(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プライマー組成物に含まれるエチレン性不飽和基を有する化合物として、少なくとも、置換基を有してもよいフェノキシ基と、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基とを有する、フェノキシアルキル(メタ)アクリレートであるA成分)がプライマー組成物全量中1質量%以上30質量%以下、脂環構造を有する(メタ)アクリレートであるB成分)がプライマー組成物全量中30質量%以上70質量%以下、前記A成分)以外の芳香族環を有する(メタ)アクリレートであるC成分)がプライマー組成物全量中1質量%以上15質量%以下、前記A成分)、前記B成分)及び前記C成分)以外の水酸基を有する(メタ)アクリレートであるD成分)がプライマー組成物全量中1質量%以上30質量%以下と、が含まれる下塗り液を基材上に直接又は他の層を介して塗布する下塗り液塗布工程と、
前記基材上に直接又は他の層を介して塗布された下塗り液に活性エネルギー線を照射して前記下塗り液に含まれるプライマー組成物を硬化させて最外層にプライマー層を形成するプライマー層形成工程と、を含み、
前記プライマー層積層側の積層体表面の算術平均粗さRaが0.8μm以上である積層体の製造方法。
プライマー組成物に含まれるエチレン性不飽和基を有する化合物として、少なくとも、置換基を有してもよいフェノキシ基と、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基とを有する、フェノキシアルキル(メタ)アクリレートであるA成分)がプライマー組成物全量中1質量%以上30質量%以下、脂環構造を有する(メタ)アクリレートであるB成分)がプライマー組成物全量中30質量%以上70質量%以下、前記A成分)以外の芳香族環を有する(メタ)アクリレートであるC成分)がプライマー組成物全量中1質量%以上15質量%以下、前記A成分)、前記B成分)及び前記C成分)以外の水酸基を有する(メタ)アクリレートであるD成分)がプライマー組成物全量中1質量%以上30質量%以下と、が含まれる下塗り液を、前記プライマー組成物の硬化後にプライマー層積層側表面の算術平均粗さRaが0.8μm以上となるように基材上に直接又は他の層を介して塗布する下塗り液塗布工程と、
前記基材上に直接又は他の層を介して塗布された下塗り液に活性エネルギー線を照射して前記下塗り液に含まれるプライマー組成物を硬化させて、プライマー層を形成するプライマー層形成工程と、を含むインク記録方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の下塗り層(プライマー層)は、多種の基材に対して密着性を向上させることのできる優れた下塗り層(プライマー層)である。しかし、特許文献1に記載の下塗り層(プライマー層)は、密着性を向上させるためにタック感を有するものであるが、前記した下塗り層(プライマー層)上に着色層を形成した場合、形成後一定時間経過後に当該着色層表面にタック感(粘着感)が浮き出てくる現象が見られた。この表出したタック感のために空気中の埃等が付きやすくなったりするため、このような下塗り層(プライマー層)は取り扱いに注意が必要になる点で好ましくない。
【0009】
これは、特許文献1に記載の下塗り液には、硬化性の遅いフェノキシエチル(メタ)アクリレートが含まれていること、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートが組成物中に40質量%以上80質量%以下と大量に添加されていることに起因する。
【0010】
一方で、下塗り層(プライマー層)にタック感を付与するのはフェノキシエチル(メタ)アクリレートであるため、40質量%未満にすると着色層との十分な密着性が得られなくなる。そのため、プライマー層としての特性が低下する。
【0011】
このため、プライマー層の密着性及びタック性は本来トレードオフの関係にあり、これらを両立することのできるプライマー層を備える積層体の開発が強く望まれている。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、普通紙等の吸水性基材、又はプラスチック等の非吸水性基材を記録媒体として使用する場合に、着色層に対して良好な密着性及びタック性が低い積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、フェノキシアルキル(メタ)アクリレートを1質量%以上30質量%以下とし、プライマー層積層側の積層体表面の算術平均粗さRaを0.8μm以上とした積層体とすることで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では以下のようなものを提供する。
【0014】
(1)基材と、前記基材上に直接又は他の層を介して形成されるプライマー層とが備えられた積層体であって、前記プライマー層は、前記積層体の最外層に備えられ、前記プライマー層はエチレン性不飽和基を有する化合物を含むプライマー組成物を硬化してなり、前記エチレン性不飽和基を有する化合物として、A成分):置換基を有してもよいフェノキシ基と、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基とを有する、フェノキシアルキル(メタ)アクリレートと、B成分):脂環構造を有する(メタ)アクリレートと、C成分):前記A成分)以外の芳香族環を有する(メタ)アクリレートと、D成分):前記A成分)、前記B成分)及び前記C成分)以外の水酸基を有する(メタ)アクリレートと、のうち少なくともA成分)と、D成分)と、B成分)及び/又はC成分)と、を含み、前記プライマー組成物全量における、前記A成分)が1質量%以上30質量%以下、前記B成分)が30質量%以上70質量%以下、前記C成分)が1質量%以上15質量%以下、前記D成分)が1質量%以上30質量%以下であり、前記プライマー層積層側の積層体表面の算術平均粗さRaが0.8μm以上である積層体。
【0015】
(2)さらにエチレン性不飽和基を有する化合物として、E成分):Tgが−30℃以下の単官能モノマーであって前記A成分)、前記B成分)、前記C成分)、及び前記D成分)以外のアルキル(メタ)アクリレートを含み、前記プライマー組成物全量における、前記E成分)が1質量%以上10質量%以下である(1)に記載の積層体。
【0016】
(3)さらにエチレン性不飽和基を有する化合物として、F成分):前記A成分)、前記B成分)、前記C成分)、前記D成分)、及び前記E成分)以外の多官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーを含み、前記プライマー組成物全量における、前記F成分)が1質量%以上20質量%以下である(1)又は(2)に記載の積層体。
【0017】
(4)前記B成分)がTgの異なる2種以上の化合物である(1)から(3)のいずれかに記載の積層体。
【0018】
(5)25℃におけるJIS K2207に準拠する針入度が17以上30以下であるプライマー層を備える(1)から(4)のいずれかに記載の積層体。
【0019】
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の積層体の前記プライマー層積層側の積層体表面に、さらに着色剤が含有された着色層が備えられた着色層付積層体。
【0020】
(7)(1)から(5)のいずれかに記載の積層体を形成するプライマー組成物。
【0021】
(8)(1)から(5)のいずれかに記載の積層体を形成するインクジェット用のプライマー組成物。
【0022】
(9)プライマー組成物に含まれるエチレン性不飽和基を有する化合物として、少なくとも、置換基を有してもよいフェノキシ基と、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基とを有する、フェノキシアルキル(メタ)アクリレートであるA成分)がプライマー組成物全量中1質量%以上30質量%以下、脂環構造を有する(メタ)アクリレートであるB成分)がプライマー組成物全量中30質量%以上70質量%以下、前記A成分)以外の芳香族環を有する(メタ)アクリレートであるC成分)がプライマー組成物全量中1質量%以上15質量%以下、前記A成分)、前記B成分)及び前記C成分)以外の水酸基を有する(メタ)アクリレートであるD成分)がプライマー組成物全量中1質量%以上30質量%以下と、が含まれる下塗り液を基材上に直接又は他の層を介して塗布する下塗り液塗布工程と、前記基材上に直接又は他の層を介して塗布された下塗り液に活性エネルギー線を照射して前記下塗り液に含まれるプライマー組成物を硬化させて最外層にプライマー層を形成するプライマー層形成工程と、を含み、前記プライマー層積層側の積層体表面の算術平均粗さRaが0.8μm以上である積層体の製造方法。
【0023】
(10)(9)に記載の積層体の製造方法の前記プライマー層形成工程の後にさらに着色剤と、エチレン性不飽和基を有する化合物と、が含有された着色液を前記プライマー層の積層側のプライマー層上に塗布する着色液塗布工程と、前記塗布された着色液に活性エネルギー線を照射して前記着色液に含まれる組成物を硬化させて着色層を形成する着色層形成工程と、を含む着色層付積層体の製造方法。
【0024】
(11)プライマー組成物に含まれるエチレン性不飽和基を有する化合物として、少なくとも、置換基を有してもよいフェノキシ基と、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基とを有する、フェノキシアルキル(メタ)アクリレートであるA成分)がプライマー組成物全量中1質量%以上30質量%以下、脂環構造を有する(メタ)アクリレートであるB成分)がプライマー組成物全量中30質量%以上70質量%以下、前記A成分)以外の芳香族環を有する(メタ)アクリレートであるC成分)がプライマー組成物全量中1質量%以上15質量%以下、前記A成分)、前記B成分)及び前記C成分)以外の水酸基を有する(メタ)アクリレートであるD成分)がプライマー組成物全量中1質量%以上30質量%以下と、が含まれる下塗り液を、前記プライマー組成物の硬化後にプライマー層積層側表面の算術平均粗さRaが0.8μm以上となるように基材上に直接又は他の層を介して塗布する下塗り液塗布工程と、前記基材上に直接又は他の層を介して塗布された下塗り液に活性エネルギー線を照射して前記下塗り液に含まれるプライマー組成物を硬化させて、プライマー層を形成するプライマー層形成工程と、を含むインク記録方法。
【0025】
(12)前記プライマー層形成工程により形成されたプライマー層の積層側に、着色剤と、エチレン性不飽和基を有する化合物が含有された着色液を塗布する着色液塗布工程と、前記塗布された着色液に活性エネルギー線を照射して前記着色液に含まれる組成物を硬化させて着色層を形成する着色層形成工程と、を含む(11)に記載のインク記録方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、基材と基材上に形成される所定のプライマー層とを備える積層体は、着色層との密着性に優れることの他、タック感を低減させることができるため、空気中の埃等が付き難くなるため取り扱いがしやすい優れた積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0028】
[積層体]
本実施形態の積層体は、基材と、基材上に直接又は他の層を介して形成されるプライマー層と、を備える。以下説明する。なお、本実施形態の積層体とは、特に説明が無い限りは最外層にプライマー層が備えられた積層体をいう。
【0029】
[基材]
基材により密着性を向上させる作用が異なるため、密着性を向上させるプライマー組成物は使用する基材ごとにそれぞれ異なるものを使用することが一般的である。しかし、本実施形態の積層体に用いることのできる基材は、特に限定されるものではなく、有機材料からなる基材及び無機材料からなる基材を用いることができる。有機材料からなる基材としては、例えばゴム系基材及びプラスチック系基材を用いることができる。ゴム系基材としては、例えば、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンゴム(ABS)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(イソブチエン・イソプレンゴム(IIR))、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Siゴム)、フッ素ゴム(FKM)、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、PVC系熱可塑性エラストマー、フッ素熱可塑性エラストマー、及びこれらを2種以上混合したものを挙げることができる。
【0030】
プラスチック系基材としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・スチレン(AS)、ポリメチルメタアクリル(PMMA)、ポリビニールアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPO))、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、超高分子量ポリエチレン(U−PE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フェノール樹脂(PF)、ユリア樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、不飽和ポリエステル(UP)エポキシ樹脂(EP)、ポリウレタン(PUR)、及びこれらを2種以上混合したものを挙げることができる。
【0031】
無機材料からなる基材としては、例えば金属系基材及びガラス系基材を挙げることができる。金属系基材としては、例えば、スチール、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、銅、亜鉛、スズ、チタン、これらを2種以上混合した合金材料、及びこれらをめっきした材料等を挙げることができる。ガラス系基材としては、例えば、ケイ酸塩ガラス(石英ガラスも含む。)、及びケイ酸塩以外を主成分とするガラス等を挙げることができる。
【0032】
本実施形態の積層体に用いられるプライマー層は、その形成に用いられるエチレン性不飽和基を有する化合物の濃度と種類を最適化されているため、基材の種類を問わずに基材との密着性の高いものとすることができる。
【0033】
[プライマー層]
プライマー層は基材上に直接又は他の層を介して形成され、積層体の最外層に備えられることで着色層との密着性の向上を図るものである。基材上に直接又は他の層を介して形成されるとは、基材に直接プライマー組成物を硬化させプライマー層を形成されることや、基材に他の樹脂や金属等を被覆することにより形成された他の層を介してプライマー組成物を硬化させプライマー層を形成されることをも含む。本実施形態の積層体に用いられるプライマー層は、エチレン性不飽和基を有する化合物が硬化して形成される。そして、エチレン性不飽和基を有する化合物として、A成分):炭素原子数1以上5以下のフェノキシアルキル(メタ)アクリレートが全プライマー組成物全量中に1質量%以上30質量%以下、B成分):前記A成分)以外の脂環構造を有する(メタ)アクリレートが全プライマー組成物全量中に30質量%以上70質量%以下、C成分):前記A成分)及び前記B成分)以外の芳香族環を有する(メタ)アクリレートが全プライマー組成物全量中に1質量%以上15質量%以下、D成分):前記A成分)、前記B成分)及び前記C成分)以外の水酸基を有する(メタ)アクリレートが全プライマー組成物全量中に1質量%以上30質量%以下、のうち少なくともA成分)と、D成分)と、B成分)及び/又はC成分)、を含む。
【0034】
また、必要に応じて、E成分):Tgが−30℃以下の単官能モノマーであってA成分)、B成分)、C成分)、及びD成分)以外のアルキル(メタ)アクリレートが全プライマー組成物全量中に1質量%以上10質量%以下、F成分):A成分)、B成分)、C成分)、D成分)、及びE成分)以外の多官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーが全プライマー組成物全量中に1質量%以上20質量%以下含まれていてもよい。
【0035】
本実施形態の積層体に用いられるプライマー層は、例えば、エチレン性不飽和基を有する化合物を含むプライマー組成物を含んだ下塗り液を基材上表面に塗布後、活性エネルギー線の照射等することによりプライマー組成物であるエチレン性不飽和基を有する化合物が硬化し形成される。
【0036】
また、本実施形態の積層体において、プライマー層積層側の積層体表面の算術平均粗さRaは0.8μm以上であり、好ましくは、1.0μm以上、より好ましくは、1.2μm以上である。算術平均粗さRaをこのように大きい範囲にすることでプライマー層と着色層とが接触する表面積が大きくなる。そのため、プライマー層と着色層との密着力を向上させることができる。なお、本明細書中における算術平均粗さRaとは、JIS B0601(1994)に規定の算術平均粗さ(Ra)に準拠して測定された値である。
【0037】
本実施形態の積層体に用いられるプライマー層の厚みは5μm以上20μm以下であることが好ましく、6μm以上15μm以下であることがより好ましく、7μm以上10μm以下であることがさらに好ましく、7μm以上8.5μm以下であることがさらに好ましい。プライマー層の厚みを5μm以上20μm以下とすることで、着色層との密着性が良好となり、またプライマー層にひび割れや傷が入りにくくなるため好ましい。該プライマー層の厚みは、基材上への下塗り液の塗布量により制御することができる。なお、本実施形態においてプライマー層の厚みとは、基材とプライマー層の最大頂点との距離を意味する。プライマー層の厚みは、例えばtencor社製、P−16を用いて、針圧1mg、測定長1.7mmとして測定したときの値として算出することができる。具体的には、プライマー層が積層体表面全面ではなく部分的にドット状に積層されている場合、つまり基材層表面が露出している場合には、その基材の露出部分が測定長に含まれるように測定したときの値をプライマー層の厚みとし、また基材表面がプライマー層で覆われて露出していない場合は、プライマー層を削る等して基材表面を露出させたうえで、当該露出面が測定長に含まれるようにして測定したときの値をプライマー層の厚みとして算出することができる。
【0038】
基材上への下塗り液の塗布量は、0.1mg/cm
2以上1.2mg/cm
2以下であることが好ましく、0.2mg/cm
2以上1.0mg/cm
2以下であることがより好ましく、0.3mg/cm
2以上0.8mg/cm
2以下であることがさらに好ましい。下塗り液の塗布量を0.1mg/cm
2以上1.2mg/cm
2以下とすることでプライマー層と着色層との密着性を好ましいものとすることができる。
【0039】
本実施形態の積層体に用いられるプライマー層のガラス転移温度(Tg)は、5℃以上35℃以下であることが好ましく、10℃以上30℃以下であることがより好ましい。プライマー層のガラス転移温度(Tg)が5℃以上35℃以下であることでプライマー層を好ましい粘着性(タック性)と密着性を有するものとすることができる。プライマー層のガラス転移温度(Tg)は、後述するエチレン性不飽和基を有する化合物等の選択により、調製することが可能である。なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に基づき、示差走査熱量計(DSC)を用いて、結着樹脂の比熱の変化点から求めることができる。
【0040】
本実施形態の積層体に用いられるプライマー層の25℃におけるJIS K2207に準拠して、針が試料に入り込んだ距離が1/10mmのときを1として算出した針入度は、17以上30以下であることが好ましく、19以上29以下であることがより好ましく、20以上26以下であることが最も好ましい。針入度をこのような範囲とすることで低いタック性と高い密着性に加えて、プライマー層に適度な柔軟性を与えることができる。そのため、低温又は高温の環境下においても、プライマー層が柔らかく維持することができるようになるため、プライマー層の割れを抑制することができる。
【0041】
基材とプライマー層間の剥離強度は、例えば、ASTM D3359にしたがいクロスカット後の粘着テープ密着評価により評価することが可能である。例えば、硬化後の塗膜を1mm間隔で100マスにクロスカットし、そのクロスカットした部分にセロハン粘着テープを貼り付け後、セロハン粘着テープを90度で剥離する。剥離の程度が5%未満であれば基材とプライマー層の密着性は十分と考えることができる。プライマー層の剥離強度は後述するエチレン性不飽和基を有する化合物等の選択により、調製することが可能である。
【0042】
<エチレン性不飽和基を有する化合物>
本実施形態のプライマー層はエチレン性不飽和基を有する化合物を含むプライマー組成物が硬化して形成される。プライマー組成物とは、下塗り液に含まれるエチレン性不飽和基を有する化合物、光重合開始剤、又は光重合禁止剤等、下塗り液に含まれる溶媒成分を除いた固形分の組成物全体を意味する。エチレン性不飽和基を有する化合物としては、少なくとも所定量のA成分)と、D成分)と、B成分)及び/又はC成分)と、を含む。また必要に応じて、所定量のE成分)又はF成分)を含んでいてもよい。
【0043】
<<A成分)>>
A成分)とは、炭素原子数1以上5以下のフェノキシアルキル(メタ)アクリレートである。フェノキシエチル(メタ)アクリレートは、硬化後にポリカーボネート等の非吸収性基材との密着性を向上する作用を発揮する。タック性の観点からは、タック感の低いものが好ましい。かかる観点からフェノキシエチル(メタ)アクリレートは、プライマー組成物全量中に1質量%以上30質量%以下、好ましくは3質量%以上28質量%以下、最も好ましくは5質量%以上20質量%以下含有されるように配合する。なお、フェノキシエチル(メタ)アクリレートは、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、置換基を含有するフェノキシエチル(メタ)アクリレート又は、それぞれ変性されたものでもよい。
【0044】
具体的にはフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートEO変性、フェノキシエチル(メタ)アクリレートPO変性、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェノキシエチル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH
2−CH
2−O−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CH
2−CH(CH
3)−O−)のブロック構造を有することを意味する。
【0045】
<<B成分)>>
B成分)とは、脂環構造を有する(メタ)アクリレートである。脂環構造を有しているので、例えばゴム系基材やプラスチック系基材に対して表面を侵しやすくなり、硬化後に基材との密着性を向上する作用を有する。脂環構造を有する(メタ)アクリレートは、例えば単官能モノマーである脂環構造を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。基材や着色層の密着性の観点からB成分)は、プライマー組成物全量中に30質量%以上70質量%以下、好ましくは35質量%以上60質量%以下、最も好ましくは43質量%以上55質量%以下含有される。
【0046】
B成分)は、例えば単官能モノマーであるターシャリーブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、1−アダマンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、3−3−5−トリメチルシクロヘキサノールアクリレート、等を挙げることができる。なかでも製造の容易性から4−ターシャリーブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレートを使用することが好ましい。
【0047】
B成分)は、例えば2官能モノマーであるシクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等を挙げることができる。
【0048】
なお、B成分)は、2種以上の化合物であって、Tgがそれぞれ異なるものであることが好ましい。Tgが異なる2種以上の化合物が包含されることによって、低いタック性と高い密着性に加えて、プライマー層に適度な柔軟性を与えることができる。そのため、低温又は高温でもプライマー層が柔らかく維持することができるようになるため、プライマー層の割れを抑制することができる。2種以上の化合物は、互いにTgが20℃以上離れていることが好ましく、40℃以上離れていることがより好ましい。
【0049】
<<C成分)>>
C成分)とは、A成分)以外の芳香族環を有する(メタ)アクリレートである。芳香環構造を有しているので、例えばゴム系基材やプラスチック系基材に対して表面を侵しやすくなり、硬化後に基材との密着性を向上する作用を有する。基材や着色層の密着性の観点からC成分)は、プライマー組成物全量中に1質量%以上15質量%以下、好ましくは3質量%以上13質量%以下、最も好ましくは7質量%以上12質量%以下含有される。
【0050】
C成分)としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、トリロキシエチル(メタ)アクリレート、トリロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、(メタ)アクリロイロキシエチルヒドロキシフタレート、(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェニル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、m−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、p−フェニルフェニル(メタ)アクリレート等の芳香族単官能(メタ)アクリレートを好ましく挙げることができる。なかでも、硬化速度等の点からベンジルアクリレートを用いるのが特に好ましい。
【0051】
<<D成分)>>
D成分)とは、A成分)、B成分)及びC成分)以外の水酸基を有する(メタ)アクリレートである。D成分)は、水酸基を有しているので、金属系基材等の無機材料からなる基材に対して水素結合を形成し、硬化後に基材との密着性を向上する作用を有する。基材や着色層の密着性の観点からD成分)は、プライマー組成物全量中に1質量%以上30質量%以下、好ましくは5質量%以上20質量%以下、最も好ましくは7質量%以上15質量%以下含有される。
【0052】
D成分)としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート等を挙げることができる。なかでも、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートを用いるのが特に好ましい。
【0053】
なお、D成分)の中でも、カルボキシル基を有する化合物も金属系基材等の無機材料からなる基材に対し水素結合を形成するため、無機材料からなる基材に対する密着性向上を期待することができる。しかし、カルボキシル基を有する化合物は、インクジェットプリンタヘッドに悪影響を及ぼすおそれがあるため、下塗り液をインクジェット方式により塗布する場合には好ましくない。そのため、インクジェットプリンタヘッドに悪影響を及ぼすおそれのある観点から、D成分)としては、カルボキシル基を有しない(メタ)アクリレートであって、A成分)、B成分)及びC成分)以外の水酸基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0054】
<<E成分)>>
E成分)とは、Tgが−30℃以下の単官能モノマーであってA成分)、B成分)、C成分)、及びD成分)以外のアルキル(メタ)アクリレートである。Tgが−30℃以下であるため、エチレン性不飽和基を有する化合物の硬化後においてもある程度のタック感を有する。E成分)は、好ましくはTgが−40℃以下、最も好ましくはTgが−50℃以下である。タック感により、プライマー層と基材及びプライマー層と着色層との密着性が向上する。さらに、低又は高温の環境下においてもプライマー層が柔らかく維持することができるようになるため、プライマー層の割れを抑制することができる。E成分)は、プライマー組成物全量中に1質量%以上10質量%以下含有される。また、2質量%以上7質量%以下含有されることが好ましく、3質量%以上6質量%以下であることが最も好ましい。
【0055】
E成分)としては、例えば、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート等を挙げることができる。なかでも、トリデシルアクリレートを用いるのが特に好ましい。
【0056】
<<F成分)>>
F成分)とは、A成分)、B成分)、C成分)、D成分)、及びE成分)以外の多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである。F成分)は、硬化後にタック性を発揮して密着性を向上する作用を有するオリゴマーである。F成分)は、2官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有することが好ましい。またF成分)は、プライマー組成物全量中に1質量%以上20質量%以下含有されることが好ましく、7質量%以上15質量%以下であることが最も好ましい。
【0057】
F成分)としては、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0058】
市場で入手し得る多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートとしては、従来公知の2官能や3官能以上の官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートであればよく、例えば、日本合成化学(株)製、商品名「紫光UV−3000B」、(以下、冠名を省略する。)「UV−3200B」、「UV−3201B」、「UV−3310B」、「UV−3500B」、「UV−3520TL」、「UV−3700B」、「UV−6100B」、「UV−6640B」、「UV−2000B」、「UV−2250EA」、「UV−2750B」;東亞合成(株)製 商品名「アロニックス M1100」、(以下、冠名を省略する。)「M1200」、「M1600」;ダイセルサイテック(株)製 商品名「EBECRYL230」、(以下、冠名を省略する。)「244」、「245」、「270」、「284」、「285」、「8401」、「9270」;巴工業(株)販売、サートマー社製 商品名「CN961E75」、「CN961H81」、「CN962」、「CN963」、「CN963A80」、「CN963B80」、「CN963E75」、「CN963E80」、「CN963J85」、「CN964」、「CN964E75」、「CN964A85」、「CN965」、「CN965A80」、「CN966A80」、「CN966J75」、「CN968」、「CN980」、「CN981」、「CN982」、「CN983」、「CN996」、「CN9001」、「CN9002」、「CN9788」、「CN9893」等が挙げられる。
【0059】
本実施形態に用いられる下塗り液は、プリンタヘッドの材質によっては、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートがインクジェットプリンタヘッドに悪影響を及ぼす場合があるため、プライマー組成物全量において5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、全く含有しないことが最も好ましい。そうすることでプリンタヘッドの材質に関わらず幅広く使用することができる。
【0060】
<光重合開始剤>
本実施形態の積層体に用いられるプライマー層の形成には、必要に応じて光重合開始剤を使用することができる。プライマー層の形成に使用することのできる光重合開始剤は、電子線、紫外線、赤外線等の活性エネルギー線を受けて、ラジカルを発生し、エチレン性不飽和基を有する化合物の重合の開始剤となりうるものである。光重合開始剤としては、アシルフォスフィンオキサイド、α−ヒドロキシケトン、α−アミノアルキルフェノン、オキシムエステル等を使用することができる。前記アシルフォスフィンオキサイドとして、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−フォスフィンオキサイド(イルガキュア 819、BASF社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(DAIDO UV−CURE APO:大同化成社製)等が例示されるが、これらの中でも2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(DAIDO UV−CURE APO)が好ましい。
【0061】
α−ヒドロキシケトンとしては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルーフェニルケトン(イルガキュア 184、BASF社製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュア 127、BASF社製)、2−ヒドロキシ−4’−ヒドロキシエトキシ−2−メチルプロピオフェノン(イルガキュア2959、BASF社製)、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン](Esacure one、ランベルティ社製)が好ましい。α−アミノアルキルフェノンとしては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(イルガキュア369、BASF社製)が好ましい。また、オキシムエステルとしては、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)が好ましい。
【0062】
前記DAIDO UV−CURE APOやイルガキュア127は、酸素による重合阻害を発生し難いために、インクジェットで形成された薄膜の硬化性に特に有効である。また、前記DAIDO UV−CURE APO、イルガキュア2959、及びイルガキュア 369は内部硬化性に優れているため、厚膜での硬化性に特に有効である。DAIDO UV−CURE APOは活性エネルギー線に高感度で反応する。また、アシルフォスフィンオキサイド、α−ヒドロキシケトン、及びα−アミノアルキルフェノンを組み合わせて使用することにより、薄膜と厚膜両方の硬化性に優れ、活性エネルギー線に対して高感度かつ短時間で硬化させることができる。光重合開始剤の添加量は、全プライマー組成物全量中に好ましくは3質量%以上15質量%以下であり、この範囲内であることにより硬化性を維持することができる。
【0063】
<添加剤>
プライマー組成物には、前記成分の他に可塑剤、非感放射性樹脂、溶剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を配合することができる。また、必要に応じて色材を入れてもよく、例えば有機・無機微粒子、シリカ、酸化チタン、アルミペースト、マイカ、パール顔料等も配合することができる。なお、プリンタヘッドの材質によってはカルボキシル基を有する化合物は、プリンタヘッドに悪影響を及ぼす場合があるため、プライマー組成物全量中に5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、全く含有しないことが最も好ましい。そうすることでプリンタヘッドの材質に関わらず幅広く使用することができる。
【0064】
プライマー組成物は、例えば、前記配合成分を含ませた下塗り液とし、サンドミル等の通常の分散機を用いて分散することにより調製することができる。下塗り液は、孔径3μm以下、さらには1μm以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0065】
[積層体の製造方法]
本実施形態の積層体は、例えば、エチレン性不飽和基を有する化合物が含まれる下塗り液を基材上に直接又は他の層を介して塗布する下塗り液塗布工程と、基材上に直接又は他の層を介して塗布された下塗り液に活性エネルギー線を照射して下塗り液に含まれるプライマー組成物を硬化させてプライマー層を形成するプライマー層形成工程とを経ることによって製造することができる。
【0066】
<下塗り液塗布工程>
下塗り液塗布工程とは、プライマー組成物が含まれる下塗り液を基材上に直接又は他の層を介して塗布する工程である。なお、下塗り液には必要に応じて光重合開始剤が含まれていてもよい。基材上に直接又は他の層を介して下塗り液を塗布する方法は特に限定されないが、実用上、スプレー法、コーター法、インクジェット法、グラビア法、フレキソ法等から選択された1種又は2種以上であることが好ましい。また、抄紙機に付属の塗工装置で下塗り液を塗布することもできる。これらの塗布方法の中でもインクジェット法が下塗り液を必要量のみ塗布でき、また、インクジェットの下塗り液の塗布量を調整することによって、プライマー組成物の硬化後にプライマー層積層側の積層体表面の算術平均粗さRaを調整することができるためより好ましい。下塗り液の基材上への直接又は他の層を介する塗布方法として上記方法等を採用後、活性エネルギー線の照射等で硬化させることにより、基材上の着色液を塗布(又は印刷等)する箇所に予めプライマー層を形成することが可能になる。
【0067】
<プライマー層形成工程>
プライマー層形成工程とは、基材上に直接又は他の層を介して塗布された下塗り液に活性エネルギー線を照射して下塗り液に含まれるプライマー組成物を硬化させてプライマー層を形成させる工程である。プライマー層は、プライマー積層側の表面の算術平均粗さRaが0.8μm以上、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.2μm以上となるように該表面に形成される。活性エネルギー線の光源としては、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、太陽光、及びLED(発光ダイオード(Light Emitting Diode))ランプ等を使用することができる。電子線により硬化させる場合には、通常300eV以下のエネルギーの電子線で硬化させるが、1〜5Mradの照射量で瞬時に硬化させることも可能である。
【0068】
特に、本実施形態で用いられるエチレン性不飽和基を有する化合物である炭素原子数1以上5以下のフェノキシアルキル(メタ)アクリレートは、全プライマー組成物全量中に1質量%以上30質量%以下と、特許文献1に記載されているような従来のプライマー層と比較してその含有量は低い。このため、メタルハライドランプ等の高出力の光源ではなく、例えばLEDランプのような低出力の光源であっても十分な硬化性を得ることができる。そのため、本実施形態のプライマー層が最外層に備えられた積層体は生産性の観点からも特に優れている。
【0069】
[インク記録方法]
本実施形態のインク記録方法は、上記の下塗り液塗布工程及びプライマー層形成工程に加え、プライマー層形成工程により形成されたプライマー層の積層側に、組成物として、着色剤と、エチレン性不飽和基を有する化合物が含有された着色液を塗布する着色液塗布工程と、塗布された着色液に活性エネルギー線を照射して着色液に含まれる組成物を硬化させて着色層を形成する着色層形成工程と、を含む。
【0070】
<着色液塗布工程>
着色液塗布工程とは、着色液をプライマー層形成工程により形成されたプライマー層の積層側に塗布する工程である。着色液は、従来公知の着色液を用いることができるが、例えば、着色剤と、エチレン性不飽和基を有する化合物と、必要に応じて光重合開始剤と、を含む活性エネルギー線硬化型着色液を用いることができる。
【0071】
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、従来公知のエチレン性不飽和基を有する化合物を用いることができるが、例えば、B成分)及び/又はC成分は、下塗り液で使用するB成分)及び/又はC成分と同様のものを使用することが好ましい。該B成分)及び/又はC成分は、下塗り液中に含まれるB成分)及び/又はC成分の硬化物であるプライマー層と親和性を発揮して、着色層の定着性及び密着性を向上する。なお、エチレン性不飽和基を含有する化合物には、単官能モノマーが全エチレン性不飽和基を含有する化合物中60質量%以上95質量%以下含まれていることが好ましい。またさらに必要に応じてA成分を10質量%以上35質量%以下(好ましくは15質量%以上30質量%以下)や、F成分を1質量%以上10質量%以下(好ましくは3質量%以上7質量%以下)含有してもよい。
【0072】
<<着色剤>>
着色剤としては、従来の油性インク組成物に通常用いられている無機顔料又は有機顔料を用いることができる。顔料としてはカーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化チタン、パール系顔料、アルミニウム、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、ジケトピロロピロール、アンスラキノン、ベンズイミダゾロン、アンスラピリミジン、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料等を用いることができる。
【0073】
顔料一次粒子の体積平均粒径は、レーザー散乱による測定値で平均粒径50nm以上200nm以下の微細顔料であることが好ましい。顔料の平均粒径が50nm以上の場合は、粒径が大きくなることによって耐光性が向上し、200nm以下の場合は、分散が安定維持され、顔料の沈澱を抑制することができる。また、着色剤の含有量は、着色液中に好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0074】
<<分散剤>>
着色液に分散剤を配合することが好ましく、該分散剤としては、高分子分散剤の使用が好ましい。高分子分散剤としては、例えば、主鎖がポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系等からなり、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基等の極性基を有するもので、好ましくはポリエステル系分散剤であり、例えばルブリゾール社製「SOLSPERSE32000」、「SOLSPERSE20000」、「SOLSPERSE24000」、「SOLSPERSE71000」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」等が例示される。分散剤の添加量は着色剤1質量部に対して固形分として好ましくは0.03質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上5質量部以下の割合であり、着色液中に好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
【0075】
<<その他の成分>>
着色液に配合されるその他の成分としては、可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を含有することができる。
【0076】
<<着色液の調製>>
本発明で使用することができる着色液は、例えば着色剤をエチレン性不飽和基を有する化合物、及び分散剤と共にサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散して分散液を得、該分散液に、エチレン性不飽和基を有する化合物、必要に応じて光重合開始剤を添加し、均一混合することにより調製することができる。予め着色剤が高濃度の濃縮液を作成しておいてエチレン性不飽和基を有する化合物で希釈することが好ましく、通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、安定性に優れた着色液が調製される。着色液は、孔径3μm以下、さらには1μm以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0077】
<<着色液の塗布>>
着色液の塗布には、例えば、吐出性を向上するため、プリンタヘッドに加温機構が組み込まれたインクジェット記録方式のプリンタを使用することができる。その場合、40℃での粘度が5mPa・s以上20mPa・s以下とすることが好ましい。粘度が5mPa・s以上の場合は、高周波数のヘッドにおいて、吐出の追随性の向上が認められ、20mPa・s以下の場合は、加熱による粘度の低下機構をヘッドに組み込むことにより吐出そのものが向上し、吐出が安定となり、吐出が容易となる。イエロー、シアン、マゼンタ、及びブラックの顔料等がそれぞれ着色液に配合することによって、インクジェット記録方式用プリンタのプリンタヘッドに供給し、このプリンタヘッドからプライマー層上にそれぞれ吐出することができる。
【0078】
<着色層形成工程>
着色層形成工程とは、プライマー層の表面上に塗布された着色液に活性エネルギー線を照射して着色液に含まれる組成物を硬化させて着色層を形成する工程である。例えば、先ずイエロー着色液をプライマー層上にインクジェット記録方式により付着させ、次に活性エネルギー線を照射して該付着したイエロー着色液を速やかに硬化させる。次にシアン着色液を同様にプライマー層上に付着させて、次に活性エネルギー線を照射して該付着したシアン着色液を硬化させ、その後、同様にマゼンタ着色液、ブラック着色液の順でそれぞれプライマー層に付着後、活性エネルギー線を照射してこれらの着色液を硬化させる。なお、活性エネルギー線の光源としては、プライマー層形成工程と同様の光源を利用することができる。
【0079】
[着色層付積層体及び着色層付積層体の製造方法]
本実施形態の積層体に、例えば着色液塗布工程と着色層形成工程を経ることで、プライマー層上に着色層が備えられた着色層付積層体を製造することができる。該着色層付積層体は、着色層と着色層と密着しているプライマー層との密着性が高く、また着色層上のタック性も低い。そのため、着色層が剥がれにくく、かつタック感が低いため、空気中の埃等が付き難く、取り扱いがしやすい優れた着色層付積層体とすることができる。
【0080】
また、本実施形態の積層体の製造方法に含まれる下塗り液塗布工程、プライマー層形成工程後に着色液塗布工程と着色層形成工程を経るように逐次的に各工程を行うことで、プライマー層と着色層との密着性をより向上させることができるので好ましい。
【0081】
[表面保護層]
本実施形態の着色層付積層体の耐久性をより向上させることを目的等のために、必要に応じて着色層の表面にさらに表面保護層を設けてもよい。表面保護層は、従来公知の水性又は油性のオーバーコート剤を用いることで形成されていてもよいし、活性エネルギー線硬化性等の組成物が含有されたオーバーコート剤を用いることで形成されていてもよい。
【0082】
例えば、着色層を形成した着色液に着色剤を抜いたものと同様の組成のオーバーコート剤により表面保護層を形成した場合には、着色層と表面保護層は同様の組成であるため、これらの密着性は極めて高くなるため好ましい。
【0083】
オーバーコート剤の塗布方法は例えば従来公知の印刷方式を用いることができる。例えば、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレー方式、刷毛塗り方式等様々な方法を用いることができる。なかでも、小ロット多品種に対応できる点でインクジェット方式であることが好ましい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例、比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0085】
(下塗り液の調製)
A成分):2−フェノキシエチルアクリレート(官能基数:1、分子量:192、分子量/官能基数:192、粘度:15mPa・s、Tg:5℃)
【0086】
B成分)1:イソボルニルアクリレート(官能基数:1、分子量:208、分子量/官能基数:208、粘度:9mPa・s、Tg:94℃)
【0087】
B成分)2:4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート(官能基数:1、分子量:210、分子量/官能基数:210、粘度:9mPa・s、Tg:34℃)
【0088】
C成分):ベンジルアクリレート(官能基数:1、分子量:162、分子量/官能基数:162、粘度:8mPa・s、Tg:6℃)
【0089】
D成分):2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(官能基数:1、分子量:222、分子量/官能基数:222、粘度:150〜200mPa・s、Tg:17℃)
【0090】
E成分):トリデシルアクリレート(官能基数:1、分子量:254、分子量/官能基数:254、粘度:7mPa・s、Tg:−55℃)
【0091】
F成分):脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(官能基数:2、粘度:4240mPa・s)
【0092】
G成分):2−エチルヘキシルアクリレート((2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、官能基数:1、分子量:184、分子量/官能基数:184、Tg:−20℃)
【0093】
光重合開始剤1:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド
【0094】
光重合開始剤2:オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]
【0095】
重合禁止剤:フェノチアジン(チオジヘニルアミン)
【0096】
上記成分を下記表1になるように、下塗り液1〜5を調製した。
【0097】
【表1】
(単位は質量%)
【0098】
(着色液の調製)
B成分)及び/又はC成分)を含むエチレン性不飽和基を有する化合物として、4−ターシャリーブチルシクロヘキシルアクリレート(官能基数:1、分子量:210、分子量/官能基数:210、粘度:9mPa・s、Tg:34℃)、その他のエチレン性不飽和基を有する成分として、フェノキシエチルアクリレート、2官能脂肪族ウレタンアクリレート成分、N−ビニルカプロラクタムを使用した。
【0099】
光重合開始剤成分として、光重合開始剤1、及び以下の光重合開始剤3を使用した。光重合開始剤3:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン。
【0100】
着色剤MとしてPR122(マゼンタ顔料)を使用した。
【0101】
重合禁止剤として、フェノチアジン(チオジフェニルアミン)を使用した。
【0102】
分散剤として、アミン基含有高分子化合物を使用した。
【0103】
上記成分を下記表2になるように、着色液を調製した。
【0104】
【表2】
(単位は質量%)
【0105】
[ガラス密着性試験]
プライマー層積層側の積層体表面の算術平均粗さRaとタック性及び着色層との密着性の関係を調べるべく、ガラス密着性試験を行った。
【0106】
(積層体の製造)
表1のように調製した下塗り液2を基材(ガラス)上にインクジェット方式(UJF3042、(株)ミマキエンジニアリング製、オンデマンドピエゾヘッド)により塗布した後、UV(LED−UV方式)を照射して塗布した下塗り液に含まれるプライマー組成物を硬化させてプライマー層を形成することで、積層体を製造した。
【0107】
なおインクジェット方式による印刷条件は、プライマー印字濃度を5〜100%とし、解像度を720×1200dpi、16passとした。
【0108】
その後、積層体におけるプライマー層積層側の積層体表面の算術平均粗さRaを測定した。測定は、段差・表面あらさ微細形状測定装置として、tencor社製、P−16を用いて、針圧1mg、測定長1.7mmとして任意の5箇所の算術平均粗さRaを測定し、その平均値を求めた(表3中、Raと表記)。
【0109】
(着色層の積層)
表2のように調製した着色液を積層体のプライマー層上に硬化後の厚みが20μmとなるようにインクジェット方式(UJF3042、(株)ミマキエンジニアリング製、オンデマンドピエゾヘッド)により塗布した後、UV(LED−UV方式)を照射して塗布した着色液を硬化させて着色層を積層した。
【0110】
(密着性評価)
密着性評価は、ASTM D3359にしたがって行った。硬化後の塗膜を1mm間隔で100マスにクロスカットし、そのクロスカットした部分にセロハン粘着テープを貼り付ける。そして、塗膜とセロハン粘着テープとを充分に密着した後、セロハン粘着テープを90度で剥離したときの塗膜の基材への密着の程度から判断した。評価結果を表3に示す(表3中、密着性と表記)。なお、評価基準は下記の通りである。
5B:剥がれの程度が0%乃至2%未満である。
4B:剥がれの程度が2%以上5%未満である。
3B:剥がれの程度が5%以上15%未満である。
2B:剥がれの程度が15%以上である。
【0111】
(タック性評価)
プライマー層及びプライマー層上の着色層のタック性は、指触法により行った。具体的には、着色層を積層していない積層体サンプル(以下、単に積層体と表記する)及び着色層を積層した着色層付積層体サンプル(以下、単に着色層付積層体と表記する)を室温下におき、積層体の最外層に積層されたプライマー層(表3中、プライマー層タック性と表記)及び着色層付積層体の最外層に積層された着色層(表3中、着色層タック性と表記)を指で触れ、べたつきの有無を確認した。タック性は、積層体及び着色層付積層体の作製直後(表3中、作製直後と表記)及び積層体及び着色層付積層体の作製後1日経過後(表3中、一日経過後と表記)についてそれぞれ評価した。評価結果を表3に示す。
【0112】
評価基準は下記の通りである。なお、比較例1〜3の積層体及び着色層付積層体については、密着性評価において剥がれの程度が15%を超えていたため、積層体の作製後1日経過後のタック性評価は行わなかった。
◎:指触してもべたつきが殆ど感じられない。
○:指触してもややべたつきが感じられるが実質上許容範囲内である。
△:指触するとべたつきがあり実質上許容範囲を超えている。
×:指触するとべたつきが大きい。
【0113】
【表3】
【0114】
表3より、積層体のプライマー層積層側の積層体表面の算術平均粗さRaが0.8μmを超えている実施例1〜4に係る積層体は、比較例1〜3に係る積層体に比べ、プライマー層タック性、着色層タック性及び着色層との密着性の高い積層体であることが分かる。また実施例1〜4に係る積層体及び着色層付積層体は、積層体及び着色層付積層体作成後一日経過しても低いタック性が維持されており、空気中の埃等が付き難く、取り扱いがしやすい優れた積層体であることが分かる。
【0115】
[各基材密着性試験]
下塗り液に含まれるプライマー組成物の組成とタック性及び着色層との密着性の関係を調べるべく、各基材密着性試験を行った。なお、各基材は、未処理PET、易溶着PET(東洋紡社製コスモシャインA4300)、アクリル(三菱レイヨン社製アクリルライトEX)、アルミ板、SUS板(ステンレス鋼、SUS304)、ガラス(スライドガラス)、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)を用いた。
【0116】
(着色層の積層)
下塗り液1〜5を用いて、上記ガラス密着性試験と同様に、表5で示した基材上に塗布し、プライマー層を積層した(プリンタ:株式会社ミマキエンジニアリング社製UJF3042、プライマー印字濃度:20%、解像度:720×1200dpi、プライマー層積層側の積層体表面の算術平均粗さRa:1.29μm)。ただし、比較例6については、LEDランプの照射では硬化しなかったため、メタハルハライド(GSユアサ社製GS SYSTEM、積算光量118mJ/cm
2、ピーク照度591mW/cm
2)を照射することで硬化した。
【0117】
(針入度評価)
25℃におけるJIS K2207に準拠して、針入度を測定した。具体的には、厚さ5mmの積層体試料を作成し、試料を25℃の恒温槽に30分以上放置した。そして、放置した試料及び針入度針をアスファルト針入度計にセットし、針入度を測定した。針の負荷は荷重200gを60秒とし、針が試料に入り込んだ距離を測定した(表4中、プライマー層針入度と表記)。測定結果を表4に示す。なお、針入度とは、針が試料に入り込んだ距離が1/10mmのときを1として求めた値である。
【0118】
(タック性評価)
タック性評価は指触法により行った。具体的には、積層体を室温下におき、塗膜を指で触れ、べたつきの有無を確認した。評価結果(表4中、タック性と表記)を表4に示す。なお、評価基準は下記の通りである。
◎:指触してもべたつきが殆ど感じられない。
○:指触してもややべたつきが感じられるが実質上許容範囲内である。
△:指触するとべたつきがあり実質上許容範囲を超えている。
×:指触するとべたつきが大きい。
【0119】
[ガラス転移温度(Tg)]
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、結着樹脂の比熱の変化点から求めた。評価結果(表4中プライマー層Tgと表記)を表4に示す。
【0120】
(密着性評価)
密着性評価は、ASTM D3359にしたがって行った。硬化後の塗膜を1mm間隔で100マスにクロスカットし、そのクロスカットした部分にセロハン粘着テープを貼り付ける。そして、塗膜とセロハン粘着テープとを充分に密着した後、セロハン粘着テープを90度で剥離したときの塗膜の基材への密着の程度から判断した。評価結果を表5に示す。なお、評価基準は下記の通りである。
5B:剥がれの程度が0%乃至2%未満である。
4B:剥がれの程度が2%以上5%未満である。
3B:剥がれの程度が5%以上15%未満である。
2B:剥がれの程度が15%以上である。
【0121】
【表4】
【0122】
【表5】
【0123】
表4及び表5から、所定の含有量のエチレン性不飽和基を有する化合物を含むプライマー組成物を硬化して製造された実施例5、6の積層体は、本来トレードオフの関係のある、低いタック性及び各基材における高い密着性の双方を備える優れた積層体であることが分かる。
【0124】
また、比較例6で用いた下塗り液5は、A成分)の含有量比が大きいため、LEDランプの照射ではプライマー層を硬化することができず、メタルハライドランプのような高出力の光源でなければプライマー層を形成させることができない。一方、実施例5、6で用いた下塗り液1、2は、A成分)の含有量比が下塗り液5と比べ小さいため、LEDランプのような低出力の光源であっても十分な硬化性を得ることができる。そのため、本発明のプライマー層を備える積層体は生産性の観点からも特に優れていることが分かる。