(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記強制送風機構が、前記電池ブロックの温度を検出すると共に、電池温度が設定温度よりも高い状態で、冷却気体を前記冷却隙間に強制送風して前記角形電池を強制冷却し、電池温度が設定温度よりも低い状態では強制送風を停止するようにしてなる請求項6に記載されるバッテリシステム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのバッテリシステムを例示するものであって、本発明はバッテリシステムを以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施の形態に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。
【0013】
本発明のバッテリシステムは、複数の角形電池を積層すると共に、互いに積層される角形電池の表面に複数列の冷却隙間を設けてなる電池ブロックを備える。さらに、以下の実施例に示すバッテリシステムは、電池ブロックの冷却隙間に強制送風して角形電池を冷却する強制送風機構を備えている。このバッテリシステムは、電池ブロックの温度を検出して、電池温度が設定温度よりも高い状態では、強制送風機構が冷却気体を冷却隙間に強制送風して角形電池を強制冷却し、電池温度が設定温度よりも低い状態では強制送風を停止して、電池温度を設定範囲に保持する。たとえば、このバッテリシステムは、強制送風して角形電池を強制冷却する設定温度を35℃〜40℃として、角形電池が設定温度を越えると強制送風して強制冷却する。
【0014】
本発明のバッテリシステムは、電池ブロックに設けている冷却隙間の全てを同じ形状や配置としない。角形電池の温度差を少なくするために、バッテリシステムは、冷却隙間を、電池ブロックの両端部にあるスタック端部側の冷却隙間と、このスタック端部側の冷却隙間よりも電池ブロックの内部側に配置してなるスタック中央部側の冷却隙間とに区画して異なる形状や配置としている。バッテリシステムは、スタック中央部側の冷却隙間をスタック端部側の冷却隙間よりも冷却隙間内の気体が逃げやすい形状、言い換えると流れやすい形状としている。スタック中央部側の冷却隙間は、冷却気体の排出端に向かって上り勾配に傾斜している。また、スタック中央部側の冷却隙間は、スタック端部側の冷却隙間よりも冷却気体を流れやすくする形状に傾斜させて、スタック端部側の冷却隙間よりも対流による冷却気体の流れを強くしている。電池温度を検出して、角形電池の冷却隙間に強制送風するバッテリシステムは、強制送風を停止する状態で、スタック中央部側の冷却隙間に効果的に自然対流できるように、スタック中央部側の冷却隙間を冷却気体の排出端に向かって上り勾配に傾斜し、さらに、強制送風の停止状態において、スタック端部側の冷却隙間よりも自然対流速度が速くなるように傾斜して、冷却気体を流れやすい形状としている。
【0015】
本発明のバッテリシステムは、スタック中央部側の冷却隙間の両端開口部の上下差を、スタック端部側の冷却隙間の両端開口部の上下差よりも大きくすることができる。このバッテリシステムは、スタック中央部側の冷却隙間には、冷却気体をスムーズに流して角形電池を効率よく冷却し、スタック端部側の冷却隙間の冷却気体の流れを弱くして、角形電池の温度差を少なくできる。
【0016】
本発明のバッテリシステムは、スタック中央部側の冷却隙間を直線状として、冷却気体がスムーズに流れる形状とし、スタック端部側の冷却隙間の形状を、両端部において、開口端に向かって下り勾配に傾斜する形状として、冷却気体の流動をスタック中央部側の冷却隙間よりも少なくすることができる。このバッテリシステムは、スタック中央部側の冷却隙間には、冷却気体をスムーズに流して角形電池を効率よく冷却し、スタック端部側の冷却隙間の冷却気体の流れを弱くして、角形電池の温度差を少なくできる。
【0017】
本発明のバッテリシステムは、スタック中央部側の冷却隙間の傾斜角(α)を、スタック端部側の冷却隙間の傾斜角(α)よりも大きくして、冷却気体の流速を、スタック端部側の冷却隙間よりもスタック中央部側の冷却隙間で速くして、電池ブロックの内部を効果的に冷却して、角形電池の温度差を小さくしながら、電池温度を低くできる特徴がある。
【0018】
さらに、本発明のバッテリシステムは、スタック中央部側の冷却隙間の冷却気体の通過抵抗を、スタック端部側の冷却隙間の冷却気体の通過抵抗よりも小さくして、自然対流による冷却気体の流速を、スタック端部側の冷却隙間よりもスタック中央部側の冷却隙間で速くして、電池ブロックの内部を効果的に冷却して、角形電池の温度差を小さくしながら、電池温度を低くできる特徴がある。
【0019】
本発明のバッテリシステムは、強制送風機構として、冷却隙間に強制送風するシロッコファンを使用し、シロッコファンの回転軸を角形電池の積層方向と平行な方向として、電池ブロックの上に配置することができる。さらに、このバッテリシステムは、シロッコファンを電池ブロック上の片側に配置して、電池ブロックの冷却隙間に強制送風することができる。このバッテリシステムは、シロッコファンの回転軸を角形電池の積層方向と平行な方向とするので、強制送風機構を備える構造としながら、外形、とくに、全高を低くして、各々の冷却隙間には均一に強制送風して、角形電池を均一に冷却できる特徴を実現する。
【0020】
本発明のバッテリシステムは、強制送風機構として、冷却隙間に強制送風するシロッコファンを使用し、シロッコファンの回転軸を電池ブロックの側面に垂直な方向として、電池ブロックの側面に対向して配置することができる。さらに、このバッテリシステムは、シロッコファンの中心に設けた吸気口を電池ブロックの側面に対して反対側に配置することができる。このバッテリシステムは、シロッコファンの回転軸を電池ブロックの側面に対して垂直姿勢としながら、電池ブロックの側面に対向して配置するので、強制送風機構を備える構造としながら、外形、とくに、全高を低くできる。さらに、シロッコファンの中心に設けた吸気口を電池ブロックの側面に対して反対側に配置することで、周囲の空気を均一に吸入して、各々の冷却隙間には均一に強制送風して、角形電池を均一に冷却できる特徴を実現する。
【0021】
本発明のバッテリシステムの電池ブロックは、角形電池の表面にセパレータを積層して、このセパレータと角形電池との間に複数列の冷却隙間を設ける構造とすることができる。このバッテリシステムは、表面に複数列の溝のあるセパレータを角形電池の表面に積層して、角形電池とセパレータとの間に冷却隙間を設けることができる。
【0022】
以下、さらに本発明の具体的な実施例について詳述する。
図1ないし
図5に示すバッテリシステムは、複数の角形電池1を積層してなる電池ブロック10を外装ケース9の内部に配置している。さらに、バッテリシステムは、電池ブロック10を冷却するために、強制送風機構6を備えている。
【0023】
(電池ブロック10)
電池ブロック10は、互いに積層される角形電池1の表面に複数列の冷却隙間3を設けて、複数の角形電池1を積層状態に固定している。電池ブロック10は、複数の角形電池1とセパレータ2とを交互に積層して、各角形電池1の表面に複数列の冷却隙間3を設けている。
図4と
図5の分解斜視図に示す電池ブロック10は、隣接する角形電池1の間にセパレータ2Aを挟み、このセパレータ2Aを介して隣接する角形電池1同士を絶縁すると共に、隣接する角形電池1の間に冷却隙間3を設けている。さらに、電池ブロック10は、両端面にセパレータ2Bを介してエンドプレート4を配置し、両端に位置する角形電池1の外側面にも冷却隙間3を設けている。
【0024】
(セパレータ2)
セパレータ2は、プラスチックなどの絶縁材を成形して製作される。図に示す電池ブロック10は、角形電池1の表面に積層されるセパレータ2A、2Bを、複数列に分割されたセパレータ片2a、2b、2c、2d、2eで構成している。
図5ないし
図7に示すセパレータ2Aは、セパレータ片2a、2bを所定の配列で配置して、これらのセパレータ片2a、2bの間に冷却隙間3を設けている。また、
図5、
図8、及び
図9に示すセパレータ2Bは、セパレータ片2c、2d、2eを所定の配列で配置して、これらのセパレータ片2c、2d、2eの間に冷却隙間3を設けている。隣接する角形電池1の間に形成される冷却隙間3は、
図4ないし
図7に示すように、隣接するセパレータ片2a、2b同士の間であって、隣接する角形電池1の対向面の間に形成されており、ひとつの冷却隙間3で、両側に位置する角形電池1を冷却する構造としている。電池ブロック10の両端に位置する角形電池1の表面に形成される冷却隙間3は、
図4、
図5、
図8、及び
図9に示すように、セパレータ片2c、2d、2e同士の間であって、角形電池1とエンドプレート4の対向面の間に形成されており、この冷却隙間3で、電池ブロックの両端に位置する角形電池1を冷却する構造としている。
【0025】
複数列のセパレータ片2a、2b、2c、2d、2eからなるセパレータ2A、2Bは、
図5に示すように、互いに隣接する角形電池1のうち、一方の角形電池1の対向面に固定されて、対向する角形電池1の間の定位置に積層される。複数列のセパレータ片2a、2b、2c、2d、2eは、
図5に示すように、角形電池1の表面から突出する状態で固定されて、隣接するセパレータ片2a、2b、2c、2d、2eの間に冷却隙間3が形成される。
【0026】
以上のように、角形電池1の表面に複数のセパレータ片2a、2b、2c、2d、2eからなるセパレータ2を積層して、これらのセパレータ片2a、2b、2c、2d、2eの間に冷却隙間3を形成する構造は、隣接する角形電池1同士の間隔を狭くしながら、対向する角形電池1の間に冷却隙間3を形成できる。このため、電池ブロック10の外形を小さくしながら理想的に冷却隙間3を形成できる。
【0027】
以上の電池ブロック10は、複数の角形電池1の間にセパレータ2Aを挟んで積層すると共に、両端面にはセパレータ2Bを挟んでエンドプレート4を配置し、さらに、両端のエンドプレート4を連結具5で連結して、複数の角形電池1とセパレータ2とを積層状態に固定している。
【0028】
(電池ブロック30)
さらに、
図10の分解斜視図に示す電池ブロック30は、複数の角形電池1と、プラスチック等の絶縁材をプレート状に成形してなるセパレータ32とを交互に積層して、各角形電池1の表面に複数列の冷却隙間3を設けている。
図10と
図11の分解斜視図に示す電池ブロック30は、隣接する角形電池1の間にセパレータ32Aを挟み、このセパレータ32Aを介して隣接する角形電池1同士を絶縁すると共に、セパレータ32Aと角形電池1との間に冷却隙間3を設けている。さらに、電池ブロック30は、両端面にセパレータ32Bを介してエンドプレート34を配置し、両端に位置する角形電池1の外側面にも冷却隙間3を設けている。
【0029】
(セパレータ32)
セパレータ32は、角形電池1の表面に積層される状態で、角形電池1の表面に冷却隙間3を形成するため、断面視を凹凸状に形成している。
図11に示すセパレータ32は、角形電池1の表面に積層される板状の本体プレート部41を備えており、この本体プレート部41の表面に複数列の溝43を設けて、この溝43と角形電池1との間に冷却隙間3を設けている。
図11ないし
図15に示すセパレータ32は、角形電池1との対向面に、両側縁まで延びる溝43を設けており、この溝43と角形電池1との間にできる隙間を冷却隙間3としている。冷却隙間3は、
図10に示すように、電池ブロック30の左右の側面に開口するように設けられている。
【0030】
隣接する角形電池1の間に積層されるセパレータ32Aは、
図11に示すように、本体プレート部41の両面に複数列の溝43を交互に設けて、本体プレート部41の両面に冷却隙間3を形成している。この構造は、セパレータ32の両面に形成される冷却隙間3で、両側に積層される角形電池1を効果的に冷却できる特長がある。ただ、セパレータは、片面にのみ溝を設けて、角形電池とセパレータとの間に冷却隙間を設けることもできる。電池ブロック30の両端の角形電池1とエンドプレート34との間に積層されるセパレータ32Bは、
図11に示すように、本体プレート部41の片側面に複数列の溝43を設けて、角形電池1との間に冷却隙間3を形成している。このセパレータ32Bは、本体プレート部41の反対側面がエンドプレート34に積層されて定位置に配置されている。
【0031】
さらに、
図11ないし
図13に示すセパレータ32Aは、冷却隙間3の両端開口部3aが電池ブロック30の側面よりも内側に位置するように、両側部にカット領域44を設けている。図の本体プレート部41は、電池ブロック30の両側面の近傍では角形電池1が露出するように、凹状に切り欠いたカット領域44を形成している。このように、本体プレート部41の両側部において、隅部を残して角形電池1の対向面より内側になるように切欠してなるカット領域44を形成することで、セパレータ32Aの強度を維持しつつ、冷却隙間3の入口側及び出口側を広く採り、乱流の発生などを抑制して圧力損失を低減できる。
【0032】
さらに、セパレータ32は、
図11に示すように、本体プレート部41の外周に、角形電池1の積層方向に突出する周壁42を設けている。このセパレータ32は、周壁42の内形を角形電池1の外形にほぼ等しくして、周壁42の内側に角形電池1を入れて、角形電池1に対して定位置に配置している。この周壁42は、セパレータ32の両面に角形電池1を嵌着構造で 連結することができる。角形電池1に嵌着構造で連結されるセパレータ32を介在させることで、隣接する角形電池1の位置ずれを阻止して積層できる。
【0033】
以上の電池ブロック30は、複数の角形電池1の間にセパレータ32Aを挟んで積層すると共に、両端面にはセパレータ32Bを挟んでエンドプレート34を配置し、さらに、両端のエンドプレート34を連結具35で連結して、複数の角形電池1とセパレータ32とを積層状態に固定している。
【0034】
以上の電池ブロック10、30は、積層される複数の角形電池1の表面に複数列の冷却隙間3を設けている。角形電池には、金属製の外装缶の表面を絶縁するために、外装缶の表面をシュリンクチューブ等の絶縁フィルムで被覆しているものがある。このような角形電池においては、外装缶を被覆する絶縁フィルムの表面側に複数列の冷却隙間が形成される。すなわち、
図5に示すように、角形電池1の表面に、複数列に分割されたセパレータ片2a、2b、2c、2d、2eからなるセパレータ2A、2Bを積層する構造においては、外装缶を被覆する絶縁フィルムの表面側であって、これらのセパレータ片2a、2b、2c、2d、2eの間に冷却隙間3が形成される。また、
図11に示すように、角形電池1の表面に、断面視を凹凸状に形成してなる板状のセパレータ32A、32Bを積層する構造においては、外装缶を被覆する絶縁フィルムと板状のセパレータ32との間に、正確には、絶縁フィルムとセパレータ32に設けた溝43との間に冷却隙間3が形成される。ただ、角形電池は、必ずしも外装缶の表面をシュリンクチューブ等の絶縁フィルムで被覆する必要はない。このような角形電池においては、外装体である外装缶等の表面に、直接にセパレータが積層されて複数列の冷却隙間が設けられる。すなわち、角形電池は、外装体を金属製の外装缶等とすることも、金属製の外装缶の表面を絶縁フィルムで被覆することもできる。
【0035】
(冷却隙間3)
電池ブロック10、30は、冷却隙間3に冷却気体を強制送風して角形電池1を冷却し、また、冷却気体の強制送風を停止する状態においては、冷却気体を自然対流させて角形電池1を冷却する。電池ブロック10、30は、自然対流して冷却する状態で、各角形電池1の温度差を小さくするために、冷却隙間3を異なる形状としている。電池ブロック10、30は、自然対流による冷却状態において、両端部に配置される角形電池1の温度が低くなる。エンドプレート4、34を介して外部に熱伝導して放熱されるからである。
【0036】
電池ブロック10、30は、両端部に積層される角形電池1と、その内部に積層される角形電池1の温度差をより小さくするために、電池ブロック10、30の両端部に設けているスタック端部側の冷却隙間3Yと、このスタック端部側の冷却隙間3Yよりも電池ブロック10の内部側に配置しているスタック中央部側の冷却隙間3Xとを異なる形状としている。
図4、
図5、
図10、及び
図11に示す電池ブロック10、30は、エンドプレート4、34と角形電池1との間の冷却隙間3をスタック端部側の冷却隙間3Yとし、隣接する角形電池1の間に設けられる冷却隙間3をスタック中央部側の冷却隙間3Xとして、スタック端部側の冷却隙間3Yとスタック中央部側の冷却隙間3Xとを異なる形状としている。
【0037】
(スタック中央部側の冷却隙間3X)
スタック中央部側の冷却隙間3Xは、強制送風の停止状態において自然対流して効果的に冷却できるように、冷却気体の排出端3bに向かって上り勾配に傾斜している。強制送風の停止状態で、冷却気体が自然対流して流れる方向に向かって上り勾配に傾斜するスタック中央部側の冷却隙間3Xは、強制送風の停止状態において、スタック端部側の冷却隙間3Yよりも冷却気体の自然対流速度が速くなるように傾斜している。
図5ないし
図7、及び
図11ないし
図13に示すスタック中央部側の冷却隙間3Xは直線状として、自然対流による冷却気体の排出端3bに向かって上り勾配に傾斜している。直線状のスタック中央部側の冷却隙間3Xは、冷却気体を自然対流でスムーズに流して、角形電池1を冷却できる。
【0038】
以上のスタック中央部側の冷却隙間3Xは、強制送風機構6で強制送風する状態においては、
図2、
図6、及び
図12の矢印で示すように冷却気体が送風されて角形電池1を冷却し、強制送風の停止状態においては、
図7と
図13の鎖線の矢印で示すように冷却気体を自然対流でスムーズに流して角形電池1を冷却する。ここで、
図2に示すバッテリシステムは、上り勾配に傾斜するスタック中央部側の冷却隙間3Xの下端開口部側に強制送風機構6を連結しており、この強制送風機構6で外装ケース9内の空気を外部に吸引してスタック中央部側の冷却隙間3Xに冷却気体を強制送風させている。このバッテリシステムは、強制送風機構6による冷却気体の送風方向(
図2及び
図6参照)と、自然対流による冷却気体の流動方向(
図7参照)を反対方向としている。ただ、バッテリシステムは、強制送風機構による冷却気体の送風方向と、自然対流による冷却気体の流動方向を同方向とすることもできる。このバッテリシステムは、上り勾配に傾斜するスタック中央部側の冷却隙間の上端の排出端側を強制送風機構による冷却気体の吸引側とし、あるいは、上り勾配に傾斜するスタック中央部側の冷却隙間の下端開口部側を強制送風機構による冷却気体の供給側とする。
【0039】
(スタック端部側の冷却隙間3Y)
スタック端部側の冷却隙間3Yは、強制送風の停止状態において、スタック中央部側の冷却隙間3Xよりも冷却気体の自然対流速度を抑制して、冷却気体の自然対流による冷却を少なくする。このことを実現するために、
図5、
図8、
図9、
図11、
図14、及び
図15に示すスタック端部側の冷却隙間3Yは、両端部を開口端に向かって下り勾配に傾斜する形状としている。さらに、これらのスタック端部側の冷却隙間3Yは、
図8、
図9、
図14、及び
図15に示すように、両端開口部3aをほぼ同じ高さに開口して、両端開口部3aの上下差を、スタック中央部側の冷却隙間3Xの両端開口部3aの上下差よりも小さくしている。これらの図のスタック端部側の冷却隙間3Yは、両端部の内側にある中間部を水平姿勢として、両端開口部3aをほぼ同じ高さとしている。さらに、これらの図のスタック端部側の冷却隙間3Yは、両端部を開口端に向かって下り勾配に傾斜する形状として、中間部を水平姿勢とするので、
図9及び
図14の鎖線で示すように、中間部に冷却気体を停滞させて自然対流による角形電池1の冷却をより少なくできる。
【0040】
以上のスタック端部側の冷却隙間3Yは、強制送風機構6で強制送風する状態においては、
図8と
図14の矢印で示すように冷却気体が送風されて角形電池1を冷却し、強制送風の停止状態においては、
図9と
図15の鎖線で示すように、中間部に冷却気体を停滞させて自然対流による角形電池1の冷却を抑制する。
【0041】
図5、
図8、
図9、
図11、
図14、及び
図15に示すスタック端部側の冷却隙間3Yは、両端部を開口端に向かって下り勾配に傾斜する姿勢とするが、スタック端部側の冷却隙間3Yは、
図16に示すように、全体を水平姿勢の直線状として、あるいは、
図17に示すように、水平方向に対して多少傾斜する直線状として、スタック中央部側の冷却隙間3Xよりも自然対流による冷却気体の流れを抑制することもできる。すなわち、直線状のスタック端部側の冷却隙間3Yの傾斜角(α)をスタック中央部側の冷却隙間3Xの傾斜角(α)よりも小さく、言い換えるとスタック中央部側の冷却隙間3Xの傾斜角(α)を、スタック端部側の冷却隙間3Yの傾斜角(α)よりも大きくして、スタック中央部側の冷却隙間3Xの自然対流による冷却気体の流速をスタック端部側の冷却隙間3Yよりも速くできる。
図16と
図17に示すスタック端部側の冷却隙間3Yは、角形電池1の表面に積層されるセパレータ2C、2Dによって形成されており、複数列に分割されたセパレータ片2a、2bの形状や角度を調整して、所定の傾斜角(α)となるようにしている。
【0042】
直線状の冷却隙間3は、傾斜角(α)で自然対流による冷却気体の流速を制御できる。さらに、強制送風を停止する状態で、冷却隙間3を自然対流する冷却気体の流速は、冷却隙間3の両端開口部3aの上下差によって変化し、上下差を大きくして速く、上下差を小さくして遅くできる。したがって、スタック中央部側の冷却隙間3Xの両端開口部3aの上下差を、スタック端部側の冷却隙間3Yの両端開口部3aの上下差よりも大きくして、スタック中央部側の冷却隙間3Xの自然対流による冷却気体の流速を、スタック端部側の冷却隙間3Yよりも速くできる。
【0043】
さらに、スタック端部側の冷却隙間3Yは、
図18に示すようにジグザグ状とし、あるいは
図19に示すようにU曲を繰り返す形状とし、あるいは、図示しないが、断面積を小さくして冷却気体の圧力損失をスタック中央部側の冷却隙間よりも大きくして、自然対流による冷却気体の流れを抑制することもできる。
図18と
図19に示すスタック端部側の冷却隙間3Yは、角形電池1の表面に積層されるセパレータ2E、2Fによって形成されている。
図18に示すセパレータ2Eは、複数列に分割されたジグザグ状のセパレータ片2f、2g、2hを所定の配列で配置しており、互いに隣接するセパレータ片2f、2g、2hの間にスタック端部側の冷却隙間3Yを設けている。また、
図19に示すセパレータ2Fは、複数列に分割された波形のセパレータ片2i、2j、2kを所定の配列で配置しており、互いに隣接するセパレータ片2i、2j、2kの間にスタック端部側の冷却隙間3Yを設けている。ただ、ジグザグ状、あるいはU曲を繰り返す形状のスタック端部側の冷却隙間は、
図11に示すセパレータ32と同様に、本体プレート部を有するセパレータの対向面に溝を設けて形成することもできる。さらに、図示しないが、断面積を小さくして冷却気体の圧力損失をスタック中央部側の冷却隙間よりも大きくするスタック端部側の冷却隙間は、角形電池の表面に積層される複数のセパレータ片の間隔を狭くし、あるいはセパレータ片の突出高さを低くすることで実現でき、本体プレート部を有するセパレータにおいては、対向面に形成される溝の幅を狭くし、あるいは溝を浅くすることで実現できる。
【0044】
(送風ダクト8)
バッテリシステムは、角形電池1に積層されるセパレータ2、32によって角形電池1の表面に設けられた冷却隙間3に冷却気体を強制送風するために、
図2に示すように、電池ブロック10の左右の両側に一対の送風ダクト8を設けており、この送風ダクト8に強制送風機構6を連結している。このバッテリシステムは、送風ダクト8から冷却隙間3に冷却気体を強制送風して、角形電池1を冷却する。
【0045】
送風ダクト8は、流入ダクト8Aと排出ダクト8Bからなる。流入ダクト8Aと排出ダクト8Bは、電池ブロック10の反対側に設けられており、冷却気体を流入ダクト8Aから冷却隙間3に、冷却隙間3から排出ダクト8Bに送風して角形電池1を冷却する。流入ダクト8Aと排出ダクト8Bには複数の冷却隙間3が並列に連結される。したがって、流入ダクト8Aに送風される冷却気体は、複数の冷却隙間3に分岐して送風され、流入ダクト8Aから排出ダクト8Bに送風される。
図2のバッテリシステムは、流入ダクト8Aと排出ダクト8Bを電池ブロック10の両側に設けているので、冷却隙間3の開口部を両側に開口して、冷却隙間3を水平方向に延びるように設けている。冷却気体は、冷却隙間3に沿って送風されて、角形電池1を冷却する。
【0046】
(強制送風機構6)
図1と
図2の強制送風機構6は、モータ11で回転されるファン12を備え、このファン12を送風ダクト8に連結している。図に示すバッテリシステムは、排出ダクト8Bに強制送風機構6を連結して、排出ダクト8Bから冷却気体を強制的に吸入して排気する。このバッテリシステムは、流入ダクト8A→冷却隙間3→排出ダクト8B→強制送風機構6に冷却気体を送風して、角形電池1を冷却する。ただし、強制送風機構は、流入ダクトに連結することもできる。このバッテリシステムは、強制送風機構から流入ダクトに冷却気体を強制送風する。したがって、このバッテリシステムは、冷却気体を、強制送風機構→流入ダクト→冷却隙間→排出ダクトに送風して、角形電池を冷却する。送風される冷却気体は空気であるが、空気に代わって窒素や炭酸ガスなどの不活性ガスを送風することもできる。冷却気体を不活性ガスとするバッテリシステムは、冷却気体を循環して、角形電池を冷却する。循環される不活性ガスは、流路の途中に配設している冷却用の熱交換器で冷却されて、流入ダクト→冷却隙間→排出ダクト→強制送風機構に循環されて角形電池を冷却する。
【0047】
強制送風機構6には、たとえば、シロッコファン6Aが使用できる。
図1と
図2に示すバッテリシステムは、外装ケース9の外部に強制送風機構6であるシロッコファン6Aを配置している。図のバッテリシステムは、強制送風機構6であるシロッコファン6Aを外装ケース9の排出口9Bに連結して、外装ケース9の内部に設けられた排出ダクト8Bの空気を強制的に排出するようにしている。このバッテリシステムは、外装ケース9に開口された冷却気体の流入口9Aから電池ブロック10の冷却隙間3を通過させて排出口9Bから外部に強制送風する。ただ、バッテリシステムは、強制送風機構であるシロッコファンを外装ケースの流入口に連結して、流入ダクトに冷却気体を強制的に流入させることもできる。
【0048】
さらに、
図20と
図21に示すバッテリシステムは、強制送風機構6であるシロッコファン6Aを外装ケース9の内部に配置している。図に示すバッテリシステムは、シロッコファン6Aの回転軸13を角形電池1の積層方向と平行な方向として、電池ブロック10の上に配置している。このバッテリシステムは、シロッコファン6Aを電池ブロック10上の片側に配置して、電池ブロック10の冷却隙間3に強制送風している。このバッテリシステムは、電池ブロック10の片側に配置されるシロッコファン6Aの接線方向に延びるダクト14を電池ブロック10の送風ダクト8に沿って配置している。この構造によると、複数の角形電池1の間に形成される冷却隙間3に均一に強制送風して、角形電池1を均一に冷却できる。また、電池ブロック10上の片側に、角形電池1の積層方向に沿ってシロッコファン6Aを配置するので、全体の外形を小さくできる。
【0049】
図20と
図21に示すシロッコファン6Aは、接線方向に延びるダクト14から吸引した空気を中心から外部に排出する構造としている。ただ、シロッコファンは、接線方向に延びるダクト14から吸引した空気を、接線方向に排出する構造とすることもできる。
図22に示すシロッコファン6Bは、電池ブロック10の上面に沿って、接線方向に延びるダクト15を備えており、ダクト14から吸引した空気を、電池ブロック10の上面側においてダクト15から排出する。この構造の強制送風機構6は、排出する空気を電池ブロック10の上面側にも強制送風できるので、電池ブロック10の上面側に配置される部品、たとえば、バスバーや回路基板等も効果的に冷却できる特徴がある。
【0050】
さらに、バッテリシステムは、強制送風機構6を
図23と
図24に示す構造とすることもできる。
図23と
図24に示す強制送風機構6であるシロッコファン6Cは、回転軸方向の長さを短くし、全体の形状を円盤状として、外装ケース9の内部に配置している。このバッテリシステムは、シロッコファン6Cの回転軸13を電池ブロック10の側面10Aに対して垂直な方向として、言い換えると円盤状のシロッコファン6Cを電池ブロック10の側面10Aと平行な姿勢として、電池ブロック10の側面10Aに対向して配置している。ここで、電池ブロック10の側面10Aは、互いに積層される角形電池1の表面に設けた複数列の冷却隙間3の両端開口部3aが開口された面としている。
【0051】
このバッテリシステムは、外装ケース9の内側であって、電池ブロック10の側面10Aとの間に設けた送風ダクト8にシロッコファン6Cを配置している。図に示すバッテリシステムは、シロッコファン6Cを電池ブロック10の片側であって、排出ダクト8Bの中央部に配置している。さらに、送風ダクト8に配置される円盤状のシロッコファン6Cは、中心に吸気口6xを開口して設けると共に、この吸気口6xを電池ブロック10の側面10Aに対して反対側に配置している。このシロッコファン6Cは、
図24に示すように、電池ブロック10の側面10Aに開口された冷却隙間3の両端開口部3aを閉塞しないように、電池ブロック10の側面10Aに接触することなく、側面10Aから離れた位置に固定されている。図のシロッコファン6Cは、吸気口6x側に配置された固定プレート17(
図23においては鎖線で表示)に固定されると共に、この固定プレート17を外装ケース9に固定して排出ダクト8B内の定位置に固定されている。この固定プレート17は、吸気口6xと対向する位置に貫通孔17Aを開口している。さらに、バッテリシステムは、排出ダクト8B内の空気を吸気口6xからスムーズに吸入できるように、シロッコファン6Cを外装ケース9の側壁9Xの内面から離して配置して、外装ケース9の側壁9Xとシロッコファン6Cの吸気口6xとの間に、冷却気体を通過させる送風隙間16を設けている。シロッコファン6Cは、排気口9yとなるダクト15を上方に延長すると共に、このダクト15を外装ケース9に開口された排出口9Bに連結して、吸気口6xから吸引した冷却気体を外部に排出している。このバッテリシステムは、流入口9A→流入ダクト8A→冷却隙間3→排出ダクト8B→送風隙間16→吸気口6x→排気口6y→排出口9Bに冷却気体を送風して角形電池1を冷却する。
【0052】
以上のように、シロッコファン6Cを排出ダクト8Bに配置して、吸気口6xを側面10Aの反対側に配置する構造は、
図23の矢印で示すように、周囲の空気を均一に吸入して、各々の冷却隙間3に均一に強制送風できる特徴がある。とくに、シロッコファン6Cを排出ダクト8Bの中央部に配置すると共に、電池ブロック10の側面10Aから離して配置することで、電池ブロック10の中央部に設けられた冷却隙間3にも冷却気体を均一に送風して、全ての角形電池1を均一に冷却できる。また、シロッコファン6Cを外装ケース9の側壁9Xから離して配置して、吸気口6x側に送風隙間16を設けることで、排出ダクト8B内の空気をスムーズに吸気口6xに流入できる。さらに、このバッテリシステムは、シロッコファン6Cの回転軸13を電池ブロック10の側面10Aに対して垂直姿勢として、電池ブロック10の側面10Aに対向して送風ダクト8内に配置するので、全体の外形、とくに、高さを低くしてコンパクトにできる特徴もある。
【0053】
(制御回路20、温度センサ21)
以上のバッテリシステムは、
図25に示すように、強制送風機構6のファン12を回転させるモータ11の運転を制御する制御回路20を備えている。制御回路20は、電池温度を検出する温度センサ21の信号で強制送風機構6のモータ11の運転を制御する。電池ブロック10は、複数の角形電池1の内、いくつかには温度センサ21が熱結合されており、角形電池1の温度を温度センサ21で検出することにより、電池ブロック10全体の温度を推測する。制御回路20は、電池ブロック10の温度に基づいて、冷却能力を制御し、あるいは充放電電流を制御する。制御回路20は、温度センサ21が検出する電池温度が設定温度よりも高くなると、強制送風機構6のモータ11を運転して、冷却隙間3に冷却気体を強制送風する。温度センサ21が検出する電池温度が設定温度よりも低くなると、モータ11の運転を停止する。さらに、制御回路20は、温度センサ21の検出温度によって、モータ11に供給する電力をコントロールして、角形電池1を所定の温度範囲に制御することもできる。たとえば、温度センサ21の検出温度が高くなるとモータ11に供給する電力を次第に大きくして、強制送風機構6が送風する風量を多くし、検出温度が低くなるとモータ11の供給電力を小さくして、設定された温度範囲に制御することもできる。
【0054】
以上のバッテリシステムは、温度センサ21が検出する電池温度が設定温度よりも低くなって、制御回路20がモータ11の運転を停止し、あるいは、強制送風機構6や制御回路20が故障すると、電池ブロック10の冷却隙間3には冷却気体が強制送風されなくなる。この状態では、角形電池1の間に設けた冷却隙間3に自然対流で空気を通過させる。このとき、温度上昇が大きくなる電池ブロック10の内部に設けているスタック中央部側の冷却隙間3Xには、スタック端部側の冷却隙間3Yよりも冷却気体をより効率よく自然に対流させる。このため、このバッテリシステムは、冷却気体の強制送風が停止される状態において、電池ブロック10を構成する複数の角形電池1の温度差を小さくして、特定の角形電池が劣化するのを有効に防止できる。また、強制送風が停止される状態において、温度が上昇しやすい電池ブロック内部の角形電池を自然対流によって効率よく冷却するので、無駄なエネルギーを消費することなく、また、故障時においても全体の電池温度を低くできる。