【実施例】
【0028】
分離
マツボー社のエルボージェット空気分級機(モデルEJ1S-3S)により、40ミクロンの平均直径及び30g/リットルの密度を有するポリアクリロニトリル及びメタクリロニトリルのイソペンタン充填コポリマーの試料の分離を実施した。これらの中空微小球は、コポリマー中に埋め込まれた酸化マグネシウム・カルシウム含有粒子を含有するものであった。酸化マグネシウム・カルシウム含有粒子は微小球の外側表面積の約5〜15%を被覆していた。加えて、試料は、5μmよりも大きい粒径を有する酸化マグネシウム・カルシウム粒子と会合したコポリマー微小球、ii)ポリマー微小要素の外面の50%超を被覆する酸化マグネシウム・カルシウム含有領域、及びiii)酸化マグネシウム・カルシウム含有粒子と凝集して、120μmよりも大きい平均クラスタサイズになったポリマー微小要素、を含むものであった。エルボージェット空気分級機は、コアンダブロックならびに
図1A及び1Bの構造を含むものであった。
図2は、微粒子の存在下における所望の酸化マグネシウム・カルシウム含有微小球を示す。所望の微小球の場合、白い領域は、ポリマーシェルに埋め込まれた酸化マグネシウム・酸化カルシウムミネラル粒子を表す。望ましくない粒子の場合、白い領域が粒子の半分超又は粒子全体を被覆する。選択した設定でポリマー微小球を振動フィーダに通してガスジェットに送り込むと、表1の結果が得られた。
【0029】
【表1】
【0030】
表1のデータは、微粉[F]及び粗大物質[G]の効果的な除去を示す。実施例7は、7重量%の微粉及び0.2重量%の粗大物質を提供した。実施例7の延長実験である実施例8は、8.7重量%の微粉及び0.7重量%の粗粉を製造した。粗大物質は、5μmよりも大きい粒径を有する酸化マグネシウム・カルシウム含有粒子と会合したコポリマー微小球、ii)ポリマー微小要素の外面の50%超を被覆する酸化マグネシウム・カルシウム含有領域、及びiii)酸化マグネシウム・カルシウム含有粒子と凝集して、120μmよりも大きい平均クラスタサイズになったポリマー微小要素、を含有していた。
【0031】
図3〜5を参照すると、
図3は微粉[F]を示し、
図4は、浄化された酸化マグネシウム・カルシウム含有ポリマー微小球[M]を示し、
図5は、実施例7及び8の条件からの粗粉[G]を示す。微粉は、中間サイズのポリマー微小要素を小さな割合でしか含有しない粒径分布を有するように見える。粗大画分は、目に見える微小要素凝集塊及び外面の50%超を被覆する酸化マグネシウム・カルシウム含有領域を有するポリマー微小要素を含有する。中間画分は、微細及び粗大ポリマー微小要素の大部分を含まないように見える。これらのSEM顕微鏡写真は、三つのセグメントへの分級によって達成された劇的な違いを示す。
【0032】
パッド密度に対する効果
表2は、研磨パッドを作るために使用されるポリウレタンケーキを流込み成形するための微小球配合を提供する。
【0033】
【表2】
【0034】
末端イソシアネート修飾ウレタンプレポリマー(Chemtura CorporationのAdiprene(登録商標)L325、9.1%NCO)と硬化剤としての4,4′−メチレン−ビス−o−クロロアニリン(MBCA)との制御された混合によってポリウレタンケーキを調製した。プレポリマー温度及び硬化剤温度はそれぞれ51℃及び116℃であった。プレポリマーと硬化剤との比は、プレポリマー中のNCO基に対する硬化剤中のNH
2基の割合によって定義される化学量論比が87%になるように設定した。これらの配合は、硬いポリマーマトリックスへの様々なポリマー微小球の添加の効果を示す。具体的には、ポリマー微小球が添加されない場合、Adiprene L325/MBOCAポリマーマトリックスの硬さは72ショアDであり、上記実施例において添加したポリマー微小球のレベルでは、硬さは55〜60DショアDに低下する。
【0035】
比較例A及び比較例Bからのパッドの平均密度が等しくなるように微小球を添加することによって配合物に細孔を導入した。比較例Aにおいては、シリカ粒子を散在させたポリ(二塩化ビニリデン)/ポリアクリロニトリルシェル壁を細孔形成剤として使用した。実施例1の場合、酸化マグネシウム・カルシウムを散在させたポリアクリロニトリル/メタクリロニトリルシェルを使用した。両シェル壁は、同じ平均40ミクロンの微小球直径を有するものであった。ブレンドの前に、上記加工技術及び条件を使用してポリアクリロニトリル/メタクリロニトリル粒子を分級した。
【0036】
高剪断混合ヘッドを使用して、プレポリマー、硬化剤及び微小球を同時に混合した。混合ヘッドを出たのち、混合した成分を直径34インチ(86.4cm)の円形型の中に4分かけて小出しして、約2インチ(5.1cm)の全流込み厚さを得た。成分を15分間ゲル化させたのち、硬化オーブンに入れ、次いで以下のサイクル:周囲温度から104℃の設定温度まで定率昇温、104℃で15.5時間及び設定温度を21℃に下げて2時間、で硬化させた。
【0037】
次いで、成形品を70〜80℃の温度で厚さ80ミル(2.0mm)の薄いシート約20枚に「スカイビング」(可動ブレードを使用して切断)した。スカイビングは、不完全なシートを捨てながらケーキの上面から開始した。(その後、各シートを、その表面にマクロテキスチャを溝削り又は孔あけし、圧縮性サブパッドに積層することにより、研磨パッドに転換することができる)。
【0038】
ASTM規格D1622にしたがって各シートの重量、厚さ及び直径を計測することにより、その密度を決定した。
図6は、成形品の上から下までの各シートの密度を示す。
【0039】
添加されるポリマー微小球の量を調節して、成形品全体で平均して同じレベルの多孔度及び密度を達成した。比較例A及び実施例1の場合、両方の成形品のすべてのシートの平均密度は0.809g/cm
3で同じであった。
【0040】
しかし、プレポリマーと硬化剤との間の化学反応は発熱性であるため、成形品を通して、成形品の下部領域が中部又は上部領域よりも冷温であるような強い温度勾配が存在した。このプレポリマー・硬化剤の組み合わせの発熱温度はシェル壁の軟化温度(Tg)を超えた。これらの温度は、成形品がまだゲル化しているときに達成されたため、より高い温度に応答してポリマー微小球粒子は直径を増し、成形品内の多孔度のプロフィールが発現した。このプロフィールは、成形品から切り出された、より冷温の下部シートに関して顕著であった。下層シートは、残りのシートよりも高い密度を有し、規格外になって不合格になるおそれがあり、製造収率が低下した。有利には、すべてのパッドが5%以内の密度又は比重を有する。もっとも有利には、パッドを除去して、2%未満しか変動しない密度又は比重を有するすべてのパッドを残すことが可能である。
【0041】
図6において、比較例Aがこの問題を明確に示している。ポリ(二塩化ビニリデン)/ポリアクリロニトリルを細孔形成剤として使用した場合、下層の密度は目標平均密度値よりも有意に高くなり、不合格にしなければならなかった。対照的に、同じポリマーマトリックス配合においてポリアクリロニトリル/メタクリロニトリルを代用すると(実施例9)、ケーキの上部から下部までの密度変化が有意に減少し、規格外密度値の発生が大幅に減少した。ポリ(二塩化ビニリデン)/ポリアクリロニトリルを上回るポリアクリロニトリル/メタクリロニトリル微小球の高められた性能は、それらのより高いシェル壁軟化温度の直接的結果であると思われる。前述し、表2に示すように、ポリアクリロニトリル/メタクリロニトリル微小球のTgはポリ(二塩化ビニリデン)/ポリアクリロニトリルのTgよりも20℃高く、高い発熱温度に応答して膨張する傾向を効果的に低下させた。ポリアクリロニトリル/メタクリロニトリルシェルは、無塩素ポリマーであるさらなる利点をも提供した。
【0042】
図7及び8は、それぞれ比較例A及び実施例9のシートの断面SEMを示す。
図7及び8の比較は、孔径が非常に類似していることを示す。これらの図はまた、いずれの場合でも、微小球がポリマーマトリックス中に均一に分散していることを示す。二つの図の間の微妙な違いは、ポリアクリロニトリル/メタクリロニトリル微小球の場合に存在する、より多くのシェル壁断片の存在である。これは、より弾性が低く、より脆性であるシェル壁を示す。
【0043】
スカイビング比較
違いは、
図9及び10に示すようなスカイビングされた面の場合により顕著である。スカイビング作業は、より大きな機械的応力を加え、特にシェル壁の延性がより低く、シェル壁がより脆性である場合、微小球を破壊する可能性がより高い。
【0044】
より脆性の粒子は、後続のダイアモンドコンディショニング及び研磨の間、より小さな破片に分解することができる。これが、より小さな研磨くずを発生させる。より小さな研磨くずは、半導体ウェーハをスクラッチし、研磨されるウェーハを不良品にしかねない致命的欠陥を生じさせる可能性がより低い。
【0045】
図9及び10に示すスカイビングされた面の表面粗さを、Zeissプロフィロメータ(モデルSufcom 1500)を使用する接触法によって計測した。2ミクロンチップダイアモンド針(DM43801)をパッド表面にトラッキングし、主要な表面粗さパラメータを測定した。これらのパラメータは、Bennett及びMattssonによる「Introduction to Surface Roughness and Scattering」において定義されているような平均表面粗さ(Ra)、ピーク高さ減少量(Rpk)、コア粗さ深さ(Rk)及び谷深さ減少量(Rvk)を含むものであった。
【0046】
比較例A及び実施例1の粗さ値を表3にまとめる。
【0047】
【表3】
【0048】
すべての粗さパラメータが、ポリアクリロニトリル/メタクリロニトリル微小球を含有するパッドの場合により高かった。一般に、より高い表面粗さは、研磨中のより高い除去速度、ひいては増大したウェーハスループットを生じさせる。
【0049】
軟らかい配合物中のパッド性質に対する微小要素の効果
次の実施例は、直径40ミクロンのポリ(二塩化ビニリデン)/ポリアクリロニトリル又はポリアクリロニトリル/メタクリロニトリル微小球のいずれかをずっと軟らかなマトリックスに添加する効果を示す。配合及び加工条件を表4にまとめる。
【0050】
【表4】
【0051】
これらの配合物において、使用したプレポリマー(COIM USA Inc.のImuthane(登録商標)27-95A)は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)で末端を修飾されたポリエーテル系であり、1,4−ブタンジオールで硬化させた。少量のアミン触媒(Air productsのDabco(登録商標)33-LV)を使用してウレタン反応を促進した。これらの配合物は、実験室中、ボルテックスミキサを使用してプレポリマー、硬化剤及び微小球を徹底的に混合することによって製造した。混合ののち、アルミニウム型に注加し、高温で硬化させて、物性決定のための幅約12cm、長さ約20cm、厚さ約2mmのシートを形成した。
【0052】
表5は、表5の配合物の主要な物性をまとめる。
【0053】
【表5】
【0054】
ポリマーへのポリマー微小球の添加は硬さ及び密度の両方を低下させ、比較例Cと実施例10との比較から、いずれの微小球配合物の添加の間で差がほとんどないことが明らかである。
【0055】
しかし、ポリ(二塩化ビニリデン)/ポリアクリロニトリル及びポリアクリロニトリル/メタクリロニトリル微小球の異なる軟化温度が高温でのパッド弾性率に対して影響を及ぼす。先に述べたように、ポリアクリロニトリル/メタクリロニトリルシェルは、ポリ(二塩化ビニリデン)/ポリアクリロニトリルシェルよりも高い軟化温度を有した。
図11の動的な機械的データによって示すように、これは、高温でより高い弾性率値を維持する効果を有する。研磨中、パッド表面の凹凸の先端が研磨の摩擦によって局所的に加熱され、過度に軟化するかもしれない。より高い弾性率は凹凸の寿命を有利に増し、ダイアモンドコンディショニングによって凹凸を再生する必要性を減らす。
【0056】
表5に示す引張りデータは予想外かつ有利である。通常、細孔がポリマーに導入されるとき、弾性率、引張り強さ、破断点伸び及び靱性のようなすべての引張り特性が低下する。これは、表4の配合には当てはまらない。期待された通り、ポリマー微小球の添加により、弾性率は低下する。しかし、引張り強さは、ポリ(二塩化ビニリデン)/ポリアクリロニトリル微小球の場合にのみ低下し、ポリ(二塩化ビニリデン)/ポリアクリロニトリル微小球又は特にポリアクリロニトリル/メタクリロニトリル微小球の添加は破断点伸び及び靱性値を増大させる(靱性は応力−ひずみ曲線下の面積として計測した)。靱性値は
図12にプロットされている。
【0057】
比較例B、C及び実施例10の比較は、ポリアクリロニトリル/メタクリロニトリル微小球の添加が、ポリ(二塩化ビニリデン)/ポリアクリロニトリルの添加に比べて、及び無孔質対照(non-porous control)に関してさえ、パッド靱性を好適に増大させることを示す。この挙動は、微小球が周囲のポリマーマトリックスに十分に接着しており、ポリアクリロニトリル/メタクリロニトリル微小球を含有するパッド配合物を破壊するためにはより多くのエネルギーが必要であることを示唆する。
【0058】
引張りデータを得るために使用した犬骨試料(dog-bone samples)を、破壊後、微小球の走査型電子顕微鏡法によって検査した。試験後、犬骨の狭い区域に残留ひずみがあった。ひずみ方向に対して垂直に撮影した写真が、破損モードに対する洞察を提供するために用いられた。
【0059】
図13及び14は比較例C及び実施例10の損傷挙動を示す。いずれの場合にも、ポリマーマトリックスから分離した微小球に対応するであろう空隙は見られなかった。これは、微小球が十分に接着しているという上記示唆を裏づける。しかし、
図14においては、細孔構造中に多くのシェル断片が存在する。パッドが伸長するとき、十分に接着した微小球シェル壁もまた伸長するが、そのより高いTg、ひいてはより剛性のポリマー構造のせいで、シェル壁は、破損するものの、周囲のポリマーマトリックスに付着したまま残る。シェル壁を破壊するためにはさらなるエネルギーが必要とされるため、靱性値は有意に増大する。
【0060】
本発明の研磨パッドは、研磨欠陥を減らすために、一貫した均一な構造中に分散した酸化マグネシウム・カルシウム含有粒子を含む。特に、請求項に係わる発明の複合粒子構造は、流し込み成形ポリウレタン研磨パッドを用いる銅研磨の場合のガウジング及びスクラッチング欠陥を減らすことができる。加えて、空気分級が、密度及びパッド内変動が少ない、より一貫した産物を提供することができる。