(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072282
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】垂直軸タービン
(51)【国際特許分類】
F03D 80/00 20160101AFI20170123BHJP
F03D 3/06 20060101ALI20170123BHJP
F03D 7/04 20060101ALI20170123BHJP
F03B 3/14 20060101ALI20170123BHJP
F03B 7/00 20060101ALI20170123BHJP
F03B 13/26 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
F03D80/00
F03D3/06 G
F03D7/04 E
F03D7/04 L
F03B3/14 Z
F03B7/00
F03B13/26
【請求項の数】27
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-543464(P2015-543464)
(86)(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公表番号】特表2016-502017(P2016-502017A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2013074704
(87)【国際公開番号】WO2014080030
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2016年4月28日
(31)【優先権主張番号】1221260.1
(32)【優先日】2012年11月26日
(33)【優先権主張国】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515140635
【氏名又は名称】スーパーヴァウト リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィニー、ジェイムズ フレデリック カーナク
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/130797(WO,A1)
【文献】
米国特許第04383801(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/00
F03B 3/14
F03B 7/00
F03B 13/26
F03D 3/06
F03D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン(1)であって、回転軸と、タービンの前記回転軸から距離をあけて配置されかつ当該軸まわりの回転のために装着された少なくとも1つのブレード(2)と、を有するタービンロータを備え、ブレードは、前記回転軸に実質的に平行であり、使用時においてタービンロータに入射する流体と係合する少なくとも1つの長手表面を有し、ブレードは、第1のブレード前部(7)が第2のブレード後部(8)に枢動可能に接続された二部式のブレードであり、タービンは、ブレードのピッチ及びキャンバーを制御する能動的ピッチ制御手段及び能動的キャンバー制御手段をさらに備え、能動的ピッチ制御手段は、第1のブレード前部に枢軸(24)を備え、ピッチ枢軸は、第1の物理的構成要素(10)によって画定されるピッチ進路に沿って案内可能であり、能動的キャンバー制御手段は、第2のブレード後部にキャンバー枢軸(27)を備え、キャンバー枢軸は、第2の物理的構成要素(11)によって画定されるある定められたキャンバー進路に沿って案内可能であるタービン。
【請求項2】
ピッチ進路及びキャンバー進路はそれぞれ実質的に円形である、請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
ピッチ進路及び/またはキャンバー進路はそれぞれ実質的に円形の進路を定め、それら円形進路の中心が相互にかつタービンの回転軸からオフセットされている、請求項2に記載のタービン。
【請求項4】
ピッチ進路は、タービン回転軸からオフセットされた軸まわりに回転するピッチベアリングに結合されたピッチロッド(39)の末端によって画定され、キャンバー進路は、タービン回転軸からオフセットされた軸まわりに回転するキャンバーベアリングに結合されたキャンバーロッド(39)の末端によって画定されており、ピッチロッド及びキャンバーロッドの末端がピッチ枢軸及びキャンバー枢軸にそれぞれ枢動可能に連結されている、請求項1から3のいずれかに記載のタービン。
【請求項5】
タービンブレード(2)のピッチ枢軸及びキャンバー枢軸(42)は、別個のロッド(39)に連結され、それぞれのロッドが別個のベアリング(36、37)に連結されている、請求項4に記載のタービン。
【請求項6】
少なくとも2つのタービンブレード(2)を備え、タービンブレードごとのピッチ枢軸及びキャンバー枢軸(24、27)がそれぞれ別個のロッドに連結され、それぞれのロッドが別個のベアリング(36、37)に連結されている、請求項5に記載のタービン。
【請求項7】
ピッチ進路は、第1のピッチガイドレール(10)によって画定され、キャンバー進路は、第2のキャンバーガイドレール(11)によって画定される、請求項1から3のいずれかに記載のタービン。
【請求項8】
少なくとも2つのブレード(2)を備え、少なくとも2つのブレードのピッチ枢軸及びキャンバー枢軸(24、27)がそれぞれ単一のピッチガイドレール(10)及び単一のキャンバーガイドレール(11)にそれぞれ連結されている、請求項7に記載のタービン。
【請求項9】
ピッチ進路またはキャンバー進路の一方は、タービン回転軸からオフセットされた軸まわりに回転するベアリングに結合されたロッドの末端によって画定され、ロッドの末端がピッチ枢軸またはキャンバー枢軸のいずれかに枢動可能に連結されており、ピッチ進路またはキャンバー進路の他方は、ピッチガイドレールまたはキャンバーガイドレールによって画定される、請求項1から3のいずれかに記載のタービン。
【請求項10】
使用時において、ピッチベアリング及び/またはキャンバーベアリング(36、37)、または、ピッチガイドレール及び/またはキャンバーガイドレール(10、11)の位置が固定されている、請求項9に記載のタービン。
【請求項11】
ピッチベアリング及び/またはキャンバーベアリング(36、37)、または、ピッチガイドレール及び/またはキャンバーガイドレール(10、11)の位置が制御可能に調整可能である、請求項9に記載のタービン。
【請求項12】
ピッチベアリング及び/またはキャンバーベアリング(36、37)、または、ピッチガイドレール及び/またはキャンバーガイドレール(10、11)の位置がリニアアクチュエータによって制御される、請求項11に記載のタービン。
【請求項13】
一軸または二軸において調整が可能である、請求項11または12に記載のタービン。
【請求項14】
各ブレード部分(2)は、ブレード長手軸を実質的に横断する第1(12、16)及び第2(13、17)の対向横断表面を含み、ブレード前部(7)またはブレード後部(8)の一方は、ブレード前部またはブレード後部の第1及び第2の横断表面からそれぞれ突出する第1(18)及び第2(20)の枢軸ロッドを含み、第1の枢軸ロッドは、ピッチ枢軸またはキャンバー枢軸(24、27)の一方を形成するようブレード前部またはブレード後部いずれか一方に連結され、第2の枢軸ロッドは、ピッチガイドレールまたはキャンバーガイドレール(10、11)の一方に従動するよう配設されたフォロア機構(23、30)、または、ピッチベアリングまたはキャンバーベアリングの一方に接続されたロッド(28、29)のいずれかに連結されている、請求項1から13のいずれかに記載のタービン。
【請求項15】
第1の枢軸ロッド(18)は、ブレード前部(7)またはブレード後部(8)の一方から突出し、ブレード前部またはブレード後部の他方に連結されている、請求項14に記載のタービン。
【請求項16】
ブレード前部(7)またはブレード後部(8)の第2の一方は、ピッチガイドレールまたはキャンバーガイドレール(10、11)の一方に従動するよう配設されたフォロア機構(23、30)、または、ピッチベアリングまたはキャンバーベアリング(24、27)の一方に接続されたロッド(28、29)のいずれかに枢動可能に連結されている、請求項1から15のいずれかに記載のタービン。
【請求項17】
ブレード前部(7)またはブレード後部(8)の一方は、第1の枢軸ロッドによって、ピッチガイドレールまたはキャンバーガイドレール(10、11)のいずれか一方に、または、ピッチベアリングまたはキャンバーベアリング(36、37)の一方に連結され、ブレード前部及びブレード後部の第2の一方は、ピッチガイドレールまたはキャンバーガイドレールの他方に従動するよう配設されたフォロア機構(23、30)、または、ピッチベアリングまたはキャンバーベアリングの一方に接続されたロッド(28、29)のいずれかに枢動可能に連結されている、請求項14から16のいずれかに記載のタービン。
【請求項18】
第2の枢軸ロッド(20)は、ピッチガイドレールまたはキャンバーガイドレールの他方に従動するよう配設されたフォロア機構(23、30)またはロッド(28、29)に枢動可能に連結され、突出する枢軸ロッドは、キャンバー枢軸またはピッチ枢軸(24、27)の一方を形成する、請求項17に記載のタービン。
【請求項19】
第1及び第2の枢軸ロッド(18、20)は、ブレード後部(8)から突出し、第1の枢軸ロッドは、ピッチ枢軸(24)を形成するようブレード前部(7)に接続されている、請求項14から18のいずれかに記載のタービン。
【請求項20】
第2の枢軸ロッドは、キャンバー枢軸を形成する、請求項18または19に記載のタービン。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載の垂直軸風力タービン。
【請求項22】
第1横断表面(12、16)及び第2横断表面(13、17)は、それぞれのブレード(2)部分の上面及び下面である、請求項14から20のいずれかに記載のタービン。
【請求項23】
ピッチ進路及びキャンバー進路は、少なくとも1つのブレード(2)の下方に配設されている、請求項22に記載のタービン。
【請求項24】
請求項1から20のいずれかに記載の垂直軸波力または潮力タービン。
【請求項25】
第1横断表面(12、16)及び第2横断表面(13、17)は、それぞれのブレード部分(2)の下面及び上面である、請求項14から20のいずれかに記載の垂直軸波力または潮力タービン。
【請求項26】
ピッチ進路及びキャンバー進路は、少なくとも1つのブレード(2)の上方に配設されている、請求項22に記載のタービン。
【請求項27】
請求項1から20のいずれかに記載のサイクロジャイロタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンとして使用されるタービンに関する。本発明は、回転軸をもちそのタービン回転軸から距離をあけて配置されたブレードを含むタービンロータを有し、ブレード長手軸がロータ回転軸に実質的に平行であるタービンに関する。本発明の実施の形態は、垂直軸風力タービンの一部として使用される場合にとりわけ有利であるが、本発明は、潮力タービンなどの水力駆動タービンにも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
ダリウス型の垂直軸風水力タービンはよく知られている(例えば、US2011/0006526を参照)。こうしたタービンはいくつかの知られた欠点を有し、これには低効率、起動トルクの不足、及び過剰な振動が含まれる。これら欠点のいくらかを克服するために、いくつかのタービン構成が提案されており、それらはタービンのブレードのピッチを調整するための機構を有する。ダリウス型タービンは、期待されるほどには効率的でも有効でもなかった。それは、実用の設計及び現実の風条件(これらが整合することは疑わしい)により課される物理的な負荷及び制約のためであると考えられる。さらに、ダリウス型タービンを自己起動させることは困難である。
【0003】
ダリウス型または垂直軸の風力タービンの性能を向上するためのいくつかの構成が提案されている。
【0004】
迎角とは、流入する流体の方向とタービンブレード等の翼型の基準線との角度である。風力タービンブレード等の翼型のピッチ角またはピッチとは、風力タービンの基部などの固定された基準、または地平線に対し翼型がとる角度である。方向が変化しない風の中にある風力タービンについては、ピッチは迎角の大きさである。ピッチは、あるブレードの根本に与えられる角回転として定義されてもよい。翼型のピッチは、流入する流体(例えば、風力タービンへの風)によって翼型に作用するトルクに影響し、故に、翼型ブレードを含むタービンからの出力に影響するものと認められている。垂直軸風力タービンのブレードのピッチを制御するための種々の構成が知られている。US2011/0006526A1、WO2011/130797A1、WO2011/144830A1、FR2924182A1、US3382931A1、及びWO201/0305569A1に開示されるような構成は、カム構成を使用して垂直軸風力タービンのブレードのピッチを制御することを指向する。そのカム構成によると、中心に配置されたカムが設けられ、ブレードに連結されたカムフォロアがカムに従動し、それによってブレードを、それがタービン回転軸まわりに移動するにつれて枢動する。
【0005】
WO2011/130797は、シャフトまわりに配置されるとともに各ブレードの後端にリンクまたはラインを介して連結されたリングまたはガイドの形をとり、タービンロータの回転中に各ブレードのピッチを制御するピッチ制御手段をもつ風力タービンを開示する。リングまたはガイドは、それ自身がタービンの回転とともに移動することができるように装着されている。リングまたはガイドの移動を許容する機構は、ブレードの位置が風の強さ及び方向によって部分的に決定されるようにして、それが少なくとも部分的な自己調整をもたらすという受動的な制御システムを生成する。この構成は製作するのに複雑であり、故障しやすい。また、WO2011/130797のような受動的な制御システムは、ブレードのキャンバーの制御を提供することができない。
【0006】
FR2924182は、ピッチを制御するカム構成をもつ風力タービンを開示する。中心の不規則なカムトラックがタービンロータ回転軸まわりに設けられ、複数のカムフォロアがアームまたはリンクによって複数のブレードに接続されている。複数のカムフォロアへの一連のリンクをもつ単一の中心不規則カムトラックという構成は、振動する複雑な構成をもたらし、これは多様な風況に合わせて調整することが非常に難しい。中心カムフォロアをそれぞれのブレードに接続する制御ロッドまたはリンクが示されており、それらはそれぞれの支持アームに平行である。しかし、それらロッドまたはリンクは使用時に、アームに平行でない角度にブレードを引っ張らなければならないであろう。これにより、高い摩擦力や振動が生じるだろう。
【0007】
US3382931、US2011/0006526、WO2011/144830、及びUS2011/0305569はいずれも、ダリウスによって提案された原型の構成に類似する構成を開示する。ここでピッチ制御は、タービンロータ回転軸に対し偏心した場所まわりに回転するよう中心のピッチ制御ユニットに接続されたリンクまたはロッドを設けることによって実現されている。こうした構成もまた、過剰な振動とそれによる損失を被る。
【発明の概要】
【0008】
本願発明者は、剛体の複数ロッドまたはリンクが共通の中心ハブまたは枢軸に接続されているという構成が変形及び振動をもたらすのは、タービンの両側がそれぞれ非常に異なる風条件にさらされることで両側のリンクまたはロッドに異なる力が作用してアンバランスが生じるという事実に起因することを認識した。垂直軸風力タービン用のピッチ制御デバイスに商業的成功を収めたものはない。多くの設計例があったが、その入手可能な試験データの中に有望なものはない。振動や摩擦、低性能という課題があり、既存の知られた構成はこれを充分に解決していない。
【0009】
垂直軸風力タービンの毎回の回転の間におけるタービンの迎角の大きな変化(及び、その結果生じ、疲労及びタービン性能低下の原因となる動的荷重の顕著な変動)への答えは可変のピッチであるようにみえるが、成功した設計は見出されていない。したがって、公知の垂直軸タービンはそうであったかもしれないほど強力ではなく、ピッチ制御を有しない現在の垂直軸の設計には疲労による影響がある。
【0010】
US3382931、US2011/0006526、FR2924182、WO2011/130797、及びUS2011/0305569は、いくつかのブレードのブレードピッチ角が、タービンブレード回転軸からオフセットされた軸まわりに回転する中心カムトラックまたは単一の中心軸受に各ブレードを接続するロッドによって制御される風力タービンを開示する。上述のように、単一の中心トラックまたは軸受からいくつかのブレードへと延出するロッドというこの構成が貧弱な性能をもたらすことは、本願発明者が初めて認識したものである。この貧弱な性能の理由は完全には明らかでないが、次の通りであると考えられる。ブレード及びロッドが実際には完全な剛体ではないので、ブレードが回転するとき回転位置の差異による力の差異によってブレード間の距離がわずかに変わることが避けられないためであろう。これら差異は振動を引き起こす。回転が速いほど、及び/または、風速または流速が速いほど、これらの効果は、回転中の異なる位置間の力の差異が大きくなるので強くなる。
【0011】
タービンブレード等の翼型のキャンバーは、実効的に翼型の外形または湾曲である。翼型のキャンバーは、キャンバーライン、すなわち翼型の上面と下面との中間となる曲線によって定義されてもよい。US2010/0096854A1は、能動的に制御することができる垂直軸風力タービンを開示する。各ブレードが二部式であり、各ブレードのピッチ及びキャンバーが、ブレード内またはブレード近傍に配設され各ブレードの二部分を制御可能に移動させることでブレードのピッチ及びキャンバーを変化させるモータによって制御される。この構成は各モータを制御するために複雑なデータ処理を要する。また、ブレード部分をそれらの回転中に動かすのに必要な力は大きいので、モータは強力でなければならず、正確に制御するのは難しい。
【0012】
また、US2010/0054936及びDE202010002046Uは、個々の風力タービンブレードのキャンバー(及び/またはピッチ)を、タービンブレード内または近傍に配置されたコンピュータ制御されたアクチュエータを使用して制御する構成を開示する。US2010/0096854について上で論じたように、使用時にブレードは素早く動き、大きな力にさらされる。したがって、ブレードを制御するのに適するアクチュエータまたはモータは、動いているブレードの迎角またはピッチ、及び、外形またはキャンバーを変化させるよう非常に強い力を提供することができなければならない。そのため、必要なアクチュエータまたはモータは高価であり、故障しやすい。さらに、ブレードまたはその近傍にアクチュエータを配置することによって、アクチュエータのメンテナンスまたは交換がしにくくなり、手間がかかり、高価となる。
【0013】
WO2004/079187は、受動的なキャンバー案内をもつ風力タービンを開示する。これは、キャンバーの正確な制御を可能としないので、ブレードそれぞれの回転中の異なる位置でのキャンバー特性の最適化も可能としない。
【0014】
本発明は、これから言及される請求項1に規定されるタービンを提供する。本発明の実施の形態の好ましい特徴もまたこれから言及される従属請求項に記述される。
【0015】
本願発明者は、US2010/0096854のもののようなシステムに付随する複雑で困難な制御という課題への解決策が、精密で故障しがちな電子制御ではなく単純でロバストな物理的または機械的制御を使用してキャンバー及びピッチを制御するという直感に反した手段によって実現可能であることを初めて認識した。本発明者は、物理的または機械的なカム型の制御構成がタービンブレードのピッチとキャンバーの両方を効果的に制御するために使用可能であり、こうした制御が垂直軸風力タービンの効率を顕著に改善できることを初めて認識した。
【0016】
本発明の実施の形態は、ピッチ枢軸及びキャンバー枢軸がそれぞれ第1及び第2の物理的構成要素により画定され設定される進路をたどることを保証することによって、ピッチとキャンバーの両方の能動制御を提供する。ピッチ進路及びキャンバー進路をそれぞれ画定する第1物理的構成要素及び第2物理的構成要素は分離された構成要素であってもよい。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態において使用される解決策は、ブレードごとの制御を分離するが、ピッチ枢軸進路を画定する物理的構成要素を設けることによって正確な位置決めを保持するというものである。好ましくは、複数の独立したオフセット偏心ベアリングがブレードごとに設けられ、または、そのオフセットベアリングがオフセットガイドレールに置き換えられる。オフセットガイドレールが使用される場合には、ブレードごとの案内機構がブレードの回転中にガイドに沿って分離状態をとりうるので、ブレードごとに複数の分離されたガイドレールを有する必要はもはやない。
【0018】
振動を低減し層流を改善するために、ブレードは自身のキャンバーを変更可能でなければならない。第2の物理的構成要素は、それを実現するとともに回転中に層流を維持するための、ある定められたキャンバー枢軸進路を提供する。好ましくは、一組のオフセット偏心ベアリングまたはガイドレールが第2の物理的進路を提供する。
【0019】
好ましくは、ピッチ進路及びキャンバー進路はそれぞれ実質的に円形である。本発明者は、これがタービンの構造を大幅に単純化するとともに効率及び実効性を顕著に損なうことなくより容易に制御可能とすることを認識した。FR2924182のもののような不規則な構成は、最大の効率を得るために正確に調節されるのであるが、これは別の不規則な構成に容易に調整され得ない。また、不規則な構成を風向に合わせるための回転するヨーイング機構も必要である。
【0020】
好ましくは、ピッチ及びキャンバーのベアリングまたはピッチ及びキャンバーのガイドレールの位置は、制御可能に調整可能である。
【0021】
好ましくは、ピッチ及びキャンバーのベアリングまたはピッチ及びキャンバーのガイドレールの位置は、リニアアクチュエータによって制御される。オフセット偏心ベアリングまたはガイドがリニアアクチュエータ上に配置される場合、ブレードのキャンバー及びピッチを回転速度及び風速に合わせて容易に変更することができる。もしオフセットが反転されると、それはブレードのストールを誘起するために使用され、タービンを安全に停止することができる。
【0022】
オフセット偏心ベアリングまたはガイドレールがそれらを二軸に移動することができるリニアアクチュエータに装着される場合、これらはベアリングまたはガイドのオフセットを任意の有用な位置に動かすことによってヨーイング機構として動作することができる。
【0023】
本発明の実施の形態が下記の添付の図面を参照して限定的でない例として以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】3つのタービンブレードと、一方のガイドレールがブレードのピッチを制御し一方のガイドレールがブレードのキャンバーを制御する2つのオフセットガイドレールと、を有する本発明の第1の実施の形態を示す。
【
図2】
図1の実施の形態の中心垂直軸とブレード支持アームを示す。
【
図3】
図1の実施の形態のためのブレード及びガイドレールの構造を示す。
【
図6】より高い仰角からの
図5に対応する別の図である。
【
図7】あるブレードの制御、及びそのブレードが回転するときのピッチとキャンバーの制御の概略図である。
【
図9】
図1から
図8の実施の形態のためのヨーイング機構を示す。
【
図10】ガイドレールを取り外した状態での
図9のヨーイング機構の別の図である。
【
図11】リニアアクチュエータがピッチガイドレール及びキャンバーガイドレールの一軸における移動を許容するオフセットガイドレール固定部の詳細図である。
【
図13】ヨーベーン機構を要しないガイドレールリニアアクチュエータの別の構成である。
【
図14】
図13の実施の形態のリニアアクチュエータの配置を示す上面図である。
【
図16】3つの調整可能なブレードと6つのオフセット偏心ベアリングを有する本発明の第2の実施の形態を示す。
【
図17】
図16の実施の形態のブレード、偏心ベアリング、及びプッシュロッドの構造を示す。
【
図18】
図16の実施の形態のブレード、偏心ベアリング、及びプッシュロッドの底部拡大図である。
【
図19】
図16の実施の形態のブレード、偏心ベアリング、及びプッシュロッドの側部拡大図である。
【
図20】
図16の実施の形態におけるヨーイング機構への偏心ベアリングの固定部を示す。
【
図22】
図16の実施の形態の偏心ベアリング固定部の配置を示す。
【
図23】リニアアクチュエータがピッチ偏心ベアリング及びキャンバー偏心ベアリングの一軸における移動を許容する
図16の実施の形態の偏心ベアリング固定部を示す。
【
図24】ヨーベーン機構を要しない別の偏心ベアリング固定構成である。
【
図25】潮力タービンとして使用される本発明の別の実施の形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の説明においては便宜及び参考のみのためにある種の用語が使用されるが、これは限定するものではない。例えば、「頂」、「底」、「下」、「上」との語は参照される図面における方向に言及する。上記用語は、具体的に言及した語、それらの派生、及び、同様の趣旨または機能的に同一と当業者に理解される語を含む。
【0026】
図1及び
図2を参照するに、垂直軸風力タービン1は、3つのタービンブレード2を備え、これらは垂直軸を定める中心垂直ロッド3まわりに回転する。この垂直ロッドは、アーム4の対によってタービンブレードに連結されている。アーム4の対は、各タービンブレード2の頂部及び底部に接続する。水平支持アーム4は、中心垂直ロッド3に剛体的に接続されており、中心垂直ロッド3は、基部6にて支持部5まわりに回転することができる。中心垂直ロッド3、水平支持アーム4、及びブレード2はともに、垂直軸風力タービン1のロータを形成する。
【0027】
各ブレードは、2つの部分を有する(
図5参照)。すなわち、ブレード前部7とブレード後部8である。
【0028】
各ブレードの底部9は、一対のガイドレール10、11に連結されている。これらガイドレールはそれら自身が風力タービン1の基部6によって支持されている。あるいは、そうでなければ、垂直軸風力タービンの底部に支持され保持されている。
【0029】
図4、
図5、及び
図6を参照するに、第1のブレード前部7は、ブレード前部の頂端12及び底端13から突出するロッド65を含み、ベアリング構成14によって水平ブレード支持アームに連結されている。第2のブレード後部8は、
図4に示す方向Aにブレード前部7に対し回転することができるように配設されている。ロッド15は、ブレード後部8の前方を頂部16から底部17へと貫通するとともに当該前方に連結されている。このロッド15の上端18は、ベアリング19を介して前方またはブレード前部7に枢動可能に連結されている。また、その底端20にて、上端に関し説明したのと同様にしてベアリング21を介してブレード前部7へと、かつ従動ベアリング24を介してカムフォロア構成23へと、枢動可能に連結されている。カムフォロア構成23は、ピッチ制御のガイドレールまたはカムトラック10に連結されこれをたどる。カムフォロア23は、上記の中心ベアリング24を備え、これに4つの回転ベアリング25が取り付けられている。4つのベアリングは、円形のプレート状要素を備えるガイドレール10の周囲に配置されている。この構成は、ピッチまたはブレード前部7の角度が水平支持アーム4の端部とピッチ制御ガイドレール10の対応部分との半径方向距離に応じて変化することを意味する。
【0030】
U字形アーム29が接続アーム28に剛体的に接続されている。接続アーム28は、ロッド15の底端20に剛体的に接続されている。このアーム構成28、29は、ロッド15の底端20をベアリング27を介して、キャンバー制御のガイドレールまたはカムトラック11に係合する第2カムフォロア30に枢動可能に連結するために使用されている。このキャンバーカムフォロアがピッチカムフォロアと同様であるのは、ピッチカムフォロア23について上述したように4つのベアリング26が取り付けられた上記の単一中心ベアリング27を備える点である。4つのベアリング26は、キャンバーガイドレールまたはカムトラックを画定する円形のプレート状ガイドレール11の周囲に配置されている。カムフォロア30は、上記の中心ベアリング27によってアーム構成28、29の底部に装着されている。アーム28、29の形は、ガイドレール10、11が交差する空間がありかつピッチカムフォロア23とキャンバーカムフォロア30が互いに干渉しないように定められている。
【0031】
キャンバーガイドレール11及びこれとキャンバー従動ベアリング30の相互作用は、ブレード前部7に対するブレード後部8の枢動の制御をもたらし、それによりブレード2のキャンバーを制御可能に変化させる。
【0032】
図9に示されるように、ガイドレール10、11及びブレード2は、入射する風の方向が変わるにつれて当該機構を回転させるヨーイング機構31上に配設されている。ヨーイング機構31は、タービンの基部に回転可能に連結された円形プレート32を備える。プレート32は、入射する風に当該ベーンの向きを合わせるためのヨーベーン33を有する。
図10からわかるように、その上にガイドレールを配置するプレート上に固定部34が配置されている。
【0033】
本発明の別の実施の形態においては、
図11から
図15に示されるように、ガイドレール固定部は、ピッチ及びキャンバーのガイドレール10、11を制御可能に移動させることができるリニアアクチュエータ35上に位置する。リニアアクチュエータ35は、ピッチレール及びキャンバーレールを制御可能に移動させ、それによりピッチ及びキャンバーを異なる諸条件に調整するために使用されてもよい。回転速度が見かけの風を大きくし、それ故にピッチを変化させる必要があるので、リニアアクチュエータは、速度を最適化するために使用されてもよく、そうしてキャンバーが風速に最適化されてもよい。緩風条件においてはこれが回転速度を最大化することでありうる。
【0034】
図13に示される実施の形態は、風向ベーン60及び風速計61を含む。これらによって検知される風向及び風速がリニアアクチュエータ35を制御するために使用される。
【0035】
風力タービンまたは風力発電機は最適な運転範囲を有するので、強風条件においては速度を低減しなければならないことがありうる。これをピッチ及び/またはキャンバーを変化させることによって実現することができる。
【0036】
極端な風条件においては、ピッチ枢軸の半径の反対側にある場所にピッチ及びキャンバーのオフセットを動かすことによって、タービンを停止させまたは失速させることも可能である。
【0037】
図16、
図17、
図18、
図19に示される本発明の別の実施の形態においては、円形のピッチ及びキャンバーのガイドレールが、ブレード2ごとの個別かつ分離されたピッチ及びキャンバーの制御構成に置き換えられている。それぞれの制御は、枢軸ロッド構造に接続されたオフセット偏心ベアリング36及びプッシュロッド39を備える。その構造の残りの部分は
図12及び
図15に関連して上述した構造と同様である。ある反復的なブレードの、ブレード前部7にはピッチ旋回点40、またはブレード後部8にはキャンバー旋回点41。垂直軸風力タービン1は、3つのタービンブレード2を備え、これらは垂直軸を定める中心垂直ロッド3まわりに回転する。この垂直ロッドは、各タービンブレード2の頂部及び底部に接続するアーム4の対によってタービンブレードに連結されている。水平支持アーム4は、中心支持ロッド3に剛体的に接続されており、中心支持ロッドは、その基部にて支持部まわりに回転することができる。中心支持ロッド、水平支持アーム、及びブレードはともに、垂直軸風力タービンのロータを形成する。
【0038】
図17、
図18、
図19を参照するに、ブレード前部7は、反復的なベアリング構成42によって頂端及び底端にて水平ブレード支持アーム4に連結されている。ブレード後部は、ブレード前部7に対し回転することができるように配設されている。
【0039】
ロッド43は、ブレード後部8の前方を頂部から底部へと貫通する。このロッド43の上端はベアリング(図示せず)を介して前方またはブレード前部に連結されるとともに、その底端にてベアリング44を介して前方またはブレード前部7へと連結されている。ロッド43の底部は、ロッド46及びベアリングを介してロッド39に連結されている。ロッド39は、ブレードのピッチを制御する偏心ベアリング36に剛体的に接続する。L字形アーム47は、ブレード後部のロッド43に、ブレード後部の尾部の方向に水平に剛体的に接続し、これはベアリングを介して、ブレードのキャンバーを制御する第2偏心ベアリング37のプッシュロッドに連結されている。
【0040】
図20、
図21、
図22を参照するに、偏心ベアリングは、入射する風の方向が変わるにつれて当該機構を回転させるヨーイング機構31上に配設されている。ヨーイング機構は、タービンの基部に回転可能に連結された円形プレート32を備える。プレートは、入射する風に当該ベーンの向きを合わせるためのヨーベーン33を有する。固定部34がプレート上に配置されその上に偏心ベアリングが位置する。
【0041】
図23を参照するに、本発明の別の実施の形態においては、偏心ベアリングは、ピッチ及びキャンバーの偏心ベアリングを一軸において制御可能に移動することができるリニアアクチュエータ35上に位置する。
【0042】
図24を参照するに、本発明の別の実施の形態においては、偏心ベアリングは、ピッチ及びキャンバーの偏心ベアリングを二軸において制御可能に移動することができるリニアアクチュエータ48上に位置しており、それにより回転するヨーベーン機構の必要性を置き換える。
【0043】
図25及び
図26を参照するに、浮遊式水力タービン49として適するように、ウォーターフロート50が垂直軸タービンに配設されている。ブレード頂部の接続ロッドが延長されており、それによって、頂部の水平支持アーム、制御ガイドレール、及びリニアアクチュエータが水に接触しない。それ以外のタービンの構造は
図1から
図23に示す実施の形態について説明したものと同じであるが、反転されまたは上下が逆である。
【0044】
本発明の実施の形態は、運動する任意の流体からエネルギーを取り出すのに好適である。適する流体及び環境は、運動する空気または風、及び潮流を含むが、これに限られない。
【0045】
図1から
図26を参照して上述した本発明の実施の形態はいずれも実質的に鉛直なタービンロータ回転軸を有する。しかしながら、本発明は、ロータ回転軸が鉛直でない状況における使用、例えば、回転軸が実質的に水平でありうるサイクロジャイロまたは浅水域潮流装置に、同様に適用可能である。当業者であれば、こうしたタービンの構造が
図1から
図26に関連して上述したものと同様でありうることを直ちに認識するであろう。