(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマーが、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、およびそれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の微小粒子。
前記ポリマーが、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の微小粒子。
前記追加的な殺生物剤が、イソプロツロン、テルブトリン、ジウロン、イルガロール、カルベンダジム、ジンクピリチオン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチアゾロン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の微小粒子。
【背景技術】
【0003】
ヨードプロピニルカルバメートは、防腐剤としてコーティング組成物に広く用いられている。特に、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(以下「IPBC」と称する)は、世界的な商業的成功を収めている。IPBCは、1975年12月2日にWilliam Singerに交付され、本特許出願の譲受人に譲渡された米国特許第3,923,870号に最初に開示され、特許請求された。
【0004】
IPBCは他の殺生物剤に優る多くの利点を提供するが、太陽光または他の紫外線源に曝されることによって始まるまたは促進されると報告される、視覚的に検出できる変色を生じやすい。光に関係するIPBC含有製品の変色は散発的にしか見出されず、数週間後に消えてしまうこともあるが、それはコーティング製造業者にとって大きな懸案事項である。元素として存在するヨウ素は黄色から茶色であり、三ヨウ化物アニオン(I
3-)が濃い帯黄茶色であるために、従来の研究者には、IPBCの光に関係する変色は、元素として存在するヨウ素または他のフリーラジカルの断片の形成に付随して起きると推測するものもいる。
【0005】
1981年6月30日にWilliam Singerらに交付され、本出願の譲受人に譲渡された米国特許第4,276,211号は、塗料組成物およびコーティング中のヨードアルキニルカルバメート殺真菌剤のための色安定化剤としてのエポキシドの使用を記載している。米国特許第4,276,211号の特許は、特にIPBC用の安定剤に関する教示に関して、参照によりその全体が本明細書に組込まれている。
【0006】
Long,Jr.に交付された米国特許第4,297,258号は、IPBCの黄変または変色を低減するためのエポキシ系酸掃去剤の使用を記載している。
【0007】
別の例として、Grueningに交付された米国特許第5,554,784号は、太陽光に曝されるコーティング組成物の変色または黄変を最小限にすると報告されるIPBCを調製する方法を記載している。
【0008】
従来の研究者には、紫外線吸収剤または光安定剤をIPBCに添加して変色を防止するまたは遅らせることを提案しているものもいる。例えば、Gaglaniらに交付され、本出願の譲受渡人に譲渡された米国特許第6,472,424B1号は、IPBCの安定剤としてのベンジリデンショウノウを記載している。他のIPBC安定剤に関する推奨については、いずれもGaglaniらに交付され、本出願人の譲受人に譲渡された米国特許第6,353,021号および米国特許第5,938,825号も参照されたい。米国特許第6,472,424B1号、第6,353,0212号、および第5,938,825号は、特にIPBC用の安定剤についての教示に関して、参照によりその全体が本明細書に組込まれている。
【0009】
他の研究者は、様々な固体担体材料中または固体担体材料上にIPBCを吸収させる、含浸させる、または封入することを支持している。例えば、公開されたWIPO特許出願WO2010/147820A1は、金属酸化物、例えば酸化亜鉛、二酸化チタン、二酸化セリウムなどから選択される安定なサブミクロン担体粒子上にコーティングされたまたは吸着された殺生物剤を含む、安定化された殺生物分散体を記載している。別の例として、Baumらに交付された米国特許第7,429,392B2号は、担体材料中の固体粒子に結合した殺生物剤を含有し、それが遅延方式で放出されることを特徴とするコーティング材料を記載している。米国特許第7,429,392B2号の特許は、特に、固体粒子から遅延方式で放出される殺生物剤についての教示に関して、参照によりその全体が本明細書に組込まれている。
【0010】
公開された特許出願WO2010/133548A2は、溶媒としての酢酸エチルによるエマルジョン液滴からの内部相分離による、多量の殺生物剤を含む、オイルコアを有する小さなポリマーマイクロカプセルおよび固体ミクロスフェアを調製するための製造方法を記載している。報告によれば、マイクロカプセルおよびミクロスフェアのサイズは、直径0.2〜20ミクロンの間の高精度で制御することができ、この微小粒子はコーティングを保護するのによく適している。
【0011】
公開された特許出願WO/2010/148158A1は、マイクロカプセル化した殺生物剤を含有する徐放性殺生物組成物を調製する方法を記載しており、この方法は、(i)殺生物剤を不活性担体上に吸着させ、粉砕して、殺生物剤対不活性担体の比率が約1:99から約99:1の範囲内である所望の粒径を得るステップ;(ii)任意に、殺生物剤および不活性担体を、適正なアミンもしくはイミン化合物または耐水性被膜を形成するポリマーでコーティングし、カプセル化した殺生物剤を分散剤の存在下で水性媒体中に分散させるステップ;(iii)少なくとも1種の増粘剤を添加して、カプセル化した殺生物剤を再分散させるステップ;ならびに(iv)水性または溶剤ベースの徐放性殺生物剤分散液を調製するステップ含む。
【0012】
従来の研究者らの30年間にわたる素晴らしい業績にもかかわらず、最終的に使用するコーティング配合物中で変色しにくいIPBC組成物に対する必要性が依然として存在する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、太陽光および他の紫外線源によって変色しにくい、紫外線吸収ポリマーおよびIPBCを含む微小粒子を提供する。本発明は、この微小粒子を調製する方法も提供する。この方法は、単一の反応器内で比較的低温で操作することができる。この方法は、ポリマーの析出または微小粒子の形成を開始するために安定なエマルジョンを形成することまたは溶媒を蒸発させることを何ら必要とせずに済む。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明は、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメートを変色に対して安定化させるための微小粒子である。微小粒子は、ポリマーおよびIPBCを含む。微小粒子は、20ミクロンより大きく約1000ミクロンまでの範囲内の粒径を有する。微小粒子の表面積は、好ましくは、グラム当たり約0.001から約0.9m
2、より好ましくはグラム当たり約0.01から約0.7m
2、最も好ましくはグラム当たり約0.1から約0.5m
2の範囲内である。ポリマーは、IPBCの変色に関連する紫外線波長の範囲にわたる光を吸収する。任意に、1種または複数の殺生物剤が微小粒子に含まれる。
【0023】
本発明の目的のために、微小粒子の「粒径」とは、微小粒子の最も大きい線寸法を意味する。好ましくは、本発明の微小粒子のそれぞれは、20ミクロンより大きく約1000ミクロンまで、より好ましくは30ミクロンより大きく約800ミクロンまで、最も好ましくは40ミクロンより大きく約500ミクロンまで、理想的には50ミクロンより大きく約100ミクロンまでの範囲内の粒径を有する。驚いたことに、微小粒子がIPBCの変色に対して比較的わずかな安定化しかもたらさない、例外的な粒径範囲があると思われる。
【0024】
「体積平均粒径」および「平均粒径」は、本出願の目的のために、同義語であることが意図される。好ましくは、微小粒子は、約20から約1000ミクロン、より好ましくは約30から約800ミクロン、最も好ましくは約40から約500ミクロン、理想的には約50から約100ミクロンの範囲内の平均粒径を有する。
【0025】
本発明の目的のために、「吸光度」とはlog
10(I
0/I)を意味しており、ここで、Iは、0.1重量パーセント以下の濃度を有する液体溶液の形態である試料を通過した、指定された波長における光の強度であり、I
0は、それが試料に入る前の光の強度である。例えば、吸光度を測定する分光計は、Shimadzu Corporation(京都、日本)から、UV−2401PCという商品名で市販されている。
【0026】
IPBCの変色は、約290ナノメートルから約380ナノメートルの波長を有する光の照射に伴う。IPBCは、190から320ナノメートルの範囲にわたる波長の紫外線を吸収し、約190から約230ナノメートルで吸収極大を示すことが知られている。加えて、IPBCの変色は、自然の太陽光に曝したときに報告されている。地表での太陽光に通常見られる最短波長は約295ナノメートルである。
【0027】
好ましくは、ポリマーは、約290から約380ナノメートルの範囲内、より詳細には約290から約350ナノメートルの範囲内のすべての波長で、0.03以上、より好ましくは0.05以上、最も好ましくは0.08以上、理想的には0.10以上の吸光度を示す。
【0028】
また、ポリマーは、295から320ナノメートルの範囲内のすべての波長で、0.03以上の吸光度を示すことが好ましく、0.05以上がより好ましく、0.08が最も好ましく、0.10以上が理想的である。
【0029】
ポリマーは、約400から約740ナノメートルの範囲内のすべての波長で、0.10未満の吸光度を示すことも好ましく、0.05未満の吸光度を示すととりわけ好ましい。理想的には、ポリマーは人間の目には無色に見える。本発明の目的のために、「無色」とは、白色または透明であることを意味する。
【0030】
理論に縛られることを意図するものではないが、ポリマーは、さもなければIPBCに作用することになる紫外線を吸収することによってIPBCの変色を防止するまたは遅延させ、それによってポリマー中またはポリマー上にあるIPBCを変色に対して安定化させると考えられる。
【0031】
ポリマーは、例えば、PMMA、PEMA、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネートおよびそれらの混合物であってもよい。別の例として、ポリマーは、PMMA、PEMA、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、およびそれらのコポリマーからなる群から選択されてもよい。
【0032】
高分子化学の分野の実務者であれば、上述の様々な波長帯範囲にわたる所望の吸光度をもたらす特定のポリマーまたは特定のポリマーの混合物をどのように選択し、製造し、またはブレンドするかが分かるであろう。好ましくは、ポリマーは、PMMAまたはPMEAおよびそれらの混合物の群から選択される。より好ましくは、ポリマーはPMMAである。
【0033】
本発明の微小粒子中のポリマーとして使用するためには、ホルムアルデヒドを含まないポリマー材料が好ましい。相当な量のホルムアルデヒドを含むポリマー材料は、本発明での使用に不適切である。例えば、メラミンホルムアルデヒドは一般に、IPBCの変色を引き起こすと思われる量のホルムアルデヒドを含有する。
【0034】
好ましくは、ポリマーは、約15,000から約1,000,000g/molの範囲内の分子質量を有する。例えば、ポリマーは、約40,000から約700,000g/molの範囲内の分子質量を有するPMMAまたはPEMAであってもよく、ポリマーは、約40,000から約700,000g/molの範囲内の分子質量を有するポリ酢酸ビニルであってもよく、ポリマーは、約15,000から約500,000g/molの範囲内の分子質量を有するポリスチレンであってもよく、ポリマーは、約10,000から約300,000g/molの範囲内の分子質量を有するポリカーボネートであってもよく、または、ポリマーは、これらのいずれかもしくはすべての混合物であってもよい。ポリマーは、PMMA、PEMA、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、およびポリカーボネートの2種以上のコポリマーであってもよいことが企図される。
【0035】
微小粒子中のIPBC対ポリマーの重量比は、好ましくは約0.01:1から約9:1の範囲内であり、より好ましくは約0.1:1から約2:1の範囲内であり、最も好ましくは約0.2:1から約1:1の範囲内である。
【0036】
微小粒子は、使用のために液体担体相に分散されてもよい。例えば、水に分散された本発明の微小粒子は、水性塗料または水性スタッコ中の防腐剤としての使用に最適であろう。本発明の微小粒子は、他のものの中でも、溶剤ベースの塗料、染料または木材防腐剤における使用にも適切であり得ると思われる。
【0037】
IPBCに加えて、本発明のポリマー中またはポリマー上に任意に他の殺生物剤があってもよい。例えば、イソプロツロン、テルブトリン、ジウロン、イルガロール、カルベンダジム、ジンクピリチオン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチアゾロン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、およびそれらの混合物からなる群から選択される追加的な殺生物剤が、微小粒子に含まれてもよい。好ましくは、追加的な殺生物剤はイソプロツロンである。より好ましくは、追加的な殺生物剤はテルブトリンである。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、IPBCと、任意に追加的な殺生物剤または安定化剤とを含む、液体に分散可能な微小粒子を作製する方法である。この方法は、水性連続相に分散されたIPBC粒子を含む懸濁液または分散液を調製するまたは提供することを含む。好ましくはコロイドの形態である、分散剤が連続相に存在して、IPBC粒子が互いに凝集することを阻害してもよい。ポリビニルアルコール(「PVA」)は好ましい分散剤であり、約87から約95%加水分解されていればより好ましく、約87から約89%加水分解されていれば最も好ましい。分散剤が約13,000から約23,000g/molの範囲内の分子質量を有するとき、良好な結果が得られた。
【0039】
この方法はまた、好ましくは室温での水への溶解性が約100から約1000ppmの範囲内である水に難溶性の溶媒を含む有機液相を調製するまたは提供することを含む。好ましくは、この難溶性溶媒は、酢酸エチル、2−メチル−(テトラヒドロ)−フラン、ジクロロメタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。有機相は、ポリマー材料、例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、またはそれらの混合物も含む。ポリ(メタクリル酸メチル)(「PMMA」)は、ポリマー材料として使用するのに好ましい。の溶媒は、相当な割合のポリマー材料をおよそ室温から約50℃の温度で溶解させる能力がなければならない。任意に、水混和性の共溶媒、例えばアセトンまたはメタノールを、水に難溶性の溶媒に加えて有機液相に組込んでもよい。
【0040】
本発明の微小粒子を作製する方法は、制御された様式で有機溶媒を少なくとも部分的に引き出して水性懸濁液または分散液の連続相に入れるのに有効な分離条件下で、水性懸濁液または分散液と有機相とをブレンドすることを含む。分離条件は、大気圧下、室温以上かつIPBCの融解温度未満の温度で分離混合物を混合するか、さもなければかき混ぜることを含む。好ましくは、分離温度は、約20℃から約50℃の範囲内である。この分離条件で水性懸濁液を有機相とブレンドすると、相分離混合物が生成する。
【0041】
分離混合物が分離条件下で撹拌されるか、さもなければかき混ぜられるにつれて、少なくとも一部のポリマー材料が有機相から分離し、ポリマー材料と、ポリマー材料中またはポリマー材料上にあるIPBCとを含む微小粒子を形成し、固化する。好ましくは、ポリマー材料は、数秒または数分以内に有機相から分離し、IPBC粒子と会合する。分離および会合の速度は、プロセスパラメータ、例えば、撹拌速度、添加速度、温度、分離混合物に存在する水および溶媒の量、ならびに共溶媒、例えば水混和性溶媒、溶媒抽出液、および無機塩の存在に依存する。
【0042】
本発明の目的のために、「会合する」とは、吸収する、吸着する、吸い込む、包囲する、キレート化する、付着する、または結合するという意味である。
【0043】
理論に縛られることを意図するものではないが、分離および会合現象は、難溶性溶媒が水性懸濁液の連続相中に拡散することによって引き起こされると考えられる。アセトンまたはメタノールなどの共溶媒は、存在する場合、同じ方向に拡散することが予想されよう。本発明によって生成される微小粒子はある程度の滑らかさおよび均一性を示すことから、ポリマー材料は、固体析出物ではなく、粘液相が短期間で形成されることを通して有機相から分離することが示される。
【0044】
有機相からのポリマー材料のさらなる分離および微小粒子壁のさらなる固化を促進するために、分離および会合現象の後に、任意に分離混合物を室温まで冷却するおよび/または分離混合物に水を添加してもよい。無機塩(例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、または塩化カルシウム)を水性懸濁液の連続相に添加することによって、同様の効果を得ることができる。
【0045】
微小粒子が十分に固化した後、液体内容物を、例えば、遠心分離または濾過を通して除去することによって、微小粒子を分離混合物から回収することができる。有機相および水性懸濁液の様々な構成成分を、既知のプロセスによってリサイクルさせることができる。
【0046】
IPBC会合プロセスを伴うポリマー分離は、混合温度を室温まで下げ、追加的な水を添加することによって完了する。無機塩(硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムなど)での水性相のイオン強度の増大(「塩析」)、またはポリマーに対して溶媒特性のない、溶媒を抽出する第3の溶媒の添加は、ポリマー析出ステップを完了させる別の手法である。
【0047】
さらに別の実施形態では、本発明は、乾燥塗膜またはコーティング、例えば、塗料またはスタッコにおけるIPBCの変色を低減する方法である。この方法は、IPBCが乾燥塗膜またはコーティングに組込まれる前に、IPBCおよび安定化剤、例えばヒンダードアミン系光安定剤(「HALS」)および/またはUV吸収剤(「UVA」)を含む殺生物組成物にポリマーでの遮蔽を施した本発明の微小粒子を含む。好ましくは、微小粒子中のIPBC対UVAまたはIPBC対HALSの重量比は、約19:1から約2.3:1の範囲内、より好ましくは約9:1から約7:1の範囲内である。
【0048】
好ましくは、殺生物組成物はフリーラジカル捕捉剤を含み、このフリーラジカル捕捉剤はヒンダードアミン系光安定剤である。好ましくは、殺生物組成物は紫外線吸収剤を含み、この紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾールまたはベンゾフェノンである。微小粒子中のポリマー材料対殺生物組成物の重量比が約9:1から約1:9の範囲内であるとまた好ましい。
【0049】
ポリマーで遮蔽されたIPBC微小粒子の調製は、特定の製造手順に限定されない。本明細書における記載は、ポリマーで遮蔽されたIPBC粒子を調製する多くの手順の1つに過ぎない。好ましくは、IPBCおよび安定化剤をポリマーと組合わせて、上述の微小粒子を作製する相分離法に従って微小粒子に組込む。
【0050】
後述するように、非黄変性および耐浸出性に関して等しく良好な性能結果を有する、PMMAで遮蔽されたIPBC微小粒子の調製は:
i) IPBCの結晶性粒子を含有する水性IPBC懸濁液から出発する、または
ii) IPBC粒子を含有する水性分散液から出発する、または
iii)有機溶媒に単独でもしくはポリマー材料と共に溶解したIPBCから出発すること
によって実現することができる。
【0051】
IPBCを紫外線吸収ポリマー(または紫外線吸収ポリマーの混合物)と、またはその上に、一段階プロセスで有機相から相分離させるまたは析出させると、ポリマーで遮蔽されたIPBC微小粒子が形成する。本発明の微小粒子は、(後述するプロセスによって)約0.1ミクロンから1000ミクロン以上までの範囲に及ぶ多くの粒径に調製することができる。生成される粒径は、例えば、撹拌速度、溶媒の体積、温度、およびポリマー(複数可)の濃度などのパラメータに特に依存する。上で述べた教示の利益および以下の具体例があれば、適正なプロセスパラメータの組合せは微小粒子製造の技術分野における経験豊かな実務者には明らかであろう。
【0052】
実験
以下の例および手順は、本発明をより良く伝えるために提示されるものであり、決して本発明を限定することを意味するものではない。別段の指示のない限り、部、百分率、または割合への言及はすべて重量基準である。
【0053】
UV変色試験手順
紫外線の存在下での様々な材料の変色を定量するために、Q−Panel Lab Products(クリーブランド、OH、44145、米国)からUVA−340という商品名で市販されているタイプの紫外線ランプを備えた試験箱を利用する。このランプは蛍光で定格電力は40ワットであり、280から350ナノメートルの放射範囲および310ナノメートルでの連続最大出力を有する。
【0054】
UV変色試験は、試験体を調製するために湿ったStolit(登録商標)K2スタッコに5分間混合することによって組込んだ特定の検討材料について、試験箱内で行う。このスタッコは、Sto AG(シュテューリンゲン、ドイツ)から市販されている。試験体は、1000ppmの使用レベルでIPBCを含有し、Leneta Company,Inc.(マファ、ニュージャージー、米国)から市販されている基板パネル上に約2mmの厚さを有する。
【0055】
試験体を22℃でおよそ12時間、乾燥する。乾燥した試験体を、試験箱内で4時間、6時間、または8時間の試験期間の間、4つのランプすべてで照射して紫外線に曝す。試験期間を通して試験箱内では40〜42℃の温度を常に維持する。
【0056】
b
*を黄色度の判断基準として使用する、CIEL
*a
*b
*比色分析の値を各試験体の表面から測定する。「デルタb」は、試験期間の前と後での試験体のb
*値の数値差の絶対値を意味している。デルタbの値が大きいほど変色が大きいことを示し、0.0のデルタbは変色がないことを示す。注目すべき点は、2.0未満のデルタbは人間の目で検出するのは困難であることである。ほとんどの場合、複数回の変色試験の平均として算出された平均デルタb値が報告される。
【0057】
調製例A−微小粒子を作製する本発明のプロセス
以下の成分を以下の量で合わせる:
成分 グラム wt%
ポリ(メタクリル酸メチル)−MW350,000 4.90 1.74
酢酸エチル 49.57 17.65
IPBC結晶性粒子、<40ミクロンに粉砕(98%のIPBCを含有) 1.63 0.58
アセトン(任意) 2.35 0.84
脱イオン水 220.00 78.34
ポリ(ビニルアルコール)、MW13,000〜23,000;87〜89%加水分解 2.40 0.85
【0058】
50℃の金属製ビーカーに脱イオン水120gを入れ、60mmのディソルバーディスク(dissolver disk)/ブレードで900回転/分で撹拌しながら、13,000から23,000g/molの範囲内の分子質量を有する、87〜89%加水分解されたポリビニルアルコール2.40グラムを添加することによって、分散液を調製する。この金属製ビーカーは、プログラム可能なサーモスタットを組合せた、内径80ミリメートルで容量500mlの二重壁の金属製ビーカーである。このコロイド分散液に、40ミクロン未満の最大粒径を有する結晶性IPBC粒子1.63gを添加して、水性懸濁液を生成する。
【0059】
酢酸エチル49.57グラムを丸底フラスコに入れ、50℃に加熱することによって、有機液相を調製する。4.90グラムの量のPMMAを酢酸エチルに添加し、この混合物をPMMAが完全に溶解する間、撹拌する。この時点で、2.35グラムの量のアセトンも有機液相に導入する。UV吸収剤および/またはHALSを液相のいずれかに任意に添加してもよく、好ましくは有機液相に添加する。
【0060】
金属製ビーカー中で900〜1200回転/分で60分間、50℃で撹拌することによって、有機液相を水性懸濁液とブレンドする。IPBCを包み込んだ微小粒子が生成する。この微小粒子は、約25wt%のIPBCと約75wt%のPMMAとから構成される。
【0061】
金属製ビーカーの内容物を30分間にわたって室温まで冷却する。100グラムの量の水を金属製ビーカーに添加する。微小粒子を、金属製ビーカーの内容物の残留物から濾過によって分離し、脱イオン水で洗浄し、乾燥する。およそ6.5グラムの微小粒子が回収される。
【0062】
調製例B−微小粒子を作製する本発明のプロセス
以下の原料成分を以下の量で合わせる:
成分 グラム wt%
ポリ(メタクリル酸メチル)−MW350,000 4.90 1.73
酢酸エチル 49.57 17.50
IPBC水性分散液(40%のIPBCを含 4.06 1.43
アセトン(任意) 2.35 0.83
脱イオン水 220.00 77.66
ポリビニルアルコール−MW13,000〜23,000、87〜89%加水分解 2.40 0.85
【0063】
a)予め粉砕されたIPBC結晶性粒子1.63グラムを用いる代わりに、IPBC粒子1.63gを含有する40%水性分散液4.06グラムを水性相に添加する;ならびにb)約900〜1200あるいは約2800回転/分で撹拌することによって有機相を分散液とブレンドする;ならびにc)この撹拌の間に脱泡剤を任意に添加してもよい;ならびにd)加えて、UV吸収剤および/またはHALSを任意に添加してもよいことを除き、上の調製例Aで述べた手順を行う。
【0064】
約2800rpmの撹拌速度のとき、回収された微小粒子の80%超が有意に100ミクロンより小さいことが観察される。
【0065】
調製例C−微小粒子を作製する本発明のプロセス
以下の原料成分を以下の量で合わせる:
成分 グラム wt%
ポリ(メタクリル酸メチル)−MW350,000 4.90 1.74
酢酸エチル 49.57 17.65
IPBC結晶性粒子(>98%のIPBCを含有) 1.63 0.58
アセトン(任意) 2.35 0.84
脱イオン水 220.00 78.34
ポリビニルアルコール−MW13,000〜23,000、87〜89%加水分解 2.40 0.85
【0066】
a)IPBC粒子1.63gを、水性液相に懸濁させる代わりに有機液相にPMMAポリマーと共に溶解させる;b)この撹拌の間に脱泡剤を任意に添加してもよい;ならびにc)UV吸収剤および/またはHALSを任意に有機液相に添加してもよいことを除き、上の調製例Aで述べた手順を行う。
【0067】
調製例D−微小粒子を作製する本発明のプロセス
以下の原料成分を以下の量で合わせる:
成分 グラム wt%
ポリ(メタクリル酸メチル−MW350,000 4.90 2.12
酢酸エチル 49.57 21.43
IPBC結晶性粒子(>98%のIPBCを含有) 1.63 0.70
塩化カルシウム 0.50 0.22
アセトン(任意) 2.35 1.02
脱イオン水 170.00 73.48
ポリ(ビニルアルコール)−MW13,000〜23,000、87〜89%加水分解 2.40 1.03
【0068】
a)ディソルバーディスクを用いて約900〜1200rpmで撹拌する代わりに、IKA(登録商標)(IKA−Werke GmbH&Co.KG、ドイツ)製Ultraturaxx高性能分散機を用いて3400回転/分で混合物を撹拌する;b)塩化カルシウム0.50gを乳化破壊剤として水性相に添加する;c)少量の脱泡剤を任意に混合物に添加してもよい;ならびにd)UV吸収剤および/またはHALSを、好ましくは有機液相に、任意に添加してもよいことを除き、上の調製例Cで述べた手順を行う。
【0069】
回収された微小粒子の95%超が有意に25ミクロンより小さいことが観察された。
【0070】
調製例E−微小粒子を作製する本発明のプロセス
以下の成分を以下の量で合わせる:
成分 グラム wt%
ポリ(メタクリル酸メチル)−MW447,000 4.80 1.80
酢酸エチル 36.90 13.85
IPBC結晶性粒子(>98%のIPBCを含有する) 1.60 0.60
アセトン(任意) 0.70 0.26
脱イオン水 219.8 82.50
Kelzan CC(脱イオン水中の溶質として) 0.24 0.09
ポリ(ビニルアルコール)、MW13,000〜23,000;87〜89%加水分解 2.40 0.90
【0071】
Elavacite 2041 PMMAポリマー(MW447,000)の酢酸エチル中11.5パーセント溶液41.7gをIPBC1.6gおよびアセトン0.7gとブレンドすることによって、有機溶液を調製する。この溶液を、脱イオン水100.8g、Kelzan(登録商標)CCの脱イオン水中1.25パーセント溶液19.2g、およびポリビニルアルコール(87〜89%加水分解)2.4gからなる水性相に、15分間にわたって直接導入する。
【0072】
この混合物を、取り外しできる上蓋を備えた直径8.0cmの0.5リットル二重壁金属製ビーカー中で、50℃の一定温度で45分間撹拌する。撹拌は、約900〜1500rpmおよび先端速度2.8〜4.7m/秒で操作される6.0cmのディソルバーディスク/ブレードを有するVMA−Getzmann Dispermat(登録商標)を活用して遂行する。微量のRhodorsil(登録商標)A416消泡剤を必要に応じて添加する。絶えず撹拌しながら反応器の内容物の温度を30〜60分間にわたって18〜20℃の温度まで下げる。この温度で、脱イオン水100gを約1500rpmの撹拌速度で10〜30分間にわたって添加する。微小粒子を濾過によって(例えば、5ミクロンの孔径を有するフィルターバッグを使用する)収集し、乾燥する。
【0073】
微小粒子を35℃で16時間乾燥し、収集する。収集した微小粒子の重量は4.7gであり、これは、ポリ(メタクリル酸メチル)およびIPBC成分の重量を基準にすると73パーセントの重量を回収したことに相当する。5ミクロン未満の粒径を有する最大27パーセントの微小粒子は濾過によって収集されずに液相に残留する。収集した微小粒子のIPBC含有率は、高速液体クロマトグラフィーによって測定すると24%である。その粒径分布は、D5%:5ミクロン、D50%:49ミクロン、D95%:106ミクロン、およびD99%:133ミクロンである。
【0074】
デルタb値を記録し、1.0として微小粒子の試験試料について算出する。比較として、同一の試験条件下の自由なIPBCは、約3.3のデルタb値を示す。
【0075】
調製例F−微小粒子を作製する本発明のプロセス
以下の成分を以下の量で合わせる:
成分 グラム wt%
ポリ(メタクリル酸メチル)−MW447,000 49.0 10.10
酢酸エチル 94.09 19.39
IPBC結晶性粒子(>98%のIPBCを含有) 16.3 3.36
アセトン(任意) 3.44 0.71
脱イオン水 320.00 65.95
ポリ(ビニルアルコール)−MW13,000〜23,000、87〜89%加水分解 2.40 0.49
【0076】
上の調製例Aで述べた手順を、取り外しできる上蓋を備えた金属製ビーカー中で行う。有機液相は、酢酸エチル49.54g、アセトン1.82g、IPBC1.63g、およびPMMA(MW447,000)4.9gからなる。水性液相は、脱イオン水120g、および13,000から23,000g/molの範囲内の分子質量を有し、87〜89%加水分解されているポリビニルアルコール2.40グラムを含有する。:a)より速い約1300から1900rpmの撹拌速度を用いる;b)50℃で撹拌しながら、9回の2段階添加を行い、酢酸エチル4.95gに溶解したIPBC1.63gおよびアセトン0.18gからなる各第1段階、および固体PMMA(MW447,000)粒子4.90gからなる各第2段階が適用される;これらの添加は、約1.5から4時間の時間にわたって等しい時間間隔で配置される;c)脱泡剤が任意に添加されてもよい;ならびに、d)UV吸収剤および/またはHALSが任意に添加されてもよいことを除き、手順は、実質的に上の調製例Aで述べた手順と同様である。
【実施例1】
【0077】
比較のための従来公知の配合物
従来公知の配合物で、上述のUV変色試験手順を4時間または6時間の試験期間で行う。各場合において、約1000ppmのIPBC使用濃度を用いる。4時間、6時間、および8時間のデルタb値を下の表1に表す。これらの結果は、これに対して他の実験データを比較することができるベンチマークとしての役割を果たすことが意図される。
【0078】
【表1】
【実施例2】
【0079】
IPBCを安定化させる微小粒子
PMMAを含むマイクロカプセルを、上の調製例A、BまたはCに述べた方法と実質的に同様の方法によって調製する。各場合において、約1000ppmのIPBC使用濃度を用いる。本発明の微小粒子についての、4時間または6時間の試験期間のUV変色試験手順の結果を下の表2に表す。
【0080】
【表2】
【0081】
上の表2の実験結果と表1のものとを比較すると、色の安定性の有意な改善が明らかになる。
【実施例3】
【0082】
IPBCを安定化させる微小粒子
本発明の微小粒子についての、8時間の試験期間についてのUV変色試験手順の結果を下の表3に表す。各場合において、約1000ppmのIPBC使用濃度を用いる。マイクロカプセルはPMMAを含み、上の調製例A、BまたはCで述べた方法と実質的に同様の方法によって調製される。
【0083】
【表3】
【0084】
上の表2および3の実験結果と表1のものとを比較すると、色の安定性の有意な改善が明らかになる。
【実施例4】
【0085】
微小粒径の効果
上述のUV変色試験手順を、微小粒径範囲が異なる微小粒子の試料で、4時間の試験時間で行う。粒径範囲が異なる試料は、1回分の微小粒子から選別または濾過によって得る。微小粒径の制限はなく、様々な粒径範囲の微小粒子が本発明に属する。各場合において、約1000ppmのIPBC使用濃度を用いる。デルタb値を下の表4に表す。
【0086】
【表4】
【実施例5】
【0087】
IPBC対ポリマーの重量比の効果
上述のUV変色試験手順を、約1000ppmのIPBC使用レベルで4時間、IPBC対PMMAポリマーの様々な重量比を有する微小粒子の試料で行う。微小粒子は、分子質量447,000g/molのPMMAを含み、50ミクロンより大きい平均粒径を有する。デルタb値を下の表5aおよび表5bに表す。
【0088】
【表5a】
【0089】
表5aを精査すると、IPBCとポリマーとを19:1以上の重量比で含む微小粒子は、重量比がそれより小さい同様の微小粒子と比較して、変色に対するIPBCの安定化を比較的少なくもたらすことが明らかになる。比較として、ポリマーでの遮蔽が全くないIPBC粒子は、UV変色試験手順において、4時間の場合3.8、6時間の場合4.8のデルタbを示すことが上の表1から示される。
【0090】
次に下の表5では、上述のUV変色試験手順を、約1000ppmのIPBC使用レベルで4時間または6時間、IPBC対PMMAポリマーの様々な重量比およびIPBCの重量の約9分の1の量のUV吸収剤を有する微小粒子の試料で行う。
【0091】
用いるUV吸収剤は、Sigma−Aldrich Co.LLC(セントルイス、ミズーリ)から市販されている、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールである。微小粒子は、350,000のPMMAを含み、50ミクロンより大きい平均粒径を有する。デルタb値を表5bに表す。
【0092】
【表5b】
【0093】
表5bを精査すると、IPBCおよびUVAを含む微小粒子は、IPBCの変色に対して微小粒子のIPBC対ポリマーの重量比に反比例する安定化を示すことが明らかになる。
【0094】
上の実施例は、本発明をより良く伝えることを意図するものであり、決して本発明を限定することを意図するものではない。本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。