(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、実施形態によるエレベータ制御システムの構成を例示したブロック図である。
図1に示される例では、昇降機のリニューアルが行われたことに伴い、制御盤20を含む各構成も置き換えられたものとする。
【0009】
図1に示されるように、エレベータ制御システムは、制御盤20と、監視盤30と、端子箱40と、追加伝送ユニット10と、を備えている。そして、制御盤20と追加伝送ユニット10との間が、昇降路用の伝送ケーブル(以下、昇降路ケーブルと称す)50で接続されている。さらには、監視盤30と追加伝送ユニット10との間が、建屋用の伝送ケーブル(以下、建屋ケーブルと称す)60で接続されている。
【0010】
エレベータ制御システムにおいては、制御盤20と監視盤30との間はシリアル伝送で信号の送受信を行う。
【0011】
本実施形態の制御盤20は、エレベータコントローラ21と、伝送ユニット22と、終端抵抗23と、を備えている。
【0012】
エレベータコントローラ(制御装置)21は、エレベータの運転を制御する。エレベータコントローラ21は、伝送ユニット22を用いることで、データの送受信を行うことができる。
【0013】
伝送ユニット(第1の伝送装置)22は、エレベータコントローラ21が監視盤30とデータを送受信するために、シリアル伝送を行う。シリアル伝送の手法としては、例えば、2線式、半二重、マルチポイントシリアル接続を行うEIA-485を用いることが考えられるが、伝送手法を制限するものではなく、どのような伝送手法を用いても良い。
【0014】
終端抵抗23は、昇降路ケーブル50の終端に設けられているものであって、昇降路ケーブル50の特性インピーダンスと整合性のとれる終端抵抗として設けられている。
【0015】
昇降路ケーブル(更新後の第1のケーブル)50は、機械室及び昇降路に敷設されたケーブルであって、エレベータのリニューアルと共に、伝達周波数に合うように交換されたケーブルとする。
【0016】
監視盤30は、監視用コントローラ31と、伝送ユニット32と、終端抵抗33と、を備えている。
【0017】
監視用コントローラ(監視装置)31は、エレベータの運転状況を監視すると共に、操作スイッチの入出力を制御する。監視用コントローラ31は、伝送ユニット32を用いることで、データの送受信を行うことができる。
【0018】
伝送ユニット(第2の伝送装置)32は、監視盤30の監視用コントローラ31が制御盤20とデータを送受信するために、シリアル伝送を行う。
【0019】
終端抵抗33は、建屋ケーブル60の終端に設けられているものであって、建屋ケーブル60の特性インピーダンスと整合性のとれる終端抵抗として設けられている。
【0020】
建屋ケーブル(第2のケーブル)60は、エレベータのリニューアル前から、当該エレベータが設けられた建屋内に敷設されたケーブルとする。
【0021】
端子箱(接続装置)40は、リニューアル前に、昇降路ケーブル50と建屋ケーブル60とを接続するために用いられていたが、リニューアル後には、少なくとも昇降路ケーブル50と建屋ケーブル60とを接続するためには用いられていない構成とする。
【0022】
ところで、従来エレベータが設置される建物で、高層ビルのように階床表示信号などの入出力信号が多くなる場合、エレベータから監視盤への配線の本数が多くなる。これにより、敷設されるケーブルが増加する。そこで、エレベータと監視盤とをシリアル伝送により信号授受を行うことで、ケーブルを低減させることができる。
【0023】
エレベータが設置当初の機種から新しい機種に交換工事が行われる場合、シリアル伝送技術の向上により伝送速度が向上している。このため、エレベータの交換工事の際に、他の制御ケーブルの交換と共に、エレベータの昇降路(機械室を含む)に敷設されたケーブルを、伝送速度に合わせたケーブルに交換することが望ましい。
【0024】
しかしながら、エレベータから監視盤までの伝送ケーブルの交換は、建屋の工事となる。このため、伝送ケーブル全てを交換することは難しい。
【0025】
図1に示されるエレベータ制御システムは、エレベータのリニューアルに伴って、制御盤20を交換したものである。そして、伝送速度の向上に伴って、昇降路ケーブル50の交換と共に、監視盤30に含まれている監視用コントローラ31、伝送ユニット32、終端抵抗33を交換している。さらには、追加伝送ユニット10が追加されている。換言すればエレベータがリニューアルされたにもかかわらず、建屋ケーブル60を交換せずに利用している形態とする。次に、エレベータのリニューアル前の構成について説明する。
【0026】
図2は、リニューアル前のエレベータ制御システムの構成を例示したブロック図である。
図2に示されるように、リニューアル前のエレベータ制御システムは、制御盤20aと、監視盤30aと、端子箱40と、を備えている。なお、リニューアル後と同様の構成については同一の符号を割り当てるものとする。
【0027】
図2に示されるように、エレベータのリニューアル前には、制御盤20aと、昇降路ケーブル(更新前の第1のケーブル)50aと、が用いられていた。さらに、監視盤30a内には、監視用コントローラ31a、伝送ユニット32a、及び終端抵抗33aが用いられていた。
【0028】
制御盤20aは、リニューアル前の構成として、エレベータコントローラ21aと、伝送ユニット22aと、終端抵抗23aと、を備えている。
【0029】
エレベータコントローラ21aは、リニューアル前のエレベータを制御していた。伝送ユニット22aは、監視盤30aの伝送ユニット32aとの間をシリアル伝送で、データの送受信をしていた。
【0030】
終端抵抗23aは、昇降路ケーブル50aの終端に設けられているものであって、リニューアル前の昇降路ケーブル50a及び建屋ケーブル60の特性インピーダンスと整合性のとれる終端抵抗として設けられていた。
【0031】
端子箱40は、接続端子台を有し、伝送ケーブル間を接続する機能を有する。例えば、端子箱40は、昇降路ケーブル50aと建屋ケーブル60とを接続していた。
【0032】
監視盤30aは、監視用コントローラ31aと、伝送ユニット32aと、終端抵抗33aと、を備えている。監視用コントローラ31aは、リニューアル前のエレベータの運転状況を監視する。なお、本実施形態は、エレベータのリニューアルに伴い、監視用コントローラ31aを交換する例について説明するが、伝送ユニット32aから受信したデータの表示等が可能であれば良いため、監視用コントローラ31aを交換しない例であっても良い。
【0033】
伝送ユニット32aは、制御盤20aの伝送ユニット22aとの間をシリアル伝送で、データの送受信をしていた。
【0034】
終端抵抗33aは、建屋ケーブル60の終端に設けられているものであって、交換前の昇降路ケーブル50a及び建屋ケーブル60の特性インピーダンスと整合性のとれる終端抵抗として設けられていた。
【0035】
図2に示されるように、リニューアル前においては、端子箱40を介して、制御盤20aと監視盤30aとの間で、双方向にデータの送受信を可能としていた。
【0036】
エレベータをリニューアルする場合に、制御盤20a、昇降路ケーブル50a、監視盤30aの伝送ユニット32aを交換する必要が生じる。しかしながら、伝送ユニット32aの交換に合わせて、建屋ケーブル60を交換すると、工事に時間とコストを要することになる。そこで、本実施形態では、建屋ケーブル60を交換せずにそのまま使うこととした。
【0037】
図3は、伝送ケーブルの特性インピーダンスを例示した図である。
図3で示される例では、縦軸に特性インピーダンスを示し、横軸に伝送周波数を示している。
図3に示す例では、伝送ケーブルとしてツイストペア伝送ケーブルを用いた例について説明するが、他の伝送ケーブルであっても良い。既設の建屋ケーブルを点線301として示している。点線301に示されるように、従来の伝送周波数f1より高い伝送周波数f2に変更された場合、特性インピーダンスが値Z1(Ω)となる。これに対して、新たに敷設された昇降路ケーブルは、線302として示している。昇降路ケーブルは伝送周波数f2で使用される。この場合、線302で示されるように、特性インピーダンスが値Z2となり、既設の建屋ケーブルとインピーダンスがずれてしまう。
【0038】
このケーブル間のインピーダンスのずれが数十(Ω)以上となると、伝送ケーブルを接続する接続部(例えば、端子箱40)で特性インピーダンスの不連続点が生じる。不連続点が生じると、反射が発生することで伝送信号が乱れる可能性がある。さらには、反射を抑えるために設置する終端抵抗もケーブルの特性と合わなくなる。このように、ずれを無視するのが難しくなる。
【0039】
このため、リニューアルした後に、昇降路ケーブル50と建屋ケーブル60とを単に端子箱40で接続しただけでは不連続点が生じる。そこで、本実施形態においては、不連続点を生じさせないように、追加伝送ユニット10を追加している。
【0040】
換言すれば、本実施形態では、追加伝送ユニット10を設けることで、昇降路ケーブル50と、建屋ケーブル60と、を回路的に分離することとした。
【0041】
図1に戻り、追加伝送ユニット10について説明する。追加伝送ユニット10は、エレベータが更新された場合に、伝送ユニット22とデータを送受信するためにエレベータの昇降路に設けられた昇降路ケーブル50と、伝送ユニット32とデータを送受信するために建屋内に設けられた建屋ケーブル60と、を接続していた端子箱40の代わりとして設けられた装置とする。
【0042】
追加伝送ユニット(第3の伝送装置)10は、伝送ユニット11と、終端抵抗12と、終端抵抗13と、端子台14と、端子台15と、コネクタ部16と、を備えている。追加伝送ユニット10は、昇降路内で交換された伝送路と、既設の建屋側に設置されている伝送路と、を接続する伝送装置として機能する。
【0043】
伝送ユニット11は、第1の伝送ドライバ11a(第1の伝送部)と、第2の伝送ドライバ11b(第2の伝送部)と、制御回路(制御部)11cと、を備えている。
【0044】
制御回路11cは、第1の伝送ドライバ11a及び第2の伝送ドライバ11bの間を接続し、これらの間の信号(情報)の送受信を制御する。例えば、制御回路11cは、第1の伝送ドライバ11a及び第2の伝送ドライバ11bのうち一方から入力された信号を内部信号に変換し、再び第1の伝送ドライバ11a及び第2の伝送ドライバ11bのうち他方で伝送信号に変換する。
【0045】
これにより、制御回路11cは、第1の伝送ドライバ11aが受け取ったデータを、第2の伝送ドライバ11bに受け渡したり、第2の伝送ドライバ11bが受け取ったデータを、第1の伝送ドライバ11cに受け渡したりすることができる。従って、制御盤20からの伝送信号が監視盤30に出力され、監視盤30からの伝送信号が、制御盤20に出力される。
【0046】
第1の伝送ドライバ11aは、コネクタ部16を介して昇降路ケーブル50と接続され、昇降路ケーブル50を介して、制御盤20の伝送ユニット22と接続する。これにより、第1の伝送ドライバ11aは、制御盤20の伝送ユニット22との間で、データの伝送(送受信)を行う。
【0047】
第2の伝送ドライバ11bは、端子台15を介して建屋ケーブル60と接続され、建屋ケーブル60を介して、監視盤30の伝送ユニット32と接続する。これにより、第2の伝送ドライバ11bは、監視盤30の伝送ユニット32との間で、データの伝送(送受信)を行う。
【0048】
終端抵抗(第1の終端抵抗)12は、昇降路ケーブル50の終端に設けられ、リニューアル後の伝送周波数f2に対応する昇降路ケーブル50の特性インピーダンスZ2(Ω)に対応する抵抗値Z2を有する抵抗とする。終端抵抗12は、追加伝送ユニット10内部に設けられた端子台14から接続されている。
【0049】
終端抵抗(第2の終端抵抗)13は、建屋ケーブル60の終端に設けられ、リニューアル後の伝送周波数f2に対応する建屋ケーブル60の特性インピーダンスZ1(Ω)に対応する抵抗値Z1を有する抵抗とする。
【0050】
図4は、本実施形態の追加伝送ユニット10及び端子箱40の外観を例示した図である。
図4に示されるように、追加伝送ユニット10は、板金で構成された箱形部402に、伝送ユニット11を構成する第1の伝送ドライバ11a、第2の伝送ドライバ11b、制御回路11cが内蔵された構成とする。さらに、追加伝送ユニット10は、箱形部402の外壁にコネクタ部16と、端子台15と、が設けられている。
【0051】
図4に示されるように、追加伝送ユニット10には、端子箱40が建屋ケーブル60と接続していた端子台401と同じ端子台15が設けられている。そして、追加伝送ユニット10は、端子台15を用いることで、既存の建屋ケーブル60を加工することなく、建屋ケーブル60と接続できる。これにより、加工ミスによる接続不良を抑止できる。
【0052】
本実施形態の追加伝送ユニット10は、建屋ケーブル60と接続する端子台15が、追加伝送ユニット10の箱形部402の外壁に、終端抵抗13を接続可能に設けられている。これにより、既設の伝送路の特性インピーダンスに合わせた終端抵抗13の接続が容易になる。
【0053】
一方、昇降路ケーブル50が交換されるため、終端抵抗12は、現場に応じて特性インピーダンスが異なるという事態は生じない。そこで、交換される昇降路ケーブル50に応じた終端抵抗12を、追加伝送ユニット10内に予め設けておけば良い。また、昇降路ケーブル50を交換するため、追加伝送ユニット10は、昇降路ケーブル50と接続するコネクタ部16を、当該昇降路ケーブル50と接続可能なコネクタ形状とした。これにより、現場での昇降路ケーブル50の接続作業が容易になる。さらに、昇降路ケーブル50と接続するコネクタ部16の形状を、建屋ケーブル60と接続する端子台15と異なる形状とすることで、ケーブルの接続ミスを抑止することができる。
【0054】
図4に示されるように、本実施形態では、箱形部402の外壁に設けられた端子台15から終端抵抗13を接続することとした。一般的に、終端抵抗は設置する現場毎に建屋ケーブルの特性インピーダンスが異なると考えられる。そこで、本実施形態では、外壁に設けられた端子台15から、特性インピーダンスに対応した終端抵抗を接続できるようにしたことで、現場における作業負担を軽減した。これにより、複数の現場に共通の追加伝送ユニット10を提供することが可能となる。
【0055】
また、箱形部402の側面には二カ所の穴403a、403bが設けられている。そして、現場で、作業者が、端子箱40に対して二カ所穴を開ける加工を行う。その後に、端子箱40と追加伝送ユニット10とをボルトナットで結合する。これにより、追加伝送ユニット10を端子箱40の近傍に取り付けることができる。したがって、既存の建屋ケーブル60に対して継ぎ足しや追加等の加工を行うことなく、建屋ケーブル60を追加伝送ユニット10に接続できる。
【0056】
本実施形態では、追加伝送ユニット10に対して、昇降路ケーブル50及び建屋ケーブル60を接続することとした。これにより、制御盤20から追加伝送ユニット10までの伝送経路、及び追加伝送ユニット10から監視盤30までの伝送路に特性インピーダンスの不連続点は生じないため、双方の伝送路に適した終端抵抗が設置されることで、伝送信号の反射による伝送信号の乱れを抑止できる。
【0057】
これにより、本実施形態は、交換する昇降路ケーブルと、既設の建屋ケーブルと、を物理的に分割し、各々の伝送路に伝送周波数及びケーブルの特性インピーダンスに応じた終端抵抗を設けることで、特性インピーダンスの不連続点を無くして、信号の反射を抑止することが可能となった。
【0058】
本実施形態では、エレベータ制御システムが、上述した構成を備えたことで、昇降機のリニューアルで伝送速度が変化した場合でも、建屋の伝送ケーブルを交換することなく、反射による伝送信号の乱れを抑止できる。
【0059】
また、本実施形態はエレベータのリニューアルについて説明したが、エレベータに制限するものではなく、例えば、エスカレータなどを含めた昇降機の交換、リニューアルであれば良い。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【解決手段】昇降機制御システムは、制御装置21と、第1の伝送装置22と、監視装置31と、第2の伝送装置32と、第3の伝送装置10と、を備える。制御装置は、昇降機の運転を制御する。第1の伝送装置は、制御装置から情報を送受信する。監視装置は、昇降機の運転状況を監視する。第2の伝送装置は、監視装置から情報を送受信する。第3の伝送装置は、更新後の第1のケーブル50を介して第1の伝送装置と接続して情報を送受信する第1の伝送部11aと、第2のケーブル60を介して第2の伝送装置と接続して情報を送受信する第2の伝送部11bと、第1の伝送部と第2の伝送部との間の情報の送受信を制御する制御部11cと、更新後の第1のケーブルの終端に第1の終端抵抗12と、第2のケーブルの終端に第2の終端抵抗13と、を有する。