(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072316
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】角膜を長期保存するための医療デバイス、またはヒトもしくは動物の角膜の生体外実験を行うための医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A01N 1/02 20060101AFI20170123BHJP
A61F 2/14 20060101ALI20170123BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
A01N1/02
A61F2/14
A61L27/38 100
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-562274(P2015-562274)
(86)(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-512492(P2016-512492A)
(43)【公表日】2016年4月28日
(86)【国際出願番号】FR2013050530
(87)【国際公開番号】WO2014140434
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2016年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】507237956
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ジャン・モネ
(73)【特許権者】
【識別番号】515257449
【氏名又は名称】エコール・ナシオナル・ダンジェニュール・ドゥ・サン−テティエンヌ
(73)【特許権者】
【識別番号】515257450
【氏名又は名称】エタブリセマン・フランセ・デュ・サン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ゲン
(72)【発明者】
【氏名】ジル・チュレ
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー・ラヴェルヌ−アキュアール
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・スーベーニュ
【審査官】
山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−43662(JP,A)
【文献】
米国特許第5030575(US,A)
【文献】
米国特許第5789240(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0294149(US,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第2944185(FR,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第2986133(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−3/04
A61F 2/00−2/97
A61L 27/00−27/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角膜検体(3)を受ける及びエントラップする手段を提供するレイアウトにおいて、内皮側の超過圧力を用いて圧力勾配を生成する手段に及び保存培地循環手段に連結された、角膜検体(3)を受ける及びエントラップする手段を備える、角膜検体(3)を保存するためのデバイス(1)であって、
前記受ける手段は、中間コンポーネント(2)と呼ばれる第1のセクションを備え、前記中間コンポーネント(2)は、円形溝(6b)およびエッジ(6c)により囲まれた角膜(3a)の直径の穴(6a)を有し、それにより前記角膜検体(3)を受けるように意図された空洞部を形成し、前記空洞部により、前記角膜検体(3)は、前記デバイス内への挿入時に正確に中心に配置されることが確実になるとともに、前記角膜検体は、手術室にて前記デバイスを開く際に安定状態に留まることが可能となっており、
前記エントラップする手段は、内皮リッド(4)と呼ばれる第2のセクションを備え、前記内皮リッド(4)は、前記中間コンポーネントの円形溝(6a)上で強膜毛様体ゾーン(3b)を平坦化することにより前記角膜検体(3)をトラップするように設計されたエッジ(10b)により囲まれる前記角膜(3a)の直径の穴(10a)を有しており、
前記角膜検体(3)を受ける及びエントラップする手段は、保存培地が内皮チャンバ(18)内の超過圧力により循環し得る、個別の内皮チャンバ(18)および上皮チャンバ(19)を画成するように、気密に前記角膜(3a)を囲む前記強膜毛様体ゾーン(3b)をエントラップしており、
前記中間コンポーネント(2)および前記内皮リッド(4)は、前記内皮チャンバ内の超過圧力により前記保存培地を循環させる及び前記内皮チャンバと前記上皮チャンバとの間で圧力勾配を生成する手段に連結された、保存培地用の入口オリフィス(7a、11a)および出口オリフィス(7b、11b)を備えていることを特徴とする、デバイス(1)。
【請求項2】
前記内皮チャンバ(18)は、前記中間コンポーネント(2)に前記内皮リッド(4)を気密連結した後に前記内皮リッド(4)と前記中間コンポーネント(2)との間に形成された空間から構成されており、前記上皮チャンバ(19)は、前記中間コンポーネント(2)にリッド(5)を連結した後の前記中間コンポーネントと前記リッド(5)との間に形成された空間により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記内皮リッド(4)は、顕微鏡対物レンズの通過、または、前記角膜に近いことを必要とするとともに前記デバイスにより前記角膜の分析もしくは治療を行うように意図された任意の他の機器の通過を可能にする、切欠部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
内皮側の超過圧力により前記内皮側と上皮側との間に調節可能な圧力勾配を生成する手段と、保存培地を循環させるための手段とに連結されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
前記内皮側の超過圧力による内皮側と上皮側との間の調節可能な圧力勾配は、所望の圧力で開く受動制御弁を使用して受動的に、またはユーザにより設定された設定値に従っておよび圧力マイクロセンサにより測定された前記内皮チャンバ内の圧力に応じて前記内皮チャンバ内の保存培地の注入を制御するマイクロソレノイド弁のフィードバックにより能動的のいずれかで、生成および調整されることを特徴とする請求項4に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
前記内皮リッド(4)は、前記入口オリフィス(11a)との連続体としての溝(12)を備えることにより、角膜内皮(3a)に対して直接的に新鮮な保存培地が到達するのを可能にすることを特徴とする請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記内皮チャンバ(18)はテクニカルオリフィス(11c)を備え、前記上皮チャンバ(19)はテクニカルオリフィス(7c)を備え、前記テクニカルオリフィス(11c、7c)は、バイオリアクタ内の無菌性を損なうことのない、微生物分析または生物化学分析を目的とした保存培地試料の取出し、または、任意の物質の注入を可能にすることを特徴とする請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
前記内皮リッド(4)およびリッド(5)は完全に透明であり、それにより前記デバイス(1)を開く必要性を伴わずに前記角膜(3a)の全ての層の分析を可能にすることを特徴とする請求項2に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
前記保存培地は、調節可能な温度であるが摂氏1〜40度の範囲内とすることが可能であることを特徴とする請求項4に記載のデバイス(1)。
【請求項10】
前記内皮リッド(4)は、2つのセクション、すなわち、
前記穴(10a)、および前記強膜毛様体ゾーン(3b)を平坦化することにより前記角膜検体(3)をトラップするために用いられる前記穴(10a)のエッジ(10b)と、液体入口オリフィス(11a)と、液体出口オリフィス(11b)と、テクニカルオリフィス(11c)と、を備える第1のセクション(4a)と、
前記角膜(3a)全体の検査を可能にする第2の透明セクション(4b)と、
から構成されていることを特徴とする請求項7に記載のデバイス(1)。
【請求項11】
前記内皮リッド(4)および前記中間コンポーネント(2)は、前記内皮リッド(4)および前記中間コンポーネント(2)を、接合および気密の状態に維持することを可能にする相補的なロック手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項12】
前記相補的なロック手段は、前記内皮リッド(4)上のレール(14a)の形態であり、前記中間コンポーネント(2)の外周部に形成される傾斜エッジ(8)を有するとともに相補的な形状を有する溝と協働する傾斜エッジ(14f)を有する溝を備えるロックシステム(14b)を受けることが可能であり、それにより、前記ロックシステム(14b)が前記レール(14a)上を摺動する場合に、2つの前記傾斜エッジは、相互に対面して、前記角膜(3a)に損傷を与えることなく前記強膜毛様体ゾーン(3b)の最適な圧迫を確保するように前記中間コンポーネント(2)に対して前記内皮リッド(4)を漸進的に締め付けることを可能にすることを特徴とする請求項11に記載のデバイス(1)。
【請求項13】
前記相補的なロック手段は、それらの2つの前記傾斜エッジ(14f、8)上の微小刻み目表面を備え、前記微小刻み目表面は、前記傾斜エッジ(14f、8)間の摩擦結合を強化することによって急激なブロック解除を防止することを特徴とする請求項12に記載のデバイス(1)。
【請求項14】
上皮リッド(5)および前記中間コンポーネント(2)は、気密に組み立てられており、前記中間コンポーネント(2)に対する前記上皮リッド(5)の変位を可能にすることを特徴とする請求項2に記載のデバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角膜を長期保存するための、特に移植のためのまたはヒトもしくは動物の角膜の生体外(ex vivo)実験を行うための医療デバイスの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
最新技術によれば、角膜移植片は、世界中で主に2つの異なる方法で、すなわち低温保存と呼ばれる技術を利用して短期間にわたって(最大で10日間)+4℃で、または臓器培養と呼ばれる技術により+31℃〜+37℃の範囲の温度で保管される。臓器培養は、最大で5週間の長期保存が可能な細胞培養用培地由来の栄養培地を使用する。臓器培養は、角膜が浮腫状になり(厚さが2倍になり、500〜600μmから1000〜1200μmに及ぶ)後方面に折り重なる初期フェーズと、移植片が同一の臓器培養培地に浸漬されるが、移植片の腫れを減少させて厚みを減らし移植の直前に後方の折り重なりを軽減させる高分子(デキストランT500またはポロキサマ188)を含む、12〜72時間に及ぶ第2のフェーズとを含む、一連の技術である。
【0003】
これらの技術のいずれにおいても、移植片は、角膜が中で拘束されない単純なガラスボトルもしくはプラスチックボトルか、または角膜がケージもしくはバスケット(コンタクトレンズケースのような)内で部分的に固定されるボックスのいずれかの中に浸漬される。これらのいずれの場合においても、保存培地の循環も、角膜の各側における圧力勾配の維持もなされない。
【0004】
しかし、最適な保存を行うためには、角膜は、生理学的環境と同様の条件におかれなければならない。再現すべき生理学的パラメータは、具体的には眼の前眼房のパラメータであり、すなわち約18ミリメートル水銀柱(mmHg)の眼内圧、例えばヒトの眼の場合の約31〜37°の温度、および内皮側(房水の永久再生の模倣)および上皮側(涙の永久循環の模倣)の両方における角膜保存液の循環である。これらの条件が再現されないと、角膜細胞の死が後方折れ重なりゾーンにおいて特に加速され、角膜基質が浮腫状になり、その透明性の遷移的喪失が生じる。
【0005】
特許文献1は、眼の前眼房を模倣した角膜アセンブリデバイスを説明している。このデバイスは、眼内圧パラメータ、温度パラメータ、および眼内液体循環パラメータの再現を可能にするが、薬物浸透テストを実施するための実験室内実験のためだけのものである。このデバイスでは、患者への角膜移植前の角膜移植片の保存は不可能である。特に、このデバイスでは、角膜の両側、すなわち上皮側および内皮側の両方における保存液の無菌循環は不可能である。このデバイスは、デバイスを開くことなく角膜を検査することを可能にするための完全な透明性を有さない。したがって、角膜の生存時間は、短時間にならざるを得ず、角膜移植のための使用には適合しない。
【0006】
特許文献2は、涙の流れを模倣するために垂直位置のみに置かれるように設計された、角膜用の「潅流チャンバ」を説明している。この潅流チャンバもまた、実験室内実験、特に前臨床毒性試験のためのものであり、移植前の角膜移植片の保存を目的としたものではない。この潅流チャンバは、角膜の形状を維持するためにゲルで充填されるように設計された内皮コンパートメントを備えるが、内側に栄養液体のいかなる循環も有さない。この潅流チャンバは、角膜の両側における圧力勾配維持システムを備えない。この潅流チャンバは、完全に透明ではない。
【0007】
非特許文献1は、ヒトの角膜を受けるために開発されたポリカーボネートチャンバを提示しているが、これは、ブタおよびネコの角膜でしか試験されていない。このポリカーボネートチャンバは、蠕動ポンプにより作動される閉回路液体循環を有する。18mmHgの圧力勾配が、重力により維持される(潅流液体を収容したボトルが高所に配置される)。角膜上皮が、耳と接触状態にあり、上皮コンパートメントは、気密ではない。このポリカーボネートチャンバは、完全には透明でない。この潅流チャンバは、移植前に角膜検体を保存するようにはやはり意図されていない。
【0008】
さらに、従来技術のデバイスのいずれによっても、角膜組織のレーザ切断または平坦表面上における内皮細胞の観察の容易化を可能にする角膜の平坦化が可能とならない。現行の最新技術では、角膜は、移植片の保存に適さない特殊な支持体上でフェムト秒レーザを用いて切断される。従来技術では、移植片は、保存培地から抽出され、周囲空気にさらされた特殊な支持体上に手作業により配置され、次いでレーザ切断システム下に配置されなければならない。角膜を平坦化するために、別のデバイスが、角膜検体支持体にではなく実際のレーザに装着されなければならない。
【0009】
結局、従来技術のデバイスはいずれも、角膜細胞治療の実施可能性を有するとは謳ってはいない。
【0010】
分子の浸透および毒性試験に関する生体外(ex vivo)実験のために従来技術のデバイスを使用することに関して、これらのデバイスはいずれも、以下の特徴を、すなわち長期間(数週間)のヒトまたは動物の角膜の無菌保存を可能にすること、内皮側に圧力勾配を備えること、角膜の両側に液体循環を有すること、完全に透明であること、および角膜平坦化デバイスを有することを兼ね備えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5789240号明細書
【特許文献2】仏国特許第2944185号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】British Journal of Ophthalmology 2001;85:450-3「A simple corneal perfusion chamber for drug penetration and toxicity studies」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、単純、安全、効果的、かつ合理的な方法でこれらの欠点を改善することである。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、長期ヒト角膜保存デバイスを作製することであり、該デバイスは、
角膜の両側における保存液の無菌循環であって、それにより内皮側の超過圧力を用いて角膜の2つの側の間で圧力勾配を生じさせることと、
角膜を徹底的に検査することと、
バイオ反応をさらすこと(opening)なく、すなわち角膜検体の無菌性を脅かすことなく角膜ドームを平坦化することと、
を可能にする。
【0015】
したがって、追求する目的は、移植前の角膜移植片の保存を改善するために、ならびに基本および/または前臨床生体外実験(pre-clinical ex vivo experiments)を実施するために、疑似生理学的条件下に生体外(ex vivo)角膜を保持することである。
【0016】
当然ながら、このデバイスは、角膜の保存またはヒト種の角膜に関する実験に限定されない。また、このデバイスでは、ヒトとは異なる角膜直径を有する任意の動物種の角膜に関する実験も可能である。バイオ反応のジオメトリ(主に角膜の中央凹部の直径)、ならびに温度条件、圧力条件、および保存液組成条件は、所望に応じて、保存すべき角膜の動物種によって変更され得る。
【0017】
このような問題を解決するために、本発明者らは、角膜を保存するためのデバイスを設計および開発した。このデバイスは、
調節され得る圧力下に角膜を置くための手段に連結された、角膜検体を受ける及びエントラップ(reception and entrapment)する手段と、
角膜を受ける及びエントラップする手段のレイアウトに保存液を注入する手段と、
角膜ドームを平坦化する手段と、
微生物試験および/または生物化学試験を目的として保存培地を抽出する手段と、
開く必要性を伴わずにバイオリアクタ内に物質を注入する手段と、
を備える。
【0018】
本発明によれば、このデバイスは、角膜を受ける及びエントラップする手段を提供するレイアウトが、角膜を囲む強膜毛様体ゾーンを挟むことにより角膜を固定し、これにより保存液と角膜の2つの面との間の接触が可能となる点が注目に値する。したがって、内皮チャンバおよび上皮チャンバと呼ばれる2つの空間が画成される。
【0019】
有利には、本発明によるデバイス内の保存液は、世界中で角膜の保存のために利用される温度範囲を含む1〜40℃の範囲に及ぶ温度である。
【0020】
有利には、および任意の時点にて角膜の条件を徹底的に調査することを可能にするために、角膜を受ける及びエントラップする手段のレイアウトは、角膜を囲むバイオリアクタのパーツの透明性に基づき、角膜を調査するための徹底的な手段(through and through means)を備える。
【0021】
本発明の実施形態の好ましい形態において、デバイスは、以下の3つのセクションを備える。
角膜検体を受ける及び支持(reception and support)する役割を果たし、内皮リッドと呼ばれる第2のセクションと共にこの角膜検体のエントラップ(entrapment)に関与する、中間コンポーネントと呼ばれる第1のセクション。中間コンポーネントは、角膜の直径(動物種に応じて可変である)の中央穴を備える。この穴のエッジは、強膜を受けるように意図された円形溝によって延長(prolong)される。角膜検体は、上皮を下にした状態でこの穴の上に配置され、この溝上に位置する強膜毛様体ゾーンによって維持される。このリムのエッジには、角膜が横方向に移動し、このように画成された凹部から出るのを防止する円形リムが存在する。したがって、角膜は、中間コンポーネントの穴に自動的に中心位置決めされる。
【0022】
中間コンポーネントの上方面にクリップ留めするように意図された、内皮リッドと呼ばれる第2のセクション。この内皮リッドは、内皮チャンバと呼ばれる空間を画成する2つの連接されたパーツから形成され得るものであり、この空間内では、保存培地が角膜の内皮面と接触状態に循環する。このリッドの下方部分は、中間コンポーネントの穴と同一の直径の穴によって穿孔される。この穴のエッジは、強膜の高さで緊密に接触するようにおよび内皮チャンバと上皮チャンバとを適切に分離するように、強膜を平坦化するために中間コンポーネントの溝に対応するように意図された円形エッジを有する。したがって、角膜は、中間コンポーネントと内皮リッドとの間にしっかりとエントラップされる。内皮の上方セクションは、バイオリアクタの内皮チャンバを開く必要性を伴わずに角膜の観察を可能にするように透明である。
内皮リッドは、正立光学顕微鏡、スペキュラーマイクロスコープ、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)、レーザ、または角膜の治療分析のためのおよび可能な限り角膜に近づくことが必要である任意の他の機器の対物レンズを通過させ得るように意図された大型切欠部をエッジに備える。
内皮リッドと中間コンポーネントとの間で2つの傾斜スライダ(一方は内皮リッド上の、および一方は中間コンポーネント上の)を使用する漸進的ブロックシステムにより、強膜毛様体ゾーンの厚さに関わらずこのゾーンの最適な平坦化が可能となる。これらのスライダは、それらの表面上に微小刻み目を有し、この溝は、スライダ間の摩擦を増大させ、バイオリアクタが取り扱われる場合に、急激にブロック解除されるのを防止する。
【0023】
角膜上皮側に気密コンパートメントを形成し、したがって上皮チャンバを形成するために中間コンポーネントの下方面に螺着する、上皮リッドと呼ばれる第3のセクション。このリッドは、角膜の上皮側に、より近くに位置するように調節され得るため、したがって角膜の制御された平坦化が可能となる。平坦化表面は、平坦状または湾曲状であってもよい。上皮リッドは、段階的または漸進的な調節デバイスにより、非平坦状位置(上皮と接触状態にない)または平坦状位置にあることができる。また、上皮リッドは、バイオリアクタの上皮リッドを開くことなく、角膜を検査することが可能となるように、透明である。リッドは、例えば点眼剤の点眼時および角膜中の分子浸透テスト時のような実験使用中に、取り外されてもよい(しかし、移植のための角膜検体の保存時には取り外すことはできない)。上皮リッドを、このように開くことにより、内皮チャンバ内の超過圧力の維持が、妨げられることはない。
【0024】
生体適合性材料からなる主にOリングまたはクワッドリング(Quad-ring)である種々のタイプの接合部が、これらの3つのセクション間の緊密性および無菌性を保証する。
【0025】
有利には、内皮リッドおよび上皮リッドの2つの透明面は、中間パーツおよび内皮リッドの穴に整列される。したがって、これらの透明面により、バイオリアクタを開く必要性を伴わずに角膜に光を障害物無しに通過させることが可能となる。これは、観察者による角膜の視覚テストおよび機械テストの実施のための可視光とすることが可能である。非包括的な例としては、角膜の透過性の分析(例えば眼科医の通常の細隙灯を用いた)、特に内皮細胞である細胞の計数、および屈折矯正手術の埋設されたインターフェースの調査が挙げられる。また、これは、角膜移植片のコラーゲン架橋を実施するための紫外放射を含み得る。最終的に、これは、分析(例えば光コヒーレンストモグラフィ撮像)、細胞治療(角膜内における生物学的プロセスの活性化を行うレーザ)、または組織治療(角膜を切断するレーザ)のためのレーザ光線とすることも可能である。また、最終的に、他の光波長が、バイオリアクタを通して使用されてもよい。
【0026】
有利には、内皮リッドおよび上皮リッドの2つの面は、バイオリアクタを開くことなく角膜を超音波診断する(例えばレーザ切断の前後における厚さの測定など)ことを可能にするために、低超音波反射性材料から作製される。
【0027】
内皮チャンバおよび上皮チャンバは、複数のオリフィスを備える。各コンポーネントには最小限の非限定的な少なくとも3つのオリフィス、すなわち保存培地入口オリフィス、保存培地出口オリフィス、および「テクニカル(technical)」と呼ばれる追加のオリフィス(培地試料の取出しまたは物質の注入のための)が存在する。また、内皮リッドは、圧力センサを受けるように設計されたオリフィスを備える。また、上皮リッドが、圧力センサを受けるように設計されたオリフィスを備えることが可能である。圧力下に置くための、および圧力を制御する手段は、これらのオリフィスを通して実施される。内皮中の液体入口オリフィスは、角膜内皮に可能な限り近くへと新鮮な培地を注ぎ込むトラフを通してチャンバ内部に続く。
【0028】
両チャンバに存在する入口/出口オリフィスにより、保存液は、角膜の保存を最適化するように循環および流出することが可能となる。
【0029】
また、これらのオリフィスにより、内皮側が常に超過圧力を有するように、コンパートメント内の圧力を変更することが可能となる。また、この超過圧力は、角膜が内皮側で生理学的に直面する圧力に、または選択された任意の他の圧力に等しくてもよい。例えば、ヒトの角膜の場合には12〜20mmHgなどである。この超過圧力は、内皮チャンバ内に注入される容積および出てくる液体の容積を制御することによって達成され得る。
【0030】
例えば、保存培地は、超過加圧リザーバ、特にエラストマー膜式、ばね式、または圧縮ガス式注入デバイス内に収容される。また、圧力は、蠕動ポンプまたは別のタイプのポンプにより生成され得る。最初の作製例において、圧力下にある培地は、ガラス毛管タイプ流量調整器を通り進み、次いでマイクロソレノイド弁を通り、次いで内皮チャンバ内に注入される。マイクロソレノイド弁の開閉は、ユーザにより予め決定された設定値(例えば18mmHg)に従って電子コントローラによって制御され、内皮チャンバ内に配置された電子圧力センサにより測定された圧力に従って調節される。内皮チャンバから出てくる液体は、第2の流量調整器を通り進み、その後、上皮チャンバを通り進み、次いで、無菌性を保証するフィルタを介して大気圧と接触状態になるいわゆる「廃棄物」リザーバ内に注ぎ込む。
【0031】
第2の作製例において、圧力の制御は、受動的であり、圧縮液体が、内皮チャンバ内に注入される。この液体は、出ると、選択された圧力にて開くように選択された「逆止弁」と呼ばれる制御弁を通過し、したがって内皮における圧力は、培地が注入される限りは弁の開放圧力レベルに維持される。
【0032】
また、2つの「テクニカル」オリフィス(内皮チャンバおよび上皮チャンバの)により、いずれのコンパートメントを開く必要も若しくは角膜を取り扱う必要も伴わずに、微生物試験(無菌テスト)もしくは生物化学試験(培地の特徴の、特にpHの調節)のために保存液体試料を取り出すことが、または染料(細胞死亡率を検査するためのトリパンブルー)もしくは薬品、または遺伝子などの任意の製品を保存フェーズの際に注入することが可能となる。これにより、角膜細胞の生物学的挙動を調節するために例えば内皮チャンバ内への試薬の注入によって移植片の細胞治療を実施することが可能となり得る(例えば遺伝子治療など)。
【0033】
有利には、本発明によるデバイスでは、中間コンポーネントおよび内皮リッドは、それらを相互にロックするための追加の手段を備え、これにより接合された位置にコンパートメントを保持することが可能となる。これらの追加のロックおよびロック解除手段は、強膜毛様体ゾーンの漸進的かつ制御された押しつぶしにより最適な方法で角膜をブロックするために2つのパーツ(内皮カバーおよび中間コンポーネント)の漸進的圧迫を可能にする付勢される摺動接合部として存在する。
【0034】
このようなデバイスは、例えばドナーからの角膜の摘除と外科医による移植までとの間で閉じられた状態に留まり得る。デバイスは、手術のために角膜を解放するために手術室にてのみ開かれる。
【0035】
本発明の他の特徴および利点は、添付書類中の図面の参照を含むがそれに限定されない以下の説明から明らかになる。
【0036】
本発明をよりよく理解するために、複数の図面が、図に関わらず一定の番号を振られたパーツと共に提示される。別の作製形態において同一または同様に見受けられる作製形態からのパーツまたは要素は、単純化のために同一の参照番号で識別され、繰り返しては説明されない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】デバイスを構成する要素、すなわち内皮リッド、中間角膜検体支持コンポーネント、および調節可能な平坦化を行う上皮リッドの斜視分解図である。
【
図2a】中間角膜検体支持コンポーネントの上方斜視図である。
【
図2b】中間角膜検体支持コンポーネントの下方斜視図である。
【
図3a】内皮リッドを備える2パーツアセンブリの上方斜視図である。
【
図3b】内皮リッドを備える2パーツアセンブリの下方斜視図である。
【
図5a】内皮リッドと中間コンポーネントとの間の追加の閉鎖システムの前方斜視図である。
【
図5b】内皮リッドと中間コンポーネントとの間の追加の閉鎖システムの後方斜視図である。
【
図6】角膜検体が定位置に位置する状態の組み立てられたデバイスの斜視断面図である。
【
図7】角膜検体が定位置に位置する状態の組み立てられたデバイスの斜視断面図である。
【
図8】電子制御モードを使用した内皮チャンバ内の超過圧力調整システムの流れ図である。
【
図9】受動制御弁(逆止弁)による電子入力を伴わない受動制御モードを使用した内皮チャンバ内の超過圧力調整システムの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1〜
図7を参照すると、デバイスは、中間角膜検体支持コンポーネント(2)と、内皮リッド(4)と呼ばれる上方コンポーネントと、上皮リッド(5)と呼ばれる下方コンポーネントと、を備えるバイオリアクタ(1)である。
【0039】
図2aおよび
図2bを参照すると、中間コンポーネント(2)は、円周溝(6b)およびエッジ(6c)により囲まれた角膜(3a)の直径に対応する中央穴(6a)を有し、これにより強膜中心(3b)を受けるように意図された凹部を形成する。また、中間コンポーネント(2)は、保存培地のもしくは角膜(3a)の上皮側の任意の他の物質の進入または退出を可能にする少なくとも3つのオリフィス(7a、7b、7c)を備える。オリフィス(7a)は、培地の注入のために使用され得るものであり、第2のオリフィス(7b)は、培地の出力のために使用され得るものであり、第3のオリフィス(7c)は、先に挙げた2つのオリフィスへの流入を妨げる必要性を伴うことなく、培地もしくはさらなる物質の注入または回収を行うためのいわゆるテクニカルオリフィスである。保存培地循環チューブが、これらのオリフィスおよびプラグ(標準的な閉塞栓、または例えば試料もしくは注入物質を取り出すために滅菌針で穿刺可能な閉塞栓)に嵌められ得る。この中間コンポーネントは、内皮リッド(4)を有する追加のロック手段(8)を備える。これらの手段は、中間コンポーネント(2)の外周部に120°おきに配置され、ロックシステム(14b)を受けるように設計された3つの摺動接合部(8)とすることが可能である。この摺動接合部の面の中の1つは、水平に対してある角度をなし、中間コンポーネントに対する内皮リッド(4)の漸進的な締め付けを可能にする。この締め付けにより、2つのコンポーネント間に実シールを生じさせる強膜毛様体ゾーンが平坦化される。摺動接合部(8)の傾斜面は、ロックシステム(14b)上の対応する傾斜面との間の摩擦を増加させるために微小刻み目を有する。増加した摩擦により、バイオリアクタ(1)を取り扱う際の2部コンポーネントの急激なロックが防止される。内皮リッド(4)との間のシールは、円形溝(15b)内に配置されたリング接合部(15a)によって確保される。一例としては、この接合部は、Oリング(15b)とすることが可能である。上皮リッド(5)との間のシールは、円形溝(16b)内に配置されたリング接合部(16a)によって確保される。一例としては、この接合部は、良好な並進性能のために選択されるクワッドリングとすることが可能である。また、中間コンポーネントは、例えばねじ山(9)を使用して上皮リッド(5)により角膜の平坦化を調節することを可能にするシステムを備え、したがってこのねじ山(9)によって調節可能な平坦化が可能となる。
【0040】
図3aおよび
図3bを参照すると、内皮リッド(4)は、2つのセクションで作製される。円筒状容器として機能する第1のセクション(4a)および透明リッドとして機能する第2のセクション(4b)である。これらの2つのコンポーネントは、それらを接着することなどによって液密に組み立てられ、例えば内皮チャンバ(
図6の18)を画成する。第1のコンポーネント(4a)は、液体が角膜内皮(3a)に到達するのを可能にする穴(10a)をその底部に備える。この穴(10a)のエッジ(10b)は、円周溝(6b)に対応するように中間コンポーネント(2)中に突出することにより、追加のロックシステム(8、14a、14b)により中間コンポーネント(2)と内皮リッド(4)との間で強膜(3b)を平坦化しつつ角膜検体をトラップ(trap)する。中間コンポーネントおよび内皮リッドの穴は、同軸状である。内皮リッド(4a)の側壁部は、バイオリアクタ圧力手段(1)に連結されるように意図された保存培地のための入口オリフィス(11a)または出口オリフィス(11b)と、初めに挙げた2つのオリフィスの流れを妨げる必要性を伴わずに試料を取り出し保存培地もしくは任意の他の物質を注入するための「テクニカル」オリフィス(11c)と、を有する。これらのオリフィスは、保存培地循環チューブまたはプラグ(標準的なまたは穿刺可能な)を受けることが可能である。内皮チャンバ内の保存培地注入オリフィス(11a)は、溝(12)へと出て、この溝(12)は、角膜(3a)の内皮面に対して直接的に新鮮な保存培地を送る。また、コンポーネント(4a)の側壁部は、電子圧力マイクロセンサを挿入するためのオリフィス(13)を備える。内皮リッドは、中間コンポーネント(2)との追加のロック手段(14a)を備える。これらの手段は、内皮リッド(4)の外周部に120°おきに配置され、ロックシステム(14b)を受けるように設計された3つのレール(14a)とすることが可能である。このシステムは、レール上を摺動する。これは、
図5aおよび
図5bに詳細に説明されている。内皮リッド(4)は、角膜検体(3)をトラップ(trapping)する内皮チャンバ(18)と呼ばれる空間を画成するために中間コンポーネント(2)に対して緊密にロックし得る。この緊密さは、中間コンポーネント(2)に形成された溝(15b)内に配置されたOリング(15a)によって実現される。内皮リッドは、正立光学顕微鏡、スペキュラーマイクロスコープ、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)、レーザ、または角膜の治療分析のためのおよび可能な限り角膜に近づくことが必要である任意の他の機器の対物レンズを通過させ得るように意図された大型切欠部(4cおよび4d)をエッジに備える。
【0041】
図4を参照すると、上皮リッド(5)は透明である。上皮リッド(5)は、上皮チャンバ(
図6の19)と呼ばれる空間を画成するために中間コンポーネント(2)に対して緊密にロックし得る。上皮リッド(5)は、中間コンポーネント内へと押圧することにより角膜(3)の調節可能な平坦化を可能にするシステムを備える。このシステムは、例えば中間コンポーネントの追加のねじ山(9)中に摺動するねじ山(17)などとしてもよく、したがって正確かつ選択可能な平坦化を可能にする。角膜(3a)の上皮側と接触状態になる表面は、本明細書に示すように平坦とすること、または湾曲状とすることが可能である。
【0042】
図5aおよび
図5bを参照すると、内皮リッド(4)と中間コンポーネント(2)との間の追加の閉鎖システムは、一方ではその外周部上の内皮リッドのコンポーネント(4a)の外部側に連結され、120°おきに位置決めされ3つのレール(14a)と、他方ではレール(14a)上を摺動する3つのロックシステム(14b)とから構成される。ロックシステム(14b)の上方部分は、相補形状を有するレール(14a)上を摺動し得るT字型溝(14d)を備える。閉鎖システム(14b)の下方部分は、付勢されるエッジ(14f)を有する溝(14e)を備える。この付勢されるセクション(14)は、中間コンポーネント(2)にやはり付勢され連結されるレール(8)と接触状態になり得るものであり、それによりレール(14a)上における閉鎖システム(14b)の並進移動が、ある角度でこれらの2つの表面に衝突し、中間コンポーネント(2)への内皮リッド(4)の漸進的な締め付けを引き起こす。この締め付けは、中間コンポーネント(2)および内皮リッド(4)のそれぞれの穴(6a)および(10a)の表面(6b)と(10b)との間において強膜毛様体ゾーン(3b)を押しつぶす。強膜(3b)に対して実施されるこの締め付けにより、角膜試料(3)は完全に固定される一方で、角膜(3a)の完全性が保持される。レール(8)のおよびロックシステム(14b)の2つの付勢されるセクションは、一方を他方に対してロックし、急激なロック解除を防止するのをより容易にするように微小刻み目を有する。また、ロックシステムの外部部分(14c)も、指同士の間に把持するのをより容易にするように微小刻み目を有する。
【0043】
図6を参照すると、バイオリアクタ(1)は、中間コンポーネント(2)および内皮リッド(4)のそれぞれの2つの同軸穴(6aおよび10a)の対向側に配置される内皮リッド(4)および上皮リッド(5)の透明壁部により、角膜(3)の対向側にて完全に透明である。この透明性により、可視光は、障害物を伴わずに通過することが可能となり(検査員による角膜の視覚制御または機械制御)、さらに紫外光(例えば角膜コラーゲンの架橋)、解析(例えば光コヒーレンストモグラフィ撮像)、細胞治療(角膜内における生物学的プロセスの活性化)、もしくは組織治療(角膜の切断)を目的とするレーザ光線、または任意の他の光波長の光の通過が可能となる。これらのオペレーションは全て、どの時点においても、およびバイオリアクタを開く必要性を伴うことなく実施され得る。内皮リッド(4)は、中間コンポーネント(2)を覆って閉じられると内皮チャンバ(18)を画成する。中間コンポーネント(2)と上皮リッド(5)との間の空間は、上皮チャンバ(19)を画成する。
【0044】
実際には、角膜移植のための本発明によるバイオリアクタ(1)の使用は、3つのステージに、すなわちステージ1のドナーからの摘除と、ステージ2の角膜バンクによる保存と、その後のステージ3の手術室での移植とに区分される。
【0045】
ステージ1の摘除時に、中間コンポーネント(2)および内皮リッド(4)は分離される一方で、中間コンポーネント(2)および上皮リッド(5)は接合される。角膜試料(3)は、中間コンポーネント(2)の穴(6a)のエッジ(6b)および(6c)により形成された空洞部内に配置される。次いで、内皮リッド(4)は、中間コンポーネント(2)にクリック嵌めされ、したがって角膜試料(3)の強膜毛様体ゾーン(3b)を押しつぶすことによって2つのセクション(2、4)間に角膜試料(3)をトラップする。このとき、角膜(3a)は、内皮チャンバ(18)に露出された内皮側と、上皮チャンバ(19)に露出された上皮側とを有する。次いで、レール(14a)に沿って指で3つのロックシステム(14b)を摺動させることによって追加のロック手段が閉じられる。次いで、保存培地循環チューブが、中間コンポーネント(2)のおよび内皮リッド(4)のオリフィス(7a、7bおよび11a、11b)に連結される。別の製作形態において、チューブは、内皮リッド(4)および中間コンポーネント(2)に事前に取り付けられてもよい。テクニカルオリフィス(7c)およびテクニカルオリフィス(11c)は、単純な閉塞栓または穿刺し得る閉塞栓で閉鎖された状態に留まる。これらのチューブは、内皮チャンバ内の超過圧力を用いた保存培地循環および圧力勾配デバイスに連結される(
図8および
図9に説明されている)。
【0046】
ステージ2の角膜バンクでの保存時には、バイオリアクタは、角膜細胞を生存状態に維持することが可能であり、角膜浮腫、すなわち組織透明性の原因となるものの喪失を防止し、角膜内皮細胞の過剰な死亡率に関与する後方折り重なりを抑制する。バイオリアクタは、保存培地に応じて1〜40℃の間の任意の温度で使用されてもよい。角膜に関する品質制御テストは、バイオリアクタを開くことなく実施され得る。なぜならば、バイオリアクタは、完全に透明であり、超音波の利用に適合した材料から構成されるという利点を有するからである。さらに、このバイオリアクタは、任意の位置(水平方向または垂直方向)にて機能性を有し、移植片の測定デバイスまたは治療デバイスの通過を容易にするために内皮リッド(4)に大型切欠部を有する。品質制御は、以下のもの、すなわち透明性の評価(眼科医用細隙灯または任意の他の透明性定性デバイスによる)、厚さの測定(移植片全体のまたは切断移植片の)、および調製を伴わないスペキュラーマイクロスコピーかまたは移植片の調製後の標準的な光学顕微鏡検査のいずれかによる内皮細胞の計数(移植片の調製に必要とされる試薬は、内皮リッド(4)のテクニカルオリフィス(11c)を介して注入され得る)を含み得るが、それらに限定されない。さらに、透明なバイオリアクタを有する利点により、有利にはバンク保存ステージ2の任意の時点においてレーザで移植片を切断することが可能となる。これは、内皮側または上皮側のいずれかで実施され得る。これは、上皮リッド(5)により角膜を平坦化することによってより容易になり得る。
【0047】
バイオリアクタは、有利にはいずれの方向においても使用され得るが、通常の位置は、角膜試料が上皮を下にした状態で配向された状態である。この位置では、回路中に存在する気泡が内皮側の角膜ドームの下方に捕獲された状態に留まることが重要となる。逆に言うと、これらの泡は、角膜の観察および角膜内皮の分析を実際に混乱させることがある。
【0048】
また、バイオリアクタは、例えば標準的な眼科医用細隙灯で角膜を検査するために、有利には垂直方向に使用され得る。
【0049】
有利には、保存ステージ2の際の角膜内皮の検査は、上皮リッド(5)を用いて角膜ドームを平坦化することにより、合焦を困難にするとともに視差の原因となる、角膜の湾曲を解消することによって、より容易になり得る。
【0050】
テクニカルオリフィス(7c)および(11c)は、例えばウイルスベクター、化学ベクター、または物理化学ベクターなどを使用した細胞間トランスフェクションによって移植片の細胞治療を実施するために、保存ステージ2の際に角膜検体細胞の調節を実施するのに必要とされる試薬の注入を可能にし得る。
【0051】
これらのテクニカルオリフィスにより、ステージ2の際に微生物無菌試験を実施するために保存培地試料から試料を除去することが可能となる。
【0052】
手術室内移植ステージ3の際には、角膜検体は、角膜バンクにて実施されない場合には、上皮リッド(5)による角膜ドームの平坦化を伴ってまたは伴わずにバイオリアクタ(1)内で直接的にレーザにより切断され得る。
【0053】
バイオリアクタ(1)は、手術室内移植ステージ3の際に移植の実施前に最後の可能な時点で開いている。これは、バイオリアクタが開いている唯一の時点となる。追加のロック手段(14b)は、内皮リッド(4)および中間コンポーネント(2)の分離を可能にするために手術室の看護師によってロック解除される。したがって、角膜試料(3)は、中間コンポーネント(2)の中央空洞部内に配置された状態に留まり、外科医は、無菌外科用クランプを使用してこの角膜試料(3)を取る。
【0054】
図7を参照すると、バイオリアクタ(1)は、組み立てられた位置において、中間コンポーネント(2)と内皮リッド(4)との間にしっかりとエントラップされた角膜試料(3)を収容した気密アセンブリになる。中間コンポーネントのおよび内皮リッドのオリフィスは、保存培地循環および内皮側の超過圧力を用いた圧力勾配の生成により連結される。
【0055】
バイオリアクタ(1)は、任意の位置において使用され、その特性を維持し得る。したがって、バイオリアクタ(1)は、任意の光学機器の正面に配置することが可能であり、例えば垂直位置において眼科医用細隙灯の正面に位置決めすることが可能である。
【0056】
図8を参照すると、バイオリアクタ(1)は、チューブを介して、2つのチャンバ(内皮チャンバ(18)および上皮チャンバ(19))内の保存培地の循環と、内皮チャンバ内の超過圧力を用いた圧力勾配の維持とを確保する異なる要素に連結される。
図8では、圧力は、電子デバイスによって能動的に調整される。内皮チャンバ(18)内の圧力Poは、上皮チャンバ(19)の圧力よりも高い。このPo圧力は、調節可能であるが、12〜20mmHgの範囲におよび生理学的眼内圧であることが可能である。例えば、この圧力は、以下のように調整され得る。ある作製形態において、保存培地は、加圧リザーバ(20)(例えばエラストマー膜式、ばね式、または圧縮ガス式注入デバイスなど)内に収容され、別の作製形態において、保存培地は、ポンプにより注入される。このリザーバにより、バイオリアクタの内皮チャンバ(18)内への液体の注入が可能となる。注入は、内皮チャンバ内の圧力Poに従ってマイクロソレノイド弁(21)によって(持続期間および頻度が)制御される。この調整は、継続的にまたは事前に確立されたPo頻度に従って測定を行う圧力変換器(24)を備える制御ループによって実施される。調整器(22)は、オペレータにより決定される設定値(23)(例えば12〜20mmHg)に従ってソレノイド弁の開閉命令を与える。内皮チャンバの出口では、保存液は、第2の受動弁(25)を通り進み、この第2の受動弁(25)は、流量を低減させ、ソレノイド弁が閉じられ液体が注入されない場合にPoの急激な低下を防止する。この第2の弁は、微細ガラス毛管流レストリクタまたはある特定の圧力超でのみ開く受動弁(いわゆる逆止弁)であることが可能である。次いで、保存培地は、上皮チャンバ(19)内に、次いで微生物汚染物質の逆流を防止するフィルタ(27)を通り、「廃棄物容器」(26)として使用され周囲圧力で開かれるリザーバ内に送られる。
【0057】
図9を参照すると、圧力勾配もまた、受動的に調整され得る。保存培地は、例えばエラストマー膜式、ばね式、もしくは圧縮ガス式注入デバイスなどの加圧リザーバ(20)内に、またはポンプにより収容される。このリザーバにより、バイオリアクタ(1)の内皮チャンバ(18)内への液体の注入が可能となる。リザーバ出口(20)の例えば細ガラス毛管などの流量調整器(27)により、内皮チャンバ(18)内への低速のおよび一定の注入が可能となる。Poが所望の圧力(例えば12〜20mmHg)に到達した場合に開くように選択された1つまたは複数の制御弁(逆止弁と呼ばれる)(28)が、内皮チャンバ(18)の出口に配置される。このようにすることで、Poは、選択された圧力を決して超過せず、培地が内皮チャンバ(18)内に注入される限りはその圧力に留まる。次いで、保存培地は、上皮チャンバ内に、次いで次いで微生物汚染物質の逆流を防止するフィルタ(27)を通り、廃棄物容器(26)として使用され周囲圧力で開かれるリザーバ内に送られる。
【0058】
言うまでもないが、本発明は、一例として上述した作製形態に限定されず、添付の特許請求の範囲により含まれる全ての作製形態を包含する。
【0059】
生物学的関心対象および平坦化関心対象は、以下のように露出され得る。
特許請求されるデバイスは、手段(2、4、5)を備える。特許請求されるデバイスは、無菌条件下において数週間にわたり、患者内への角膜移植用のヒトの角膜を生存状態に保持することを、ならびに無菌条件下で数週間にわたり、基本および/または前臨床研究生体外(ex vivo)実験室内実験用のヒトまたは動物の角膜を生存状態に保持することを可能にする。
【0060】
内皮側の超過圧力を用いた内皮側と上皮側との間の調節可能な圧力勾配は、角膜基質浮腫の出現を制限し、バイオリアクタ内に角膜検体を配置する前にその浮腫が存在する場合には浮腫を軽減させることにより、後方角膜の折り重なりの出現を制限し、角膜細胞、特に内皮細胞の生存性を向上させる。
【0061】
角膜バイオリアクタは、任意の位置において、特に水平方向または垂直方向において使用され得る。
【0062】
角膜バイオリアクタが、角膜上皮が下方を向いた状態で水平方向位置にて使用される場合には、回路内に存在する気泡は、角膜ドームの下方に蓄積し得ず、角膜の検査を混乱させない。
【0063】
上皮コンパートメントの透明リッドは、角膜上皮と接触状態になり、平坦(または湾曲)表面により角膜ドームを平坦化する(伸展させる)ことによって、レーザ加工を利用した角膜切断を容易化するために、正確かつ調節可能に変位され得る。
【0064】
超音波の通過に適合する透明材料から作製されたこのリッドにより、バイオリアクタを開くことなくレーザ切断の前および/もしくは後にまたは任意の他の方法によって、角膜の厚さを測定可能となるように超音波診断を実施することが可能となる。
【0065】
上皮リッドは、内皮コンパートメント(18)内の超過圧力を維持しつつ除去され得る。これにより、手作業による切離によってまたはマイクロケラトームによって角膜切断を実施することが可能となり得る。これは、周囲空気に露出された角膜の上皮側において物質の点眼が必要となる生体外(ex vivo)実験においては有用となり得る。
【符号の説明】
【0066】
1 バイオリアクタ
2 中間角膜検体支持コンポーネント
3 角膜検体
3a 角膜内皮
3b 強膜
4 内皮リッド
4a 第1のセクション
4b 第2のセクション
4c 大型切欠部
4d 大型切欠部
5 上皮リッド
6a 中央穴
6b 円周溝
6c エッジ
7a オリフィス
7b オリフィス
7c オリフィス
8 追加のロック手段
9 ねじ山
10a 穴
10b エッジ
11a 入口オリフィス
11b 出口オリフィス
11c テクニカルオリフィス
12 溝
13 オリフィス
14a 追加のロック手段
14b ロックシステム
14c 外部部分
14d T字型溝
14e 溝
14f エッジ
15a リング接合部
15b Oリング(円形溝)
16a リング接合部
16b 円形溝
17 ねじ山
18 内皮チャンバ
19 上皮チャンバ
20 加圧リザーバ
21 マイクロソレノイド弁
22 調整器
23 設定値
24 圧力変換器
25 第2の受動弁
26 廃棄物容器
27 フィルタ
28 制御弁