【実施例1】
【0018】
図1に示されるように、本発明の実施例1による車両の加飾構造は、ワゴン車等の車両10に適用される。このような車両10の車室11は、床を形成する床パネル12と、車体前端に固定されているフロントガラス13と、車体後端に回動可能に取り付けられているテールゲート14と、車体の左右それぞれに取り付けられている複数のドア15,16(車体右側に取り付けられているドア15,16のみが示されている)と、天井を形成するルーフパネル17とによって、囲われ、形成されている。
【0019】
床パネル12の上面部12aには、乗員が着座するための複数のシート21〜23が取り付けられている。これらのシート21〜23は、運転席21a及び助手席21bからなる第1列シート21と、この第1列シート21の後方において車幅方向に亘って設けられているベンチ型の第2列シート22と、この第2列シート22の後方において車幅方向に亘って設けられているベンチ型の第3列シート23とからなる。
【0020】
第1列シート21の前方には、車幅方向に亘ってインストルメントパネル25が設けられている。インストルメントパネル25は、グローブボックスや計器類が取り付けられる樹脂製の部品である。インストルメントパネル25の表面25a(意匠面25a)のなかの、助手席21bに対向した部位には、装飾の施された加飾部30が形成されている。即ち、加飾部30は、車室11内の意匠面25aを加飾している。
【0021】
ルーフパネル17には、室内灯19が取り付けられている。室内灯19には、昼白色の直管蛍光灯とブラックライトを照射する直管蛍光灯とが内蔵されている。
【0022】
なお、室内灯19の光源には、直管蛍光灯以外にも、LED性のランプ等を用いることができる。また、光源の数も必要に応じて複数取り付けられる。即ち、光源の種類、数量、色彩等は、目的に応じて任意に設定することができる。次図において加飾部30を詳細に説明する。
【0023】
図2及び
図3に示されるように、加飾部30は、インストルメントパネル25の表面25aに設けられ第1の模様31aが付されているシート状の第1加飾層31と、この第1加飾層31の上面31bに配置され蓄光性を有する蓄光材32と、これらの第1加飾層31及び蓄光材32の上面に貼り付けられていると共に蛍光模様33aが付されている第2加飾層33と、この第2加飾層33の上面に貼り付けられ第2加飾層33を保護する保護層34とからなる。
【0024】
第1加飾層31の構成の一例としては、粘着性を有するシートに第1の模様31aの印刷されたシートが貼り付けられることにより、複数のシートが一体化された構成を挙げることができる。粘着性を有するシートとしては、ポリビニルブチラール(PVB)性のシートを用いることができる。模様の印刷は、インクジェット式のプリンタによって行うことができる。第1加飾層31が複数のシートによって形成される場合には、そのうちの少なくとも1枚のシートに第1の模様31aが付されていればよい。一方、第1加飾層31が1枚のシートにより構成される場合には、このシートに第1の模様31aが付されていることが必須である。第2加飾層33についても、第1加飾層31と同様の構成を採用することができる。
【0025】
第1の模様31aは、自然光によって視認可能な塗料を用いて描かれている。この第1の模様31aは、白色灯の下において視認することができる。第1の模様31aを描くための塗料は、蛍光塗料ではなく、蓄光性も有しない。
【0026】
蓄光材32は、第2の模様の形状に形成されている。即ち、第2の模様は、蓄光材32の形状である。以下、適宜蓄光材32を「第2の模様32」という。図においては、説明のために第1加飾層31及び第2加飾層33が通常よりも厚く示されているが、通常、蓄光材32は、第1加飾層31及び第2加飾層33に比べて厚みのある部材である。このため、蓄光材32を挟み込むことにより、模様に立体感を出すことができる。例えば、蓄光材32の厚みを部位によって異ならせ、3次元的な形状にすることにより、高い意匠性を得ることができる。また、保護層34の有無に拘わらず、蓄光材32を保護することができる。具体的には、蓄光材32を動物の形状や花の形状に形成することができる。
【0027】
蛍光模様33aは、蓄光性を有さない蛍光塗料を用いて描かれている。蛍光模様33aは、自然光の下や白色灯の下においてほとんど視認することができない。
【0028】
加飾部30は、第1の模様31aが付されている第1加飾層31をインストルメントパネル25の表面25a上に形成し、この第1加飾層31の上面に蓄光材32を配置し、これらの第1加飾層31及び蓄光材32の上面から第2加飾層33を被せ、この第2加飾層33の上面に保護層34を配置することにより、形成されている。
【0029】
なお、第1加飾層31や第2加飾層33及び保護層34には、上述の素材や構成の他にも、目的に応じて任意の素材や構成を採用することができる。
【0030】
また、本実施例においては、発明の理解のために、第1の模様31a、第2の模様(蓄光材32)及び蛍光模様33aが重ならないように示されている。この点、それぞれの模様が加飾部30を正面から見た状態において、重なるように配置されていてもよい。このような加飾部30の作用について、
図4を参照して説明する。
【0031】
図4(a)及び
図1を参照して、昼間は、自然光が車室11内に入り込む。この状態において、室内灯19に内蔵されているブラックライト19aを消灯していると、第1の模様31aのみを視認することができる。自然光は、白色灯に置き換えることもできる。即ち、夜間において、白色灯のみを点灯した場合にも、第1の模様31aのみを視認することができる。
【0032】
図4(b)及び
図1を参照して、夜間は、車室内に自然光が入り込まない。この状態において、ブラックライト19aを点灯すると、第2の模様32及び蛍光模様33aを視認することができる。このとき、第1の模様31aは、視認できない。
【0033】
図4(c)及び
図1を参照して、
図4(b)の状態からブラックライト19aを消灯し、しばらくすると、第2の模様32のみを視認することができる。第2の模様32は、ブラックライト19aが照射されていた際に蓄えたエネルギが消滅するまで、発光している。このとき、第1の模様31a及び第2の模様32は、視認できない。
【0034】
仮に、自然光が車室11内に入り込んでいる状態(又は白色灯を点灯させている状態)において、ブラックライト19aを点灯すると、自然光及びブラックライトのエネルギの強さによって、見え方が異なる。即ち、自然光のエネルギが相対的に高い場合には、第1の模様31aがより目立つ。一方、ブラックライトのエネルギが相対的に高い場合には、第2の模様32及び蛍光模様33aが目立つ。
【0035】
また、夜になったばかりの状態において、ブラックライト19aを消灯していることが考えられる。この場合には、昼間に蓄えた太陽光のエネルギにより、第2の模様32のみを視認することができる。
【0036】
本発明によれば、少なくとも、第1の模様31aのみが視認可能な状態、第2及び蛍光模様32,33aが視認可能な状態、並びに、第2の模様32のみが視認可能な状態を創出することができる。様々な模様を創出することができ、高い意匠性を確保することができる。
【0037】
さらに、白色灯とブラックライト19aとを同時に照射することにより、第1〜蛍光模様31a,32,33aの全てを視認可能な状態を創出することもできる。このとき、白色灯の光又はブラックライトの光を調光することにより、より第1の模様31aを目立たせることや、より第2及び蛍光模様32,33aを目立たせることができる。このような加飾部30を有する加飾構造の使用例を次図以降において説明する。
【0038】
図5に示されるように、車両10には、車外の明るさを検出する照度センサ41と、車両の速度を検出する車速センサ42と、これらの照度センサ41及び車速センサ42の検出信号を受信すると共にこの検出信号に基づきブラックライト19aの照度を調整する制御部43とが設けられている。
【0039】
図6も合わせて参照し、制御部43には、予め、マップ43aがインプットされている。制御部43は、このマップ43aに基づき、速度に応じたブラックライト19aの照度を決定する。ブラックライト19aの照度は、光源が複数設けられている場合には、点灯させるブラックライト19aの数により、調整することができる。これらの作用を次図も参照して詳細に説明する。
【0040】
図7も合わせて参照し、ステップS01では、照度センサ41は、夜であるか否かを検出する。具体的には、車外の照度が所定の値よりも低いか否かによって、夜であるか否かを検出する。車外の照度が所定の値よりも低い場合には、照度センサ41は、夜であることを検出する。車外の照度が所定の値以上の場合には、照度センサ41は、夜ではないことを検出する。照度センサ41は、この情報を電気信号によって制御部43に伝達する。
【0041】
夜である場合には、ステップS02に進む。この場合、車速センサ42は、車両の車速を検出する。検出した速度は、電気信号によって制御部43に伝達される。ステップS03に進み、制御部43は、車速に応じて照度を変更する。一方、ステップS01において、夜でないと判断された場合には、終了する。
【0042】
夜であると判断された場合には、速度が速くなるにつれ、ブラックライト19aの照度が高められる。夜間は、車外が見え難く、運転者は速度を高める傾向がある。速度が速くなるにつれ、ブラックライト19aの照度を高め、模様がより目立つようにする。これにより、運転者は、速度が速くなっていることを感じることができる。即ち、速度が速くなっている場合に、運転者に対して視覚的に注意喚起をすることができる。高い意匠性を確保しつつ、運転者に注意を喚起することができ、有益である。
【実施例2】
【0043】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図8には、実施例2の車両に採用される加飾部の断面構成が示され、上記
図3に対応している。実施例1の場合に比べて、第2の模様32の配置されている部位が変更されている。その他の基本的な構成については、実施例1と同様である。
【0044】
図8に示されるように、インストルメントパネル25の表面25a上には、加飾部30Aが形成されている。加飾部30Aは、自然光によって視認可能な第1の模様が付された、第1加飾層31が形成され、この第1加飾層31の上面には、蓄光性を有さない蛍光塗料を用いて蛍光模様が付された、第2加飾層33が形成され、この第2加飾層33には、蓄光性を有すると共に第2の模様に形取られた蓄光材32が配置され、これらの第2加飾層33及び蓄光材32の上面に保護層34が配置されている。このような構成を採用した場合にも、本発明所定の効果を得ることができる。
【0045】
尚、本発明の加飾構造は、加飾部がインストルメントパネルの表面に形成されている例を説明したが、加飾部は、グローブボックスの中などに形成されていてもよい。即ち、意匠面とは、通常の使用時に乗員の視認可能な部位の全てを含む。加えて、加飾部は、インストルメントパネルの他、ルーフパネル、床パネル、各ドア等任意の場所に形成することができる。即ち、車室内の意匠面であれば、樹脂部品以外の部位であっても、加飾部を任意の場所に形成することができる。
【0046】
さらに、車両の鍵が解錠された後、所定の時間だけブラックライトを点灯させ、第2及び蛍光模様を浮かび上がらせることもできる。即ち、いわゆるウェルカムランプの代わりに、ブラックライトによって模様を浮かび上がらせることができる。この場合には、模様が浮かび上がることにより、車室内の意匠性を高めることができる。