(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記層(A)は、前記架橋剤として有機カルボン酸または有機カルボン酸無水物を含有し、かつ前記多糖類としてキトサン誘導体を含有している請求項1に記載の非水二次電池。
前記層(A)は、無機微粒子、樹脂微粒子および樹脂製の極細繊維よりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含有している請求項1または2に記載の非水二次電池。
前記層(A)は、前記無機微粒子としてベーマイトの粒子を含有しているか、前記樹脂微粒子として架橋ポリメチルメタクリレートの粒子を含有しているか、または前記樹脂製の極細繊維としてセルロース繊維を含有している請求項3に記載の非水二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の非水二次電池は、架橋剤と、熱によって前記架橋剤で架橋でき、かつ架橋開始温度が90〜130℃の多糖類とを含む層(A)を、正極と負極との間に有しており、内部温度が異常に上昇した際には、その熱の作用によって架橋剤と多糖類とで強固な架橋ネットワークが層(A)内に形成される。これにより、例えば、セパレータの熱収縮が生じても、熱変形し難い層(A)によって正極と負極との接触による短絡が抑制できると共に、セパレータの構成樹脂の溶融によって生じる通常のシャットダウンと同様に、正極−負極間の絶縁性が高まり、電気抵抗が上昇するために電気化学反応の進行が抑えられる(本発明の非水二次電池における電気抵抗上昇現象も「シャットダウン」と記載する)。本発明の非水二次電池では、層(A)における前記の作用によって、優れた安全性を確保できる。
【0014】
層(A)において、架橋剤と多糖類とでの架橋開始温度(架橋構造の形成が開始する温度)は、90〜130℃である。このような温度で架橋構造を形成できる場合には、例えば、ポリエチレン製の微多孔膜で構成されたセパレータを有する非水二次電池でシャットダウンが開始する温度よりも、少し低い温度でシャットダウンを開始させ得るため、より安全性に優れた非水二次電池とすることができる。後述する架橋剤と多糖類との組み合わせであれば、架橋開始温度を前記のような温度とすることができる。
【0015】
前記の架橋開始温度は、架橋剤と多糖類との混合物について、示差走査熱量計(DSC)を使用して昇温試験を行うことで発熱挙動を観察した際の、発熱反応の立ち上がり時点での温度を意味している。なお、層(A)の形成には、後述するように、架橋剤、多糖類および溶剤などを含む層(A)形成用組成物を使用することが通常であるが、架橋開始温度の測定に用いる試料(架橋剤と多糖類との混合物)には、この層(A)形成用組成物を使用してもよい。
【0016】
本明細書でいう架橋開始温度は、具体的には以下の方法により求められる値である。Ar雰囲気内でDSC測定用のステンレス鋼(SUS)製密閉容器に、試料3.5mgを入れて密閉をして測定サンプルを作製する。基準サンプルには、前記DSC測定用のSUS製密閉容器にArガスを封入したものを使用する。これらを、DSCを用いて昇温開始温度を30℃として、昇温速度5℃/minで250℃まで加熱を行い、基準サンプルとの温度差から測定サンプルの発熱反応の立ち上がり時点での温度を検出し、これを架橋開始温度とする。
【0017】
層(A)は、正極と負極との間に配されていればよく、例えば、セパレータが層(A)を含有していてもよく、また、正極または負極の表面に層(A)が形成されていてもよい。セパレータが層(A)とは別に2以上の層を有する多層構造の場合、層(A)はセパレータの表面層であってもよく、表面層以外の層であってもよいが、表面層とすることがより好ましい。
【0018】
層(A)に係る多糖類は、熱によって架橋剤で架橋し得るものであり、具体的には、例えば、(C
6H
11NO
4)
n(nは1以上の整数)で表されるもののうちの1種または2種以上が使用される。これらの中でも、キトサン誘導体(ヒドロキシエチルキトサン、ヒドロキシプロピルキトサン、ヒドロキシブチルキトサンおよびグリセリル化キトサンなど)が好ましい。
【0019】
非水二次電池では、例えば、金属製の混入異物があった場合、電池内で溶解し、これが負極に析出して成長することで、セパレータを突き破り短絡を引き起こす場合がある。また、非水二次電池では、高温環境下で長期間貯蔵を行ったり、充放電を繰り返したりすることによって、正極活物質の金属がイオンとなって非水電解質中に溶出し、これが充放電の過程において負極上に金属として析出することがある。この負極上に析出した金属は、非水電解質中のリチウムイオンと反応して、電池の容量低下を引き起こす場合がある。そして、負極上に析出した正極活物質由来の金属も、セパレータを突き破って短絡を引き起こすことがある。
【0020】
キトサン誘導体は、分子内に有するアミノ基の作用によって、非水電解質中に溶出した金属イオンを効果的にトラップすることができる一方で、電池の充放電に関与するリチウムイオンはあまりトラップしない。よって、層(A)に係る多糖類として、キトサンやその誘導体を用いた場合には、前記の容量低下や短絡の発生を抑制し得ることから、非水二次電池の信頼性、貯蔵特性(特に高温環境下での貯蔵特性)および充放電サイクル特性を高めることができる。
【0021】
層(A)に係る架橋剤は、熱によって多糖類と架橋構造を形成し得るものであり、具体的には、有機カルボン酸、有機カルボン酸無水物、有機カルボン酸の塩、有機カルボン酸誘導体などが使用できる。このような架橋剤を使用し、かつ多糖類にキトサン誘導体を使用した場合には、電池内の温度が上昇した際に、層(A)内において、アミノ基を有する三次元的な網目構造(架橋構造)が形成される。
【0022】
有機カルボン酸としては、例えば、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸;サリチル酸などの芳香族モノカルボン酸;フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族多価カルボン酸;ピロリドンカルボン酸などの複素環式カルボン酸;などが挙げられる。
【0023】
有機カルボン酸無水物としては、前記例示の各有機カルボン酸の無水物が挙げられる。また、有機カルボン酸の塩としては、前記例示の各有機カルボン酸のアンモニウム塩やアミン塩などが挙げられる。なお、有機多価カルボン酸の塩の場合には、有機多価カルボン酸の有するカルボキシル基の一部のみが塩を形成していてもよく、全てが塩を形成していてもよい。
【0024】
有機カルボン酸誘導体としては、前記例示の各有機カルボン酸の誘導体(アルキルエステル;アミド;イミド;アミドイミド;N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドまたはこれらの誘導体によって修飾した修飾物;など)が挙げられる。なお、有機多価カルボン酸の誘導体の場合には、有機多価カルボン酸の有するカルボキシル基の一部が誘導体形成に使用されていてもよく、全てが誘導体形成に使用されていてもよい。
【0025】
前記例示の架橋剤の中でも、有機カルボン酸または有機カルボン酸無水物がより好ましく、架橋性がより良好である点で、3価以上の芳香族多価カルボン酸であるピロメリット酸、トリメリット酸、およびこれらの無水物が特に好ましい。
【0026】
層(A)は、架橋剤および多糖類のみで構成してもよいが、層(A)のイオン透過性をより高めるなどの目的で、無機微粒子、樹脂微粒子および樹脂製の極細繊維よりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含有させてもよい。
【0027】
無機微粒子としては、電気化学的に安定で、かつ電気絶縁性のものであればよく、例えば、酸化鉄(Fe
xO
y;FeO、Fe
2O
3など)、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、BaTiO
2、ZrO
2などの無機酸化物の微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機窒化物の微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム、炭化カルシウムなどの難溶性のイオン結晶の微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶の微粒子;モンモリロナイトなどの粘土の微粒子;などが挙げられる。ここで、前記無機酸化物の微粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来物質またはこれらの人造物などの微粒子であってもよい。また、金属、SnO
2、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの導電性酸化物、カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質材料などで例示される導電性材料の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前記の無機酸化物など)で被覆することにより電気絶縁性を持たせた粒子であってもよい。
【0028】
樹脂微粒子としては、耐熱性および電気絶縁性を有しており、非水電解質に対して安定であり、更に、電池の作動電圧範囲において酸化還元されにくい電気化学的に安定な材料により構成された微粒子が好ましく、このような材料としては、例えば、樹脂架橋体が挙げられる。より具体的には、スチレン樹脂〔ポリスチレン(PS)など〕、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル樹脂〔ポリメチルメタクリレート(PMMA)など〕、ポリアルキレンオキシド〔ポリエチレンオキシド(PEO)など〕、フッ素樹脂〔ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など〕およびこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂の架橋体;尿素樹脂;ポリウレタン;などが例示できる。樹脂微粒子には、前記例示の樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、有機微粒子は、必要に応じて、樹脂に添加される公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤などを含有していても構わない。
【0029】
樹脂製の極細繊維としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、アラミド、ポリプロピレン(PP)、塩素化PP、PEO、ポリエチレン(PE)、セルロース、セルロース誘導体、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などの樹脂や、これらの樹脂の誘導体で構成された極細繊維が挙げられる。
【0030】
前記例示の無機微粒子、樹脂微粒子、および樹脂製の極細繊維の中でも、Al
2O
3、SiO
2、ベーマイト、PMMA(架橋PMMA)の各微粒子が特に好ましく用いられる。
【0031】
無機微粒子および樹脂微粒子の形状は、球状、板状、板状以外の多面体形状などいずれの形状であってもよい。
【0032】
また、無機微粒子および樹脂微粒子の粒子径としては、一次粒子の平均粒子径で、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。無機微粒子や樹脂微粒子の一次粒子の平均粒子径が小さすぎると、表面積が大きくなって、層(A)の形成に使用する組成物(溶剤を含む組成物。詳しくは後述する。)において、溶剤中への分散が困難となり、また、前記組成物が凝集しやすくなることから好ましくない。また、無機微粒子や樹脂微粒子の一次粒子の平均粒子径が大きすぎると、層(A)内でのリチウムイオンの運動を、層(A)の面方向に対して均一にし難くなり、電池の充放電時のリチウムイオンの移動障壁となる虞がある。
【0033】
本明細書でいう各種微粒子の平均粒子径、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、耐熱性微粒子を膨潤させたり溶解させたりしない媒体(例えば水)に分散させて測定した体積基準の積算分率における50%での粒径(D50)である。
【0034】
また、樹脂製の極細繊維の形態としては、平均繊維径が0.01〜10μmであることが好ましく、平均繊維長が1〜1000μmであることが好ましい。
【0035】
本明細書でいう極細繊維の平均繊維径および平均繊維長は、極細繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、撮影した写真上において任意の位置に線を引き、線と交差する全ての繊維径および繊維長(それぞれn=20以上)をカウントして、それらの平均値(数平均)を算出することにより求められる値である。
【0036】
層(A)において、多糖類および架橋剤の含有量は、例えば、電池内が温度上昇した際に、層(A)内でより良好に架橋構造を形成し得るようにする観点から、多糖類100質量部に対して、架橋剤を10〜50質量部とすることが好ましい。
【0037】
また、層(A)に、無機微粒子、樹脂微粒子、および樹脂製の極細繊維よりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含有させる場合には、前記材料100質量部に対して、多糖類の含有量を、0.01〜5質量部とすることが好ましく、これにより、層(A)のリチウムイオン透過性を良好にしつつ、多糖類および架橋剤による架橋構造の形成を良好に進め、それによる前記の効果を良好に確保することができる。
【0038】
層(A)の厚みは、層(A)の形成による前記の効果をより良好に確保する観点から、0.1μm以上であることが好ましく、3.0μm以上であることがより好ましい。ただし、層(A)が厚すぎると、電池の容量が小さくなる虞があることから、層(A)の厚みは、10.0μm以下であることが好ましく、6.0μm以下であることがより好ましい。
【0039】
本発明の非水二次電池に係る正極には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダを含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものを使用することができる。
【0040】
正極活物質には、例えば、従来から知られているリチウムイオン二次電池などの非水二次電池に用いられている正極活物質、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を特に制限なく使用できる。正極活物質の具体例としては、LiM
1xMn
2−xO
4(M
1は、Li、B、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Sn、Sb、In、Nb、Mo、W、Y、RuおよびRhよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0.01≦x≦0.6である。)で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物、Li
aMn
(1−b−c)Ni
bM
2cO
(2−d)F
e(M
2は、Co、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Zr、Mo、Sn、Ca、SrおよびWよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0.8≦a≦1.2、0<b<0.5、0≦c≦0.5、d+e<1、−0.1≦d≦0.2、0≦e≦0.1である。)で表される層状化合物、LiCo
1−yM
3yO
2(ただし、M
3は、Al、Mg、Ti、Zr、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦y≦0.5)で表されるリチウムコバルト複合酸化物、LiNi
1−zM
4zO
2(ただし、M
4は、Al、Mg、Ti、Zr、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦z≦0.5)で表されるリチウムニッケル複合酸化物、LiM
51−fM
6fO
2(ただし、M
5は、Fe、MnおよびCoよりなる群から選択される少なくとも1種の元素で、M
6は、Al、Mg、Ti、Zr、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦f≦0.5)で表されるオリビン型複合酸化物などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
正極合剤層に係る導電助剤には、例えば、カーボンブラックなどの炭素材料が使用できる。また、正極合剤層に係るバインダには、PVDFなどのフッ素樹脂が使用できる。
【0042】
正極合剤層は、例えば、前記の正極活物質、導電助剤およびバインダをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶媒に溶解または分散させて正極合剤含有スラリーを調製し、これを正極集電体の片面または両面に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理を施すことにより形成することができる。なお、正極に係る正極合剤層は、前記の方法以外の方法により形成してもよい。正極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり、20〜200μmとすることが好ましい。
【0043】
正極の集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
【0044】
正極側のリード部は、通常、正極作製時に、集電体の一部に正極合剤層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体にアルミニウム製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
【0045】
正極に係る正極合剤層においては、正極活物質の含有量を87〜97質量%とし、導電助剤の含有量を1.5〜6.5質量%とし、バインダの含有量を1.5〜6.5質量%とすることが好ましい。
【0046】
本発明の非水二次電池に係る負極には、従来から知られているリチウムイオン二次電池などの非水二次電池に用いられている負極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素を含む単体、化合物およびその合金、リチウム含有窒化物、または酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金、更にはLi
4Ti
5O
12で表されるようなTi酸化物も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどのバインダなどを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として、その片面または両面に成形体(負極合剤層)に仕上げたもの、または前記の各種合金やリチウム金属の箔を単独、もしくは集電体上に負極剤層として積層したものなどが用いられる。
【0047】
なお、負極合剤層を有する負極の場合には、例えば、前記の負極活物質やバインダなどをNMPや水などの溶媒に溶解または分散させて負極合剤含有スラリーを調製し、これを負極集電体の片面または両面に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理を施すことにより形成することができる。ただし、負極に係る負極合剤層は、前記の方法以外の方法により形成してもよい。
【0048】
集電体の片面または両面に負極合剤層を形成する場合には、負極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり、20〜200μmとすることが好ましい。
【0049】
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、下限は5μmであることが望ましい。また、負極側のリード部は、正極側のリード部と同様にして形成すればよい。
【0050】
負極に係る負極合剤層においては、負極活物質の含有量を88〜99質量%とし、バインダの含有量を1〜12質量%とすることが好ましく、また、導電助剤を使用する場合には、その含有量を0.5〜6質量%とすることが好ましい。
【0051】
層(A)を正極または負極の表面に形成する場合には、例えば、層(A)の構成材料(架橋剤および多糖類、更には、必要に応じて使用される無機微粒子、樹脂微粒子または樹脂製の極細繊維)を溶剤に分散(架橋剤および多糖類は溶解していてもよい)させて層(A)形成用組成物を調製し、これを正極の表面(少なくとも正極合剤層の表面)または負極の負極剤層の表面(少なくとも負極剤層の表面)に塗布し、乾燥して溶剤を除去する方法が採用できる。
【0052】
層(A)形成用組成物の溶剤には、NMPなどの有機溶剤や水を使用することができる。
【0053】
本発明の非水二次電池に係るセパレータには、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタンなどの樹脂で構成された多孔質膜を使用することができるが、セパレータにシャットダウン機能を持たせる観点から、ポリオレフィン製の多孔質膜を使用することが好ましい。
【0054】
ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのPE;PPなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、2種以上のポリオレフィンを使用した多孔質膜としては、例えば、PP層上にPE層を介してPP層を積層した三層構造の多孔質膜が挙げられる。
【0055】
これらのポリオレフィンの中でも、融点、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、80〜150℃のものを使用することが好ましい。このような融点のポリオレフィンを含有する多孔質膜であれば、前記ポリオレフィンが軟化してセパレータの空孔が閉塞されるシャットダウン特性の開始温度が80〜150℃のセパレータとすることができるため、かかるセパレータを使用することで、非水二次電池の安全性を更に高めることが可能となる。
【0056】
セパレータに使用する多孔質膜としては、例えば、従来から知られている溶剤抽出法や、乾式または湿式延伸法などにより形成された孔を多数有するイオン透過性の多孔質膜(電池のセパレータとして汎用されている微多孔膜)を用いることができる。
【0057】
また、セパレータに層(A)を形成する場合、多孔質膜には、前記の微多孔膜以外にも、前記例示の樹脂で構成された不織布などを用いてもよい。
【0058】
セパレータに層(A)を形成する場合には、前記のような樹脂製の多孔質膜の表面に、前記の層(A)形成用組成物を塗布し、乾燥して溶剤を除去する方法が採用できる。
【0059】
本発明の非水二次電池において、前記の正極と前記の負極とは、前記のセパレータを介して積層した積層体(積層電極体)や、更にこの積層体を巻回した巻回体(巻回電極体)の形態で用いることができる。
【0060】
本発明の非水二次電池に係る非水電解質には、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液(非水電解液)が使用される。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLi
+イオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こしにくいものであれば特に制限はない。例えば、LiClO
4、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6などの無機リチウム塩;LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、Li
2C
2F
4(SO
3)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC
nF
2n+1SO
3(n≧2)、LiN(R
fOSO
2)
2[ここでR
fはフルオロアルキル基]などの有機リチウム塩;などを用いることができる。
【0061】
非水電解質に用いる有機溶媒としては、前記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンといった環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルといったニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても構わない。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。
【0062】
また、これらの非水電解質に安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を適宜加えることもできる。
【0063】
このリチウム塩の非水電解質中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
【0064】
また、前記の非水電解質(非水電解液)に、ポリマーなどの公知のゲル化剤を加えてゲル状(ゲル状電解質)として用いてもよい。
【0065】
本発明の非水二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
【0066】
本発明の非水二次電池は、自動車用途や電動工具の電源用途などの用途に好適である他、各種電子機器の電源用途など、従来から知られているリチウムイオン二次電池などの非水二次電池が用いられている各種用途と同じ用途にも適用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0068】
<層(A)形成用組成物の調製>
〔層(A)形成用組成物(1)〕
NMP:1000g中に、無機微粒子である多面体形状のベーマイト合成品(アスペクト比:1.4、D50:0.63μm):200gと、グリセリル化キトサン(無機微粒子:100質量部に対して1.5質量部)と、ピロメリット酸(無機微粒子:100質量部に対して1.5質量部)とを、スリーワンモーターを用いて1時間攪拌して分散させて、均一な層(A)形成用組成物(1)を調製した。
【0069】
〔層(A)形成用組成物(2)〕
NMP:1000g中に、グリセリル化キトサン:1gとピロメリット酸:1gとを、スリーワンモーターを用いて1時間攪拌して分散させて、層(A)形成用組成物(2)を調製した。
【0070】
〔層(A)形成用組成物(3)〕
NMP:1000g中に、無機微粒子である多面体形状のベーマイト合成品(アスペクト比:1.4、D50:0.63μm):200gと、グリセリル化キトサン(無機微粒子:100質量部に対して1.5質量部)と、トリメリット酸(無機微粒子:100質量部に対して1.5質量部)とを、スリーワンモーターを用いて1時間攪拌して分散させて、均一な層(A)形成用組成物(3)を調製した。
【0071】
〔層(A)形成用組成物(4)〕
NMP:1000g中に、樹脂微粒子である架橋PMMA粒子(D50:0.50μm、ガラス転移温度:105℃):200gと、グリセリル化キトサン(無機微粒子:100質量部に対して1.5質量部)と、ピロメリット酸(無機微粒子:100質量部に対して1.5質量部)とを、スリーワンモーターを用いて1時間攪拌して分散させて、均一な層(A)形成用組成物(4)を調製した。
【0072】
〔層(A)形成用組成物(5)〕
NMP:1000g中に、樹脂製の極細繊維であるセルロース繊維(平均繊維径:0.3μm、平均繊維長:420μm):50gと、グリセリル化キトサン(樹脂製の極細繊維:100質量部に対して0.5質量部)と、ピロメリット酸(樹脂製の極細繊維:100質量部に対して0.5質量部)とを、スリーワンモーターを用いて1時間攪拌して分散させて、均一な層(A)形成用組成物(5)を調製した。
【0073】
実施例1
<負極の作製>
負極活物質である天然黒鉛:90質量%と、導電助剤であるアセチレンブラック:4.7質量%とを混合し、ここに、負極活物質、導電助剤および結着剤からなる負極合剤中において5.3質量%となる量のPVDF(バインダ)を含むNMP溶液を加え、よく混練して負極合剤含有スラリーを調製した。負極集電体となる厚み20μmの圧延銅箔の両面に、乾燥後の負極合剤層の質量が、負極集電体の片面あたり5.0mg/cm
2となる量で前記のスラリーを均一に塗布し、その後80℃で乾燥し、更にロールプレス機で圧縮成形して負極を得た。なお、負極合剤含有スラリーを圧延銅箔に塗布する際には、圧延銅箔の一部が露出するようにした。前記負極の負極合剤層の厚みは、集電体(圧延銅箔)の片面あたり、21μmであった。
【0074】
前記の負極を、負極合剤層の大きさが850mm×52mmで、かつ圧延銅箔の露出部を含むように切断し、更に、電流を取り出すためのニッケル製リード片を、圧延銅箔の露出部に溶接した。
【0075】
更に、得られた負極の負極合剤層上に、層(A)形成用組成物(1)を、バーコーターを用いて、乾燥後の層(A)の厚みが5.0μmになるように均一に塗布し、乾燥して負極の負極合剤層上に層(A)を形成した。
【0076】
<正極の作製>
正極活物質であるLiNi
0.6Mn
0.2Co
0.2O
2:86.2質量%と、導電助剤である黒鉛:9.0質量%およびアセチレンブラック:1.8質量%とを混合し、ここに、正極活物質、導電助剤および結着剤からなる正極合剤中において3質量%となる量のPVDF(バインダ)を含むNMP溶液を加え、よく混練して正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚みが20μmのアルミニウム箔の両面に、乾燥後の正極合剤層の質量量が、正極集電体の片面あたり11.6mg/cm
2となる量で前記のスラリーを均一に塗布し、その後80℃で乾燥し、更にロールプレス機で圧縮成形して正極を得た。なお、正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するようにした。前記正極の正極合剤層の厚みは、集電体(アルミニウム箔)の片面あたり、26μmであった。
【0077】
前記の正極を、正極合剤層の大きさが800mm×48mmで、かつアルミニウム箔の露出部を含むように裁断し、更に、電流を取り出すためのアルミニウム製リード片を、アルミニウム箔の露出部に溶接した。
【0078】
<セパレータ>
厚みが16μm、空孔率が45%で、両面にコロナ放電処理を施したPE製微多孔膜を、セパレータとして用意した。
【0079】
<電池の組み立て>
前記の正極と前記の負極とを、間に前記のセパレータを介在させつつ重ね合わせ、渦巻状に巻回して巻回電極体とした。この巻回電極体を、アルミニウム外装体に挿入し、非水電解液(エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとを2:4:4の体積比で混合した溶媒に、LiPF
6を1mol/lの濃度で溶解させた溶液)を外装体内に注入した後に、外装体の開口部を封止して、長さ65mm、直径18mmの円筒形の巻回電極体を内部に有し、
図1に示す構造の非水二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。
【0080】
ここで、
図1に示す電池について説明すると、
図1に示す非水二次電池では、正極1と負極2とがセパレータ3を介して渦巻状に巻回され、巻回電極体として非水電解液4と共に外装体5内に収容されている。なお、
図1では、繁雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたって使用した集電体などは図示していない。
【0081】
外装体5の底部には前記巻回電極体の挿入に先立って、PPからなる絶縁体6が配置されている。封口板7は、アルミニウム製で円板状をしていて、その中央部に薄肉部7aが設けられ、かつ前記薄肉部7aの周囲に電池内圧を防爆弁9に作用させるための圧力導入口7bとしての孔が設けられている。そして、この薄肉部7aの上面に防爆弁9の突出部9aが溶接され、溶接部分11を構成している。なお、前記の封口板7に設けた薄肉部7aや防爆弁9の突出部9aなどは、図面上での理解がしやすいように、切断面のみを図示しており、切断面後方の輪郭は図示を省略している。また、封口板7の薄肉部7aと防爆弁9の突出部9aの溶接部分11も、図面上での理解が容易なように、実際よりは誇張した状態に図示している。
【0082】
端子板8は、圧延鋼製で表面にニッケルメッキが施され、周縁部が鍔状になった帽子状をしており、この端子板8にはガス排出口8aが設けられている。防爆弁9は、アルミニウム製で円板状をしており、その中央部には発電要素側(
図1では、下側)に先端部を有する突出部9aが設けられ、かつ薄肉部9bが設けられ、前記突出部9aの下面が、前記のように、封口板7の薄肉部7aの上面に溶接され、溶接部分11を構成している。絶縁パッキング10は、PP製で環状をしており、封口板7の周縁部の上部に配置され、その上部に防爆弁9が配置していて、封口板7と防爆弁9とを絶縁するとともに、両者の間から非水電解液が漏れないように両者の間隙を封止している。環状ガスケット12はPP製で、リード体13はアルミニウム製で、前記封口板7と正極1とを接続し、巻回電極体の上部には絶縁体14が配置され、負極2と外装体5の底部とはニッケル製のリード体15で接続されている。
【0083】
この非水電解液二次電池においては、封口板7の薄肉部7aと防爆弁9の突出部9aとが溶接部分11で接触し、防爆弁9の周縁部と端子板8の周縁部とが接触し、正極1と封口板7とは正極側のリード体13で接続されているので、通常の状態では、正極1と端子板8とはリード体13、封口板7、防爆弁9およびそれらの溶接部分11によって電気的接続が得られ、電路として正常に機能する。
【0084】
そして、電池が高温にさらされるなど、電池に異常事態が起こり、電池内部にガスが発生して電池の内圧が上昇した場合には、その内圧上昇により、防爆弁9の中央部が内圧方向(
図1では、上側の方向)に変形し、それに伴って溶接部分11で一体化されている薄肉部7aに剪断力が働いて該薄肉部7aが破断するか、または防爆弁9の突出部9aと封口板7の薄肉部7aとの溶接部分11が剥離した後、この防爆弁9に設けられている薄肉部9bが開裂してガスを端子板8のガス排出口8aから電池外部に排出させて電池の破裂を防止することができるように設計されている。
【0085】
得られた非水二次電池は、設計容量をもとに、0.05C(57.5mAh)の電流値で4.1Vまで定電流充電を行い、引き続いて4.1Vで定電流充電の開始から3.0時間になるまで定電圧充電を行う予備充電を実施した。そして、予備充電後の電池について、0.2C(230mAh)の電流値で4.2Vまで定電流充電を行い、引き続いて4.2Vで定電流充電の開始から7.5時間になるまで定電圧充電を行い、更に0.2Cの電流値で3.0Vまで定電流放電を行う一連の操作を1サイクルとし、これを2サイクル繰り返して、定格容量を設定した。この定格容量は1150mAhであった(後記の全ての実施例および比較例の非水二次電池も、実施例1の電池と同じ条件で定格容量の設定を行い、それらの定格容量は1150mAhである)。
【0086】
実施例2
実施例1で用いたものと同じセパレータの片面に、層(A)形成用組成物(1)を、バーコーターを用いて、乾燥後の層(A)の厚みが5.0μmになるように均一に塗布し、乾燥して、セパレータ上に層(A)を形成した。
【0087】
実施例1で作製したものと同じ正極と、実施例1で作製したものと同じ負極〔層(A)を形成していない負極〕とを、前記セパレータを介して重ね合わせて渦巻状に巻回して巻回電極体とした。なお、この巻回電極体においては、セパレータ上に形成した層(A)が、正極と対向するようにした。そして、この巻回電極体を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
【0088】
実施例3
実施例1で作製したものと同じ正極の正極合剤層上に、層(A)形成用組成物(1)を、バーコーターを用いて、乾燥後の層(A)の厚みが5.0μmになるように均一に塗布し、乾燥して、正極の正極合剤層上に層(A)を形成した。
【0089】
前記正極と、実施例1で作製したものと同じ負極〔層(A)を形成していない負極〕とを、実施例1で使用したものと同じセパレータを介して重ね合わせ渦巻状に巻回して巻回電極体とした。そして、この巻回電極体を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
【0090】
実施例4
実施例1で作製したものと同じ負極〔層(A)を形成していない負極〕上に、層(A)形成用組成物(2)を、ディップコーターを用いて、乾燥後の層(A)の厚みが5.0μmになるように均一に塗布し、乾燥して、負極上に層(A)を形成した。
【0091】
前記負極と、実施例1で作製したものと同じ正極とを、実施例1で使用したものと同じセパレータを介して重ね合わせ、渦巻状に巻回して巻回電極体とした。そして、この積層電極体を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
【0092】
実施例5
層(A)形成用組成物(1)に代えて層(A)形成用組成物(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして負極の負極合剤層上に層(A)を形成した。そして、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
【0093】
実施例6
層(A)形成用組成物(1)に代えて層(A)形成用組成物(4)を用いた以外は、実施例1と同様にして負極の負極合剤層上に層(A)を形成した。そして、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
【0094】
実施例7
層(A)形成用組成物(2)に代えて層(A)形成用組成物(5)を用いた以外は、実施例4と同様にして負極上に層(A)を形成した。そして、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
【0095】
比較例1
水:1000g中に、無機微粒子であるベーマイト合成品(アスペクト比:1.4、D50:0.63μm):200gと、バインダであるアクリレート共重合体(モノマー成分としてブチルアクリレートを主成分とする市販のアクリレート共重合体。無機微粒子:100質量部に対して3質量部。)とを、スリーワンモーターを用いて1時間攪拌して分散させ、均一な多孔質層形成用組成物を調製した。
【0096】
実施例1で作製したものと同じ負極〔層(A)を形成していない負極〕の負極合剤層上に、前記の多孔質層形成用組成物を、バーコーターを用いて、乾燥後の多孔質層の厚みが5.0μmになるように均一に塗布し、乾燥して負極の負極合剤層上に多孔質層を形成した。そして、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
【0097】
比較例2
実施例1で使用したものと同じセパレータの片面に、比較例1で調製したものと同じ多孔質層形成用組成物を、バーコーターを用いて、乾燥後の多孔質層の厚みが5.0μmになるように均一に塗布し、乾燥してセパレータ上に多孔質層を形成した。そして、このセパレータを用いた以外は、実施例2と同様にして非水二次電池を作製した。
【0098】
比較例3
実施例1で作製したものと同じ正極と、実施例1で作製したものと同じ負極〔層(A)を形成していない負極〕とを、実施例1で使用したものと同じセパレータを介して重ね合わせて渦巻状に巻回して巻回電極体とした。そして、この巻回電極体を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
【0099】
実施例1〜7および比較例1〜3の非水二次電池およびこれらの非水二次電池の作製に用いた多孔質層形成用組成物について、以下の各評価を行った。
【0100】
<釘刺し試験>
定格容量まで充電した各電池の、中央側面の近傍に熱電対をテープで止め、更に厚み6mmのグラスウールを巻きつけ、直径30mmの円筒形のラミネートで外装して、電池を断熱状態にした。そして、電池の電圧および表面温度をモニタリングしつつ、20℃の環境下で、充電状態の電池の中央に、直径3mmのステンレス製の釘を1mm/secの速度で突き刺した。ここで、短絡によって電圧降下が観測された時点で釘の降下を停止して保持した。
【0101】
試験における評価基準としては、電池の温度上昇がないことが要求される。電池電圧が50mV以上の電圧降下が観測された時点から、電池表面が5秒以内に200℃以上まで上昇した場合を0点とし、10秒以内に200℃以上まで上昇した場合を1点、これ該当しない場合を2点と点数付けした。
【0102】
更に電池電圧が50mV以上の電圧降下が観測された時点から1分の間の電池表面最高温度を到達温度とし、到達温度「0点:300℃以上」、「1点:100℃以上300℃未満」、これ該当しない場合を「2点:100℃未満」とし、この点数の合計から安全性について総合判断をした。
【0103】
<昇温試験>
充電前の各電池を5℃/minで昇温し、抵抗の変化を観測して、抵抗上昇が2倍以上となる温度を測定し、これをシャットダウン温度とした。
【0104】
<架橋開始温度>
実施例および比較例1、2の電池の作製に用いた多孔質層形成用組成物について、前記の方法で「架橋開始温度」を測定した。
【0105】
<充放電サイクル特性評価>
実施例および比較例の各非水二次電池(前記の各試験を行っていない電池)について、25℃の環境下で、0.5C(575mAh)の電流値で4.2Vまで定電流充電を行い、引き続いて、4.2Vに到達した時点で一定電圧充電に移行し電流値が1Cに対して、1/20まで減少した時点で終了させた。更に0.2C(230mA)の電流値で3.0Vまで定電流放電を行う一連の操作を1サイクルとし、これを200サイクル繰り返して、1サイクル目の放電容量と200サイクル目の放電容量を求めた。そして、各電池について、200サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した値を百分率で表して、200サイクル目の放電容量維持率を算出した。
【0106】
<貯蔵特性評価>
前記の充放電サイクル特性の評価を行った各電池を、0.2C(230mA)の電流値で4.2Vまで充電した後に、60℃に調節した恒温槽内に入れて5日間貯蔵した。その後恒温槽の加熱を止め、1日経過してから各電池を取り出し、0.2C(230mA)の電流値で3.0Vまで定電流放電を行って放電容量(貯蔵直後の放電容量)を求め、これらの値と、充放電サイクル特性評価時の1サイクル目の放電容量(初期放電容量)とから、下記式に従って容量維持率(%)を求めた。
【0107】
容量維持率 = (貯蔵直後の放電容量/初期放電容量)×100
【0108】
また、貯蔵直後の放電容量測定後の各電池について、充放電サイクル特性評価時と同じ条件での充放電を2サイクル繰り返して、放電容量(貯蔵後2サイクル目の放電容量)を求めた。そして、各電池の貯蔵後2サイクル目の放電容量と、充放電サイクル特性評価時の1サイクル目の放電容量(初期放電容量)とから、下記式に従って容量回復率(%)を求めた。
【0109】
容量回復率 = (貯蔵後2サイクル目の放電容量/初期放電容量)×100
【0110】
前記の各評価結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1に示す通り、架橋剤と、熱によって前記架橋剤で架橋でき、かつ架橋開始温度が90〜130℃の多糖類とを含む層(A)を、正極と負極との間に有する実施例1〜7の非水二次電池は、釘刺し試験時の温度上昇が抑制できており、また、シャットダウン温度も、セパレータの素材として使用されているPEの融点よりも少し低い温度とすることができており、優れた安全性を確保できている。また、実施例1〜7の非水二次電池では、層(A)に係る多糖類としてキトサン誘導体を使用しており、その作用によって、充放電サイクル特性評価時の200サイクル後の容量維持率、並びに貯蔵特性評価時の容量維持率および容量回復率が高く、充放電サイクル特性および貯蔵特性も優れている。
【0113】
これに対し、層(A)を有していない比較例3の電池では、釘刺し試験時に温度上昇が認められており、安全性が劣っている。また、層(A)に代えて架橋剤および多糖類を含有しない多孔質層を、正極と負極との間に有する比較例1、2の電池では、釘刺し試験時の温度上昇を、比較例3の電池に比べると抑制できているものの、実施例の電池よりは温度上昇抑制効果が小さく、安全性が劣っている。