(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願発明の一実施形態に係る制御装置を図面に基づいて説明する。
図1は、本願発明の一実施形態の制御装置(エアバッグECU)を含むエアバッグ制御システムの構成を示す図である。
【0022】
エアバッグ制御システム1000は、車両に設けられた各種加速度センサによって検出されたセンサ信号をモニタし、車両が衝突したと判断したら運転席、助手席などの各部位のエアバッグを展開することにより、車両の衝突時の乗員の安全性を向上させるものである。
【0023】
図1に示すように、エアバッグ制御システム1000は、エアバッグECU(制御装置)100、助手席乗員検知ECU(他の制御装置)200、メータECU(他の制御装置)300、バッテリ電源(第1の電源)400、イグニッションスイッチ410、及び終端抵抗420を備える。
【0024】
また、エアバッグ制御システム1000は、運転側エアバッグ用スクイブ500、助手席側エアバッグ用スクイブ510、右サイドエアバッグ用スクイブ520、左サイドエアバッグ用スクイブ530、右カーテンエアバッグ用スクイブ540、及び左カーテンエアバッグ用スクイブ550を備える。
【0025】
また、エアバッグ制御システム1000は、フロント右加速度センサ600、フロント左加速度センサ610、右サイド加速度センサ620、及び左サイド加速度センサ630を備える。
【0026】
以下、エアバッグ制御システム1000の各部の説明を行う。
バッテリ電源400は、車両に搭載された鉛蓄電池など各種の蓄電池である。バッテリ電源400は、電源ライン405を介してメータECU300へ電源を直接供給するとともに、電源ライン405を介して車両の各種の他の部品へも電源を直接供給する。
【0027】
イグニッションスイッチ410は、車両のエンジンを始動したり切ったりするスイッチである。車両のエンジンを切った状態では、イグニッションスイッチ410は「OFF」になる。この状態からユーザがキーを回すことによって、イグニッションスイッチ410は「ON」になる。イグニッションスイッチ410が「ON」になると、バッテリ電源400が、電源ライン407を介して、メータECU300、助手席乗員検知ECU200、及びエアバッグECU100へ電源が供給される。
【0028】
メータECU300は、車両の車速を検出して記録するとともに、記録された車速をエアバッグECU100又は車両の他の部品へ送信する制御装置である。メータECU300は、記録された車速を、CAN通信ライン430を介してエアバッグECU100へ送信する。これにより、エアバッグECU100は、車両がどのような状態で運転されているか、例えば車両のブレーキ状態などを検出することができる。
【0029】
助手席乗員検知ECU200は、車両の助手席のシート上の重量を検出し、助手席の乗員状態を判定する。例えば、大人の男性、小柄な女性、子供、空席などの状態を判定する。助手席乗員検知ECU200は、判定された助手席の乗員状態を、通信ライン440を介してエアバッグECU100へ送信する。エアバッグECU100は、例えば、助手席のシート上の乗員状態をモニタすることによって、車両のフロント衝突時において、例えば助手席の乗員が子供の場合は、図示しない助手席のエアバッグの展開を抑制することができる。
【0030】
エアバッグECU100は、電圧検出器101、昇圧回路102、電圧検出器103、キャパシタ(第2の電源)104、電圧検出I/F105,107、DC−DCコンバータ106、CAN(Controller Area Network)通信トランシーバ108、及びK−line通信ドライバ110を備える。また、エアバッグECU100は、MCU(Micro Controller Unit)120、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)140、加速度センサ150、及び不揮発メモリ160を備える。
【0031】
電圧検出器101は、バッテリ電源400からイグニッションスイッチ410を介してエアバッグECU100へ供給された電源電圧値を検出する。
電圧検出I/F(InterFace)105は、電圧検出器101によって検出された電圧信号をMCU120へ出力するためのインターフェースである。電圧検出器101によって検出された電圧信号は、電圧検出I/F105を介してMCU120へ出力される。
【0032】
昇圧回路102は、バッテリ電源400からイグニッションスイッチ410を介してエアバッグECU100へ供給された電源電圧を昇圧する回路である。昇圧回路102は、例えば、供給された9Vから16Vの電源電圧を24V程度まで昇圧する。昇圧回路102は、昇圧した電圧をキャパシタ104、及びDC−DCコンバータ106へ供給する。
【0033】
電圧検出器103は、昇圧回路102から出力された電源電圧値を検出する。
電圧検出I/F107は、電圧検出器103によって検出された電圧信号をMCU120へ出力するためのインターフェースである。電圧検出器103によって検出された電圧信号は、電圧検出I/F107を介してMCU120へ出力される。
【0034】
キャパシタ104は、昇圧回路102から供給された電圧の充放電を行う蓄電器であり、バッテリ電源400のバックアップ電源となる。
DC−DCコンバータ106は、昇圧回路102から供給された電圧をMCU120で使用される電圧(例えば5V)へ変換(降圧)する変換器である。DC−DCコンバータ106は、降圧した電圧をMCU120へ供給する。
【0035】
CAN通信トランシーバ108は、CAN規格に基づいて、CAN通信ライン430を介してメータECU300及び図示しない車両の他のECUとの間でデータを送受信するインターフェースである。CAN通信トランシーバ108によって受信されたデータはMCU120へ送信される。
【0036】
K−line通信ドライバ110は、通信ライン440を介して助手席乗員検知ECU200との間でデータの送受信を行うインターフェースである。K−line通信ドライバ110は、通信信号の電圧レベルを変換する。例えば、K−line通信ドライバ110は、MCU120が取り扱える5V系の信号レベルをK−lineの電圧レベル(12V)に変換する。
MCU120は、A/D(Analog to Digital Converter)121、CPU(Central Processing Unit)122、ROM(Read Only Memory)124、RAM(Random Access Memory)126、及びCAN通信コントローラ128を備える。また、MCU120は、SCI(Serial Communication Interface)132、及びSPI(Serial Peripheral Interface)134,136,138を備える。
【0037】
A/D121、CPU122、ROM124、RAM126、CAN通信コントローラ128、SCI132、及びSPI134,136,138は、MCU100の内部バス170を介して相互に接続されている。
【0038】
A/D121は、電圧検出I/F105,107を介して入力されたアナログ電圧信号をデジタル電圧信号へ変換する。
CPU122は、ROM124又はRAM126に格納された各種プログラムを実行する演算処理部である。CPU122は、ROM124又はRAM126に格納された各種プログラムを実行することにより、エアバッグECU100の各種機能を実行する。エアバッグECU100の各種機能についての詳細は後述する。
【0039】
ROM124は、エアバッグECU100の各種機能を実行するためのデータ、及びエアバッグECU100の各種機能を実行するための各種プログラムを格納するメモリである。
【0040】
また、RAM126は、ROM124に格納された各種プログラムのうち、CPU122で実行されるプログラムの演算結果などを格納する比較的小容量で高速アクセスが可能なメモリである。
【0041】
CAN通信コントローラ128は、CAN通信トランシーバ108を介して、メータECU300又は車両の他の部品との間の通信を行うコントローラである。
SCI132は、非同期式シリアル通信のインターフェースであり、K−line通信ドライバ110とMCU120内の各デバイスとのインターフェースとなる。
【0042】
SPI134は、クロック同期式シリアル通信のインターフェースであり、ASIC140とMCU120内の各デバイスとのインターフェースとなる。SPI136は、加速度センサ150とMCU120内の各デバイスとのインターフェースとなる。SPI138は、不揮発メモリ160とMCU120内の各デバイスとのインターフェースとなる。
【0043】
加速度センサ150は、エアバッグECU100が配置された場所における加速度を検出するセンサである。加速度センサ150は、検出した加速度を、SPI136を介してMCU120へ出力する。
【0044】
不揮発メモリ160は、電源を供給しなくても記録を保持するメモリであり、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である。不揮発メモリ160は、例えば、SPI138を介してMCU120から出力されたデータを記録する。
【0045】
ASIC140は、複数機能の回路を1つにまとめた集積回路である。ASIC140は、スクイブI/F(InterFace)142と、センサI/F144とを備える。
スクイブI/F142は、運転側エアバッグ用スクイブ500、助手席側エアバッグ用スクイブ510、右サイドエアバッグ用スクイブ520、左サイドエアバッグ用スクイブ530、右カーテンエアバッグ用スクイブ540、及び左カーテンエアバッグ用スクイブ550へ、エアバッグの展開信号を送信するインターフェースとなる。
【0046】
また、センサI/F144は、フロント右加速度センサ600、フロント左加速度センサ610、右サイド加速度センサ620、及び左サイド加速度センサ630から送信される加速度信号を受信するインターフェースとなる。
【0047】
運転側エアバッグ用スクイブ500は、MCU120からスクイブI/F142を介して送信された展開信号に基づいて、運転席側の点火装置(スクイブ)に電流を流し、ガス発生剤に着火することで高圧ガスを発生させ、瞬時にエアバッグを膨らませる。
【0048】
また、助手席側エアバッグ用スクイブ510、右サイドエアバッグ用スクイブ520、左サイドエアバッグ用スクイブ530、右カーテンエアバッグ用スクイブ540、及び左カーテンエアバッグ用スクイブ550も同様に、MCU120から送信された展開信号に基づいて、車両の各場所に配置されたエアバッグを膨らませる。
【0049】
フロント右加速度センサ600は、車両のフロントの右側に配置された加速度センサであり、センサで検出した加速度を、センサI/F144を介してMCU120へ送信する。
【0050】
また、フロント左加速度センサ610、右サイド加速度センサ620、及び左サイド加速度センサ630も同様に、車両の各場所に配置されており、車両の各場所における加速度を検出して、MCU120へ送信する。
【0051】
次に、エアバッグECU100内のMCU120に設けられたCPU122によって実行されるエアバッグECU100の各種機能ブロックについて説明する。
図2は、制御装置によって実行される機能のブロックを示す図である。
【0052】
図2に示すように、CPU122は、機能ブロックとして、動作状態推定部650、通信異常検出部660、動作状態記録部670、正常状態経過時間カウント部680、及び異常状態経過時間カウント部690を備える。
【0053】
動作状態推定部650は、バッテリ電源400(第1の電源)の電圧、又はキャパシタ104(バックアップ電源,第2の電源)の電圧に基づいて、他の制御装置(例えば、助手席乗員検知ECU200、又はメータECU300)の動作状態を推定する。
【0054】
ここで、動作状態推定部650による他の制御装置の動作状態の推定の一態様について説明する。
図3は、イグニッション電圧、バックアップ電圧、及びエアバッグECUと他の制御装置(助手席乗員検知ECU等)の動作状態のタイムシーケンスの第1の例を示す図である。
図3は、他の制御装置の例として、助手席乗員検知ECU200を挙げて説明する。
【0055】
電圧検出器101によって検出されたバッテリ電源400の電圧(イグニッション電圧702)が、瞬断の影響などにより
図3に示すようにオンオフしながら推移したとする。この場合、電圧検出器103によって検出されたバックアップ電圧704は、イグニッション電圧702のオンオフに応じて充放電して
図3のように推移する。
【0056】
この場合、助手席乗員検知ECU200は、イグニッション電圧702の最初の立ち上がりによって初期化状態710となった後、通常動作状態712になるが、イグニッション電圧702の瞬断によってシステム停止状態714になる。また、助手席乗員検知ECU200は、イグニッション電圧702が瞬断から復帰すると、初期化状態716を経て通常動作状態718になるが、イグニッション電圧702が瞬断すると、再びシステム停止状態720になる。そして、助手席乗員検知ECU200は、イグニッション電圧702が瞬断から復帰すると、初期化状態722を経て通常動作状態724へ推移する。
【0057】
助手席乗員検知ECU200のこのような動作状況の推移を踏まえて、動作状態推定部650は以下のように助手席乗員検知ECU200の動作状況を推定する。
動作状態推定部650は、イグニッション電圧702があらかじめ設定された正常範囲(例えば9V〜16V)外である場合には、助手席乗員検知ECU200が停止状態であると推定する。
【0058】
また、動作状態推定部650は、キャパシタ104に蓄電された電圧(バックアップ電圧704)が上昇し始めてから所定時間の間は、助手席乗員検知ECU200が初期化状態であると推定する。
【0059】
また、動作状態推定部650は、バックアップ電圧704が下降した場合には、助手席乗員検知ECU200が停止状態であると推定する。
また、動作状態推定部650は、バックアップ電圧704が上昇し始めてから所定時間が経過した後、バックアップ電圧704がキャパシタ104の最大容量の電圧(例えば24V)を保った場合に、助手席乗員検知ECU200が通常動作状態であると推定する。
【0060】
一方、動作状態推定部650は、助手席乗員検知ECU200の動作状態だけではなく、キャパシタ104(バックアップ電源,第2の電源)の電圧に基づいてエアバッグECU100の動作状態も推定することができる。
【0061】
ここで、動作状態推定部650による制御装置(エアバッグECU100)の動作状態の推定の一態様について説明する。
図3に示すように、エアバッグECU100の動作状態は、イグニッション電圧702の最初の立ち上がりによって初期化状態706となり、その後はイグニッション電圧702が瞬断されてもバックアップ電圧704がチャージされているので通常動作状態708となる。
【0062】
エアバッグECU100のこのような動作状況の推移を踏まえて、動作状態推定部650は以下のようにエアバッグECU100の動作状況を推定する。
動作状態推定部650は、キャパシタ104に電圧が蓄電されていない状態の場合、エアバッグECU100が停止状態であると推定する。
【0063】
また、動作状態推定部650は、キャパシタ104に電圧が蓄電されていない状態から蓄電され始めて所定時間の間は、エアバッグECU100が初期化状態706であると推定する。
【0064】
また、動作状態推定部650は、キャパシタ104に電圧が蓄電されていない状態から蓄電され始めて所定時間を経過した後は、エアバッグECU100が通常動作状態708であると推定する。
【0065】
図2の説明に戻って、通信異常検出部660は、他の制御装置(例えば、助手席乗員検知ECU200又はメータECU300)との間の通信の異常を検出する。通信異常検出部660は、例えば、助手席乗員検知ECU200との間の通信において、助手席乗員検知ECU200からの通信応答が返ってこない場合に、通信異常を検出する。また、通信異常検出部660は、例えば、メータECU300との間の通信において、メータECU300からの通信応答が返ってこない場合に、通信異常を検出する。
【0066】
動作状態記録部670は、通信異常検出部670によって助手席乗員検知ECU200又はメータECU300との間の通信の異常が検出されたら、動作状態推定部650によって推定された助手席乗員検知ECU200又はメータECU300の動作状態をメモリ(例えば不揮発メモリ160)に記録する。例えば、動作状態記録部670は、動作状態推定部650によって推定された動作状態(初期化状態、通常動作状態、又は停止状態)を、符号化して不揮発メモリ160へ記録することができる。
【0067】
本実施形態によれば、バッテリ電源又はバックアップ電源に基づいて推定された助手席乗員検知ECU200又はメータECU300の動作状態がメモリに記録される。したがって、故障解析の際に、記録されたデータを用いることによって、例えば電源の瞬断が原因で故障と判定されたのか、又はその他の原因で故障と判定されたのかなど、助手席乗員検知ECU200又はメータECU300の故障の原因を特定することが容易になる。
【0068】
また、動作状態記録部670は、通信異常検出部670によって助手席乗員検知ECU200又はメータECU300との間の通信の異常が検出されたら、動作状態推定部650によって推定されたエアバッグECU100の動作状態をメモリ(例えば不揮発メモリ160)に記録する。例えば、動作状態記録部670は、動作状態推定部650によって推定された動作状態(初期化状態、通常動作状態、又は停止状態)を、符号化して不揮発メモリ160へ記録することができる。
【0069】
本実施形態によれば、エアバッグECU100の動作状態も併せてメモリに記録するので、例えば、エアバッグECU100は通常動作状態であるのに対して助手席乗員検知ECU200又はメータECU300が初期化状態又は停止状態になっていれば、バックアップ電源を持たない助手席乗員検知ECU200又はメータECU300が電源の瞬断によってリセット再起動されたことを特定することができる。
【0070】
次に、正常状態経過時間カウント部680は、バッテリ電源400の電圧があらかじめ設定された正常範囲(例えば9V〜16V)外から正常範囲内になってからの経過時間を計測する。また、正常状態経過時間カウント部680は、バッテリ電源400の電源の電圧があらかじめ設定された正常範囲内から正常範囲外になったら計測された経過時間をリセットする。
【0071】
ここで、正常状態経過時間カウント部680の詳細について、
図4,5を用いて説明する。
図4は、制御装置(エアバッグECU100)によって実行される制御の第1の例のフローチャートである。
図5は、
図3のタイムシーケンスに、イグニッション電圧の正常/異常の経過時間をカウントするカウンタを加えた図である。
【0072】
図4に示すように、まず、正常状態経過時間カウント部680は、イグニッション電圧を取得する(ステップS101)、続いて、正常状態経過時間カウント部680は、イグニッション電圧が正常範囲(例えば9V〜16V)内であるか否かを判定する(ステップS102)。続いて、正常状態経過時間カウント部680は、イグニッション電圧が正常範囲内ではない場合は(ステップS102,No)、
図5に示すように、電圧正常カウンタ742をクリアする(ステップS103)。
【0073】
一方、正常状態経過時間カウント部680は、イグニッション電圧が正常範囲内である場合は(ステップS102,Yes)、電圧正常カウンタ742が最大値744に達しているか否かを判定する(ステップS104)。
【0074】
正常状態経過時間カウント部680は、電圧正常範囲内カウンタが最大値744に達していないと判定した場合は(ステップS104,No)、電圧正常カウンタ742をインクリメント(+1)する(ステップS105)。
【0075】
このような制御により、正常状態経過時間カウント部680は、
図5に示すように電圧正常カウンタ742をカウントする。
通信異常検出部660は、ステップS103において電圧正常カウンタ742がクリアされた後、ステップS104において電圧正常カウンタ742が最大値744に達していると判定された後、又はステップS105において電圧正常カウンタ742をインクリメント(+1)した後、助手席乗員検知ECU200との通信途絶故障診断を実施する(ステップS106)。
【0076】
続いて、通信異常検出部660は、助手席乗員検知ECU200との通信途絶故障診断の結果が正常であったか否かを判定する(ステップS107)。より具体的には、通信異常検出部660は、助手席乗員検知ECU200との通信において助手席乗員検知ECU200から通信応答がある場合には、助手席乗員検知ECU200との通信途絶故障診断の結果が正常であったと判断する。一方、通信異常検出部660は、助手席乗員検知ECU200との通信において助手席乗員検知ECU200から通信応答がない場合には、助手席乗員検知ECU200との通信途絶故障診断の結果が異常であったと判断する。
【0077】
動作状態記録部670は、助手席乗員検知ECU200との通信途絶故障診断の結果が正常ではなかった場合に(ステップS107,No)、電圧正常カウンタ742の内容を不揮発メモリ(EEPROM)160に記録して(ステップS108)、処理を終了する。
【0078】
一方、動作状態記録部670は、助手席乗員検知ECU200との通信途絶故障診断の結果が正常であった場合には(ステップS107,Yes)、そのまま処理を終了する。
なお、上述の例は、電圧正常カウンタ742の内容を不揮発メモリ160に記録する態様を示したが、これには限られない。例えば、動作状態推定部650は、正常状態経過時間カウント部680によって計測された経過時間(電圧正常カウンタの内容)に基づいて、助手席乗員検知ECU200の動作状態を推定することができる。動作状態記録部670は、動作状態推定部650によって推定された助手席乗員検知ECU200の動作状態を不揮発メモリ160に記録することもできる。
【0079】
ここで、動作状態推定部650によって実行される、電圧正常カウンタ742に基づく助手席乗員検知ECU200の動作状態の推定について説明する。
まず、動作状態推定部650は、正常状態経過時間カウント部680によって計測された経過時間(電圧正常カウンタ742の値)が、リセットされておらず、かつ、あらかじめ設定されたしきい値746未満の場合、助手席乗員検知ECU200が初期化状態であると推定することができる。
【0080】
また、動作状態推定部650は、正常状態経過時間カウント部680によって計測された経過時間(電圧正常カウンタ742の値)が、あらかじめ設定されたしきい値746以上の場合、助手席乗員検知ECU200が通常動作状態であると推定することができる。
【0081】
また、動作状態推定部650は、正常状態経過時間カウント部680によって計測された経過時間(電圧正常カウンタ742の値)が、リセットされている場合、助手席乗員検知ECU200が停止状態であると推定することができる。
【0082】
図2の説明に戻って、異常状態経過時間カウント部690は、バッテリ電源400の電圧があらかじめ設定された正常範囲(例えば9V〜16V)内から正常範囲外になってからの経過時間を計測する。また、異常状態経過時間カウント部690は、バッテリ電源400の電圧があらかじめ設定された正常範囲外から正常範囲内になったら計測された経過時間を保持する。さらに、異常状態経過時間カウント部690は、バッテリ電源400の電圧があらかじめ設定された正常範囲内から正常範囲外になったら計測された経過時間をリセットする。
【0083】
ここで、異常状態経過時間カウント部690の詳細について、
図6,7を用いて説明する。
図6は、制御装置(エアバッグECU100)によって実行される制御の第2の例のフローチャートである。
図7は、イグニッション電圧、バックアップ電圧、イグニッション電圧の正常/異常の経過時間をカウントするカウンタ、及びエアバッグECUと他の制御装置(助手席乗員検知ECU等)の動作状態のタイムシーケンスの第2の例を示す図である。
図7は、他の制御装置の例として、助手席乗員検知ECU200を挙げて説明する。
【0084】
タイムシーケンスの第2の例では、電圧検出器101によって検出されたバッテリ電源400の電圧(イグニッション電圧802)が、瞬断の影響などにより
図7に示すようにオンオフしながら推移し、その後、車両が衝突してエアバッグが展開されたとする。この場合、電圧検出器103によって検出されたバックアップ電圧804は、イグニッション電圧802のオンオフに応じて充放電し、車両の衝突の後は下降して蓄電されていない状態になる。
【0085】
この場合、エアバッグECU100の動作状態は、イグニッション電圧802の最初の立ち上がりによって初期化状態806となり、その後はイグニッション電圧802が瞬断されてもバックアップ電圧804がチャージされているので通常動作状態808となる。車両が衝突した後、バックアップ電圧804のチャージが放電されて蓄電がなくなると、エアバッグECU100の動作状態はシステム停止状態810になる。
【0086】
一方、助手席乗員検知ECU200は、イグニッション電圧802の最初の立ち上がりによって初期化状態812となった後、通常動作状態814になるが、イグニッション電圧802の瞬断によってシステム停止状態816になる。また、助手席乗員検知ECU200は、イグニッション電圧802が瞬断から復帰すると、初期化状態818を経て通常動作状態820になるが、車両が衝突してイグニッション電圧802が途絶えると、再びシステム停止状態822になる。
【0087】
このようなタイムシーケンスにおいて、異常状態経過時間カウント部690は、まず、
図6に示すように、イグニッション電圧を取得する(ステップS201)、続いて、異常状態経過時間カウント部690は、イグニッション電圧が正常範囲(例えば9V〜16V)内であるか否かを判定する(ステップS202)。続いて、異常状態経過時間カウント部690は、イグニッション電圧が正常範囲内ではない場合は(ステップS202,No)、「今回のイグニッション電圧状態」に「正常範囲外」をセットする(ステップS203)。
【0088】
一方、異常状態経過時間カウント部690は、イグニッション電圧が正常範囲内である場合は(ステップS202,Yes)、「今回のイグニッション電圧状態」に「正常範囲内」をセットする(ステップS204)。
【0089】
次に、異常状態経過時間カウント部690は、「前回のイグニッション電圧状態」と「今回のイグニッション電圧状態」とを比較する(ステップS205)。
続いて、異常状態経過時間カウント部690は、「前回のイグニッション電圧状態」=「正常範囲内」から「今回のイグニッション電圧状態」=「正常範囲外」へのイグニッション電圧状態にエッジ変化があったか否かを判定する(ステップS206)。
【0090】
異常状態経過時間カウント部690は、「前回のイグニッション電圧状態」=「正常範囲内」から「今回のイグニッション電圧状態」=「正常範囲外」へのイグニッション電圧状態にエッジ変化があったと判定した場合は(ステップS206,Yes)、
図7に示すように、電圧異常カウンタ832をクリアする(ステップS207)。
【0091】
異常状態経過時間カウント部690は、ステップS206において「前回のイグニッション電圧状態」=「正常範囲内」から「今回のイグニッション電圧状態」=「正常範囲外」へのイグニッション電圧状態にエッジ変化がなかったと判定した後、又はステップS207において電圧異常カウンタ832をクリアした後、「前回のイグニッション電圧状態」に「今回のイグニッション電圧状態」をコピーする(ステップS208)。
【0092】
続いて、異常状態経過時間カウント部690は、イグニッション電圧が正常範囲(例えば9V〜16V)内であるか否かを判定する(ステップS209)。
異常状態経過時間カウント部690は、イグニッション電圧が正常範囲(例えば9V〜16V)内ではないと判定したら(ステップS209,No)、電圧異常カウンタ832が最大値に達しているか否かを判定する(ステップS210)。
【0093】
異常状態経過時間カウント部690は、電圧異常カウンタ832が最大値に達していないと判定したら(ステップS210,No)、電圧異常カウンタ832をインクリメント(+1)する(ステップS211)。
【0094】
通信異常検出部660は、ステップS209においてイグニッション電圧が正常範囲内であると判定した後、ステップS210において電圧異常カウンタ832が最大値に達していると判定した後、又はステップS211において電圧異常カウンタ832をインクリメントした後、助手席乗員検知ECU200との通信途絶故障診断を実施する(ステップS212)。
【0095】
続いて、通信異常検出部660は、助手席乗員検知ECU200との通信途絶故障診断の結果が正常であったか否かを判定する(ステップS213)。より具体的には、通信異常検出部660は、助手席乗員検知ECU200との通信において助手席乗員検知ECU200から通信応答がある場合には、助手席乗員検知ECU200との通信途絶故障診断の結果が正常であったと判断する。一方、通信異常検出部660は、助手席乗員検知ECU200との通信において助手席乗員検知ECU200から通信応答がない場合には、助手席乗員検知ECU200との通信途絶故障診断の結果が異常であったと判断する。
【0096】
動作状態記録部670は、助手席乗員検知ECU200との通信途絶故障診断の結果が正常ではなかった場合に(ステップS213,No)、電圧異常カウンタ832の内容を不揮発メモリ(EEPROM)160に記録して、処理を終了する。
【0097】
一方、動作状態記録部670は、助手席乗員検知ECU200との通信途絶故障診断の結果が正常であった場合には(ステップS213,Yes)、そのまま処理を終了する。
なお、上述の例は、電圧異常カウンタ832の内容を不揮発メモリ160に記録する態様を示したが、これには限られない。例えば、動作状態推定部650は、正常状態経過時間カウント部680によって計測された経過時間(電圧正常カウンタ732)と、異常状態経過時間カウント部690によって計測された経過時間(電圧異常カウンタ832)とに基づいて、助手席乗員検知ECU200の動作状態を推定することができる。動作状態記録部670は、動作状態推定部650によって推定された助手席乗員検知ECU200の動作状態を不揮発メモリ160に記録することもできる。
【0098】
ここで、動作状態推定部650によって実行される、電圧正常カウンタ742と電圧異常カウンタ832とに基づく助手席乗員検知ECU200の動作状態の推定について説明する。
【0099】
まず、動作状態推定部650は、正常状態経過時間カウント部680によって計測された経過時間(電圧正常カウンタ842の値)が、リセットされておらず、かつ、あらかじめ設定されたしきい値846未満の場合、助手席乗員検知ECU200が、異常状態経過時間カウント部690によって計測された経過時間(電圧異常カウンタ832の値)に対応する停止状態期間を経た後の初期化状態であると推定することができる。
【0100】
また、動作状態推定部650は、正常状態経過時間カウント部680によって計測された経過時間(電圧正常カウンタ842の値)が、あらかじめ設定されたしきい値846以上の場合、助手席乗員検知ECU200が、異常状態経過時間カウント部690によって計測された経過時間(電圧異常カウンタ832の値)に対応する停止状態期間を経た後の通常動作状態であると推定することができる。
【0101】
また、動作状態推定部650は、正常状態経過時間カウント部680によって計測された経過時間(電圧正常カウンタ842の値)が、リセットされている場合、助手席乗員検知ECU200が、異常状態経過時間カウント部690によって計測された経過時間(電圧異常カウンタ832の値)に対応する停止状態期間を経た後の停止状態であると推定することができる。
【0102】
以上のように、本実施形態の制御装置(エアバッグECU100)は、バッテリ電源400(第1の電源)の電圧、又はキャパシタ104(バックアップ電源,第2の電源)の電圧に基づいて、バッテリ電源400のみで動作する他の制御装置(助手席乗員検知ECU200又はメータECU300)の動作状態を推定する。そして、制御装置(エアバッグECU100)は、他の制御装置との間の通信の異常が検出されたら、推定された他の制御装置の動作状態をメモリに記録する。
【0103】
したがって、本実施形態によれば、メモリに他の制御装置の動作状況が記録されるので、故障解析の際に、記録された動作状態に基づいて、他の制御装置自体が故障して故障検出されたのか、それともバッテリ電源の瞬断等によって他の制御装置がリセット再起動したことが原因で通信が途絶えて故障検出されたのか、など故障原因を特定することが容易になる。
【0104】
また、本実施形態の制御装置(エアバッグECU100)は、バッテリ電源400の電圧が所定範囲となった経過時間を計測して記録する。これによれば、他の制御装置が正常状態であった経過時間を用いて故障解析することができる。また、制御装置は、計測された計測時間に基づいて、他の制御装置(助手席乗員検知ECU200又はメータECU300)の動作状態を推定し、記録することもできる。したがって、本実施形態によれば、故障解析において、通信相手の他の制御装置の故障なのか、又は車両の電源の影響による故障なのかを区別することができる。
【0105】
これに加えて、本実施形態の制御装置(エアバッグECU100)は、バッテリ電源400が所定範囲外となった経過時間を計測して記録する。これによれば、他の制御装置が停止状態又は初期化状態であった経過時間を用いて故障解析することができる。さらに、本実施形態の制御装置は、バッテリ電源400が所定範囲となった経過時間、及びバッテリ電源400が所定範囲外となった経過時間の2つの経過時間に基づいて他の制御装置(助手席乗員検知ECU200又はメータECU300)の動作状態を推定することができる。したがって、本実施形態によれば、他の制御装置の動作状態をより詳細に推定することができる。例えば、他の制御装置が短い停止状態の後に初期化状態に遷移したというデータが記録されていたら、故障解析の際に、他の制御装置自体の故障ではなく、電源の瞬断によるものであると特定することができる。
【0106】
また、本実施形態の制御装置(エアバッグECU100)は、自制御装置の動作状態を推定してメモリに記録する。これによれば、例えば、自制御装置は通常動作状態であるのに対して他の制御装置が初期化状態又は停止状態であるというデータが記録されていれば、バックアップ電源を持たない他の制御装置が電源の瞬断によってリセット再起動されたことを特定することができる。