【実施例1】
【0017】
第1 トラップ管理システム100のハードウェア構成
トラップ管理システム100について、
図1を用いて説明する。トラップ管理システム100は、蒸気プラント設備に分散配備される多数のスチームトラップ(以下、トラップという)Tの作動状態を、無線通信を用いて管理する。トラップ管理システム100は、検知装置(検知手段)110、管理装置120、通信中継装置(中継器)130、及び、RFIDタグ(記憶手段)140を有している。
【0018】
また、トラップ管理システム100では、トラップTの状態情報を検知する検知装置110と検知対象のトラップTの位置情報(ロケーションデータ)との管理装置120における対応付けが、RFID(Radio Frequency Identification)タグ140及びRFIDリーダ/ライタ116(
図2参照)等を用いて行われる。詳細は後述する。
【0019】
管理装置120は、検知装置110が検知した状態情報の送信を要求する送信要求情報を通信中継装置130に送信し、通信中継装置130から、検知装置110からの状態情報を取得する。そして、データベース123(
図3参照)において各トラップTの状態情報を管理し、その作動状態を判断する。また、管理装置120は、例えば、
図6に示すような各トラップTの配置位置を示すプラントの配置マップ画像50の情報をディスプレイ(不図示)表示用に生成する。
【0020】
通信中継装置130は、状態情報の送信を要求するための同報送信要求情報を、自身と直接的に通信できる検知装置110の全てに対して送信する。なお、通信中継装置130は、一般的な構成であるため詳細な説明は省略する。
【0021】
検知装置110は、設備内の各トラップTに設置される。検知装置110は、トラップTの状態情報を検知(測定)する。状態情報としては、例えば、トラップTの温度及び超音波(振動)である。検知装置110は、通信中継装置130から同報送信要求情報を取得すると、検知した状態情報を装置IDとともに通信中継装置130に送信する。装置IDは、検知装置110のそれぞれに付与された固有の識別情報である。
【0022】
RFIDタグ140は、EEPROMなどのメモリ(不図示)を有し、各トラップTの外周面に配置される。RFIDタグ140は、配置されたトラップTの位置情報をメモリに記憶し、同じトラップTに配置された検知装置110のRFIDリーダ/ライタ116(
図2参照)からの送信要求に対して位置情報を送信する。なお、RFIDタグ140は、一般的な構成であるため詳細な説明は省略する。
【0023】
第2 検知装置110のハードウェア構成
図2は、検知装置110のブロック図である。検知装置110は、制御部111、通信制御部112、メモリ113、超音波受信センサ114、温度センサ115、及び、RFIDリーダ/ライタ(取得手段/更新手段)116を有する。制御部111は、CPU、ROM、メモリ等から構成され、ROMに記憶されたプログラム及びデータ等に基づいて装置全体の動作を制御する。例えば、超音波受信センサ114及び温度センサ115から受信した超音波(振動)及び温度の状態情報(数値)をメモリ113に記憶する。そして、装置ID及び状態情報を、同報送信要求情報に応じて、通信制御部112及び通信中継装置130を介して管理装置120に送信する。なお、検知装置110は、内蔵するリチウム電池などのバッテリー電源(不図示)によって駆動する。また、状態情報としては、振動、温度以外の情報であってもよい。
【0024】
通信制御部112は、無線通信回路を有し、無線ローカル・エリア・ネットワーク及び複数の通信中継装置130を含む通信ネットワークに接続され、通信中継装置130への接続によって無線ローカル・エリア・ネットワークに接続される管理装置120との通信を制御する。メモリ113は、例えばEEPROMであり、検知装置110の装置ID及び状態情報などを記憶する。
【0025】
超音波受信センサ114及び温度センサ115は、トラップTのケーシングの超音波(振動)及び温度を検知して、制御部111に送信する。RFIDリーダ/ライタ116は、制御部111の指示に基づいて、RFIDタグ140と近距離の無線通信を行って、RFIDタグ140から位置情報を取得する。そして、位置情報を制御部111に送信する。また、RFIDリーダ/ライタ116は、制御部111の指示に基づいて、後述する登録完了情報をRFIDタグ140のメモリに書き込む。なお、RFIDリーダ/ライタ116は、一般的な構成であるので詳細な説明は省略する。また、RFIDリーダ/ライタ116は、検知装置110とは別体であってもよく、検知装置110と通信接続可能な状態でトラップTに配置するようにしてもよい。
【0026】
第3 管理装置120のハードウェア構成
図3は、管理装置120のブロック図である。管理装置120は、制御部121、通信制御部122、データベース123を有する。制御部121は、CPU、ROM、メモリ等から構成され、ROMに記憶されたプログラム及びデータ等に基づいて装置全体の動作を制御する。例えば、上述したように送信要求情報を通信中継装置130に送信し、受信した各トラップTの状態情報をデータベース123で記憶(管理)する。
【0027】
通信制御部122は、無線通信回路を有し、無線ローカル・エリア・ネットワークおよび複数の通信中継装置130を含む通信ネットワークに接続され、通信中継装置130への接続によって無線ローカル・エリア・ネットワークに接続される複数の検知装置110との通信を制御する。データベース123は、
図4に示すような複数のトラップTのそれぞれの状態情報、位置情報を記憶する。
【0028】
図4は、管理装置120のデータベース123に記憶された状態情報テーブルの一例を示す図である。状態情報テーブルには、トラップT毎の状態情報、判定結果、位置情報等が検知装置110の装置IDに対応付けて登録されている。状態情報は、
図5に示すように、作動状態の種別、状態値、状態値の取得時刻が対応付けて登録されている。
図5は、状態情報テーブルの状態情報の詳細な構成の一例を示す図である。
【0029】
判定結果は、管理装置120が、状態情報に基づいて各トラップTの作動状態を判定した結果である。例えば、正常、漏れ、休止を特定する数値情報である。漏れは、トラップTから蒸気漏れが発生しているとの判定結果を示す。休止は、トラップTが休止状態にあるとの判定結果を示す。位置情報は、各トラップTが配置されている位置を特定するための情報である。位置情報は、例えば、
図6に示す配置マップ画像50での各トラップTの位置を特定する座標情報である。
【0030】
図6は、設備におけるトラップTの配置位置を示す配置マップ画像50の一例を示す図である。配置マップ画像50には、トラップTのアイコン画像TTなどが含まれている。このアイコン画像TTの位置が、トラップTが配置されている場所を示す。管理装置120は、上述のトラップTの位置座標に基づいて配置マップ画像50を生成する。また、図示しないが、アイコン画像TT付近には、判定結果などの情報もテキスト表示される。
【0031】
例えば、作業者は、端末装置(不図示)から管理装置120にアクセスし、
図6に示すような配置マップ画像50の情報を管理装置120から受信し、端末装置のディスプレイに表示させる。そして、配置マップ画像50を参照しつつ、漏れ判定されているトラップTの所在地に移動することができる。なお、配置マップ画像50の生成については、一般的な構成であるため詳細な説明は省略する。
【0032】
第4 検知装置110の初期設定
トラップ管理システム100では、検知装置110をトラップTに配置した際に検知装置110の初期設定が行われる。初期設定は、例えば、ネットワークID、セキュリティーキー等の管理装置120及び通信中継装置130との無線通信を開始するための設定である。上記設定を、例えば、作業者が端末装置を用いて無線通信で検知装置110にアクセスして行う。
【0033】
また、初期設定が完了した後、検知装置110によって新規登録処理が開始される。新規登録処理は、検知装置110が配置されたトラップTの位置情報と、検知装置110の装置IDとを、管理装置120の状態情報テーブル(データベース123)に対応づけて記憶(新規登録)するための処理である。具体的には、トラップTの位置情報と装置IDを含む登録要求が検知装置110から管理装置120に送信され、データベース123に登録される。その後、管理装置120から検知装置110に登録完了情報が送信される。
【0034】
また、検知装置110は、登録完了情報を受信した後、RFIDタグ140のメモリに登録完了情報を書き込む。その後、同報送信要求に応じた状態情報の送信が開始される。なお、RFIDタグ140は、検知装置110が配置されるまでにトラップTに配置され、メモリに位置情報が記憶されていればよい。
【0035】
第5 トラップ管理システム100の動作
図7は、検知装置110の新規登録処理を示すフローチャートである。この処理は、検知装置110において通信中継装置130等との通信セッションが確立(初期設定が完了)後、新規登録処理が完了していないことを契機として、制御部111によって開始される。なお、新規登録処理が完了しているか否かは、例えば、メモリ113内の登録完了情報の有無に基づいて判断される。
【0036】
制御部111は、RFIDリーダ/ライタ116にRFIDタグ140から位置情報を取得させる(ステップS10)。次に、制御部111は、装置ID及び位置情報を含む登録要求を、通信中継装置130を介して、管理装置120に送信する(ステップS11)。その後、管理装置120から登録完了情報を受信する(ステップS12:YES)まで待機する。
【0037】
管理装置120の制御部121は、登録要求を受信すると(ステップS20:YES)、データベース123に装置IDと位置情報とを対応付けて登録する(ステップS21)。具体的には、受信した装置IDに対応付けた状態情報、判定結果、位置情報を状態情報テーブルに追加する。そして、制御部121は、登録完了情報を、登録要求を送信してきた検知装置110に通信中継装置130を介して送信し(ステップS22)、ステップS20の処理に戻る。
【0038】
検知装置110の制御部111は、登録完了情報を受信すると(ステップS12:YES)、登録完了処理を行う(ステップS13)。具体的には、メモリ113に登録完了情報を記憶させる。さらに、RFIDリーダ/ライタ116からRFIDタグ140のメモリに登録完了情報を書き込ませる。
【0039】
以上のように、記憶手段(RFIDタグ140)に記憶された構成機器(トラップT)の位置情報が取得手段(RFIDリーダ/ライタ116)を介して検知手段(検知装置110)によって取得され、検知装置110の識別情報(装置ID)及び位置情報が検知装置110から管理装置120に送信される。そして、管理装置120によって装置IDと位置情報とが対応付けて記憶される。このように位置情報が記憶されたRFIDタグ140を構成機器に配置しておき、通信機能を有する検知装置110が位置情報を取得して管理装置120に送信(登録要求)することで、管理装置120において検知装置110とトラップTの位置情報とを容易に対応付けることができる。
【0040】
なお、上述の実施例では、
図7のステップS13の登録完了処理において、RFIDタグ140に登録完了情報を書き込んでいるが、書き込まなくてもよい。この場合、RFIDリーダ/ライタ116のライタ機能は不要であるので、RFIDリーダ/ライタ116に代えてRFIDリーダを用いてもよい。
【0041】
また、上述の実施例では、RFIDタグ140に書き込まれた登録完了情報は消去されずに維持されるが、検知装置110がトラップTから取り外される場合には消去するようにしてもよい。例えば、作業者が、検知装置110を取り外す前に、無線通信により端末装置から検知装置110に消去要求を送信する。そして、検知装置110が、受信した消去要求に基づいてRFIDタグ140の登録完了情報を消去する。これにより、RFIDタグ140を未登録の状態(初期状態)に戻すことができる。
【実施例2】
【0042】
この実施例は、検知装置にRFIDリーダ/ライタが含まれていない構成において前述の実施例1と異なる。この異なる構成について
図8を用いて説明する。その他の構成については実施例1と同様であるため説明は省略する。
【0043】
図8は、トラップ管理システム200の一部の構成を示す図である。トラップ管理システム200は、検知装置210、RFIDリーダ機器216、及び、RFIDタグ140等を有している。検知装置210は、RFIDリーダ/ライタを備えておらず、RFIDタグ140の位置情報をRFIDリーダ機器216から無線通信により受信する。RFIDリーダ機器216は、他の装置と無線通信可能な可搬型であり、RFIDタグ140のリーダ機能を有している。また、RFIDリーダ機器216は、可搬型であるので、検知装置210及びRFIDタグ140の配置分だけ設ける必要はなく、少なくとも1つあればよい。なお、RFIDリーダ機器216は、一般的な構成であるため詳細な説明は省略する。また、この実施例では、RFIDタグ140への登録完了情報の書き込みは行わない。
【0044】
例えば、作業者は、検知装置210の初期設定後に、RFIDリーダ機器216を操作してRFIDタグ140から位置情報を取得し、検知装置210に送信する。検知装置210は、RFIDリーダ機器216から位置情報を受信したことを契機として、新規登録処理を実行する。すなわち、この実施例では、
図7に示すステップS10の処理及びステップS13の処理でのRFIDタグ140への書き込み処理を除いた新規登録処理が行われる。
【0045】
このように検知装置210とRFIDリーダ機器216とを別体とすることで、検知装置210のコストアップを抑制することができる。
【0046】
なお、この実施例では、RFIDリーダ機器216から検知装置210に位置情報が直接に送信されるが、別の端末装置が位置情報を送信してもよい。例えば、RFIDリーダ機器216から初期設定を行うための端末装置に位置情報を送信し、初期設定時に端末装置が検知装置210に位置情報を送信するようにしてもよい。
【0047】
また、この実施例では、RFIDタグ140への登録完了情報の書き込みを行っていないが、実施例1と同様に書き込みを行うようにしてもよい。この場合、RFIDリーダ機器216に代えて、RFIDリーダ/ライタ機器を使用すればよい。また、この場合、検知装置210がトラップTから取り外される際、実施例1と同様にRFIDタグ140に書き込まれた登録完了情報を、RFIDリーダ/ライタ機器を用いて消去するようにしてもよい。
【0048】
[他の実施例]
上述の各実施例では、RFIDタグにトラップの位置情報が記憶されていたが、位置情報を読み出し可能であれば、いずれの記憶手段を用いてもよい。例えば、位置情報を示すQRコード(登録商標)が印刷された紙媒体であってもよい。この場合、QRコードリーダを用いて位置情報を読み取り、検知装置に送信する。あるいは、検知装置にQRコードリーダを内蔵してもよい。この場合、QRコードリーダの読取部(撮像部)が、紙媒体に対向するように紙媒体及び検知装置の配置位置を調整すればよい。さらに、記憶手段としてGPS受信機やUSBメモリを用いてもよい。
【0049】
また、上述の各実施例のRFIDタグに記憶されている位置情報は、マップの座標情報であるが、トラップの位置を特定できる情報であれば、特にこれに限定されるものではない。例えば、経度及び緯度や、トラップの識別情報であってもよい。なお、トラップの識別情報の場合には、トラップの識別情報と位置情報とが対応付けられた情報を予め用意しておけばよい。
【0050】
上述の各実施例では、トラップを管理するトラップ管理システムについて説明したが、設備を構成する複数の構成機器の少なくとも一部の構成機器を管理する機器管理システムであれば、本発明を適用できる。例えば、構成機器としては、熱交換器やボイラーなどがある。