(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072217
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】スチール缶内の圧縮ガス式エアロゾル組成物
(51)【国際特許分類】
A61L 9/14 20060101AFI20170123BHJP
B32B 1/02 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
A61L9/14
B32B1/02
【請求項の数】22
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-500613(P2015-500613)
(86)(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公表番号】特表2015-530881(P2015-530881A)
(43)【公表日】2015年10月29日
(86)【国際出願番号】US2013031393
(87)【国際公開番号】WO2013138601
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2015年8月13日
(31)【優先権主張番号】13/422,096
(32)【優先日】2012年3月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500106743
【氏名又は名称】エス.シー. ジョンソン アンド サン、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(72)【発明者】
【氏名】シャー・バベシュクマール
【審査官】
松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−522953(JP,A)
【文献】
特表2009−532179(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0142260(US,A1)
【文献】
特開昭57−012072(JP,A)
【文献】
特開2005−060400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00−9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル製品であって、
(a)エアロゾル分注キャップと、本体と、ベースと、を有するスチール缶であって、前記スチール缶の内面には上にライニング及び任意に錫コーティングを有することができ、前記錫コーティングを含む場合、前記錫コーティングの上に前記ライニングが提供される、前記スチール缶と、
(b)組成物であって、
(i)80重量%超かつ100重量%未満の量の水と、
(ii)圧縮ガス推進剤と、
(iii)芳香剤成分と、
(iv)pHが8以上10未満の前記組成物を提供するのに十分な量のpH調整剤成分と、
(v)0重量%超かつ0.5重量%以下の量の腐食防止剤成分と、
(vi)(1)少なくとも1種の非イオン性界面活性剤又は(2)少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と少なくとも1種のカチオン性界面活性剤との混合物のいずれかである、界面活性剤成分と、
を含む組成物、とを組み合わせて備えており、
前記組成物は、前記スチール缶に入っており、
前記組成物は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を含まないものであり、
前記pH調整剤成分は、1種以上の炭酸塩及び/又は1種以上のケイ酸塩であり、
前記腐食防止剤成分は、1種以上の亜硝酸塩及び/又は1種以上のリン酸塩である、エアロゾル製品。
【請求項2】
前記組成物は、
(vii)アルコール及びグリコールからなる群から選択される溶媒と、
(viii)緩衝剤成分と、
(ix)保存料成分と、
をさらに含む、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記組成物は、
(i)80〜99重量%の前記水と、
(ii)0.5〜2重量%の前記圧縮ガス推進剤と、
(iii)0.1〜2重量%の前記芳香剤成分と、
(iv)pHが8〜9.5の前記組成物を提供するのに十分な量の前記pH調整剤成分と、
(v)0.01〜0.5重量%の前記腐食防止剤成分と、
(vi)0.5〜2重量%の前記界面活性剤成分と、
(vii)0.1〜6重量%の前記溶媒と、
(viii)0.01〜0.5重量%の前記緩衝剤成分と、
(ix)0.01〜1.0重量%の前記保存料成分と、
を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項4】
前記pHが8〜9.5である、請求項1に記載の製品。
【請求項5】
前記組成物のVOCは、0.1%〜5.5%までの範囲である、請求項1から3のいずれか1項に記載の製品。
【請求項6】
前記組成物のVOCは、0.1%以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の製品。
【請求項7】
前記ライニングは、有機コーティング又はポリマーラミネートである、請求項1から3のいずれか1項に記載の製品。
【請求項8】
前記ライニングは、エポキシ−尿素を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の製品。
【請求項9】
前記ライニングは、エポキシ又はエポキシ−フェノール又はビニル又はアミド−イミドを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の製品。
【請求項10】
前記界面活性剤成分は、前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤からなる、請求項1から3のいずれか1項に記載の製品。
【請求項11】
前記圧縮ガス推進剤は、窒素、アルゴン、空気、亜酸化窒素、二酸化炭素、メタン、エタン、又はこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載の製品。
【請求項12】
前記圧縮ガス推進剤は、窒素又はアルゴンである、請求項1から3のいずれか1項に記載の製品。
【請求項13】
エアロゾル製品であって、
(a)エアロゾル分注キャップと、本体と、ベースと、を有するスチール缶であって、前記スチール缶の内面には上にライニング及び任意に錫コーティングを有することができ、前記錫コーティングを含む場合、前記ライニングは前記錫コーティングの上にある、前記スチール缶と、
(b)組成物であって、
(i)90〜99重量%の量の水と、
(ii)非酸素含有ガスでありかつ1重量%未満の量で含まれる、圧縮ガス推進剤と、
(iii)芳香剤成分と、
(iv)pHが8〜9.5の前記組成物を提供するのに十分な量のpH調整剤成分と、
(v)0.4重量%未満の量の腐食防止剤成分と、
(vi)(1)少なくとも1種の非イオン性界面活性剤又は(2)少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と少なくとも1種のカチオン性界面活性剤との混合物のいずれかである、界面活性剤成分と、
(vii)C1−4アルコール及びC1−3アルキレングリコール又はこれらの混合物からなる群から選択される溶媒であって、0.1〜6重量%までの量で含まれる、前記溶媒と、
(viii)緩衝剤成分と、
(ix)保存料成分と、
を含む組成物、とを備えており、
前記組成物は前記スチール缶に入っており、
前記組成物は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を含まないものであり、
前記pH調整剤成分は、1種以上の炭酸塩及び/又は1種以上のケイ酸塩であり、
前記腐食防止剤成分は、1種以上の亜硝酸塩及び/又は1種以上のリン酸塩である、エアロゾル製品。
【請求項14】
前記ライニングは、有機コーティング又はポリマーラミネートである、請求項13に記載の製品。
【請求項15】
前記ライニングは、エポキシ−尿素を含む、請求項13に記載の製品。
【請求項16】
前記ライニングは、エポキシ又はエポキシ−フェノール又はビニル又はアミド−イミドを含む、請求項13に記載の製品。
【請求項17】
前記界面活性剤成分は、前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤からなる、請求項13に記載の製品。
【請求項18】
前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、1種以上の第2級アルコキシル化アルコール及び/又はポリアルコキシル化硬化ヒマシ油である、請求項17に記載の製品。
【請求項19】
前記圧縮ガス推進剤は、窒素又はアルゴンである、請求項13に記載の製品。
【請求項20】
前記緩衝剤成分は、重炭酸アルカリ金属塩又はリン酸塩である、請求項13に記載の製品。
【請求項21】
前記溶媒はプロピレングリコールである、請求項13に記載の製品。
【請求項22】
前記組成物のVOCが0.1%以下である、請求項13に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
圧縮ガス式エアロゾル配合物は特定のパラメータの下でスチール缶包装と組み合わされ、パラメータはそれぞれ、スチール缶の腐食安定性、配合物の変色安定性、及び香りの特徴の変化に対する芳香剤の安定性を有するエアロゾル製品をもたらすように相互に関連している。達成された安定性は、用いられる芳香剤パレットを更に拡大させかつ配合物の保存及び保管期間を更に伸ばす能力を備えている。本発明のエアロゾル配合物は特に、圧縮ガス式空気及び/又は布地処理、例えば、芳香が本質的特徴である空気又は布地清浄組成物を対象としている。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル組成物、例えば空気処理組成物は、スチール缶などの金属製の缶に入れて供給されることが知られている。かかる組成物は、揮発性有機物含有量(VOC)レベルが一般に高い。近年、エアロゾル組成物のVOCを部分的に又は全体的に低下させることが望ましくなってきている。その結果、組成物の揮発性溶媒の一部を水で置き換えているので、一般にエアロゾル組成物の含水量は高くなってきている。しかし、含水量は、保管及び分注のために組成物を保有している缶の金属の腐食につながる。従来のエアロゾル缶を構築するのに用いられているスチールは、下層のスチール層を大気による腐食(錆つき)から保護するために錫バリアコーティングでプレめっきされていることが多い。このような錫めっきはまた、水性環境下での腐食から下層のスチール層を保護する可能性もある。錫めっき処理されたスチール缶の内部には、錫及びスチール層を腐食から更に保護するために有機コーティング(ライニング)又はポリマーラミネートが施されていてもよく、又は施されていなくてもよい。ただし、錫めっきは、ライニングがあっても又は無くても、最初は前記腐食から保護されているが、錫めっき自体が経時的に水性配合物に溶解するので、下層のスチール層を露出させる可能性があることも分かっている。こうした水性配合物中への錫めっきの溶解は、含まれている芳香剤の品質を低下させて配合物を変色させることにつながる。配合物の変色は、本質的に、アルカリ性pH、すなわち7を超えるpHの水溶液中での芳香剤分子間の反応によって生じる。pHが7を超えると、水性系はアルカリ性/求核性となり、電子不足の中心部の方へ向かう電子が豊富な系となる。水酸化物イオンは、縮合反応を引き起こすもととして及び/又はエステルの電子欠乏性カルボニル炭素との求核反応物質を基本的に引き起こすもととして作用し、その結果、エステル加水分解を生じさせる。カルボニル基を含む芳香剤分子及びケトンは、塩基/求核試薬で処理するとエノラートアニオンを形成し、その結果、不飽和ケトンを生じさせ、そして分子内に更なる結合が形成され、それが更に長波長の紫外線/可視光を吸収することで、望ましくない変色が生じる。スチール缶はまた、容器から生じる又は容器を作製する際の機械加工が原因で生じる鉄の痕跡を有することもあるが、その痕跡が更に様々な問題を引き起こして、変色を生じさせる可能性もある。芳香剤の品質低下と配合物の変色はいずれも組成物の機能、例えば空気清浄組成物の芳香剤による空気清浄能力及び実質上変色しない組成物を提供する能力に影響を及ぼす。これらの欠点に対処して、高価なアルミニウム缶よりもむしろ、スチール缶、錫めっきスチール缶、又は腐食に晒される他の缶を使い続けられるように、腐食防止剤を組み合わせたものが水性エアロゾル配合物に混入されている。
【0003】
スチール缶内の圧縮ガス式エアロゾル組成物の一例は、国際特許出願公開番号WO2011/138620A1である。エアロゾル組成物は、腐食防止剤としてホウ酸塩を包含する。他の腐食防止剤としては、亜硝酸塩及びリン酸塩が挙げられる。しかし、大抵の腐食防止剤は、その化学的性質の種類や更にアルカリ性pHが高い(すなわち、9又は10超の)組成物の供給が原因で、組成物に含まれている芳香剤に心地よさと色の両方に有害な影響を及ぼす。色は一般に配合物の暗色化の影響を受けるので一般には好ましくなく、例えば、配合物が淡黄色よりも暗くなると、この変色によって一般に芳香剤成分の構造に変化が現れて、色、腐食及び心地よさの観点から配合物の安定性に悪影響が生じる可能性もある。圧縮ガス式エアロゾル製品は、粒径(降下物)が大きくしかも蒸発速度が遅いことから、淡い色若しくは白色の表面又は軟質表面上で視認できる場合がある。そのため、配合物の暗色化は目に見える望ましくない結果をもたらす場合がある。
【0004】
さらに、スチール缶は、一般的な表面の錆つき、スチール表面の孔食及び隙間腐食などの局部的な腐食形態、並びに顕著な錫めっきの溶解を防ぐために、中に入れる配合物のpHを特定の範囲、一般にはpH4〜14、好ましくはpH6〜12.5、更に好ましくはpH7〜9にする必要がある。この点で、また、pHが芳香剤安定性及び組成物の彩色に影響を及ぼすことから、pH値も検討する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上記欠点は、利用可能な芳香剤パレット、すなわち、スチール缶に入れる水性配合物と共に用いるのに適した芳香剤の数及び種類だけでなく、結果的に保存及び保管期間に影響を及ぼす可能性がある彩色にも、そして適度な心地よさ及び軟質表面上での使用についての消費者の支持にも甚大な影響を及ぼす。本発明は当該技術分野におけるこれら不利益に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
圧縮ガス式エアロゾル(CGA)配合物は、その内面にライナー(例えば、有機コーティング又はポリマーラミネートなど)及び任意に錫めっきを備えるスチール缶包装と組み合わせることで、腐食安定性、色安定性及び芳香剤の安定性を有する新規製品を提供する。このことは、相互に関連するパラメータの選択に応じて達成される。特に保存及び分注のためにスチール缶(組成物と接触する内面が錫コーティングされているか又は錫を含まずにライナー(有機コーティング又はポリマーラミネート)で覆われているもの)内に入れる空気処理組成物又は布地及び空気処理組成物において、次に示すパラメータ間のバランスを取ることで、腐食防止、芳香剤の安定性及び製品の色安定性に関して安定な製品が提供される。そのパラメータとは、(1)組成物に用いられる腐食防止剤の種類と、スチール缶内の配合物の濃度及びpHとに関連して決まる腐食安定性、(2)配合物の安定性を目的とした成分の濃度及び配合物のpH、そして(3)配合物成分と芳香剤との相互作用によって決まる芳香剤の心地よさの安定性、である。
【0007】
例えば、強い腐食防止剤を選択することで、腐食から保護するのに役立ち得るが、強い腐食防止剤は芳香剤の安定性に悪影響を及ぼすように作用する可能性もある。例えば、ホウ酸塩化合物及び高アルカリ材料は、腐食防止剤として役立つ可能性もあるが、芳香剤と有害な反応を起こしてその特徴を変化させる可能性もある。これら以外に、更に高いpH(9超)はスチールの腐食保護には役立つが、芳香剤及び配合物の安定性には悪影響を及ぼす可能性もあり、例えば、配合物液が変色して芳香剤の特徴が変化する。また一方、パラメータの特定の組み合わせは予想外の結果をもたらした。すなわち、パラメータの特定の組み合わせは、芳香剤配合物及び色安定性をもたらし、そして選択される芳香剤がほんの限られた数である芳香剤パレットの代わりに、大きな芳香剤パレットを利用できる。
【0008】
本発明は、配合物と容器との適合性を、スチール缶と配合物との組み合わせに基づいて提供するものであり、スチール缶の、少なくとも保管される組成物と接触している内面には、有機コーティング若しくはポリマーラミネートがあってもよく、又は錫めっき(錫コーティング)と共に当該錫めっきの上にライナーがあってもよく、配合物は、1種以上の界面活性剤であって、界面活性剤が少なくとも1種の非イオン性界面活性剤であるか又は少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と少なくとも1種のカチオン性界面活性剤との混合物であるものと、少なくとも1種の圧縮ガス推進剤と、少なくとも1種の腐食防止剤と、少なくとも1種のpH調整剤と、任意に少なくとも1種の溶媒であって、溶媒がアルコール及び/又はグリコール化合物であるものと、任意に少なくとも1種の緩衝剤と、任意に少なくとも1種の保存料とを含んでおり、配合物のpH範囲は約8〜10未満、好ましくは8.5〜9.5である。工業的には、単一相エアロゾル配合物である空気又は布地を処理するためのエアロゾル組成物の揮発性有機物含有量(VOC)は多くの場合、最高30%又はそれ以上である。本発明の配合物は、好ましくは、VOCが0〜6%、更に好ましくはVOCが0.5%〜5.5%までの範囲、なお更に好ましくはVOCが0.1%以下程度であり、最も好ましくは0%である。本明細書において本発明の配合物のVOC値について言及する場合、かかるVOC(%)は、配合物の芳香剤成分のVOCを含まず、配合物の総VOCは最高2%であり得ると理解すべきである。「芳香剤」又は「芳香剤成分」は、本明細書で使用するとき、香料、天然精油、又は蒸気圧の合計が20℃において2mmHg以下であり、しかも匂い若しくは香りを付与する又は悪臭を防ぐという唯一の目的を有する他の機能性成分からなる物質又は物質の混合物を包含すると理解すべきである。
【0009】
圧縮ガス推進剤は、酸素含有又は非酸素含有物であってよい。しかし、好ましくは、圧縮ガス推進剤は、(空気中のように)酸素の存在が腐食及び腐食反応の可能性を高めることがあるので、好ましくは非酸素含有物、例えば、窒素又はアルゴンである。腐食/腐食反応及び他の酸化反応もまた芳香剤の安定性に影響を及ぼす。例えば、製造中に除去されなかった溶解酸素が製品の液相中に存在することもあり、それが配合物成分を酸化又は不安定化するように作用する可能性もある。したがって、かかる状況では、非酸素含有圧縮ガス又は不活性な圧縮ガスが更なる安定性向上をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、エアロゾル製品を提供するための圧縮ガス式水性配合物と、内部にライナー及び任意に錫めっきを有するスチール缶と、の適した組み合わせを提供する。前記組み合わせにおいて圧縮ガス式水性配合物として用いるのに特に好適なのは、本明細書の説明で記載した空気及び/又は布地処理配合物である。空気及び/又は布地処理配合物は芳香剤を含有し、その特徴(香り)に対して安定で、しかも配合物はその彩色に対しても安定した状態を保つ。前記pH範囲及び容器と配合物との適合性のおかげで、更に順応性の高い芳香剤成分が利用できるので、配合物に混入される広範な芳香剤パレット、すなわち、香りの数及び種類が提供される。さらに、配合物に含まれる腐食防腐剤は、強度が弱いものであってもよく、本発明の組み合わせを用いない場合に必要とされる量よりも少量で使用され得る。更に具体的に言うと、本発明の配合物のアルカリ性(pH)並びに成分の選択及びその濃度は、芳香剤分子と特定の従来系などとの間の一部の求核型の化学反応を助長しない。例えば、多目的腐食防止剤/pH調整剤/緩衝剤ホウ酸ナトリウムを含み、pKaが9.2である配合物は、芳香剤組成物との攻撃的な反応を促進するだけでなく、pHを更に高める。本発明の組み合わせ又は系は、圧縮ガス式エアロゾルの水性空気及び/又は布地処理組成物に腐食安定性、配合物の安定性、色安定性及び芳香剤の安定性を与える。従来では、配合物の含水量が高いと、スチール缶容器に腐食が生じていた。この腐食に対処するために、空気又は布地処理配合物中に典型的に(性質及び/又は量に基づいて)高強度の腐食防止剤を含むことで、配合物のpHが高くなり、例えばホウ酸塩の場合はpHが9又は10超となる。これにより、腐食防止剤の種類/量及び高アルカリ性pHに基づいて配合物に包含できる芳香剤の数及び性質が大幅に制限される。本発明は、この不利益を解消するものである。
【0011】
本発明の組み合わせのエアロゾル組成物を分注する際に用いるのに好適な、錫めっき(錫コーティング)されていない又は錫めっきされたライナー付きスチール缶は、例えばCrown Cork & Seal、Ball Corporation、Bway、DS Container、Sexton Can、Colep、Simsek、Impress & Sarten、Inesa、Comeca、Huata & Cofco、MMI、Metcan、Swan、Canpac及びAestarから市販されている。スチール缶は、エアロゾル組成物を分注するように構成されており、分注キャップと、本体と、ベース壁部と、を備える。スチール缶の内面には、ライナーのみが備わっているか、又はライナーに加えて錫でコーティングされている。缶は、好ましくは3つの部材からなるスチール缶であるが、2つの部材からなるスチール缶であってもよい。
【0012】
スチール缶の内面は、好ましくは有機コーティング又はポリマーラミネートでライニング処理されており、任意に更に錫めっき(コーティング)されている場合は、ライニングが錫めっきの上にある。ポリマーライニングは、金属表面上で内面として用いられることが知られている様々な化学的性質を有する材料、例えばエポキシ−ウレア、エポキシ、エポキシ−フェノール、ビニル、アミド−イミド、アクリル、エポキシ−ビニル、アルキドなどから構成され得る。好ましいライニング材料は、エポキシ−ウレアであって、Valspar製VALSPAR 20S55という商品名で市販されている。ライニングの厚さは、約1ミクロン〜約12ミクロン以上の範囲である。
【0013】
エアロゾルとして分注するためにスチール缶に入れる配合物は、好ましくは圧縮ガス推進剤系である。圧縮ガス式エアロゾルの粒径は一般に更に大きく、例えば平均して約30μm〜約200μm(μm=マイクロメートル=ミクロン)までの範囲であることから、液化石油ガス(LPG)エアロゾルに比べるとより大きな粒子を落下させる可能性がある。そのため、圧縮ガス式配合物が不安定なために配合物が変色すると、粒子の落下が、ユーザには、特に白色又は淡色の表面上のみならず、布地などの軟質表面上でも更にはっきりと視認できる可能性がある。安定な圧縮ガス式配合物は無色透明又は淡色である。不安定な圧縮ガス式配合物は濃い黄色から褐色の液体へと変色するので、配合物粒子が落下中に付着した表面も変色する可能性がある。
【0014】
ライナー付きの及び任意に錫めっきをも併せ持つスチール缶と組み合わせる空気及び/又は布地処理配合物は、所定のpH、明確な界面活性剤、及び特定の濃度の腐食防止剤を有するものであり、腐食防止剤の量は、従来の圧縮ガス式エアロゾルに用いられる腐食防止剤に比べて少ない。達成される圧縮ガス式配合物の安定性は、広範な芳香剤の数及び特性を配合物に役立てることができる。芳香剤及び色の安定性は、アルカリ性pH又は強腐食防止剤をする配合物に比べて(含まれる腐食防止剤の性質又は量/数のいずれかによって)長時間達成される。
【0015】
空気又は布地処理配合物については、以下の表1に記載のものが一般に好ましい。
【0017】
表1中並びに本明細書及び請求項で用いられる組成物の総重量%(wt%)を100重量%とする。前記成分の重量%は、全成分の重量%に基づくものであって、単に成分の活性成分に基づくものではない。
【0018】
水成分は、キャリア溶媒であり、しかも脱イオン水、逆浸透膜浄水、蒸留水及び/又は水道水などであり得る。好ましくは脱イオン水及び逆浸透膜浄水である。一般に、水は約80重量%超かつ100重量%未満の量で含まれる。含まれる水の好ましい量は、前記表1に記載した通りである。更に好ましくは、水は約90〜約99重量%までの量で含まれ、最も好ましくは約92〜約97.5重量%の量で含まれる。
【0019】
配合物に包含するのに好適な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との混合物に限定される。本発明の配合物において本明細書に記載の利点を達成するのには、カチオン性界面活性剤単独では十分ではない。アニオン性、両性及び両性イオン界面活性剤は、本発明の圧縮ガス式空気処理配合物での使用からは除外する。かかる界面活性剤にはより強い腐食効果がある。界面活性剤成分は、1種以上の界面活性剤である可能性もあり、また、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤又は少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と少なくとも1種のカチオン性界面活性剤と混合物を包含することも可能である。
【0020】
空気処理配合物に有用な好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリアルコキシル化硬化ヒマシ油、好ましくはポリエトキシル化硬化ヒマシ油、例えばTAGAT CH60(60エチレンオキシド(EO)単位)、TAGAT CH40(40EO単位);硬化ヒマシ油とエトキシル化ヒマシ油との混合物、例えば、EUMULGIN HPS(40EO単位);第2級アルコールエトキシラート、例えばTERGITOL 15−S−12及びTERGITOL 15−S−7などのTERGITOLブランドの界面活性剤;エトキシル化直鎖アルコール、例えばLUTENSOL A08(8EO単位)などのLUTENSOLブランド;ソルビタンモノオレエート;ポリエチレンソルビタンモノオレエート;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート;アルキルポリグリコシド;ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド;アルキルフェノールエトキシル化カルボキシル化アルコール;並びにこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、好ましくは前記表1に記載した範囲の量、すなわち、約0.5〜約2.0重量%までの範囲、更に好ましくは約0.5〜約1.0重量%までの範囲、最も好ましくは約0.5〜約0.8重量%までの範囲で含まれる。
【0022】
圧縮ガス式空気処理配合物に包含するのに好適なカチオン性界面活性剤としては、次のもの、すなわち、第4級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキル、脂環式アミン、及び/又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
前記少なくとも1種のカチオン性界面活性剤は、好ましくは0〜約3.0重量%までの量で含まれ、更に好ましくは0〜約1.0重量%までの範囲で含まれる。上述のように、カチオン性界面活性剤は、非イオン性活性剤と組み合わせて用いられるものであり、単一界面活性剤として用いるものではない。
【0024】
圧縮ガス式空気及び/又は布地処理配合物に包含するのに好適な芳香剤は、単一成分であるか又は成分の混合物であるかに応じて天然又は合成芳香剤であり得る。芳香剤は、Takasago、International Flavors and Fragrances、 Inc.、Quest、Firmenich、Givaudan、Symriseなどの様々な芳香剤製造者から市販されている。
【0025】
芳香剤は、一般には前記表1に記載した範囲の量で含まれ、好ましくは約0.1〜約2.0重量%までの範囲の量で含まれ、更に好ましくは、約0.3重量%〜約1.0重量%までの範囲の量で含まれる。
【0026】
圧縮ガス推進剤は、酸素含有圧縮ガス推進剤又は非酸素含有圧縮ガス推進剤のいずれかの任意の好適な従来公知の圧縮ガス推進剤であってよく、窒素、アルゴン、メタン、エタン、空気、亜酸化窒素、二酸化炭素、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。使用するのに好ましい圧縮ガス推進剤は、不活性であって、しかも酸素を含まない。空気中などの酸素の存在は、腐食及び腐食反応の可能性を増大させる。さらに、酸化反応は芳香剤の安定性にも影響を及ぼす。そのため、圧縮空気推進剤に限定されないが、圧縮ガス推進剤は不活性媒体であって、しかも中に酸素を含んでいないことが好ましい。
【0027】
圧縮ガス推進剤は、一般には前記表1に記載した量で含まれる。すなわち、好ましくは約0.5〜約2.0重量%までの範囲、更に好ましくは約0.5〜約1.0重量%までの範囲である。圧縮ガス推進剤は、約120〜約160psigまでの範囲に加圧され、好ましくは約130〜約150psigまでの範囲、更に好ましくは約132〜約142psigまでの範囲に加圧される。
【0028】
圧縮ガス式空気処理配合物に包含するのに好適な腐食防止剤は、リン酸塩、例えばリン酸二水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二アンモニウム、リン酸カリウム(一塩基性又は二塩基性)、リン酸ナトリウム(一塩基性又は二塩基性);亜硝酸塩、例えば亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム及び亜硝酸アンモニウム;アミノメチルプロパノール;並びに/又はケイ酸塩、例えばメタケイ酸ナトリウムであるが、これらに限定されない。
【0029】
腐食防止剤は、一般には前記表1に記載した量で含まれており、好ましくは約0.01〜約0.5重量%までの範囲で、更に好ましくは約0.1〜約0.4重量%までの範囲で含まれる。
【0030】
用いるのに好適な非水溶媒としては、アルコール及びグリコールのみが挙げられる。用いるのに好適なアルコール及びグリコール非水溶媒の例としては、アルキレングリコール、例えばプロピレングリコール及びトリエチレングリコール;並びに低級炭素鎖(例えば、C2〜C5)アルコール、例えばエタノール及びプロパノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
非水溶媒は、表1中に上述の量で含まれており、すなわち好ましくは0〜約6.0重量%までの範囲で、更に好ましくは約0.1〜約5.0重量%までの範囲の量で含まれる。最も好ましくは、非水溶媒は約0.1重量%以下の量で含まれるため、配合物はVOCが低いか又はVOCを有しない。
【0032】
圧縮ガス式空気及び/又は布地処理配合物にpH調整剤若しくはpHコントローラとして包含するのに好適な化合物としては、炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム;ケイ酸塩、例えばメタケイ酸ナトリウム5水和物(pH調整剤と腐食防止剤、などの二重機能を付与し得るもの);リン酸塩、例えばリン酸二ナトリウム及びリン酸二カリウム;水酸化物、例えば水酸化ナトリウム;水酸化アンモニウム;THAM−トリス−(ヒドロキシメチル)アミノエタン;2−アミノ−2−メチルプロパンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
pH調整剤は、約8〜10までの範囲の望ましいpH、好ましくは約8.5〜約9.5までのpH範囲、更に好ましくは約8.5〜約9.0までのpH範囲を得るのに好適な十分な量で使用される。
【0034】
圧縮ガス式空気処理配合物に包含するのに好適な緩衝剤化合物としては、重炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウム;リン酸塩;水酸化アンモニウム;THAM−トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン;2−アミノ−2−メチルプロパンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。リン酸塩、炭酸塩、水酸化アンモニウム、THAM−トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン、2−アミノ−2−メチルプロパンジオールなどの一部の周知のpH緩衝剤は、腐食防止剤とpH調整剤と緩衝剤といった多目的機能を与えることが分かっている。かかる場合、結果的に本発明の範囲内で調整されたそれらの機能及びその量に適合するように1成分を用いてもよく、又は成分の組み合わせを用いてもよい。
【0035】
緩衝剤は、一般には表1に記載の量で含まれており、好ましくは約0.01〜約0.5重量%までの範囲、さらに好ましくは約0.1〜約0.4重量%までの範囲の量で含まれる。
【0036】
圧縮ガス式空気処理配合物に包含するのに好適な保存料としては、イソチアゾリノン、例えば1、2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン及び2−メチルイソチアゾール−3(2H)−オン(これは商品名ACTICIDE MBとして販売されている。)、2―メチル―4―イソチアゾリン―3−オン(これは商品名NEOLONE M−10として販売されている。)、並びに2―メチル―2H―イソチアゾール―3−オン及び3―ヨード―2−プロピニルブチルカルバメート(これは商品名ACTICIDE IMとして販売されている。)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
保存料は、一般には表1に記載の量で含まれており、好ましくは約0.01〜約1.0重量%までの範囲、さらにこのましくは約0.01〜約0.5重量%までの範囲、もっとも好ましくは約0.05〜約0.2重量%までの範囲の量で含まれる。
【0038】
腐食防止剤成分とpH調整剤成分と、含まれる場合には、緩衝剤成分及び保存料成分とを組み合わせた濃度は、特にこれら成分が少量で含まれている場合にそれらの機能を発揮し得るという点において、本発明で達成される利益の一因となる。このことは、不利な相互作用又は分解が生じる可能性が低いことから、配合物の芳香剤及び色に対する安定性を向上させる働きをする。当該技術分野において従来公知の補助剤は、本明細書に記載の配合物/容器の利点の実現を必ずしも阻むものでない限り、要望通りに包含することができる。配合物中のリン酸塩成分の合計濃度は(一缶の重量227グラムあたり)0.05%である。
【0039】
本発明の圧縮ガス式空気処理配合物の例を以下に記載する。
【0041】
錫めっき処理され、エポキシ−尿素ライニングからなるVALSPAR 20S55ライニングの付いた3つの部材からなるスチール缶に、実施例1〜4の各配合物を入れた。
【0042】
本明細書に開示された代表的な実施形態は、本発明の範囲を網羅するものでもなく又は不必要に制限するものでもない。代表的な実施形態は、当業者が本発明を実施できるように本発明の原理を説明するために選択し説明したものである。当業者には自明なように、様々な変更は前記範囲内であれば可能である。当業者が実行可能な範囲内のかかる変更は、本発明の一部をなすものであり、また、添付の特許請求の範囲にも包含される。