評価した。
【0155】
【表1】
【0156】
(実施例1A)
日本国特開2003−183020号公報の実施例2に開示されている方法により、シリコアルミノフォスフェートゼオライトを合成した。得られたゼオライトのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1、000Å
3)であった。また、ICP分析にてゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素とアルミニウムとリンの合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、ケイ素が0.092、アルミニウムが0.50、リンが0.40であった。
【0157】
次に、9.4gの酢酸銅(II)一水和物(キシダ化学社製)に200gの純水を加え溶解し、100gの上記ゼオライトを加えてさらに攪拌し、水スラリーとした。この常温の水スラリーを170℃金属板上に噴霧し乾燥させ、触媒前駆体とした。乾燥に要した時間は10秒以下であった。触媒前駆体を触媒1gあたり12ml/分の空気流通中で、500℃で4時間焼成し、触媒1を得た。触媒1について、上記触媒評価1および2の条件に基づきNO浄化率を評価した。触媒評価1の結果を表2、触媒評価2の結果を表3に示す。また、触媒1のアンモニアTPDを測定したところ、ピークトップは321℃であった。また触媒1のアンモニア吸着量は1.1mol/kgであった。
【0158】
(実施例2A)
実施例1Aに記載のゼオライト2kg、188gの酢酸銅(II)一水和物(キシダ化学社製)、3266gの純水を攪拌し、水スラリーとした。この常温の水スラリーを1200Φの円盤回転式噴霧乾燥機で乾燥した。乾燥条件は入口温度200℃、出口温度120℃とした。円盤の回転数は18000rpmとした。スラリーを1.5kg/時の速度で供給し、577gの乾燥粉体を1時間で回収した。乾燥に要した時間は10秒以下であった。この乾燥粉体を実施例1Aと同様に焼成して触媒2を得た。触媒2について、実施例1Aと同様に触媒評価1の条件でNO浄化率を評価した。結果を表2に示す。また、触媒評価2の条件でNO浄化率を評価した。結果を表3に示す。
【0159】
この触媒2のTEM像を測定したところ、
図1のように1〜3nmの銅粒子が、ゼオライト上に分散していることが観察できた。触媒2を10%水蒸気を含む雰囲気下、800℃で5時間水蒸気処理した後、同様にTEM像を測定したところ、
図2のように1〜3nmの銅粒子が、ゼオライト上に分散していることが観察できた。
【0160】
この触媒2を樹脂に包埋し、断面ミクロトーム切削後、EPMAを測定し元素マッピングをとったところ、
図3のように、ゼオライト中のSiが観察される場所でも、Cuが局所的に高く検出される部分と、非常に低く検出される部分があることがわかった。200×200の各ピクセルごとのCu強度比の変動係数を求めたところ、33%であった。
また、触媒2のアンモニアTPDを測定したところ、ピークトップは306℃であった。また触媒2のアンモニア吸着量は1.1mol/kgであった。
触媒2のNO−IRを測定したところ、室温で1860〜1930cm
−1の領域に1886cm
−1および1904cm
−1の2つのピークが観察された。また、150℃で1757〜1990cm
−1のピーク強度に対する1525〜1757cm
−1のピーク強度の比が0.1となった。
触媒2のESRスペクトルを測定したところ、g||=2.38およびg||=2.33の2つの値をもつ2種類の銅(II)イオンが観察された。
【0161】
(実施例3A)
日本国特開2003−183020号公報の実施例2に開示されている方法により、テンプレート含有のシリコアルミノフォスフェートゼオライトを合成した。シリコアルミノフォスフェートゼオライトは、テンプレートを計20重量%含んでいる。9.4gの酢酸銅(II)一水和物(キシダ化学社製)に200gの純水を加え溶解し、100gの上記ゼオライトを加えてさらに攪拌し、水スラリーとした。この常温の水スラリーを170℃金属板上に噴霧し乾燥させ、触媒前駆体とした。乾燥に要した時間は10秒以下であった。触媒前駆体を触媒1gあたり12ml/分の空気流通中で、700℃で2時間焼成し、テンプレートの除去を同時に行い触媒7を得た。触媒評価2の条件で触媒7のNO浄化率を評価した。結果を表3に示す。
<触媒の90−60−5の水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験>
実装条件に近い繰り返し吸脱着試験条件として、触媒の「90−60−5の水蒸気繰り返し吸脱着試験」を実施した。水蒸気の繰り返し吸脱着試験としては、80℃飽和水蒸気雰囲気を60℃飽和水蒸気雰囲気に変更した以外は、前記「90−80−5の水蒸気繰り返し吸脱着試験」と同様の試験を行い、試験後回収したサンプルについて上記触媒反応試験2の条件に基づきNO浄化率を評価した。2.0gの触媒を0.5gずつ4つの試料容器に封入し、それぞれについて90−60−5の水蒸気繰り返し吸脱着試験を実施した。吸脱着の繰り返し回数は2000回とした。水蒸気繰り返し吸脱着を経た試料を4つの容器から回収し、触媒反応試験2の条件に基づきNO浄化率を評価し、繰り返し吸脱着に対する触媒の耐久性を評価した。その結果を表8に示す。
本試験は実装条件に近い繰り返し条件を再現したものである。車等のディーゼルエンジン排ガスは5〜15体積%の水を排ガス中に含む。車では走行中、排ガスが200℃以上の高温となり、相対湿度は5%以下に低下し、触媒は水分を脱着した状態になる。しかし、停止時に90℃近辺で相対湿度が15%以上となり触媒は水を吸着する。本条件により、90℃の吸着時には相対湿度が28%となる。この実条件に近い状態での繰り返し耐久性が実装時には重要となる。
【0162】
(実施例4A)
水に不溶な銅源として塩基性炭酸銅(II)(キシダ化学社製)1.1gに純水40gを加え水分散液とし、実施例2Aで用いたゼオライトを20g加えて、更に攪拌し水スラリーとした。この常温の水スラリーを170℃金属板上に噴霧し乾燥させ、触媒前駆体とした。乾燥に要した時間は10秒以下であった。
触媒前駆体を触媒1gあたり12ml/分の空気流通中で、850℃で2時間焼成し、触媒9を得た。
【0163】
(実施例5A)
噴霧乾燥後の焼成を750℃のロータリーキルンで2時間実施した以外は、実施例2Aと同様の方法で触媒10を得た。
触媒10のNO−IRを測定したところ、室温で1860〜1930cm
−1の領域に1886cm
−1および1904cm
−1の2つのピークが観察された。また、150℃で1757〜1990cm
−1のピーク強度に対する1525〜1757cm
−1のピーク強度の比が0.1となった。
触媒10のESRスペクトルを測定したところ、g||=2.38およびg||=2.33の2つの値をもつ2種類の銅(II)イオンが観察された。
【0164】
(比較例1A)
実施例1Aのゼオライトに5.9質量%酢酸銅(II)水溶液を加えスラリーとし、ろ過してケーキ状とした。得られたケーキを100℃で粉砕しながら乾燥した。乾燥時間は2時間であった。その後乾燥粉体を実施例1Aと同様に焼成して触媒3を得た。触媒3について、実施例1Aと同様に触媒評価1の条件でNO浄化率を評価した。結果を表2に示す。
【0165】
(比較例2A)
実施例1Aのゼオライトに8.9質量%硝酸銅(II)水溶液を用いて3質量%の銅を含浸担持させ、100℃乾燥機で乾燥後、実施例1Aと同様に焼成して触媒4を得た。乾燥時間は24時間であった。触媒4について、実施例1Aと同様に触媒評価1の条件でNO浄化率を評価した。結果を表2に示す。
【0166】
(比較例3A)
実施例1Aのゼオライトに5.9質量%酢酸銅(II)水溶液を加え、60℃に加熱し、4時間の攪拌ののち、ろ過、洗浄して銅(II)イオンをイオン交換担持した。100℃乾燥機で乾燥後、実施例1Aと同様に焼成して触媒5を得た。乾燥時間は24時間であった。触媒5について、実施例1Aと同様に触媒評価1の条件でNO浄化率を評価した。結果を表2に示す。
【0167】
(比較例4A)
実施例1Aのゼオライトに5.9質量%酢酸銅(II)水溶液を加えスラリーとし、ろ過してケーキ状とした。得られたケーキを85℃で粉砕しながら乾燥した。乾燥時間は2時間であった。その後乾燥粉体を500℃のマッフル炉中で4時間焼成して触媒6を得た。触媒6について、実施例1Aと同様に触媒評価1の条件でNO浄化率を評価した。結果を表2に示す。
【0168】
(比較例5A)
水188gに85%リン酸80.7gを加え、さらに54.4gの擬ベーマイト(Pural SB、 Condea製、75%Al
2O
3)を加えて、2時間攪拌した。この混合物にfumedシリカ(アエロジル200)6.0gを加えた後さらに35%TEAOH(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液336.6gを加え、2時間撹拌した。この混合物をフッ素樹脂内筒入りの1Lステンレス製オートクレーブに仕込み、150rpmで撹拌しながら190℃で24時間反応させた。反応後、実施例1Aと同様の方法でゼオライトを得た。このゼオライトをXRDで測定した結果CHA構造であった。また、骨格構造のアルミニウムとリンとケイ素の合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、元素分析の結果ケイ素が0.097、アルミニウムが0.508、リンが0.395であった。
【0169】
6.0質量%酢酸銅(II)水溶液107gに上記ゼオライト9.1gを加え、4時間以上攪拌した。ろ過、水洗ののち100℃乾燥機中で乾燥させた。乾燥時間は24時間であった。乾燥粉体と6.0質量%酢酸銅(II)水溶液107gを用いて、同様の銅イオン交換操作を繰り返した。イオン交換は全体で6回繰り返した。6回の銅イオン交換後の乾燥粉体を、120ml/分の空気気流下、750℃で2時間焼成し、触媒8を得た。この触媒8を触媒評価2の条件でNO浄化率を評価した。結果を表3に示す。
【0170】
この触媒8のTEM像を測定したところ、
図7のようにイオンとしてゼオライト結晶に取り込まれているために、ゼオライト上に銅粒子を観察できなかった。触媒8を10%水蒸気を含む雰囲気下、800℃で5時間水蒸気処理した後、同様にTEM像を測定したところ、
図8のように特に変化はなくゼオライト上に銅粒子を観察できなかった。
この触媒8を樹脂に包埋し、断面ミクロトーム切削後、EPMAを測定し元素マッピングをとったところ、
図9のように、Cuは全体に一様に分布しており、局所的に高く検出される部分はほとんど観察できなかった。200×200の各ピクセルごとのCu強度比の変動係数を求めたところ、15%であった。
【0171】
また、触媒8のアンモニアTPDを測定したところ、ピークトップは185℃であった。また触媒8のアンモニア吸着量は0.86mol/kgであった。
触媒8のNO−IRを測定したところ、室温で1860〜1930cm
−1の領域に1904cm
−1のピークのみが観察された。また、150℃で1757〜1990cm
−1のピーク強度に対する1525〜1757cm
−1のピーク強度の比が9となった。触媒8のESRスペクトルを測定したところ、g||=2.38の値をもつ1種類の銅(II)イオンが観察された。
【0172】
【表2】
【0173】
【表3】
【0174】
比較例1A〜4Aで得られた触媒は、175℃以下におけるSCR触媒活性が小さかった。なお、比較例1A〜4Aの何れの場合も、乾燥時間が60分の時点では混合物中の分散媒の残留は1質量%を超えていた。本発明の、乾燥工程を10秒以下、あるいは噴霧乾燥として急速に乾燥させた触媒は、NOx浄化率が高く、175℃以下の低温において高い活性を示した。本発明の触媒は、公知の方法で製造された触媒と比較して、150℃で最大7.5倍、少なく見積もっても1.7倍、175℃で最大7倍、最小で1.3倍の活性を示した。
【0175】
<実施例1B〜3B、比較例1B〜3B>
本発明の第5〜9の態様についての実施例を以下に示す。
実施例及び比較例において、下記の物性測定、処理については、下記条件で行った。
水蒸気吸着等温線:
試料を120℃で5時間、真空排気した後、25℃における水蒸気吸着等温線を水蒸気吸着量測定装置(ベルソーブ18:日本ベル(株)社製)により以下の条件で測定した。
【0176】
空気恒温槽温度 :50℃
吸着温度 :25 ℃
初期導入圧力 :3.0torr
導入圧力設定点数 :0
飽和蒸気圧 :23.755torr
平衡時間 :500秒
「水蒸気処理」
本発明のゼオライトは、水蒸気処理したのち、後述する固体
29Si−DD/MAS−NMRスペクトル測定に供する。本発明における水蒸気処理は、以下の手順で行う。3gのゼオライトを内径33mmの石英管に充填し、この石英管を円筒型電気炉に装着する。100ml/minの空気を充填層に流通させている状態で電気炉に通電し、800℃まで1時間で昇温する。触媒層温度が800℃に達したら、0.6ml/hの送液速度に設定したポンプを用いて純水を石英管に送液する。注入された純水が触媒層より上流で完全に気化するよう、触媒層より十分上流でかつ200℃以上の石英管部分に純水を注入する。注入された純水が完全に気化すると、生成した水蒸気は触媒層を流通する気流の10%を占める。このようにして800℃で10時間処理したのち、ポンプの送液を止め、触媒を室温まで放冷する。
【0177】
「固体
29Si−DD/MAS−NMRスペクトル」
本発明における固体
29Si−DD/MAS−NMRスペクトルは、上記の水蒸気処理をしたゼオライト試料を、シュレンク管で2時間以上真空乾燥後、窒素雰囲気下でサンプリングし、シリコンゴムを標準物質として以下の条件で測定したものである。
【0178】
【表4】
【0179】
XRD測定条件
X線源:Cu−Kα線(λ=1.54184Å )
出力設定:40kV・30mA
測定時光学条件 :
発散スリット=1°
散乱スリット=1°
受光スリット=0.2mm
回折ピークの位置2θ(回折角)
測定範囲:2θ=3〜60度
試料の調製:めのう乳鉢を用いて人力で粉砕した試料約100mgを、同一形状のサンプルホルダーを用いて試料量が一定となるようにした。
【0180】
(実施例1B)
日本国特開2003−183020号公報の実施例2に開示されている方法により、シリコアルミノフォスフェートゼオライトを合成した。水253gに85%リン酸101gおよび擬ベーマイト(25%水含有、サソール社製)68gをゆっくりと加え、攪拌した。これをA液とした。A液とは別にヒュームドシリカ(アエロジル200:日本アエロジル社製)7.5g、モルホリン43.5g、トリエチルアミン55.7g、水253gを混合した液を調製した。これをA液にゆっくりと加えて、3時間攪拌し、水性ゲルを得た。該水性ゲルをフッ素樹脂内筒の入った1Lのステンレス製オートクレーブに仕込み、攪拌させながら30℃から190℃まで、16℃/時の昇温速度で直線的に昇温し、最高到達温度190℃で50時間反応させた。最高到達温度に昇温する過程で、80℃から120℃の範囲におかれた時間は2.5時間であった。反応後冷却して、デカンテーションにより上澄みを除いて沈殿物を回収した。沈殿物を水で3回洗浄した後濾別し、120℃で乾燥した。(得られたゼオライトはジェットミルによりメジアン径3μmとなるよう粉砕した。)その後560℃で空気気流下焼成を行い、テンプレートを除去した。
【0181】
こうして得られたゼオライトのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1,000Å
3)であった。また、塩酸水溶液で加熱溶解させ、ICP分析により元素分析を行ったところ、骨格構造のケイ素とアルミニウムとリンの合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、ケイ素が0.088、アルミニウムが0.500、リンが0.412であった。
【0182】
このゼオライトの25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.04から0.09においての吸着量変化量は0.17g/gであった。
また、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧が0.2の時の水吸着量は0.28g/gであった。
このゼオライトについて、90℃において2000回の水蒸気繰り返し吸脱着試験(90−80−5の水蒸気繰り返し吸脱着試験)を行ったところ、維持率が100%となった。また2000回終了後のサンプルの25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧が0.2の時の水吸着量は0.27g/gであり、繰り返し吸脱着試験前の96%となった。
【0183】
このゼオライト3gを、10%水蒸気を含む100ml/minの空気気流下、800℃で10時間水蒸気処理したあとの、固体
29Si−DD/MAS−NMRスペクトルを
図13に示す。
図13において、−75〜−125ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−99〜−125ppmの信号強度の積分強度面積は13%であり、−105〜−125ppmの信号強度の積分強度面積は4%であった。
【0184】
以上のようにして得られたゼオライトを硝酸銅(II)の水溶液を用いて銅を3重量%含浸担持し、解砕しながら乾燥した。乾燥時間は30分であった。その後500℃4時間で焼成しSCR触媒とした。
【0185】
(実施例2B)
実施例1Bで得られたゼオライトを酢酸銅の水溶液を用いてCu金属を3重量%担持し、乾燥した。乾燥はスプレードライヤーを用い、乾燥時間は10秒以内であった。乾燥後、750℃4時間で焼成しSCR触媒とした。XRDで測定したところ、21.4度にCHA構造由来ではないピークが観察された。
【0186】
(実施例3B)
実施例1Bで得られたゼオライトに酢酸銅の水溶液を用いてCu金属を3重量%担持し、乾燥した。乾燥はスプレードライヤーを用い、乾燥時間は10秒以内であった。乾燥後、500℃4時間で焼成しSCR触媒とした。XRDで測定したところ、21.4度にピークが観察されなかった。このSCR触媒を800℃、水蒸気10vol%の雰囲気下5時間放置後、XRDで測定したところ、21.4度にCHA構造由来ではないピークが観察された。
【0187】
(実施例4B)
日本国特開2003−183020号公報の実施例2に開示されている方法により、シリコアルミノフォスフェートゼオライトを合成した。水150gに85%リン酸69.2gおよび擬ベーマイト(25%水含有、サソール社製)48gをゆっくりと加え、2時間攪拌した。これに粒状シリカ8.5gと210gの水を加え、A液とした。A液とは別にモルホリン30.8g、トリエチルアミン35.7gを混合し、これをB液とした。B液をA液にゆっくりと加えて、2時間攪拌し、水性ゲルを得た。水性ゲルの組成は、1Al
2O
3/0.4SiO
2/0.85P
2O
5/1モルホリン/1トリエチルアミン/60H
2Oであった。該水性ゲルをフッ素樹脂内筒の入った1Lのステンレス製オートクレーブに仕込み、攪拌させながら30℃から190℃まで、16℃/時の昇温速度で直線的に昇温し、最高到達温度190℃で24時間反応させた。最高到達温度に昇温する過程で、80℃から120℃の範囲におかれた時間は2.5時間であった。反応後冷却して、デカンテーションにより上澄みを除いて沈殿物を回収した。沈殿物を水で3回洗浄した後濾別し、100℃で乾燥した。得られた乾燥粉体をジェットミルでメジアン径3μmに粉砕し、その後550℃で空気気流下焼成を行い、テンプレートを除去した。
こうして得られたゼオライトのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1,000Å3)であった。また、ICP分析により元素分析を行ったところ、骨格構造のケイ素とアルミニウムとリンの合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、ケイ素が0.12、アルミニウムが0.50、リンが0.38であった。
このゼオライトの90−80−5の2000回水蒸気繰り返し吸脱着試験を行ったところ、維持率が86%となった。
以上のようにして得られたゼオライトを酢酸銅の水溶液を用いて銅を3重量%担持し、乾燥後、750℃2時間で焼成し、SCR触媒とした。
【0188】
(実施例5B)
水74.3gに85%リン酸20.2gを加え、さらに13.6gの擬ベーマイト(Pural SB、 Condea製、75%Al
2O
3)を加えて、1時間攪拌した。この混合物にfumedシリカ(アエロジル200)1.5gを加え、A液とした。A液とは別に、35%TEAOH(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液42.1gとイソプロピルアミン5.9gの混合溶液を調製し、B液とした。A液にB液を加え、2時間撹拌した。この混合物をフッ素樹脂内筒入りの1Lステンレス製オートクレーブに仕込み、150rpmで撹拌しながら190℃で48時間反応させた。反応後、実施例1Bと同様の方法でゼオライトを得た。このゼオライトをXRDで測定した結果CHA構造であった。また、骨格構造のアルミニウムとリンとケイ素の合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、元素分析の結果ケイ素が0.08、アルミニウムが0.50、リンが0.42であった。
このゼオライトについて、90℃において2000回の水蒸気繰り返し吸脱着試験(90−80−5の水蒸気繰り返し吸脱着試験)を行ったところ、維持率が92%となった。
次に、0.78gの酢酸銅(II)一水和物(キシダ化学社製)に16gの純水を加え溶解し、8.0gの上記ゼオライトを加えてさらに攪拌し、水スラリーとした。この水スラリーを170℃金属板上に噴霧し乾燥させ、触媒前駆体とした。触媒前駆体を触媒1gあたり12ml/分の空気流通中で、750℃で2時間焼成し、SCR触媒を得た。
【0189】
(実施例6B)
実施例2Bに記載の粉砕ゼオライトの代わりに未粉砕のゼオライトを用いた以外は、実施例2Bと同様にしてSCR触媒を得た。ゼオライトの粒径は11μmであった。得られた触媒について、触媒反応試験2の条件でNO浄化率を評価した。結果を表7に示す。
【0190】
(比較例1B)
水128gにアルミニウムイソプロポキシド72gを加えて撹拌した後、85%リン酸39gを加えて1時間撹拌した。この溶液にヒュームドシリカ(アエロジル200)1.2gを加えた後さらに35%TEAOH(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液89gを加え、4時間撹拌した。この混合物をフッ素樹脂内筒入りの500ccステンレス製オートクレーブに仕込み、100rpmで撹拌しながら180℃で48時間反応させた。反応後、実施例1Bと同様に方法でゼオライトを得た。このゼオライトをXRDで測定した結果CHA構造であった。また、骨格構造のアルミニウムとリンとケイ素の合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、元素分析の結果ケイ素が0.033、アルミニウムが0.491、リンが0.476であった。
【0191】
(比較例2B)
水152gに85%リン酸69.2gおよび擬ベーマイト(25%水含有、サソール社製)40.8gをゆっくりと加え、攪拌した。これをA液とした。A液とは別にfumedシリカ(アエロジル200)7.2g、モルホリン52.2g、水86.0gを混合した液を調製した。これをA液にゆっくりと加えて、3時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。該水性ゲルをフッ素樹脂内筒の入った1Lのステンレス製オートクレーブに仕込み、攪拌させながら30℃から190℃まで、16℃/時の昇温速度で直線的に昇温し、最高到達温度190℃で24時間反応させた。最高到達温度に昇温する過程で、80℃から120℃の範囲におかれた時間は2.5時間であった。反応後実施例1Bと同様に方法でゼオライトを得た。こうして得られたゼオライトのXRDを測定したところ、CHA構造であった。また、塩酸水溶液で加熱溶解させ、ICP分析により元素分析を行ったところ、骨格構造のケイ素とアルミニウムとリンの合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、ケイ素が0.118、アルミニウムが0.496リンが0.386であった。
【0192】
(比較例3B)
水35.7gに85%リン酸28.8gおよび擬ベーマイト(25%水含有、コンデア製)17.0gをゆっくりと加え、2時間攪拌した。これにfumedシリカ(アエロジル200)3.0gを加えたのち、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(35%水溶液、アルドリッチ製)をゆっくりと加えた。この混合物を2時間攪拌し、出発ゲルとした。出発ゲルをテフロン(登録商標)内筒の入った200ccのステンレス製オートクレーブに仕込み、回転させながら200℃で48時間反応させた。反応後冷却して、遠心分離により上澄みを除いて沈殿物を回収した。得られた沈殿物を水洗後濾別し、100℃で乾燥した。これを空気気流下550℃で6時間焼成してゼオライトを得た。粉末XRDを測定したところ、このゼオライトはCHA型シリコアルミノフォスフェートであった.また、ICP分析を行ったところ、骨格構造のアルミニウムとリンとケイ素の合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、ケイ素が0.11、アルミニウムが0.49リンが0.40であった。
【0193】
50℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧が0.2の時の水吸着量は0.26g/gであった。90℃において2000回の水蒸気繰り返し吸脱着試験を行ったところ、維持率が60%となった。また2000回終了後のサンプルの50℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧が0.2の時の水吸着量は0.14g/gであり、繰り返し吸脱着試験前の54%となった。
【0194】
このゼオライト3gを、10%水蒸気を含む100ml/minの空気気流下、800℃で10時間熱処理したあとの、固体
29Si−DD/MAS−NMRスペクトルを
図14に示す。
図14において、−75〜−125ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−99〜−125ppmの信号強度の積分強度面積は47%であり、−105〜−125ppmの信号強度の積分強度面積は29%であった。
【0195】
このゼオライトに酢酸銅の水溶液を用いてCu金属をイオン交換法により担持し、乾燥後、500℃4時間で焼成しSCR触媒とした。XRDで測定したところ、CHA構造由来以外は、21.4度にピークは観察されなかった。
このSCR触媒を800℃、水蒸気10vol%の雰囲気下5時間放置後、XRDで測定したが、21.4度にピークは観察されなかった。
【0196】
(比較例4B)
US2009/0196812A1に開示されている情報に基づき、以下の方法でゼオライトを合成した。水236.2gに85%リン酸98.2gを加え、さらに54.4gの擬ベーマイト(Pural SB、 Condea製、75%Al
2O
3)を加えて、2時間攪拌した。この混合物にモルホリン118.1gを加えたのち、混合物の温度が28℃になるまで室温で攪拌を続けた。混合物の温度が28℃になったのち、1.8gの純水、40.7gのシリカゾル(Ludox AS40)、16.5gの純水の順で加えて2時間撹拌した。この混合物をフッ素樹脂内筒入りの1Lステンレス製オートクレーブに仕込み、150rpmで撹拌しながら、オートクレーブを170℃まで8時間かけて昇温し、そのまま170℃で48時間温度保持し内容物を水熱反応させた。反応後、実施例1と同様の方法でゼオライトを得た。このゼオライトをXRDで測定した結果CHA構造であった。また、骨格構造のアルミニウムとリンとケイ素の合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、元素分析の結果ケイ素が0.23であった。
このゼオライトについて、90℃において2000回の水蒸気繰り返し吸脱着試験(90−80−5の水蒸気繰り返し吸脱着試験)を行ったところ、維持率が19%となった。
次に、US2009/0196812A1に開示されている情報に基づき、以下の方法で触媒を調製した。まず45gの硝酸アンモニウム水溶液に105gの純水を加え溶解し、上記ゼオライト15gを加えた。この混合液を攪拌しながら1mol/Lのアンモニア水溶液を滴下しpH3.2としたのち、80℃で1時間アンモニウムイオン交換させ、ろ過、水洗した。この操作を再度繰り返し、得られたケーキを100℃で乾燥し、アンモニウム型ゼオライトを得た。2.4gの酢酸銅(II)一水和物(キシダ化学社製)に60gの純水を加え溶解し、15.0gの上記アンモニウム型ゼオライトを加え、70℃で1時間銅イオン交換させ、ろ過、水洗ののち100℃で乾燥させた。得られた乾燥粉体を400℃で1時間焼成し、比較触媒を得た。比較触媒について、触媒反応試験2の条件でNO浄化率を評価した。結果を表7に示す。
【0197】
<触媒反応試験1>
触媒の水蒸気繰り返し吸脱着試験(90−80−5の水蒸気繰り返し吸脱着試験)を行い、維持率を求めた。結果を表6に示す。
調製した触媒をプレス成型後、破砕して16〜28メッシュに整粒した。整粒した各触媒5ccを常圧固定床流通式反応管に充填した。150℃で10分間触媒層にアンモニアを流通させ、触媒にアンモニアを吸着させた。触媒層に表5の組成のガスを空間速度SV=30000/hで流通させながら、150〜200℃の温度で定常的な窒素酸化物の除去率を評価した。175℃における除去率を表6に示す。
【0198】
<触媒反応試験2>
触媒量を1cc、SVを100,000/hに変更し、他は触媒反応試験1と同様の方法で窒素酸化物の浄化率を測定した。
【0199】
<水熱耐久試験>
前記除去率を評価したSCR触媒を800℃、10体積%の水蒸気に、空間速度SV=3000/hの雰囲気下、5時間通じ、水熱処理した後、同様の触媒反応試験をおこない、高温水蒸気に対する耐久性を評価した。結果を表7に示す。
【0200】
<触媒の90−60−5の水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験>
実装条件に近い繰り返し吸脱着試験条件として、触媒の「90−60−5の水蒸気繰り返し吸脱着試験」を実施した。水蒸気の繰り返し吸脱着試験としては、80℃ 飽和水蒸気雰囲気を60℃飽和水蒸気雰囲気に変更した以外は、前記「90−80−5の水蒸気繰り返し吸脱着試験」と同様の試験を行い、試験後回収したサンプルについて上記触媒反応試験2の条件に基づきNO浄化率を評価した。2.0gの触媒を0.5gずつ4つの試料容器に封入し、それぞれについて90−60−5の水蒸気繰り返し吸脱着試験を実施した。吸脱着の繰り返し回数は2000回とした。水蒸気繰り返し吸脱着を経た試料を4つの容器から回収し、触媒反応試験2の条件に基づきNO浄化率を評価し、繰り返し吸脱着に対する触媒の耐久性を評価した。その結果を表8に示す。
本試験は実装条件に近い繰り返し条件を再現したものである。車等のディーゼルエンジン排ガスは5〜15体積%の水を排ガス中に含む。車では走行中、排ガスが200℃以上の高温となり、相対湿度は5%以下に低下し、触媒は水分を脱着した状態になる。しかし、停止時に90℃近辺で相対湿度が15%以上となり触媒は水を吸着する。本条件により、90℃の吸着時には相対湿度が28%となる。この実条件に近い状態での繰り返し耐久性が実装時には重要となる。
【0201】
実施例1Bに記載のSCR触媒は、水熱耐久性試験後の触媒反応試験において、窒素酸化物除去率は99%であり、水熱耐久性試験による劣化は見られなかった。
800℃、10体積%の雰囲気は、ディーゼル自動車の排ガスの想定される最高に近い温度での雰囲気であるため、この条件での劣化の程度が低いことが、実用上重要となる。
【0202】
【表5】
【0203】
【表6】
【0204】
【表7】
【0205】
【表8】
【0206】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2009年1月22日出願の日本特許出願(特願2009−011590)、2009年5月15日出願の日本特許出願(特願2009−118945)、2009年6月12日出願の日本特許出願(特願2009−141397)、2009年7月17日出願の日本特許出願(特願2009−169338)、2009年12月22日出願の日本特許出願(特願2009−291476)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。