特許第6072457号(P6072457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072457
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】標的システム
(51)【国際特許分類】
   F41J 5/06 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   F41J5/06
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-168462(P2012-168462)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-25677(P2014-25677A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】512198660
【氏名又は名称】株式会社エイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(72)【発明者】
【氏名】永井 克己
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05447315(US,A)
【文献】 特開2004−108635(JP,A)
【文献】 特開平02−005986(JP,A)
【文献】 特開昭53−105895(JP,A)
【文献】 特開平06−194097(JP,A)
【文献】 特表平03−505172(JP,A)
【文献】 特開昭55−112999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41J 1/00 − 1/10
F41J 5/056 − 5/06
A63F 9/02
A63B 63/00 − 63/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射的の標的となる標的板またはその近傍の複数個所に配置され、前記標的板に弾丸が着弾することにより発生する衝撃波を検出する衝撃波検出手段と、
複数の前記衝撃波検出手段が衝撃波を検出した衝撃波検出時刻に従って、最初の衝撃波検出時刻と他の衝撃波検出時刻との差分値である検出時間差を求めて、それらの検出時間差に基づいて、前記標的板に弾丸が着弾した着弾位置を特定する演算処理手段と
を備え
前記演算処理手段は、前記標的板に対して格子状に設定された所定数の目標点ごとに、予め射的を行うことによって求められた前記衝撃波検出手段が検出した衝撃波の振幅から構成される配列データを参照して、前記着弾位置を取り囲む前記目標点に対応付けられている前記衝撃波の振幅から、前記標的板に弾丸が着弾したときに計測される衝撃波の振幅を補正して、前記標的板に着弾した弾丸の速度およびエネルギーのうちの少なくとも一方を算出する
標的システム。
【請求項2】
前記配列データには、前記標的板に対して格子状に設定された所定数の目標点ごとに予め求められた前記検出時間差から算出された座標が、前記目標点ごとに対応付けられており、
前記演算処理手段は、前記配列データを参照し、前記着弾位置を取り囲む前記配列データの座標とのずれを用いて、前記着弾位置の座標を補正することにより前記着弾位置を特定する
請求項1に記載の標的システム。
【請求項3】
前記配列データには、前記標的板に対して格子状に設定された所定数の目標点ごとに予め求められた前記検出時間差が、前記目標点ごとに対応付けられており、
前記演算処理手段は、前記配列データを参照し、前記検出時間差から前記目標点ごとの座標を算出して、それらの座標のうちの、前記着弾位置を取り囲む前記配列データの座標とのずれを用いて、前記着弾位置の座標を補正することにより前記着弾位置を特定する
請求項1に記載の標的システム。
【請求項4】
前記演算処理手段は、温度変化に応じて、前記速度またはエネルギーを補正する
請求項1乃至3のいずれかに記載の標的システム。
【請求項5】
射的の標的となる標的板またはその近傍の複数個所に配置され、前記標的板に弾丸が着弾することにより発生する衝撃波を検出する衝撃波検出手段と、
複数の前記衝撃波検出手段が衝撃波を検出した衝撃波検出時刻に従って、最初の衝撃波検出時刻と他の衝撃波検出時刻との差分値である検出時間差を求めて、それらの検出時間差に基づいて、前記標的板に対して格子状に設定された所定数の目標点ごとに予め求められた前記検出時間差から構成される配列データ、または、その検出時間差から算出された座標から構成される配列データを参照し、前記標的板に弾丸が着弾した着弾位置を特定する演算処理手段と
を備える標的システム。
【請求項6】
前記配列データは、所定数の前記目標点と複数の前記衝撃波検出手段との距離に従って演算により求められた前記検出時間差、または、その検出時間差から算出された座標から構成される
請求項5に記載の標的システム。
【請求項7】
前記配列データは、所定数の前記目標点に対して予め射的を行うことによって、それぞれの目標点に対して射的が行われたときに検出された衝撃波の衝撃波検出時刻から求められた前記検出時間差、または、その検出時間差から算出された座標から構成される
請求項5に記載の標的システム。
【請求項8】
前記検出時間差から構成される前記配列データは、所定数の前記目標点と複数の前記衝撃波検出手段との距離に従って演算により求められた前記検出時間差の一部を、所定の目標点に対して射的が行われたときに検出された衝撃波の衝撃波検出時刻から求められた前記検出時間差により置き換えられて構成される
請求項5に記載の標的システム。
【請求項9】
前記検出時間差から算出された座標から構成される前記配列データは、所定数の前記目標点と複数の前記衝撃波検出手段との距離に従って演算により求められた前記検出時間差から算出された座標の一部を、所定の目標点に対して射的が行われたときに検出された衝撃波の衝撃波検出時刻から求められた前記検出時間差から算出された座標により置き換えられて構成される
請求項5に記載の標的システム。
【請求項10】
前記演算処理手段は、前記検出時間差から構成される前記配列データを参照し、前記検出時間差から前記目標点ごとの座標を算出して、それらの座標のうちの、前記着弾位置を取り囲む前記配列データの座標とのずれを用いて、前記着弾位置の座標を補正することにより前記着弾位置を特定する
請求項5乃至9のいずれかに記載の標的システム。
【請求項11】
前記演算処理手段は、前記検出時間差から算出された座標から構成される前記配列データを参照し、前記着弾位置を取り囲む前記配列データの座標とのずれを用いて、前記着弾位置の座標を補正することにより前記着弾位置を特定する
請求項5乃至9のいずれかに記載の標的システム。
【請求項12】
前記配列データには、前記検出時間差を求めた際の前記衝撃波の振幅が前記目標点ごとに対応付けられており、
前記演算処理手段は、前記配列データを参照して、前記着弾位置を取り囲む前記目標点に対応付けられている前記衝撃波の振幅から、前記標的板に弾丸が着弾したときに計測される衝撃波の振幅を補正して、前記標的板に着弾した弾丸の速度またはエネルギーを算出する
請求項7に記載の標的システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的システムに関し、特に、弾丸の速度またはエネルギーの測定機能を備えることができるようにした標的システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、プラスチック製の弾丸(以下、BB弾(Ball Bullet)と称する)を低圧の圧縮空気などで発射する機構を備えたトイガンであるソフトエアガンを使用して、BB弾を標的に当てる射的競技が行われている。このような射的競技では、紙製の標的や、同心円状にスイッチを並べた電気式の標的装置などが使用される。
【0003】
一方、実銃の射撃訓練で使用される射撃訓練装置においては、例えば、特許文献1に示すように、複数の衝撃センサが衝撃を検出した時刻の時間差に基づいて着弾位置を検出する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−134074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ソフトエアガンでは、例えば、直径が6mmであるBB弾を使用する場合には、0.989J以下のエネルギーとなるように法律により制限されている。そのため、一般的に、ソフトエアガンの射的競技では、規定以上の弾速およびエネルギーのソフトエアガンが使用されることがないように、射的競技の開始前に、競技者の持つソフトエアガンの弾速およびエネルギーが検査される。また、通常、ソフトエアガンの命中率の変化は弾速の変化を伴うため、日常的にソフトエアガンの状態を確認するという観点からしても、ソフトエアガンの弾速およびエネルギーを確認することは重要である。
【0006】
しかしながら、射的ごとにほとんど変化しない弾速およびエネルギーを常に弾速計で確認することは現実的ではない。また、射的競技の開始前に競技者全員のエアガンを検査することがなければスムーズに射的競技を行うことができて好適である。このことより、射的中において、弾速やエネルギーを自動的に測定することができる射的システムが求められていた。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、弾丸の速度またはエネルギーの測定機能を備えることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面の標的システムは、射的の標的となる標的板またはその近傍の複数個所に配置され、前記標的板に弾丸が着弾することにより発生する衝撃波を検出する衝撃波検出手段と、複数の前記衝撃波検出手段が衝撃波を検出した衝撃波検出時刻に従って、最初の衝撃波検出時刻と他の衝撃波検出時刻との差分値である検出時間差を求めて、それらの検出時間差に基づいて、前記標的板に弾丸が着弾した着弾位置を特定する演算処理手段とを備え、前記演算処理手段は、前記標的板に対して格子状に設定された所定数の目標点ごとに、予め射的を行うことによって求められた前記衝撃波検出手段が検出した衝撃波の振幅から構成される配列データを参照して、前記着弾位置を取り囲む前記目標点に対応付けられている前記衝撃波の振幅から、前記標的板に弾丸が着弾したときに計測される衝撃波の振幅を補正して、前記標的板に着弾した弾丸の速度およびエネルギーのうちの少なくとも一方を算出する
【0009】
本発明の第1の側面においては、射的の標的となる標的板またはその近傍の複数個所に配置される衝撃波検出手段により、標的板に弾丸が着弾することにより発生する衝撃波が検出され、複数の衝撃波検出手段が衝撃波を検出した衝撃波検出時刻に従って、最初の衝撃波検出時刻と他の衝撃波検出時刻との差分値である検出時間差が求められて、それらの検出時間差に基づいて、標的板に弾丸が着弾した着弾位置が演算処理手段により特定される。そして、標的板に対して格子状に設定された所定数の目標点ごとに、予め射的を行うことによって求められた衝撃波検出手段が検出した衝撃波の振幅から構成される配列データを参照して、着弾位置を取り囲む前記目標点に対応付けられている衝撃波の振幅から、標的板に弾丸が着弾したときに計測される衝撃波の振幅が補正されて、標的板に着弾した弾丸の速度およびエネルギーのうちの少なくとも一方が算出される。
【0010】
本発明の第2の側面の標的システムは、射的の標的となる標的板またはその近傍の複数個所に配置され、前記標的板に弾丸が着弾することにより発生する衝撃波を検出する衝撃波検出手段と、複数の前記衝撃波検出手段が衝撃波を検出した衝撃波検出時刻に従って、最初の衝撃波検出時刻と他の衝撃波検出時刻との差分値である検出時間差を求めて、それらの検出時間差に基づいて、前記標的板に対して格子状に設定された所定数の目標点ごとに予め求められた前記検出時間差から構成される配列データ、または、その検出時間差から算出された座標から構成される配列データを参照し、前記標的板に弾丸が着弾した着弾位置を特定する演算処理手段とを備える。
【0011】
本発明の第2の側面においては、射的の標的となる標的板またはその近傍の複数個所に配置される衝撃波検出手段により、標的板に弾丸が着弾することにより発生する衝撃波が検出され、それらの衝撃波を検出した衝撃波検出時刻に従って、最初の衝撃波検出時刻と他の衝撃波検出時刻との差分値である検出時間差が求められて、それらの検出時間差に基づいて、標的板に対して格子状に設定された所定数の目標点ごとに予め求められた検出時間差から構成される配列データ、または、その検出時間差から算出された座標から構成される配列データを参照し、標的板に弾丸が着弾した着弾位置が特定される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1および第2の側面によれば、弾丸の速度またはエネルギーの測定機能を備える標的システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用した標的システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
図2】信号処理部の構成例を示すブロック図である。
図3】衝撃センサから出力される波形を示す図である。
図4】検出時間差と、着弾位置から衝撃センサまでの距離との関係について説明する図である。
図5】実測着弾データテーブルを作成するときに、標的装置の標的板に対して設定される目標点の例を示す図である。
図6】着弾データ作成画面の表示例を示す図である。
図7】着弾データ作成画面の表示例を示す図である。
図8】衝撃センサから出力される波形を示す図である。
図9】実測弾速データテーブルを示す図である。
図10】測定結果画面の表示例を示す図である。
図11】測定結果画面の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用した標的システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【0016】
図1において、標的システム11は、標的装置12、パーソナルコンピュータ13、およびモニタ14を備えて構成されている。標的システム11では、標的装置12およびパーソナルコンピュータ13は、USB(Universal Serial Bus)ケーブルやLAN(Local Area Network)ケーブルなどの通信ケーブル15を介して接続される。または、標的装置12およびパーソナルコンピュータ13は、無線通信により接続するように構成してもよい。また、パーソナルコンピュータ13およびモニタ14は、モニタケーブル16を介して接続される。
【0017】
標的装置12は、ユーザが射的を行う際の目標となり、標的に命中したBB弾を回収する機構を備えている。また、標的装置12は、的紙21、標的板22、衝撃センサ23−1乃至23−4、および信号処理部24を備えて構成される。
【0018】
的紙21には、例えば、直径の異なる複数の輪が同心円となるように配置された標的が描かれており、的紙21は、標的装置12に対して交換可能となるように取り付けられる。なお、的紙21に替えて、標的を表示可能なサブモニタやタブレット型のコンピュータなどを標的装置12の背面に装着してもよい。さらに、的紙21に替えて、標的を表示可能な表示装置を標的装置12に内蔵することができ、これにより、パーソナルコンピュータ13に接続することなく標的装置12単独で使用することが可能となる。
【0019】
標的板22は、的紙21の前面側、即ち、的紙21に対して射的を行うユーザ側に配置される透明な板であり、その上側が前方に傾斜するように標的装置12に固定される。標的板22としては、例えば、ポリカーボネートなどの透明な素材が使用される。ユーザは、透明な標的板22を介して的紙21の標的を視認する。
【0020】
衝撃センサ23−1乃至23−4は、標的板22の四隅の近傍にそれぞれ装着され、ユーザが射的を行うことにより標的板22にBB弾が着弾して反射することで発生する衝撃波(加速度の変化)を検出し、その衝撃波を表す信号である衝撃波信号を信号処理部24に出力する。なお、本願において、衝撃波とは、標的板22にBB弾が着弾して跳ね返ることによって、瞬間的な力が標的板22に加わることにより発生し、物体および空気を伝わる振動のことを指すものとする。
【0021】
信号処理部24は、衝撃センサ23−1乃至23−4から出力される衝撃波信号それぞれに対する信号処理を行い、その結果得られる各種の信号を、通信ケーブル15を介してパーソナルコンピュータ13に供給する。例えば、信号処理部24は、衝撃波信号を増幅して全波整流し、その振幅のピーク値を保持したピークホールド信号を出力する。また、信号処理部24は、ピークホールド信号を積分して得られる信号が基準値以上となったときに、フリーランニングカウンタのインプットキャプチャ機能により衝撃センサ23が着弾を検出した時刻を特定して、衝撃波検出時刻を示す信号を出力する。
【0022】
パーソナルコンピュータ13は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などを備えて構成されており、CPUがROMまたはHDDに記憶されているプログラムをRAMにロードして実行する。例えば、パーソナルコンピュータ13が、射的用のアプリケーションプログラム(ソフトウェア)を実行すると、モニタ14には、標的装置12の的紙21に対応する標的が描画された標的画像25が表示される。そして、ユーザが射的を行って標的板22にBB弾が着弾すると、パーソナルコンピュータ13は、信号処理部24から供給される信号に基づいて着弾位置を算出し、標的画像25における着弾位置に対応する箇所に、着弾マークPを表示させる。
【0023】
モニタ14は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などの表示部を備えて構成されており、パーソナルコンピュータ13からモニタケーブル16を介して供給される表示データに従った画面を表示する。
【0024】
図2は、図1の信号処理部24の構成例を示すブロック図である。
【0025】
図2に示すように、信号処理部24は、信号処理回路31−1乃至31−4、演算処理回路32、および基準電圧供給回路33を備えて構成される。
【0026】
ユーザが射的を行って標的板22にBB弾が着弾すると、衝撃センサ23−1乃至23−4により検出された衝撃波信号が信号処理回路31−1乃至31−4にそれぞれ入力される。以下では、信号処理回路31−1の構成について説明する。信号処理回路31−1乃至31−4は同様に構成されており、信号処理回路31−2乃至31−4の説明は省略する。
【0027】
信号処理回路31−1は、増幅器41−1、フィルタ42−1、増幅器43−1、全波整流回路44−1、ピークホールド回路45−1、積分回路46−1、および比較器47−1を備えて構成される。
【0028】
増幅器41−1は、衝撃センサ23−1から供給される衝撃波信号を増幅し、フィルタ42−1に供給する。フィルタ42−1は、例えば、HPF(High-Pass Filter)およびLPF(Low-Pass Filter)が組み合わされたバンドパスフィルタであり、増幅器41−1により増幅された衝撃波信号から所定の帯域の周波数成分の信号を通過させる。図3からも分るように、衝撃センサ23−1の出力には複数の振動が含まれており、伝搬速度も周波数も減衰率も異なるので、フィルタ42−1により周波数範囲を限定することは、時間差及び振幅の検出精度を向上させるのに有効である。増幅器43−1は、フィルタ42−1を通過した衝撃波信号を増幅して全波整流回路44−1に供給する。また、増幅器43−1の増幅率は、演算処理回路32からの制御に応じて設定される。
【0029】
全波整流回路44−1は、増幅器43−1から供給される衝撃波信号を全波整流してピークホールド回路45−1に供給する。ピークホールド回路45−1は、全波整流回路44−1から供給される衝撃波信号のピーク値を保持し、そのピーク値を示すピークホールド信号を積分回路46−1および演算処理回路32に供給する。また、ピークホールド回路45−1は、演算処理回路32からの制御に従って、保持しているピーク値をリセットする。
【0030】
積分回路46−1は、ピークホールド回路45−1から供給されるピークホールド信号の電圧値を積分することにより、ピークホールド信号を滑らかに増加する電圧信号に変換して、比較器47−1に供給する。
【0031】
比較器47−1は、積分回路46−1から供給される信号の電圧値と、基準電圧供給回路33から供給される基準電圧の電圧値とを比較し、その比較結果を示す比較結果信号を演算処理回路32に供給する。例えば、比較器47−1は、積分回路46−1から供給される信号の電圧値が基準電圧の電圧値未満である場合には、比較結果として「0」を出力し、積分回路46−1から供給される信号の電圧値が基準電圧の電圧値以上である場合には、比較結果として「1」を出力する。
【0032】
このように信号処理回路31−1は構成されており、衝撃センサ23−1から供給される衝撃波信号を信号処理し、ピークホールド信号および比較結果信号を演算処理回路32に供給する。また、信号処理回路31−1と同様に、信号処理回路31−2乃至31−4が、衝撃センサ23−2乃至23−4からの衝撃波信号をそれぞれ信号処理し、ピークホールド信号および比較結果信号をそれぞれ演算処理回路32に供給する。
【0033】
演算処理回路32は、例えば、マイクロコンピュータにより構成される。演算処理回路32は、フリーランニングカウンタ48およびADC(Analog to Digital Converter)49を備え、信号処理回路31−1乃至31−4から供給されるピークホールド信号および比較結果信号に基づいた演算処理を行う。
【0034】
演算処理回路32は、フリーランニングカウンタ48のインプットキャプチャ機能によって、比較器47−1乃至47−4の比較結果信号が「0」から「1」に変化したときのカウント値を、衝撃波検出時刻T1乃至T4としてキャプチャして、パーソナルコンピュータ13に出力する。この衝撃波検出時刻T1乃至T4は、信号処理回路31−1乃至31−4による信号処理に基づいて、衝撃センサ23−1乃至23−4により着弾が検出された検出時刻をそれぞれ表す。
【0035】
また、演算処理回路32は、ピークホールド回路45−1乃至45−4から出力されるピークホールド信号をADC49によってAD変換したピークホールド値を、パーソナルコンピュータ13に出力する。また、後述するように温度による補正を行う場合、演算処理回路32には温度センサ50が接続され、演算処理回路32は、温度センサ50から出力されるデータをパーソナルコンピュータ13に出力する。
【0036】
例えば、図3に示すように、衝撃センサ23−1乃至23−4は、標的板22にBB弾が着弾することによって発生する衝撃波を検出して衝撃波信号を出力する。信号処理部24では、衝撃センサ23−1乃至23−4から出力される衝撃波信号に基づいて、衝撃センサ23−1乃至23−4が着弾を検出した衝撃波検出時刻T1乃至T4が特定される。
【0037】
そして、パーソナルコンピュータ13が実行する射的用のアプリケーションプログラムは、信号処理部24により特定された衝撃波検出時刻T1乃至T4に基づいて、最初に着弾を検出した時刻に対する差分(検出時間差)を求める。即ち、射的用のアプリケーションプログラムは、図3に示すように、1番目の着弾が検出された衝撃波検出時刻T1と、2番目の着弾が検出された衝撃波検出時刻T2との検出時間差Δt2を求め、同様に、検出時間差Δt3およびΔt4を求める。なお、最初に衝撃波を検出した衝撃センサ23についての検出時間差は、常に0であり、例えば、図3の例では、検出時間差Δt1=0である。
【0038】
また、図4に示すように、着弾点Pと、着弾点Pに最近傍の衝撃センサ23(図4の例では、衝撃センサ23−1)との間隔を距離mとすると、検出時間差Δt1乃至Δt4は、距離mに対する伝搬経路長の差に比例する。即ち、着弾点Pと衝撃センサ23−2との間隔はm+k×Δt2により求められ、着弾点Pと衝撃センサ23−3との間隔はm+k×Δt3により求められ、着弾点Pと衝撃センサ23−4との間隔はm+k×Δt4により求められる。ここで、kは、標的板22内の音速(ただし、衝撃センサ23に替えて音響センサを用いる場合は空気中の音速)である。なお、検出時間差Δtは、信号処理部24が有するフリーランニングカウンタ48により計測されるカウント値から求めた差分値であり、1カウントの設定が0.67μsである場合、検出時間差Δt×0.67×10-6を演算することにより、カウント値を秒に換算することができる。
【0039】
従って、射的用のアプリケーションプログラムは、検出時間差Δt1乃至Δt4に基づいて、着弾点Pと衝撃センサ23−1乃至23−4との間の距離を求めることができ、それらの距離から着弾位置を特定することができる。
【0040】
以下、標的システム11における着弾位置の算出方法について説明する。
【0041】
まず、標的システム11では、着弾位置を特定する際に使用される配列データを取得するための目標点TPが設定される。例えば、図5に示すように、標的装置12の左上端を座標原点として、標的面上に等間隔(図5の例では、x軸方向の間隔dxおよびy軸方向の間隔dyが共に10mm)で目標点TP[0,0]から目標点TP[13,14]までが設定される。
【0042】
そして、例えば、リモートコントロールにより発射可能としたエアガンを固定位置決め具により固定し、パーソナルコンピュータ13によりデータ作成用プログラムを実行させた後、左上の目標点TP[0,0]から右下の目標点TP[13,14]まで、エアガンの照準を各目標点TPに正確に合わせて射撃を行う。
【0043】
ここで、図6には、パーソナルコンピュータ13によりデータ作成用プログラムが実行されているときにモニタ14に表示されるデータ作成画面61が示されている。データ作成画面61には、標的画像25、設定表示部62、およびデータ表示部63が表示されている。例えば、データ作成用プログラムは、目標点TPに対する指定弾数の着弾を検出するごとに、設定表示部62で選択(チェックマークが表示)された項目の平均値を求めて、それらをカンマで区切って中括弧に纏め、データ表示部63に追加して表示する。
【0044】
例えば、図6に示すように、検出時間差Δt1乃至Δt4が選択されている場合、データ作成用プログラムは、目標点TPに対する指定弾数の着弾を検出するごとに、検出時間差Δt1乃至Δt4のデータを{Δt1,Δt2,Δt3,Δt4}の形式で、データ表示部63に追加して表示する。
【0045】
また、データ作成用プログラムは、設定表示部62において着弾点のx座標Mxおよびy座標Myが選択されている場合には、目標点TPに対する指定弾数の着弾を検出するごとに、検出時間差Δt1乃至Δt4のうちの選択されたデータから算出されるx座標Mxおよびy座標Myを{Mx,My}の形式でデータ表示部63に追加して表示する。
【0046】
例えば、図7のデータ作成画面61に示すように、設定表示部62において、着弾点のx座標Mxおよびy座標My、並びに、衝撃センサ23−1乃至23−4が検出した衝撃波信号のピークホールド値の平均値Aが選択されている場合には、データ作成用プログラムは、着弾ごとに、x座標Mx、y座標My、およびピークホールド値の平均値Aを{Mx,My,A}の形式でデータ表示部63に追加して表示する。なお、ピークホールド値の平均値Aを選択する他、ピークホールド回路45−1乃至45−4それぞれから得られるピークホールド値A1乃至A4のいずれかを選択してもよいし、ピークホールド値A1乃至A4の全てを選択しておいて、データの利用時に着弾位置に応じて使用するものを使い分けてもよい。
【0047】
そして、データ作成用プログラムは、15データごとに上位の配列に纏め、図5に示した左上の目標点TP[0,0]から右下の目標点TP[13,14]までの射撃が終了した時点において、14行および15列の目標点TP[i,j]について各3要素{x座標Mx[i,j]、y座標My[i,j]、およびピークホールド値の平均値A[i,j]}からなる配列データを作成する。
【0048】
例えば、設定表示部62において、検出時間差Δt1乃至Δt4、並びに、着弾点のx座標Mxおよびy座標Myが選択されている場合には、データ作成用プログラムは、次の式(1)および式(2)を演算することにより、目標点TP[i,j]ごとにx座標Mx[i,j]およびy座標My[i,j]を算出する。
【0049】
【数1】
・・・(1)
【数2】
・・・(2)
【0050】
なお、x座標Mx[i,j]およびy座標My[i,j]は、少なくとも3つの衝撃センサ23の出力を用いて算出することができる。例えば、設定表示部62において、検出時間差Δt1乃至Δt3が選択されるとともに、着弾点のx座標Mxおよびy座標Myが選択されている場合には、データ作成用プログラムは、次の式(3)および式(4)を演算することにより、目標点TP[i,j]ごとにx座標Mx[i,j]およびy座標My[i,j]を算出する。
【0051】
【数3】
・・・(3)
【数4】
・・・(4)
【0052】
標的システム11では、このようにして予め作成した配列データに基づいて、パーソナルコンピュータ13が実行する射的用のアプリケーションプログラムにより着弾点を決定することができる。
【0053】
さらに、標的装置12の標的板22上の着弾点P(x,y)への着弾によって、検出時間差Δt1、検出時間差Δt2、検出時間差Δt3、および検出時間差Δt4が検出されたとき、射的用のアプリケーションプログラムは、次の式(5)および式(6)を演算することにより、着弾点Pのx座標Mxおよびy座標Myを算出する。
【0054】
【数5】
・・・(5)
【数6】
・・・(6)
【0055】
そして、射的用のアプリケーションプログラムは、算出したx座標Mxおよびy座標Myが属する範囲「Mx[i,j]≦Mx<Mx[i,j+1]かつMy[i,j]≦My<My[i,j+1]」を、上述の配列データから特定する。次に、射的用のアプリケーションプログラムは、x座標Mxおよびy座標Myと、配列データ上のx座標Mxおよびy座標Myを取り囲む隣接データとの差から、x軸方向のずれΔxおよびy軸方向のずれΔyを計算する。
【0056】
まず、y軸方向のずれΔyを式(7)と仮定して式(8)を演算することによってx軸方向のずれΔxが求められ、求められたx軸方向のずれΔxを用いて式(9)を演算することによりy軸方向のずれΔyが求められる。なお、式(7)乃至(9)において、d=dx(図5参照)であり、d=dy/cosθであり、θは、標的板22の垂直からの傾き角度である。
【0057】
【数7】
・・・(7)
【数8】
・・・(8)
【数9】
・・・(9)
【0058】
さらに、求められたy軸方向のずれΔyを用いて式(8)を演算することによってx軸方向のずれΔxが再計算され、そのx軸方向のずれΔxを用いて式(9)を演算することによってy軸方向のずれΔyが再計算される。このように、式(8)および式(9)を求める計算を少なくとも2回繰り返して求められたx軸方向のずれΔxおよびy軸方向のずれΔyを用いて、着弾点P(x,y)の座標が、次の式(10)および式(11)を演算することにより求められる。
【0059】
【数10】
・・・(10)
【数11】
・・・(11)
【0060】
このように、標的システム11では、着弾点のx座標Mxおよびy座標Myを算出した後に、配列データを参照して、その着弾点を取り囲む座標とのずれを用いた演算を行うことで、より正確な着弾位置となるように、着弾点の座標を補正することができる。なお、標的装置12では、標的板22の垂直からの傾き角度θは、例えば22°に設定される。また、標的板22が垂直な場合には角度θは0°である。
【0061】
なお、上述の説明では、目標点TP[i,j]ごとのx座標Mx[i,j]およびy座標My[i,j]が登録された配列データを参照して着弾点P(x,y)を求めているが、目標点TP[i,j]ごとの検出時間差Δt1[i,j]乃至Δt4[i,j]が登録された配列データを参照して着弾点P(x,y)を求めるようにしてもよい。
【0062】
即ち、図6を参照して説明したように、検出時間差Δt1乃至Δt4が選択されている場合、データ作成用プログラムは、目標点TPに対する指定弾数の着弾を検出するごとに、検出時間差Δt1乃至Δt4のデータを{Δt1,Δt2,Δt3,Δt4}の形式で、データ表示部63に追加して表示する。そして、データ作成用プログラムは、15データごとに上位の配列に纏め、図5に示した左上の目標点TP[0,0]から右下の目標点TP[13,14]までの射撃が終了した時点において、14行および15列の目標点TP[i,j]について各4要素{検出時間差Δt1[i,j]、検出時間差Δt2[i,j]、検出時間差Δt3[i,j]、および検出時間差Δt4[i,j]}からなる配列データを作成する。
【0063】
そして、標的装置12の標的板22上の着弾点P(x,y)への着弾によって、検出時間差Δt1、検出時間差Δt2、検出時間差Δt3、および検出時間差Δt4が検出されたとき、射的用のアプリケーションプログラムは、上述の式(5)および式(6)を演算することにより、着弾点Pのx座標Mxおよびy座標Myを算出する。
【0064】
次に、射的用のアプリケーションプログラムは、目標点TP[i,j]ごとの検出時間差のデータ{検出時間差Δt1[i,j]、検出時間差Δt2[i,j]、検出時間差Δt3[i,j]、および検出時間差Δt4[i,j]}が登録された配列データから、上述の式(1)および式(2)を演算することにより、目標点TP[i,j]ごとのx座標Mx[i,j]およびy座標My[i,j]を算出する。そして、着弾点Pのx座標Mxおよびy座標Myと、x座標Mx[i,j]およびy座標My[i,j]との照合を繰り返して、x座標Mxおよびy座標Myに対して「Mx[i,j]≦Mx<Mx[i,j+1]かつMy[i,j]≦My<My[i+1,j]」を満たすi,jを見出し、配列データ上の着弾点Pを取り囲む隣接データを特定する。
【0065】
さらに、射的用のアプリケーションプログラムは、着弾点Pのx座標Mxおよびy座標Myと、配列データ上の着弾点Pを取り囲む隣接データから計算したx座標Mx[i,j],Mx[i+1,j],Mx[i,j+1] ,Mx[i+1,j+1]およびy座標My[i,j],My[i+1,j],My[i,j+1] ,My[i+1,j+1]との差から、x軸方向のずれΔxおよびy軸方向のずれΔyを計算する。即ち、上述したように、式(7)からΔyを求め、式(8)および式(9)の演算を繰り返すことによりx軸方向のずれΔxおよびy軸方向のずれΔyを算出する。その後、射的用のアプリケーションプログラムは、式(10)および式(11)を演算することによって着弾点P(x,y)を求める。
【0066】
このように、標的システム11では、目標点TP[i,j]ごとの検出時間差Δt1[i,j]乃至Δt4[i,j]が登録された配列データを参照して、着弾を検出するたびに、目標点TP[i,j]ごとのx座標Mx[i,j]およびy座標My[i,j]を算出して着弾点P(x,y)を求めることができる。
【0067】
なお、標的板22のサイズによっては、四隅の衝撃センサ23−1乃至23−4だけでは精度が不足することも考えられる。その場合には、n個の衝撃センサ23を使用し、標的板22に設定した目標点毎の各衝撃センサ23の時間差データ{Δt1[i,j],Δt2[i,j],・・・,Δtn[i,j]}からなる配列データを作成して、この配列データを参照する。例えば、着弾時には、衝撃センサ23−1乃至23−4による配列データにより着弾位置を特定するのに加えて、着弾点近傍の着弾点を囲む3個または4個の衝撃センサ23により検出された衝撃波信号を用い、配列データを参照して再計算することで、着弾位置の測定精度を向上させることができる。
【0068】
または、着弾点近傍の着弾点を囲む3個または4個の衝撃センサ23は検出時間差が0である衝撃センサ23と、その衝撃センサ23に隣接する所定個数の衝撃センサ23との時間差から特定することができる。従って、最初から着弾点近傍の着弾点を囲む3個または4個の衝撃センサ23により検出された衝撃波信号を用い、配列データを参照して着弾位置の特定を行うこともできる。例えば、着弾点近傍の着弾点を囲む左上の衝撃センサ23との検出時間差をΔt1とし、右上の衝撃センサ23との検出時間差をΔt2とし、左下の衝撃センサ23との検出時間差をΔt3とし、右下の衝撃センサ23との検出時間差をΔt4として、上記の演算を行えばよい。
【0069】
ところで、上述したように、配列データは、図5の目標点TPに対して予め射的を行うことによって、それぞれの目標点TPに対して射的が行われたときの検出時間差Δt1乃至Δt4、または、その検出時間差Δt1乃至Δt4から算出された座標(x座標Mxおよびy座標My)から構成される。この他、例えば、配列データは、目標点TPと衝撃センサ23−1乃至23−4との距離に従って演算により求められる検出時間差Δt1乃至Δt4、または、その検出時間差Δt1乃至Δt4から算出される座標から構成することができる。ここで、演算による配列データの作成について説明する。
【0070】
例えば、図5に示したように目標点TPを設定すると、目標点TPと衝撃センサ23−1乃至23−4との水平距離および垂直距離が決まることより、目標点TPと衝撃センサ23−1乃至23−4それぞれとの距離L1乃至L4を、三平方の定理に基づいて算出することができる。即ち、目標点TP[i,j]と、衝撃センサ23−1乃至23−4との距離L1乃至L4は、次の式(12)乃至(15)を演算することにより求めることができる。
【0071】
【数12】
・・・(12)
【数13】
・・・(13)
【数14】
・・・(14)
【数15】
・・・(15)
【0072】
ただし、式(12)乃至(15)において、Xsは、衝撃センサ23どうしのX軸方向の間隔(例えば、衝撃センサ23−1と23−2との間隔)であり、Ysは、衝撃センサ23どうしのY軸方向の間隔(例えば、衝撃センサ23−1と23−3との間隔)である。さらに、式(12)乃至(15)において、X0は、x0sを標的装置12の左端から衝撃センサ23−1までの距離とするとX0=x0−x0sとされ、Y0は、y0sを標的装置12の上端から衝撃センサ23−1までの距離とするとY0=y0−y0sとされ、kは、標的板22の垂直からの傾きをθとするとk=1/cosθとされる。
【0073】
そして、距離L1乃至L4のうちの、最小の距離Lをmに代入して、距離差ΔL1乃至ΔL4を計算により求める。即ち、距離差ΔL1乃至ΔL4は、ΔL1=L1−m,ΔL2=L2−m,ΔL3=L3−m,ΔL4=L4−mより求めることができる。そして、フリーランニングカウンタ48の単位距離当たりのカウント数Cを掛けることにより、Δt1=ΔL1×C,Δt2=ΔL2×C,Δt3=ΔL3×C,Δt4=ΔL4×Cより求めることができる。つまり、目標点TP[i,j]における着弾時の検出時間差Δt1乃至Δt4を演算により求めることができる。ここで、カウント数Cは、標的板22中の音速をcとし、信号処理部24が有するフリーランニングカウンタ48の1カウント当たりの設定時間をtとすると、C=1/(c・t)である。なお、衝撃検知手段として音響センサを使用する場合には、音速cは空気中の音速である。
【0074】
そして、このように検出時間差Δt1乃至Δt4を求める演算を、図5に示した目標点TP[0,0]から目標点TP[13,14]まで繰り返して行うことにより、目標点TPごとの検出時間差Δt1乃至Δt4を求めることができる。そして、設定表示部62の設定内容に従って、例えば、図6に示すように、検出時間差Δt1乃至Δt4が選択されている場合、求めた目標点TPごとの検出時間差Δt1乃至Δt4を配列に纏め、これを左端から右端までの15個の目標点TPに対して行って上位の配列に纏め、さらにこれを、上端から下端までの目標点TPに対して繰り返して更に上位の配列に纏めることで、目標点TP[0,0]から目標点TP[13,14]までの、4個の衝撃センサ23についての各目標点TP[i,j]への着弾時に計測されるはずの検出時間差データ{Δt1[i,j],Δt2[i,j],Δt3[i,j],Δt4[i,j]}からなる14行および15列の目標点TPについて各4要素の配列データが作成される。また、例えば、図7のように設定表示部62において着弾点のx座標Mxおよびy座標Myが選択されている場合には、上述の式(1)および式(2)を演算して得られる目標点TPごとの座標{x座標Mxおよびy座標My}により配列データが作成される。
【0075】
このような配列データの作成は、例えば、図6のデータ作成画面61の設定表示部62に表示されるデータテーブル計算ボタンに対する操作を行うことにより実行される。具体的には、データテーブル計算ボタンに対する操作を行うと、図5に示すような座標原点(0,0)から目標点TP[0,0]までの間隔x0およびy0、x軸方向の間隔dxおよびy軸方向の間隔dy、行数(図5の場合なら14行)、並びに列数(図5の場合なら15列)を入力するためのウインドウが表示される、そして、そのウインドウに各設定値を入力すると、図6を参照して説明したように、選択された(チェックが入れられた)項目の配列データがデータ表示部63に表示される。なお、ピークホールド値A1乃至A4およびピークホールド値の平均値Aなどの計算できない項目が選択されている場合には、それらの値としてダミーデータが出力される。
【0076】
このように、標的システム11では、演算により配列データを作成することができ、その配列データを、着弾位置を算出する際に参照することができる。さらに、作成した配列データを使用して求めた着弾位置に誤差が生じる部分がある場合には、その部分のデータを調整したり、射撃を行ってデータを取得し直したりすることで、より正確な着弾位置を求めることができる配列データを得ることができる。例えば、射撃を行ってデータを取得し直す場合には、データ表示部63において変更したい部分にカーソルを合わせて射撃を行うことで、データを置き換えることができる。即ち、配列データは、演算により求められた配列データの座標の一部を、実際に射撃を行うことにより求められた座標に置き換えて構成することができる。
【0077】
また、上述したように、配列データとして目標点TP[i,j]ごとの検出時間差Δt1[i,j]乃至Δt4[i,j]が登録されている場合でも同様に、演算により求められる検出時間差Δt1乃至Δt4から配列データを構成することができる。さらに、演算により求められた配列データの検出時間差の一部を、実際に射撃を行うことにより求められた検出時間差に置き換えて構成することができる。
【0078】
ところで、例えば、図5のように目標点TP[i,j]を設定した場合には、標的板22の全範囲がカバーされていない。そこで、図5に示されている14行および15列の目標点TP[i,j]の上下に1行ずつ且つ左右に1列ずつ追加した、16行且つ17列の、座標(x0-dx,y0-dy)から始まる配列データD1をデータテーブル計算ボタンに対する操作を行うことにより出力するようにし、配列データD1の最上行を図5の目標点への射撃により得られた配列データD0の1行目の上に追加して配列データD0の1行目とし、配列データD1の最下行を配列データD0の最下行の下に追加して配列データD0の16行目とし、配列データD1の1列目を配列データD0の1列目の左に追加してD0の1列目とし、配列データD1の最終列を配列データD0の最終列の右に追加して配列データD0の17列目とすれば、配列データD0を標的板22の全範囲(縁部を除く)をカバーする配列データとすることができる。
【0079】
そして、ピークホールド値A1乃至A4およびピークホールド値の平均値Aなどの計算できない項目については、追加した各配列データに隣接する配列データの値に設定し直すことにより、弾速計機能(後述)についてもある程度の精度を確保することができる。なお、標的板22の端部までの実射データ取得用に縁部のない筐体を特別に製作するなどして、16行且つ17列の配列データを実際に実射を行って取得しても良い。
【0080】
さらに、例えば、標的装置12を、横長なワイド画面に適用する場合には、画面の4隅に加えて、画面中央の上下に衝撃センサ23を2つ追加して6個の衝撃センサ23を使用し、それらの衝撃センサ23のうちの着弾位置に近い3個または4個の衝撃センサ23により検出された衝撃波信号を用いて着弾位置を算出することで、着弾位置の測定精度を向上させることができる。その場合、目標点TP[i,j]と、画面中央の上側の衝撃センサ23との距離Lαは、次の式(16)を演算することにより求めることができ、目標点TP[i,j]と、画面中央の下側の衝撃センサ23との距離Lβは、次の式(17)を演算することにより求めることができる。
【0081】
【数16】
・・・(16)
【数17】
・・・(17)
【0082】
従って、例えば、画面の4隅に加えて、画面中央の上下に衝撃センサ23を2つ追加して6個の衝撃センサ23を使用した、ワイド画面の大型のテレビジョン受像機に応じたサイズの標的装置12を製作し、横長なワイド画面に合わせて、横にn個の目標点を設定し、それを縦にm個並べた目標点TPに対して、上述した処理と同様にして、目標点TPごとに検出時間差Δt1,Δtα,Δt2,Δt3,Δtβ,Δt4を求めて配列に纏め、これを左端から右端までのn個の目標点TPに対して行って上位の配列に纏め、さらにこれを、上端から下端までの目標点TPに対してm回繰り返して更に上位の配列に纏めると、目標点TP[0,0]から目標点TP[m−1,n−1]までの、6個の衝撃センサ23についての各目標点TP[i,j]への着弾時に計測されるはずの検出時間差データ{Δt1[i,j],Δtα[i,j],Δt2[i,j],Δt3[i,j],Δtβ[i,j],Δt4[i,j]}からなるm行およびn列の目標点TPについて各6要素の配列データを計算で作成することができる。
【0083】
なお、この場合、式(12)乃至式(17)において、Xsは、左右端の衝撃センサ23どうしのX軸方向の間隔(例えば、左上端の衝撃センサ23−1と右上端の衝撃センサ23−2との間隔)である。
【0084】
なお、温度の変化による衝撃波の伝播時間の変化が着弾位置の検出精度に影響する場合には、予め配列データを基準温度(例えば25℃)での音速で計算または基準温度で実測し、着弾時には計測値を着弾時の温度における音速で補正してから、配列データと比較すればよい。
【0085】
具体的には、データテーブル(配列データ)製作時の温度での音速または計算に使った音速を基準音速cとし、着弾時に温度センサ50(図2)で計測した温度における音速を音速cとする。そして、r=/cを計算し、これを上記の検出時間差Δt1乃至Δt4に掛けて補正してから、上述の式(5)以降の処理を行うか、または着弾点Pのx座標Mxおよびy座標Myに掛けて補正してから、上述の式(5)および式(6)より後の処理を行うことにより、温度の影響を考慮した着弾位置を求めることができる。
【0086】
以下、標的システム11における弾速計機能について説明する。
【0087】
図8には、標的板22に2種類の衝撃センサ23を固定して、BB弾を標的板22に衝突させたときに、それぞれの衝撃センサ23から出力された衝撃波信号が示されている。図8Aおよび図8Bには、それぞれ標的板22の略同一の個所に0.2gのBB弾が衝突したときの衝撃波信号が示されており、図8Aは、速さ30m/秒でBB弾を衝突させたときの波形であり、図8Bは、速さ67m/秒でBB弾を衝突させたときの波形である。
【0088】
図8Aおよび図8Bの波形を比較すると、波形の振幅が異なるだけであって波形の形状は略同一であり、振幅は略弾速に比例していることが示されている。このことより、標的板22の完全に同一の箇所にBB弾を衝突させれば、衝撃波の振幅から弾速を推定することができると考えられる。
【0089】
しかしながら、エアガンを固定しなければ、標的板22の完全に同一の箇所にBB弾を衝突させることはできない。また、衝撃波の振幅が着弾点Pと衝撃センサ23との距離に反比例するのであれば、衝撃波の振幅を距離に応じて補正することで、標的板22のどこに着弾があっても弾速を正確に推定することができると想定されるが、実際に測定してみたところ、衝撃波の振幅は着弾点Pと衝撃センサ23との距離に反比例するという関係は見られなかった。例えば、標的板22が無限の広さであれば衝撃波の振幅が距離とともに減衰することを観測することができたと想定される。しかしながら、実際には、標的板22の大きさ(具体的には、幅168mm)では、衝撃センサ23が検出する衝撃波信号の波形は、着弾点とその周囲の構造により様々な変化が発生してしまうと考えられ、衝撃波の振幅を距離に応じて補正しても弾速を正確に推定することはできない。
【0090】
そこで、本願出願人は、着弾点ごとの振幅データ(例えば、ピークホールド値の平均値A)を記録した配列データを予め作成し、着弾時には、その位置にマッピングされた振幅データで着弾時の振幅データを補正することにより、弾速を正確に推定することができることを見出した。なお、着弾点が少しずれただけで急激に弾速が変化することより、着弾位置の変化による弾速の変化がスムーズになるように、以下に説明する補間計算を行うものとする。
【0091】
ここで、基準エアガンによる的中心への着弾時における計測値(振幅基準データ)をAとし、標的装置12の標的板22上の点Pへの着弾時に計測した振幅データをAとし、点Pを囲む配列データの振幅データが「A[i,j],A[i,j+1],A[i+1,j],A [i+1,j+1],」であったとする。このとき、まず、着弾点Pを取り囲む振幅データ「A[i,j],A[i,j+1],A[i+1,j],A [i+1,j+1],」から、着弾点Pとの距離が小さいほど、その振幅データの重みが大きくなるような補間データAを、次の式(18)により求める。
【0092】
【数18】
・・・(18)
【0093】
そして、着弾点Pにおける位置補正が行われた振幅データAprは、次の式(19)により算出することができる。
【0094】
【数19】
・・・(19)
【0095】
次に、実測データテーブルから、振幅データAprの振幅値が存在する範囲を求める。ここで、実測データテーブルは、図9に示すように、所定の弾速で標的板22の中心に射的を行って衝撃センサ23から出力された衝撃波信号の振幅データの平均値と、その射的を行ったときに弾速計により計測された弾速とを対応付けて登録することにより予め作成されている。
【0096】
例えば、振幅データAの振幅値が、実測データテーブルのn番目の振幅データの平均値Aと、n+1番目の振幅データの平均値An+1との間にある場合には、弾速Vは、次の式(20)を算出することにより求められる。
【0097】
【数20】
・・・(20)
【0098】
このように弾速Vを求めた後、図9の実測データテーブルの作成に使用した基準となるBB弾の重量をmとして、次の式(21)を演算することにより、着弾エネルギーEを求めることができる。さらに、パーソナルコンピュータ13に設定されている実際のBB弾の弾重量をmとして、次の式(22)を演算することにより、実際に使用されたBB弾での弾速Vを再計算することができる。なお、図9において、0番目および10番目のデータは、その前後のデータから推測された推測値が用いられており、0番目以下および10番目以上の振幅を検出した場合には無効とするように処理が行われる。
【0099】
【数21】
・・・(21)
【数22】
・・・(22)
【0100】
以上のように、標的システム11では、パーソナルコンピュータ13が実行する射的用のアプリケーションプログラムが、着弾時の弾速を求めることができる。つまり、標的システム11は、弾速を測定する機能を備えることができる。そして、このように求められた着弾エネルギーEおよび弾速Vが、パーソナルコンピュータ13が実行する射的用のアプリケーションプログラムによる計測結果として、モニタ14の測定結果画面に表示される。なお、着弾エネルギーEおよび弾速Vの両方を測定結果画面に表示する他、式(21)を演算して着弾エネルギーEだけを求めて測定結果画面に表示してもよい。また、弾速Vだけを測定結果画面に表示してもよい。
【0101】
次に、図10には、パーソナルコンピュータ13が実行する射的用のアプリケーションプログラムによる計測結果がモニタ14に表示される測定結果画面71が示されている。
【0102】
図10の測定結果画面71には、標的画像25と、1番目から18番目までのショットの着弾を測定した結果を示すスコアボード72とが示されている。標的画像25における着弾マークの数字は、ショットの順番を示しており、図10には、1番目のショットは標的の左上側、2番目のショットは標的の右上側、3番目のショットは標的の右下側、そして、4番目から18番目までのショットは標的の左下側の略同一の箇所に着弾させたときの標的画像25が示されている。また、スコアボード72には、各ショット(Shot)について、着弾を検出した時刻(Time)、算出された着弾エネルギー(Jule)、および、弾速(m/s)が対応付けられて表示される。なお、図10には、着弾位置および温度による補正が行われていない測定結果が示されており、弾速は、衝撃波信号の振幅に比例した値となっている。
【0103】
図10の測定結果画面71において、例えば、1番目から4番目までのショットの弾速がばらついていることより、衝撃波信号の振幅が着弾場所によって異なっていることが示されている。従って、正確な弾速を求めるためには、衝撃波の振幅を着弾点ごとに記録した配列データにより計測値(衝撃波の振幅)を補正することが必要となる。
【0104】
また、衝撃波の振幅は、温度により大きく変動し、例えば、19℃から23℃の範囲での変化率は1℃あたり2.5%程度で変動する。このため、標的システム11は、衝撃センサ23−1乃至23−4から出力される衝撃波信号の増幅度を、温度に応じて調整することで、測定値の変動を抑制するように構成される。なお、標的システム11は、エアガンの威力差による検出時間差の変化に対しては、閾値を調整することにより対応している。
【0105】
例えば、図11の測定結果画面71には、22番目のショットから45番目のショットまでの着弾を測定した測定結果が示されている。図11の例では、22番目から25番目までのショットは23℃の温度で行われ、26番目から29番目までのショットは22℃の温度で行われ、30番目から33番目までのショットは21℃の温度で行われ、34番目から37番目までのショットは20℃の温度で行われ、38番目から41番目までのショットは19℃の温度で行われ、42番目から45番目までのショットは19.5℃の温度で行われた。
【0106】
図11の測定結果画面71では、およそ1℃の変化で弾速が2.5%程度の変化をすることが示されている。従って、標的システム11は、温度を計測する温度センサ50(図2)を備え、温度センサ50の計測値に基づいて、温度の変化を埋め合わせるように増幅度を調整することによって温度変化に対応することができ、より正確な弾速を求めることができる。
【0107】
さらに、温度により衝撃波の振幅が変化する程度は着弾場所によって異なるものであるため、上述した配列データを温度ごとに作成し、温度の変化に応じて使用する配列データを切り替えることにより、より正確な弾速を求めることができる。また、上述の図5では、10mmごとに測定値を求める例について説明したが、例えば、5mm以下の間隔で測定値を求めて配列データを作成することにより弾速を求める精度を向上させることができる。
【0108】
なお、1ショットごとの弾速を求める精度を向上させるには膨大なデータを予め取得する必要があるが、例えば、一般に、射的競技では少なくとも5発かそれ以上の弾数で競われることより、5ショットの弾速を平均して略正確な弾速を求めることができれば実用上問題ないと考えられる。そこで、そのような膨大なデータを予め取得する手間をかけることなく、標的システム11では、所定数のショットの弾速を平均することで、射的競技において規定の威力内であるか否かを確認したり、エアガンの調子を確認するために十分に略正確な弾速を求めることができる。このように、標的システム11は、弾速を計測する機能を備え、標的装置12に対して射的するだけで自動的に弾速を測定することができる。そして、標的システム11は、常に弾速を計測して表示しているため、射的競技でも練習でも、競技者は、エアガンの状態を射的中に確認することができ、射撃競技や練習に集中することができる。
【0109】
また、標的システム11では、エネルギーおよび弾速の平均値を表示することができ、例えば、図10の測定結果画面71ではエネルギー「0.4J」および弾速「63.0m/秒」として、スコアボード72に表示されている1番目から18番目までのショットの平均値が表示されている。そして、標的システム11では、上述した方法により正確なデータを得ることができるため、これらの平均値はより安定的なものとなり、標的装置12に付属する弾速計としては十分な性能を有する。
【0110】
また、一般的な弾速計は、筒の中の2点間をBB弾が通過する時間を計測する構造であり、弾速計の筒に銃口を近接させて射撃を行わなければならないため、初速しか計測することができなかった。これに対し、標的システム11は、近くからでも遠くからでもBB弾が標的板22に当たることによって弾速を計測することができ、発射された位置から10m地点での弾速などを計測することができる。従って、標的システム11は、従来の弾速計よりも利便性を向上させることができる。
【0111】
なお、標的装置12は予め基準温度(例えば25℃)で基準の威力のソフトエアガンによる的中心への射撃を行い、ピークホールド回路45−1乃至45−4それぞれから得られるピークホールド値A1乃至A4が同じ規定の計測値(振幅データ)となるように信号処理回路31−1乃至31−4の増幅器43−1乃至43−4の増幅度を調整してあるものとする。そして、パーソナルコンピュータ13が実行する射的用のアプリケーションプログラムは、標的装置12の温度を監視し、増幅器43−1乃至43−4の増幅度を、各増幅器で予め調整された増幅度を中心に、基準温度からの変化に応じて調整する。
【0112】
また、標的板22の材質やサイズによっては、衝撃波を検出する検出手段として、衝撃センサ23に替えて、衝撃波により発生する音響を検知する音響センサを用いることができる。音響センサを用いる場合、音響センサは、標的板22に対して直接的に取り付けられるのではなく、標的板22から僅かに離れた位置に配置される。このように、標的装置12では、標的板22に対して直接的に衝撃センサ23が固定される他、標的板22の近傍に音響センサを固定した構成とすることができる。
【0113】
なお、特許文献1によると、実銃から発射された弾丸の着弾時には、弾速に応じた周波数の高周波が発生するとのことであるが、ソフトエアガンから発射されたBB弾の着弾時にはそのような高周波は確認されなかった。また、特許文献1によると、低周波は2次的に発生する振動であり、従来技術では1周期ずれた波を比較してしまうなどの誤検出が生じていたとのことである。これに対し、図2を用いて説明したように、ピークホールド信号を滑らかに増加する電圧信号に変換してから比較を行えば、そのような誤検出は回避することができる。更に、実射により作成した配列データを参照して着弾位置の特定を行う場合には、信号処理部24を構成する回路や標的板22の固定構造などに起因する検出の遅れなども、検出値の連続性および再現性さえあれば、その遅れなどによる問題を回避することができる。
【0114】
従って、ソフトエアガン用の標的装置では、例えば、小型の標的装置では分解能向上のために高周波を使用し、大型の標的装置では減衰率の小さい低周波を使用するなどの使い分けが妥当である。なお、この場合、積分回路46の時定数は、使用する周波数に応じて、電圧信号が滑らかに増加し、且つ検出の遅れが問題にならない範囲で適切な値となるように決定される。また、特許文献1が課題のひとつとする、外乱による誤動作の排除について、本願の標的システム(弾速計機能)においては、例えば、使用するソフトエアガンから発射されたBB弾の着弾で想定されるエネルギー範囲の衝撃以外は全て外乱として排除できるように設定することにより、外乱によって誤動作が発生することを回避することができる。
【0115】
なお、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0116】
11 射的システム, 12 標的装置, 13 パーソナルコンピュータ, 14 モニタ, 15 通信ケーブル, 16 モニタケーブル, 21 的紙, 22 標的板, 23 衝撃センサ, 24 信号処理部, 25 標的画像
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