特許第6072433号(P6072433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072433
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】遂次成形方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/18 20060101AFI20170123BHJP
   B21D 22/06 20060101ALI20170123BHJP
   B21D 22/22 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   B21D22/18
   B21D22/06
   B21D22/22
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-117927(P2012-117927)
(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公開番号】特開2013-244493(P2013-244493A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126894
【氏名又は名称】株式会社アミノ
(74)【代理人】
【識別番号】100081385
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 修治
(72)【発明者】
【氏名】網野 雅章
(72)【発明者】
【氏名】溝口 雅士
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−291065(JP,A)
【文献】 特開2003−245727(JP,A)
【文献】 特開平09−010855(JP,A)
【文献】 特開2003−236620(JP,A)
【文献】 特表2007−512960(JP,A)
【文献】 特開2004−058139(JP,A)
【文献】 特開2003−245726(JP,A)
【文献】 特開2002−001444(JP,A)
【文献】 特開2013−215749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/18
B21D 22/06
B21D 22/22
B21D 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材における3次元形状をなす基準面の内部に定めた成形区画内に、逐次成形工具によって、基準面に交差する壁部と頂部又は底部とを有して他の3次元形状をなす成形面を逐次成形する逐次成形方法であって、
板材における成形面の壁部に対し、逐次成形工具を板材における3次元形状をなす基準面の成形区画に沿って相対移動させる加工パスを行ない、この加工パスが板材における3次元形状をなす基準面に交差する方向に所定のピッチを介して繰り返され、壁部を逐次成形するとともに、
前記板材における成形面の頂部又は底部が、壁部を逐次成形する逐次成形工具の頂部又は底部寄りの加工パスに連続し、該加工パスとともに周回状をなす該逐次成形工具による連続的付加パスにより成形される遂次成形方法。
【請求項2】
前記板材における成形面の壁部を繰り返し逐次成形する逐次成形工具の全ての加工パスのそれぞれが3次元形状をなす基準面の成形区画に沿う無端周回状をなし、全ての加工パスが該無端周回方向における頂部又は底部まわりの同一位置で、隣り合う他の加工パスとの間になすピッチを互いに均等にした請求項1に記載の遂次成形方法。
【請求項3】
前記板材における成形面の裏側に、逐次成形工具に対する受け具として、該成形面に対応する成形冶具を配置した請求項1又は2に記載の遂次成形方法。
【請求項4】
前記板材における基準面の外縁面形状に一致するホルダ面を備えるワークホルダと、該基準面の外縁面形状に一致するクランプ面を備えるワーククランプで該板材を保持し、逐次成形する請求項1〜のいずれかに記載の遂次成形方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の遂次成形方法を実施する逐次成形装置であって、
板材における基準面の外縁面形状に一致するホルダ面を備えるワークホルダと、該基準面の外縁面形状に一致するクランプ面を備えるワーククランプとが載置されるテーブルと、
テーブルに対して垂直をなす軸方向に装備される逐次成形工具とを有してなる逐次成形装置。
【請求項6】
前記板材における成形面の裏側に、逐次成形工具に対する受け具として配置され、該成形面に対応する成形冶具と、
ワークホルダとワーククランプとが載置されたテーブルを成形冶具に対して移動させる移動手段とを有してなる請求項に記載の逐次成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は板材の遂次成形方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の如く、金型を必要とせずに金属の板材を加工する成形方法として、棒状工具を板材に押付け、該工具を3次元方向に相対移動させる逐次成形方法がある。
【0003】
従来の逐次成形方法は、工具を水平面状の板材に押付け(又は押込み)、該工具を板材の成形すべき3次元形状(立体形状)の等高線に沿う1周に沿って相対的に移動させることを、該板材の高さ方向の各所で繰り返す。即ち、板材の成形すべき立体形状のデータに基づき、工具を板材に押付け、板材移動装置により板材を保持しているテーブルをX軸及びY軸方向へ移動し、工具を所定の軌跡に従う等高線に沿う1周に渡って移動させる1サイクルの加工を行なった後、工具をZ軸方向に一定の送りピッチ分移動して該工具を次の等高線上に位置付け、次の1サイクルの加工を行なうことを、板材の上縁から下縁に渡って繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-1444
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、板製品の加工は、水平面状の板材に3次元形状をなす成形面を成形するものに限らない。即ち、図15に示す如く、板材1において既に1次加工済の球状面等の3次元形状をなす基準面2の内部に定めた成形区画2A内に、基準面2から立上り状(又は立下り状)に交差する壁部3Aと頂部3T(又は底部3B)とを有して3次元形状をなす成形面3を成形することもある。
【0006】
ところが、板材1の上述の成形面3を従来の逐次成形方法により成形しようとする場合には、成形面3の壁部3Aの最上部(頂部3Tとの境界部)から各等高線に沿う1サイクルの加工パスを繰り返した工具が基準面2の成形区画2Aの高レベル部に到達した後、該工具を次の等高線に沿う加工パスにて移動させて成形面3の壁部3Aの最下部(基準面2の成形区画2Aの低レベル部との境界部)まで加工しようとすると、該工具が基準面2の成形区画2Aの高レベル部に干渉して当該次の加工パスを実行できない。即ち、成形面3の壁部3Aの最下部に成形不能部を生ずる。
【0007】
本発明の課題は、板材における3次元形状をなす基準面の内部に定めた成形区画内に、逐次成形工具によって、基準面に交差する壁部と頂部又は底部とを有して他の3次元形状をなす成形面を逐次成形することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、板材における3次元形状をなす基準面の内部に定めた成形区画内に、逐次成形工具によって、基準面に交差する壁部と頂部又は底部とを有して他の3次元形状をなす成形面を逐次成形する逐次成形方法であって、板材における成形面の壁部に対し、逐次成形工具を板材における3次元形状をなす基準面の成形区画に沿って相対移動させる加工パスを行ない、この加工パスが板材における3次元形状をなす基準面に交差する方向に所定のピッチを介して繰り返され、壁部を逐次成形するとともに、前記板材における成形面の頂部又は底部が、壁部を逐次成形する逐次成形工具の頂部又は底部寄りの加工パスに連続し、該加工パスとともに周回状をなす該逐次成形工具による連続的付加パスにより成形されるようにしたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記板材における成形面の壁部を繰り返し逐次成形する逐次成形工具の全ての加工パスのそれぞれが3次元形状をなす基準面の成形区画に沿う無端周回状をなし、全ての加工パスが該無端周回方向における頂部又は底部まわりの同一位置で、隣り合う他の加工パスとの間になすピッチを互いに均等にしたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において更に、前記板材における成形面の裏側に、逐次成形工具に対する受け具として、該成形面に対応する成形冶具を配置したものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに係る発明において更に、前記板材における基準面の外縁面形状に一致するホルダ面を備えるワークホルダと、該基準面の外縁面形状に一致するクランプ面を備えるワーククランプで該板材を保持し、逐次成形するようにしたものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1又は2に記載の遂次成形方法を実施する逐次成形装置であって、板材における基準面の外縁面形状に一致するホルダ面を備えるワークホルダと、該基準面の外縁面形状に一致するクランプ面を備えるワーククランプとが載置されるテーブルと、テーブルに対して垂直をなす軸方向に装備される逐次成形工具とを有してなるようにしたものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項に係る発明において更に、前記板材における成形面の裏側に、逐次成形工具に対する受け具として配置され、該成形面に対応する成形冶具と、
ワークホルダとワーククランプとが載置されたテーブルを成形冶具に対して移動させる移動手段とを有してなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
(請求項1)
(a)板材における成形面の壁部に対し、逐次成形工具を板材における3次元形状をなす基準面の成形区画に沿って相対移動させる加工パスを行ない、この加工パスが板材における3次元形状をなす基準面に交差する方向に所定のピッチを介して繰り返され、壁部を逐次成形する。工具は、等高線に沿う加工パスでなく、3次元形状をなす基準面の成形区画(非直線状の輪郭をなす区画)に概ね平行をなす如くに沿う加工パスを繰り返すものであるから、成形面の壁部の最下部においても基準面の成形区画の高レベル部に干渉することなく、成形面の最下部まで逐次成形できる。
【0017】
(b)前記板材における成形面の頂部又は底部が、壁部を逐次成形する逐次成形工具の頂部又は底部寄りの加工パスに連続し、該加工パスとともに周回状をなす該逐次成形工具による連続的付加パスにより成形される。工具は、加工パスに連続する連続的付加パスを加えて1周を移動する1サイクルの加工により、成形面の壁部とともに、頂部又は底部も成形できる。これにより、3次元形状をなす基準面の成形区画に平行をなす如くに沿うことのない頂部又は底部も、スムースに逐次成形できる。
【0018】
(請求項
(c)前記板材における成形面の壁部を繰り返し逐次成形する逐次成形工具の全ての加工パスのそれぞれが3次元形状をなす基準面の成形区画に沿う無端周回状をなし、全ての加工パスが該無端周回方向における頂部又は底部まわりの同一位置で、隣り合う他の加工パスとの間になすピッチを互いに均等にした。工具は、成形面の壁部の最上部(頂部の周囲に沿う)でも、最下部(底部の周囲に沿う)でも、無端周回状の加工パスをなす。従って、工具が頂部又は底部の周囲で1周を移動する1サイクルの加工を行なうにあたり、頂部又は底部に入り込んでそれらの頂部又は底部に工具痕の筋目を及ぼすことがない。
【0020】
(請求項
(d)前記板材における成形面の裏側に、逐次成形工具に対する受け具として、該成形面に対応する成形冶具を配置した。成形冶具は、工具により押圧される板材を裏側から支える。工具は、板材に対し成形冶具に倣う3次元方向に相対移動し、板材を成形冶具に倣う立体形状に成形する。
【0021】
(請求項4、5、6、
(e)前記板材における基準面の外縁面形状に一致するホルダ面を備えるワークホルダと、該基準面の外縁面形状に一致するクランプ面を備えるワーククランプで該板材を保持し、逐次成形する。板材の3次元形状をなす基準面の外縁面をワークホルダとワーククランプで確実に保持し、板材を工具に対し相対移動できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は実施例1の遂次成形装置の準備状態を示す模式図である。
図2図2は遂次成形装置の成形開始状態を示す模式図である。
図3図3は逐次成形装置の成形終了状態を示す模式図である。
図4図4は板材の成形面を示す模式図である。
図5図5は実施例2の遂次成形装置の成形終了状態を示す模式図である。
図6図6は板材の成形面を示す模式図である。
図7図7は実施例3の遂次成形装置の準備状態を示す模式図である。
図8図8は遂次成形装置の成形開始状態を示す模式図である。
図9図9は逐次成形装置の成形終了状態を示す模式図である。
図10図10は板材の成形面を示す模式図である。
図11図11は実施例4の遂次成形装置の成形終了状態を示す模式図である。
図12図12は板材の成形面を示す模式図である。
図13図13参考例1の板材の成形面を示す模式図である。
図14図14参考例2の板材の成形面を示す模式図である。
図15図15は板材の加工例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例1)(図1図4
図1図3に示す逐次成形装置100は、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金等の合金又は金属からなる板材1を立体形状に成形するものである。板材1は、図15に示す如く、既に1次加工済の球状面等の3次元形状をなす基準面2の内部に定めた成形区画2A内に、基準面2から立上り状(又は立下り状)に交差する壁部3Aと頂部3T(又は底部3B)とを有して3次元形状をなす凸形(又は凹形)成形面3を遂次成形するものである。ここで、3次元形状をなす基準面2の成形区画2Aは直線状を有しない非直線状の輪郭をなし、成形面3の頂部3T(又は底部3B)は基準面2の成形区画2Aに平行をなす如くに該成形区画2Aに沿うものでないとする(但し、頂部3T(又は底部3B)は基準面2の成形区画2Aに平行をなす如くに該成形区画2Aに沿うものでも可)。
【0024】
逐次成形装置100は、板材1の外縁部を支持する板材支持装置10と、板材1に接する棒状工具20(図3)と、板材1と工具20を3次元方向に相対的に移動させる移動装置30(図3)とを有する。
【0025】
板材支持装置10は、テーブル11の上面の例えば四隅に立てた支柱12により支持される支持板13と、支持板13に支持枠13Aを介して取着されるワークホルダ14と、ワークホルダ14との間で板材1の外縁部を挟圧して保持するワーククランプ15とからなる。ワークホルダ14は板材1における基準面2の外縁面形状に一致するホルダ面14Aを備える。ワーククランプ15は基準面2の外縁面形状に一致するクランプ面15Aを備える。
【0026】
工具20は、テーブル11の上面に対して例えば鉛直をなす如くに配置された棒状をなし、例えば先端R面をワーククランプ15の枠内にある板材1の表面に押付けられる。
【0027】
移動装置30は、板材1を直交2軸方向(X軸及びY軸方向)へ移動するようにテーブル11を位置制御する板材移動装置31と、工具20を上記直交2軸方向のそれぞれと直交する方向(Z軸方向)へ移動する工具移動装置32とを有する。
【0028】
遂次成形装置100は、工具20が接する板材1の成形面3の裏側に、工具20のX軸及びY軸方向位置と同一位置で該板材1を支える受け具40を有する。受け具40は、テーブル11に固定的に支持され、板材1の成形面3の全部又は要部をかたどった凸形成形冶具(成形モデル)41からなる。
【0029】
遂次成形装置100は、支持板13に取着されたワークホルダ14と、ワーククランプ15によって保持された板材1の成形面3の裏側を成形冶具41に支えた状態で、該板材1の外縁部を常時Z軸方向の下向きに一定の引張力で引張る引張手段16を、例えば支柱12に内蔵して備える。
【0030】
逐次成形装置100は、工具20を板材1の成形面3に押付け、該工具20を板材1の成形面3に対し、成形冶具41に倣う3次元方向に相対的に移動させ、該板材1の成形面3を成形冶具41に倣う3次元形状に成形するものになる。
【0031】
具体的には、逐次成形装置100は、図3図4に示す如く、工具20を板材1における凸形成形面3の外周壁部3Aに対し、板材1における3次元形状をなす基準面2の成形区画2A(非直線状の輪郭をなす区画)に沿って相対移動させる加工パスAを行ない、この加工パスが板材1における3次元形状をなす基準面2に交差する方向に所定のピッチを介して繰り返され、壁部3Aを逐次成形する。
【0032】
このとき、板材1の成形面3の壁部3Aの最下縁側を逐次成形する工具20の1サイクルの加工パスAが基準面2の成形区画2Aとの間に形成する間隔は、該成形区画2Aの全周において一定のピッチPdをなす。また、任意の加工パスAが無端周回方向における成形面3の頂部3Tまわりの周方向各位置で、隣り合う他の加工パスAとの間になす間隔も、それらの加工パスAの全周において一定のピッチPiをなす。本実施例ではPd=Piである。
【0033】
従って、遂次成形装置100にあっては、板材1の成形面3の壁部3Aの3次元形状のデータに基づき、工具20を板材1に押付け、板材移動装置31によりテーブル11及び板材1をX軸及びY軸方向へ移動し、かつ工具移動装置32により工具20をZ軸方向へ移動し、工具20を板材1における3次元形状をなす基準面2の成形区画2Aに沿って相対移動させる1サイクルの加工パスを行なう。次に、工具20をZ軸方向に所定のピッチだけ移動し、該工具20を次の1サイクルの加工パスを行なうことを、板材1における成形面3の壁部3Aの上縁から下縁に渡って繰り返す。
【0034】
尚、板材1における成形面3の頂部3Tは、壁部3Aを逐次成形する工具20の頂部3T寄りの加工パス、例えば図4の加工パスAtに連続し、該加工パスAtとともに周回状をなす該工具20による連続的付加パスBtにより成形される。この場合にも、板材1の成形面3の壁部3A及び頂部3Tの3次元形状のデータに基づき、工具20を板材1に押付け、板材移動装置31によりテーブル11及び板材1をX軸及びY軸方向へ移動し、かつ工具移動装置32により工具20をZ軸方向へ移動する。
【0035】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)板材1における成形面3の壁部3Aに対し、逐次成形工具20を板材1における3次元形状をなす基準面2の成形区画2Aに沿って相対移動させる加工パスAを行ない、この加工パスAが板材1における3次元形状をなす基準面2に交差する方向に所定のピッチを介して繰り返され、壁部3Aを逐次成形する。工具20は、等高線に沿う加工パスAでなく、3次元形状をなす基準面2の成形区画2A(非直線状の輪郭をなす区画)に概ね平行をなす如くに沿う加工パスAを繰り返すものであるから、成形面3の壁部3Aの最下部においても基準面2の成形区画2Aの高レベル部に干渉することなく、成形面3の最下部まで逐次成形できる。
【0036】
(b)前記板材1における成形面3の頂部3Tが、壁部3Aを逐次成形する逐次成形工具20の頂部3T寄りの加工パスAに連続し、該加工パスAとともに周回状をなす該逐次成形工具20による連続的付加パスBtにより成形される。工具20は、加工パスAに連続する連続的付加パスBtを加えて1周を移動する1サイクルの加工により、成形面3の壁部3Aとともに、頂部3Tも成形できる。これにより、3次元形状をなす基準面2の成形区画2Aに平行をなす如くに沿うことのない頂部3Tも、スムースに逐次成形できる。
【0037】
(c)成形冶具41は、工具20により押圧される板材1を裏側から支える。工具20は、板材1に対し成形冶具41に倣う3次元方向に相対移動し、板材1を成形冶具41に倣う立体形状に成形する。
【0038】
(d)板材1の3次元形状をなす基準面2の外縁面をワークホルダ14とワーククランプ15で確実に保持し、板材1を工具20に対し相対移動できる。
【0039】
(実施例2)(図5図6
実施例2において、逐次成形装置100は、図5図6に示す如く、工具20を板材1における凸形成形面3の外周壁部3Aに対し、板材1における3次元形状をなす基準面2の成形区画2A(非直線状の輪郭をなす区画)に沿って相対移動させる加工パスAを行ない、この加工パスが板材1における3次元形状をなす基準面2に交差する方向に所定のピッチを介して繰り返され、壁部3Aを逐次成形する。
【0040】
実施例2が実施例1と異なる点は、図6に示す如く、実施例1におけると同様の板材1の成形面3の壁部3Aを繰り返し逐次成形するに際し、壁部3Aの上縁〜下縁における工具20の全ての加工パスAのそれぞれが、3次元形状をなす基準面2の成形区画2Aに沿う無端周回状をなす。そして、全ての加工パスAが該無端周回方向における頂部3Tまわりの同一位置で、隣り合う他の加工パスAとの間になす壁部3Aの上縁側〜下縁側のピッチPd1・・・Pu1、又はPd2・・・Pu2をそれぞれ互いに均等にしている(Pd1=・・・=Pu1、Pd2=・・・=Pu2)。
【0041】
本実施例によれば、工具20は、成形面3の壁部3Aの最上部(頂部3Tの周囲に沿う)で、無端周回状の加工パスAをなす。従って、工具20が頂部3Tの周囲で1周を移動する1サイクルの加工を行なうにあたり、頂部3Tに入り込んでそれらの頂部3Tに工具痕の筋目を及ぼすことがない。
【0042】
(実施例3)(図7図10
実施例3において、板材1は既に1次加工済の球状面等の3次元形状をなす基準面2の内部に定めた成形区画2A内に、基準面2から立下り状に交差する壁部3Aと底部3Bとを有して3次元形状をなす凹形成形面3を逐次成形するものである。
【0043】
実施例3において、逐次成形装置100は、図7図8に示す如く、ワークホルダ14を一体に備えた凹形成形冶具(成形モデル)41からなる受け具40をテーブル11に固定的に支持し、このワークホルダ40とワーククランプ15との間に板材1の外縁部を挟圧して保持する。
【0044】
逐次成形装置100は、図9図10に示す如く、工具20を板材1における凹形成形面3の内周壁部3Aに対し、板材1における3次元形状をなす基準面2の成形区画2A(非直線状の輪郭をなす区画)に沿って相対移動させる加工パスAを行ない、この加工パスが板材1における3次元形状をなす基準面2に交差する方向に所定のピッチを介して繰り返され、壁部3Aを逐次成形する。
【0045】
このとき、板材1の成形面3の壁部3Aの最上縁側を逐次成形する工具20の1サイクルの加工パスAが基準面2の成形区画2Aとの間に形成する間隔は、該成形区画2Aの全周において一定のピッチPuをなす。また、任意の加工パスAが無端周回方向における成形面3の底部3Bまわりの周方向各位置で、隣り合う他の加工パスAとの間になす間隔も、それらの加工パスAの全周において一定のピッチPiをなす。本実施例ではPu=Piである。
【0046】
従って、遂次成形装置100にあっては、板材1の成形面3の壁部3Aの3次元形状のデータに基づき、工具20を板材1に押付け、板材移動装置31によりテーブル11及び板材1をX軸及びY軸方向へ移動し、かつ工具移動装置32により工具20をZ軸方向へ移動し、工具20を板材1における3次元形状をなす基準面2の成形区画2Aに沿って相対移動させる1サイクルの加工パスを行なう。次に、工具20をZ軸方向に所定のピッチだけ移動し、該工具20を次の1サイクルの加工パスを行なうことを、板材1における成形面3の壁部3Aの上縁から下縁に渡って繰り返す。
【0047】
尚、板材1における成形面3の底部3Bは、壁部3Aを逐次成形する工具20の底部3B寄りの加工パス、例えば図10の加工パスAbに連続し、該加工パスAbとともに周回状をなす該工具20による連続的付加パスBbにより成形される。この場合にも、板材1の成形面3の壁部3A及び底部3Bの3次元形状のデータに基づき、工具20を板材1に押付け、板材移動装置31によりテーブル11及び板材1をX軸及びY軸方向へ移動し、かつ工具移動装置32により工具20をZ軸方向へ移動する。
【0048】
(実施例4)(図11図12
実施例4において、逐次成形装置100は、図11図12に示す如く、工具20を板材1における凹形成形面3の内周壁部3Aに対し、板材1における3次元形状をなす基準面2の成形区画2A(非直線状の輪郭をなす区画)に沿って相対移動させる加工パスAを行ない、この加工パスが板材1における3次元形状をなす基準面2に交差する方向に所定のピッチを介して繰り返され、壁部3Aを逐次成形する。
【0049】
実施例4が実施例3と異なる点は、図12に示す如く、実施例3におけると同様の板材1の成形面3の壁部3Aを繰り返し逐次成形するに際し、壁部3Aの上縁〜下縁における工具20の全ての加工パスAのそれぞれが、3次元形状をなす基準面2の成形区画2Aに沿う無端周回状をなす。そして、全ての加工パスAが該無端周回方向における底部3Bまわりの同一位置で、隣り合う他の加工パスAとの間になす壁部3Aの上縁側〜下縁側のピッチPu1・・・Pd1、又はPu2・・・Pd2をそれぞれ互いに均等にしている(Pu1=・・・=Pd1、Pu2=・・・=Pd2)。
【0050】
本実施例によれば、工具20は、成形面3の壁部3Aの最下部(底部3Bの周囲に沿う)で、無端周回状の加工パスAをなす。従って、工具20が底部3Bの周囲で1周を移動する1サイクルの加工を行なうにあたり、底部3Bに入り込んでそれらの底部3Bに工具痕の筋目を及ぼすことがない。
【0051】
参考例1、2)(図13図14
参考例1、2は、実施例4によって逐次成形された板材1における成形面3の底部3Bが、壁部3Aを逐次成形する工具20の加工パスAとは独立し、該底部3Bを逐次成形する工具20による独立的付加パスIにより成形されてなるものである。
【0052】
参考例1の独立的付加パスIは、図13に示す如く、工具20が成形面3の壁部3Aの下縁がなす区画に囲まれる底部3Bを、凹形成形冶具41の底面(底部3Bに対応する面)に倣うように成形すべく、該工具20の互いに平行するライン状移動を繰り返す。
【0053】
参考例2の独立的付加パスIは、図14に示す如く、工具20が成形面3の壁部3Aの下縁がなす区画に囲まれる底部3Bを、凹形成形冶具41の底面(底部3Bに対応する面)に倣うように成形すべく、該工具20の互いに概ね同心状をなす環状移動(本参考例では四角環状移動)を繰り返す。
【0054】
参考例によれば、工具20の独立的付加パスIにより、3次元形状をなす基準面2の成形区画2Aに平行をなす如くに沿うことのない底部3Bも、スムースに逐次成形できる。
【0055】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、板材における3次元形状をなす基準面の内部に定めた成形区画内に、逐次成形工具によって、基準面に交差する壁部と頂部又は底部とを有して他の3次元形状をなす成形面を逐次成形する逐次成形方法であって、前記板材における成形面の頂部又は底部が、壁部を逐次成形する逐次成形工具の頂部又は底部寄りの加工パスに連続し、該加工パスとともに周回状をなす該逐次成形工具による連続的付加パスにより成形されるようにしたものである。
【符号の説明】
【0057】
1 板材
2 基準面
2A 成形区画
3 成形面
3A 壁部
3B 底部
3T 頂部
10 板材支持装置
11 テーブル
14 ワークホルダ
14A ホルダ面
15 ワーククランプ
15A クランプ面
20 棒状工具
30 移動装置
31 板材移動装置
32 工具移動装置
40 受け具
41 成形冶具
A、At 加工パス
Bt 連続的付加パス
図1
図2
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