特許第6072243号(P6072243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072243
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】プリントヘッド調整装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/155 20060101AFI20170123BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   B41J2/155
   B41J2/01 307
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-521984(P2015-521984)
(86)(22)【出願日】2012年7月16日
(65)【公表番号】特表2015-523253(P2015-523253A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】EP2012002982
(87)【国際公開番号】WO2014012560
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2015年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】515013959
【氏名又は名称】パダルーマ インク−ジェット−ソリューションズ ゲーエムベーハー ウント コー カー ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】パトリク ルッツ
【審査官】 有家 秀郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−121278(JP,A)
【文献】 特開2011−073168(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0001780(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0077225(US,A1)
【文献】 特開2004−136555(JP,A)
【文献】 特開2002−264311(JP,A)
【文献】 特開2002−067281(JP,A)
【文献】 特開2010−125831(JP,A)
【文献】 特開2010−069627(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/108097(WO,A1)
【文献】 特開2011−152708(JP,A)
【文献】 特開2010−214273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームを有するプリントヘッドモジュールを備えるインクジェットプリンタの前記フレームに設置されるプリントヘッド調整装置(1)であって、
互いに直交するX方向とY方向により形成されるX−Y平面に広がる印刷面(6)を有するプリントヘッド(3)と、
前記プリントヘッド(3)の固定端(9)を前記X−Y平面で調整可能に受ける受け手段(20)を含む調整アダプタ(4)とを備え、
前記X方向は前記プリントヘッド(3)が伸長する方向であり、前記Y方向は前記プリントヘッド(3)が進行する方向であり、
前記プリントヘッド(3)の遊端(8)は、前記調整アダプタ(4)上に取り付けられて、前記X方向に移動可能であり、前記X−Y平面に直交する回転軸のまわりに回転可能であ
前記調整アダプタ(4)は、前記フレームに固定して取り付けられ、前記調整アダプタ(4)は、単一の前記プリントヘッド(3)を受けるように構成され、
前記調整アダプタ(4)は、前記プリントヘッド(3)の前記遊端(8)を受ける第1のアダプタ部(16)と、前記プリントヘッドの前記固定端(9)を受ける第2のアダプタ部(17)とに分けられ、前記回転軸は前記第1のアダプタ部(16)に設けられる、
プリントヘッド調整装置(1)。
【請求項2】
前記受け手段(20)が、前記X方向および前記Y方向に独立して調整可能なように構成される、
請求項1に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【請求項3】
前記受け手段(20)が、前記X−Y平面でオフセットして配置され、前記プリントヘッド(3)の前記固定端(9)が当接する2つの回転可能な偏心カム(21、22)を備える、
請求項1または2に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【請求項4】
前記プリントヘッド(3)の前記固定端(9)が、前記受け手段(20)に対するプレストレスを与えられる、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【請求項5】
前記プリントヘッド(3)の前記固定端(9)が、磁気によって前記受け手段(20)に対するプレストレスを与えられる、
請求項4に記載のプリントヘッド調整装置。
【請求項6】
前記調整アダプタ(4)が、前記プリントヘッド(3)の前記遊端(8)が前記Y方向に当接する止め要素(18)を備える、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【請求項7】
前記止め要素(18)が、前記Z方向に伸長するピン(19)として構成される、
請求項6に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【請求項8】
前記プリントヘッド(3)の前記遊端(8)が、前記止め要素(18)に対するプレストレスを前記Y方向に与えられる、
請求項6または7に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【請求項9】
前記プリントヘッド(3)の前記遊端(8)が、磁気によって前記止め要素(18)に対するプレストレスを前記Y方向に与えられる、
請求項8に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【請求項10】
前記調整アダプタ(4)が、複数の部品から構成される、
請求項1〜9のいずれか一項に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【請求項11】
前記調整アダプタ(4)が、前記プリントヘッド(3)の接触面(11)を前記Z方向に備える、
請求項1〜10のいずれか一項に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【請求項12】
前記プリントヘッド(3)が、前記調整アダプタ(4)の前記接触面(11)に対するプレストレスを与えられる、
請求項11に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【請求項13】
前記プリントヘッド(3)が、磁気によって前記調整アダプタ(4)の前記接触面(11)に対するプレストレスを与えられる、
請求項12に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【請求項14】
前記調整アダプタ(4)が、実質的に伸縮性のない材料から製造され、
前記材料が、20℃〜50℃の温度範囲で、5×10−6−1満の熱膨張係数を有する、
請求項1〜13のいずれか一項に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【請求項15】
前記調整アダプタ(4)が、実質的に伸縮性のない材料から製造され、
前記材料が、25℃〜40℃の温度範囲で、2×10−6−1未満の熱膨張係数を有する、
請求項1〜13のいずれか一項に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【請求項16】
前記調整アダプタ(4)を調整するための電気駆動装置(24、25)が含まれる、
請求項1〜15のいずれか一項に記載のプリントヘッド調整装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタのプリントヘッド調整装置に関するものである。ここで、本発明は特に、熱循環の間、プリントヘッドモジュールのプリントヘッドを固定する手段が、シングルパスインクジェットプリンタの印字品質に影響する問題に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェットプリンタでは、進行方法(Y方向とも呼ばれる)へ非連続に運搬される媒体に面して、横断方向(X方向とも呼ばれる)の1行ごとに運搬スプレーインク滴上に取り付けられるプリントヘッドに対して、シングルパスインクジェットプリンタでは、プリントヘッドは、媒体の全幅にわたる横断方向でプリントヘッドモジュールに取り付けられる。印刷媒体は、進行方法に連続的に動かすことができる。従来のインクジェットプリンタでは、印字速度は最高2m/minであるのに対して、シングルパスインクジェットプリンタでは、最高50m/minの印字速度を実現できる。カラー印刷の場合、複数のプリントヘッドモジュールが、シングルパスインクジェットプリンタの進行方法に並べて取り付けられる。ここで、プリントヘッドモジュールには、いずれの場合にも、1つの原色、特にシアン、マゼンタ、およびイエローが割り当てられ、場合により、ブラックも割り当てられる。特別な印刷用途の場合、特別な色を有するさらなるプリントヘッドモジュールを追加できる。
【0003】
特に、シングルパスインクジェットプリンタは、大量生産品を印刷する必要がある産業用途に好適であり、よって、高スループットは重要である。同様に、シングルパスインクジェットプリンタは、高い印字速度のために、大きい領域の印刷に好適である。したがって、シングルパスインクジェットプリンタは、特に、家具または窯業の産業用途に好適であり、積層板または陶製タイルなどの床材、天板、モールディングなどに、装飾模様が施される。ここで、非常に多種のインクが、たとえば、後の保護被覆などに対して耐性のあるものに使用される。
【0004】
グラビア印刷などの従来の印刷プロセスと比較すると、シングルパスインクジェットプリンタは、インプレッションロールを製造する価値がない小バッチサイズの場合でさえ、正確に使用される。対照的に、シングルパスインクジェットプリンタは装飾模様の個別化、およびロールで実現できない不可能な装飾模様として知られているものの実現を可能とする。シングルパスインクジェットプリンタは、輪転印刷の場合のように、印刷パターンまたは繰り返しパターンの連続する繰り返しに限定されない。
【0005】
シングルパスインクジェットプリンタの個々のプリントヘッドモジュールは、0.5メートルより大きく1メートル超までの横断方向および垂直(Z方向とも呼ばれる)の寸法を確実に実現できる。プリントヘッドモジュールの印刷バーに組み込まれるプリントヘッドは、各場合において、最高数十センチメートルの幅を有する可能性がある。ここで、解像度は、600×600dpi(ドット/インチ)まで可能である。ここで、プリントヘッドあたり、数千のノズルが含まれる。最大数メートルの印刷幅は、大きいプリントヘッドモジュール、または、互いに隣接して配置される複数のプリントヘッドモジュールによって実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/108094A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
印刷画像における数マイクロメートルの位置ずれは、人の目で検出される可能性がある。上述の解像度の場合、プリントヘッドの個々のノズルは、互いからほんの数十マイクロメートルしか離れていない。画像ドット自体のサイズは、10マイクロメートルの範囲である。進行方法に並べて配置される複数のプリントヘッドモジュールを有するシングルパスインクジェットプリンタの場合、高品質印刷画像を作成するために、マイクロメートル範囲のプリントヘッドの調整が必要になることが明らかとなっている。したがって、シングルパスインクジェットプリンタのプリントヘッドモジュールの調整は、非常に難しくなる。たとえば、プリントヘッドモジュールで取り付けられるプリントヘッドの位置は、このために、光学顕微鏡で検出し、複雑な方法で手動により設定する必要がある。したがって、シングルパスインクジェットプリンタの設定は、比較的長く時間がかかる。
【0008】
プリントヘッドの調整を単純化するシングルパスインクジェットプリンタの構造について、国際公開第2005/108094A1号公報は、プリントヘッドモジュールのフレームにおいて、各場合に、プレストレスのある状態に個々のプリントヘッドを保持することを提案している。ここで、各プリントヘッドは、反対側のフレーム端部に対して機械的ばね要素によってその対応する切欠きに押し付けられる。この種類のプレストレスは、X方向およびY方向の両方で行われる可能性がある。
【0009】
不都合なことに、それぞれのプリントヘッドモジュールに対するプリントヘッドの位置は、この種類の配置において、プレストレスのある係止部のために固定される。プリントヘッドまたはフレーム寸法の、製造によって生じる精度は、この方法では修正できない。プリントヘッドモジュールに対するプリントヘッドの相対的な位置決めは、可能とならない。
【0010】
第2に、プリントヘッドモジュールでのプリントヘッドの取付けは、国際公開第2005/108094A1号公報に記載され、それらは、製造精度を補償するために、横断方向(X方向)および進行方法(Y方向)の長手方向に移動可能である。プリントヘッドモジュールに対するプリントヘッドの位置は、プリントヘッドの対応する変位として設定可能である。プリントヘッドモジュールに対するプリントヘッドの相対的な方向付けは好適なツールによって行われ、次に、正確に位置決めされたプリントヘッドを有するプリントヘッドモジュールが、シングルパスインクジェットプリンタに位置的に固定される方法で挿入される。
【0011】
プリントヘッドモジュールに対して位置的に固定される方法で設置されるプリントヘッドは、熱循環の場合に、プリントヘッドモジュールに対してその相対的な位置を変えることが可能であることが、不都合には示されている。驚くべきことに、ここで、プリントヘッドの恒久的な位置的変化が起こる可能性があり、それは結果として、印刷画像における明白なずれに至る。
【0012】
したがって、第1に、プリントヘッドモジュールに対するプリントヘッドの位置決めを可能にするが、第2に、熱循環に対してできるだけ影響を受けないプリントヘッド調整装置を明示することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、この目的は、X−Y平面で伸長する、印刷面を有するプリントヘッドのプリントヘッド調整装置、X−Y平面で調整可能な受け手段が含まれる調整アダプタにより実現される。プリントヘッドの固定端は、調整可能な受け手段に受けられる。さらにまた、プリントヘッドの遊端は、調整アダプタ上に取り付けられ、X方向に移動可能であり、X−Y平面に直交する回転軸のまわりに回転可能である。
【0014】
ここで、本発明は、出願人の観察によって得られた知見から、プリントヘッドモジュールに固定されるプリントヘッドが、熱循環の下で永続的にプリントヘッドへの相対的な位置も変える第1の工程に進むが、これは、温度に関する反応の後、開始温度に復帰する間に、プリントヘッドが再び元の位置につくことが保証されないためである。たとえば、プリントヘッドモジュール上の2つの側面で固定されるプリントヘッドの場合、温度によって誘発される熱膨張の間、固定している側面のうちどちらが固定端または遊端の役割を果たすかは、明記されない。プリントヘッドを元の温度に冷却する間、固定している側面は、固定端または遊端としての役割を、順に入れ替える可能性もある。したがって、プリントヘッドは、複数の熱循環の下で、プリントヘッドモジュール上に固定されるにもかかわらず、マイクロメートル範囲で無限軌道運動のように移動する可能性があり、結果として、シングルパスインクジェットプリンタの印刷画像において、明白なずれとなる可能性がある。出願人によるテストでは、シングルパスインクジェットプリンタの作動中、プリントヘッドを固定した場合、数マイクロメートルの範囲で、実際の位置的変化が発生する結果となった。
【0015】
したがって、印刷画像において目に見え、プリントヘッドモジュールへのプリントヘッドの固定にもかかわらずシングルパスインクジェットプリンタの作動中に起こるプリントヘッドの位置的移動は、頻繁な温度サイクルの結果である。頻繁な温度サイクルは、プリントヘッドおよびその設置環境が、第1に、インク吐出ノズルの圧電活性の結果として、第2に、インクの流入の結果として、作動中、絶えずさまざまな温度にさらされるという事実の直接の結果である。したがって、温度制御された空間におけるインクジェットプリンタの作動でさえ、前記問題を取り除くことはできない。
【0016】
第2の工程において、本発明は、プリントヘッドをその相対的な位置に明確に固定することの考慮から生じて、プリントヘッドモジュールで位置決めできるが、規定の浮動軸受があるような方法でプリントヘッドを固定するプロセスにおいて、結果として、プリントヘッドは、温度に関連する反応の後、元の位置に自身を自動的に移動する。
【0017】
後者は、プリントヘッドが調整アダプタによって受けられるという事実によって行われる。ここで、プリントヘッドの遊端は、調整アダプタ上に取り付けられ、X方向に移動可能性であり、X−Y平面に直交する回転軸のまわりに回転可能である。プリントヘッドの固定端は、X−Y平面の調整アダプタ上で調整可能な受け手段で受けられる。調整アダプタを有するプリントヘッド、すなわち、プリントヘッド調整装置自体が、プリントヘッドモジュールに固定される。このために、調整アダプタは、プリントヘッドモジュールに、ねじ込み、接着接合、加圧、または何か他の方法で取り付けられる可能性がある。
【0018】
調整アダプタ上で固定端を受ける受け手段の調整により、第1に、プリントヘッドモジュールに対するプリントヘッドの位置が長軸またはX方向に変更可能であり、第2に、プリントヘッドの方位角が、遊端で定義される回転軸まわりの回転によってX−Y平面で設定可能である。さらに、プリントヘッドの遊端はX方向に移動可能なように取り付けられる。2つの側面での固定にもかかわらず、頻繁な熱循環の後のプリントヘッドの移動は、結果として阻止される。温度に関連する反応の結果として起こるプリントヘッドモジュールに対するプリントヘッドの長さの違いは、X方向に移動可能な遊端によって吸収される。温度に関連する反応の後、プリントヘッドの変位可能な遊端は、再び元の位置に戻る。プリントヘッドは、プリントヘッドモジュールに対する位置を変えない。
【0019】
設けられる調整アダプタにより、本発明は、プリントヘッドモジュールに対するプリントヘッドの配置、続くそれの固定を可能にする。遊端の定義された役割の結果として、次に、頻繁な熱循環の間、配置および固定されたプリントヘッドの移動が回避される。
【0020】
本発明は原則として、すべてのインクジェットプリンタに対して好適である。特に、本発明は、マイクロメートルの範囲でのプリントヘッドの位置的変化が印刷画像の品質に悪影響を及ぼす可能性のある、シングルパスインクジェットプリンタに対して好適である。
【0021】
受け手段は、滑り軸受、平軸受、または転り軸受によって、または、異なる軸受形式の組合せによって調整アダプタ上で調整または移動可能なように構成できる。溝穴付きガイド、凸型ガイドなども、調整アダプタ上で受け手段の位置を変えるために設けることができる。調整アダプタ上の受け手段の調整可能な固定のためのその他の手段も、実現可能である。特に、回転および摺動接合部は、プリントヘッドの遊端を取り付けるために、さらに構成可能である。その部分に回転可能に取り付けられるリニアガイドも、遊端のために設けることが可能である。
【0022】
プリントヘッド調整装置自体の温度に関連する反応を、できるだけ少なく抑えるために、調整アダプタは、好ましくは、実質的に伸縮性のない材料から製造され、それは、20℃〜50℃、特に25℃〜40℃の温度範囲で、5×10−6−1未満、特に2×10−6−1未満の熱膨張係数を有する。この種類の材料は、たとえば、インバー鋼合金、CRP(炭素繊維強化プラスチック)材料、またはセラミックである。しかし、セラミックは機械加工が比較的複雑であるため、鋼合金またはCRP材料が好ましい。
【0023】
受け手段は、好ましくは、X方向およびY方向に独立して調整可能なように構成される。プリントヘッドの固定端は、X方向およびY方向の独立した調整性により、より正確に位置決め可能である。特に、プリントヘッドの位置は、X方向の調整により、シングルパスインクジェットプリンタの横断方向で調整される。Y方向の独立した調整により、プリントヘッドは遊端の回転軸まわりに旋回し、その結果、プリントヘッドモジュールに対するプリントヘッドの並列性が設定される。
【0024】
プリントヘッド調整装置の1つの好ましい発展において、受け手段は、X−Y平面でオフセットして配置され、プリントヘッドの固定端に当接する2つの回転可能な偏心カムを備える。単純で機械的に安定した構造において、プリントヘッドの位置は、偏心カムの1つの回転により、横断方向で設定される。他方の偏心カムの回転により、プリントヘッドは、遊端の回転軸のまわりをX−Y平面で回転する。プリントヘッドの横位置および回転角度は、高精度に、互いに独立して設定可能である。偏心カムを指定の位置に固定することにより、プリントヘッドの固定端は調整アダプタ上に固定される。たとえば、固定は、偏心カムの駆動における自動ロック式歯車機構、あるいは、機械式または電動ブロッキング手段により、構成可能である。
【0025】
プリントヘッドの固定端は、原則として、受け手段上に固定的に、自由度なしで取り付け可能である。しかし、遊端上の回転軸まわりのプリントヘッドの旋回は可能なままであるため、プリントヘッドの固定端は、有利には、受け手段に対するプレストレスが与えられる。プレストレスにより、X−Y平面内の固定端の位置は維持可能であり、同時に、回転可能性は、複雑な機械的構造のないプリントヘッドの1つの可能な自由度として、保証されるままにできる。プレストレスは、好適な電磁的または機械的プレストレス手段として実現可能である。特に、板ばねまたはコイルばねなどのばね要素は、機械的プレストレス手段として好適である。
【0026】
1つの好都合な改良形態において、プリントヘッドの固定端は、磁気によって受け手段に対するプレストレスが与えられる。換言すれば、特に、固定端上で受け手段の方向に力を与える永久磁石が設けられる。この点で、固定端を磁気的手段によって、受け手段の方向に引き寄せる、または、押し戻すことが可能である。このために、受け手段または固定端のいずれかが磁性を有する。
【0027】
遊端の回転軸を定義するために、好ましくは、調整アダプタは、プリントヘッドの遊端がY方向に当接する止め要素を備える。回転軸は止め領域により固定され、そこでは、遊端が止め要素に当接する。止め要素は、便宜上、Z方向に伸長するピンとして構成される。ここで、ピン軸は、プリントヘッドの遊端の回転軸を、それ自体で同時に形成する。
【0028】
遊端が止め要素に当接するために、好ましくは、プリントヘッドは止め要素に対するプレストレスが与えられる。プレストレスは、好適な電磁的または機械的プレストレス手段により、上述のようにもう一度実現可能である。板ばねまたはコイルばねなどのばね要素は、機械的プレストレス手段として好適である。遊端で止め要素の方向に力を与える磁気手段が特に好ましい。この種類の磁気的手段は、止め要素の方向に遊端を引き寄せるか、それを押し戻すことが可能である。永久磁石は、磁気的手段、つまり磁場形状のプリントヘッドの止め要素または遊端として、便宜上使用される。
【0029】
調整アダプタ自体は、単一の部品または複数の部品構成とすることが可能である。特に、調整アダプタの部品は、プリントヘッドモジュール、または、そこに位置するプリントヘッドの対応する設置フレーム上に組み込むことも可能である。後者の場合、本発明のプリントヘッド調整装置は、プリントヘッドモジュール上へのプリントヘッドの取付けが行われた後のみ、存在する可能性がある。
【0030】
1つの好適な改良形態において、調整アダプタは複数の部品から構成される。結果として、プリントヘッド調整装置のプリントヘッドモジュールへの簡単な取付けが実現可能である。この点についての好ましい1つの変形形態において、調整アダプタは、プリントヘッドの遊端を受ける第1のアダプタ部と、プリントヘッドの固定端を受ける第2のアダプタ部とに分けられる。取り付けるために、たとえばまず第1に、第1のアダプタ部がプリントヘッドモジュールに固定可能である。続いて、プリントヘッドモジュールが第2のアダプタ部に取り付け可能であり、そして、遊端がすでに取り付けられた第1のアダプタ部に送られる。
【0031】
調整アダプタは、Z方向に、プリントヘッドの接触面を便宜上備える。これにより、プリントヘッドが、印刷面の方向にプリントヘッドモジュールで確実に保持されることが保証される。接触面は、プリントヘッドの落下または印刷面に対するZ方向への移動を抑制する。
【0032】
プリントヘッドは、好ましくは、調整アダプタの接触面に対してもう一度プレストレスが与えられる。上述の手段は、便宜上、プレストレス手段として使用可能である。
【0033】
プリントヘッド調整装置のさらなる好適な改良形態において、調整アダプタを調整するための電動駆動装置が設けられる。結果として、シングルパスインクジェットプリンタ設定時の、プリントヘッドの簡単な再調整が可能となる。第2に、作動中、予想に反してプリントヘッドの位置的変化が発生した場合に、シングルパスインクジェットプリンタの作動中の作動位置チェックにより、プリントヘッドの連続追尾を行うことも可能である。
【0034】
本発明の例示的な実施形態は、図面を使用してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、プリントヘッドおよび調整アダプタを有するプリントヘッド調整装置の第1の変形形態の斜視図を示す。
図2図2は、プリントヘッドおよび調整アダプタを有するプリントヘッド調整装置の第2の変形形態の斜視図を示す。
図3図3は、別の視点からの、図2によるプリントヘッド調整装置を示す。
図4図4は、プリントヘッドの遊端に取り付ける、第1のアダプタ部の詳細図を示す。
図5図5は、プリントヘッドの固定端を受ける、第2のアダプタ部の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に示すプリントヘッド調整装置1は、調整アダプタ4に調節可能に取り付けられるプリントヘッド3を備える。示された、調整アダプタ4およびプリントヘッド3を備える集合体は、プリントヘッドモジュールのフレーム(図示せず)に設置される。ここで、特に、調整アダプタ4はプリントヘッドモジュールのフレームにねじ止めされる。プリントヘッドモジュールに対するプリントヘッド3の調整は、調整アダプタ4に対するプリントヘッド3の位置的変更により可能となる。
【0037】
図1に対応する方法で調整アダプタ4を有する集合体で示されるプリントヘッド3は、ほぼ横断方向(X方向)に沿って伸長する。印刷中、印刷媒体は、プリントヘッド3の下を通って進行方法(Y方向)に移動する。可視でないその下側で、プリントヘッド3は、個々のインク吐出ノズルを備える配列として形成される印刷面6を有する。印刷中、インク滴はZ方向に、インク吐出ノズルから、通過する印刷媒体の上に吐出される。個々のインク吐出ノズルの作動は、特に、圧電方式で行われる。XYZ座標系の方向も示される。
【0038】
示された、プリントヘッド3および調整アダプタ4を備える集合体は、取り付けられた状態のプリントヘッドモジュールの一部である。この種類のプリントヘッドモジュールは、印刷媒体の印刷される全幅以上に、長軸つまりX方向に伸長する。複数の示されたプリントヘッド調整装置1は、X方向に沿って互いに隣接して配置され、プリントヘッドモジュールのY方向で互いに対してオフセットされる。
【0039】
プリントヘッド3は、調整アダプタ4の遊端8および固定端9に取り付けられ、X−Y平面で調整可能である。Z方向において、調整アダプタ4は接触面11を有し、そこに、X方向に伸長するプリントヘッド3の端部が置かれる。このようにして、プリントヘッド3の印刷面6の、印刷媒体からのZ方向への間隔が定義される。
【0040】
第1の接触要素12および第2の接触要素13は、X方向に伸長するプリントヘッド3の2つの端部、すなわち遊端8および固定端9に取り付けられる。接触要素12、13は、調整アダプタ4に対してプリントヘッド3を位置決めするように機能する。代案として、取り付けられる接触要素12、13なしで、プリントヘッド3の端部自体を、調整アダプタ4上での位置決めのために構成することも可能である。この場合、接触要素12、13は各場合においてプリントヘッド3の端部にねじ止めされる。
【0041】
図1によるプリントヘッド調整装置1において、調整アダプタ4は、2つの部分から成る構成である。それは1つの部品で同様に製造可能である。示される調整アダプタ4は、プリントヘッド3の遊端8を固定する第1のアダプタ部16と、プリントヘッド3の固定端9を固定する第2のアダプタ部17とを備える。両方のアダプタ部16、17は、ある角をなす構成であり、プリントヘッドモジュールのフレーム(図示せず)に固定するための固定手段(この場合は穴)を有する。
【0042】
第1のアダプタ部16は、プリントヘッド3の遊端8のための止め要素18として、Z方向に伸長するピン19を備える。プリントヘッド3の遊端8のほぼL字形の第1の接触要素12は、X方向に伸長するその周縁で、ピン19をY方向に当接する。遊端8は、図1で参照できない磁気的手段により、前記ピン19に対するプレストレスが与えられる。第1の接触要素12のその他の周縁とピン19との間に、X方向の遊びがある。したがって、遊端8は調整アダプタ4の第1のアダプタ部16上で案内され、X方向に移動可能である。ピン19は遊端8の回転軸に相当し、回転軸はZ方向に伸長する。
【0043】
調整アダプタ4の第2のアダプタ部17は、X−Y平面で調整可能であり、プリントヘッド3の固定端9をX−Y平面で調整可能に受ける受け手段20を備える。特に、プリントヘッド3の固定端9は、図1で参照できない磁気的手段によって、X方向およびY方向で受け手段20に対するプレストレスが与えられる。受け手段20は、第1の可視の偏心カム21と、X−Y平面でそれに対してオフセットして配置され、可視でない(このため、図2を参照)第2の偏心カム22とを備える。2つの偏心カム21、22を駆動することにより、プリントヘッド3の固定端9は、X方向(第1の偏心カム21)およびY方向(第2の偏心カム22)に、独立して移動し、固定される。電気駆動装置25および24は、偏心カム21、22を作動させるために設けられる。
【0044】
プリントヘッド3の遊端8は、調整アダプタ4の第1のアダプタ部16上でY方向に固定されるが、ピン19で定義される回転軸まわりを回転可能に取り付けられることは、図1からすでに明らかになっている。プリントヘッド3の遊端8は、X方向に変位可能な構成である。この点で、第1の接触要素12およびピン19は、プリントヘッド3の遊端8の回転および摺動接合部を形成する。プリントヘッド3の固定端9は、2つの偏心カム21、22の作動により、X−Y平面で移動可能である。ここで、X−Y平面における固定端9の位置は、2つの偏心カム21、22上の、第2の接触要素13の係止部によって固定される。プリントヘッド3は、第1の偏心カム21の作動によって、X方向に全体的に移動する。第2の偏心カム22の作動により、プリントヘッドは、ピン19で定義される回転軸のまわりにX−Y平面内で回転し、よって、X−Y平面におけるプリントヘッド3の方位角が設定される。
【0045】
熱循環時、遊端8と固定端9との間のプリントヘッド3の長さが変化する場合、遊端8は、ピン19に対してX方向に移動する。温度に関連する反応の後、再び、元の温度になると、プリントヘッド3の遊端8も元の位置に戻る。複数の熱循環の結果としてのプリントヘッドモジュールに対するプリントヘッド3の移動は、現在の調整アダプタ4により阻止される。同時に、受け手段20の作動により、プリントヘッドは調整可能であり、プリントヘッドモジュールに対して位置決めされる。
【0046】
図2は、図1と同様の視点からの、プリントヘッド調整装置1の第2の変形形態を示す。図2のプリントヘッド調整装置1は、第1の接触要素12の構成により、図1によるプリントヘッド調整装置1と異なる。図2による接触要素12はほぼT字形の設計を有し、X方向に伸長するTのその周縁がピン19にY方向に当接する。X方向において、接触要素12は、ピン19上で置き換え可能に取り付けられる。他の点では、2つの接触要素12、13は、図1によるプリントヘッド調整装置1と比較すると、Z方向により大きい厚さを有する。
【0047】
X方向は第1の偏心カム21に対して、そして、Y方向は第2の偏心カム22に対して当接する第2の接触要素13は、プリントヘッド3の固定端9で、明確に参照可能である。2つの偏心カム21、22は、調整アダプタ4の角度をつけられた第2のアダプタ部17で、回転可能に可動な方法で受けられる。
【0048】
図3は、図2によるプリントヘッド調整装置1の平面図を示す。プリントヘッド3がZ方向の上から参照可能である。プリントヘッド3の固定端9および遊端8を、直接、見ることができるようになる。調整アダプタ4の第1のアダプタ部16のピン19にY方向に当接するT字形の第1の接触要素12が、遊端8で参照可能である。
【0049】
各場合において、1つの間隙27は、第1のアダプタ部16と第2のアダプタ部17とを備える調整アダプタ4と、プリントヘッド3との間でY方向に形成される。そこでは、各場合において、磁石要素29が第1のアダプタ部16上、および第2のアダプタ部17上に配置される。磁石要素29は永久磁石として構成され、プリントヘッド3の遊端8に第1のアダプタ部16上のピン19に対するプレストレスを与え、遊端8に第2のアダプタ部17上の第2の偏心カム22に対するプレストレスを与える。さらにまた、さらなる磁石要素29が第2のアダプタ部17上で参照可能であり、磁石要素29は、プリントヘッド3全体またはその固定端9に第1の偏心カム29に対するX方向のプレストレスを与える。
【0050】
さらに、図1および2で参照可能な接触面11に対して、Z方向下向きにプリントヘッド3の端部にプレストレスを与えるために使用される磁石要素は、図1〜3では参照できない。
【0051】
図4は、図1および2に示すプリントヘッド調整装置1の第1のアダプタ部16の詳細図を示す。第1のアダプタ部16は、プリントヘッド3の遊端8に取り付けられる。第1の接触要素12の周縁がX方向に当接するピン19が、明確に参照可能である。プリントヘッド3の遊端8がZ方向に当接する接触面11も、同様に参照可能である。ここで明確に参照可能である磁石要素29は、前記接触面11に組み込まれ、磁石要素29は、第1のアダプタ部16に対して、したがって、その接触面11に対して、Z方向にプリントヘッド3の遊端8を引き寄せるか、プレストレスを与える。
【0052】
図4によるさらなる詳細図において、図5は、プリントヘッド3の固定端9を調節可能に受けるための、図1および2によるプリントヘッド調整装置1の第2のアダプタ部17を示す。プリントヘッド3の固定端9を受ける受け手段20は、ここで明確に参照可能であり、受け手段20はX方向への接触のための第1の偏心カム21と、Y方向への接触のための第2の偏心カム22とを備える。偏心カム22、21を作動させるための2つの電気駆動装置24、25は、角度をつけられた第2のアダプタ部17に配置される。電気駆動装置24、25は、対応する調整装置により、無限の方法で調整可能である。
【0053】
第1に、第2の偏心カム22に対するY方向、および、第2に、第2のアダプタ部17の接触面11に対するZ方向へ、プリントヘッド3の固定端9にプレストレスを与える磁石要素29は、図5で明確に参照可能である。プリントヘッド3の固定端9に第1の偏心カム21に対するプレストレスを与える磁石要素29は、図5では参照できない。
【符号の説明】
【0054】
1 プリントヘッド調整装置
3 プリントヘッド
4 調整アダプタ
6 印刷面
8 遊端
9 固定端
11 接触面
12 第1の接触要素
13 第2の接触要素
16 第1のアダプタ部
17 第2のアダプタ部
18 止め要素
19 ピン
20 受け手段
21 第1の偏心カム
22 第2の偏心カム
24 駆動モータ
25 駆動モータ
27 間隙
29 磁石要素
図1
図2
図3
図4
図5